説明

共役酵素系を含有する組成物

本発明は、過酸化水素を生成可能な第1の酵素系の、第1の酵素系の過酸化水素でない生成物を用いかつ所望によりさらなる過酸化水素を生成可能である第2の酵素系に対する共役によって過酸化水素を迅速かつ効率的に生成するための共役酵素系を含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素を生成可能な第1の酵素系の、第1の酵素系の過酸化水素でない生成物を用いかつ所望によりさらなる過酸化水素を生成可能である第2の酵素系に対する共役によって過酸化水素を迅速かつ効率的に生成するための共役酵素系を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口の悪臭および歯の変色は、多くの人々に悪影響を及ぼす状態である。口腔の悪臭は口臭または息臭さとしても知られる。この状態の原因は口内での嫌気性細菌、特にグラム陰性嫌気性細菌の存在によるものであると一般に考えられている。これらの細菌は、息の悪臭を引き起こすことで知られる揮発性の硫黄化合物(VSC)を生成することになる。
【0003】
歯のプラークとは、歯の表面上にできる黄色みがかったバイオフィルムである。それが定期的に除去されない場合、歯の穴(虫歯)、歯肉炎および歯周炎、ひいては歯の喪失に至る可能性がある。バイオフィルムを形成する微生物は、口内の位置によって変化する組成物を有するほぼすべての細菌である。歯周病は、歯の周囲の組織(すなわち歯周靱帯、歯肉および歯槽骨)を覆いかつ支持する歯周組織(periodontium)に作用する。歯肉炎および歯周炎は、それぞれ歯肉およびより深部の歯周組織の炎症性障害である。
【0004】
今日、消費者は自分の歯を白くすることに多大な関心を寄せている。白さが増した歯を有する人々は、個人的な自信が増し、社会的受容度が高まると考えられている。歯は内側の象牙質と外側の硬いエナメル質層の双方を含む。エナメル質層は内側の象牙質および生組織を保護し、固形食を咀嚼するための接触表面として役立つ。エナメル質層は、一般に半透明であり、色がややオフホワイトである。エナメルを含むヒドロキシアパタイト結晶が微細な小孔またはそれらの間にチャネルを有する微細な六角形のロッドまたはプリズムを形成することから、それは多孔質であるとも考えられる。この多孔質構造の結果として、汚染剤および変色物質、例えば抗生物質、着色料を含有する食品、コーヒー、コーラ、ティー、タバコなどがエナメルを浸透し、その表面を変化させることで、それが黄色または茶色がかった色を呈する可能性がある。
【0005】
洗浄用の歯磨剤での歯磨きにより良好な口の衛生が得られることにより、汚れ、歯肉炎、プラーク、歯周病、および/または息の悪臭の発生率の低下が促進されうる一方、それは必ずしもそれらの発生を予防または除去するとは限らない。微生物は、歯肉炎、プラーク、歯周病、および/または息の悪臭の開始および進行の双方に寄与する。したがって、これらの状態を予防または治療するため、これらの微生物は単純な機械的な磨き以外のいくつかの手段により抑制されなければならない。さらに、単純な機械的な磨きは、あらゆる汚れのタイプを除去し、かつ/または歯を白くするのに完全に有効なものとはならない。
【0006】
ECクラス1.1.3に属する酵素は酸素をアクセプタとして用いるオキシドレダクターゼであり、かつCH−OH基はドナーである。かかる酸素のオキシドレダクターゼにおける過酸化水素を生成する能力は、特許文献1にて開示されているように、抗菌効果を有し、チーズ、バターおよび果汁を含む特定の食品の保存安定性を改善するのに利用されている。オキシドレダクターゼが食品における酸素スカベンジャーまたは抗酸化剤として潜在的に有用でありうることも示唆されている。オキシドレダクターゼを含有する歯の漂白組成物については特許文献2に記載され、そこではグルコースオキシダーゼによる処理により歯の漂白が得られた。グルコースオキシダーゼは、グルコースに対して高度に特異的であり、かつ口内で虫歯を担う化合物に分解するこの齲蝕原性糖の存在を必要とする。
【0007】
特許文献3では、少なくとも1種のオキシドレダクターゼを含有する口腔用組成物が開示される。特許文献3で検討されたオキシドレダクターゼは、E.C.1.1.3、E.C.1.2.3、E.C.1.3.3、E.C.1.4.3、E.C.1.5.3、E.C.1.7.3、E.C.1.8.3、E.C.1.9.3を含むオキシダーゼを含む酵素クラス内の酵素、ラッカーゼおよびE.C.1.10.3中に含まれる関連酵素ならびにE.C.1.11中のペルオキシダーゼを含む。齲蝕原性のない基質、例えばアミノ酸、アルコール、糖アルコール、例えばキシリトールおよびソルビトールは、オキシドレダクターゼに適する基質と考えられる。検討された特定のキシリトールオキシダーゼは、特許文献4に開示されたキシリトールオキシダーゼであり、それは酸素の存在下でキシリトール、D−ソルビトール、D−ガラクチトール、D−マンニトールおよびD−アラビニトールを酸化させると報告されている。
【0008】
練り歯磨き粉、マウスリンスおよび歯磨剤などの口腔用組成物中への特定の酸化酵素の封入により、プラークおよび歯肉炎が低減され得る。用いられている酵素は、その有効成分としてアミログルコシダーゼおよびグルコースオキシダーゼを含む。これらは食事由来の発酵性炭水化物から過酸化水素を生成後、それからチオシアネートが唾液ラクトペルオキシダーゼの存在下でヒポチオシアネート(hypothiocyanate)に変換される。得られたヒポチオシアネートは、細胞代謝との干渉により細菌阻害剤として作用する。ソルビトールオキシダーゼは、例えばストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)由来のソルビトールオキシダーゼのクローニングおよび発現について記載の非特許文献1から知られている。
【0009】
食品使用として認められている糖の代替物質の大部分が人工合成された化合物である。しかし、一部の天然糖の代替物質がソルビトールおよびキシリトールを含むことは知られており、それらは液果類、果物、野菜およびキノコにおいて見出される。それらは、天然であるが、食品の大量生産にて合成的に生産されることで生産コストを低減することが可能である。キシリトールとソルビトールの双方が練り歯磨き粉またはチューイングガムなどのオーラルケア組成物中に用いられることで甘味が得られ、キシリトールの場合には、乳酸の生成が低下しかつ唾液の生成が増大する(非特許文献2)。
【0010】
歯肉炎、プラーク、歯周病、および/または息の悪臭の治療および/または予防、ならびに/あるいは歯のホワイトニングにとって有用な組成物を見出すために極めて多数の研究が行われているとはいえ、これらを目的とした治療においてさらに有効な組成物および方法が依然として望まれている。
【0011】
洗濯および食器用洗浄における洗剤は、多種多様な成分の複合混合物からなり、それらは典型的にはイオン性および非イオン性界面活性剤、溶剤、ビルダー、香料、酵素、および漂白成分などの多数の成分を含む。かかる複合混合物では、特に酵素において保存安定性の問題があることがよく知られている。ある場合には安定性の問題は洗剤の物理的安定性に関する一方、それ以外の場合にはそれは洗剤中での各成分の機能的安定性に関する。過炭酸塩および過ホウ酸塩などの漂白剤は、粉末洗剤中で一般に用いられ、その場合、洗浄サイクル中での水の添加時に、漂白活性化剤(例えばテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)およびノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS))と共に作用し、過酸(例えば過酢酸)、過酸化水素、および/または他の関連種を生成する。次いで、過酸または他の活性酸素種が作用し、布類または食器類に付いた特定の汚れを漂白したり薄めたりする。しかし、水性液体製剤中で使用可能である理想的な漂白系は全く存在しない。さらに、洗濯洗浄液中での洗剤の希釈時に汚れを漂白しかつ/または薄めるための漂白剤(例えば、活性酸素種、過酸化物、および過酸)の生産に対する需要は存在する。
【0012】
【特許文献1】JP-B-73/016612
【特許文献2】米国特許第6,379,653号
【特許文献3】国際公開第97/06775号
【特許文献4】JP 80892242
【非特許文献1】Hiraga K. et al. "Molecular cloning and expression of a gene encoding a novel sorbitol oxidase from Streptomyces sp. H-7775.";Biosci. Biotechnol. Biochem. 62:347-353(1998)
