説明

光学センサー及び電子機器

【課題】小型化可能な光学センサー及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】光学センサーは、半導体基板10に位置するフォトダイオード用の不純物領域31、32と、フォトダイオードの受光領域に対する入射光の波長を制限するための光バンドパスフィルター61、62と、フォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度を制限するための角度制限フィルター41、42と、を含む。光バンドパスフィルター61、62は、フォトダイオード用の不純物領域31、32と角度制限フィルター41、42の間に位置し、角度制限フィルター41、42は、半導体プロセスによって形成された遮光物質(光吸収物質または光反射物質)によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センサー及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や農業、環境等の分野では、対象物の診断や検査をするために分光センサーが用いられている。例えば、医療の分野では、へモグロビンの光吸収を利用して血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターが用いられる。また、農業の分野では、糖分の光吸収を使用して果実の糖度を測定する糖度計が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−129908号公報
【特許文献2】特開2006−351800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の分光センサーでは、小型化が困難であるという課題がある。例えば、連続スペクトルを取得する分光センサーでは、連続スペクトルを生成するためのプリズム等を設けたり、光路長を確保する必要があるため、装置が大型化してしまう。そのため、多数のセンサーを設置したり、センサーを検査対象物に常時設置しておくこと等が困難となってしまう。
【0005】
ここで、特許文献1には、光ファイバーにより入射光の入射角度を制限することでフィルターの透過波長帯域を制限する手法が開示されている。また、特許文献2には、センサー毎に膜厚の異なる多層膜フィルターを用いて複数波長帯域の光をセンシングする手法が開示されている。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、小型化可能な光学センサー及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、半導体基板に位置するフォトダイオード用の不純物領域と、前記フォトダイオードの受光領域に対する入射光の波長を制限するための光バンドパスフィルターと、前記フォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度を制限するための角度制限フィルターと、を含み、前記光バンドパスフィルターは、前記フォトダイオード用の不純物領域と前記角度制限フィルターの間に位置し、前記角度制限フィルターは、半導体プロセスによって形成された遮光物質によって形成される光学センサーに関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、光バンドパスフィルターの上に半導体プロセスによって形成された遮光物質によって角度制限フィルターが形成され、その角度制限フィルターによってフォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度が制限される。これにより、光学センサーの小型化等が可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターは、前記半導体基板上に形成される他の回路の配線層形成工程により形成されてもよい。
【0010】
このようにすれば、半導体基板上に形成される他の回路の配線層形成工程により形成することで、角度制限フィルターを半導体プロセスにより形成できる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターは、前記半導体基板の上に積層された絶縁膜に空けられたコンタクトホールの導電性プラグにより形成されてもよい。
【0012】
このようにすれば、角度制限フィルターを、半導体基板の上に積層された絶縁膜に空けられたコンタクトホールの導電性プラグにより形成できる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターは、前記半導体プロセスにより形成される導電層または導電性プラグにより形成され、前記フォトダイオード用の不純物領域からの信号を取得する電極であってもよい。
【0014】
このようにすれば、角度制限フィルターを、フォトダイオード用の不純物領域からの信号を取得する電極として兼用できる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターは、前記半導体基板に対する平面視において、前記フォトダイオードの受光領域の外周に沿って形成されてもよい。
【0016】
このようにすれば、半導体基板に対する平面視において、フォトダイオードの受光領域の外周に沿って角度制限フィルターを形成することで、フォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度を制限できる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターは、前記フォトダイオード用の不純物領域の上に形成された複数の開口を有し、前記複数の開口は、前記フォトダイオードの受光領域の外周に沿って形成され、前記受光領域に対する入射光の入射角度を制限してもよい。
【0018】
このようにすれば、角度制限フィルターが、フォトダイオードの受光領域の外周に沿って形成された複数の開口を有することで、フォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度を制限できる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記光バンドパスフィルターは、前記半導体基板に対して、透過波長に応じた角度で傾斜する多層薄膜により形成されてもよい。
