説明

光束の拡がり角測定装置

【課題】比較的大きい光束に対する波長毎の光束の拡がり角を測定することのできる光束の拡がり角測定装置を提供すること。
【解決手段】単色化された光束と、該光束の光路上に設けられたアパーチャと、該アパーチャを透過した光束の強度を複数の光束断面測定位置で測定する光センサ10と、光センサ10で検出された光束の強度から前記複数の光束断面測定位置における光束幅を求め、前記複数の光束断面測定位置における光束幅間の差と前記複数の光束断面測定位置間の距離とから光束の拡がり角を求める拡がり角測定手段16とからなることを特徴とする光束の拡がり角測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束の波長毎の拡がり角測定装置に関する。例えば、光ファイババンドルまたはソーラシミュレータから出射される比較的大きな光束の波長毎の拡がり角を正確に測定することのできる光束の拡がり角測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザービームのような単色で平行度が高く小口径のビームの拡がり角を測定するための装置としては、例えば、シェアリング干渉計を利用したコリメーションチェッカーが利用されていた。その他に、光束の拡がり角測定装置に関連する技術としては、特許文献1には、マルティビームシアリング干渉を用いたビームコリメーション法およびそれを利用したレンズの焦点距離または点光源の変位測定方法が開示されている。また、特許文献2には、光学測定装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−190679号公報
【特許文献2】特開2005−17257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、光ファイババンドルからの光束やソーラシミュレータからの光束のように非単色光で平行度が数度の拡がりを持ち、その口径が最大で数十cmに達する光束の拡がり角を測定できる装置は存在しなかった。
本発明の目的は、上記のような比較的大きい光束に対する波長毎の光束の拡がり角を測定することのできる光束の拡がり角測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、下記の手段を採用した。
第1の手段は、単色化された光束と、該光束の光路上に設けられたアパーチャと、該アパーチャを透過した光束の強度を複数の光束断面測定位置で測定する光センサと、該光センサで検出された光束の強度から前記複数の光束断面測定位置における光束幅を求め、前記複数の光束断面測定位置における光束幅間の差と前記複数の光束断面測定位置間の距離とから光束の拡がり角を求める拡がり角測定手段とからなることを特徴とする光束の拡がり角測定装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記単色化された光束は、光源から放射された光束の光路中に設置されたバンドパスフィルタを透過した光束であることを特徴とする光束の拡がり角測定装置である。
第3の手段は、第1の手段または第2の手段において、前記光センサを任意の位置に移動可能なXYZステージを備え、前記拡がり角測定手段は、前記XYZステージへのステージ駆動信号に同期して前記光センサで検出された光束の強度を取得することを特徴とする光束の拡がり角測定装置である。
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、前記光センサは、ピンホール付デテクタ、リニアカメラ、または撮像カメラのいずれか1つからなることを特徴とする光束の拡がり角測定装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的大きな光束に対する波長毎の拡がり角を精度良く測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本実施形態の発明に係る光束の拡がり角測定装置を図1ないし図5を用いて説明する。本発明の光束の拡がり角測定装置は、後に詳述するように、光源、バンドパスフィルタ、アパーチャ、光センサ、プリアンプ、A/D変換器、トリガ信号発生回路、算出回路等から構成される。
【0008】
Xeランプやハロゲンランプ等の光源から出力される光束は、白色光と呼ばれ、その中には色々な波長成分が含まれている。これらの波長成分毎に、その拡がり角を求めるには、まず光束を単色化する機構が必要である。通常、単色化するための機構としては分光器が用いられるが、分光器は光束をスリットに入れる等、光束形状の加工を伴うので、光束の拡がり角を求める場合の機構としては適していない。
本発明では、適切な特性を持つバンドパスフィルタを光路中に入れることにより光束の単色光化を実現する。この方法は、光束形状に変化を与えることなく、光束を単色化(正確にはスペクトルの狭帯域化)できる特徴を有する。また光束の口径変化には、バンドパスフィルタの口径を変えることにより対応できる。これにより、比較的大きい光束について、単色化された光束が容易に得られる。
【0009】
図1は、バンドパスフィルタによる光源の単色化機構を示す図である。