【非特許文献2】Hayes C. J Dent Educ. 65(10): 1106-1109 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
オキシダーゼなどの酵素は、特に液体洗浄製剤中での保存安定性の課題の影響を受けやすい。これにより、漂白作用を含む布用および家庭用のクリーニング組成物中でのその広範な使用が妨げられる。洗剤中でのオキシダーゼの酵素活性を保存期間中に維持することは、特にオキシダーゼの基質成分をも含有する洗剤中では課題であった。オキシダーゼおよびオキシダーゼ基質の双方が存在する結果、ペルオキシゲン(peroxygen)が原位置で生成する。この結果、液体および乾燥製剤の双方での酵素の酸化により、酵素安定性が低下する。過酸化物は、例えば酵素中でアミノ酸残基の一部を酸化させる様々な機構または酵素の共同因子との相互作用により酵素を損傷する。この結果、活性が徐々に低下することが多い。乾燥洗浄製剤では、酵素は国際公開第96/02623号に記載のように、例えば酵素のカプセル化により安定化されうる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1の酵素、第1の酵素に対する基質、およびさらなる酵素を含有する組成物、ならびに例えば歯、皮膚、毛髪、布または紙、オーラルケア製品など、ホワイトニングおよび/または漂白のためのその使用、ならびに歯のホワイトニングおよび/または漂白のための方法、防腐剤および抗微生物剤としての使用、化粧品、洗剤、塗料、食品および飼料、食品および飼料の生成および調製、および殺虫剤における使用に関する。
【0015】
本発明は、ポリオールオキシダーゼなどの第1の酵素およびポリオールなどの第1の基質を含有する過酸化水素の生成系が、所望によりさらなる過酸化水素を生成する、第1のオキシダーゼにより生成される過酸化水素でない生成物(すなわち第2の基質)を利用するオキシドレダクターゼ酵素系などのさらなる酵素系に共役される場合に本発明者が見出している驚くべき相乗効果に基づく。
【0016】
第1および第2の酵素(系)の共役は、第1の酵素系からの過酸化水素の生成の効率を大幅に増大させることが見出されており、結果として第1および第2の基質の双方から過酸化水素を生成しうる。効果としては過酸化水素の生成の大幅な増加であり、第1のオキシダーゼとさらなる酵素/オキシドレダクターゼの間の驚くべき相乗効果に起因し、第1の基質/第1のオキシダーゼ酵素系単独(またはさらなるオキシドレダクターゼ酵素系単独)から予想されることと比較し、過酸化水素の速度が大幅に高まる。それは、あたかもさらなる酵素系の共役が第1のオキシダーゼを「ターボチャージ」し、極めて高レベルの過酸化水素の生成を強いるかのようである。
【0017】
第1の酵素は、好ましくはオキシダーゼであり、本明細書中で第1のオキシダーゼと称される。好ましいオキシダーゼはソルビトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼである。
【0018】
本発明は、本発明の組成物を含有する洗剤組成物、ならびに例えば着色された食品による汚れの漂白および洗浄のための液体洗剤組成物中に本発明の組成物を使用するための方法を提供する。
【0019】
本発明の開発中、驚くべきことにソルビトールオキシダーゼが漂白系における使用に適し、現在用いられる漂白系の障害となる欠陥を回避することが見出された。
【0020】
それ故、第1のオキシダーゼのさらなる酵素に対する共役により、第1の基質内に封じ込められた酸化能の十分な利用が可能になる。第1のオキシダーゼは、洗剤の環境下で驚異的に強固な「鍵(key)」として作用するように思われ、本明細書中に開示のように、特にさらなるオキシドレダクターゼに対して共役される場合、過酸化水素の漂白力の効率的かつ迅速な生成を可能にする。
【0021】
一態様では、本発明は、第1のオキシダーゼ、第1の基質およびオキシドレダクターゼを含有する組成物であって、第1の基質は第1のオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ第2の基質はオキシドレダクターゼにより酸化可能であることで過酸化水素および生成物を形成する、組成物を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、本発明による組成物、およびオーラルケア製品中に用いられる成分を含有するオーラルケア製品を提供する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、本発明による組成物、および化粧品に用いられる1種もしくは複数種の成分を含有する化粧品を提供する。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、本発明による組成物、および洗剤製品に用いられる1種もしくは複数種の成分を含有する洗剤製品を提供する。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、本発明による組成物、および塗料製品に用いられる1種もしくは複数種の成分を含有する塗料製品を提供する。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、本発明による組成物、および殺虫剤製品に用いられる1種もしくは複数種の成分を含有する殺虫剤製品を提供する。
【0027】
さらなる実施態様では、本発明は、皮膚、毛髪または歯などの哺乳類の外部組織の漂白またはホワイトニングのための漂白またはホワイトニング製品などの漂白またはホワイトニング製品を提供し、それは、本発明による組成物、および哺乳類の外部組織への適用に適する漂白およびホワイトニング製品にて用いられる成分を含有する。
【0028】
さらなる実施態様では、本発明は、哺乳類の外部組織に対する漂白またはホワイトニングのための化粧方法であって、哺乳類の外部組織を、本発明による組成物あるいは本発明による哺乳類の外部組織に対する漂白および/またはホワイトニングのための製品と、哺乳類の外部組織の漂白および/またはホワイトニングに適する量および持続時間で接触させる工程を含む、化粧方法を提供する。
【0029】
本発明は、本発明による組成物を含有する薬剤も提供する。
【0030】
本発明は、果汁など、本発明による組成物を含有する食用飲料も提供する。
【0031】
一実施態様では、組成物は第1の基質を含有しないが、第1の基質は天然に存在するかあるいは組成物または用途のマトリックスに添加される。
【0032】
本発明は、本発明による組成物、および洗剤または漂白製品中に用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する洗剤または漂白製品をさらに提供する。
【0033】
本発明は、使用前または使用中のいずれかに有益な歯の漂白および/またはホワイトニング効果および/または長期の貯蔵寿命および/または抗微生物/抗菌効果を有するオーラルケア製品中での本発明による組成物の使用をさらに提供する。
【0034】
本発明は、各哺乳動物によって消費される場合での有益なプレバイオティクス効果および/または長期の貯蔵寿命を有する食用製品中での本発明による組成物の使用をさらに提供する。
【0035】
本発明は、長期の貯蔵寿命を有し、かつ/または哺乳類の外部組織の漂白および/またはホワイトニングが可能であり、かつ/またはヒト皮膚に適用される場合に抗微生物/抗菌効果を有する化粧品中での本発明による組成物の使用をさらに提供する。
【0036】
本発明は、適用前後のいずれかに改善された保護性を示し、かつ/または抗汚染の低下を示す塗料製品中での本発明による組成物の使用をさらに提供する。
【0037】
本発明は、組成物を調製するための方法であって、第1の酵素および第1の基質、ならびに少なくとも1種のさらなる酵素を混合する工程を含み、ここで第1の基質はソルビトールオキシダーゼなどの第1の酵素により酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ第2の基質は少なくとも1種のさらなる酵素により変換可能であることで生成物を形成する、方法をさらに提供する。
【0038】
組成物は、第1の酵素および少なくとも1種のさらなる酵素における混合対象として適切な1種もしくは複数種のマトリックス構成成分を含有しうる。第1の基質はまた、マトリックス構成成分中に混合されるか、あるいは一実施態様ではマトリックス構成成分の一部かそれどころか全部を形成する場合がある。したがって、マトリックス構成成分は、第1の基質からなるかまたはそれを含む場合がある。
【0039】
本発明は、組成物を調製するための方法であって、第1のオキシダーゼおよび第1の基質、ならびに少なくとも1種のさらなるオキシドレダクターゼを混合する工程を含み、ここで第1の基質はソルビトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ第2の基質はオキシドレダクターゼにより酸化可能であることで過酸化水素および生成物を形成する、方法をさらに提供する。
