説明

光半導体封止用樹脂組成物及びこれを用いた光半導体装置

【課題】 光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ発光素子及びフレーム等との接着性に優れ、しかも硬度が高く、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れた光半導体封止用樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供すること
【解決手段】
(A)一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒、
(C)ポリオルガノシルセスキオキサン、
を含有することを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れた光半導体封止用樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット、液晶ディスプレイ用バックライト等に実用化されている発光ダイオード(以下「LED」と略す)等の光半導体発光装置は、大部分が封止樹脂よって製造されている。これに使用されている封止用の樹脂は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物や熱硬化性シリコン樹脂組成物が使用されている。
【0003】
今日のLEDの飛躍的な進歩により、LEDの高出力化および短波長化が急速に現実のものとなり始めていて、特に窒化物半導体を用いた高出力な発光が可能となっている。一例を挙げると、発光ピーク波長が350〜490nmの紫外〜青色光の励起エネルギーの高いLEDと蛍光体を組み合わせ、次世代の照明用途をターゲットとした研究や開発がなされている。
【0004】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物としては、一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を用いて得られるものが用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
しかし、かかる透明エポキシ樹脂組成物においても、LEDの高輝度・短波長化に対応した耐熱性や耐光性が十分でなく、経時的に劣化し、基本性能である光透過性が顕著に低下するという問題があった。
【0006】
そのため、耐熱性及び耐光性が優れる、熱硬化性シリコン樹脂組成物が提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0007】
しかし、これらの熱硬化性シリコン樹脂組成物は、発光素子およびフレーム等との接着性が低く、また、その硬化物は硬度が低いために、耐擦傷性が十分でなく、砲弾型LEDやトップビュータイプの表面実装型LEDには適さず、サイドビュー等の一部の表面実装型LEDにしか適用できないという問題があった。
【0008】
また更に、発光素子に使用されるSiC、GaAs、GaP、GaAsP、GaAlAs、InAlGaP、InGaN、GaN等の各種化合物半導体は光学結晶の屈折率が高いため、封止樹脂の屈折率がジメチル系シロキサンのように低い場合、封止樹脂と光学結晶との界面で反射して発光効率が低下する欠点があった。
【0009】
このため、発光効率を高めるため、反射防止膜をつけるなどの手法が提案されている(特許文献5)。しかし、反射防止膜を作製するためには工程が増え、コスト高になってしまう。
【0010】
更に最近に至り、(a)一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン、(b)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒に、特定の単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサンを所定量配合されてなるシリコーンゴム組成物が知られるに至った(特許文献6)。しかし、本発明の目的とする課題、すなわち耐衝撃性および耐擦傷性、発光素子及びフレーム等との接着性等において、なお充分とは言えない。
【0011】
【特許文献1】特許第3241338号公報
【特許文献2】特開平7−25987号公報
【特許文献3】特開2002−327126号公報
【特許文献4】特開2002−338833号公報
【特許文献5】特開2001−217467号公報
【特許文献6】特開2005−42099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、このような事情を鑑みなされたもので、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ発光素子及びフレーム等との接着性に優れ、しかも硬度が高く、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れた光半導体封止用樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、
(A)一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒、
(C)ポリオルガノシルセスキオキサン、
を含有することを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物である(請求項1)。
また、本発明は、上記において、特に
(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、下記式〔1〕及び式〔2〕
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

