説明

光導波路、光導波路構造体、光導波路構造体の製造方法および電子機器

【課題】光導波路のコア部の端部に対して精度良く光素子の受発光部を位置決めし得る光導波路、かかる光導波路を用いて光素子を精度よく位置決めし得る光導波路構造体の製造方法、ならびに、かかる光導波路を備える信頼性の高い光導波路構造体および信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路構造体は、コア部211と、コア部211に並設された位置決用コア部213と、コア部211および位置決用コア部213の少なくとも一方に隣接して設けられたクラッド部212とを備え、位置決用コア部213は、その光路の方向を変更する第1の光路変更部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光導波路構造体、光導波路構造体の製造方法および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に伝送(搬送)される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路で信号処理基板内の電気配線を置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、信号処理基板内に、複数の光導波路と、各光導波路に対応してそれぞれ発光素子および受光素子が配置されたものが提案されている。この信号処理基板では、隣接するコア部同士の間に、これらに互いに接触するクラッド部が配置されていることで、信号処理基板内に複数の光導波路が形成されている。
【0008】
かかる構成の信号処理基板において、発光素子から発光された光を受光素子にまで高効率に伝達させるには、発光素子からの光を高効率でコア部(光導波路)に導入し、かつコア部から導出された光を高効率で受光素子に導入することが求められる。
【0009】
そのため、これら受発光素子(光素子)の受発光部が、コア部の端部に精度良く位置決めされている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−139412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、光導波路のコア部の端部に対して精度良く光素子の受発光部を位置決めし得る光導波路、かかる光導波路を用いて光素子を精度よく位置決めし得る光導波路構造体の製造方法、ならびに、かかる光導波路を備える信頼性の高い光導波路構造体および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(15)に記載の本発明により達成される。
(1) 光を伝送させて使用する平板状をなす光導波路であって、
コア部と、該コア部に並設された位置決用コア部と、前記コア部および前記位置決用コア部の少なくとも一方に隣接して設けられたクラッド部とを備え、
前記位置決用コア部は、その光路の方向を変更する第1の光路変更部を備えることを特徴とする光導波路。
【0013】
(2) 前記位置決用コア部を複数有し、
前記位置決用コア部は、前記コア部を挟む位置に並設されている上記(1)に記載の光導波路。
【0014】
(3) 前記位置決用コア部は、その光路方向の一方の端部が、当該光導波路の端面において露出し、前記一方の端部から導入された光が、前記第1の光路変更部において導出される上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0015】
(4) 前記コア部の少なくとも一方の端部には、前記光路の方向を変更する第2の光路変更部を備える上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0016】
(5) 前記評価用コア部は、前記コア部に対してその中心軸が並列に設けられている上記(4)に記載の光導波路。
【0017】
(6) 前記第1の光路変更部と前記第2の光路変更部とは、ともに前記中心軸に対する1つの垂線上に位置する上記(5)に記載の光導波路。
【0018】
(7) 前記コア部は、その光路方向の少なくとも一方の端部が、当該光導波路の端面において露出することなく設けられている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路。
【0019】
(8) 前記クラッド部は、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部および前記位置決用コア部の少なくとも一方に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部および前記位置決用コア部から離間した複数の高屈折率領域とを有し、該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中に点在または整列している上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路。
【0020】
(9) 前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を、前記コア部から遠ざかる方向に屈折させるもの、または不規則に散乱させるものである上記(8)に記載の光導波路。
【0021】
(10) 前記各高屈折率領域は、それぞれ粒状をなしている上記(8)または(9)に記載の光導波路。
【0022】
(11) 前記各高屈折率領域は、それぞれ短冊状をなしている上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の光導波路。
【0023】
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする光導波路構造体。
【0024】
(13) 発光部または受光部を備える光素子を有する上記(12)に記載の光導波路構造体。
【0025】
(14) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の光導波路が備える前記位置決用コア部に光を導入した状態で、発光部または受光部を備える光素子の位置決めがなされることを特徴とする光導波路構造体の製造方法。
【0026】
(15) 上記(12)または(13)に記載の光導波路構造体を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コア部の端部に対して精度良く受発光素子の受発光部を位置決めすることができる光導波路とすることができる。そのため、かかる光導波路を用いて位置決めされた受発光素子と、光導波路とを備える光導波路構造体および電子機器は、高い信頼性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の光導波路構造体の第1実施形態の概略を示す縦断面図である。
【図2】本発明の光導波路構造体の第1実施形態の概略を示す平面図である。
【図3】図1、2に示す光導波路構造体が備えるコア層を示す平面図である。
【図4】図3に示すコア層のA−A線断面図である。
【図5】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図6】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図7】光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【図8】光導波路基板に配線基板を接合する方法を説明するための模式図(平面図)である。
