説明

全閉形電動機

【課題】回転子鉄心通風穴内に堆積する塵埃による目詰まりを無くし冷却性能の向上を図った全閉形電動機を提供する。
【解決手段】回転子鉄心6の両側部に断面皿状の回転放熱板18、19を取り付け、外周部が外周ブラケット11、14の外周部に対して微小間隙を介して対峙するようにして、固定子枠、外周ブラケットおよび回転放熱板によって電動機の固定子5および回転子9を密閉し、かつ回転子鉄心6に開けた通風穴24に冷却風を流通させる全閉形電動機において、各回転放熱板18、19の環状空間部22、23側壁面にそれぞれに遠心ファンとして機能するフィン18b、19aを設け、内周ブラケット12の壁面に対してほぼ放射状の風道12bを形成し、当該風道12bの一端を入気口12cによって環状空間部22の外周側と連通させ、当該風道12bの他端を回転子鉄心6の軸方向に貫通する通風穴24と連通させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車等の車両を駆動する電動機に係り、特に冷却性能を向上させて小型軽量化を可能にした全閉形電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電車等の車両を駆動する電動機は、開放形の通風冷却方式のものが使われている。この開放形電動機は塵埃や水滴等の舞う車両床下に設置されているため、機内の冷却部が汚損され、定期的に分解し、清掃・保守を行う必要があった。
【0003】
近年、機内の冷却部の汚損をなくして保守の省力化を図ることができるようにした全閉形電動機の開発が進められている。この従来の全閉形電動機は構造上、開放形通風冷却電動機に比べて冷却性能が劣るため、電動機の出力低下ないしは電動機を大形化せざるを得ない。しかし、車両床下に設置される車両駆動電動機としては、大形化することは避けなければならず、そのため冷却性能の一層の向上が必要である。
【0004】
従来、車両駆動用全閉形電動機の冷却性能の向上を図るために、回転子鉄心の軸回りに軸方向に貫通する通気穴を複数個設け、この通気穴に機外から冷却外気を流入させて回転子の冷却を向上させるようにした発明が既に公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は、特許文献1に記載されている幾つかの実施形態のうちの一例を示すもので、全閉形電動機1は、固定子枠2の内周側に円筒状の固定子鉄心3を嵌合固定し、この固定子鉄心3に固定子コイル4を巻装して固定子5を構成し、固定子枠2の両端部に設けたフランジにそれぞれ半径方向に2分割された構成の軸受ブラケット10、13を取付けている。
【0006】
この半径方向に2分割された軸受ブラケット10、13は、固定子枠2の端部に取付けられる環状の外周ブラケット11、14と、この外周ブラケット11、14の内周部近傍の外側面に取り付けられる内周ブラケット12、15とから構成されている。
【0007】
そして、この内周ブラケット12、15の中心部に形成されている軸受ハウジングに軸受16、17を内蔵保持し、この軸受16、17で回転子9を回転自在に支持している。
【0008】
回転子9は、回転子軸8と、この回転子軸8の軸方向の中央部に鉄心押え板6a、6bによって固定された円筒状の回転子鉄心6と、この回転子鉄心6のスロットに挿入された2次導体7とから構成されている。
【0009】
そして、この回転子9の駆動側の鉄心押え板6aの外側面に、軸端に向かって広がる形状のコーン型(あるいは皿状)の回転放熱板18を取り付けており、その回転放熱板18は外側面の内周部近傍にフィン18bを設けている。反駆動側の鉄心押え板6bの外側面にも同様にして、軸端に向かって広がる形状のコーン型(あるいは皿状)の回転放熱板19を取り付けている。なお、この回転放熱板19には外表面にフィンは設けていない。
【0010】
そして、これら回転放熱板18、19の外周縁部18a、19aと前記外周ブラケット11、14の内周縁部11a、14aとでラビリンスシール20、21を構成することにより、電動機の主要部である固定子鉄心3、固定子コイル4、回転子鉄心6および2次導体7を、固定子枠2、外周ブラケット11、14および回転放熱板18、19によって全閉とし、電動機内部に直接外部の冷却空気が触れることがないように構成している。
【0011】
