説明

光偏向器の駆動装置

【課題】ミラー部を揺動駆動するための圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーをノコギリ波状の駆動電圧により圧電駆動しつつ、ミラー部の高周波振動の発生が抑制されるように該ミラー部の揺動を行なうことができる光偏向器の駆動装置を提供する。
【解決手段】ミラー部1を揺動軸X2の周りに揺動させる圧電アクチュエータ10a,10bは、複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)を連結して構成され、圧電アクチュエータ10a,10bの一端及び他端のいずれか一方側から偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動する第1駆動電圧と、奇数数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動する第2駆動電圧とを逆位相のノコギリ波状の電圧とする。第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差が、ミラー部1の高周波振動が発生するのを抑制するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータにより揺動されるミラー部を備える光偏向器の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電アクチュエータにより揺動されるミラー部を備える光偏向器としては、例えば特許文献1に見られるものが本願出願人により提案されている。
【0003】
この光偏向器は、反射面を有するミラー部と、該ミラー部が搭載された可動部を支持基体に対して所定の揺動軸周りに揺動させるアクチュエータとして該可動部に一端が連結されると共に該支持基体に他端が連結された圧電アクチュエータとを備えている。
【0004】
この場合、上記圧電アクチュエータは、圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成されると共に上記揺動軸の方向に並ぶように配置された複数の圧電カンチレバーを、そのそれぞれが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結することにより構成される。
【0005】
このような圧電アクチュエータを有する光偏向器では、隣合う圧電カンチレバーを逆向きに屈曲させるようにすることで、比較的大きな偏向角でミラー部を揺動させることができる。また、MEMS技術を使用して、比較的容易に光偏向器を量産できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−223165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1には、上記圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーのうち、該圧電アクチュエータの一端側から偶数番目の圧電カンチレバーと、奇数番目の圧電カンチレバーとに互いに逆極性のノコギリ波状の駆動電圧を付与することで、該駆動電圧の大きさに応じた偏向角でミラー部を揺動させることが記載されている。
【0008】
しかしながら、本願発明者のさらなる実験、検討によって、偶数番目の圧電カンチレバーと、奇数番目の圧電カンチレバーとに、単に、互いに逆極性のノコギリ波状の駆動電圧を付与するようにした場合には、駆動電圧よりも高周波の振動成分がミラー部の偏向角(揺動量)の波形に含まれることが判明した。
【0009】
これは、次のような理由によるものと考えられる。すなわち、ノコギリ波状の駆動電圧には、その周波数の整数倍(2倍、3倍等)の多くの高調波成分が含まれる。このため、各圧電カンチレバーに付与するノコギリ波状の駆動電圧の周波数が、ミラー部の揺動駆動機構の機械的な固有振動数(圧電アクチュエータ等の構造に依存する機械的な固有振動数)よりも小さくても、該駆動電圧の比較的低次側の高調波成分の周波数が、上記機械的な固有振動数に一致もしくは近い周波数となりやすい。そして、このような場合には、駆動電圧の高調波成分によって、ミラー部の共振現象が発生し、それによって、ミラー部の高周波振動が発生すると考えられる。
【0010】
このようなミラー部の高周波振動の発生を防止するための手法としては、例えば、上記固有振動数が、圧電カンチレバーに付与するノコギリ波状の駆動電圧の周波数よりも十分に高い周波数になるように圧電アクチチュータを構成することが考えられる。あるいは、例えば、各圧電カンチレバーに付与する駆動電圧を、上記固有振動数と乖離した周波数の正弦波の駆動電圧にすることが考えられる。
【0011】
しかしながら、前者の手法では、ミラー部の揺動駆動機構(圧電アクチュエータ等)を硬くすることとなるために、ミラー部を比較的大きな偏向角で揺動させることが困難となる。また、後者の手法では、駆動電圧の1周期の期間内(全走査期間内)で、ミラー部の偏向角を直線的に変化させ得る期間、すなわち、画像表示等に実際に利用し得る有効走査期間が短くなり過ぎて、光偏向器の実用性が損なわれてしまう。
【0012】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ミラー部を揺動駆動するための圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーをノコギリ波状の駆動電圧により圧電駆動しつつ、ミラー部の高周波振動の発生が抑制されるように該ミラー部の揺動を行なうことができる光偏向器の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光偏向器の駆動装置は、反射面を有するミラー部と、該ミラー部が搭載された可動部を支持基体に対して第1揺動軸周りに揺動させるアクチュエータとして該可動部に一端が連結されると共に該支持基体に他端が連結された第1圧電アクチュエータを備えており、該第1圧電アクチュエータが、圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成されると共に前記第1揺動軸の方向に並ぶように配置された複数の圧電カンチレバーを、そのそれぞれが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結することにより構成された光偏向器の駆動装置であって、
前記第1圧電アクチュエータを構成する複数の圧電カンチレバーのうち、該第1圧電アクチュエータの一端及び他端のいずれか一方側から偶数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、所定周波数のノコギリ波状の第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段と、該一方側から奇数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、前記第1駆動電圧と同一周波数で、且つ、該第1駆動電圧と逆位相の波形のノコギリ波状の第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段とを備え、
前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の相対的な位相差が、前記偶数番目の各圧電カンチレバーと前記奇数番目の各圧電カンチレバーとをそれぞれ前記第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、前記ミラー部及び可動部の前記第1揺動軸周りの揺動に関する機械的な固有振動数に依存して前記第1駆動電圧及び第2駆動電圧よりも高周波で発生する該ミラー部の機械的な高周波振動成分を抑制するようにあらかじめ定められた所定の位相差に設定されていることを特徴とする(第1発明)。
【0014】
なお、本発明において、前記第2駆動電圧の波形が、前記第1駆動電圧と逆位相の波形であるということは、詳しくは、ノコギリ波状の第1駆動電圧の電圧値が、極小値から極大値まで増加していく期間の時間幅をT1a、該極大値から次の極小値まで直線的に減少していく期間の時間幅をT1b(≠T1a)としたとき(T1a+T1bは第1駆動電圧の1周期の時間幅)、第2駆動電圧の波形が、その電圧値が極小値から極大値まで増加していく期間の時間幅がT1bに一致し、該極大値から次の極小値まで減少していく期間の時間幅がT1aに一致するようなノコギリ波状の波形であることを意味する。