【図9】光導波路基板に配線基板を接合する方法を説明するための模式図(平面図)である。
【図10】本発明の光導波路構造体の第2実施形態が備えるコア層を示す平面図である。
【図11】本発明の光導波路構造体の第3実施形態が備えるコア層を示す平面図である。
【図12】本発明の光導波路構造体の第4実施形態が備えるコア層を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の光導波路、光導波路構造体、光導波路構造体の製造方法および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
まず、本発明の光導波路を説明するのに先立って、本発明の光導波路を備える光導波路構造体(本発明の光導波路構造体)について説明する。
【0031】
<第1実施形態>
まず、本発明の光導波路構造体の第1実施形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の光導波路構造体の第1実施形態の概略を示す縦断面図、図2は、本発明の光導波路構造体の第1実施形態の概略を示す平面図、図3は、図1、2に示す光導波路構造体が備えるコア層を示す平面図、図4は、図3に示すコア層のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図1、4中の上側を「上」といい、下側を「下」という。
【0033】
光導波路構造体1は、主に、光導波路基板2と、この光導波路基板2の上面に接合された配線基板3a、3bと、配線基板3a、3b上にそれぞれ搭載された発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とを有する。
【0034】
発光素子4からの光Lは、光導波路基板(光回路)2内を伝送され、受光素子5により受光される。すなわち、光導波路基板2を介して、発光素子4と受光素子5との間において、光通信がなされる。
【0035】
光導波路基板2は、光導波路20と、この光導波路20の上下面にそれぞれ設けられた保護層29とを備える。
【0036】
光導波路(本発明の光導波路)20は、その全体形状が平板状をなしており、層状をなすコア層21と、このコア層21の上下面にそれぞれ設けられた層状をなすクラッド層22とを有している。そして、コア層21の一端に入射された光Lが、その他端にまで伝送(伝搬)される。本発明では、この光導波路20(特にコア層21)の構成に特徴を有するが、その詳細については、後に詳述する。
【0037】
また、本実施形態では、光導波路基板2は、その下面からコア層21(コア部211)を超えて、上側の保護層29に至るまでの部分を欠損させることにより形成された欠損部28a、28bを備える。少なくともコア層21の欠損部28a、28bに臨む面は、それぞれ、コア層21と欠損部28a、28b内の空気との屈折率差に基づいて光を反射するミラー(光の光路を変更する第2の光路変更部)23a、23bを構成している。
【0038】
これにより、コア部211のミラー23a、23bがコア部211の端部を構成し、このミラー23a、23bの周辺部には、空気層としての欠損部28a、28bが位置することとなる。
【0039】
また、欠損部28a、28bは、光導波路基板2の縦断面において直角三角形状をなすように形成されており、ミラー(光路変更部)23a、23bは、コア層21の中心軸に対してほぼ45°で傾斜している。したがって、図1中の矢印で示すように、発光素子4から下方に向かって発せられた光Lは、その直下のミラー23aにより、その光路がほぼ90°で変更(屈曲)された後、コア層21(コア部211)内を伝送され、受光素子5の直下のミラー23bで上方に向かって光路がほぼ90°で変更された後、受光素子5に入射する。
【0040】
このようなミラー23a、23bを設けることにより、光導波路基板2の主面(上面および/または下面)を発光素子4および受光素子5を搭載する領域として用いることができるので、光導波路構造体1の小型化を図ることができるとともに、高密度実装にも寄与する。
【0041】
保護層29は、光導波路20の上下面を保護する機能を有する。
保護層29の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、保護層29は、光導波路20を保護する機能を十分に発揮することができる。また、光導波路基板2全体として可撓性を付与する場合には、その可撓性が低下するのを防止することができる。
【0042】
保護層29の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミドおよびポリイミドエーテル等が挙げられる。
【0043】
このような光導波路基板2の上面には、配線基板3a、3bが接合され、さらに、配線基板3a、3bの上面には、それぞれ、後述するコア層21が備えるコア部211に対応するように発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とが搭載されている。
【0044】
配線基板3a、3bは、所定のパターンで形成された配線部(導体部)30を有している。
【0045】
また、発光素子(光素子)4は、発光部を備える素子本体41とバンプ42とを備え、バンプ42が、配線部30が備える端子に接合されている。また、発光素子用IC40は、所定の回路が形成された素子本体401とバンプ402とを備え、バンプ402が、配線部30が備える端子に接合されている。これにより、発光素子4は、発光素子用IC40と配線基板3a、3bを介して電気的に接続され、その動作が発光素子用IC40により制御される。
【0046】
さらに、受光素子(光素子)5は、受光部を備える素子本体51とバンプ52とを備え、バンプ52が、配線部30が備える端子に接合されている。また、受光素子用IC50は、所定の回路が形成された素子本体501とバンプ502とを備え、バンプ502が、配線部30の端子に接合されている。これにより、受光素子5は、受光素子用IC50と配線基板3a、3bを介して電気的に接続され、受光素子用IC50は、受光素子5による検出信号を増幅するよう動作する。
【0047】
これにより、光導波路構造体1内に、電気回路が構築され、光導波路構造体1では、これらの光素子(発光素子4および受光素子5)と電気素子(発光素子用IC40および受光素子用IC50)とが協調して動作することにより、光信号と電気信号の相互変換が確実に行われ、高速かつ低ノイズでの信号処理を容易に行うことができる。
【0048】
なお、このような配線基板3a、3bにおける、発光素子4からの光Lの光路に対応する部分、および、受光素子5への光Lの光路に対応する部分は、それぞれ、光Lの透過が許容されるように光透過性を有する部材で構成される。
【0049】
さて、光導波路(本発明の光導波路)20は、前述したように、層状をなすコア層21と、このコア層21の上下面にそれぞれ設けられた層状をなすクラッド層22とを有している。
【0050】
