説明

光書き込み制御方法及び画像形成装置

【課題】LDの温度上昇があっても地汚れが生じないようにする。
【解決手段】
半導体レーザ(LD)101を発光源として像担持体上に光書き込みを行う際に前記LD101のバイアス電流を制御するLD制御部107を備えた画像形成装置において、前記LD制御部107は、連続プリント時の副走査の紙間(非画像域であって前記LD101の消灯を行わない期間)に当該LD101の特性検出を行い、検出した特性に基づいて当該LD101のバイアス電流を補正する。LD101の特性検出としては例えば閾値電流の検出が行われ、閾値電流はLD101の微分量子効率の検出を行うことにより検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザによって光書き込みを行う光書き込み装置に適用される光書き込み制御方法、この光書き込み制御方法によって光書き込みを行う画像形成装置に係り、特に紙間に半導体レーザの特性を検出して補正する光書き込み制御方法及び前記方法で光書き込みを行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザであるレーザダイオード(以下、LDとも称す)は小型であり、駆動電流により高速光変調を行うことができるため、近年レーザプリンタ等の光源として多用されている。LDの駆動回路は無バイアス方式と有バイアス方式に大別される。無バイアス方式はバイアス電流がゼロで、入力信号に対応したパルス電流でレーザダイオードLDを駆動する方式である。これに対して、有バイアス方式はレーザダイオードLDに閾値電流Ithよりも小さいバイアス電流を流しながら、入力信号に対応するパルス電流を加算してレーザダイオードLDを駆動する方式である。有バイアス方式は無バイアス方式と比較してレーザ発振可能な濃度のキャリアが生成されるまでのディレイ時間を少なくできるため、入力信号に対応するパルス電流を印加してから発光までの遅延時間を小さくすることができ、現在多用されている。
【0003】
しかし、従来の有バイアス方式のLDドライバICでは、バイアス電流はある値に固定されているため、新しいシステムであるタンデムカラー機、複数のレーザダイオードLDを使用するマルチビーム機においては、レーザダイオードLDの製造ばらつきによる閾値電流差や、使用時の温度による閾値電流差を吸収することができず、結果として光パルス幅が安定して得られなくなり、画像品質に影響を及ぼすという問題が生じてきた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、近年のプリンタ等の高解像度化に伴って、650nmの赤色レーザダイオード、400nmの紫外レーザダイオードを用いたシステムの実現も始まっている。しかし、これらのレーザダイオードは780nmや1.3μm等の長波長のものと比較して、レーザ発振が可能な濃度のキャリアが生成されるまでに多くの時間を要するという特徴を有しており、従来の有バイアス方式のLDドライバICでは、所望のパルス幅よりも細いパルスしか得られないという問題があった。更には、近年のプリンタ等の高速化により、要求される光パルス幅はますます細くなってきており、安定したパルス幅の出力が期待されている。
【0005】
そこで、本出願人は、安定したパルス幅の出力が可能なように特許文献2に開示された発明を提案した。
【0006】
この発明は、供給された電流に応じた光量で発光する半導体レーザの光量をモニタし、該光量に応じた電圧Vmを生成して出力する光量検出回路部を備え、該光量検出回路部の出力電圧Vmに基づいて前記半導体レーザの光量が所定値になるように制御するサンプルホールド型のAPC回路を備えた半導体レーザ駆動回路において、設定された電流値の変調電流であるパルス電流を生成し、外部からの制御信号Sdに応じて該パルス電流を前記半導体レーザに供給するパルス電流生成回路部と、前記光量検出回路部からの電圧Vmが、設定された電圧になるように、直流電流であるバイアス電流を生成して前記半導体レーザに供給するバイアス電流生成回路部と、外部から設定された周波数のクロック信号CLKを生成して出力する発振回路部と、該発振回路部からのクロック信号CLKにしたがって前記半導体レーザの微分量子効率の検出を行う所定の動作を行い、得られたパルス電流の電流値を前記パルス電流生成回路部に設定する制御回路部とを備え、前記制御回路部が前記クロック信号CLKの周波数に応じて半導体レーザの微分量子効率の検出に要する時間を変えるようにしたものである。
【0007】