【0040】
本発明は、歯周病、歯肉炎、歯周疾患、過敏性腸症候群、乳糖不耐症、大腸癌、高血中コレステロール、高血圧、血圧上昇、感染、炎症および栄養欠乏から選択される医学的障害を治療または予防するための薬剤の製造における本発明による組成物の使用をさらに提供する。
【0041】
本発明は、医学的治療の方法であって、本発明による組成物または本発明による薬剤もしくはオーラルケア製品を治療または予防を必要とする患者に投与する工程を含む、方法をさらに提供する。
【0042】
本発明は、過酸化水素を生成する方法であって、第1の酵素、第1の基質、および少なくとも1種のさらなる酵素を、第1の酵素の活性に起因する第1の基質の酸化からの過酸化水素の生成、および所望により少なくとも1種のさらなる酵素の活性に起因する第2の基質の酸化からのさらなる過酸化水素の生成に適する条件下で混合する工程を含み、ここで第2の基質は第1のオキシダーゼによる第1の基質の酸化により生成されかつ第2の基質は少なくとも1種のさらなる酵素により生成物に変換される、方法をさらに提供する。
【0043】
本発明は、過酸化水素を生成するための方法であって、第1のオキシダーゼ、第1の基質、および少なくとも1種のさらなるオキシドレダクターゼを、第1のオキシダーゼの活性に起因する第1の基質の酸化由来の過酸化水素の生成、および少なくとも1種のさらなるオキシドレダクターゼの活性に起因する第2の基質の酸化からの過酸化水素の生成に適する条件下で混合する工程を含み、ここで第2の基質は第1のオキシダーゼによる第1の基質の酸化により生成される、方法をさらに提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、ホワイトニングおよび/または漂白における本発明による組成物の使用を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、歯に対する漂白および/またはホワイトニングのための方法であって、歯を本発明による組成物を含有するオーラルケア製品と歯の漂白および/またはホワイトニングに適する量および時間で接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0046】
本発明は、歯に対するホワイトニングおよび/または漂白のための本発明による組成物の使用を提供する。
【0047】
本発明の主な態様が共役酵素系を示すが、以下の実施態様などの一部の実施態様では、本発明は、本明細書中に記載のように、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する組成物を提供する。ポリオールオキシダーゼ/第1の基質酵素系の使用が、場合により(例えばさらなるオキシドレダクターゼ系に対して共役されない場合のように)pHの低下を伴わない非発酵性基質からの過酸化水素の生成、およびそれによりもたらされる抗微生物/細菌、抗腐敗、漂白およびホワイトニング特性など、これらの応用において極めて有益であることが見出されている。
【0048】
本発明は、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する塗料組成物であって、第1の基質はポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、塗料組成物を提供する。
【0049】
本発明は、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する化粧組成物であって、第1の基質はポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、化粧組成物を提供する。
【0050】
本発明は、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する食品または飼料組成物を提供し、ここで第1の基質はポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成し、例えば食品または飼料組成物は牛乳、クリーム、チーズ、乳漿などの乳製品、果汁などの飲料からなる群から選択される。
【0051】
本発明は、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する薬剤組成物であって、第1の基質は例えば第1の基質がソルビトールまたは好ましくはキシリトールである場合にポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、薬剤組成物を提供する。
【0052】
本発明は、ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する殺虫剤組成物であって、第1の基質はポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、殺虫剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
一態様では、本発明は、ポリオールオキシダーゼなど(例えばソルビトールオキシダーゼ)の第1の酵素、第1の基質、およびオキシドレダクターゼなどのさらなる酵素を含有する組成物であって、第1の基質は第1のオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ第2の基質はさらなる酵素により変換可能であることで生成物を生成する、組成物に関する。
【0054】
好ましくは、さらなる酵素はさらなるオキシドレダクターゼであり、かつ第2の基質はオキシドレダクターゼにより酸化可能であることで過酸化水素および(さらなる)生成物を生成する。
【0055】
本発明による組成物は、Hの生成が必要とされる場合のあらゆる目的において、例えば漂白および/またはホワイトニングが必要とされるかまたは抗菌目的である場合の用途、特に非毒性または環境上許容できる成分が望ましい場合の製品において適用可能である。
【0056】
第1の基質
本文脈では、「第1の基質」という用語は、第1の酵素(例えばソルビトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼ)により酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を生成する基質を示す。
【0057】
本発明の一態様では、第1の基質は、例えば、D−ソルビトール、D−キシリトール、D−マンニトール、D−アラビトール、グリセロール、イノシトール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選択される糖アルコールから選択される1種もしくは複数種の基質などのポリオールである。
【0058】
一実施態様では、第1の基質は、D−ソルビトールまたはD−キシリトールからなる群から選択される1種もしくは複数種のポリオールである。
【0059】
一実施態様では、第1の基質はD−ソルビトールである。
【0060】
DもしくはL立体異性体で存在する糖類および糖アルコール、それは自然界に豊富に存在するD型であることから、本明細書中に記載の第1および第2の基質の観点では好ましいと理解されている。
【0061】
本発明のさらなる態様では、第1の基質は、例えば、D−ソルビトールまたはD−キシリトールからなる群から選択される非齲蝕原性の甘味料である。さらなる態様では、第1の基質はD−ソルビトールである。D−ソルビトールおよびD−キシリトールは、本質的に非齲蝕原性であり、有益な結果を有する人工甘味料としてオーラルケア製品、例えばチューイングガム中にて既に用いられている(Hayes C. J Dent Educ. 65(10): 1106-1109 2001)。
【0062】
一態様では、第1の基質は、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ガラクチトール、イソマルト、ラクチトール、アラビトール、およびエリスリトールからなる群から選択される1種もしくは複数種の糖アルコール基質である。
【0063】
一態様では、第1の基質は、リビトール、トレイトール、リキシトール、アリトール、アルトリトール、グリトール、イジトール、タリトール、ペンチトールおよびヘキシトールからなる群から選択されうる。
【0064】
一態様では、第1の基質は、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ガラクチトール、イソマルト、ラクチトール、アラビトール、エリスリトール、グリセロール、イノシトール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選択される1種もしくは複数種の糖アルコール基質である。