【0015】
また、前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の相対的な位相差というのは、第1駆動電圧と第2駆動電圧との同期状態(第1駆動電圧の極小値から次の極小値までの1周期の期間の始点(又は終点)のタイミングが、第2駆動電圧の極大値から次の極大値までの1周期の期間の始点(又は終点)のタイミングとが同一となる状態)からのずれ量を意味する。
【0016】
上記第1発明によれば、前記第1駆動電圧出力手段が出力するノコギリ波状の第1駆動電圧と、前記第2駆動電圧出力手段が出力するノコギリ波状(第1駆動電圧と逆位相の波形)の第2駆動電圧とは非同期の電圧信号であり、それらの間の相対的な位相差は、前記偶数番目の各圧電カンチレバーと前記奇数番目の各圧電カンチレバーとをそれぞれ前記第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、前記ミラー部及び可動部の前記第1揺動軸周りの揺動に関する機械的な固有振動数に依存して前記第1駆動電圧及び第2駆動電圧よりも高周波で発生する該ミラー部の機械的な高周波振動成分を抑制するようにあらかじめ定められた所定の位相差に設定されている。
【0017】
ここで、本願発明者が各種実験、検討を重ねた結果、前記第1圧電アクチュエータを構成する複数の圧電カンチレバーのうち、前記偶数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、所定周波数のノコギリ波状の第1駆動電圧を使用すると共に、前記奇数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、前記第1駆動電圧と同一周波数で、且つ、該第1駆動電圧と逆位相の波形のノコギリ波状の第2駆動電圧を使用した場合において、これらの第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の相対的な位相差を適切に設定しておくことによって、該ミラー部の機械的な高周波振動を抑制しつつ、該ミラー部の偏向角をノコギリ波状の波形パターンで変化させるように該ミラー部を揺動させることができることが判明した。
【0018】
そこで、第1発明では、前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の相対的な位相差を上記所定の位相差に設定するようにした。
【0019】
これにより、各圧電カンチレバーの圧電駆動用の駆動電圧として、ノコギリ波状の第1駆動電圧及び第2駆動電圧を使用しつつ、ミラー部を揺動駆動するための圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーをノコギリ波状の駆動電圧により圧電駆動しつつ、ミラー部の高周波振動の発生が抑制されるように該ミラー部の揺動を行なうことができる。
【0020】
前記第1発明では、より具体的には、前記第1駆動電圧と第2駆動電圧とのうち、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅がより長い方の駆動電圧を第A駆動電圧、該立ち上がり期間の時間幅がより短い方の駆動電圧を第B駆動電圧としたとき、前記所定の位相差は、第B駆動電圧の立ち上がり期間の始点が、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点よりも遅れたタイミングとなり、且つ、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の終点までの時間幅が前記高周波振動成分の半周期に一致するようにあらかじめ定められた位相差であることが好ましい(第2発明)。
【0021】
なお、第2発明において、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の終点までの時間幅が前記高周波振動成分の半周期に一致するというのは、当該時間幅が厳密に前記高周波振動成分の半周期に一致することだけを意味するものではなく、当該時間幅と、前記高周波振動成分の半周期とは、それらの差が十分に微小なものとなる所定の許容範囲内で略一致していればよい。
【0022】
上記第2発明によれば、前記第1駆動電圧を前記偶数番目の各圧電カンチレバーに付与することによって、前記固有振動数に応じて発生するミラー部の高周波振動と、前記第1駆動電圧を前記奇数番目の各圧電カンチレバーに付与することによって、前記固有振動数に応じて発生するミラー部の高周波振動とが相互に打ち消し合うような位相関係となる。
【0023】
このため、前記偶数番目の各圧電カンチレバーと前記奇数番目の各圧電カンチレバーとをそれぞれ前記第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、ミラー部の高周波振動が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0024】
上記第2発明では、前記第A駆動電圧は、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅と、電圧値が極大値から極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅との比率が9:1となる60Hz周波数のノコギリ波状の駆動電圧であると共に、前記第B駆動電圧は、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅と、電圧値が極大値から極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅との比率が1:9となる60Hz周波数のノコギリ波状の駆動電圧であることが好ましい(第3発明)。
【0025】
この第3発明によれば、画像表示装置における光の走査周波数として一般的に使用される60Hzの周波数でミラー部の第1揺動軸周りの揺動(偏向・走査)を行いつつ、その1周期の時間幅のうちの90%の期間で、ミラー部の偏向角(揺動量)を直線的に変化させることが可能となる。このため、1周期の時間幅の大分部を有効走査期間として活用することができる。
【0026】
また、上記第3発明では、前記高周波振動の周波数をfc、前記第1及第2駆動電圧の1周期分の位相差を360[deg]、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の始点までの位相差の大きさを|Φx|とし、ΦyをΦy≡60×(1/(2×fc))×360[deg]と定義したとき、前記所定の位相差は、|Φx|が|360/10−Φy|に一致するようにあらかじめ定められた位相差であることが好ましい(第4発明)。
【0027】
なお、第4発明において、|Φx|が|360/10−Φy|に一致するということは、|Φx|が厳密に|360/10−Φy|に等しくなることだけを意味するものではなく、|Φx|は、|360/10−Φy|との差が十分に微小なものとなる所定の許容範囲内で|360/10−Φy|に略一致していればよい。
【0028】
この第4発明によれば、上記のように|Φx|を|360/10−Φy|に一致させるようにすることによって、結果的に、前記第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の終点までの時間幅を前記高周波振動成分の半周期に一致させることができる。
【0029】
これにより、第2発明に関して説明した如く、前記第1駆動電圧を前記偶数番目の各圧電カンチレバーに付与することによって、前記固有振動数に応じて発生するミラー部の高周波振動と、前記第1駆動電圧を前記奇数番目の各圧電カンチレバーに付与することによって、前記固有振動数に応じて発生するミラー部の高周波振動とを、相互に打ち消し合うような位相関係にすることができる。ひいては、ミラー部の高周波振動が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0030】