【0020】
このようにすれば、半導体基板に対して透過波長に応じた角度で傾斜する多層薄膜により光バンドパスフィルターを形成できる。
【0021】
また、本発明の一態様では、前記フォトダイオード用の不純物領域の上に設けられた傾斜構造体を含み、前記傾斜構造体は、前記半導体基板に対して、前記光バンドパスフィルターの透過波長に応じた角度で傾斜する傾斜面を有し、前記多層薄膜は、前記傾斜面の上に形成されてもよい。
【0022】
このように半導体基板に対して光バンドパスフィルターの透過波長に応じた角度で傾斜する傾斜面を有する傾斜構造体の上に多層薄膜を形成することで、半導体基板に対して透過波長に応じた角度で傾斜する多層薄膜を形成できる。
【0023】
また、本発明の一態様では、前記傾斜構造体は、前記フォトダイオード用の不純物領域の上に半導体プロセスにより形成されてもよい。
【0024】
このようにすれば、フォトダイオード用の不純物領域の上に半導体プロセスにより傾斜構造体を形成できる。
【0025】
また、本発明の一態様では、前記傾斜構造体は、前記半導体プロセスにより積層された透明膜に段差または粗密パターンが形成され、前記段差または粗密パターンに対して研磨及びエッチングの少なくとも一方が行われることで形成されてもよい。
【0026】
このようにすれば、段差または粗密パターンが形成された透明膜に対して研磨及びエッチングの少なくとも一方を行うことで、角度制限フィルターの上に半導体プロセスにより傾斜構造体を形成できる。
【0027】
また、本発明の一態様では、前記光バンドパスフィルターは、透過波長が異なる複数組の多層薄膜により形成され、前記複数組の多層薄膜は、前記半導体基板に対する傾斜角度が透過波長に応じて異なり、同時の薄膜形成工程で形成されてもよい。
【0028】
このようにすれば、半導体基板に対する傾斜角度が透過波長に応じて異なる複数組の多層薄膜により光バンドパスフィルターを形成し、複数組の多層薄膜を同時の薄膜形成工程で形成できる。
【0029】
また、本発明の一態様では、前記フォトダイオード用の不純物領域は、トレンチ構造の絶縁体により複数の領域に区切られ、前記光バンドパスフィルターは、透過波長が異なる複数のバンドパスフィルターにより形成され、前記複数のバンドパスフィルターの各バンドパスフィルターは、前記トレンチ構造の絶縁体により区切られた1または複数の領域に対応して設けられてもよい。
【0030】
このようにすれば、複数のバンドパスフィルターの各バンドパスフィルターを、トレンチ構造の絶縁体により区切られた1または複数の領域に対応して設けることができる。
【0031】
また、本発明の一態様では、前記フォトダイオードの出力信号を処理する処理回路を含み、前記処理回路は、前記角度制限フィルターを形成する半導体プロセスにより形成されてもよい。
【0032】
このようにすれば、フォトダイオードの出力信号を処理する処理回路を、角度制限フィルターを形成する半導体プロセスにより形成できる。
【0033】
また、本発明の一態様では、前記角度制限フィルターを形成する前記遮光物質は、光吸収物質または光反射物質であってもよい。
【0034】
このようにすれば、角度制限フィルターを形成する遮光物質を、光吸収物質または光反射物質により形成できる。
【0035】
また、本発明の一態様では、光学センサーは、入射光を分光するための分光センサーであってもよい。
【0036】
また、本発明の一態様では、光学センサーは、入射光の照度を測定するための照度センサーであってもよい。
【0037】
また、本発明の一態様では、光学センサーは、光源の仰角を測定するための仰角センサーであってもよい。
【0038】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載された光学センサーを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の分光センサーの構成例。
【図2】本実施形態の分光センサーの構成例。
【図3】分光センサーの第1の変形例。
【図4】分光センサーの第2の変形例。
【図5】分光センサーの第3の変形例。
【図6】分光センサーの第4の変形例。
【図7】図7(A)、図7(B)は、光バンドパスフィルターの透過波長帯域についての説明図。
【図8】分光センサーの製造方法例。
【図9】分光センサーの製造方法例。
【図10】分光センサーの製造方法例。
【図11】分光センサーの製造方法例。
【図12】分光センサーの製造方法例。
【図13】分光センサーの製造方法例。
【図14】分光センサーの製造方法例。
【図15】第1の変形例の分光センサーの製造方法例。
【図16】第1の変形例の分光センサーの製造方法例。
【図17】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。なお以下では光学センサーが分光センサーである場合を例にとり説明するが、後述するように本実施形態の光学センサーは分光センサーには限定されない。
【0041】
1.構成例
上述のように、医療・健康等の分野では常時装着等が可能な小型の分光センサーが求められており、分光センサーの小型化が必要であるという課題がある。例えば、測定対象の波長が既知である場合には、連続スペクトルを取得せず、その既知の波長のみを測定するセンサーを設ければよい。
【0042】
しかしながら、分光センサーの波長選択性の向上という課題がある。例えば、透過波長帯域を決める角度制限フィルターや多層膜フィルターを部材で構成すると、部材の接着面で光が拡散減衰するため、波長選択性が低下してしまう。
【0043】
また、例えば、上述の特許文献1には、光ファイバーにより入射光の入射角度を制限することでフィルターの透過波長帯域を制限する手法が開示されている。しかしながら、この手法では、帯域を狭くするために光ファイバーの開口数を小さくすると、入射光の透過率が低下、波長選択性が低下してしまう。
【0044】