特許文献2には、図11に示すような半導体レーザ駆動回路の構成例が例示されている。図11において、半導体レーザ駆動回路501は、演算増幅器AMP1,AMP2、スイッチSW1,SW2、演算増幅器AMP1及びAMP2の出力電圧を記憶するS/Hコンデンサ502、電圧‐電流変換回路503、可変抵抗VR1及び所定の基準電圧Vrefを生成して出力する基準電圧発生回路504を備えている。また、半導体レーザ駆動回路501は、入力されたAPCを制御する信号であるAPC信号Sapc及びレーザダイオードLDを強制的に消灯させるリセット動作を開始させるためのリセット信号RESに応じてスイッチSW1,SW2及び演算増幅器AMP2の動作制御をそれぞれ行う制御回路505と、フォトダイオードPDとを備えている。更に、半導体レーザ駆動回路501は、制御回路505からのデータ信号CODEに応じた値の電流を外部から入力された信号に応じて出力するパルス電流生成回路506と、基準電圧Vrefの1/2の電圧を生成し、制御回路505からの制御信号Vconに応じてVref又はVref/2のいずれかの電圧を出力する電圧制御回路507とを備えている。また、制御回路505は、ロジック回路511、セレクタ512、クロック信号CLKを生成してロジック回路511に供給する発振回路513及び該発振回路513からのクロック信号CLKの周波数を設定するための抵抗514を備えている。
【0008】
電圧‐電流変換回路503、パルス電流生成回路506、電圧制御回路507、演算増幅器AMP1,AMP2、スイッチSW1,SW2、ロジック回路511、セレクタ512及び発振回路513は1つのICに集積されて微分量子効率検出部をなしており、リセット信号RESは、該ICのリセットを行うための信号である。APC信号Sapcは、通常時のAPC制御のイネーブル信号であり、ハイレベルのときスイッチSW1をオンさせて導通状態にすると共にローレベルのときスイッチSW1をオフさせて遮断状態にする。基準電圧Vrefは、レーザダイオードLDの光量を設定するための電圧である。S/Hコンデンサ502は、APC制御の結果である電圧を記憶するコンデンサである。電圧‐電流変換回路503は、レーザダイオードLDに供給するバイアス電流Ibを生成する電流源であり、S/Hコンデンサ502の高圧側電圧(以下、S/Hコンデンサ2の電圧と呼ぶ)VSHに対応した電流を生成し、該電流をDCバイアス電流としてレーザダイオードLDに供給する。パルス電流生成回路506は、レーザダイオードLDに供給する変調電流であるパルス電流ipを生成して出力する電流源であり、外部からの制御信号Sdに応じて生成したパルス電流ipの出力制御を行う。また、パルス電流生成回路506は、レーザダイオードの微分量子効率を検出する動作(以下、初期化と呼ぶ)を行うときにロジック回路511から入力されるデータ信号CODEによって生成する電流値が設定される。
【0009】
電圧制御回路507には、基準電圧発生回路504からの基準電圧Vrefが入力され、ロジック回路511から制御信号Vconが入力されている。電圧制御回路507は、レーザダイオードLDの光量を設定するための基準電圧信号、例えばVref/2の電圧を生成し、初期化時にロジック回路511からの制御信号Vconによって、演算増幅器AMP1及びAMP2の各非反転入力端にVref/2の電圧を出力し、初期化後は、基準電圧発生回路504からの基準電圧Vrefを演算増幅器AMP1及びAMP2の各非反転入力端にそれぞれ出力する。演算増幅器AMP1及びAMP2の出力端は接続され、該接続部はスイッチSW1の一端に接続されている。スイッチSW1の他端は電圧‐電流変換回路503に接続され、該接続部と接地電圧との間にはS/Hコンデンサ502とスイッチSW2が並列に接続されている。スイッチSW1は、制御回路505のセレクタ512から制御信号CTL1が入力され、該入力された制御信号CTL1に応じてスイッチングを行い、スイッチSW2は、制御回路505のロジック回路511から制御信号CTL2が入力され、該入力された制御信号CTL2に応じてスイッチングを行う。このことにより、スイッチSW1は、S/Hコンデンサ502の電圧VSHをホールドするために、S/Hコンデンサ502と演算増幅器AMP1及びAMP2の各出力端との接続の切断制御を行う。また、スイッチSW2は、レーザダイオードLDを強制的に消灯させるとき、例えば電源が投入されたとき等のリセット時にS/Hコンデンサ2の放電を行う。
【0010】
初期化時には、リセット信号RESがハイレベルの間は、ロジック回路11がリセットされた状態になっており、レーザダイオードLDに駆動電流Iopを流さないようになっている。すなわち、スイッチSW2がオンしてS/Hコンデンサ2の電荷が放電され、電圧‐電流変換回路3が供給するバイアス電流Ibはゼロとなり、パルス電流生成回路6には、ロジック回路11からパルス電流ip=0を示すデータ信号CODEが入力され、制御信号Sdに関係なくレーザダイオードLDに供給されるパルス電流ipはゼロになる。このようなリセット状態は、システムの電源投入直後、リセット時、又はシステムで何らかの異常が発生したとき等の場合があり、初期化は、リセットが解除された直後に行われる。
【0011】
なお、図11に示した半導体レーザ駆動回路自体は公知なので動作及びその他の詳細は省略する。また、示した半導体レーザ駆動回路は後述の実施形態におけるLD制御部に対応し、LDはLD101に対応し、PDは後述の図1ではLD101で発光した光を受光する。