【0065】
本発明の好ましい態様では、第1の基質はソルビトールであるかまたはそれを含有する。
【0066】
本発明の一態様では、第1の基質はキシリトールであるかまたはそれを含有する。
【0067】
ポリオールオキシダーゼおよびさらなるオキシドレダクターゼは、過酸化物(H)を生成可能なオキシダーゼである。
【0068】
本発明による組成物中に存在するポリオールのレベルは、用いられる用途および製剤に依存することになる。オーラルケア製品における使用においては高レベルのポリオールが用いられる場合があり、そこではポリオールは組成物中の主要なマトリックス成分でありうる。ポリオールはまた化粧製剤の主要な成分を形成しうる。かかる用途においては、ポリオールは保湿剤として添加されうる。ポリオールは石鹸などの洗剤に添加される場合もあり、そこでは、保湿剤または清澄剤としての機能も有しうる。
【0069】
しかし、一部の塗料および洗剤用途などの一部の用途では、ポリオールは、過酸化水素の生成に十分な第1の基質を提供するのに十分であっても主要なマトリックス構成成分を形成することのない微量成分として添加可能である。
【0070】
それ故、例えば、第2の基質への酸化に先立つ、本発明の組成物中に存在する第1の基質のレベルは、約0.05%〜約80%w/w、例えば0.1%〜約70%w/wでありうる。
【0071】
したがって、一実施態様では、オーラルケア製品中に存在するポリオールのレベルは、適切には約1〜約80%w/w、例えば約10〜約75%w/w、または例えば約20〜約70%w/wでありうる。
【0072】
一実施態様では、塗料製品中に存在するポリオールのレベルは、適切には約0.01〜約20%w/w、例えば約0.1〜約10%w/w、例えば約1〜約5%w/wの範囲でありうる。
【0073】
一実施態様では、本発明による化粧組成物または製品中に存在するポリオールのレベルは、適切には約1〜約50%w/w、例えば約5〜約40%w/w、または例えば約10〜約40%w/wの範囲でありうる。米国特許第7094395号では約8〜32%のポリオール(保湿剤)を含有する化粧品が開示されており、かかる範囲は本発明の組成物中でも用いられうる。
【0074】
さらなる実施態様では、洗剤製品中に存在するポリオールのレベルは、適切には約0.01%〜約40%w/w、例えば約0.1%〜約30%、例えば約1%〜約20%、例えば約1%〜約10%または約1%〜約5%の範囲でありうる。
【0075】
第1の酵素
第1の酵素は、典型的にはオキシダーゼ酵素であり、本明細書中で「第1のオキシダーゼ」と称される。
【0076】
第1のオキシダーゼなどの第1の酵素は、ストレプトマイセス(Streptomyces)、キサントモナス(Xanthomonas)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、フランキア(Frankia)、ノカルディア(Nocardia)、ジャニバクター(Janibacter)、バークホルデリア(Burkholderia)、パラコッカス(Paracoccus)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)、サーモビフィダ(Thermobifida)、シュードモナス(Psuedomonas)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)およびバチルス(Bacillus)種およびそれらの相同体からなる群から選択される生物に由来するかまたは単離されうる。
【0077】
適切な第1のオキシダーゼは、EC1.1.3.14カテコールオキシダーゼ、EC1.1.3.18第2級アルコールオキシダーゼ、EC1.1.3.41キシリトールオキシダーゼ、EC1.1.3.13アルコールオキシダーゼ、EC1.1.3.194−ヒドロキシマンデレートオキシダーゼ、EC1.1.3.20長鎖アルコールオキシダーゼ、EC1.1.3.40 D−マンニトールオキシダーゼ.EC1.1.3.7アリールアルコールオキシダーゼ、EC1.1.3.30ポリビニルアルコールオキシダーゼ、EC1.1.3.21グリセロールアルコールオキシダーゼ(glycerolalcoholoxidase)、およびEC1.1.3.38バニリルアルコールオキシダーゼ(vannilylalcohol oxidase)からなる群から選択される酵素分類番号(E.C.)下で分類される酵素を含みうる。
【0078】
JP 80892242では、酸素の存在下でキシリトール、D−ソルビトール、D−ガラクチトール、D−マンニトールおよびD−アラビニトールを酸化させるキシリトールオキシダーゼが開示されている。
【0079】
キシリトールオキシダーゼは、7.5のpH最適値を有するストレプトマイセス属(例えばストレプトマイセスIKD472、FERM P14339)の株から取得可能であり、pH5.5〜10.5および最大65℃の温度で安定であり、特性は本明細書で開示される用途、例えばオーラルケアおよび洗剤の組成物および製品に極めてよく適合する。
【0080】
特定の一実施態様では、第1の酵素は、7.5のpH最適値を有するストレプトマイセス属(例えばストレプトマイセスIKD472、FERM P14339)の株から取得可能でありかつpH5.5〜10.5および最大65℃の温度で安定であるキシリトールオキシダーゼではない。
【0081】
本発明の開発中、驚くべきことに、ソルビトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼが、現在用いられる漂白系の障害となる欠点を回避した漂白系における使用に適することが見出された。これらのソルビトールオキシダーゼは、ストレプトマイセス種またはキサントモナス種およびそれらの相同体などの生物から単離される酵素を含む。しかし、本発明がこれらの特定のソルビトールオキシダーゼまたは任意の特定のものに限定されることは意図されていない。
【0082】
ソルビトールオキシダーゼ(「SOX」または「SoX」)は、ソルビトールのグルコースおよび過酸化水素への変換を触媒する酵素である。ソルビトールオキシダーゼは既知であり、様々な用途で用いられる(例えば、 Oda and Hiraga, Ann. NY Acad. Sci., 864:454-457 [1998]; and Yamashita et al J. Biosci. Bioengin., 89:350-360 [2000]を参照)。ソルビトール(D−グルシトール、C14、MW182.2、CAS50−70−4)は、酵素製剤において一般に用いられる。したがって、ソルビトールオキシダーゼは、これらのソルビトールを含有する酵素製剤を混和する洗剤における使用にとって魅力的なバイオブリーチング剤(biobleaching agent)を提供する。
【0083】
一実施態様では、第1のオキシダーゼは、ソルビトールに対して、キシリトールよりも高い比活性、例えばソルビトールに対してキシリトールよりも少なくとも約1.5倍または少なくとも約2倍高い比活性を有する。
【0084】
一実施態様では、第1のオキシダーゼは、少なくとも約5単位/mgの、ソルビトールに対する比活性を有する。
【0085】
ソルビトールおよびキシリトール基質に対する第1のオキシダーゼの比活性は、例えば実施例にて提供されるアッセイを用い、インビトロで測定可能であるか、あるいは比活性は、オーラルケア組成物中で原位置で測定可能である。
【0086】
好ましいSOXは、ソルビトールをグルコースに酸化するための共同因子として共有結合されたFADを用いるオキシドレダクターゼである。この酵素は、それ自体に対するバイオブリーチング剤(biobleach agent)と同様に、グルコースオキシダーゼおよび/またはヘキソースオキシダーゼ(国際公開第96/39851号を参照)、(グルコ)オリゴ糖オキシダーゼおよびミクロドキウム・ニバレ(M.nivale)の炭水化物オキシダーゼ(国際公開第99/31990号を参照)などの炭水化物オキシダーゼとの併用としてのその使用可能性について固有の機会を提供する。
【0087】
かかる併用の利点は、下記に例示するように、SOXがソルビトールをグルコースに変換し、次いでそれはグルコースオキシダーゼおよび/またはヘキソースオキシダーゼによりグルコン酸塩に変換されうることから、ソルビトールの1モル当たり2モルの過酸化水素が生成されるという事実に起因するものである。
D−ソルビトール+O→D−グルコース+H
D−グルコース+O→D−グルコン酸塩+H
【0088】