また、前記第1〜第4発明では、前記第1駆動電圧の振幅値と前記第2駆動電圧の振幅値とは、前記第1圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーのうち、前記偶数番目の圧電カンチレバーのみを前記第1駆動電圧により圧電駆動した場合に発生する前記ミラー部の機械的な高周波振動成分の振幅値(以降、偶数側高周波振動成分の振幅値ということがある)と、前記奇数番目の圧電カンチレバーのみを前記第2駆動電圧により圧電駆動した場合に発生する前記ミラー部の機械的な高周波振動成分の振幅値(以降、奇数側高周波振動成分の振幅値ということがある)とが互いに一致するようにあらかじめ設定されていることが好ましい(第5発明)。
【0031】
なお、第5発明において、前記偶数側高周波振動成分の振幅値と、前記奇数側高周波振動成分の振幅値とが互いに一致するということは、それらの振幅値が厳密に一致することだけを意味するものではなく、それらの振幅値は、その差が十分に微小なものとなる所定の許容範囲内で略一致しておればよい。
【0032】
ここで、前記第1〜第4発明では、前記第1駆動電圧の振幅値(極小値と極大値との間の電圧差)と、前記2駆動電圧の振幅値(極小値と極大値との間の電圧差)とが一致していてもよい。ただし、前記偶数番目の圧電カンチレバーの圧電特性と、前記奇数番目の圧電カンチレバーの圧電特性との相違、あるいは、第1駆動電圧出力手段から前記偶数番目の圧電カンチレバーに至る配線抵抗と、第2駆動電圧出力手段から前記奇数番目の圧電カンチレバーに至る配線抵抗との相違等に起因して、前記偶数側高周波振動成分の振幅値と、前記奇数側高周波振動成分の振幅値とに差異が生じる場合がある。
【0033】
そして、このような場合には、前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差を前記した如く設定しただけでは、偶数側高周波振動成分と奇数側高周波振動成分とが十分に相殺しきれずに、比較的小さな振幅でのミラー部の高周波振動が発生する場合がある。
【0034】
そこで、第5発明では、前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差を前記した如く設定することに加えて、前記偶数側高周波振動成分の振幅値と、前記奇数側高周波振動成分の振幅値とが一致するように、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の振幅値を調整して設定する。
【0035】
これにより、第5発明によれば、ミラー部の高周波振動が発生するのを、より高い確実性で効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、以上説明した第1〜第5発明の光偏向器では、前記ミラー部は、前記可動部に対して固定されていてもよいが、該ミラー部を、可動部に対して、前記第1揺動軸と異なる方向の第2揺動軸(例えば第1揺動軸と直交する方向の第2揺動軸)の周りに揺動し得るように該可動部に搭載しておくと共に、該可動部に対してミラー部を第2揺動軸周りに揺動させる第2圧電アクチュエータをさらに備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態の光偏向器の構成を示す斜視図。
【図2】図1の光偏向器に備える圧電カンチレバー等の構造を模式的に示す断面図。
【図3】図1の光偏向器の圧電アクチュエータ10a,10bの作動を示す説明図。
【図4】図4(a)〜(c)は図1の光偏向器の圧電アクチュエータ10a,10bを圧電駆動するための第1駆動電圧及び第2駆動電圧と、ミラー部の偏向角の変化の波形とを例示するグラフ。
【図5】図1の光偏向器のミラー部の揺動に関する機械的な周波数特性を示すグラフ。
【図6】第1駆動電圧及び第2駆動電圧の周波数特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。
【0039】
図1に示すように、本実施形態の光偏向器A1は、入射された光を反射するミラー部1と、ミラー部1が搭載された可動部9と、ミラー部1を可動部9に対して揺動軸X1の周りに揺動させるための圧電アクチュエータ8a,8b,8c,8dと、ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動させるための圧電アクチュエータ10a,10bとを備えている。
【0040】
ミラー部1は、円板状のミラー部基体1aと、このミラー部基体1a上に光の反射面として形成された金属薄膜1bとを備え、ミラー部基体1aの直径方向の両端から外側へ向かって1対のトーションバー2a,2bが延設されている。そして、ミラー部1は、これらのトーションバー2a,2bを介して可動部9に連結されて、該可動部9に搭載されている。
【0041】
具体的には、可動部9は、方形枠状に形成されており、ミラー部1の周囲を囲むように設けられている。そして、ミラー部基体1aから延設されたトーションバー2a,2bのそれぞれの先端部が、可動部9の内周部に連結されている。これにより、ミラー部1は、トーションバー2a,2bを介して可動部9に連結されていると共に、トーションバー2a,2bの捩れによって、該トーションバー2a,2bの軸心たる揺動軸X1の周りに揺動可能となっている。
【0042】
ミラー部1を可動部9に対して揺動させる圧電アクチュエータ8a〜8dは、本実施形態では、2対備えられている。その一方の対の圧電アクチュエータ8a,8cは、可動部9の内側でトーションバー2aを挟んで対向するように配置され、他方の対の圧電アクチュエータ8b,8dは、可動部9の内側でトーションバー2a,2bを挟んで対向するように配置されている。
【0043】
以降、これらの圧電アクチュエータ8a〜8dを内側圧電アクチュエータ8a〜8dという。また、これらの内側圧電アクチュエータ8a〜8dを区別する必要が無いときは、それぞれを総称的に内側圧電アクチュエータ8という。
【0044】
各内側圧電アクチュエータ8は、圧電駆動によって屈曲変形するように構成された圧電カンチレバーにより構成されている。そして、一方の対の内側圧電アクチュエータ8a,8cは、トーションバー2aと直交する方向(揺動軸X1と直交する方向)に延在しており、それぞれの先端部がトーションバー2aに連結されると共に、それぞれの基端部が可動部9の内周部に連結されている。
【0045】
同様に、圧電アクチュエータ8b,8dは、トーションバー2bと直交する方向(揺動軸X1と直交する方向)に延在しており、それぞれの先端部がトーションバー2bに連結されると共に、それぞれの基端部が可動部9の内周部に連結されている。
【0046】
支持基体11は、方形枠状に形成されており、可動部9の周囲を囲むように設けられている。そして、ミラー部1及び可動部9を支持基体11に対して揺動させる一対の圧電アクチュエータ10a,10bが、支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で、可動部9を挟んで揺動軸X2の方向(揺動軸X1と直交する方向)に対向するようにして配置されており、これらの圧電アクチュエータ10a,10bを介して、可動部9が支持基体11に支持されている。
【0047】
以降、これらの圧電アクチュエータ10a,10bを外側圧電アクチュエータ10a,10bという。また、これらの外側圧電アクチュエータ10a,10bを区別する必要が無いときは、それぞれを総称的に外側圧電アクチュエータ10という。
【0048】
各外側圧電アクチュエータ10は、圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成された複数(図示例では4つ)の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)を連結して構成されている。この場合、各外側圧電アクチュエータ10を構成する複数の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)は、支持基体11の内周部と可動部9の外周部との間で、揺動軸X2と直交する方向(揺動軸X1と同方向)に延在して、該揺動軸X2の方向に間隔を存して並ぶように配置されていると共に、そのそれぞれの圧電カンチレバーが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結されている。従って、各外側圧電アクチュエータ10は、揺動軸X2と直交する方向を振幅方向として蛇行するようにして延在している。、
そして、各外側圧電アクチュエータ10の一端部(最も支持基体11寄りの圧電カンチレバー3(4)の基端部)が、支持基体11の内周部に連結されると共に、他端部(最も可動部9寄りの圧電カンチレバー3eの先端部)が、可動部9の外周部に連結されている。