【特許文献1】特開2003−154705号公報
【特許文献2】特開2005−129842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8はLD(半導体レーザ)の駆動電流Iopと光量との関係との関係を示す特性図である。この図から分かるように駆動電流Iopを大きくしていくと、閾値電流Ithにおいて発光効率が変化する。すなわち、光量を示す特性の傾きが変わる。閾値電流Ith以下では自然放出(LED発光)、閾値電流Ith以上では誘導放出によるLD発振が開始され、LD発光が行われる。また、温度特性として「Ith」増加(30℃、50℃)、効率低下(20℃の特性に対して30℃、50℃の場合)最高出力低下(20℃、30℃に対して50℃の場合)等の現象が発生する。
【0013】
一方、通常のLD制御を行う場合には、バイアス電流は図9の特性図に示すように、閾値電流Ith以下のバイアス電流Ibを定常的に流し、LDの出力立ち上がり特性を良くしており、また、点灯時にはIb(バイアス電流)+Id(点灯電流)の電流を流して必要光量を得ている。なお、図9では、横軸に点灯電流、縦軸に光量をとっている。
【0014】
このような特性でLDを駆動し、必要な光量を設定するとき、図10に示すように例えば20℃で閾値電流Ithの検出を行い、バイアス電流Ibと点灯電流Idを決定する。そして、次回の閾値電流Ithを検出するまで、点灯電流Idは固定しておき、通常動作時は走査ライン毎にAPC(オートマチック・パワーコントロール)によりバイアス電流Ibを変更して設定光量に制御している。APCは公知の技術であり、例えばサンプルホールド回路などを使用して構成される。しかし、連続印刷を行っている間に温度が上昇すると、図10に示すようにLD出力効率が低下し、APCによりバイアス電流Ibが増加する。そして、バイアス電流Ibが閾値電流Ithと越えてしまうと、その分バイアス光量が増加、地汚れが発生してしまうことになる。
【0015】
すなわち、従来の有バイアス方式でLDを駆動する制御方式をとっているものでは、レーザ固有の閾値電流検出を電源立ち上げ時やプリントジョブ開始前に行っていたので、連続プリント時におけるLDの温度上昇により閾値電流が大きくなり、これが地汚れの原因となっていた。
【0016】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、LDの温度上昇があっても地汚れが生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、第1の手段は、半導体レーザを発光源として像担持体上に光書き込みを行う際に前記半導体レーザのバイアス電流を制御する光書き込み制御方法において、連続プリント時の紙間(副走査の非画像域であって前記半導体レーザの消灯を行わない期間)に当該半導体レーザの特性検出を行い、検出した特性に基づいて当該半導体レーザのバイアス電流を補正することを特徴とする。
【0018】
第2の手段は、第1の手段において、前記半導体レーザの特性が閾値電流であることを特徴とする。
【0019】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、画像作成中を示すFGATE信号のネゲートをトリガとして前記補正を開始することを特徴とする請求項1又は2記載の光書き込み制御方法。
【0020】
第4の手段は、半導体レーザを発光源として像担持体上に光書き込みを行う際に前記半導体レーザのバイアス電流を制御する制御手段を備えた画像形成装置において、前記制御手段は、連続プリント時の紙間に当該半導体レーザの特性検出を行い、検出した特性に基づいて当該半導体レーザのバイアス電流を補正することを特徴とする。
【0021】
第5の手段は、第4の手段において、画像データに応じて点灯制御される発光源が発する光ビームによりライン走査し、画像の書き出しを行う光書き込み手段と、走査ライン上で前記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、前記半導体レーザの微分量子効率の検出を行う微分量子効率検出手段とを備え、前記制御手段は、前記光ビーム検出手段と前記微分量子効率検出手段の検出結果に基づいて前記バイアス電流を補正することを特徴とする。
【0022】
第6の手段は、第4又は第5の手段において、前記半導体レーザの特性が閾値電流であることを特徴とする。
【0023】
第7の手段は、第4ないし第6のいずれかの手段において、前記制御手段が、印刷条件、動作条件を変更することなく前記紙間に閾値電流検出を行い、前記バイアス電流を補正することを特徴とする。
【0024】
第8の手段は、第4ないし第7のいずれかの手段において、前記制御手段は、画像作成中であることを示すFGATE信号のネゲートをトリガとして前記閾値電流の検出を行い、レーザのバイアス電流の補正を開始することを特徴とする。
