説明

光導波路

【課題】スポットサイズを変換する光導波路を用い、より効率的に光結合ができるようにする。
【解決手段】この光導波路は、第2コア103を、スポットサイズ変換領域112の開始端(導波領域111の側)にかけて先細りに形成したところに特徴がある。このように、第2コア103が、スポットサイズ変換領域112の開始端にかけて先細りに形成されているので、導波領域111かとスポットサイズ変換領域112との界面で生じる、導波光の反射および損失をより小さくすることができるようになる。この結果、より効率的に光結合ができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積した2つの光導波路素子を光結合するための光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信における基幹部品として、現在、石英系の平面光波回路(PLC)が広く使用されている。これまで、石英系PLCの主な素子として、アレイ導波路回折格子,ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer),およびスプリッタなどが製品化されてきた。近年はさらに、半導体光増幅素子(SOA)と石英系PLCを集積化した波長可変レーザーなどの新規機能素子の開発が進展し、能動素子と受動素子を混載した小型で安価かつ高機能の素子およびシステムを実現する試みが活発化している。
【0003】
しかし、情報伝送量の急速な増加にともない、基幹部品の高集積化は不可避の状況となっており、素子の寸法や電力消費の点で、石英系PLCには限界が見え始めてきた。これに対応するために、小型化・低消費電力化を可能にするシリコンフォトニクスが注目されている。シリコンフォトニクスとは、Siからコアを構成し、SiO2からクラッドを構成する高屈折率差の導波路を利用したものを指している。この光導波路は、石英系導波路と比較して曲げ半径を小さくできるため、PLCの小型化を可能にする。さらに、電子回路との集積化が可能であり、また、LSIと同様の製造リソースの利用が可能であり、低価格かつ生産性が高いなどの利点を備えており、近年、特に研究開発が活発になっている。
【0004】
しかしながら、シリコンフォトニクスでは、シリコンの材料特性から、発光効率が極めて低いため、光機能素子として用いる際には、化合物半導体のレーザーダイオードや光増幅器などとを集積化することが不可欠である。近年、注目されている形態の例としては、Si導波路を形成した基板上に化合物半導体素子を貼り合わせる、モノリシック集積が挙げられる。非特許文献1には、AlGaInAs多重量子井戸とSi導波路のエバネッセント結合により光学利得を設け、レーザー動作を確認したことが報告されている。
【0005】
この構成における導波モードプロファイルは、III−V媒質とSi導波路の双方に重なっている。このため、導波モードはIII−V領域から利得を得ることができ、同時に、III−V領域の下にあるSi導波路領域により導波されることになる。この形態の最大の利点は、III−V領域は横方向において対称性を有することから、あらかじめ形成したSi導波路に対してIII−Vウエハーを貼り合わせるときには、高精度の目合わせは不要であるということである。しかし、この形態の特性はIII−V媒質単体で実現されるものには及ばず、実際、これまで報告されている特性は従来素子に比べると劣っている。
【0006】
上述した技術に対し、化合物半導体チップをSOIウエハーに対してハイブリッドに集積する形態は、特に、高い性能の要求される光通信においては、依然、その重要性を保っている。この集積においては、突き合わせる導波路同士の導波モードのスポットサイズを整合させて光結合損失を低減する他、結合部における反射を低減するための構造の導入が重要となる。中でも、ハイブリッド集積したときの結合部における反射は、不必要なレーザー発振を誘起するなど、所望の動作を不安定化する要因となる。これは、化合物半導体と光回路を含めた外部共振器型レーザーを構成したときには、特に顕著である。
【0007】
これまで、シリコン導波路と光ファイバーとの光学結合を効率良く得るため、例えば、特許文献1には、シリコンより低い屈折率を有するSiONなどより構成したコアによる導波路を利用した構造が提案されている。この構造においては、シリコン導波路をSiONなどの導波路に接続することで、導波光のスポットサイズを拡大し、光ファイバーとの結合効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−133446号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alexander W. Fang et al. ,"Electrically pumped hybrid AlGzInAs-silicon evanescent laser", Optics Express, Vol.14, No.20, pp.9203-9210, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した構成の導波路においては、シリコンやSiONなどのコア形状が、導波光の伝搬方向に沿って不連続に変化する箇所や端面において、反射が生じる。