【0049】
これにより、可動部9が、外側圧電アクチュエータ10a,10bを介して支持基体11に支持されていると共に、各外側圧電アクチュエータ10を構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)の屈曲変形によって支持基体11に対して揺動軸X2の周りに揺動可能となっている。
【0050】
以降の説明では、各外側圧電アクチュエータ10を構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)をそれぞれ、可動部9側から順番に1番目、2番目、3番目、4番目の圧電カンチレバーとし、圧電カンチレバー3(1),3(3)を奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)、圧電カンチレバー3(2),3(4)をそれぞれ偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)ということがある。
【0051】
なお、図示例の光偏向器A1では、各外側圧電アクチュエータ10を構成する圧電カンチレバー3(i)の個数は4個であるが、より多くの圧電カンチレバー3(i)により各外側圧電アクチュエータ10を構成するようにしてもよいことはもちろんである。
【0052】
内側圧電アクチュエータ8a〜8dのそれぞれと、外側圧電アクチュエータ10a,10bを構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)のそれぞれとは、図2に模式的な断面図で示すように、起歪体(カンチレバー本体)としての支持体4の層上に下部電極5、圧電体6及び上部電極7の層を積層した構造の圧電カンチレバーであり、下部電極5と上部電極7との間で圧電体6に駆動電圧を印加することで、圧電体6と共に支持体4が屈曲変形するようになっている。
【0053】
なお、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの隣合う圧電カンチレバー3(k),3(k+1)(k=1,2,3)の連結部は、その隣合う圧電カンチレバー3(k),3(k+1)のそれぞれの支持体4を一体に連結した部分となっており、その連結部には、圧電体6及び上部電極7の層(あるいは下部電極5、圧電体6及び上部電極7の層)は設けられていない。
【0054】
光偏向器A1は、内側圧電アクチュエータ8a,8bの上部電極7と下部電極5との間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12a及び下部電極パッド13aと、内側圧電アクチュエータ8c,8dの上部電極7と下部電極5との間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12b及び下部電極パッド13bとを支持基体11上に備えている。
【0055】
また、光偏向器A1は、外側圧電アクチュエータ10aの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)の上部電極7と下部電極5との間に駆動電圧を印加するための上部電極パッド12cと、外側圧電アクチュエータ10aの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の上部電極7と下部電極5との間に駆動電圧を印加するための上部電極パッド12eと、上部電極パッド12c,12eに対して共通の下部電極パッド13cと、外側圧電アクチュエータ10bの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)の上部電極7と下部電極5との間に駆動電圧を印加するための上部電極パッド12dと、外側圧電アクチュエータ10bの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の上部電極7と下部電極5との間に駆動電圧を印加するための上部電極パッド12fと、上部電極パッド12d,12fに対して共通の下部電極パッド13dとを支持基体11上に備えている。
【0056】
下部電極5と下部電極パッド13a〜13dとは、支持体4を構成する半導体基板(例えばシリコン基板)上の金属薄膜(本実施形態では2層の金属薄膜。以下、下部電極層ということがある)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば、1層目(下層)にはチタン(Ti)を用い、2層目(上層)には、白金(Pt)が用いられる。
【0057】
この場合、各内側圧電アクチュエータ8(圧電カンチレバー)の下部電極5は、該内側圧電アクチュエータ8の支持体4上のほぼ全面に形成され、各外側圧電アクチュエータ10の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)の下部電極5は、それぞれ、支持体4(直線部(各圧電カンチレバー3(i)が延在する部分)と連結部とを合わせた全体)上のほぼ全面に形成されている。そして、下部電極パッド13a〜13dは、支持基体11上及び可動部9上に形成された下部電極層を介して、それぞれ、内側圧電アクチュエータ8a,8bの下部電極5、内側圧電アクチュエータ8c,8dの下部電極5、外側圧電アクチュエータ10aの下部電極5、外側圧電アクチュエータ10bの下部電極に導通される。
【0058】
各内側圧電アクチュエータ8(圧電カンチレバー)及び各外側圧電アクチュエータ10の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)のそれぞれの圧電体6は、半導体プレーナプロセスを用いて、下部電極層上の1層の圧電膜(以下、圧電体層ということがある)を形状加工することにより、それぞれの圧電カンチレバーの下部電極5上に互いに分離して形成されている。この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。
【0059】
この場合、各内側圧電アクチュエータ8の圧電体6は、各内側圧電アクチュエータ8毎に、下部電極5上のほぼ全面に形成されている。また、各外側圧電アクチュエータ10a,10bの圧電体6は、各圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)の延在部分(直線部)において、下部電極5上のほぼ全面に形成されている。
【0060】
各上部電極7と、上部電極パッド12a〜12fと、これらを導通する上部電極配線(図示せず)は、半導体プレーナプロセスを用いて、圧電体層上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜。以下、上部電極層ということがある)を形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば白金(Pt)又は金(Au)が用いられる。
【0061】
この場合、内側圧電アククチュエータ8及び外側圧電アクチュエータ10のそれぞれの上部電極7は、各圧電カンチレバー毎に、圧電体6上のほぼ全面に形成されている。そして、上部電極パッド12a,12bは、それぞれ、内側圧電アクチュエータ8a,8bの上部電極7、内側圧電アクチュエータ8c,8dの上部電極7に、上部電極配線(図示せず)を介して導通される。また、上部電極パッド12c〜12fは、それぞれ、外側圧電アクチュエータ10aの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)の上部電極7、外側圧電アクチュエータ10bの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)の上部電極7、外側圧電アクチュエータ10aの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の上部電極7、外側圧電アクチュエータ10bの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の上部電極7に、上部電極配線(図示せず)を介して導通される。
【0062】
ミラー部1の反射面を構成する金属薄膜1bは、半導体プレーナプロセスを用いて、ミラー部基体1a上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜)を形状加工して形成されている。その金属薄膜の材料としては、例えばAu,Pt,銀(Ag),アルミニウム(Al)等が用いられる。