【0025】
第9の手段は、第4ないし第8のいずれかの手段において、像担持体上の画像を1次転写する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルト上の画像を記録媒体に転写する2次転写手段と、前記2次転写手段を前記中間転写ベルトに対して接離させる接離手段と、前記中間転写ベルト上に形成されたパターンの濃度を検出するパターン濃度検出手段と、前記パターン濃度検出手段の検出結果に基づいてプロセス補正するプロセス補正手段とを備え、前記パターンの形成中に前記2次転写手段を前記中間転写ベルトから離間させ、前記紙間で前記プロセス補正手段によりプロセス補正を行う際に前記閾値電流の検出、及びバイアス電流の補正を行うことを特徴とする。
【0026】
第10の手段は、第4ないし第8のいずれかの手段において、前記像担持体上の画像を1次転写する中間転写ベルトと、前記中間転写ベルト上の画像を記録媒体に転写する2次転写手段と、前記2次転写手段を前記中間転写ベルトに対して接離させる接離手段と、前記中間転写ベルト上に形成されたパターンの濃度を検出するパターン濃度検出手段と、前記パターン濃度検出手段の検出結果に基づいて位置ズレを補正する位置ズレ補正手段とを備え、前記パターンの形成中に前記2次転写手段を前記中間転写ベルトから離間させ、前記紙間において前記位置ズレ補正手段により位置ズレ補正を行う際に前記閾値電流の検出、及びバイアス電流の補正を行うことを特徴とする。
【0027】
第11の手段は、第9又は第10の手段において、前記紙間における前記中間転写ベルト上への前記パターン形成後に、初期化を行うことを特徴とする。
【0028】
第12の手段は、第6ないし第11のいずれかの手段において、前記閾値電流検出及び補正のタイミングをプリント枚数によって管理することを特徴とする。
【0029】
第13の手段は、第6ないし第11のいずれかの手段において、機械内部の温度を測定する測定手段を備え、前記閾値電流検出及び補正のタイミングを前回補正が行われてからある一定温度の変化で管理することを特徴とする。
【0030】
なお、後述の実施形態において、半導体レーザはLD101に、像担持体は感光体200に、制御手段は書き込み制御系12に、光書き込み手段は書き込み光学系11に、光ビーム検出手段は同期検知板106及び書き込み制御系12に、微分量子効率検出手段はLD制御部107に、中間転写ベルトは符号208に、2次転写手段は2次転写部(2次転写ローラ)209に、接離手段は図示しないモータとカムとからなる駆動機構に、パターン濃度検出手段はパターン検出センサ210に、プロセス補正手段及び位置ズレ補正手段はCPU320に、測定手段は図示しない温度センサに、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、紙間に半導体レーザの特性検出を行い、検出した特性に基づいて半導体レーザのバイアス電流を補正するので、半導体レーザの温度上昇があっても地汚れが生じないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照し、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0033】
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置における光書き込み装置の概略構成を示す図である。本実施形態に係る光書き込み装置1は、書き込み光学系11と書き込み制御系12とからなる。書き込み光学系11は、光源としての半導体レーザ(以下、LDと称する)101、走査手段としてのポリゴンミラー102、走査速度変換手段としてのFθレンズ103、図示しない感光体への書き込み走査範囲外に設けられた反射ミラー105、反射ミラー105によって反射された走査光が入力される同期検知板106、作像部への境界に設けられ、作像部側への塵埃類の侵入を防止する防塵ガラス104、及びポリゴンミラー102を回転駆動するポリゴンモータの駆動を制御するポリゴン制御部108から主に構成されている。同期検知板106は有効書き込み開始位置を検出し、主走査方向の書き出し位置を一定に制御するためのものである。
【0034】