コア層21は、所定パターン(本実施形態では、光導波路20の長手方向に長い短冊状)のコア部211と、コア部211に対してその中心軸が並列に設けられた位置決用コア部213と、これらコア部(導波路チャンネル)211および位置決用コア部213に隣接するクラッド部212(側面クラッド部)とで構成されている。
【0051】
なお、本実施形態では、図3に示すように、4つのコア部211と4つの位置決用コア部213とが交互に設けられ、これらコア部211と位置決用コア部213との間に介在するように、コア部211および位置決用コア部213に隣接してクラッド部212が設けられている。
【0052】
クラッド部212は、クラッド層22と同様の機能を果たす部分であり、クラッド部212(低屈折率領域215)およびクラッド層22は、コア部211と比較して、その平均屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が低くなっている。
【0053】
これにより、クラッド部212およびクラッド層22で取り囲まれて形成されたコア部211は、欠損部28aから入射された光Lを、コア部211とクラッド部212およびクラッド層22との界面で反射させて、欠損部28bまで伝送(伝搬)する光路を構成する。また、評価用クラッド部213も、クラッド部212およびクラッド層22で取り囲まれて形成されており、コア部211と同様の機能を発揮する。
【0054】
また、本実施形態では、コア部211および位置決用コア部213は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
【0055】
さらに、コア部211は、その平面視において、光導波路20の長手方向に長い短冊状をなしており、本実施形態では、その両端部がミラー23a、23bで構成され、このミラー23a、23bの周辺部には欠損部28a、28bが設けられている。そして、これら欠損部28a、28bが、クラッド部212により、取り囲まれたような構成をなしている。そのため、光導波路基板2(光導波路20)の長手方向の端面と、コア部211の端部(ミラー23a、23b)との間には、クラッド部212と欠損部28a、28bが介在することから、各コア部211の双方の端部は、光導波路基板2の端面(端面)から露出していない。
【0056】
また、位置決用コア部213は、前記コア部211と同様に、光導波路20の長手方向(光路方向)に長い短冊状をなしており、その中心軸が隣接するコア部211に対して並列に設けられている。そして、本実施形態では、その両端部が、それぞれ光導波路20の長手方向の両端部(両端面)において露出している。
【0057】
また、各位置決用コア部213は、その途中に、コア部211が備える欠損部28a、28bと同様の構成の欠損部27a、27bを1つ備えている。すなわち、図3に示すように、位置決用コア部213aは、欠損部28aと同様の構成の1つの欠損部27aを備え、これら欠損部28aと欠損部27aとは、ともに位置決用コア部213aの中心軸に対する1つの垂線上に位置している。また、位置決用コア部213bは、欠損部28bと同様の構成の1つの欠損部27bを備え、これら欠損部28bと欠損部27bとは、ともに位置決用コア部213bの中心軸に対する1つの垂線上に位置している。
【0058】
これにより、位置決用コア部213aは、光導波路2の端部26a側から入射された光Lを、欠損部27aまで伝送(伝搬)する光路を構成し、位置決用コア部213bは、光導波路2の端部26b側から入射された光Lを、欠損部27bまで伝送(伝搬)する光路を構成する。
【0059】
位置決用コア部213を、以上のような欠損部27a、27bを備える構成とすることで、位置決用コア部213の欠損部27a、27bに臨む面が、それぞれ、位置決用コア部213と欠損部27a、27b内の空気との屈折率差に基づいて光を反射するミラー(第1の光路変更部)を構成することから、位置決用コア部213は、光Lの光路の方向を変更するミラーを備えるものとなる。
【0060】
なお、本実施形態では、コア部211および位置決用コア部213は、それぞれ、4つずつコア層21に設けられており、コア部211と位置決用コア部213とは、クラッド部212を介して、交互に並設されている。さらに、位置決用コア部213のうち、位置決用コア部213aと位置決用コア部213bとは、それぞれ、コア層21に2つずつ設けられており、交互に並設されている。これにより、コア層21において、平面視で、2つの位置決用コア部213a、bにより、それぞれ、2つのコア部211を挟むような構成をなすことになる。
【0061】
また、コア部211および位置決用コア部213は、図3に示すような平面視において、光Lの光路の方向の幅が、10〜100μm程度であるのが好ましく、15〜80μm程度であるのがより好ましい。これにより、コア部211または位置決用コア部213から入射された光Lを、コア部211とクラッド部212およびクラッド層22との界面で反射させて、その端部まで伝送(伝搬)する光路としての機能を確実に発揮するようになる。
【0062】
さらに、後に詳述するが、本実施形態では、各クラッド部212は、それぞれクラッド部212中の他の領域(低屈折率領域215)よりも屈折率が高い高屈折率領域214を複数個含んでいる。すなわち、クラッド部212は、複数の高屈折率領域214と、この高屈折率領域214より屈折率が低い低屈折率領域215とに分かれている。そして、図3に示すように、複数の高屈折率領域214は、各クラッド部212中に整列している。
【0063】
コア部211、位置決用コア部213および高屈折率領域214とクラッド部212中の低屈折率領域215との屈折率の差は、特に限定されないが、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0064】
なお、前記屈折率差とは、コア部211および位置決用コア部213の屈折率をA、低屈折率領域215の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0065】
なお、本実施形態では、コア部211および位置決用コア部213は、それぞれ、平面視で短冊状(直線状)に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。なお、後述するような光導波路20の製造方法を用いれば、複雑かつ任意の形状のコア部211および位置決用コア部213を容易にかつ寸法精度よく形成することができる。
【0066】
コア層21、位置決用コア部213およびクラッド層22の各構成材料は、それぞれ上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
【0067】
一方、2つのクラッド層22は、コア部211の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部211は、その外周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
【0068】
クラッド層22の平均厚さは、コア層21の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層22の平均厚さは、特に限定されないが、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、光導波路20が不要に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0069】