【0063】
また、ミラー部基体1aと、トーションバー2a,2bと、支持体4と、可動部9と、支持基体11とは、複数の層から構成される半導体基板(シリコン基板)を形状加工することにより一体的に形成されている。半導体基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。
【0064】
さらに、光偏向器A1は、ミラー部1の揺動(偏向・走査)を制御する制御回路20に接続されている。制御回路20は、CPU、プロセッサ等を含む電子回路ユニットであり、その機能として、内側圧電アクチュエータ8を圧電駆動するための駆動電圧を制御することで、ミラー部1の揺動軸X1周りでの揺動(偏向・走査)を行なわせる第1制御手段21と、外側圧電アクチュエータ10を圧電駆動するための駆動電圧を制御することで、ミラー部1の揺動軸X2周りでの揺動(偏向・走査)を行なわせる第2制御手段22とを備えている。
【0065】
補足すると、以上説明した光偏向器A1においては、外側圧電アクチュエータ10a,10bが本発明における第1圧電アクチュエータに相当し、揺動軸X2が本発明における第1揺動軸に相当する。また、制御回路20が、本発明における光偏向器の駆動装置に相当する。
【0066】
次に、本実施形態の光偏向器A1の作動を以下に説明する。
【0067】
光偏向器A1は、画像表示器等において使用され、ミラー部1に入射する光を、画像投影面等に対して偏向・走査する。
【0068】
この場合、内側圧電アクチュエータ8a〜8dを第1制御手段21により圧電駆動することで、ミラー部1の揺動X1周りの揺動が行なわれ、外側圧電アクチュエータ10a,10bを第2制御手段22により圧電駆動することで、ミラー部1の揺動軸X2周りの揺動が行なわれる。ミラー部1の揺動軸X1周りの揺動と、揺動軸X2周りの揺動とは、それぞれ、例えば水平方向の偏向・走査、垂直方向の偏向・走査のための揺動である。
【0069】
ミラー部1の揺動軸X1周りの揺動は、前記特許文献1に記載されているものと同様に行なわれる。すなわち、内側圧電アクチュエータ8a,8bのそれぞれの上部電極7と下部電極5との間に第1の電圧を印加すると共に、内側圧電アクチュエータ8c,8dのそれぞれ上部電極7と下部電極5との間に第2の電圧を印加する。この場合、第1の電圧と第2の電圧とは、互いに逆位相、あるいは位相のずれた所定周波数の交流電圧(例えば正弦波)とされる。
【0070】
これにより、一方の対の内側圧電アクチュエータ8a,8cが、互いに逆方向に屈曲変形するように圧電駆動されると共に、他方の対の内側圧電アクチュエータ8b,8dも、互いに逆方向に屈曲変形するように圧電駆動される。これらの屈曲変形により、トーションバー2a,2bの捩れ変形が発生する。ひいては、ミラー部1は、揺動軸X1周りに揺動する。これにより、揺動軸X1周りでの光の偏向・走査が行なわれる。
【0071】
一方、ミラー部1の揺動軸X2周りの揺動は、本実施形態では、次のように行なわれる。
【0072】
本実施形態では、外側圧電アクチュエータ10a,10bを圧電駆動する第2制御手段22は、その機能として、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するためのノコギリ波状の第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段22aと、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するためのノコギリ波状の第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段22bとを備えている。
【0073】
そして、第2制御手段22は、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)のそれぞれの下部電極5と上部電極7と間に、第1駆動電圧を印加することで、各圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動して屈曲変形させる。同時に、第2制御手段22は、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)のそれぞれの下部電極5と上部電極7と間に、第2駆動電圧を印加することで、各圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動して屈曲変形させる。
【0074】
上記第1駆動電圧は、例えば図4(a)に実線a1で示すようなノコギリ波状の波形の駆動電圧である。より詳しくは、第1駆動電圧の周波数は、例えば60Hzである。そして、この第1駆動電圧は、その電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をT1a、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をT1bとしたとき、本実施形態では、T1a:T1b=9:1となるようにT1a,T1bの比率があらかじめ設定されている。
【0075】
また、第2駆動電圧は、例えば図4(a)に破線a2で示すようなノコギリ波状の波形の駆動電圧である。より詳しくは、第2駆動電圧の周波数は、第1駆動電圧と同じ(60Hz)とされている一方、第2駆動電圧の波形は、第1駆動電圧の波形の逆位相の波形とされている。すなわち、第2駆動電圧は、その電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をT2a、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をT2bとしたとき、T2a:T2b=1:9となるようにT2a,T2bの比率があらかじめ設定されている。換言すれば、T2a,T2bの比率は、第1駆動電圧のT1a,T1bの比率と逆の比率になるように設定されている。
【0076】
外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を上記のような第1駆動電圧により圧電駆動した場合には、基本的には、該第1駆動電圧の電圧値の立ち上がり期間において、圧電カンチレバー3(4)の先端部(可動部9との連結部分)と、圧電カンチレバー3(2)の先端部(圧電カンチレバー3(3)との連結部分)とが、図3に例示する如く、それぞれの圧電カンチレバー3(4),3(2)の基端部に対して同じ向き(図示例では上向き)に変位するように、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)が屈曲変形する。
【0077】
また、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を上記のような第2駆動電圧により圧電駆動した場合には、基本的には、該第2駆動電圧の電圧値の立ち下がり期間において、圧電カンチレバー3(3)の先端部(圧電カンチレバー3(4)との連結部分)と、圧電カンチレバー3(1)の先端部(圧電カンチレバー3(2)との連結部分)とが、図3に例示する如く、それぞれの圧電カンチレバー3(3),3(1)の基端部に対して、圧電カンチレバー3(偶数)の場合と逆向き(図示例では下向き)に変位するように、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)が屈曲変形する。
【0078】
この場合、本実施形態では、第2駆動電圧は、第1駆動電圧に対して非同期の電圧信号とされ、第2駆動電圧の立ち上がり期間の始点のタイミングが、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点よりも多少遅れたタイミングとなるように、第1駆動電圧と第2駆動電圧との位相差が設定されている。
【0079】
なお、第2駆動電圧が第1駆動電圧に対して非同期であるということは、第2駆動電圧の電圧値が極小値となるタイミングが、第1駆動電圧の電圧値が極大値となるタイミングと一致しない(すなわち、第2駆動電圧の立ち下がり期間の始点(又は終点)が、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点(又は終点)と一致しない)ことを意味する。