で表される繰り返し単位、ならびに下記式〔3〕
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R1、R及びRは同じか又は異なる非置換基もしくは置換一価炭化水素基であり、R、R及びRは水素原子およびアルキル基を示す。)
で表される末端基を有するポリオルガノシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項1に記載の光半導体封止用樹脂組成物である(請求項2)。
【0018】
また本発明は、(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、平均粒子径が100nm以下の微粒子状高分子量体のポリオルガノシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の光半導体封止用樹脂組成物である(請求項3)。
【0019】
更に本発明は、(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、(A)及び/又は(B)成分に分散してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の光半導体封止用樹脂組成物である(請求項4)。
【0020】
また(C)成分は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量に対して5〜90重量%の量で配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の光半導体封止用樹脂組成物である(請求項5)。
【0021】
更にまた本発明は、請求項1乃至請求項5記載の光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなることを特徴とする光半導体装置である(請求項6)。
【0022】
本発明の特徴は、(A)成分及び(B)成分に対して特定のポリオルガノシルセスキオキサン(C)成分を所定量配合することにより、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ発光素子及びフレーム等との接着性に優れ、しかも硬度が高く、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れた光半導体封止剤用樹脂組成物が得られることを見出した点にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ発光素子及びフレーム等との接着性に優れ、しかも硬度が高く、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れた光半導体封止用樹脂組成物を提供すること及び該樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することができる。
なおまた、本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、以下のような種々の用途に好ましく用いられ、または用いられることが期待される。
(1)LEDの封止
(2)有機EL、無機EL、レーザーダイオード等の封止(又はコート剤、周辺部材等)、
(3)その他、DVDやメガネ等のコート剤、光導波路、光ファィバー、接着剤等の光通信関連部材、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の汎用樹脂の改質、層間絶縁膜、光硬化(造型)材料 等々
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(A)ポリオルガノシロキサン
(A)成分のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、特許文献7に記載されている一分子中に2個以上のビニル基、アリル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有するものが使用することができる。つまり、(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒と付加重合反応を行い硬化体を形成するものであれば、特に限定されるものではなく、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目構造のいずれであってもよい。
【0025】
ここで、ポリオルガノシロキサンの有機官能基としては、一価炭化水素基では、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0026】
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒
(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、上記のポリオルガノシロキサンの脂肪族不飽和結合とケイ素原子に結合した水素原子とが付加重合反応することにより硬化体を形成するものであり、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目構造のいずれであってもよい。
【0027】
具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0028】
また白金族金属系触媒としては、本発明の組成物の付加重合反応を生じさせるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがあるが、コスト等の見地から白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・mH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・mH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・mH2O,PtO2・mH2O(mは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができ、これらは単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。これらの触媒成分の配合量は、いわゆる触媒量でよく、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して白金族金属換算(重量)で0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜200ppmの範囲で使用される。
【0029】
ここで、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの有機官能基としては、一価炭化水素基では、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0030】
なお、本発明に用いられる(A)成分及び(B)成分としては、具体的には、例えば熱硬化性シリコン封止剤として信越化学工業株式会社から、商品名:LPS−7520、LPS−7530、東レ・ダウコーニング株式会社から、商品名:EG6301、SR7010として、2液性の形態で商品化されており、本発明に用いることができる。
【0031】
(C)ポリオルガノシルセスキオキサン
本発明に(C)成分として用いられるポリオルガノシルセスキオキサンは、中でも下記式〔1〕及び式〔2〕
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