好ましいグリセロールオキシダーゼ(GLOX)は、ペニシリウム(Penicillium)属およびボトリティス(Botrytis)属において見出される酵素である(例えば、 Lin et al Enz. Micro. Technol.,18:383-387 [1996]; and Uwajima et al, Agric. Biol. Chem.., 44:399-406 [1989]を参照)。この酵素は、下記に示されるように、グリセロールおよび酸素のグリセルアルデヒドおよび過酸化水素への変換を触媒する。
CHOH−CHOH−CHOH+O→CHOH−CHOH−CHO+H
【0089】
グリセロール(グリセリン、C、MW92.09、CAS56−81−5)は酵素製剤、石鹸および洗浄製剤、食品および飲料、医薬品にて一般に用いられ、かつ化粧品およびパーソナルケア用途にて広範に用いられる。したがって、グリセロールオキシダーゼは、これらのグリセロールを含有する酵素製剤を混和している洗剤中での使用において魅力的なバイオブリーチング剤を提供する。
【0090】
本発明の開発中、ソルビトールオキシダーゼはストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)(SCO6147)(配列番号2)およびストレプトマイセス属H7775(配列番号1)から単離された(Hiraga et al., Biosci. Biotech. Biochem., 61:1699-1704 [1997]を参照)。ソルビトールオキシダーゼは、これらの生物から細胞内と細胞外の双方に発現された、補欠分子族は共有結合されたFADである(FAD1モルからSOX1モル)。したがって、それは(ストレプトマイセス・リビダンス内で発現された)H7775 SOXにおいては276,358、および455nm、SCO6147 SOXにおいては345nmで典型的な吸収極大を有するフラビンタンパク質であり、それはヒスチジン−フラビン結合を示唆している。UV−VISスペクトルにおける所望の変化による観察によると、フラビンは機能的にソルビトールの酸化に関与する。FADはタンパク質と非常に強く結合することから、洗濯用途において安定な酵素をもたらす。
【0091】
SOX遺伝子はストレプトマイセス種H−7775(ジェンバンク(GenBank)登録番号AB000519)からクローニングされかつ配列決定された。
【0092】
ストレプトマイセス種H−7775(ジェンバンク登録番号AB000519)に由来するソルビトールオキシダーゼ遺伝子は、45,158ダルトンの理論分子量を有する420個のアミノ酸を有するタンパク質をコードする1260bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。酵素はpH7.5〜10で、30℃で24時間安定であり、ここでpH7.5での最適温度は50℃である。それは最大55℃でも熱安定である。この酵素に対して同定された最も近い相同体はキシリトールオキシダーゼである(51%の相同性)。SOXは、洗剤、ファブリックケア、ホームケア、オーラルケア(例えば、歯のホワイトニングおよび/または洗浄)、パーソナルケア、繊維加工、食品加工および産業クリーニングを含む複数の用途において効率的な酵素である。さらに、極めて多数のSOXが、キシリトール、マンニトール、アラビトール、リビトール、エリスリトール、イノシトール、グリセロール、プロパンジオール、およびブタンジオールなどの他の基質を触媒可能である。したがって、この酵素は、より広範なスペクトルの基質を用い、様々な用途において基質の使用における柔軟性をもたらす。
【0093】
本明細書中に提供されるこれらの第1の基質の多数が、典型的な洗剤、オーラルケアおよび化粧製剤中に存在するかまたはそれらに添加されうる。
【0094】
ストレプトマイセス属H7775に由来するソルビトールオキシダーゼのアミノ酸配列は当該技術分野で既知であり、配列番号1で示される。
【0095】
上で示したように、本明細書中で用いられるソルビトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼは、熱的に安定でありかつ広範なpH範囲にわたり安定であることが見出された。事実、用いられたソルビトールオキシダーゼのpH特性は、必要に応じて産業、ならびに洗剤および他のクリーニング剤で使用されるpHに適合することが見出された。
【0096】
さらに、本発明で提供されるソルビトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼは、好ましくはグルコースなどの糖、すなわち出発基質のソルビトールからの過酸化水素といった別の分子を放出する、ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼなどの他のオキシダーゼを用いてグルコン酸、カルボキシル酸生成物にさらに酸化されうるアルデヒド生成物を生成しうる。同様に、大気中の酸素を利用しての、キシリトール、アラビトール、マンニトールなどのポリオールにおけるソルビトールオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼによる酸化が、ヘキソースオキシダーゼ、キシロースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、アラビノースオキシダーゼ、およびマンノースオキシダーゼなどの他の関連オキシダーゼによるさらなる酸化における二次基質としての、キシロース、アラビノース、マンノースなどの対応する糖の形成とともに、実現可能である。
【0097】
食用およびオーラルケア組成物中での使用においては、口内で一般的なpH、すなわちpH5.0〜9.0、好ましくはpH6.0〜8.5、特にpH6.4〜7.5にて実質的に活性を示す酵素を使用することも有利である。
【0098】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼはペンチトールまたはヘキシトールオキシダーゼである。
【0099】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼはトリオースオキシダーゼでないか、またはグリセロールオキシダーゼでない。
【0100】
酵素が2種以上の基質に対して活性を有しうることは理解されている。したがって、酵素をそれが酸化する化合物の名称、例えばソルビトールオキシダーゼ(ソルビトール)またはヘキソースオキシダーゼ(ヘキソース)またはグルコースオキシダーゼ(グルコース)により参照する場合、その名称は、EC番号など、酵素が与えられている分類、または酵素が当該技術分野で参照される名称、または酵素が最高の比活性を有する場合の基質に対する支配的な活性のいずれかを示す。この態様において、ソルビトールオキシダーゼは、ソルビトールに対して例えばキシリトールよりも高い比活性を有する。適切には、ソルビトールオキシダーゼは、一実施態様では、D−ソルビトール、D−キシリトール、D−マンニトール、D−アラビトール、グリセロール、イノシトール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群における少なくとも2種を含む、数種のポリオールの酸化も触媒しうる。
【0101】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、リビトールオキシダーゼ、トレイトールオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、アリトールオキシダーゼ、アルトリトールオキシダーゼ、グリトールオキシダーゼ、イジトールオキシダーゼ、タリトールオキシダーゼ、ペンチトールオキシダーゼおよびヘキシトールオキシダーゼからなる群から選択される。
【0102】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、第1の基質または前記第2の基質のいずれかとしてポリオールの名称にちなんだ基質を除く本明細書中に挙げられる別の基質に対する比活性と比較して、1より大きい、例えば約1.5より大きい、例えば約2より大きい、例えば約3より大きい、例えば約4より大きい、例えば約5より大きい、例えば約10より大きい、その名称の元となるポリオールに対する比活性の比を有する。一実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、1より大きい、例えば約1.5より大きい、例えば約2より大きい、例えば約3より大きい、例えば約4より大きい、例えば約5より大きい、例えば約10より大きい、別の基質に対する比活性と比較した、ソルビトールに対する比活性の比を有し、ここで別の基質は、マルトース、ヘキソース、グルコース、マンノース、ガラクトース、イソマルツロース、ラクトース、アラビノース、エリスロース、ペントース、キシロースおよびトリオース、好ましくはグルコース;グリセロールなどのトリオースポリオール;およびキシリトールなどの糖からなる群から選択される。