同図において、1はバンドパスフィルタ収納カセット機構、2はバンドパスフィルタ収納カセット機構1に収納されている個々のバンドパスフィルタ、3はバンドパスフィルタ収納カセット機構1から所望のバンドパスフィルタ4を取り出し、不図示の光源から放射された光路中に設置するバンドパスフィルタ供給用ロボット、4は光路中に設置されたバンドパスフィルタである。
【0010】
図1に示すように、不図示の光源から放射される光束の光源スペクトルが広範囲の分布を持ち、その単色化に必要なバンドパスフィルタの枚数が多い場合は、バンドパスフィルタ収納カセット機構1にこれらを収納し、これらの中からバンドパスフィルタ供給用ロボット3によって、必要なバンドパスフィルタ4を選び出し光路中の指定位置に挿入することにより単色化を行なう。これに反し、光源スペクトルの分布が狭く、光源の単色化に必要なバンドパスフィルタの枚数が少ない場合は、回転ホイール上や直線上にこれらを並べ、選択したい波長用のフィルタを選べば足りる。
【0011】
図2(a)は、アパーチャ5および光束の進行方向における光束断面測定位置Z1,Z2,Z3を示す図、図2(b)は、光束断面測定位置Z1,Z2,Z3における光強度を示す図である。
これらの図において、5はバンドパスフィルタ4によって単色化された光束を入射し光束の輪郭を明確化するために設けられたアパーチャ、BKiおよびTHiは、各々i=1,2,3とする時、高さZiに対する、光強度のバックグランド値および光強度の閾値(光束の輪郭を規定する強度)である。
図2(a)に示すように、アパーチャ5は最初の光束断面測定位置Z1の手前直近に設置される。アパーチャ5から出射した光束の拡がり角は高さ(図のZ方向)によらず一様で、アパーチャ寸法が光の回折効果よりかなり大きいという条件下では、アパーチャ5からの光も元の光束と同じ拡がり角を持っている。(実際上、殆どの場合はこの条件に該当する。)
【0012】
ここで、仮に光束内にアパーチャ5を設けないと、光束の強度変化はなだらかとなるため、光強度の閾値をどこにとるかによって、輪郭の値は大きく変わってしまう。従って輪郭を一義的に求めることは困難となる。更に、アパーチャ5を設けないと、バックグラウンド信号が迷光やデテクタから発生し、測定誤差を引き起こす原因となる。
【0013】
これに対し、本発明のように光束内にアパーチャ5を設け、その直ぐ近くの光の強度を、後述する光センサを設けて測定すれば、光束の輪郭が明確化され、光強度のバックグランド値と閾値の大きさを正確に求めることができる。Z1を測定のスタート位置とし、Z2,Z3と位置を遠くにずらしていくと、光強度の変化から、バックグラウンド値と閾値の大きさが分かる。これより、種々の高さにおける光路の輪郭、言い換えれば光束断面の半径を、明確に求めることが可能となる。
【0014】
図3(a)は、XYZステージによる移動機構を備える光センサの平面図、図3(b)は、XYZステージによる移動機構を備える光センサの後方側面図である。
これらの図において、6はXYZステージの一部を構成しX方向の移動が可能な左右ステージ、7はXYZステージの一部を構成しY方向の移動が可能な上下ステージ、8はXYZステージの一部を構成しZ方向の移動が可能な前後ステージ、9はXYZステージ上に設けられる固定アーム、10,11,12は各々光センサとしてのピンホール付デテクタである。
ここで例示したピンホール付デテクタ10,11,12は、それぞれ波長感度領域が異なる。実際に設置されるピンホール付デテクタの数は、各ピンホール付デテクタの波長感度領域と光束の波長領域の広さによって必要な数が定まる。
光センサであるこれらのピンホール付デテクタ10,11,12は、XYZステージによる移動機構により、図2に示した任意の光束断面測定位置Ziに移動可能であって、任意の位置の光束断面の光強度を測定することができる。
【0015】
図4は、トリガ信号発生回路から出力されるXYZステージの駆動信号に同期したトリガ信号の送信時に、ピンホール付デテクタ10(11,12)で光強度を検出し、検出された光強度データに基づいて光束の拡がり角を求めるための構成を示す図である。
同図において、13はピンホール付デテクタ10(11,12)で検出された光強度を増幅するプリアンプ、14はプリアンプ13で増幅された光強度データをデジタル信号に変換するA/D変換器、15はXYZステージの駆動信号に同期したトリガ信号を送信するトリガ信号発生回路、16はXYZステージの駆動信号に同期して検出された光強度データに基づいて光束の拡がり角を求める算出回路である。
【0016】
同図に示すように、固定アーム9上のピンホール付デテクタ10(11,12)はXYZステージによって前後、左右、上下に移動可能である。ピンホール付デテクタ10(11,12)で検出された光強度はプリアンプ13で増幅され、増幅された光強度データはA/D変換器14でデジタル信号に変換される。このとき、A/D変換器14は、トリガ信号発生回路15から送信されたXYZステージの駆動信号に同期したトリガ信号を受信するが、その受信トリガ信号の順番により、図2(b)の横軸すなわちセンサの位置が定まる。算出回路16では、XYZステージの駆動信号順番すなわちセンサ位置と、これに同期した光強度データを受け取り、これらに基づいて光束の拡がり角を求める。
【0017】