で表される繰り返し単位、ならびに下記式〔3〕
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、R1、R及びRは同じか又は異なる非置換基もしくは置換一価炭化水素基であり、R、R及びRは水素原子およびアルキル基を示す。)
で表される末端基を有するポリオルガノシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0036】
ここで、ポリオルガノシルセスキオキサンの有機官能基としては以下のようなものが例示される。すなわち、R1、RおよびRの一価炭化水素基としては、炭素数1〜20、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、アダマンチル機等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、エポキシ基、アクリロキシ基、アミノ基等の反応性官能基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基や3−アミノプロピル基等が挙げられる。
【0037】
また、R、RおよびRのアルキル基としては、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0038】
なお、本発明に用いられる(C)成分であるポリオルガノシルセスキオキサンとしては、具体的には、例えばラダー型のポリオルガノシルセスキオキサンのオリゴマーとして昭和電工株式会社から、ポリフェニルシルセスキオキサン(商品名:GR950)、ポリメチルシルセスキオキサン(商品名:GR650)、ポリメチルフェニルシルセスキオキサン(商品名:GR100)等が商品化されており、(A)及び/又は(B)成分に相溶させて本発明に用いることができる。
【0039】
また、上記の様なオリゴマーのポリオルガノシルセスキオキサンではなく、平均粒子径が100nm以下の微粒子状高分子量体のポリオルガノシルセスキオキサンを(A)及び/又は(B)成分に分散させて本発明に用いることができる。なお、平均粒子径としては、光透過性の面で50nm以下が好ましく、更に好ましくは20nm以下が用いられる。
【0040】
上記(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンは、特に光半導体装置の耐衝撃性および耐擦傷性を改善するために配合されるものであり、(A)成分、(B)及び(C)成分の合計量当り、5〜90重量%の量で配合される。好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜60重量%配合される。(C)成分の配合量が少なすぎると、上記効果が十分達成されず、多すぎると、組成物の粘度が著しく高くなったり、硬化物にクラックが発生し易くなるなどの不利が生ずる。
【0041】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物には、その他任意の成分として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトタメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して0.0001〜5重量部の範囲であることが好ましい。
【0042】
また、本発明の光半導体封止用樹脂組成物には、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有していてもよい。この接着付与剤としては、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基であるシランカップリング剤が好ましく、(A)、(B)及び(C)成分と反応し得る基を有するものであってもよいし、これらの官能基を有するオルガノシロキサンオリゴマーであってもよい。また、上記組成物において、この接着付与剤の含有量は限定されないが、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の光半導体封止用樹脂組成物には、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG)等の蛍光体を含有してもよい。この蛍光体の含有量は限定されないが、本発明の光半導体封止用樹脂組成物の1〜20重量%の範囲内であることが好ましく、特に、5〜15重量%の範囲内であることが好ましい。また、本発明の光半導体封止用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤、ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末、耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0044】
なお、本発明の光半導体用封止樹脂組成物の硬化条件は、室温(25℃)〜200℃の範囲で、その作業条件に合わせて任意に時間を設定でき、生産性と発光素子や筐体耐熱性とのバランスから適宜選定することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を更に具体的詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例1〜4、比較例1]
(A)、(B)及び(C)成分を下表1に示す割合で配合し(配合数値の単位は重量部である。)、光半導体用封止樹脂組成物を得た。ついで、光半導体用封止樹脂組成物をディスペンサーにセットし、アルミ板(20mm×50mm×1mm)に10mg±10%×10点をポッティング、及びφ50mm×1mmの金型に注型し、同表に示す硬化条件で硬化させ、評価用テストピースを得た。
【0047】
【表1】

【0048】
*1:EG6301A=ポリオルガノシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製)
*2:EG6301B=ポリオルガノハイドロジェンシロキサン+白金族金属系触媒(東レ・ダウコーニング株式会社製)
*3:GR950=ポリフェニルシルセスキオキサン(昭和電工株式会社製)
【0049】
このようにして得られた実施例および比較例の硬化物について、下記の方法で接着性、耐擦傷性、硬化直後の光透過性、耐熱性、耐光性および屈折率を評価した。また、その結果を表2に示す。
【0050】
[接着性および耐擦傷性]
アルミ板状で作製した硬化物の表面を爪で10回こすりつけて、接着性および表面の傷つき度合いを評価した。爪を10回こすりつけた後に、アルミ板から硬化物が外れない場合:接着性○、アルミ板から1〜3個外れた場合:接着性△、アルミ板から4個以上外れた場合:接着性×と評価した。また、爪を10回こすりつけた後に、傷がない場合:耐擦傷性○、爪を2〜10回こすりつけた後に、傷がある場合:耐擦傷性△、爪を1回こすりつけた後に傷がある場合:耐擦傷性×と評価した。
【0051】
[硬化直後の光透過性]
上記の方法で得られた硬化物を分光光度計(日立製:U−2001)にセットし、350nm、400nm、800nmの波長における透過率(%)を測定・評価した。
[耐熱性]
上記の方法で得られた硬化物を150℃のギヤオーブンに72時間放置した後、上記と同様の方法で透過率を測定・評価した。
【0052】
[耐光性]
上記の方法で得られた硬化物を26W/m(300〜400nm)の照度、温度50℃の促進耐光試験機(スガ試験機製:サンテスターXT750)に100時間放置した後、上記と同様の方法で透過率を測定・評価した。
【0053】
なお、下表の表2中の硬化物の耐熱性および耐光性における評価基準は、硬化直後の透過率の95%以上を維持しているものを「◎」、95未満〜90%以上のものを「○」、90%未満〜80%以上のものを「△」、80%未満のものを「×」と示した。
【0054】
[屈折率]
上記の割合で混合した混合液を屈折計(京都電子工業社製:RA−500N)にセットし、25℃における屈折率を測定・評価した。
【0055】
【表2】