しかも、回転放熱板18と前記内周ブラケット12、回転放熱板19と前記内周ブラケット15とは、軸方向に所定寸法だけ離間して対峙しており、駆動側の回転放熱板18、回転子軸8および内周ブラケット12間、反駆動側の回転放熱板19、回転子軸8および内周ブラケット15間にそれぞれ環状空間部22、23を形成している。
【0012】
この環状空間部22、23は、前記内周ブラケット12および15に貫通して設けた入気口12a、15aによって外部と連通するとともに、外周ブラケット11と内周ブラケット12間の隙間(すなわち排気口11c)、外周ブラケット14と内周ブラケット15間の隙間(すなわち排気口14c)によって外部と連通するようにしている。
【0013】
そして、回転子鉄心6、鉄心押え板6a、6bおよび回転放熱板18および19を嵌着した回転子軸8の周りには、軸方向に貫通する通気穴24を複数個設けており、この通気穴24の両側開口部を前記駆動側の環状空間部22、反駆動側の環状空間部23に臨ませている。
【0014】
なお、回転子軸8の一端8aは機外に突出し、この部分に回転力を伝達する継手(図示せず)が取り付けられる。
【0015】
このように構成された従来の全閉形電動機において、電動機運転中は固定子コイル4および2次導体7が銅損により、また、固定子鉄心3および回転子鉄心6が鉄損により発熱する。固定子鉄心3およびコイル4に発生した熱は固定子鉄心3から固定子枠2に伝わり、固定子枠2の外周面と多数の冷却フィンより外気に放出される。
【0016】
一方、回転子鉄心6および2次導体7に発生した熱は回転子鉄心6から両側の鉄心押え板6aおよび6bを介して駆動側の回転放熱板18と反駆動側の回転放熱板19とに伝わる。また、機内空気(内気)の熱も各々の内壁面より駆動側の回転放熱板18と反駆動側の回転放熱板19に伝わる。これらの回転放熱板18、19に伝わった熱は、それぞれの機外側の側面から環状空間部22および23内の外気に放出される。
【0017】
車両の走行による走行風は入気口12a、15aから環状空間部22、23に流入して、各回転放熱板18、19の機外側の側面を冷却するので、常に環状空間部22、23内の外気の温度は機内の温度よりも低い状態に維持される。
【0018】
更に、反駆動側の入気口15aより反駆動側の環状空間部23に流入した外気の一部は、駆動側の回転放熱板18に設けたフィン18bの遠心ファン作用により吸引されて、回転子鉄心6の通風穴24を流通しながら回転子鉄心6を内部側から冷却した後、駆動側の環状空間部22に入り、フィン18bのファン作用により加速されて駆動側の排気口11cから機外に流出する。
【0019】
以上述べたように、特許文献1に記載の従来の全閉形電動機では、電動機の外周面からの放熱と同時に回転放熱板による放熱が併せて行われ、更に通風穴24にも冷却外気を流通させて回転子鉄心6を内部から冷却するため、回転子鉄心6に通風穴24を有していない従前の全閉形電動機に比べて冷却性能が向上し、小形化、出力増大を図ることができるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−029150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、電車等の駆動用電動機1は、車体下の台車内に装荷されているため、走行時の電動機周りの外気には走行風によって巻き上げられた塵埃、鉄粉、水滴等が多く含まれている。冷却のために回転子鉄心6に設けた通風穴24を流通する外気に混入している塵埃、鉄粉や水滴等は、機内の外気流通路に付着するが、特に回転子鉄心6に設けた通風穴24を流通する外気に混在する塵埃は、回転子鉄心6の回転に伴う遠心力により通風穴24の内周面に押し付けられて次第に堆積し、ついには通風穴24に目詰まりが起こり、冷却効果を低下させる一因となる。
【0022】
回転子鉄心6の通風穴24に流通する外気の量を少なくすれば外気に含まれる塵埃が減るために目詰まりは起こり難くなる反面、外気量自体が減るため、回転子鉄心の冷却性能が低下することは否めない。
【0023】