また、分光センサーの製造プロセスの簡素化という課題がある。例えば、特許文献2には、センサー毎に膜厚の異なる多層膜フィルターを用いる手法が開示されている。しかしながら、この手法では、膜厚毎に別個の多層膜形成工程が必要となるため、多層膜の形成工程が煩雑となってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、半導体プロセスにより角度制限フィルターや多層膜フィルターを形成することで、簡素な製造プロセスにより分光センサーの小型化を実現する。
【0046】
図1、図2を用いて本実施形態の分光センサー(広義には光学センサー)の構成例について説明する。なお以下では、簡単のために本実施形態の分光センサーの構成を模式的に図示し、図中の寸法や比率は実際のものとは異なる。
【0047】
図1には、分光センサーが形成される半導体基板10に対する平面視図を示す。図1は、半導体基板10の平面に垂直な方向から見た平面視において、回路20や角度制限フィルター41等が形成される表面側から見た平面視図である。後述のようにフォトダイオード31、32の上には多層膜フィルターが形成されるが、図1では、簡単のために図示を省略する。
【0048】
図1に示す分光センサーは、半導体基板10、回路20、第1のフォトダイオード31(広義には、第1のフォトセンサー、第1のフォトダイオード用の不純物領域)、第2のフォトダイオード32(広義には、第2のフォトセンサー、第2のフォトダイオード用の不純物領域)、第1の角度制限フィルター41、第2の角度制限フィルター42を含む。
【0049】
半導体基板10は、例えばP型やN型のシリコン基板(シリコンウエハ)により構成される。この半導体基板10の上には、回路20、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42が半導体プロセスにより形成される。ここで、半導体基板10の上とは、半導体基板10の平面に垂直な方向のうち、回路20や角度制限フィルター41等が形成される側の方向を表す。
【0050】
角度制限フィルター41、42は、例えば平面視において格子状に形成され、フォトダイオード31、32に対する入射光の入射角度を制限する。回路20は、例えばフォトダイオード31、32からの出力信号を処理するアンプ、A/D変換回路等により構成される。
【0051】
なお、本実施形態の分光センサーは図1の構成に限定されず、その構成要素の一部(回路20)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、フォトダイオードや角度制限フィルターは、上述のように2つであってもよく、1または複数個形成されてもよい。また、角度制限フィルター41、42は、上述のように平面視において格子状であってもよく、他の形状であってもよい。
【0052】
図2に、分光センサーの断面図を示す。図2は、図1に示すAA断面における断面図である。図2に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50(角度構造体)、第1の光バンドパスフィルター61(第1の多層膜フィルター、第1の誘電体フィルター)、第2の光バンドパスフィルター62(第2の多層膜フィルター、第2の誘電体フィルター)、を含む。
【0053】
図2に示すように、半導体基板10にフォトダイオード31、32が形成される。後述するように、このフォトダイオード31、32は、イオン注入等により不純物領域が形成されることで形成される。例えば、フォトダイオード31、32は、P基板上に形成されたN型不純物領域と、P基板との間のPN接合により実現される。あるいは、ディープNウェル(N型不純物領域)上に形成されたP型不純物領域と、ディープNウェルとの間のPN接合により実現される。
【0054】
傾斜構造体50は、フォトダイオード31、32の上に形成され、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じて異なる傾斜角の傾斜面を有する。具体的には、フォトダイオード31の上には、半導体基板10の平面に対する傾斜角θ1の傾斜面が複数形成され、フォトダイオード32の上には、θ1とは異なる傾斜角θ2の傾斜面が複数形成される。後述するように、この傾斜構造体50は、例えばSiO等の絶縁膜をエッチングまたはCMP、グレースケールリソグラフィー技術等により加工することで形成される。
【0055】
光バンドパスフィルター61、62は、傾斜構造体50の上に積層された多層薄膜60により形成される。光バンドパスフィルター61、62の透過波長帯域は、傾斜構造体50の傾斜角θ1、θ2と、角度制限フィルター41、42の入射光制限角度(アスペクト比)により決まる。光バンドパスフィルター61、62は、傾斜角度に応じて透過波長が異なる構成のため、透過波長毎に別個の工程で積層するのではなく、同一の多層膜形成工程により積層される。
【0056】
角度制限フィルター41、42は、光バンドパスフィルター61、62の上に形成される。角度制限フィルター41、42は、フォトダイオード31、32により検出される波長に対して遮光性のある遮光物質(例えば、光吸収物質または光反射物質)により形成される。具体的には、角度制限フィルター41、42は、半導体プロセスの配線形成工程により形成され、例えばアルミ(広義には光反射物質)配線層等の導電層とタングステン(広義には光吸収物質)プラグ等の導電性プラグにより形成される。角度制限フィルター41、42の底辺の長さ(例えば底面の最長対角線や、長径)と高さのアスペクト比は、光バンドパスフィルター61、62の透過波長帯域(例えば図7(B)で後述するBW1、BW2)に応じて設定される。角度制限フィルター41、42の開口部(中空部)は、フォトダイオード31、32により検出される波長に対して透明な物質により形成され、例えば、SiO(シリコン酸化膜)等の絶縁層により形成(充填)される。
【0057】
以上では、本実施形態の光学センサーが分光センサーである場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、本実施形態の光学センサーは照度センサーであってもよく、仰角センサーであってもよい。
【0058】
照度センサーは、自然光や照明光の照度(ルクス、またはルーメン/平方メートル)を測定する光学センサーである。本実施形態では、角度制限フィルターにより入射角度が制限されるため、測定対象の入射光の入射方向を制限できる。
【0059】