書き込み制御系12は、書き込み制御部GADV310及びLD制御部107からなり、書き込み制御部GADV310は、タイミング制御部120、LD駆動データ生成部110、画素クロック生成部111及び画像処理部113から構成されている。タイミング制御部120は図示しない主走査カウンタ、副走査カウンタにより各種作像タイミングを制御する。画素クロック生成部111は同期検知板106の出力信号に同期した画素クロックを生成し、画像処理部113とレーザ駆動データ生成部110に与える。画像処理部113は、画素クロックを基準に画像データを生成し、またタイミング制御部120からのタイミング信号からプロセスパターンを生成する。LD駆動データ生成部110は、入力された画像データについて同様に画素クロックを基準にレーザ駆動データ(変調データ)を生成し、LD制御部107を介してLD101を駆動する。LD制御部107は前述の図11に示した公知例と同様の構成であり、半導体レーザの微分量子効率の検出を行う微分量子効率検出手段としても機能する。LD制御部107で半導体レーザの微分量子効率を検出することによりレーザ固有の閾値電流を検出し、出力結果に応じてレーザのバイアス電流を制御する。図1に示した光書き込み装置自体の構成は公知なので、詳細についての説明は省略する。
【0035】
このように概略構成された光書き込み装置では、LD101からのレーザ光は、ポリゴンミラー102により主走査方向にスキャンされ、Fθレンズ103で等角速度偏向から等速度偏向に変換され、防塵ガラス104から作像装置側に出射される。ポリゴン制御部108ではポリゴンミラー102の回転制御が行われ、この走査レーザ光の有効書き込み開始位置が同期検知板106により検出される。検出された位置検知情報はタイミング制御部120及びLD駆動データ生成部110に入力される。
【0036】
図2は作像部の概略構成を示す図である。作像部は、感光体200、帯電部201、書き込みユニット202、現像部203、図示しない1次転写部、クリーニング部207、中間点者ベルト208、2次転写部209、給紙部204、定着部205及び図3に示すCPU320を含む制御部とから基本的に構成されている。書き込みユニット202は図1に示した光書き込み装置1がYMCKの色毎に4個設けられたもので、色毎に光書き込みが行われる。以下、1つの色、図ではK色を例にとって説明する。
【0037】
像を形成する場合には、感光体200を帯電部201により帯電させ、書き込みユニット202から画像データに応じて変調されたLD光を感光体200に照射し、感光体200表面に静電潜像を形成する。感光体200上の静電潜像は現像部203において当該感光体200に対応する色のトナーを付着させて現像され、顕像化されたトナー像が中間転写ベルト208に1次転写される。本実施形態ではY→C→M→Kの順で中間転写ベルト208に転写し、重畳されてフルカラーのカラー画像となる。一方、給紙部204から転写紙が給紙され、2次転写部209において前記フルカラーの画像が中間転写ベルト208から転写紙上に2次転写される。転写紙上に転写されたカラー画像は次段の定着部205で定着される。また、クリーニング部207で感光体200表面に残った余分なトナー像が除去される。
【0038】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の電気的構成の概略を示す機能ブロック図である。同図において、画像形成装置は画像読み取り部、画像書き込み部、及び制御部からなり、画像読み取り部はスキャナ部300及びIPU301を含み、画像書き込み部は書き込み制御部GAVD310、LD制御部107及びLD101を含む。制御部はCPU320、NVROM328及びRAM322、画像メモリ324、RAM323及び操作部327を含みシステムバス325によって信号の授受が可能となっている。また、画像読み取り部と画像書き込み部はローカルバス329で接続され、ローカルI/F326によってシステムバス325と接続され、画像読み取り部と画像書き込み部と制御部とからなるシステムが構築されている。
【0039】
IPU301はイメージプロセッシングユニットと称され、スキャナ部300で読み取られ、デジタル信号を変換された画像データを印刷に適した画像データに変換する。CPU320は操作部327から入力された操作情報に基づいてNVROM328に格納されたプログラムに基づいてRAM322をワークエリアとして使用しながら所定の処理を実行する。スキャナ部300で読み取られ、IPU301でデジタルデータに変換された画像データは通常RAM323に送られ、圧縮されて画像メモリ324に格納される。画像を印刷する場合には、画像メモリ324から画像データを読み出し、伸長してRAM323に書き込み、書き込まれた画像データを書き込み制御部GAVD310に送り出す。入力された画像データは書き込み制御部GAVD310でLD101を点灯制御するためのデータが生成され、LD制御部107に入力される。そして、LD制御部107によってLD101を点灯駆動して光書き込みが実行される。
【0040】
なお、以前に画像メモリ324に書き込まれていた画像データを印刷する場合には、操作部327から操作入力に応じてCPU320の指示によって画像メモリ324からの画像データが前述と同様にして書き込み制御部310に送られ、LD制御部107によってLD101が駆動されて、光書き込みが行われる。
【0041】