また、クラッド層22の構成材料としては、例えば、前述したコア層21の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0070】
クラッド部212は、上述のように、複数の高屈折率領域214と、この高屈折率領域214より屈折率が低い低屈折率領域215とで構成される。
【0071】
低屈折率領域215は、各クラッド部212のうち、図3に示すように、各コア部211または各位置決用コア部213の少なくとも一方に接するように設けられている。
【0072】
一方、高屈折率領域214は、図3に示すように、各コア部211および各位置決用コア部213に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域214と各コア部211および各位置決用コア部213との間に、低屈折率領域215が介挿された状態になっている。
【0073】
また、複数の高屈折率領域214は、本実施形態では、それぞれが平面視で短冊状をなしており、隣接するもの同士の間で、軸線が互いに平行になるように整列して設けられている。なお、図3に示す各高屈折率領域214は、それぞれ平面視で平行四辺形をなしている。また、これらの複数の高屈折率領域214は、各クラッド部212中において、各コア部211または各位置決用コア部213を挟んで両側に整列している。
【0074】
また、図3に示す各高屈折率領域214は、細長い平行四辺形をなしており、長辺の長さは短辺の2〜50倍程度であるのが好ましく、5〜30倍程度であるのがより好ましい。
【0075】
さらに、これらの短冊状の高屈折率領域214は、図3に示すように、各クラッド部212を幅方向に横切るように設けられている。その結果、各クラッド部212を通過する光は、必然的に各高屈折率領域214に通過することになり、以下に示す各高屈折率領域214の機能を確実に発揮させることができる。
【0076】
このような短冊状をなす各高屈折率領域214は、それぞれその軸線が、コア部211の軸線の垂線に対して、コア部211を通過する光Lの進行方向の後方に傾斜するように設けられている。このように傾斜して設けられていることにより、各高屈折率領域214を通過する光は、低屈折率領域215から高屈折率領域214に入射する際、および、高屈折率領域214から低屈折率領域215に出射する際、両者の屈折率差に基づいて、必然的にコア部211から遠ざかるように屈折する。その結果、クラッド部212を通過する光を、コア部211から遠ざけることができ、コア部211を伝搬した光Lが出射する欠損部28bでは、光Lの出射位置と、クラッド部212を伝搬してきた光の出射位置との離間距離が十分に確保されることとなる。
【0077】
なお、この場合、図2に示す、コア部211の軸線の垂線と、短冊状をなす各高屈折率領域214の軸線とがなす角度(高屈折率領域214の傾斜角)θは、高屈折率領域214と低屈折率領域215との屈折率差やクラッド部212の幅等に応じて、クラッド部212を通過する光が必要かつ十分に屈折するように適宜設定される。
【0078】
具体的には、高屈折率領域214の傾斜角θは、10〜85°程度であるのが好ましく、20〜70°程度であるのがより好ましい。傾斜角θを前記範囲内に設定することにより、コア部211から漏れ出た光がコア部211から確実に離れるよう屈折し、光導波路20の出射側端面10bにおいて、信号光とノイズ光とを分離することができる。その結果、搬送波としてのS/N比をより確実に高めることができる。
【0079】
また、各高屈折率領域214同士の離間距離も、高屈折率領域214と低屈折率領域215との屈折率差やクラッド部212の幅等に応じて適宜設定される。
【0080】
さらに、各高屈折率領域214の幅も、同様に適宜設定されるが、一例としては、1〜30μm程度であるのが好ましく、3〜20μm程度であるのがより好ましい。
【0081】
なお、各高屈折率領域214の形状は、短冊状(細長い形状)をなしていれば特に限定されず、台形、長方形、菱形のような四角形の他、三角形、五角形、六角形のような多角形、楕円形、長円形のような円形等であってもよい。
【0082】
また、各高屈折率領域214が短冊状をなしている場合、本実施形態のように、高屈折率領域214を、コア部211の中心軸に対して傾斜して設ける他、コア部211の中心軸に対して垂直に設けてもよいし、平行に設けてもよい。
【0083】
以上説明したような光導波路構造体1は、次のようにして製造される。
なお、以下では、感光用光の作用により屈折率が低くなる感光性樹脂組成物70を用いて光導波路基板2が備えるコア層21を形成する場合を一例に説明する。
【0084】
図5〜7は、それぞれ、光導波路構造体が備える光導波路基板の製造工程を説明するための部分縦断面図である。
【0085】
<1> まず、光導波路基板2を形成する。
<1−1> まず、感光用光EL(活性放射線)の作用により屈折率が低くなるよう変化する感光性樹脂組成物70を用意する。
【0086】
かかる感光性樹脂組成物70としては、例えば、特殊な配合の樹脂組成物を用いることができる。
【0087】
この樹脂組成物には、ベースポリマーと、このベースポリマーより屈折率の低いモノマーとを含み、感光用光ELを照射させた照射領域内において、モノマーの反応を進行させることにより、感光用光ELを照射させない未照射領域から、未反応のモノマーを照射領域に拡散させ、結果として、未照射領域の屈折率が照射領域の屈折率より高くなるようなものがある。
【0088】
ベースポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
【0089】
これらの中でも、特に、環状オレフィン系樹脂を主とするものが好ましい。ベースポリマーとして環状オレフィン系樹脂を用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層21を形成することができる。
【0090】
さらに、環状オレフィン系樹脂としては、耐熱性、透明性等の観点から、ノルボルネン系樹脂を使用することが好ましい。また、ノルボルネン系樹脂は、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層21を形成することができる。
【0091】
一方、モノマーとしては、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー等のうち、ベースポリマーより屈折率が低いものが選択され、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
これらの中でも、モノマーとしては、オキセタニル基またはエポキシ基等の環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いるのが好ましい。環状エーテル基を有するモノマーまたはオリゴマーを用いることにより、環状エーテル基の開環が起こり易いため、速やかに反応し得るモノマーが得られる。
【0093】
具体的には、オキセタニル基を有し、かつ、ベースポリマーより屈折率が低いモノマーとしては、例えば、下記式(1)で表わされる単官能オキセタン(3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタン;CHOX)等が挙げられる。
【0094】
【化1】