仰角センサーは、太陽や照明光源の方向と基準面との間の成す角度である仰角を測定する光学センサーである。基準面は、例えば水平面である。本実施形態では、角度制限フィルターにより入射角度が制限されるため、仰角を測定できる。
【0060】
さて上述のように、従来の分光センサーでは、分光センサーの波長選択性の向上や、製造プロセスの簡素化という課題があった。
【0061】
この点、本実施形態の光学センサーは、半導体基板10上に形成された、フォトダイオード用の不純物領域31、32と、フォトダイオードの受光領域(受光面)に対する入射光の入射角度を制限するための角度制限フィルター41、42と、を含む。そして、角度制限フィルター41、42は、フォトダイオード用の不純物領域31、32の上に半導体プロセスによって形成された遮光物質(光吸収物質または光反射物質)によって形成される。
【0062】
このようにすれば、光学センサーの各構成要素を半導体プロセスにより構成できるため、光学センサーの小型化等が可能になる。すなわち、フォトダイオード31、32や角度制限フィルター41、42を半導体プロセスにより形成することで、容易に微細加工を行い、小型化することができる。また、光バンドパスフィルターと組み合わせた場合には、角度制限フィルター等を別部材で構成し、その別部材をフォトダイオードと貼り合わせて構成した光学センサーと比べて、透過波長選択性を向上できる。また、角度制限フィルターとして光ファイバーを用いた場合に比べて、制限角度(開口数)の減少による透過光の減少を抑制し、波長選択性を向上できる。
【0063】
ここで、半導体プロセスとは、半導体基板にトランジスターや、抵抗素子、キャパシター、絶縁層、配線層等を形成するプロセスである。例えば、半導体プロセスは、、薄膜形成プロセス、フォトリソグラフィープロセス、エッチングプロセスを含むプロセスである。
【0064】
また、フォトダイオードの受光領域とは、角度制限フィルター41、42を通過した入射光が入射される、フォトダイオード用の不純物領域31、32上の領域である。例えば図1において、格子状の角度制限フィルター41、42の各開口に対応する領域である。あるいは、図2において、角度制限フィルター41、42を形成する遮光物質(光吸収物質または光反射物質)に囲まれた領域(例えば、領域LRA)である。
【0065】
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10上に形成される他の回路20の配線層形成工程により形成される。具体的には、角度制限フィルター41、42は、回路20の配線層形成と同時に形成され、その配線層形成工程の全部または一部により形成される。例えば、角度制限フィルター41、42は、アルミスパッタリングによるアルミ(光反射物質)配線層形成や、SiOデポジションによる絶縁膜形成、タングステン(光吸収物質)デポジションによるコンタクト形成等により形成される。
【0066】
このようにすれば、角度制限フィルター41、42を、フォトダイオード用の不純物領域31、32の上に半導体プロセスによって形成できる。これにより、角度制限フィルター形成のための別個のプロセスを設ける必要が無く、通常の半導体プロセスを利用して角度制限フィルターを形成できる。
【0067】
なお、角度制限フィルター41、42は、アルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトに限らず、タングステン等の光吸収物質から成る配線層、アルミ等の光反射物質から成るコンタクトにより形成されてもよい。ただし、光吸収物質から成る程遮光性は高まる。
【0068】
また、角度制限フィルター41、42は、アルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトに限らず、光吸収物質である窒化チタン(TiN)等の膜付きのアルミ(光反射物質)配線層、タングステン(光吸収物質)コンタクトにより形成されてもよい。アルミ(光反射物質)配線層が光吸収に変わり、タングステンより窒化チタン(TiN)の方が光吸収性が高いためコンタクトの光吸収性も上がるため、遮光性をより高めることができる。
【0069】
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10の上に積層された絶縁膜に空けられたコンタクトホールの導電性プラグにより形成されてもよい。すなわち、アルミ(光反射物質)配線等の金属配線層を用いず、SiO等の絶縁膜に形成されたタングステンプラグ等の導電性プラグのみにより形成されてもよい。なお、角度制限フィルター41、42は、タングステン(光吸収物質)プラグに限らず、アルミや、ポリシリコン等の他の導電性プラグにより形成されてもよい。
【0070】
このようにすれば、角度制限フィルター41、42を導電性プラグにより形成することができる。
【0071】
ここで、上記のコンタクトホールとは、配線層と半導体基板を導通するコンタクトのために空けられるコンタクトホール、または配線層と配線層を導通するビアコンタクトのために空けられるコンタクトホールである。
【0072】
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体プロセスにより形成される導電層(例えば金属層)または導電性プラグ(例えば金属プラグ)により形成され、フォトダイオード31、32用の不純物領域からの信号を取得する電極であってもよい。例えば、フォトダイオード31、32用の不純物領域がP型不純物領域である場合、そのP型不純物領域に導通する角度制限フィルター41、42が、フォトダイオード31、32のアノード電極を兼ねてもよい。
【0073】
このようにすれば、導電層または導電性プラグにより形成される角度制限フィルター41、42を、フォトダイオード31、32の電極として用いることができる。これにより、角度制限フィルター41、42以外に電極を設ける必要が無くなり、電極による入射光量の低下を避けることができる。
【0074】