図4は閾値電流検出と補正のタイミングを示すタイミングチャートである。XPFGATEはLowで副走査方向の画像領域を示す。XPFGATEは書き込み制御部GAVD310からCPU320に割り込み信号に入力され各種制御を行う。XPFGATEは、Lowの期間に画像データに対応したLD点灯信号がGAVD310からLD制御部107に入力され、LD点灯信号に合わせてLD制御部107はLD101を点灯させる。書き込み制御部GAVD310は各色のXPFGATEのネゲート(立ち上がり)より同検知信号をカウントする副走査カウンタを回してタイミング制御を行い、濃度補正パターン(以下、Pパターンと称す)、ブレード捲れ防止用パターン(以下、Bパターンと称す)、位置ズレ補正用パターン(以下、Mパターンと称す)を生成する。これらのパターンの生成のタイミングはタイミング制御部120からLD駆動データ生成部110に出力し、LD駆動データ生成部110においてPパターン、Bパターン、Mパターンを書き込むためのLD駆動データを生成する。Pパターン、Bパターン、Mパターンの生成タイミングは任意の位置に副走査のドット単位で設定可能である。前記パターンは、副走査の非画像域であって前記半導体レーザの消灯を行わない期間、所謂紙間に形成され、紙間に形成されたパターンを読み取って、必要であれば濃度、位置ズレなどの補正が行われる。
【0042】
CPU320は書き込み制御部GAVD310のPパターン生成状態を示すステータスフラグをある期間でポーリングし、前記Mパターンの生成が完了したタイミングで、初期化開始信号をLD制御部107に出力することによって閾値電流検出と補正を行う。書き込み制御部GAVD320は補正が終了すると自動でフラグをLowに戻す。なお、ここでいう初期化は前述のようにレーザダイオードの微分量子効率を検出する動作のことである。
【0043】
このときの閾値電流検出と補正の詳細なタイミングを図5に示す。前述のようにXPFGATEはLowで画像領域を示し、XPFGATEは書き込み制御部GAVD310からCPU320のポートに入力され、CPU320は各色のXPFGATEの立ち下がりを検出し、閾値電流Ithと補正を行う書き込み制御部GAVD310の初期化開始フラグを立てる。書き込み制御部GAVD310は各色のXPFGATEの立ち上がり(ネゲート)で初期化開始信号をLD制御部107に出力し、閾値電流検出と補正を行う。書き込み制御部GAVD320は補正が終了すると、自動で初期化開始フラグをLowに戻す。
【0044】
2次転写部209は中間転写ベルト208に対して離接可能な2次転写ローラからなり、この2次転写ローラの接離タイミングはCPU320へのXPFAGTE割り込み信号からタイマを回して制御する。タイマ計測により記録紙が2次転写ローラを通過した時間経過したら、2次転写ローラを中間転写ベルト208側から離間させ(図4では、2次転ローラ接離タイミングとして示す)、中間転写ベルト208上の初期化によるトナー像(P,B,Mパターン)が2次転写ローラ通過後に2次転写ローラを当接させる。なお、詳細は省略するが2次転写ローラの当接、離間(接離)機構は、モータとカムとからなる駆動機構からなる。また、前記P,B,Mパターンは2次転写部209の中間転写ベルト回転方向下流側の当該中間転写ベルト208に対向した位置に設けられたパターン検出センサ210によって、形成されたパターンの濃度やパターンの位置がタイミングとして検出される。検出されたデータはCPU320に送られ、CPU320で処理され、濃度ムラや位置ズレが検出される。そして、検出された濃度ムラや位置ズレに基づいてPパターンから濃度補正、Bパターンからクリーニングブレード捲れ防止補正、Mパターンから位置ズレ補正がそれぞれ実行される。
【0045】
一方、前記閾値電流検出及び前記補正タイミングは、例えばプリント枚数によって管理される。このときの処理手順を図6のフローチャートに示す。この手順では、まず枚数カウンタNを0にリセットする(ステップS101)。次いで、XPFGATEをポーリングし(ステップS102)、XPFGATEがHになったら枚数カウンタNをカウントアップし(ステップS103)、枚数判定を行って(ステップS104)、N=Pならバイアス補正を行い(ステップS105)、N≠PならステップS102へリターンし、以降の処理を繰り返す。これにより、予め設定した枚数P毎にバイアス補正(パターン書き込みと補正)が行われることになり、地汚れの発生を防止することができ、正常な画像出力が可能となる。
【0046】
また、LD101の温度上昇(機内温度の上昇)が画像のズレの原因となることから、温度変化に応じて管理することもできる。すなわち、画像形成装置の作像部近傍に機内温度の測定手段、例えば温度センサを設置し、閾値電流検出、補正タイミングを前回補正が行われてからある一定温度の変化が生じたときに前記バイアス補正を行う。このときの処理手順を図7のフローチャートに示す。この手順では、まず、図示しない温度センサによって機内の初期温度Taを検出し、メモリ(例えばRAM322)に保存する(ステップS201)。次いで、初期設定(バイアス補正等)を行い(ステップS202)、温度Tを検出し、メモリに保存し(ステップS204)、前記初期温度Taとの差(X≧T−Ta)を基準値Xと比較する(ステップS204)。そして、前記差(T−Ta)が基準値Xより大きければバイアス補正を行い(ステップS205)、小さいならステップ203へリターンし、以降の処理を繰り返す。これにより温度が原因となる地汚れの発生を防止することができ、正常な画像出力が可能となる。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、