これは、屈折率分布が伝搬方向に沿って不連続に変化するためである。また、同様の導波路構造を用いて、化合物半導体などとのスポットサイズを整合させる場合には、一般的にスポットサイズをファイバーのそれより小さく設計することが必要である。したがって、SiONなどから構成するコアの屈折率は、ファイバーとの光学結合に用いるときよりも、高くすることが必要となる。シリコン導波路に接続するSiONなどの屈折率が高くなれば、このコア形状が不連続に変化する箇所などにおける反射はさらに顕著となり、光結合の効率を低下させることにもつながる。特に、光結合において反射が顕著になることは、集積素子の動作不安定化などの原因となるため、問題となる。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、スポットサイズを変換する光導波路を用い、より効率的に光結合ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光導波路は、下部クラッド層と、この下部クラッド層の上の導波領域からスポットサイズ変換領域にかけて形成され、スポットサイズ変換領域の終端となる光入出射端の手前に一端を備える第1コアと、スポットサイズ変換領域で第1コアを覆って下部クラッド層の上に形成された第2コアと、第1コアおよび第2コアを覆って下部クラッド層の上に形成された上部クラッド層とを少なくとも備え、第1コアは、第2コアに覆われている領域で一端にかけて先細りに形成され、第2コアは、スポットサイズ変換領域の開始端にかけて先細りに形成され、第2コアの屈折率は、第1コアより小さく下部クラッド層および上部クラッド層より大きい。
【0013】
また、本発明に係る光導波路は、下部クラッド層と、この下部クラッド層の上の導波領域からスポットサイズ変換領域にかけて形成され、スポットサイズ変換領域の終端となる光入出射端を一端とする第1コアと、光入出射端まで第1コアを覆って下部クラッド層の上に形成された第2コアと、第2コアを覆って下部クラッド層の上に形成された上部クラッド層とを少なくとも備え、第1コアは、光入出射端の手前より一端にかけて先細りに形成され、第2コアは、スポットサイズ変換領域から導波領域にかけて、徐々に太くなる形状傾斜領域を備え、第2コアの屈折率は、第1コアより小さく下部クラッド層および上部クラッド層より大きい。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したことにより、本発明によれば、スポットサイズを変換する光導波路を用い、より効率的に光結合ができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本実施の形態1における光導波路の構成を示す平面図である。
【図1B】実施の形態1における光導波路の導波方向に平行な断面を示す断面図である。
【図2A】本実施の形態2における光導波路の構成を示す平面図である。
【図2B】実施の形態2における光導波路の導波方向に平行な断面を示す断面図である。
【図2C】図2Aのcc’線の断面を示す断面図である。
【図2D】図2Aのdd’線の断面を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光導波路の適用例を示す平面図である。
【図4A】実施の形態1における光導波路の製造方法を説明する工程図である。
【図4B】実施の形態1における光導波路の製造方法を説明する工程図である。
【図4C】実施の形態1における光導波路の製造方法を説明する工程図である。
【図4D】実施の形態1における光導波路の製造方法を説明する工程図である。
【図5】本発明の実施の形態1における光導波路の適用例を示す断面図である。
【図6A】本実施の形態2における光導波路の構成を示す平面図である。
【図6B】実施の形態2における光導波路の適用例を示す平面図である。
【図7A】本発明における光導波路の適用例を示す平面図である。
【図7B】本発明における光導波路の適用例を示す平面図である。
【図8】本発明における光導波路の適用例を示す平面図である。
【図9A】本発明における光導波路の適用例を示す断面図である。
【図9B】本発明における光導波路の適用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0017】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1A,図1Bを用いて説明する。図1Aは、本実施の形態1における光導波路の構成を示す平面図である。また、図1Bは、実施の形態1における光導波路の導波方向に平行な断面を示す断面図である。