【0080】
ここで、第1駆動電圧と第2駆動電圧との位相差の設定指針を以下に説明する。
【0081】
光偏向器A1の外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)だけを第1駆動電圧により圧電駆動した場合には、ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)は、例えば、図4(b)に実線b1で示すように、第1駆動電圧よりも高周波の機械的な振動成分がノコギリ波状の波形に重畳されたような形の波形となる。
【0082】
このようにミラー部1の偏向角に含まれることとなる高周波振動成分は、第1駆動電圧の高調波成分(第1駆動電圧の周波数の整数倍の周波数の成分)のうち、光偏向器A1のミラー部1の揺動軸X2周りの揺動に関する固有振動数(詳しくは、外側圧電アクチュエータ10a,10b、可動部9、トーションバー2a,2bにより構成される機構の固有振動数。以降、ミラー部揺動固有振動数という)に一致もしくは近い周波数となる低次側の高調波成分によって引き起こされる共振現象に起因するものである。
【0083】
具体的には、本実施形態では、ミラー部1を揺動軸X2周りに揺動させる機構の機械的な振動の周波数特性は、例えば図5に示すような周波数特性となり、205Hz程度の周波数が、比較的大きなゲインを有するミラー部揺動固有振動数となることが実験的に確認された。なお、図5の縦軸のゲインは、横軸の各周波数に対するミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角の振幅の大きさに相当するものである。また、図5の周波数特性を有する本実施形態の例では、各外側圧電アクチュエータ10a,10bの厚さ、全長、幅は、それぞれ30μm、35mm、0.2mmであり、そのバネ定数は、5.0×10-3N/m2である。
【0084】
そして、60Hzの第1駆動電圧の周波数特性(スペクトル分布特性)は、図6のグラフで示すような周波数特性となり、205Hzに比較的近い高調波成分として、180Hzの周波数成分を有する。
【0085】
このため、光偏向器A1の外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)だけを第1駆動電圧により圧電駆動した場合に、図4(b)に実線b1で示した如く、205Hz程度の高周波振動成分がミラー部1の偏向角の波形に含まれることが確認された。
【0086】
また、光偏向器A1の外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)だけを第2駆動電圧により圧電駆動した場合には、ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)は、例えば、図4(b)に破線b2で示す如く、実線b1の場合と同様に、ミラー部揺動固有振動数の周波数を有する高周波振動成分がノコギリ波状の波形に重畳されたような形の波形となる。
【0087】
このように、光偏向器A1の外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)又は奇数番目の圧電アクチュエータ3(奇数)だけをそれぞれノコギリ波状の第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した場合には、ミラー部1の偏向角の波形には、一般に、ミラー部揺動固有振動数の周波数を有する高周波振動成分が含まれることとなる。
【0088】
そして、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動する第1駆動電圧と、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動する第2駆動電圧とを同期させた状態で、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)と奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)との両方を圧電駆動した場合には、それぞれの駆動電圧に対応するミラー部1の偏向角の高周波振動成分も同期することとなり、ひいては、ミラー部1の偏向角の高周波振動が発生することとなる。
【0089】
そこで、本実施形態では、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を第1駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分と、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を第2駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分とが互いに打ち消し合うように、第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差を設定するようにした。
【0090】
この場合、本実施形態では、第2駆動電圧の立ち上がり期間の始点のタイミングが、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点のタイミングよりも遅れたタイミングとなると共に、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第2駆動電圧の立ち上がり期間の始点までの位相差の大きさ|Φx|が、次式(1a)により定義されるΦyから式(1)より算出される|Φx_base|[deg]に一致もしくはほぼ一致するように、第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差をあらかじめ設定した。
【0091】

|Φx_base|≡|360/10−Φy| ……(1)
ただし、Φy[deg]≡60×(1/(2×fc))×360 ……(1a)

なお、fcは前記ミラー部揺動固有振動数に応じて発生するミラー部1の偏向角の高周波振動成分の周波数である。また、前記第1及第2駆動電圧の1周期分(1/60[sec])の位相差を360[deg]としている。
【0092】
ここで、式(1a)により与えられるΦyは、ミラー部1の偏向角の高周波振動成分の半周期分の位相差に相当している。このため、|Φx|が、|Φx_base|[deg]にほぼ一致するように第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差を設定しておくことによって、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第2駆動電圧の立ち上がり期間の終点までの時間幅が前記高周波振動成分の半周期に一致することとなる。
【0093】
ひいては、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を第1駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分と、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を第2駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分とが互いに打ち消し合うような位相関係になる。その結果、ミラー部1の偏向角の高周波振動を抑制できることとなる。
【0094】
そこで、本実施形態では、第1駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第2駆動電圧の立ち上がり期間の始点までの位相差の大きさ|Φx|を、式(1)より算出される|Φx_base|[deg]に一致もしくはほぼ一致させるようにした。
【0095】
具体的には、本実施系形態では、fc=205Hzであるので、Φy=52.7[deg]、|Φx_base|≒17[deg]である。なお、fcは、実験的に特定した周波数(ミラー部揺動固有振動数の観測値)である。そして、本実施形態では、fcの値の誤差等を考慮し、17±3[deg]の範囲内で|Φx|を設定し、例えば|Φx|を14[deg]とした。このような|Φx|の値の設定は、例えば次のように行なわる。
【0096】