1)連続プリント時において、システム立ち下げなしで閾値電流検出、及びバイアス電流補正を行うので、生産性を落とすことなく、地汚れのない正常な画像を常に出力することができる。
2)2次転写ローラへのトナー付着を防止するバイアス機構を備えていないシステムにおいては、記録紙への転写を行わずに中間転写ベルトにトナーパターンを形成する場合、2次転写ローラ汚れによる紙への裏汚れを防止するため、2次転ローラを離間する必要がある。同様に閾値検出、補正もLD発光するため、中間転写ベルトにトナーが付着するため2次転写ローラを離間する必要がある。前記実施形態で示したようにP,B,Mの各パターンをそれぞれ紙間で形成すると、各紙間で2次転写ローラを離間させねばならず、生産性が落ちてしまう。しかし、本実施形態では、2次転写ローラを離間する必要がある動作を紙間でまとめて行うため、個々にパターン形成、補正動作毎に2次転写ローラを離間させる場合比べて生産性を向上させることができる。
3)紙間時のパターン形成は前のFAGTEのネゲート基準で同期信号をカウントしてタイミング制御し、閾値電流検出を行う際、LD消灯を行う必要があるシステムにおいては、パターン前、及びパターン間に閾値電流検出を行うと同期信号が入力されなくなり正常にパターン形成できなくなる問題がある。これに対し、本実施形態では、各種パターン作像後に、閾値電流検出、及びバイアス電流補正を行うため、同期信号不入力によるパターン形成失敗を防ぐことができる。
4)予め設定した枚数P毎にバイアス補正が行われるので、地汚れのない正常な画像を常に出力することができる。
5)予め設定した温度変化が生じる毎にバイアス補正が行われるので、温度が原因となる地汚れの発生を防止することができ、正常な画像を常に出力することができる。
などの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置における光書き込み装置の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態における作像部の概略構成を示す図である。
【図3】本実施形態におけるLD制御部の詳細を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における紙間における閾値電流検出、補正、及び2次転写ローラ接離のタイミングの関係を示すタイミングチャートである。
【図5】図4における閾値電流検出と補正のタイミングの詳細を示すタイミングチャートである。
【図6】本実施形態における閾値電流検出及び前記補正タイミングをプリント枚数によって管理するときの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における閾値電流検出及び補正タイミングを温度変化によって管理するときの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】従来から知られている閾値電流を説明するためのLDの駆動電流と光量との関係を示す特性図である。
【図9】従来から知られているバイアス電流を説明するためのLDの点灯電流と光量との関係を示す特性図である。
【図10】従来から知られている地汚れ発生メカニズムを説明するための駆動電流と光量との関係を示す特性図である。
【図11】従来例に係る半導体レーザ駆動回路の回路構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 光書き込み装置
11 書き込み光学系
12 書き込み制御系
101 LD
102 ポリゴンミラー
103 Fθレンズ
105 反射ミラー
106 同期検知板
107 LD制御部
110 LD駆動データ生成部
111 画素クロック生成部
113 画像処理部
120 タイミング制御部
200 感光体
201 帯電部
202 書き込みユニット
203 現像部
204 給紙部
205 定着部
207 クリーニング部
208 中間転写ベルト
209 2次転写部
210 パターン検出センサ
320 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザを発光源として像担持体上に光書き込みを行う際に前記半導体レーザのバイアス電流を制御する光書き込み制御方法において、
連続プリント時の紙間に当該半導体レーザの特性検出を行い、