【0018】
この光導波路は、まず、下部クラッド層101と、下部クラッド層101の上の導波領域111からスポットサイズ変換領域112にかけて形成され、スポットサイズ変換領域112の終端となる光入出射端103aの手前に一端を備える第1コア102と、スポットサイズ変換領域112で第1コア102を覆って下部クラッド層101の上に形成された第2コア103とを備える。第1コア102は、第2コア103に覆われている領域で一端にかけて先細りに形成されている。また、第1コア102および第2コア103を覆って下部クラッド層101の上に形成された上部クラッド層104とを備える。なお、図1Aでは、上部クラッド層104を省略して示している。
【0019】
第1コア102の先細りとなっている先端部は、断面積が小さいほど、導波モードプロファイルの第1コア102に対する閉じ込めが小さくなり(第2コア103に対する閉じ込めが強くなり)、第2コア103による導波モードプロファイルが支配的となる。従って、第1コア102の先端部の断面積を可能な範囲で小さくすることで、第1コア102の先端部で生じる導波光の反射および損失を小さくすることができるようになる。
【0020】
上述した構成に加え、本実施の形態にける光導波路は、第2コア103を、スポットサイズ変換領域112の開始端(導波領域111の側)にかけて先細りに形成したところに特徴がある。このように、第2コア103が、スポットサイズ変換領域112の開始端にかけて先細りに形成されているので、本実施の形態によれば、導波領域111とスポットサイズ変換領域112との界面で生じる、導波光の反射および損失をより小さくすることができるようになる。この結果、より効率的に光結合ができるようになる。
【0021】
ここで、第2コア103の屈折率は、第1コア102より小さく下部クラッド層101および上部クラッド層104より大きい。例えば、下部クラッド層101および上部クラッド層104は、酸化シリコンから構成し、第1コア102はシリコンから構成し、第2コア103は、酸窒化シリコンから構成すればよい。
【0022】
なお、上述では、第2コア103の先細りに形成した領域は、図1Bに示すように、下部クラッド層101の平面の法線方向の高さは変化しておらず、図1Aに示すように、平面形状が先細りとなるようにしているが、これに限るものではない。高さ方向もスポットサイズ変換領域112の開始端に近いほど小さくなるようにしてもよい。第2コア103は、スポットサイズ変換領域112の開始端に近いほど、断面積が徐々に小さくなる世に形成されていればよい。また、このことは、第1コア102の一端側の先細り形状においても同様である。
【0023】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図2A〜2D,図3を用いて説明する。図2Aは、本実施の形態2における光導波路の構成を示す平面図である。また、図2Bは、実施の形態2における光導波路の導波方向に平行な断面を示す断面図である。また、図2Cは、図2Aのcc’線の断面を示し、図2Dは、図2Aのdd’線の断面を示している。
【0024】
この光導波路は、まず、下部クラッド層の上の導波領域211からスポットサイズ変換領域212にかけて形成され、スポットサイズ変換領域212の終端となる光入出射端203aの手前に一端を備える第1コア202と、スポットサイズ変換領域212で第1コア202を覆って下部クラッド層の上に形成された第2コア203とを備える。第1コア202は、第2コア203に覆われている領域で一端にかけて先細りに形成されている。また、第1コア202および第2コア203を覆って下部クラッド層の上に形成された上部クラッド層とを備える。なお、下部クラッド層および上部クラッド層を含む他の構成については、上述した実施の形態1と同様であり、図2A〜図2Dでは、下部クラッド層および上部クラッド層を省略して示している。
【0025】
また、本実施の形態においても、第2コア203を、スポットサイズ変換領域212の開始端(導波領域211の側)にかけて先細りに形成している。。図2Dの断面図は、第2コア203の開始端の幅を小さくした結果、第1コア202の幅より小さくなっている場合を表している。なお、図2Dは、図2Aのdd’線の断面を示しており、第1コア202はこの断面が示されるが、第2コア203は開始端となるため断面とはならない。このため、図2Dでは、第2コア203については、開始端の表面が示されている。
【0026】
前述したように、第2コア203の開始端の断面積が小さいほど、導波モードプロファイルの第1コア202に対する閉じ込めは強くなり、第1コア202によって、導波モードプロファイルが支配的に決まる状態となる。この結果、本実施の形態においても、第2コア203の開始端において生じる反射と損失を小さくすることができる。
【0027】