すなわち、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)と奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)とをそれぞれ第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、ミラー部1の偏向角の波形(又は該波形から抽出した高周波振動成分)を観測しつつ、|Φx|を|Φx_base|の近辺で増減させる。そして、ミラー部1の偏向角の波形に含まれる高周波振動成分の大きさがほぼ最小となるような|Φx|の値を特定する。これにより、ミラー部1の偏向角の高周波振動を極力抑制し得るように、|Φx|の値が設定されることとなる。
【0097】
補足すると、各外側圧電アクチュエータ10は、分布定数系のカンチレバーの連結体とみなすことができるので、レイリーの方式を利用して、弾性エネルギーの最大値と運動エネルギーの最大値とが等価であると考えることによって、共振現象によるミラー部1の高周波振動成分の周波数fcを近似的に算出する演算式を構築することができる。その演算式は、各外側圧電アクチュエータ10を構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)のそれぞの厚さ、長さ、本数、密度、ヤング率をそれぞれ、t、L、n、ρ、Eとした場合、次式(2)により表される。
【0098】
【数1】

従って、前記式(1a)によりΦyを算出するために使用するfcの値を、上記式(2)により算出するようにしてもよい。
【0099】
ところで、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を第1駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分と、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を第2駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分とは、第1駆動電圧の振幅値(極大値と極小値との差)と第2駆動電圧の振幅値とが同一であっても、一般には、同じ大きさ(振幅)を有する高周波振動成分とならない。なお、高周波振動成分の大きさというのは、より詳しくは、ミラー部1の偏向角の波形のうちの高周波振動成分のみの振幅値を意味する。
【0100】
このように偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を第1駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分の大きさと、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を第2駆動電圧により圧電駆動した場合のミラー部1の偏向角の高周波振動成分の大きさとが互いに同じ大きさにならないのは、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の振動特性と奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)の振動特性との相違、あるいは、第1駆動電圧出力手段22aから偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)に至る配線抵抗と第2駆動電圧出力手段22bから奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)に至る配線抵抗との相違等に起因するものと考えられる。
【0101】
そこで、本実施形態では、ミラー部1の偏向角の高周波振動の発生を最大限に抑制し得るようにするために、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の間の位相差を前記した如く設定することに加えて、さらに、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の相対的な振幅値の調整を行なうようにした。
【0102】
この調整は例えば次のように行なわれる。すなわち、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)と奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)とをそれぞれ第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、ミラー部1の偏向角の波形を観測し、この波形から高周波振動成分を抽出する。この抽出は、例えば、ミラー部1の偏向角の波形を微分したり、該波形からノコギリ波の波形成分を差し引くことによって行なわれる。なお、この場合、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の間の位相差は、事前に前記した如く設定しておく。
【0103】
そして、上記のように抽出される高周波振動成分の振幅値が所定の閾値よりも小さくなるように、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の一方、例えば第2駆動電圧の振幅値を増減させる。これにより、高周波振動成分の大きさが極力小さくなるように、第1駆動電圧に対する第2駆動電圧の相対的な振幅値が調整される。なお、第2駆動電圧の振幅値を一定として第1駆動電圧の振幅値を調整したり、あるいは、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の両方の振幅値を調整するようにしてもよい。
【0104】
本実施形態では、以上説明した如く、第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差と、第1駆動電圧と第2駆動電圧との相対的な振幅値が設定されている。
【0105】
そして、制御回路20の第2制御手段22は、上記の如く位相差及び振幅値が設定された第1駆動電圧及び第2駆動電圧のうちの第1駆動電圧を、第1駆動電圧出力手段22aから外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの偶数番目の各圧電カンチレバー3(偶数)の上部電極7と下部電極5との間に印加することで、圧電カンチレバー3(偶数)のそれぞれを圧電駆動すると共に、第2駆動電圧を外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれの奇数番目の各圧電カンチレバー3(奇数)の上部電極7と下部電極5との間に印加することで、圧電カンチレバー3(奇数)のそれぞれを圧電駆動する。
【0106】
これにより、図3に例示した如く、各外側圧電アクチュエータ10の圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)が屈曲変形して、ミラー部1が揺動軸X2の周りに揺動する。このとき、外側圧電アクチュエータ10a,10bのそれぞれにおいて、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の基端部に対する先端部の屈曲方向と、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)の基端部に対する先端部の屈曲方向とが逆向きになることで、ミラー部1を、比較的大きな偏向角(揺動量)の振幅で、揺動軸X2周りに揺動させることができる。
【0107】
そして、この場合、第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の位相差と、第1駆動電圧と第2駆動電圧との相対的な振幅値が前記した如く設定されているので、ミラー部1の揺動軸X2周りの偏向角(揺動量)は、図4(c)に実線cで例示する如く、ミラー部揺動固有振動数に応じた高周波振動成分をほとんど含むことなく、ほぼノコギリ波状の波形で変化する。従って、ミラー部1の高周波振動を発生させることなく、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のノコギリ波状の波形に追従させるようにして、該ミラー部1の偏向・走査を行なうことができる。
【0108】