【0103】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼはキシリトールオキシダーゼではない。
【0104】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ソルビトールに対してキシリトールよりも高い活性、例えば少なくとも1.5倍に相当する活性、例えば少なくとも2倍に相当する活性を示す。同じ実施態様または異なる実施態様では、ポリオールオキシダーゼが有するソルビトールに対する活性はキシリトールと比べて3倍以下である。
【0105】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ソルビトールオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マルチトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、ガラクチトールオキシダーゼ、イソマルトオキシダーゼ、ラクチトールオキシダーゼ、アラビトールオキシダーゼ、アラビトールオキシダーゼおよびエリスリトールオキシダーゼからなる群から選択される。
【0106】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ガラクチトール、イソマルト、ラクチトール、アラビトール、アラビトールおよびエリスリトールからなる群から選択される基質などの個々の(例えばポリオール)基質を用いる場合、少なくとも約5単位/gのタンパク質の(特異的な)オキシダーゼ活性を有する。
【0107】
ポリオールオキシダーゼなどの好ましい第1のオキシダーゼは、ソルビトールオキシダーゼ、またはソルビトール活性を示す酵素である。
【0108】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、キシリトールオキシダーゼであるか、またはキシリトールオキシダーゼ活性を示す。
【0109】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、グリセロールオキシダーゼであるか、またはグリセロールオキシダーゼ活性を含む。
【0110】
一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、対応する糖に対して、1より大きい、例えば少なくとも約1.5、例えば少なくとも約2、例えば少なくとも約3、例えば少なくとも約4、例えば少なくとも約5、例えば少なくとも約10の、各ポリオールに対する比活性の比を有する。一実施態様では、ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、グルコースに対して、約1より大きい、例えば少なくとも約1.5、例えば少なくとも約2、例えば少なくとも約3、例えば少なくとも約4、例えば少なくとも約5、例えば少なくとも約10の、各ポリオールに対する比活性の比を有する。
【0111】
一実施態様では、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼまたはキシリトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)またはストレプトマイセス属IKD472などのストレプトマイセスの株に由来するかまたはそれらから取得される。
【0112】
一実施態様では、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ストレプトマイセス・コエリコロルの株に由来するかまたはそれから取得される。
【0113】
好ましい実施態様では、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、配列番号1もしくは配列番号2からなるかまたはそれに由来するポリペプチドおよび相同体、変異体あるいはそれらの断片である。
【0114】
実施例6で提供されるアッセイを用いる一実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、D−ソルビトール、D−キシリトール、D−マンニトール、D−リビトール、myo−イノシトール、およびグリセロールに対する活性を有する。同一または異なる場合があるさらなる実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、1,3プロパンジオールおよび/または1,2プロパンジオールに対する活性を有する。
【0115】
実施例6で提供されるアッセイを用いる一実施態様では、ポリオールオキシダーゼは、プロピレングリコールおよび/またはエチレングリコールに対する活性を有していない。
【0116】
ソルビトールオキシダーゼ(SOX)は、ストレプトマイセスなどの適切な微生物から取得可能である。Hiragi K. et al. (Biosci. Biotechnol. Biochem. 62:347-353(1998))では、大腸菌(E.coli)内での組換えソルビトールオキシダーゼの生成について記載されている。他のソースについては、例えば米国特許第5,741,687号および米国特許第5,472, 862号に記載されており、ここではキサントモナス・マルトフィリア(Xanthomonas maltophilia)TE3539(FERM BP−4512)などのキサントモナス属に由来する、日本国岐阜県不破郡関ヶ原町の土壌から得られる微生物についての記載がある。ポリオールオキシダーゼの他の例として、D−キシリトールをキシロースおよびHに、ならびにD−ソルビトールをグルコースおよびHに酸化させるストレプトマイセス・コエリコロルからのD−アラビニトール、D−マンニトール、およびより少ない程度でD−グルシトール(ソルビトール)、ならびにキシリトールオキシダーゼ(EC1.1.3.41)における酸化を触媒する、カタツムリのヘリクス・アスペルサ(Helix aspersa)およびコウラクロナメクジ(Arion ater)に由来するマンニトールオキシダーゼ(EC1.1.3.40)が挙げられる。
【0117】
例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールまたはキシリトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、細菌または真菌などの微生物源から取得可能である。特に、細菌から放線菌綱(Actinobacteria)および他の放線菌(Actinomycetales)のクラスに分類される。
【0118】
例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールまたはキシリトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ストレプトマイセス、キサントモナス、ブレビバクテリウム、フランキア、ノカルディア、ジャニバクター、バークホルデリア、パラコッカス、クロモバクテリウム、サーモビフィダ、シュードモナス、コリネバクテリウムおよびバチルス種の異なる種ならびにそれらの相同体から取得可能である。
【0119】
例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールまたはキシリトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ストレプトマイセスの株、好ましくはストレプトマイセス・コエリコロルまたはストレプトマイセス属IKD472(Yamashita, Mitsuo et al., Journal of Bioscience and Bioengineering (2000), 89(4), 350-360)およびストレプトマイセス属H−7775(Hiraga, Kazumi et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (1997), 61(10), 1699-1704)の株から取得可能である。
【0120】
JP 09206072では、ストレプトマイセスのソルビトールオキシダーゼおよびその生成方法および使用について開示され、それらは本発明でも使用可能である。
【0121】
JP 06169764では、キサントモナスのソルビトールオキシダーゼについて開示され、それは本発明でも使用可能である。
【0122】
本発明の一態様では、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼは、ストレプトマイセスの株に由来する。
【0123】
さらなる態様では、例えば第1のオキシダーゼ、例えばポリオールオキシダーゼなどの第1の酵素、例えばソルビトールオキシダーゼは、組換え方法により生成される。
【0124】