また、本実施形態では、角度制限フィルター41、42は、半導体基板10に対する平面視において、フォトダイオード31、32の受光領域の外周に沿って形成される。具体的には、フォトダイオード31、32用の不純物領域がそれぞれ1つの受光領域であり、その不純物領域の外周を囲むそれぞれ1つの角度制限フィルターが形成される。あるいは、フォトダイオード31、32用の不純物領域に複数の受光領域が設定され、その複数の受光領域の外周に沿って複数の開口が形成されてもよい。例えば図1に示すように、平面視において正方形の遮光物質(光吸収物質または光反射物質)が各受光領域を囲み、その正方形が格子状に配列されることで角度制限フィルター41、42が形成される。
【0075】
なお、角度制限フィルター41、42は、受光領域の外周に沿って閉じている場合に限らず、外周に沿って非連続的な部分があったり、外周に沿って断続的に配置されたりしてもよい。
【0076】
このようにすれば、角度制限フィルター41、42が、フォトダイオード31、32の各受光領域の外周に沿って形成されることで、フォトダイオード31、32の各受光領域に対する入射光の入射角度を制限できる。
【0077】
また、本実施形態の光学センサーは、入射光のうちの特定波長の光を透過する光バンドパスフィルター61、62を含む。
【0078】
このようにすれば、入射光のうちの特定波長の光をフォトダイオード31、32用の不純物領域に入射できる。図7(A)等で後述のように、光バンドパスフィルター61、62の透過波長は入射角度によって変化するが、角度制限フィルター41、42により透過波長帯域を制限することができる。
【0079】
また、本実施形態では、光バンドパスフィルター61、62は、半導体基板10に対して、透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜により形成される。より具体的には、光バンドパスフィルター61、62は、透過波長が異なる複数組の多層薄膜により形成される。そして、その複数組の多層薄膜は、半導体基板10に対する傾斜角度θ1、θ2が透過波長に応じて異なり、同時の薄膜形成工程で形成される。例えば、図2に示すように、傾斜角θ1の複数の多層薄膜が連続して配列されることで1組の多層薄膜が形成される。あるいは、図5で後述するように、異なる傾斜角θ1〜θ3の多層薄膜が隣接して配置され、この傾斜角θ1〜θ3の多層薄膜が繰り返し配置される場合に、同じ傾斜角(例えばθ1)の複数の多層薄膜により1組の多層薄膜が形成されてもよい。
【0080】
このようにすれば、透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜により光バンドパスフィルター61、62を形成できる。これにより、透過波長に応じた膜厚の多層薄膜を透過波長毎に別個の工程で積層する必要がなくなり、多層薄膜の形成工程を簡素化できる。
【0081】
ここで、同時の薄膜形成工程とは、第1組の多層薄膜を形成した後に第2組の多層薄膜を形成するといった同一工程を順次繰り返す工程ではなく、複数組の多層薄膜を同じ(同時、1回の)薄膜形成工程で形成することをいう。
【0082】
また、本実施形態では、フォトダイオード31、32の上に設けられた傾斜構造体50を含む。そして、傾斜構造体50は、半導体基板10に対して、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する傾斜面を有し、多層薄膜がその傾斜面の上に形成される。
【0083】
このようにすれば、傾斜構造体50の傾斜面に多層薄膜を形成することで、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じた角度θ1、θ2で傾斜する多層薄膜を形成できる。
【0084】
具体的には、本実施形態では、傾斜構造体50は、フォトダイオード31、32の上に半導体プロセスにより形成される。例えば図10等で後述するように、傾斜構造体50は、半導体プロセスにより積層された透明膜(絶縁膜)に段差または粗密パターンが形成され、その段差または粗密パターンに対して研磨(例えばCMP)及びエッチングの少なくとも一方が行われることで形成される。
【0085】
このようにすれば、傾斜構造体を半導体プロセスにより形成できる。これにより、傾斜構造体の形成工程を簡素化できる。また、傾斜構造体を別部材で構成する場合と比べてコストを削減できる。また、別部材の傾斜構造体との接着面での光量減少を避けることができる。
【0086】
ここで、絶縁膜の段差とは、例えば、半導体基板の断面における半導体基板表面からの絶縁膜表面の高低差である。また、絶縁膜の粗密パターンとは、例えば、半導体基板の断面における半導体基板表面からの絶縁膜表面の高低のパターンであり、高い部分と低い部分の比率により絶縁膜の粗密が形成される。
【0087】
なお、傾斜構造体50は、段差または粗密パターンの研磨またはエッチングによる形成に限らず、グレースケールリソグラフィー技術により形成されてもよい。グレースケールリソグラフィー技術では、濃淡を持ったグレースケールマスクを用いてレジストを露光、露光レジストを使ってエッチングし傾斜構造体を形成する。
【0088】
また、本実施形態は、フォトダイオード31、32の出力信号を処理する処理回路(例えば、図1の回路20に含まれる)を含む。そして、その処理回路は、角度制限フィルター41、42を形成する半導体プロセスにより形成される。
【0089】
このようにすれば、フォトダイオード31、32と同じチップ上に、フォトダイオード31、32の出力信号を処理する処理回路を集積できる。これにより、光学センサーのより一層の小型化を図ることができる。
【0090】
2.第1の変形例
上記実施形態では、傾斜構造体50を半導体プロセスにより形成する構成例について説明したが、本実施形態では、種々の変形実施が可能である。
【0091】
図3には、傾斜構造体50を別部材で形成して貼り合わせる第1の変形例を示す。図3に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70、接着層80を含む。なお以下では、図2等で上述した構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0092】