さらに、本実施形態では、各外側圧電アクチュエータ10の偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するための第1駆動電圧を、立ち上がり期間の時間幅T1aと立ち下がり期間の時間幅T1bの比率が9:1のノコギリ波状の駆動電圧(以下、9:1ノコギリ波駆動電圧という)とし、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するための第2駆動電圧を、立ち上がり期間の時間幅T2aと立ち下がり期間の時間幅T2bの比率が1:9のノコギリ波状の駆動電圧(以下、1:9ノコギリ波駆動電圧という)としたので、第1及び第2の駆動電圧の1周期の90%の時間幅の期間でミラー部1の偏向角を直線的に変化させることができる。換言すれば、第1及び第2の駆動電圧の1周期のうちの大部分の時間幅を有効走査期間として活用できる。
【0109】
従って、本実施形態の光偏向器A1を例えば画像表示装置に使用した場合、高品質の精細な画像表示を実現できることとなる。
【0110】
なお、以上説明した実施形態では、各外側圧電アクチュエータ10の偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)を圧電駆動するための第1駆動電圧を、9:1ノコギリ波駆動電圧、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)を圧電駆動するための第2駆動電圧を、1:9ノコギリ波駆動電圧としたが、第1駆動電圧及び第2駆動電圧を、前記実施形態と逆に、それぞれ、1:9ノコギリ波駆動電圧、9:1ノコギリ波駆動電圧としてもよい。
【0111】
また、第1駆動電圧の立ち上がり期間の時間幅T1aと立ち下がり期間の時間幅T1bとの比率は、9:1(又は1:9)でなくてもよく、例えば、8:2(又は2:8)、10:1(又は1:10)等であってもよい。このことは、第2駆動電圧においても同様である。
【0112】
ただし、第1及び第2駆動電圧の1周期の時間幅内(全走査期間内)において、ミラー部1の偏向角を直線的に変化させ得る有効走査期間をできるだけ長くするために、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のそれぞれの立ち上がり期間の時間幅と立ち下がり期間の時間幅とのうちの一方の時間幅は、他方の時間幅に比して十分に長いことが望ましい。
【0113】
また、前記実施形態では、外側圧電アクチュエータ10a,10bを構成する圧電カンチレバー3(i)(i=1,2,3,4)の番数を、可動部9側から数えた番数として説明したが、支持基体9側から数えた番数であってもよい。このようにした場合には、偶数番目の圧電カンチレバー3(偶数)と、奇数番目の圧電カンチレバー3(奇数)とが前記実施形態と逆になる。
【0114】
また、本発明の光偏向器は、画像表示装置に限らず、光スキャナ等の光偏向器として使用することもできる。
【符号の説明】
【0115】
A1…光偏向器、10a,10b…圧電アクチュエータ(第1圧電アクチュエータ)、3(1)〜3(4)…圧電カンチレバー、20…制御回路(駆動装置)、22a…第1駆動電圧出力手段、22b…第2駆動電圧出力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有するミラー部と、該ミラー部が搭載された可動部を支持基体に対して第1揺動軸周りに揺動させるアクチュエータとして該可動部に一端が連結されると共に該支持基体に他端が連結された第1圧電アクチュエータを備えており、該第1圧電アクチュエータが、圧電駆動によって屈曲変形するようにそれぞれ構成されると共に前記第1揺動軸の方向に並ぶように配置された複数の圧電カンチレバーを、そのそれぞれが隣合う圧電カンチレバーに対して折り返されるように連結することにより構成された光偏向器の駆動装置であって、
前記第1圧電アクチュエータを構成する複数の圧電カンチレバーのうち、該第1圧電アクチュエータの一端及び他端のいずれか一方側から偶数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、所定周波数のノコギリ波状の第1駆動電圧を出力する第1駆動電圧出力手段と、該一方側から奇数番目の各圧電カンチレバーを圧電駆動するための駆動電圧として、前記第1駆動電圧と同一周波数で、且つ、該第1駆動電圧と逆位相の波形のノコギリ波状の第2駆動電圧を出力する第2駆動電圧出力手段とを備え、
前記第1駆動電圧と第2駆動電圧との間の相対的な位相差が、前記偶数番目の各圧電カンチレバーと前記奇数番目の各圧電カンチレバーとをそれぞれ前記第1駆動電圧、第2駆動電圧により圧電駆動した状態で、前記ミラー部及び可動部の前記第1揺動軸周りの揺動に関する機械的な固有振動数に依存して前記第1駆動電圧及び第2駆動電圧よりも高周波で発生する該ミラー部の機械的な高周波振動成分を抑制するようにあらかじめ定められた所定の位相差に設定されていることを特徴とする光偏向器の駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の光偏向器の駆動装置において、
前記第1駆動電圧と第2駆動電圧とのうち、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅がより長い方の駆動電圧を第A駆動電圧、該立ち上がり期間の時間幅がより短い方の駆動電圧を第B駆動電圧としたとき、前記所定の位相差は、第B駆動電圧の立ち上がり期間の始点が、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点よりも遅れたタイミングとなり、且つ、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の終点までの時間幅が前記高周波振動成分の半周期に一致するようにあらかじめ定められた位相差であることを特徴とする光偏向器の駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の光偏向器の駆動装置において、
前記第A駆動電圧は、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅と、電圧値が極大値から極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅との比率が9:1となる60Hz周波数のノコギリ波状の駆動電圧であると共に、前記第B駆動電圧は、電圧値が極小値から極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅と、電圧値が極大値から極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅との比率が1:9となる60Hz周波数のノコギリ波状の駆動電圧であることを特徴とする光偏向器の駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の光偏向器の駆動装置において、
前記高周波振動の周波数をfc、前記第1及第2駆動電圧の1周期分の位相差を360[deg]、第A駆動電圧の立ち上がり期間の始点から第B駆動電圧の立ち上がり期間の始点までの位相差の大きさを|Φx|とし、ΦyをΦy≡60×(1/(2×fc))×360[deg]と定義したとき、前記所定の位相差は、|Φx|が|360/10−Φy|に一致するようにあらかじめ定められた位相差であることを特徴とする光偏向器の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光偏向器の駆動装置において、
前記第1駆動電圧の振幅値と前記第2駆動電圧の振幅値とは、前記第1圧電アクチュエータを構成する圧電カンチレバーのうち、前記偶数番目の圧電カンチレバーのみを前記第1駆動電圧により圧電駆動した場合に発生する前記ミラー部の機械的な高周波振動成分の振幅値と、前記奇数番目の圧電カンチレバーのみを前記第2駆動電圧により圧電駆動した場合に発生する前記ミラー部の機械的な高周波振動成分の振幅値とが互いに一致するようにあらかじめ設定されていることを特徴とする光偏向器の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185314(P2012−185314A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48188(P2011−48188)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】