【0095】
<1−2> 次に、予め形成したクラッド層22上に、図5(A)に示すように、感光性樹脂組成物70を必要に応じてワニス状として供給して、液状被膜を形成する。
【0096】
なお、感光性樹脂組成物70をワニス状とする場合、感光性樹脂組成物70を溶媒または分散媒中に溶解または分散させることにより得ることができる。
【0097】
なお、この溶媒または分散媒としては、特に限定されないが、例えば、特開2010−90328号公報に記載されたもの等が挙げられる。
【0098】
ここで、感光性樹脂組成物70をクラッド層22上に供給する方法としては、各種塗布法を用いることができ、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法の方法が挙げられる。
【0099】
なお、クラッド層22としては、例えば、後述するコア部211よりも屈折率が低いシート材が使用され、特に限定されるものではないが、例えば、ノルボルネン系樹脂と、エポキシ樹脂とを含むシート材が使用される。
【0100】
<1−3> 次に、クラッド層22上に形成した液状被膜を乾燥することにより、図5(B)に示すように、光導波路形成用のフィルム210を形成する。
【0101】
このフィルム210は、後述する感光用光(活性放射線)ELの照射により、コア部211と位置決用コア部213とクラッド部212とを備えるコア層21となるものである。
【0102】
<1−4> 次に、フィルム210における、クラッド部212が備える低屈折率領域215を形成すべき領域に対して、選択的に感光用光EL(例えば、紫外線)を照射する。
【0103】
この際、図6(A)に示すように、フィルム210の上方に形成すべきクラッド部212が備える低屈折率領域215の形状に対応した開口部を備えるマスクMを配置する。このマスクMを介して、フィルム210に対し、感光用光ELを照射する。
【0104】
換言すれば、コア部211、位置決用コア部213および高屈折率領域214を形成すべき領域に対して、マスクMを用いてマスクする。
【0105】
用いられる感光用光ELとしては、例えば、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものが挙げられる。これにより、フィルム210の感光用光ELが照射された領域における屈折率を、比較的容易に低くすることができる。
【0106】
また、感光用光ELの照射量は、特に限定されないが、0.1〜9J/cm程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm程度であるのがさらに好ましい。
【0107】
なお、レーザー光のように指向性の高い感光用光ELを用いる場合には、マスクMの使用を省略することもできる。
【0108】
ここで、フィルム210のうち、感光用光ELが照射された照射領域では、モノマーの反応(ペースポリマーの架橋、モノマーの重合等)が開始する。また、感光用光ELが照射されていない未照射領域では、モノマーの反応は生じない。
【0109】
そのため、照射領域では、モノマーの反応の進行に応じて、モノマーの残存量が少なくなる。これに応じて、未照射領域のモノマーが照射領域側に拡散し、これにより、照射領域と未照射領域とで屈折率差が生じる。
【0110】
ここで、本実施形態では、モノマーの屈折率が、ベースポリマーの屈折率よりも低いため、未照射領域のモノマーが照射領域に拡散することで、照射領域の屈折率が連続的に低くなるとともに、未照射領域の屈折率は連続的に高くなる。
【0111】
かかる過程を経て、図6(B)に示すように、フィルム210の未照射領域が、コア部211、位置決用コア部213および高屈折率領域214となり、フィルム210の照射領域が低屈折率領域215となったコア層21が形成される。
【0112】
<1−5> 次に、コア層21上に、コア層21の下側に形成したクラッド層22と同様のフィルムを貼り付けることで、クラッド層22を形成する。
【0113】
これにより、一対のクラッド層22は、クラッド部212とは異なる方向すなわちコア部211の上下方向から、コア部211を挟むように配置され、その結果、図7(A)に示すような光導波路20が形成される。
【0114】
なお、上側のクラッド層22は、フィルム状のものを貼り付けるのではなく、コア層21上に液状材料を塗布し硬化(固化)させる方法によっても形成することができる。
【0115】
<1−6> 次に、双方のクラッド層22に、保護層29を形成する。
【0116】
この保護層29の形成には、前記工程<1−5>で説明したクラッド層22の形成方法と同様の方法を用いることができる。
【0117】
<1−7> 次に、各層が積層された積層体2に、例えば、レーザー加工、研削加工等を施すことで、上述したコア部211および位置決用コア部213の所定の位置に、それぞれ、欠損部28a、28bおよび欠損部28a、28bを形成する。
【0118】
以上のような工程を経て、図7(B)、図8に示すような光導波路基板2が製造される。
【0119】
なお、本実施形態では、ベースポリマーよりも屈折率の低いモノマーを含有する樹脂組成物を用いて、コア部211とクラッド部212とを備えるコア層21を形成する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、ベースポリマーよりも屈折率の高いモノマーを含有する樹脂組成物を用いて、前記コア層21を形成するようにしてもよい。
【0120】
このような樹脂組成物を用いる場合、感光用光ELの照射によりモノマーが拡散するフィルム210の照射領域において、フィルム210の未照射領域よりも屈折率が高くなる。そのため、かかる形態では、フィルム210の照射領域と未照射領域とがそれぞれコア部211、評価用コア部213および高屈折率領域214と、低屈折率領域215となったコア層21が形成される。
【0121】
<2> 次に、配線基板3a、3bを用意する。
配線基板3a、3bは、それぞれ、例えば、平板状の基部の両面に金属層が形成された積層板(例えば、両面銅張り板)を用意し、エッチング、レーザ加工等を施して、金属層を所定形状にパターニングして配線部を形成することにより製造される。
【0122】
<3> 次に、発光素子4および発光素子用IC40と、受光素子5および受光素子用IC50とを用意し、発光素子4および発光素子用IC40を配線基板3aの所定の位置に、受光素子5および受光素子用IC50を配線基板3bの所定の位置にそれぞれ搭載(接合)する。
【0123】
<4> 次に、発光素子4が有する発光部43が欠損部28aのミラー23aに対応するように配線基板3aを位置決めし、さらに、受光素子5が有する受光部が欠損部28bのミラー23bに対応するように配線基板3bを位置決めしつつ、各配線基板3a、3bを光導波路基板2の上面に接着剤を用いて接合する。
【0124】
ここで、本発明では、光導波路基板20(光導波路2)は、ミラー(第1の光路変更部)を備える位置決用コア部213を有するものである。そのため、発光部43とミラー23aとの位置決め、および受光部とミラー23bとの位置決めを、優れた精度で行うことができる。
【0125】
以下、かかる構成の位置決用コア部213を用いて、発光部43とミラー23aとを位置決めして、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合する場合について詳述する。