そこで、本発明は、回転子鉄心に開けた通風穴内を流通する外気の量を減らすことなく塵埃による目詰まりを極力減らすことにより冷却性能の向上を図り、併せて分解・清掃等の保守の省力化を図ることができる全閉形電動機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る全閉電動機の発明は、 固定子コイルを巻装した環状の固定子鉄心の内周に回転子鉄心、2次導体および回転子軸からなる回転子を配置し、前記固定子鉄心の駆動側端面および反駆動側端面に環状の外周ブラケットを固定し、この外周ブラケットの内周側に中心部に軸受を内蔵保持した内周ブラケットをそれぞれ固定し、前記軸受によって前記回転子軸を回転自在に支持し、前記回転子鉄心の駆動側端面および反駆動側端面にそれぞれ回転放熱板を取り付け、当該各回転放熱板の外周縁部とこれに対峙する前記各外周ブラケットの内周縁部との間にラビリンスシールを構成し、前記各回転放熱板、内周ブラケットおよび回転子軸により環状空間部をそれぞれ形成し、各環状空間部を内周ブラケットに設けた入気口と排気口とで機外と連通させ、前記回転子鉄心および回転放熱板を軸方向に貫通する通風穴を設け、この通風穴により前記駆動側の環状空間部および前記反駆動側の環状空間部相互を連通させるように構成された全閉形電動機において、前記駆動側および反駆動側に設置された各回転放熱板の前記環状空間部に接する壁面にそれぞれフィンを放射状に設け、前記駆動側および反駆動側に設置された内周ブラケットのいずれか一方に対してほぼ放射状の風道を設け、この風道の入気口を前記環状空間部の外周部側に設け、当該風道の出口を前記回転放熱板に設けた通風穴に臨ませ、
前記フィンの遠心ファン作用により一方の前記環状空間部に流入した外気中に混在する塵埃等を分離して、前記排気口から排気するとともに、清浄な外気を前記入気口から風道に導き入れ、当該風道の出口から前記回転放熱板および回転子鉄心を貫通する通風穴を流通して他方の前記環状空間部に流入させ、前記回転放熱板に設けられたフィンにより機外に排出するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回転子鉄心に開けた通風穴内を流れる外気によって回転子鉄心を冷却する際に、回転子鉄心の通風穴を流れる外気は回転放熱板に設けたフィンの遠心ファン効果によってあらかじめ塵埃、鉄粉、水滴等が除去されているため、電動機を長期間運転しても通風穴の目詰まりは起こり難い。このため、回転子鉄心の冷却効果が運転初期の状態からほとんど低下することがないので、分解・清掃作業の周期を長くすることができ、保守の省力化を図ることができる。また、回転子鉄心の通風穴が塵埃の堆積による目詰まりを生じ難いので、回転子鉄心の通風穴を通る冷却風の量を増大させることにより、冷却性能の向上を図ることができ、電動機の更なる小形化または出力の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の全閉形電動機の実施形態1の断面図。
【図2】本発明の全閉形電動機の実施形態1の側面図。
【図3】本発明の全閉形電動機の実施形態1の部分断面図。
【図4】本発明の全閉形電動機の実施形態2の断面図。
【図5】本発明の全閉形電動機の実施形態2の側面図。
【図6】本発明の全閉形電動機の実施形態3の部分断面図。
【図7】本発明の全閉形電動機の実施形態3の部分断面図。
【図8】従来の全閉形電動機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1について図1ないし図3を参照して説明する。
【0028】
(構成)
1は全閉形電動機であり、外周面に放熱フィンを有する円筒状の固定子枠2と、この固定子枠2の内周面に嵌合固定され、円環状あるいは扇形に打ち抜いた電磁鋼板を積層してなる円環状の固定子鉄心3と、この固定子鉄心3の内周部に設けられたスロットに巻装された固定子コイル4とから固定子5を構成している。
【0029】
一方、前記固定子鉄心3の内穴には、回転子鉄心6、回転子2次導体7および回転子軸8からなる回転子9が同心状に配置され、前記固定子枠2の両端部に設けたフランジでそれぞれ固定された2分割型の駆動側の軸受ブラケット10および反駆動の側軸受ブラケット13によって回転自在に支持されるようになっている。
【0030】
このように構成された全閉形電動機1は、固定子枠2の外周部に設けた取付腕25および26によってボルトで車両床下の台車枠に固定支持されるようになっている。なお、回転子軸8の駆動側端部8aは機外に突出しており、この部分を図示していない継手を介して駆動歯車装置に直結するようになっている。