加えて、本実施の形態では、第1コア202は、スポットサイズ変換領域212の開始端の手前の導波領域で、開始端にかけて徐々に太くなる形状傾斜領域213を備える。この、第1コア202の断面積が増大する変化は、開始端にかけて導波する光の基本モードが維持される範囲とする。この構成とすることで、低反射かつ低損失の光結合ができるようになり、より効率的に光結合ができるようになる。
【0028】
開始端における反射の影響は、導波領域211における第1コア202を、断面形状が数百nm角のシリコン細線から構成する場合、特に顕著となる。これは、導波モードプロファイルのシリコン細線コアへの光閉じ込め係数は比較的小さいためである。これに対し、上述したように、スポットサイズ変換領域212の開始端において、第1コア202の断面積が大きくなるようにすれば、導波モードプロファイルのシリコンコア(第1コア202)への閉じ込め係数を大きくすることができる。この結果、開始端における反射などの影響をより低減することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、第2コア203が、光入出射端203aの手前で、光出射端にかけて徐々に径が変化する形状傾斜領域214を備える。図2Aでは、光出射端にかけて徐々に細くなる場合について示している。形状傾斜領域214の手前の、スポットサイズ変換領域212の中間の領域においては、導波する光の単一モード条件が満たされる範囲で、第2コア203の断面積を大きくしておく方が望ましい。このような導波路を作製することで、第1コア202の先端部における反射と損失を小さくすることができる。
【0030】
また、形状傾斜領域214により、第2コア203の断面積(径)を徐々に変化させることで、光入出射端203aにおいて他の光素子と低損失で光結合が行える状態の適切な導波モードプロファイルが得られるようになる。例えば、形状傾斜領域214においては、基本モードが維持される範囲で、第2コア203の断面積を出射端にかけて大きくし、他の光素子に光結合させる場合も考えられる。
【0031】
例えば、図3の平面図に示すように、本実施の形態における導波領域211およびスポットサイズ変換領域212を備える光導波路が形成された光回路220に対し、導波路型の化合物半導体光素子301を組み合わせることができる。化合物半導体光素子301は、例えば、導波路型の半導体レーザである。化合物半導体光素子301の光出射端302と光入出射端203aとが、対向して光結合している。
【0032】
図3に示す例では、導波領域211およびスポットサイズ変換領域212の導波方向を、光入出射端203aの平面に対し、直角より傾斜して配置している。化合物半導体光素子301においても同様に、出射光(レーザ光)の出射方向が、光出射端302の平面に対し、直角より傾斜して配置している。また、光出射端302と光入出射端203aとの間には、屈折率整合剤303を配置し、各端面における光の反射を低減している。
【0033】
ここで、第2コア203の屈折率は、基本的には、屈折率整合剤303の屈折率に合わせて設計すれば、端面における反射を低減できる。一方、第1コア202の先細りの先端部における反射を低減するためには、第2コア203の屈折率が高いほど緩和される。これは、第1コア202と第2コア203との間の屈折率差が小さくなり、導波モードプロファイルの第1コア202に対する閉じ込めが小さくなる結果として得られる効果である。また、第2コア203の開始端における反射は、導波モードプロファイルの第1コア202に対する閉じ込めが大きいほど低減されるため、第2コア203屈折率は、クラッドと同程度に設計するか、または第1コア202の寸法を大きくすると良い。これらを考慮し、導波路構造や第2コア203の屈折率を設計する。
【0034】
第1コア202の先細りの先端部(界面)における導波光の強度反射率を測定した結果について説明する。評価測定用の試作においては、第2コア203として屈折率1.55のSiONを用いる。また、第1コア202の先端部における第2コア203の断面寸法は、幅1.5μm、高さ1.4μmとする。強度反射率測定には、波長1.5μm帯の光源を用いたリフレクトメータを使用する。
【0035】
上述した測定の結果、第1コア202の先細りの先端部の寸法を、幅161nm,高さ270nmとしたときに、強度反射率0.32%が確認される。原理的には、第1コア202の先端部をさらに微細に加工することで、反射をさらに低減させることも可能である。ここで、第1コア202の先端部においては、幅に加えて高さを低減することが、反射の低減においてより重要となる。したがって、第1コア202の先端部において、幅に加えて高さも小さくなるように先細りの形状とすることが、反射の低減(反射による損失の低減)にはより効果的である。また、より薄い半導体層を加工して第1コア202を形成するようにしてもよい。
【0036】