【0126】
図8、9は、光導波路基板に配線基板を接合する方法を説明するための模式図(平面図)である。なお、以下の説明では、図8、9中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。また、説明の都合上、図8、9中では、低屈折率領域および高屈折率領域の記載を省略している。
【0127】
<4−1> まず、光導波路2の端部26a側に光源を配置し、この光源からの光Lを、端部26aで露出する位置決用コア部213aの端部(一端)に導入する。
【0128】
これにより、位置決用コア部213aに導入された光Lは、位置決用コア部213a中を伝送され、最終的には、その他端にまで伝送(伝搬)される。このとき、他端には、前述したように欠損部27aが設けられ、位置決用コア部213aの欠損部27aを臨む面がミラーを構成しているため、光Lがミラーで光導波路2の上側に反射されることから、欠損部27aの一部を、図8に示す塗潰し部分のように選択的に発光させることができる。
【0129】
<4−2> 次に、発光素子4の素子本体41に設けられたアライメントマーク44が、ミラーの発光部位すなわち図8に示した塗潰し部分に対応するように光導波路基板2に配線基板3aを位置決めしつつ、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合する。
【0130】
ここで、本実施形態では、互いにその中心軸がほぼ並列に配置された各コア部211が、ほぼ均一な離間距離Xをもって配置されている。さらに、各コア部211同士の間に配置された位置決用コア部213も隣接する各コア部211と等間隔を維持して配置されているため、位置決用コア部213と隣接するコア部211との離間距離は、距離X/2となる。
【0131】
また、発光素子4が有する各発光部43も、各欠損部28aのミラー23aに対応して配置する必要があるため、位置決用コア部213の中心軸と直交する垂線l上に離間距離Xを保って配置されている。
【0132】
したがって、素子本体41において、アライメントマーク44を、発光部43から距離X/2離れた垂線l上の位置に形成することで、アライメントマーク44が図8に示した塗潰し部分に対応するように、配線基板3aを光導波路基板2に位置決めした際には、発光部43が欠損部28aのミラー23a(特にミラーの反射部位)に対応して位置合わせされることとなる。
【0133】
そのため、このような状態で、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合することで、発光部43を欠損部28aのミラー23aに対して優れた精度で配置させることができる。
【0134】
なお、発光部43を欠損部28aに対して直接位置決めすることによっても、発光部43をミラー23aに対して配置させることができるが、欠損部28aを設けることで、コア部211の欠損部28aを臨む面をミラー23aとする本実施形態の構成では、ミラー23aの一部でもって、コア部211中を伝送された光Lを反射する。そのため、発光部43を欠損部28aに対して直接位置決めすると、ミラー23aの光Lを反射する部位と発光部43との相対的な位置にズレが生じ、発光部43からコア部211への光Lの伝達効率が低下する可能性が高い。
【0135】
これに対して、上述したような、ミラーの発光部位(反射部位)に対してアライメントマークを位置合わせする方法は、実際にミラー(第1の光路変更部)の一部を図8に示す塗潰し部分のように発光させて、これにアライメントマークを位置合わせすることで、ミラー23aの光Lを反射する部位と発光部43とを間接的に位置決めする方法であるため、発光部43からコア部211への光Lの伝達効率を向上させるには、特に有効な手法である。
【0136】
以上のような工程(本発明の光導波路構造体の製造方法)を経て、光導波路構造体1が製造される。
【0137】
また、光導波路基板2の上面への配線基板3bの接合に先立って、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合する場合には、以下のような方法を採用することもできる。
【0138】
すなわち、光導波路20の上面側に光源を配置し、この光源からの光Lを、欠損部28bからコア部211に導入させることで、コア部211の他端に配置された欠損部28aの一部を選択的に発光させる。そして、この欠損部28aの発光部位に、発光部43が対応するように位置合わせすることで、発光部43をミラー23aに対して優れた精度で位置決めされた状態で、光導波路基板2上に、配線基板3aを接合することができる。
【0139】
なお、光源を光導波路20の上面側に配置して、一端側の欠損部から光を導入することで他端側の欠損部を発光させ、この欠損部の発光に基づいて一方の配線基板を光導波路基板2上に接合する方法は、他方の配線基板が光導波路基板2上に接合されていない場合のみ採用し得る手法である。したがって、前記工程<4−1>、<4−2>で説明した、位置決用コア部213を用いた光導波路基板2上に配線基板を接合する方法は、光導波路基板2上にすでに、他方の配線基板が接続されている場合に採用するのが、特に有効な手法である。
【0140】
また、図8に示すように、光源を光導波路20の端部(端面)26a側に配置する場合、クラッド部212を越えて、欠損部28bが設けられたコア部211の端部に光Lを伝達させることができれば、欠損部28aの一部を選択的に発光させることができる。そのため、欠損部28aの発光部位に、発光部43が対応するように位置合わせすることで光導波路基板2上に、配線基板3aを接合することができる。しかしながら、本実施形態では、光Lをコア部211の端部にまで伝達させるには、クラッド部212が備える高屈折率領域214(図8中には図示せず)を通過させる必要があるため、コア部211の端部への光Lの伝達効率が低下し、欠損部27aの一部を視認性よく発光させるのには困難を伴う。したがって、かかる構成の光導波路20において、位置決用コア部213を用いた光導波路基板2上に配線基板を接合する方法は有効な手法であると言える。
【0141】
さらに、配線基板3bを光導波路基板2の上面に接合する場合では、光導波路2の端部26b側に光源を配置することで、欠損部27bの一部を選択的に発光させ、この発光部位に受光素子5の素子本体51に設けられたアライメントマークを位置合わせすることで、受光素子5の受光部を欠損部28bのミラー23bに対して優れた精度で配置させることができる。
【0142】
<第2実施形態>
次に、本発明の光導波路の第2実施形態について説明する。
【0143】
図10は、本発明の光導波路構造体の第2実施形態が備えるコア層を示す平面図である。なお、以下の説明では、図10中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。また、説明の都合上、図10中では、低屈折率領域および高屈折率領域の記載を省略している。
【0144】
以下、本実施形態にかかる光導波路2について説明するが、前記第1実施形態にかかる光導波路2との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0145】
本実施形態にかかる光導波路2は、コア層21が備えるコア部211および位置決用コア部213の数およびそれらの配置位置が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0146】