【0031】
ところで、前記2分割型の軸受ブラケット10、13とは、固定子枠に固定される部分と、軸受を保持する部分とに半径方向に2分割したものであり、固定子枠に固定される部分が外周ブラケット11および14であり、軸受を保持する部分が内周ブラケット12および15である。
【0032】
外周ブラケット11および14は、円環状に形成されており、その外周部を固定子枠2の端部にボルト等の固定具によって固定されるようになっている。これに対して内周ブラケット12および15は、これら外周ブラケット11および14の内周縁部11a、14bから若干軸方向に離れた外側面にボルト等の固定具によってそれぞれ固定されるようになっており、しかもほぼ中心部に軸受16、17を内蔵保持する軸受ハウジング部を備えている。
【0033】
次に、前記外周ブラケット11および14について更に詳しく説明する。
外周ブラケット11および14は、後述するラビリンスシールを構成するための内周縁部11a、14aをそれぞれ形成するとともに、この内周縁部11a、14aから回転子軸方向に所定の隙間を空けて前記内周ブラケット12および15をそれぞれ固定するように、固定座11bおよび14bを外側端面から突設している。
【0034】
なお、駆動側の外周ブラケット11の内周縁部11aの半径および固定座11bの回転子軸中心線からの距離は、保守点検時に回転子9を駆動側から抜く作業を考慮して回転子鉄心6の外周直径、回転放熱板19の外周縁部19aの半径よりも大きく選定されている。
【0035】
駆動側の内周ブラケット12は、前記固定座11bにボルト等の固定具で固定されることにより、外周ブラケット11の外壁面と内周ブラケット12自体の内壁面の間に所定の間隙を設けている。
【0036】
しかも、駆動側の内周ブラケット12は、軸受ハウジング部を取り囲むように放射状の風道12bを内部に等間隔に4個穿設しており、この風道12bの入気口12cを前記環状空間部22に接する内壁面の外周縁部近傍に設け、風道12bの連通口12dを後述する回転放熱板18に設けた通風穴24に臨むように設けている。さらに駆動側の内周ブラケット12は、前記放射状の風道12b相互間の壁面を貫通する入気口12aを2個ずつ設けている。
【0037】
一方、反駆動側に取付けられる外周ブラケット14は、後述する回転放熱板19の外周縁部19aと対峙する内周縁部14aの直径を回転子鉄心6の外周直径よりも小さくしており、また、内周ブラケット15を固定するための前記固定座14bを内周縁部14aよりも回転子軸11側寄りに設けている。
【0038】
この反駆動側の内周ブラケット15は、前記固定座14bに固定されることにより、外周ブラケット14の外壁面と内周ブラケット15自体の内壁面の間に所定の間隙を空けている。さらに、反駆動側の内周ブラケット15は、軸受ハウジング部を円周方向に取り囲むようにして複数個の入気口15aを貫通して設けている。
【0039】
ところで、前記回転子鉄心6の鉄心押え板6a、6bの両側面には、それぞれ駆動側、反駆動側の軸端に向かって広がる形状のコーン型の回転放熱板18および19を取り付けている。駆動側の回転放熱板18の外周縁部18aの直径は反駆動側の回転放熱板19の外周縁部19aの直径よりも大きくしてあり、これらの回転放熱板18、19の外周縁部18a、19aと、前記外周ブラケット11、13の内周縁部11a、14aとを微小間隙によって対峙させることによってラビリンスシール20、21を構成している。
【0040】
さらに、回転放熱板18、19の外壁面の外周縁部18a、19aの近傍位置に、それぞれ放射状に形成されたフィン18b、19bを複数個突設している。このフィン18b、19bは、回転放熱板18、19の回転によって遠心ファンとして作用する。
【0041】
回転子鉄心6、鉄心押さえ板6aおよび6b、回転放熱板18および19を軸方向に貫通するように複数個の通風穴24を設ける。
【0042】
以上のように、固定子鉄心3、固定子コイル4、回転子鉄心6および回転子2次導体7等の電動機の主要部を、固定子枠2、外周ブラケット11、14、回転放熱板18および19によって全閉する構造としたので、電動機内部には外部冷気が直接触れることがない。
【0043】