次に、製造方法について、図4A,図4B,図4C,図4Dを用いて簡単に説明する。本実施の形態における光導波路は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いることで形成できる。SOI基板の、埋め込み絶縁層の上の表面シリコン層に、例えば、電子線露光用のレジストを塗布し、露光および現像を行ってマスクパターンを形成する。このマスクパターンをマスクとし、表面シリコン層をドライエッチングする。用いたマスクパターンを除去すれば、図4Aの平面図に示すように、埋め込み絶縁層401の上に、シリコンパターン402が形成される。形成されたシリコンパターン402は、上述したマスクパターンと同形状となっている。なお、図において、他の部分との区別を明確にするために、シリコンパターン402の部分をグレーとしている。
【0037】
ところで、いわゆるポジレジストを用いる場合、パターンとして残す箇所以外に電子線を照射する。一方、ネガレジストを用いる場合、パターンとして残す箇所に電子線を照射する。
【0038】
シリコンパターン402は、コアとなるコア部402aと、この周囲を囲う枠部402bと、枠部402bに連結する連結部402cとを備える。コア部402aの先細りの先端部は、連結部402cで枠部402bに連結して形成される。このため、例えば、幅100nmと非常に細いパターンとしても、現像時にこの箇所のマスクパターンが流れて消失することが抑制でき、先細りの先端部を安定して形成することができる。
【0039】
次に、図4Bの平面図に示すように、前述した第1コア202となるコア部402aを覆うレジストパターン403を形成する。この状態で、埋め込み絶縁層401の上の露出している他の表面シリコン層(枠部402bおよび連結部402cなど)を選択的にエッチング除去すれば、図4Cの平面図に示すように、埋め込み絶縁層401の上に、コア部402aが形成できる。埋め込み絶縁層401が、下部クラッド層となり、コア部402aが、第1コアとなる。次に、例えば、スパッタ法などにより酸窒化シリコンの膜を形成し、この膜を、上述同様の電子線露光によるリソグラフィー技術とエッチング技術とによりパターニングし、図4Dに示すように、第2コアとなるコア部404を形成する。この後、酸化シリコンを堆積することで、上部クラッド層を形成すれば、本実施の形態における光導波路が得られる。
【0040】
本実施の形態における光導波路は、上述したようにSOI基板に形成した状態で、図5の断面図に示すように、化合物半導体光素子301と組み合わせればよい。SOI基板の基部501の上に、光導波路510が形成され、基部501を露出させた領域に化合物半導体光素子301が実装されている。光導波路510は、下部クラッド層502,第1コア503,第2コア504,および上部クラッド層505を備える。SOI基板の埋め込み絶縁層をパターニングすることで、下部クラッド層502が形成されている。また、SOI基板の表面シリコン層をパターニングすることで、第1コア503が形成されている。化合物半導体光素子301を搭載する搭載部521には、マウントステージを形成した後に、アライメント(位置合わせ)実装を行えばよい。
【0041】
例えば、化合物半導体光素子301として光増幅素子を使用し、光導波路510の第1コア503よりなる導波路に可変波長フィルター機能を持たせれば、光導波路510に外部共振器を備える波長可変レーザーとすることができる。特に、光導波路510の第1コア503よりなる導波路に、リング共振器を構成すれば、石英系導波路と比較して小型にすることができる。加えて、リング共振器において熱光学効果を用いて波長を調整する場合に、その係数の差などから、消費電力を低減できる。
【0042】
これら2つの素子を集積したときの光結合部における反射は、安定した波長チューニング動作の確保において、特に重要である。本発明の光導波路を用いることにより、低反射かつ低損失の光結合を得ることができ、安定した可変波長レーザー動作を実現することができる。
【0043】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、図6Aおよび図6Bを用いて説明する。図6Aおよび図6Bは、本実施の形態3における光導波路の構成を示す平面図である。
【0044】
本実施の形態における光導波路は、下部クラッド層601と、下部クラッド層601の上の導波領域611からスポットサイズ変換領域612にかけて形成され、スポットサイズ変換領域612の終端となる光入出射端613を一端とする第1コア602を備える。また、光入出射端613まで第1コア602を覆って下部クラッド層601の上に形成された第2コア603を備える。なお、図示していないが、第2コア603を覆って下部クラッド層601の上には、上部クラッド層を備える。
【0045】