図10に示すコア層21では、4つのコア部211と、2つの位置決用コア部213aとを有している。そして、4つのコア部211がクラッド部212を介して並設され、さらに、これらコア部211を挟むように、2つの位置決用コア部213aがクラッド部212を介して並設されている。
【0147】
かかる構成のコア部211および位置決用コア部213を備えるコア層21においても、前記第1実施形態で説明したのと同様に、位置決用コア部213を設けることによる作用・効果を得ることができる。
【0148】
すなわち、前記工程<4−1>、<4−2>を経ることで、優れた位置精度をもって、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合することができる。
【0149】
なお、コア部211と位置決用コア部213との位置関係を、本実施形態のようなものとすること、すなわち、4つのコア部211を2つの位置決用コア部213で挟んだような構成とすることで、2つの位置決用コア部213が備える欠損部27a同士の離間距離を大きく保つことが可能となる。したがって、発光部43とミラー23aとの位置決めの際には、前記離間距離が大きく保たれた2つの欠損部27aを用いて位置決めがなされるため、コア部211の中心軸の垂線方向に対する発光部43の位置ずれの発生率をより小さくすることができる。
【0150】
また、光導波路基板2上に配線基板3aを接合するのに代えて、配線基板3bを接合する場合には、2つの位置決用コア部213aに代えて、2つの位置決用コア部213bを、コア部211を挟むようにクラッド部212を介して並設すればよい。
【0151】
<第3実施形態>
次に、本発明の光導波路の第3実施形態について説明する。
【0152】
図11は、本発明の光導波路構造体の第3実施形態が備えるコア層を示す平面図である。なお、以下の説明では、図11中の紙面手前側を「上」といい、紙面奥側を「下」という。また、説明の都合上、図11中では、低屈折率領域および高屈折率領域の記載を省略している。
【0153】
以下、本実施形態にかかる光導波路2について説明するが、前記第1実施形態にかかる光導波路2との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0154】
本実施形態にかかる光導波路2は、コア層21が備えるコア部211および位置決用コア部213の数およびそれらの配置位置が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0155】
図11に示すコア層21では、4つのコア部211と、1つの位置決用コア部213aとを有している。そして、4つのコア部211がクラッド部212を介して並設され、さらに、これらコア部211の外側に位置するように、1つの位置決用コア部213aがクラッド部212を介して並設されている。
【0156】
かかる構成のコア部211および位置決用コア部213を備えるコア層21においても、前記第1実施形態で説明したのと同様に、位置決用コア部213を設けることによる作用・効果を得ることができる。
【0157】
すなわち、前記工程<4−1>、<4−2>を経ることで、優れた位置精度をもって、配線基板3aを光導波路基板2の上面に接合することができる。
【0158】
なお、1つの位置決用コア部213を設ける場合、その位置は、特に限定されず、本実施形態のように、4つのコア部211の外側に設ける場合の他、各コア部211同士間のいずれか1つに設けるようにしてもよい。
【0159】
また、光導波路基板2上に配線基板3aを接合するのに代えて、配線基板3bを接合する場合には、1つの位置決用コア部213aに代えて、1つの位置決用コア部213bを、クラッド部212を介して並設すればよい。
【0160】
<第4実施形態>
次に、本発明の光導波路の第4実施形態について説明する。
【0161】
図12は、本発明の光導波路構造体の第4実施形態が備えるコア層を示す平面図である。
【0162】
以下、本実施形態にかかる光導波路2について説明するが、前記第1実施形態にかかる光導波路2との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0163】
本実施形態にかかる光導波路2は、高屈折率領域214および低屈折率領域215の平面視のパターンが異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0164】
図12に示すクラッド部212は、平面視で粒状をなす複数の高屈折率領域214を有するものである。
【0165】
この複数の高屈折率領域214は、前記第1実施形態で説明した高屈折率領域214と同様、低屈折率領域215よりも屈折率が高い領域であり、低屈折率領域215に囲まれるようにして整列している。
【0166】
また、各高屈折率領域214は、互いに独立しており、また、各コア部211に直接接触しないように設けられている。すなわち、高屈折率領域214とコア部211と位置決用コア部213との間に、それぞれ低屈折率領域215が介挿された状態になっている。
【0167】
このような高屈折率領域214は、前記第1実施形態と同様に、その屈折率がクラッド部212の他の領域、すなわち低屈折率領域215よりも高ければよいが、好ましくはその差が0.5%以上とされ、より好ましくはその差が0.8%以上とされる。また、上限値は特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%とされる。高屈折率領域214と低屈折率領域215との間にこのような十分な屈折率差を設けることにより、高屈折率領域214と低屈折率領域215との界面で確実に全反射を生じさせることができる。その結果、高屈折率領域214を伝搬する光が不本意にも低屈折率領域215に漏れ出るのをより確実に防止することができる。
【0168】
また、本実施形態にかかる光導波路20では、入射側端面10aから入射した光が出射側端面10bに伝搬する途中で、コア部211からクラッド部212(低屈折率領域215)に漏れ出た光が、高屈折率領域214に達すると、そこで不規則に散乱される。これにより、コア部211からクラッド部212に漏れ出た光は、出射側端面10bに達する前に広範囲に広がり減衰することとなる。その結果、出射側端面10bでは、クラッド部212から出射するノイズ光の光強度が低減されることとなり、搬送波としてのS/N比を高めることができる。
【0169】
粒状をなす高屈折率領域214の平面視における形状は、特に限定されず、例えば、真円、楕円、長円のような円形、三角形、四角形、六角形、八角形、星型のような多角形、半円、扇型等とされる。
【0170】
また、高屈折率領域214の輪郭は、図12に示すように凹凸を有しているのが好ましい。これにより、高屈折率領域214の輪郭は、コア部211から漏れ出た光を受ける面が不規則性を有することとなり、光を確実に乱反射することができる。
【0171】
また、各高屈折率領域214の平均粒径は、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜300μm程度であるのがより好ましい。各高屈折率領域214の平均粒径を前記範囲内とすることにより、各高屈折率領域214が光を散乱する確率を十分に高めることができる。