この第1の変形例では、フォトダイオード31、32までを上述の構成例と同様に半導体プロセスにより形成する。傾斜構造体50は、低融点ガラス等の別部材により構成される。傾斜構造体50の傾斜面と多層薄膜60により、光バンドパスフィルター61、62が形成される。光バンドパスフィルター61、62の上には、絶縁層70(またはパッシベーション層)を積層する。この絶縁層70は、必ずしも絶縁膜である必要はなく、センシングする波長を透過する透明膜であればよい。絶縁層70上に、角度制限フィルター41、42を積層する。傾斜構造体50とフォトダイオード31、32が形成された半導体基板10とは、センシングする波長を透過する透明な接着剤により貼り付けされる。
【0093】
3.第2の変形例
図4には、傾斜構造体50を用いず、半導体基板10に平行な多層薄膜を形成する第2の変形例を示す。図4に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70を含む。
【0094】
この第2の変形例では、フォトダイオード31、32までを上述の構成例と同様に半導体プロセスにより形成し、フォトダイオード31、32の上に光バンドパスフィルター61、62の多層薄膜を形成する。この多層薄膜は、光バンドパスフィルター61、62の透過波長に応じて膜厚が異なり、別々の形成工程により積層される。すなわち、光バンドパスフィルター61、62の一方を形成する際には、他方をフォトレジスト等で覆って多層膜を積層することで、異なる膜厚の多層薄膜を形成する。さらに、光バンドパスフィルター61、62の上に絶縁層70を積層する。そして、絶縁層70の上に角度制限フィルター41、42を形成する。
【0095】
4.第3の変形例
図5には、フォトダイオード用の不純物領域をトレンチにより区切る第3の変形例を示す。図5に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61〜63、絶縁層70を含む。なお、フォトダイオード32はフォトダイオード31と同様のため図示及び説明を省略する。
【0096】
この第3の変形例では、フォトダイオード31の不純物領域がトレンチ90により区切られ、フォトダイオード31−1〜31−3が形成される。トレンチ90は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等の絶縁体トレンチ構造により形成される。傾斜構造体50には傾斜角度θ1〜θ3の傾斜面が形成され、各傾斜面はそれぞれフォトダイオード31−1〜31−3に対応する。そして、各フォトダイオード31−1〜31−3の上に、傾斜角度の異なる光バンドパスフィルター61〜63がそれぞれ形成される。
【0097】
なお図5では、1つの光バンドパスフィルターが、トレンチ構造で区切られた1つのフォトダイオード(1つの領域)の上に設けられるが、本実施形態では、1つの光バンドパスフィルターが、トレンチ構造で区切られた複数のフォトダイオード(複数の領域)の上に設けられてもよい。
【0098】
5.第4の変形例
図6には、マイクロレンズアレイ(MLA:Micro-Lens Array)により入射光量を増加させる第4の変形例を示す。図6に示す分光センサーは、半導体基板10、フォトダイオード31、32、角度制限フィルター41、42、傾斜構造体50、光バンドパスフィルター61、62、絶縁層70、マイクロレンズアレイ95を含む。なお、フォトダイオード32はフォトダイオード31と同様のため図示及び説明を省略する。
【0099】
この第4の変形例では、角度制限フィルター41の各開口にマイクロレンズを形成し、これらの複数のマイクロレンズによりマイクロレンズアレイ95が構成される。このマイクロレンズアレイ95は、例えば角度制限フィルター41形成後にフォトリソグラフィーによりパターンを形成し、SiO膜をエッチングし、SiOよりも高屈折率の物質をデポジションすることで形成される。
【0100】
6.光バンドパスフィルターの透過波長帯域
上述のように、光バンドパスフィルターの透過波長帯域は、多層薄膜の傾斜角度と角度制限フィルターの制限角度により設定される。この点について、図7(A)、図7(B)を用いて具体的に説明する。なお、説明を簡単にするために、以下では多層薄膜61、62の膜厚が同じ場合を例に説明するが、本実施形態では、多層薄膜61、62の膜厚が傾斜角θ1、θ2に応じて異なってもよい。例えば、薄膜のデポジションにおいて、半導体基板に対して垂直な方向に薄膜を成長させた場合、多層薄膜61、62の膜厚がcosθ1、cosθ2に比例してもよい。
【0101】
図7(A)に示すように、多層薄膜61、62は、厚さd1〜d3(d2<d1、d3<d1)の薄膜により形成される。厚さd1の薄膜の上下に、厚さd2、d3の薄膜が交互に複数層積層される。厚さd2の薄膜は、厚さd1、d3の薄膜とは異なる屈折率の物質により形成される。なお、図7(A)では、簡単のために、厚さd2、d3の薄膜の層数を省略したが、実際には、厚さd1の薄膜の上下に数十層〜数百層の薄膜が積層される。また、図7(A)では、簡単のために厚さd1の薄膜を1層としたが、実際には複数層形成される場合が多い。
【0102】
多層薄膜61は、フォトダイオード31の受光面に対して傾斜角θ1を有するため、受光面に対して垂直な光線は、多層薄膜61に対してθ1の角度で入射する。そして、角度制限フィルター41の制限角度をΔθとすると、多層薄膜61に対してθ1−Δθ〜θ1+Δθの角度を有する光線が多層薄膜61に入射し、その光線が多層薄膜61を透過してフォトダイオード31の受光面に到達する。同様に、多層薄膜62に対してθ2−Δθ〜θ2+Δθの角度を有する光線が多層薄膜62に入射し、その光線が多層薄膜62を透過してフォトダイオード32の受光面に到達する。
【0103】
図7(B)に示すように、多層薄膜61の透過波長帯域BW1は、λ1−Δλ〜λ1+Δλである。このとき、入射角度θ1の光線に対する透過波長λ1=2×n×d1×cosθ1である。ここで、nは厚さd1の薄膜の屈折率である。また、λ1−Δλ=2×n×d1×cos(θ1+Δθ)、λ1+Δλ=2×n×d1×cos(θ1−Δθ)である。入射角度θ1の光線に対する透過波長の半値幅HW(例えばHW<BW1)は、多層膜の積層数により決まる。フォトダイオード31の受光量は、受光面に垂直となる入射角θ1で最大であり、制限角度でゼロとなるため、入射光全体での受光量は点線でしめす曲線により表されることとなる。多層薄膜62の透過波長帯域BW2も同様に、λ2−Δλ〜λ2+Δλである。例えばθ2<θ1の場合、λ2=2×n×d1×cosθ2<λ1=2×n×d1×cosθ1である。
【0104】