一実施態様では、第1の酵素/オキシダーゼおよびさらなる酵素は周囲温度で活性を示す。
【0125】
一実施態様では、第1の酵素/オキシダーゼおよびさらなる酵素は、約37℃などの口または身体での温度で活性を示す。
【0126】
当業者が第1の酵素/オキシダーゼを要求される目的に適するレベル(有効量)で投与することになると理解されているが、一実施態様では、第1のオキシダーゼは約0.1〜約200,000単位/kg、例えば約0.1〜約100,000単位/kg、例えば約1〜約100,000単位/kg、例えば約5〜約50,000単位/kg、例えば約10〜約20,000単位/kg、例えば約100〜約10,000単位/kgのレベルであると予想される。一部の実施態様での使用における他の適切な範囲は、約10〜約1,000単位/kgまたは約1〜約10,000単位/kgを含む。
【0127】
一実施態様では、オーラルケア組成物については1〜10000U(単位)/100gの第1のオキシダーゼが用いられうる。一部の実施態様では、約5〜20単位/100gの用量も適切であると考えられる。
【0128】
食品および飼料組成物中での使用においては、上記の用量範囲はまた適切でありうる。
【0129】
一実施態様では、塗料組成物については、約10〜約10000U/100gのポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼが用いられうる。一部の実施態様では、約10〜50単位/100gの用量も適切であると考えられる。
【0130】
一実施態様では、化粧組成物については、約1〜約10000U/100gのポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼが用いられうる。一部の実施態様では、約5〜20単位/100gの用量も適切であると考えられる。
【0131】
一実施態様では、洗剤組成物については、約0.1〜約10000U/100gのポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼが用いられうる。一部の実施態様では、約5〜100単位/100gの用量も適切であると考えられる。
【0132】
第2の基質
第2の基質は、(少なくとも1種の)さらなる酵素により生成物に変換可能である。第2の基質は、好ましくはさらなる酵素(さらなるオキシドレダクターゼ)により酸化可能であることでさらなる過酸化水素および生成物を生成する。
【0133】
本文脈では、「第2の基質」という用語は、第1の基質の酸化の結果としての基質を示し、さらなる酵素により変換可能であることで生成物を形成する。
【0134】
好ましい実施態様では、「第2の基質」という用語は、第1の酵素による第1の基質の酸化の結果としての基質を示し、さらなるオキシドレダクターゼにより酸化可能であることでさらなる過酸化水素および生成物を形成する。
【0135】
一態様では、第2の基質は、1種もしくは複数種の糖類、例えばグルコース、キシロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、イソマルツロース、ラクトース、アラビノースおよびエリスロースからなる群から選択される糖類である。
【0136】
一態様では、第2の基質は、1種もしくは複数種の糖類、例えばリボース、リキソース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、およびタロースからなる群から選択される糖類である。
【0137】
したがって、第2の基質は、例えば第1の基質がソルビトールであるかまたはそれを含有する場合、グルコースであるかまたはそれを含有しうる。
【0138】
ポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼとさらなるオキシドレダクターゼなどのさらなる酵素の間の顕著な相乗効果により、第2の基質の安定な状態レベルは通常は低い。オーラルケア製品および防腐剤用途、例えば塗料または化粧品においては、低レベルの第2の基質は、特に第2の基質が発酵性または齲蝕原性の糖、すなわち微生物/細菌(例えば口腔内の齲蝕原性細菌)または藻およびフジツボ(barnacles)(例えば海洋塗料上の汚れ)などの有害生物の成長を促進するかまたは「供給する」可能性がある化合物である場合、極めて有利でありうる。したがって、本発明は、過酸化水素の極めて効率的かつ多量の生成をもたらすだけでなく、最低レベルの発酵性基質が存在する系も提供することで、有害生物の望ましくない成長の可能性を低減しうる。
【0139】
一実施態様では、本発明による組成物中に存在する、第1のオキシダーゼにより生成される、1種もしくは複数種の発酵性または齲蝕原性の糖類などの第2の基質のレベルは、モル比での測定によると、組成物中に存在するポリオールの(初期)レベルの約50%未満、例えば約25%未満、例えば約10%未満、例えば約5%未満、例えば約1%未満、例えば約0.5%未満、例えば約0.1%未満、例えば約0.05%未満、例えば約0.01%未満である。
【0140】
好ましい実施態様では、第2の基質は糖である。
【0141】
一実施態様では、糖は単糖のヘキソース、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボースからなる群から選択されるヘキソースである。
【0142】
一実施態様では、糖は単糖のペントース、例えばリボース、アラビノース、キシロースまたはリキソースからなる群から選択されるペントースである。
【0143】
一実施態様では、糖はトリオース、例えばアルドトリオースまたはケトトリオースのいずれかである。
【0144】
一実施態様では、糖はスクロースまたはマルトースなどの二糖である。
【0145】
さらなる酵素
(少なくとも1種の)さらなる酵素は、第2の基質を変換可能であることで生成物を生成することを特徴とする。
【0146】
さらなる酵素は、第1の酵素と同一の酵素または酵素的実体ではない。しかし、一実施態様では、さらなる酵素は第1の酵素に付着される場合があり、例えば第1の酵素およびさらなる酵素はポリプロテインとして同時発現されうる。
【0147】
さらなる酵素は、本発明による組成物中または本明細書で開示される用途において第2の基質を生成物に変換可能である任意の酵素である場合があり、その存在は第1の酵素による第1の基質の酸化からの過酸化水素の生成に悪影響を及ぼすことがない。
【0148】
適切なさらなる酵素の例として、NAD+とともに供給される場合、D−グルコノ−1,5−ラクトン+NADHの生成をもたらすグルコースデヒドロゲナーゼ(E.C:1.1.1.118)、NADP+とともに供給される場合、D−グルコノ−1,5−ラクトン+NADPHの生成をもたらすグルコース1−デヒドロゲナーゼ(E.C:1.1.1.119)(NADP(+))、グルコースのCOOH基をリン酸化してグルコース−6−リン酸塩を生成するグルコキナーゼ(E.C.2.7.1.2)、D−グルコース+D−果糖<=>D−グルコノラクトン+D−グルシトールの変換を行うグルコキナーゼが挙げられる。
【0149】
したがって、一実施態様では、組成物は、第2の基質を伴ってさらなる酵素により用いられることで生成物を生成するさらなる化合物を含有する場合があり、ここでかかるさらなる化合物は、適切には、例えばNAD+、NADP+、またはフルクトースからなる群から選択されうる。
【0150】
好ましい態様では、(少なくとも1種の)さらなる酵素は、(オキシドレダクターゼとも称される)(少なくとも1種の)さらなるオキシドレダクターゼである。
【0151】
さらなるオキシドレダクターゼは、好ましくはポリオールオキシダーゼ以外のオキシダーゼである。さらなるオキシドレダクターゼは、第1のオキシダーゼに関する文脈の中で本明細書中に示されるポリオールオキシダーゼではない。
【0152】
オキシドレダクターゼはECクラス1.x.x.x.に属する酵素である。本発明では、オキシドレダクターゼはCH−OHまたはアルデヒドまたはオキソ(EC1.2.3.x)などの酸素アクセプタを用いる。
【0153】
好ましい実施態様では、本文脈中のオキシドレダクターゼは、アクセプタとしての酸素と作用するECクラス1.1.3に属する酵素である。例えば、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O−オキシドレダクターゼ、EC1.1.3.5)は、酸素の存在下でD−グルコースおよびマルトース、ラクトースおよびセロビオースを含む数種の他の還元糖をそれらに対応するラクトンに酸化し、次いで過酸化水素の形成時に各アルドビオン酸(aldobionic acid)に加水分解することが可能な酵素である。グルコースおよびガラクトース上でヘキソースオキシダーゼにより触媒される酸化は、例えば以下のように図示されうる。
D−グルコース+O→δ−D−グルコノラクトン+H、または