検出した特性に基づいて当該半導体レーザのバイアス電流を補正することを特徴とする光書き込み制御方法。
【請求項2】
前記半導体レーザの特性が閾値電流であることを特徴とする請求項1記載の光書き込み制御方法。
【請求項3】
画像作成中を示すFGATE信号のネゲートをトリガとして前記補正を開始することを特徴とする請求項1又は2記載の光書き込み制御方法。
【請求項4】
半導体レーザを発光源として像担持体上に光書き込みを行う際に前記半導体レーザのバイアス電流を制御する制御手段を備えた画像形成装置において、
前記制御手段は、連続プリント時の紙間に当該半導体レーザの特性検出を行い、検出した特性に基づいて当該半導体レーザのバイアス電流を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
画像データに応じて点灯制御される発光源が発する光ビームによりライン走査し、画像の書き出しを行う光書き込み手段と、
走査ライン上で前記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、
前記半導体レーザの微分量子効率の検出を行う微分量子効率検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記光ビーム検出手段と前記微分量子効率検出手段の検出結果に基づいて前記バイアス電流を補正することを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記半導体レーザの特性が閾値電流であることを特徴とする請求項4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、印刷条件、動作条件を変更することなく前記紙間に閾値電流検出を行い、前記バイアス電流を補正することを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、画像作成中であることを示すFGATE信号のネゲートをトリガとして前記閾値電流の検出を行い、レーザのバイアス電流の補正を開始することを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
像担持体上の画像を1次転写する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルト上の画像を記録媒体に転写する2次転写手段と、
前記2次転写手段を前記中間転写ベルトに対して接離させる接離手段と、
前記中間転写ベルト上に形成されたパターンの濃度を検出するパターン濃度検出手段と、
前記パターン濃度検出手段の検出結果に基づいてプロセス補正するプロセス補正手段と、
を備え、前記パターンの形成中に前記2次転写手段を前記中間転写ベルトから離間させ、前記紙間で前記プロセス補正手段によりプロセス補正を行う際に前記閾値電流の検出、及びバイアス電流の補正を行うことを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体上の画像を1次転写する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルト上の画像を記録媒体に転写する2次転写手段と、
前記2次転写手段を前記中間転写ベルトに対して接離させる接離手段と、
前記中間転写ベルト上に形成されたパターンの濃度を検出するパターン濃度検出手段と、
前記パターン濃度検出手段の検出結果に基づいて位置ズレを補正する位置ズレ補正手段と、
を備え、前記パターンの形成中に前記2次転写手段を前記中間転写ベルトから離間させ、前記紙間において前記位置ズレ補正手段により位置ズレ補正を行う際に前記閾値電流の検出、及びバイアス電流の補正を行うことを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記紙間における前記中間転写ベルト上への前記パターン形成後に、初期化を行うことを特徴とする請求項9又は10記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記閾値電流検出及び補正のタイミングをプリント枚数によって管理することを特徴とする請求項6ないし11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
機械内部の温度を測定する測定手段を備え、前記閾値電流検出及び補正のタイミングを前回補正が行われてからある一定温度の変化で管理することを特徴とする請求項6ないし11のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−118521(P2007−118521A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317003(P2005−317003)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】