上記実施形態によれば、角度制限フィルター41、42は、入射光の入射角度をθ1−Δθ〜θ1+Δθ、θ2−Δθ〜θ2+Δθに制限して、透過波長の変化範囲をλ1−Δλ〜λ1+Δλ、λ2−Δλ〜λ2+Δλに制限する。光バンドパスフィルターは、角度制限フィルター41、42により制限された透過波長の変化範囲λ1−Δλ〜λ1+Δλ、λ2−Δλ〜λ2+Δλにより、透過する特定波長の帯域BW1、BW2が設定される。
【0105】
このようにすれば、角度制限フィルター41、42により光バンドパスフィルターの透過波長帯域BW1、BW2を制限し、測定対象の波長帯域の光だけをセンシングすることができる。例えば、角度制限フィルター41、42の制限角度はΔθ≦30°に設定される。望ましくは、角度制限フィルター41、42の制限角度はΔθ≦20°である。
【0106】
7.製造方法
図8〜図14を用いて、傾斜構造体を半導体プロセスにより形成する場合の本実施形態の分光センサーの製造方法の例について説明する。
【0107】
まず図8のS1に示すように、フォトリソグラフィー、イオン注入、フォトレジスト剥離の工程により、P型基板上にN型拡散層(フォトダイオードの不純物領域)を形成する。S2に示すように、フォトリソグラフィー、イオン注入、フォトレジスト剥離、熱処理の工程により、P型基板上にP型拡散層を形成する。このN型拡散層がフォトダイオードのカソードとなり、P型拡散層(P型基板)がアノードとなる。
【0108】
次に図9のS3に示すように、SiOのデポジション、フォトリソグラフィー、SiOの異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、絶縁膜の段差(S3')または粗密パターン(S3")を形成する。
【0109】
次に図10のS4に示すように、CMPによる研磨の工程により、傾斜構造体の傾斜面を形成する。このとき、傾斜構造体の傾斜面は、絶縁膜の段差や粗密パターンの形状に応じた傾斜角度に加工される。
【0110】
次に図11のS5に示すように、TiO(チタン酸化膜)のスパッタリングとSiOのスパッタリングを交互に行い、傾斜面に多層薄膜を形成する。TiO膜は高屈折率の薄膜であり、SiO膜は低屈折率の薄膜である。
【0111】
次に図12のS6に示すように、SiOのデポジション、CMPによる平坦化の工程により、絶縁膜を形成する。或いは、SOG(Spin On Glass)膜の塗布によって、絶縁膜を形成してもよい。次に図13のS7に示すように、フォトリソグラフィー、SiOの異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、コンタクトホールを形成する。S8に示すように、TiNのスパッタリング、W(タングステン)のデポジション、Wのエッチバックの工程により、コンタクトホールの埋め込みを行う。S9に示すように、AL(アルミ)のスパッタリング、TiNのスパッタリング、フォトリソグラフィー、ALとTiNの異方性ドライエッチング、フォトレジスト剥離の工程により、第1AL配線を形成する。
【0112】
次に図14のS10に示すように、上記S6〜S9と同様の工程によりビアコンタクトと第2AL配線を形成する。S10の工程を必要回数繰り返す。図14には、第3AL配線まで形成した場合を図示する。S11に示すように、SiOのデポジション、CMPによる平坦化の工程により、絶縁膜を形成する。以上の配線形成工程により、角度制限フィルターを構成するAL配線とタングステンプラグが積層される。
【0113】
8.第1の変形例の製造方法
図15及び図16を用いて、傾斜構造体を別部材で形成する第1の変形例の製造方法の例について説明する。
【0114】
まず図15のS101に示すように、加熱して溶融した低融点ガラスを金型に注入し、S102に示すように、傾斜面のついた金型で低融点ガラスをプレス成形することで傾斜構造体を形成する。
【0115】
次に図16のS103に示すように、TiOのスパッタリングとSiOのスパッタリングを交互に行い、低融点ガラスの傾斜構造体に多層薄膜を形成する。
【0116】
次に、このように多層薄膜が形成された傾斜構造体を、フォトダイオードが形成された半導体基板に接着剤(分光対象波長に対して透明な接着剤)で接着する。なお、フォトダイオードは、図8で上述したS1及びS2の工程により形成される。
【0117】
次に、図12〜図14を参照しながら説明したと同様に、多層薄膜の上に、絶縁膜及び角度制限フィルターを形成する。
【0118】
9.電子機器
図17に、本実施形態の分光センサーを含む電子機器の構成例を示す。例えば、電子機器として、脈拍計、パルスオキシメーター、血糖値測定器、果実糖度計などが想定される。
【0119】
図17に示す電子機器は、分光センサー装置900、マイクロコンピューター970(CPU)、記憶装置980、表示装置990を含む。分光センサー装置900は、LED950(光源)、LEDドライバー960、分光センサー910を含む。分光センサー910は、例えば1チップのICに集積され、フォトダイオード920、検出回路930、A/D変換回路940を含む。
【0120】
LED950は、例えば白色光を観察対象に照射する。分光センサー装置900は、観察対象からの反射光や透過光を分光し、各波長の信号を取得する。マイクロコンピューター970は、LEDドライバー960の制御や、分光センサー910からの信号の取得を行う。マイクロコンピューター970は、取得した信号に基づく表示を表示装置990(例えば液晶表示装置)に表示したり、取得した信号に基づくデータを記憶装置980(例えばメモリーや、磁気ディスク)に記憶する。
【0121】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(フォトセンサー、薄膜フィルター、半導体基板等)と共に記載された用語(フォトダイオード、光バンドパスフィルター、シリコン基板等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、分光センサー、分光センサー装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 半導体基板、20 回路、31,32 フォトダイオード、
41,42 角度制限フィルター、50 傾斜構造体、60 多層薄膜、