しかも、駆動側の軸受ブラケット10では、回転子軸8、前記内周ブラケット12および回転放熱板18によって環状空間部22を形成しており、この環状空間部22は入気口12aおよび排気口11cによって外部と連通し、さらに、風道12bによって回転子鉄心6の通風穴24と連通している。
【0044】
一方、反駆動側の軸受ブラケット13では、回転子軸8、前記内周ブラケット15および回転放熱板19によって環状空間部23を形成しており、この環状空間部23は入気口15a、排気口14cによって外部と連通し、さらに、前記複数個の通風穴24と連通している。
【0045】
(作用)
以上のように構成された本実施形態1の全閉形電動機は、駆動側の軸受ブラケット10側で、車両走行時に回転子11と共に回転する回転放熱板18に設けられたフィン18bに遠心ファン作用が生じ、この遠心ファン作用によって外気は入気口12aから環状空間部22に入り、コーン型の回転放熱板18の外側表面を冷却した後、一部は排気口11cから機外に排出される。
【0046】
残りの外気は、入気口12cより駆動側内周ブラケット12内に穿設してある風道穴12b内に入り、連通口12dから回転放熱板18、19、鉄心押え板6a、6b回転子鉄心6に開けてある通風穴24に入る。そしてこの通風穴24を通過する過程で回転放熱板18および回転子鉄心6を内部から冷却した後、反駆動側の環状空間部23に入る。
【0047】
一方、回転放熱板19とともに回転するフィン19bの遠心ファン作用によって入気口15aから環状空間部23に入った外気は、通風穴24を流通してきた冷却外気とともに回転放熱板19の外側表面を冷却した後、フィン19bの遠心ファン作用により排気口14cから機外に排出される。
【0048】
ところで、駆動側の内周ブラケット12の入気口12aから環状空間部22に流入した外気は、回転放熱板18に設けたフィン18bの遠心ファン作用によって内周側より外周側に吹き上げられて流速が高くなっているため、外気に混入している塵埃、鉄粉、水滴等に大きな遠心力が作用して、排気口11cから勢いよく機外に排出され、内周ブラケット12の側面に開口している入気口12cから風道12b内に進入することはない。
【0049】
そのため、入気口12cから風道12bに流入する外気は塵埃や鉄粉、水滴等が除去された清浄な冷却外気となって、回転子鉄心6の通風穴24を流通しながら回転子鉄心6を冷却したのち、回転放熱板19のフィン19bの遠心ファン作用によって反駆動側の排気口5aから機外に排気される。
【0050】
(効果)
以上述べたように本実施形態1によれば、電動機の外周面からの冷却および回転放熱板18、19からの冷却に加えて、回転子鉄心6の通風穴24を流れる冷却外気からはフィン18bの遠心ファン効果によってあらかじめ塵埃、鉄粉、水滴等が除去されるため、電動機を長期間運転しても通風穴24が目詰まりし難い構造になっている。このため、回転子鉄心6の冷却効果は運転の初期状態からあまり低下することがないので、分解・清掃作業等の間隔を長くとることができ、その分保守の省力化を図ることができる。
【0051】
また、回転子鉄心の通風穴が目詰まりし難いので、その分回転子鉄心の通風穴を通る冷却風の量を増大させ、冷却性能の向上を図って、電動機の更なる小形化または出力の増大を図ることができる。
【0052】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について図4および図5を参照して説明する。
(構成)
本実施形態2は、前述した実施形態1の駆動側の軸受ブラケットの構成を一部変更したものであり、実施形態1に比べて大きく異なる点は、駆動側の外周ブラケット11の側面から突出する固定座11bに替えて、外周ブラケット11自体に軸方向に延長して設けた環状縁部11dで排気口11cの外周を一体的に覆うことによって断面U字型の旋回風道11eを形成し、かつ、この環状縁部11dの外側の側面の数箇所に前記内周ブラケット12をボルト等で固定した点である。その他異なる点は、内周ブラケット12に穿設した放射状の風道12bの個数を4個から6個に増やし、この風道12b相互間に開けた円形の2個の入気口12aに替えて1個の長円形の入気口12fを設けた点、外周ブラケット11の環状縁部11dに取り付けられる内周ブラケット12の壁面に前記旋回風道11eと連通する6個の排気口12gを設けた点、さらに全閉電動機1を床下に取付けた状態で、旋回風道11eの下部位置に塵埃排出穴11fを設けた点等である。なお、図4と図5とでは電動機の上下が逆になっている。