算出回路16において、光束の拡がり角は以下に示す関係式から求めることができる。
図2において、光束断面測定位置Ziにおける光束断面の半径をR(Zi)と表記すると、光束の拡がり角φは、次式で与えられる。
φ=atan[{R(Z2)−R(Z1)}/(Z2−Z1)]
または、
φ=atan[{R(Z3)−R(Z1)}/(Z3−Z1)]
【0018】
なお、本実施形態の発明では、光センサとして、図3に示すように、ピンホール付デテクタを用いたが、これに限定されず、リニアカメラや撮像カメラを用いることも可能である。
図5は、光センサとしてリニアアレイカメラ17を用いた場合の、光束内の位置と光束強度測定のグラフを示す図である。同グラフにおいて、横軸はリニアアレイカメラ17内の受光位置、縦軸はリニアアレイカメラ出力強度である。
リニアアレイカメラ17が、図5(a)に示すように、光束断面の左端にある場合は、左端付近の位置情報得られ、図5(b)に示すように、光束断面の右側にある場合は、右側付近の位置情報が得られる。その結果、左右2回の測定で1次元光強度が同時に得られ、光強度測定に要する移動回数を少なくすることができる。
さらに、光センサとして撮像カメラを用いる場合も、光束断面の左右において左右2回の測定で撮像面上の2次元強度を同時に得ることができ、光強度測定に要する移動回数を少なくすることができる。
上述のごとく、光センサとして、ピンホール付デテクタ、リニアアレイカメラ、または撮像カメラのいずれを使用しても、異なる高さでの光束断面の輪郭を把握することができ、そのデータを用いて光束の拡がり角を算出することができる。
【0019】
上述のごとく、本発明の光束の拡がり角測定装置によれば、非単色光で平行度が数度の拡がりを持ち、光束の口径が最大で数十cmに達する光束について、光束の拡がり角を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、バンドパスフィルタによる光源の単色化機構を示す図である。
【図2】アパーチャ5および光束の進行方向における光束断面測定位置Z1,Z2,Z3を示す図、および光束断面測定位置Z1,Z2,Z3における光強度を示す図である。
【図3】XYZステージによる移動機構を備える光センサの平面図およびXYZステージによる移動機構を備える光センサの後方側面図である。
【図4】トリガ信号発生回路からXYZステージの駆動信号に同期したトリガ信号の送信時に、ピンホール付デテクタ10(11,12)で光強度を検出し、検出された光強度データに基づいて光束の拡がり角を求めるための構成を示す図である。
【図5】光センサとしてリニアアレイカメラ17を用いた場合の、光束内の位置と光束強度測定のグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 バンドパスフィルタ収納カセット機構
2 バンドパスフィルタ収納カセット機構に収納されているバンドパスフィルタ 3 バンドパスフィルタ供給用ロボット
4 光路中に設置されたバンドパスフィルタ
5 アパーチャ
6 左右ステージ
7 上下ステージ
8 前後ステージ
9 固定アーム
10,11,12 ピンホール付デテクタ
13 プリアンプ
14 A/D変換器
15 トリガ信号発生回路
16 算出回路
17 リニアアレイカメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色化された光束と、該光束の光路上に設けられたアパーチャと、該アパーチャを透過した光束の強度を複数の光束断面測定位置で測定する光センサと、該光センサで検出された光束の強度から前記複数の光束断面測定位置における光束幅を求め、前記複数の光束断面測定位置における光束幅間の差と前記複数の光束断面測定位置間の距離とから光束の拡がり角を求める拡がり角測定手段とからなることを特徴とする光束の拡がり角測定装置。
【請求項2】
前記単色化された光束は、光源から放射された光束の光路中に設置されたバンドパスフィルタを透過した光束であることを特徴とする請求項1に記載の光束の拡がり角測定装置。
【請求項3】
前記光センサを任意の位置に移動可能なXYZステージを備え、前記拡がり角測定手段は、前記XYZステージへのステージ駆動信号に同期して前記光センサで検出された光束の強度を取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光束の拡がり角測定装置。
【請求項4】
前記光センサは、ピンホール付デテクタ、リニアカメラ、または撮像カメラのいずれか1つからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の光束の拡がり角測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−89526(P2008−89526A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273550(P2006−273550)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム共通基盤技術研究開発 太陽電池評価技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】