また、本実施の形態における光導波路では、第1コア602は、光入出射端613の手前より一端にかけて先細りに形成されている。また、第2コア603は、スポットサイズ変換領域612から導波領域611にかけて、徐々に太くなる形状傾斜領域614を備える。なお、第2コア603の屈折率は、第1コア602より小さく下部クラッド層601および上部クラッド層より大きい。
【0046】
例えば、図6Bの平面図に示すように、本実施の形態における導波領域611およびスポットサイズ変換領域612を備える光導波路が形成された光回路620に対し、導波路型の化合物半導体光素子301を組み合わせることができる。化合物半導体光素子301の光出射端302と光入出射端613とが、対向して光結合している。
【0047】
図6Bに示す例では、導波領域611およびスポットサイズ変換領域612の導波方向を、光入出射端613の平面に対し、直角より傾斜して配置している。化合物半導体光素子301においても同様に、出射光の出射方向が、光出射端302の平面に対して直角より傾斜して配置している。また、光出射端302と光入出射端613との間には、屈折率整合剤303を配置し、各端面における光の反射を低減している。
【0048】
本実施の形態における光導波路によれば、第1コア602の全域が、第2コア603で覆われているので、導波光の伝搬方向に沿った導波路構造の不連続な変化がない。このため、不連続な部分の存在による反射と損失とを抑制することができる。また、形状傾斜領域614により、第2コア603の断面積を変化させることで、光入出射端613において、化合物半導体光素子301(光出射端302)と低損失で光結合が行える状態の適切な導波モードプロファイルが得られるように断面サイズを作製しておく。また、形状変化領域614における断面寸法の変化を、導波光の伝搬方向に沿って十分な長さで変化させれば、反射と損失を低減することができる。
【0049】
次に、本発明の光導波路の適用例について説明する。図7Aおよび図7Bは、本発明の光導波路701に、半導体光増幅素子702を組み合わせてマッハ・ツェンダー干渉計を構成した例を示す平面図である。図7Aは、波長変換の分波器として用いる場合の構成であり、図7Bは時分割多重の分波器として用いる場合の構成である。いずれの構成においても、2つの半導体光増幅素子702と、4組の導波領域111およびスポットサイズ変換領域112を備える。また、半導体光増幅素子702の2箇所の光入出力部に対し、光導波路701を構成しているスポットサイズ変換領域112の光入出射端で光結合している。また、半導体光増幅素子702を介した各々の側で、一部の導波領域111が近設する結合器を備える。
【0050】
図7Aに示すように、波長変換の分波器とする場合、2波長の信号を各々別のポートから入力し、入力した側の結合器で、パルスの信号光のほぼ全てのパワーが、マッハ・ツェンダー干渉計の片側に移行するように設計する。この設計において、連続発振光であるもう1つの波長の信号光を干渉計の両側にパワーを等分配することで、相互位相変調を介して波長変換されたパルスの信号光が得られる。
【0051】
また、図7Bに示すように、時分割多重の分波器とする場合、クロック信号が1つのポートから入力され、マッハ・ツェンダー干渉計の両側に等分配される。2つの半導体光増幅素子702の配置の差から、各々の半導体光増幅素子702で位相変調を与えるタイミングを例えば数ピコ秒の差で制御することができ、これがマッハ・ツェンダースイッチの切り取りの時間とすることができる。
【0052】
このように構成したマッハ・ツェンダー干渉計によれば、例えば、シリコン導波路の使用により、石英系導波路で構成したものと比べて干渉計を小さくできるため、大規模化や他の機能を有する光回路とのモノリシック集積が可能となる。また、本発明の光導波路によれば、半導体光増幅素子702との光接続部における反射が低減できるので、不必要なレーザー発振やノイズの低減を図ることができる。
【0053】
次に、本発明の光導波路の他の適用例について説明する。図8は、複数の光導波路を用い、これに石英系導波路による波長合分波器821を組み合わせた、光分岐挿入装置(Optical Add Drop Multiplexer:OADM)の構成を示す構成図である。このOADMは、2つの波長合分波器821と、これらの間に配置された光回路801を備える。
【0054】
光回路801は、波長合分波器821の各ポートに対応して形成された光導波路811を備える。光導波路811は、前述した本発明の光導波路であり、この両端に、スポットサイズ変換領域812を備える。また、光導波路811は、2つのスポットサイズ変換領域812の間の導波領域813に、導波路型の光スイッチ素子814が形成されている。例えば、一方の波長合分波器821で、全ての波長チャンネルを分波した後、光スイッチ素子814で特定の信号光を加え、抜き、あるいは通過させることができ、この後に全体の光信号を他方の波長合分波器821で合波する。
【0055】