【0056】
[実施例5]
[合成例]
ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液の合成法(蒸留による有機溶媒置換)
蒸留水888.9gに1Nアンモニア水11.1g、硫酸ドデシルナトリウム13.5gを加えた混合液に、メチルトリメトキシシラン100gを25℃で135分かけて滴下した後、同温度で攪拌を16時間行い、1N硫酸水溶液でpH7に調整することで、透明なポリメチルシルセスキオキサン微粒子水分散液1013.5gを得た。この水分散液を1N硫酸水溶液でpH7に調整した後、蒸留対象液中の水分が5%以下となるまでメチルエチルケトン2000gを滴下しつつ減圧蒸留を行うことによって、メチルエチルケトンのポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液257gを得た。得られたポリメチルシルセスキオキサンの平均粒子径を動的光散乱法により測定した結果、18.4nmであった。また、分散液中のポリメチルシルセスキオキサンの固形分濃度を110℃における重量減少より計算した結果、20.0%であった。
【0057】
(A)成分である東レ・ダウコーニング株式会社製のポリオルガノシロキサン(EG6301A)40gに上記で得られたポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液100gを加え、減圧下にメチルエチルケトンを回収し、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を分散した(A)成分を得た。
【0058】
このようにして得られた(A)成分及び(B)成分を下表3に示す割合で配合し(配合数値の単位は重量部である。)、光半導体用封止樹脂組成物を得た。ついで、光半導体用封止樹脂組成物をディスペンサーにセットし、アルミ板(20mm×50mm×1mm)に10mg±10%×10点をポッティング、及びφ50mm×1mmの金型に注型し、同表に示す硬化条件で硬化させ、評価用テストピースを得た。
【0059】
[実施例6〜8]
(A)成分に分散する(C)成分のポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液の添加量を下表3のとおりに変更した以外は、実施例5と同様の方法で実施例6乃至8を行った。
【0060】
【表3】

*1:EG6301A=ポリオルガノシロキサン(東レ・ダウコーニング株式会社製)
*2:EG6301B=ポリオルガノハイドロジェンシロキサン+白金族金属系触媒(東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0061】
このようにして得られた実施例の硬化物について、接着性、耐擦傷性、硬化直後の光透過性、耐熱性、耐光性および屈折率を評価した。また、その結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ発光素子及びフレーム等との接着性に優れ、しかも硬度が高く、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れた光半導体封止用樹脂組成物であり、該樹脂組成物を用いて光半導体素子を公知の方法で封止した結果、光透過性、耐熱性及び耐光性に優れ、且つ接着性、耐擦傷性が優れ、発光効率の高い光半導体装置が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金族金属系触媒、
(C)ポリオルガノシルセスキオキサン、
を含有することを特徴とする光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、下記式〔1〕及び式〔2〕
【化1】

【化2】

で表される繰り返し単位、ならびに下記式〔3〕
【化3】


(式中、R1、R及びRは同じか又は異なる非置換基もしくは置換一価炭化水素基であり、R、R及びRは水素原子およびアルキル基を示す。)
で表される末端基を有するポリオルガノシルセスキオキサンである請求項1記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、平均粒子径が100nm以下の微粒子状高分子量体のポリオルガノシルセスキオキサンであることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)成分のポリオルガノシルセスキオキサンが、(A)及び/又は(B)成分に分散してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分は、(A)、(B)及び(C)成分の合計量に対して5〜90重量%の量で配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載の光半導体封止用樹脂組成物を用いて光半導体素子を封止してなることを特徴とする光半導体装置。

【公開番号】特開2006−321832(P2006−321832A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143711(P2005−143711)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(391010895)小西化学工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】