【0053】
その他については、実施形態1と同様であるので同一符号を付けて重複する説明は適宜省略するものとする。
内周ブラケット12に穿設した6個の風道12bは、その外周側端部に開けた入気口112hで排気口12gと連通し、かつ、軸受ハウジングの周りに設けた連通口12dは、実施形態1と同様コーン型の回転放熱板18に開けた通風穴24と連通するように構成されている。
【0054】
(作用)
本実施形態2の場合も、回転放熱板18とともに回転するフィン18bの遠心ファン作用により入気口12aから環状空間部22内に流入した冷却外気は、環状空間部22内を外周側に吹き上げられた後、旋回風道11eに達し、この旋回風道11eを旋回した後に側面に開口している排気口12gから機外空間に排出される。
【0055】
このとき、冷却外気中に混入している塵埃等は、旋回風道11eの外周側内壁に集まって旋回し、塵埃排出穴11fから機外に排出される。
【0056】
排気口12gより排出される冷却外気から塵埃等が除去されるため、入気口12hより風道12bに流入する外気は清浄化されており、この清浄化された外気が回転子鉄心6の通風穴24を流通して、回転子鉄心6、回転放熱板18、19を内部から冷却し、反駆動側の環状空間23に流入し、フィン19bにより機外に排気される。
【0057】
(効果)
以上述べたように、本実施形態2によっても、前述した実施形態1と同様に塵埃等の除去された清浄な外気が回転子鉄心6の通風穴24を流通するので、構造になっている。このため、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3について図6および図7を参照して説明する。
(構成)
本実施形態3は、前述した実施形態1の反駆動側の回転放熱板19周辺の構成を一部変更したものであり、実施形態1に比べて大きく異なる点は、反駆動側の鉄心押え板6bおよび回転放熱板19の固定部に開けた通風穴の数を回転子鉄心6に設けた通風穴24の数よりも多くした点、および回転放熱板19の機内側外周面に周方向に連続した円板状の吸熱フィン27を複数個並列して設けた点にある。
【0059】
その他については、実施形態1と同様であるので同一符号を付けて重複する説明は適宜省略するものとする。
【0060】
本実施形態3の鉄心押え板6bには、回転子鉄心6に設けた通風穴24を2個以上に増やすように通風穴28が開けられている。この鉄心押え板6bの外側に設置される回転放熱板19の固定部には通風穴28と合致するように通風穴29が開けられている。
【0061】
(作用)
回転放熱板19とともに回転によるフィン19bの遠心ファン作用によって内周ブラケット15の入気口15aより流入した冷却外気は、駆動側の軸受ブラケット10から回転子鉄心6の通風穴24を流通して環状空間部23に流入した冷却外気とともに、回転放熱板19の外表面を冷却した後、外周ブラケット14の排気口14cより機外に流出する。
【0062】
この際、駆動側の環状空間部22から回転子鉄心6の通風穴24を通ってきた外気は、鉄心押え板6bの通風穴28で2個以上に増やされ、回転放熱板19の通風穴29から反駆動側の環状空間部23に排気される。
【0063】
このように、回転放熱板19には実施形態1の場合よりも通風穴29を数多く設けているので、回転放熱板19の冷却面積が増大する。この冷却面積の増大した通風穴29の中を冷却外気が流通するので、回転放熱板19の冷却性能を実施形態1の場合よりも向上させることができる。
【0064】
更に回転放熱板19の機内側外周面に吸熱フィン27を設けたことにより、機内空気の熱を効率よく回転放熱板19で奪い通風穴29の放熱能力の向上と相俟って電動機の冷却性能を更に向上させる。
【0065】
回転子鉄心6の通風穴24より流通する冷却外気は前述のとおり塵埃等を除去して清浄化されているため、回転放熱板22の通風穴29の中に塵埃が堆積し難くなり、冷却効果が長期間の使用でも維持される。
【0066】
(効果)
以上述べたように、本実施形態3では反駆動側の回転放熱板19の冷却性能の向上が図れることから、電動機の更なる小形化、出力の増大を図ることができる。
【0067】
[変形例]