この場合、図9Aの断面図に示すように、波長合分波器821が形成された基板820の回路基板搭載領域822に、光回路801を搭載すればよい。図9Aにおいて、光回路801は、主にスポットサイズ変換領域812の部分を示しており、SOI基板の基部901の上に、下部クラッド層902,第1コア903,第2コア904,および上部クラッド層905を備える。また、図9Bの断面図に示すように、回路基板搭載領域822に、基部901の側を上方に向け、上部クラッド層905の側が固定されるように、光回路801を搭載してもよい。
【0056】
石英系導波路による波長合分波器821を用いることで、偏波依存性や波長チャンネル間のクロストーク等に優れた特性を利用することができる。一方、シリコン導波路による光導波路811および光スイッチ素子814を用いることで、大規模の光スイッチを小型に作製することができる。また、光スイッチ素子814を熱光学効果によるスイッチとすれば、石英系材料との係数の差等から、消費電力を低減できるという利点を有する。
【0057】
これらの他にも、電気光学効果を有する機能性ポリマー導波路素子やニオブ酸リチウム等の強誘電体素子とシリコン導波路による光回路とを集積することにより、各々の特有の特性を活かした、高機能な光回路素子を構成することができる。本発明を用いることにより、異種導波路の光結合部における反射および損失(光結合損失)を低減することができ、いずれの応用に対しても高性能化に寄与することができる。
【0058】
例えば、上述では、第1コアをシリコンから構成したが、これに限るものではない。例えば、ゲルマニウムは、シリコンゲルマニウムなどの半導体材料から構成されていてもよい。また、クラッド層(上部クラッド層)は、酸化シリコンに限るものではなく、酸窒化シリコン、窒化シリコンまたはポリマー媒質(高分子材料)から構成されていてもよい。これは、第2コアについても同様である。第2コアは、第1コアより小さく下部クラッド層および上部クラッド層より大きい屈折率を有する材料から構成されていればよい。
【符号の説明】
【0059】
101…下部クラッド層、102…第1コア、103…第2コア、103a…光入出射端、104…上部クラッド層、111…導波領域、112…スポットサイズ変換領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部クラッド層と、
この下部クラッド層の上の導波領域からスポットサイズ変換領域にかけて形成され、前記スポットサイズ変換領域の終端となる光入出射端の手前に一端を備える第1コアと、
前記スポットサイズ変換領域で前記第1コアを覆って前記下部クラッド層の上に形成された第2コアと、
前記第1コアおよび前記第2コアを覆って前記下部クラッド層の上に形成された上部クラッド層と
を少なくとも備え、
前記第1コアは、前記第2コアに覆われている領域で前記一端にかけて先細りに形成され、
前記第2コアは、前記スポットサイズ変換領域の開始端にかけて先細りに形成され、
前記第2コアの屈折率は、前記第1コアより小さく前記下部クラッド層および前記上部クラッド層より大きい
ことを特徴とする光導波路。
【請求項2】
請求項1記載の光導波路において、
前記第1コアは、前記開始端の手前の前記導波領域で、導波する光の基本モードが維持される範囲で、前記開始端にかけて徐々に太くなる形状傾斜領域を備える
ことを特徴とする光導波路。
【請求項3】
請求項1または2記載の光導波路において、
前記第2コアは、前記光入出射端の手前で、前記光入出射端にかけて徐々に径が変化する形状傾斜領域を備える
ことを特徴とする光導波路。
【請求項4】
下部クラッド層と、
この下部クラッド層の上の導波領域からスポットサイズ変換領域にかけて形成され、前記スポットサイズ変換領域の終端となる光入出射端を一端とする第1コアと、
前記光入出射端まで前記第1コアを覆って前記下部クラッド層の上に形成された第2コアと、
前記第2コアを覆って前記下部クラッド層の上に形成された上部クラッド層と
を少なくとも備え、
前記第1コアは、前記光入出射端の手前より前記一端にかけて先細りに形成され、
前記第2コアは、前記スポットサイズ変換領域から前記導波領域にかけて、徐々に太くなる形状傾斜領域を備え、
前記第2コアの屈折率は、前記第1コアより小さく前記下部クラッド層および前記上部クラッド層より大きい
ことを特徴とする光導波路。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2011−22464(P2011−22464A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168943(P2009−168943)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「省エネルギー技術開発プログラム/高度情報通信機器・デバイス基盤プログラム 次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】