61,62 光バンドパスフィルター、70 絶縁層、80 接着層、
90 トレンチ、95 マイクロレンズアレイ、
900 分光センサー装置、910 分光センサー、920 フォトダイオード、
930 検出回路、940 A/D変換回路、950 LED、
960 LEDドライバー、970 マイクロコンピューター、980 記憶装置、
990 表示装置、
BW1,BW2 透過波長帯域、LRA 受光領域、θ1,θ2 傾斜角度、
λ1,λ2 透過波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に位置するフォトダイオード用の不純物領域と、
前記フォトダイオードの受光領域に対する入射光の波長を制限するための光バンドパスフィルターと、
前記フォトダイオードの受光領域に対する入射光の入射角度を制限するための角度制限フィルターと、
を含み、
前記光バンドパスフィルターは、
前記フォトダイオード用の不純物領域と前記角度制限フィルターの間に位置し、
前記角度制限フィルターは、
半導体プロセスによって形成された遮光物質によって形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項2】
請求項1において、
前記角度制限フィルターは、
前記半導体基板上に形成される他の回路の配線層形成工程により形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記角度制限フィルターは、
前記半導体基板の上に積層された絶縁膜に空けられたコンタクトホールの導電性プラグにより形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記角度制限フィルターは、
前記半導体プロセスにより形成される導電層または導電性プラグにより形成され、前記フォトダイオード用の不純物領域からの信号を取得する電極であることを特微とする光学センサー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記角度制限フィルターは、
前記半導体基板に対する平面視において、前記フォトダイオードの受光領域の外周に沿って形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記角度制限フィルターは、
前記フォトダイオード用の不純物領域の上に形成された複数の開口を有し、
前記複数の開口は、
前記フォトダイオードの受光領域の外周に沿って形成され、前記受光領域に対する入射光の入射角度を制限することを特徴とする光学センサー。
【請求項7】
請求項1において、
前記光バンドパスフィルターは、
前記半導体基板に対して、透過波長に応じた角度で傾斜する多層薄膜により形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項8】
請求項7において、
前記光バンドパスフィルターは、
透過波長が異なる複数組の多層薄膜により形成され、
前記複数組の多層薄膜は、
前記半導体基板に対する傾斜角度が透過波長に応じて異なり、同時の薄膜形成工程で形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項9】
請求項7において、
前記フォトダイオード用の不純物領域は、
トレンチ構造の絶縁体により複数の領域に区切られ、
前記光バンドパスフィルターは、
透過波長が異なる複数のバンドパスフィルターにより形成され、
前記複数のバンドパスフィルターの各バンドパスフィルターは、
前記トレンチ構造の絶縁体により区切られた1または複数の領域に対応して設けられることを特徴とする光学センサー。
【請求項10】
請求項7において、
前記フォトダイオード用の不純物領域の上に設けられた傾斜構造体を含み、
前記傾斜構造体は、
前記半導体基板に対して、前記光バンドパスフィルターの透過波長に応じた角度で傾斜する傾斜面を有し、
前記多層薄膜は、
前記傾斜面の上に形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項11】
請求項10において、
前記傾斜構造体は、
前記フォトダイオード用の不純物領域の上に半導体プロセスにより形成されることを特微とする光学センサー。
【請求項12】
請求項11において、
前記傾斜構造体は、
前記半導体プロセスにより積層された透明膜に段差または粗密パターンが形成され、前記段差または粗密パターンに対して研磨及びエッチングの少なくとも一方が行われることで形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかにおいて、
前記フォトダイオードの出力信号を処理する処理回路を含み、
前記処理回路は、
前記角度制限フィルターを形成する半導体プロセスにより形成されることを特徴とする光学センサー。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかにおいて、
前記角度制限フィルターを形成する前記遮光物質は、
光吸収物質または光反射物質であることを特徴とする光学センサー。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかにおいて、
入射光を分光するための分光センサーであることを特微とする光学センサー。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれかにおいて、
入射光の照度を測定するための照度センサーであることを特徴とする光学センサー。
【請求項17】
請求項1乃至14のいずれかにおいて、
光源の仰角を測定するための仰角センサーであることを特徴とする光学センサー。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載された光学センサーを含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−44537(P2013−44537A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180192(P2011−180192)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】