【0172】
かかる構成の高屈折率領域214を備えるコア層21においても、前記第1実施形態で説明したのと同様に、位置決用コア部213を設けることによる作用・効果を得ることができる。
【0173】
本発明の光導波路構造体は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であり、例えば、マザーボードまたはインターポーザ上に電気的に接続された光導波路構造体を備える光電気混載基板に適用される。なお、この場合、光電気混載基板が備えるマザーボードまたはインターポーザ上には、さらに半導体素子等が電気的に接続されていてもよい。
【0174】
さらに、本発明の光導波路構造体備える光電気混載基板は、例えば、ルータ装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路構造体を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0175】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度が高められるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0176】
以上、本発明の光導波路、光導波路構造体、光導波路構造体の製造方法および電子機器の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0177】
例えば、光導波路構造体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0178】
また、本発明の光導波路構造体では、前記第1、第2実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
【0179】
また、前記各実施形態では、コア部および位置決用コア部の縦断面形状が四角形状をなしている場合について示したが、これに限定されない。コア部および位置決用コア部の縦断面形状は、楕円形、長円形、三角形等であってもよい。
【0180】
さらに、前記各実施形態では、位置決用コア部の光路方向の双方の端部が光導波路の端部から露出する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、光導波路の端部から位置決用コア部への光の入出射が可能な範囲において、位置決用コア部の端部にクラッド部が接して設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0181】
1 光導波路構造体
2 光導波路基板
20 光導波路
21 コア層
210 フィルム
211 コア部
212 クラッド部
213 位置決用コア部
214 高屈折率領域
215 低屈折率領域
22 クラッド層
23a、23b ミラー
26a、26b 端部
27a、27b 欠損部
28a、28b 欠損部
29 保護層
3a、3b 配線基板
30 配線部
4 発光素子
41 素子本体
42 バンプ
43 発光部
44 アライメントマーク
40 発光素子用IC
401 素子本体
402 バンプ
5 受光素子
51 素子本体
52 バンプ
50 受光素子用IC
501 素子本体
502 バンプ
70 感光性樹脂組成物
M マスク
L 光
EL 感光用光
X 離間距離
l 垂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝送させて使用する平板状をなす光導波路であって、
コア部と、該コア部に並設された位置決用コア部と、前記コア部および前記位置決用コア部の少なくとも一方に隣接して設けられたクラッド部とを備え、
前記位置決用コア部は、その光路の方向を変更する第1の光路変更部を備えることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記位置決用コア部を複数有し、
前記位置決用コア部は、前記コア部を挟む位置に並設されている請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記位置決用コア部は、その光路方向の一方の端部が、当該光導波路の端面において露出し、前記一方の端部から導入された光が、前記第1の光路変更部において導出される請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記コア部の少なくとも一方の端部には、前記光路の方向を変更する第2の光路変更部を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路。
【請求項5】
前記評価用コア部は、前記コア部に対してその中心軸が並列に設けられている請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記第1の光路変更部と前記第2の光路変更部とは、ともに前記中心軸に対する1つの垂線上に位置する請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記コア部は、その光路方向の少なくとも一方の端部が、当該光導波路の端面において露出することなく設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記クラッド部は、前記コア部よりも屈折率が低く、前記コア部および前記位置決用コア部の少なくとも一方に接した低屈折率領域と、該低屈折率領域よりも屈折率が高く、該低屈折率領域を介して前記コア部および前記位置決用コア部から離間した複数の高屈折率領域とを有し、該複数の高屈折率領域は、前記クラッド部中に点在または整列している請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路。
【請求項9】
前記複数の高屈折率領域は、前記クラッド部を通過する光を、前記コア部から遠ざかる方向に屈折させるもの、または不規則に散乱させるものである請求項8に記載の光導波路。
【請求項10】
前記各高屈折率領域は、それぞれ粒状をなしている請求項8または9に記載の光導波路。
【請求項11】
前記各高屈折率領域は、それぞれ短冊状をなしている請求項8ないし10のいずれかに記載の光導波路。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする光導波路構造体。
【請求項13】
発光部または受光部を備える光素子を有する請求項12に記載の光導波路構造体。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光導波路が備える前記位置決用コア部に光を導入した状態で、発光部または受光部を備える光素子の位置決めがなされることを特徴とする光導波路構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項12または13に記載の光導波路構造体を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−194286(P2012−194286A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57251(P2011−57251)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】