以上説明した実施形態1乃至3では、軸受ブラケット10、13を構成する外周ブラケット11、14は、固定子枠2の両端部のフランジに固定されるものであったが、固定子枠2を設けずに、固定子鉄心3の外周部を薄い鉄板やフィルム等で気密に覆い、固定子鉄心3両側部の抑え板に外周ブラケット11、14を固定するようにしてもよい。
【0068】
また、以上説明した実施形態1乃至3では、駆動側の軸受ブラケット10で外気に含まれる塵埃、水滴を遠心ファンの作用で分離除去するようにしたが、この分離除去機能は駆動側の軸受ブラケット10に限定する必要はなく、反駆動側の軸受ブラケット13に設けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…全閉形電動機、2…固定子枠、3…固定子鉄心、4…固定子コイル,5…固定子,6…回転子鉄心、7…回転子2次導体、8…回転子軸、9…回転子、10…駆動側軸受ブラケット、11…外周ブラケット、11a…内周縁部、11b…固定座、11c…排気口、11f…塵埃排出穴、12…内周ブラケット、12a…入気口、12b…風道、12c…入気口、12d…出口、12f…入気口、12g…排気口、13…反駆動側軸受ブラケット、14…外周ブラケット、14c…排気口、15…内周ブラケット、15a…入気口、16、17…軸受、18…駆動側の回転放熱板、18b…フィン、19…反駆動側の回転放熱板、19b…フィン、20、21…ラビリンスシール、22…駆動側の環状空間部、23…反駆動側の環状空間部、24…通風穴、27…吸熱フィン、28…通風穴、29…通風穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コイルを巻装した環状の固定子鉄心の内周に回転子鉄心、2次導体および回転子軸からなる回転子を配置し、前記固定子鉄心の駆動側端面および反駆動側端面に環状の外周ブラケットを固定し、この外周ブラケットの内周側に中心部に軸受を内蔵保持した内周ブラケットをそれぞれ固定し、前記軸受によって前記回転子軸を回転自在に支持し、前記回転子鉄心の駆動側端面および反駆動側端面にそれぞれ回転放熱板を取り付け、当該各回転放熱板の外周縁部とこれに対峙する前記各外周ブラケットの内周縁部との間にラビリンスシールを構成し、前記各回転放熱板、内周ブラケットおよび回転子軸により環状空間部をそれぞれ形成し、各環状空間部を内周ブラケットに設けた入気口と排気口とで機外と連通させ、前記回転子鉄心および回転放熱板を軸方向に貫通する通風穴を設け、この通風穴により前記駆動側の環状空間部および前記反駆動側の環状空間部相互を連通させるように構成された全閉形電動機において、
前記駆動側および反駆動側に設置された各回転放熱板の前記環状空間部に接する壁面にそれぞれフィンを放射状に設け、
前記駆動側および反駆動側に設置された内周ブラケットのいずれか一方に対してほぼ放射状の風道を設け、この風道の入気口を前記環状空間部の外周部側に設け、当該風道の出口を前記回転放熱板に設けた通風穴に臨ませ、
前記フィンの遠心ファン作用により一方の前記環状空間部に流入した外気中に混在する塵埃等を分離して、前記排気口から排気するとともに、清浄な外気を前記入気口から風道に導き入れ、当該風道の出口から前記回転放熱板および回転子鉄心を貫通する通風穴を流通して他方の前記環状空間部に流入させ、前記回転放熱板に設けられたフィンにより機外に排出するようにしたことを特徴とする全閉形電動機。
【請求項2】
前記一方の環状空間部の外周部を覆うことによって円周状の旋回風道部を形成するとともに、当該旋回風道部の適宜部位に塵埃排出穴を設け、更に前記旋回風道部の側面外周壁に前記排気口を設けたことを特徴とする請求項1記載の全閉形電動機。
【請求項3】
前記回転子鉄心に開けた通風穴と連通するように開けた前記回転放熱板の連通穴の数を回転子鉄心の通風穴の数より多くしたことを特徴とする請求項1または2記載の全閉形電動機。
【請求項4】
回転放熱板の機内側外周面に吸熱フィンを設けたことを特徴とする請求項3記載の全閉形電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166908(P2011−166908A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25638(P2010−25638)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】