D−ガラクトース+O→γ−D−ガラクトガラクトン+H
【0154】
本発明の別の態様では、オキシドレダクターゼは、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、および(グルコ)オリゴ糖オキシダーゼなどのオリゴ糖オキシダーゼからなる群から選択される1種もしくは複数種である。本発明のさらなる態様では、オキシドレダクターゼは、例えば、炭水化物オキシダーゼ、(グルコ)オリゴ糖オキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼからなる群から選択される糖類の酸化を触媒する1種もしくは複数種の酵素である。本発明のさらなる態様では、オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼおよび/またはヘキソースオキシダーゼである。本発明のさらなる態様では、オキシドレダクターゼはヘキソースオキシダーゼである。
【0155】
好ましい実施態様では、オキシドレダクターゼは、例えば、炭水化物オキシダーゼ、オリゴ糖オキシダーゼ、マルトースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、マンノースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、イソマルツロースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ、アラビノースオキシダーゼ、エリスロースオキシダーゼ、ペントースオキシダーゼ、キシロースオキシダーゼ、トリオースオキシダーゼからなる群から選択される、糖オキシダーゼなどの糖オキシダーゼである。
【0156】
一実施態様では、糖オキシダーゼは、EC1.1.3.4グルコースオキシダーゼ、EC1.1.3.5ヘキソースオキシダーゼ、EC1.1.3.9ガラクトースオキシダーゼ、EC1.1.3.10ピラノースオキシダーゼ、EC1.1.3.11 L−ソルボースオキシダーゼ、およびEC1.1.3.40 D−マンニトールオキシダーゼからなる群から選択される。
【0157】
適切なオキシダーゼは、インターナショナル・ユニオン・オブ・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(IUBMB)の推奨(1992年)に従い、酵素分類番号E.C.1(オキシドレダクターゼ)の下で同定される場合があり、オキシド還元を触媒する酵素、特にE.C.1.1.3.またはE.C.1.2.3の下で列挙されるオキシダーゼである。すなわちオキシダーゼは、分子酸素(0)上で作用し、過酸化物(H)を生成し、ドナーとしてCH−OHまたはアルデヒド基もしくはオキソ基のいずれかを用いるものである。
【0158】
適切なグルコースオキシダーゼは、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の株、またはクラドスポリウム属(Cladosporium sp.)、特にクラドスポリウム・オキシスポラム(Cladosporium oxysporum)、特に(ノボノルディスク(Novo Nordisk A/S)からの)国際公開第95/29996号中に記載のクラドスポリウム・オキシスポラム(Cl.oxysporum)CBS 163の株に由来する場合がある。
【0159】
紅藻(red sea−weed)コンドラス・クリスパス(Chondrus crispus)(一般にアイリッシュ・モス(Irish moss)として知られる)由来のヘキソースオキシダーゼ(Sullivan and Ikawa, (1973), Biochim. Biophys. Acts, 309, p. 11-22; Ikawa, (1982), Meth. In Enzymol. 89, carbohydrate metabolism part D, 145-149)は、D−グルコース、D−ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、D−グルコース6−リン酸塩、D−マンノース、2−デオキシ−D−グルコース、2−デオキシ−D−ガラクトース、D−フコース、D−グルコン酸、およびD−キシロースなどの広範なスペクトルの炭水化物を酸化させる。
【0160】
さらに紅藻イリドフィカス・フラシダム(Iridophycus flaccidum)は容易に抽出可能なヘキソースオキシダーゼを生成し、それは数種の異なる単糖および二糖を酸化させる(Bean and Hassid, (1956), J. Biol. Chem, 218, p. 425; Rand et al. (1972, J. of Food Science 37, p. 698-710)。
【0161】
ヘキソースオキシダーゼの広範な基質のスペクトルは、口内に存在する使用可能な基質(すなわち炭水化物)の総量がより特異的な触媒特性を有する関連酵素として有意により多いことから、歯の漂白に関連して有利である。
【0162】
EP 1041890中に記載のミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)由来の炭水化物オキシダーゼは、グルコース、ラクトースおよびキシロースを含む数種の糖類ならびにオリゴ糖に作用する。
【0163】
数種の糖類およびオリゴ糖に作用可能な別のオキシドレダクターゼについてはアクレモニウム・ストリクツム(Acremonium strictum)から取得される(Lin, et al. Biochemica and Biophysica Acta 118(1991))。パン用途におけるその使用についてはJP 11056219に記載されている。
【0164】
適切なオキシドレダクターゼの他の例として、グルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)およびガラクトースオキシダーゼ(EC1.1.3.9)が挙げられる。
【0165】
一実施態様では、オキシドレダクターゼは、炭水化物オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼからなる群から選択される1種もしくは複数種である。
【0166】
一実施態様では、オキシドレダクターゼはヘキソースオキシダーゼである。
【0167】
適切なオキシドレダクターゼの別の例として、イリドフィカス・フラシダム(Bean and Hassid, 1956)およびコンドラス・クリスパス(Sullivan et al. 1973)などの数種の紅藻種からの酵素の単離により取得可能であるヘキソースオキシダーゼ(HOX)(EC1.1.3.5)が挙げられる。本発明の好ましい態様では、HOXは国際公開第01/38544号に記載のように取得または調製される。HOXはDaniscoA/SからDairyHOX(商標)として得られる。
【0168】
さらなるオキシドレダクターゼの用量は、上記のポリオールオキシダーゼにて示される場合と同じ範囲内にありうるが、一実施態様では、本明細書に記載のように過剰のさらなるオキシダーゼが添加されると理解されている。
【0169】
酵素組成物
ソルビトールオキシダーゼおよび/またはさらなるオキシドレダクターゼなどの精製酵素が用いられる、すなわち酵素が本発明の組成物への添加に先立ち精製されることが好ましい。酵素の純度は、好ましくはSDS−PAGEおよびデンシトメトリーを用いて測定される。精製酵素は、少なくとも約20%の純度、例えば少なくとも約30%の純度、例えば少なくとも約40%の純度、例えば少なくとも約50%の純度である。しかし、精製酵素は他のタンパク質と調合される、例えばBSAなどのタンパク質安定剤または他の酵素と混合される場合があることから、酵素の純度の評価からは精製後に酵素に添加されるタンパク質が除外されると理解されている。
【0170】
過酸化水素の生成の速度は、例えば、さらなる酵素/オキシドレダクターゼに対する第1の酵素/オキシダーゼの特定比の有効量を含有する組成物の調製によって制御可能である。典型的には、実施例にて示されるように、過剰のさらなる酵素/オキシドレダクターゼが増加する結果、過酸化水素の生成の速度が増大する。
【0171】
一実施態様では、生成される(または生成可能な)過酸化水素全体のモル量は、第2の基質に変換される(変換可能な)第1の基質のモル量または存在する第1の基質のモル量よりも大きい。一実施態様では、生成される(または生成可能な)過酸化水素のモル量は、適切には、第2の基質に変換される(変換可能な)第1の基質のモル量または存在する第1の基質のモル量の100%超から200%以下である。したがって、本発明の使用により、ソルビトールオキシダーゼ酵素の単独使用から得られる1分子の過酸化水素と比較し、最大で2分子の過酸化水素の第1の基質のソルビトールからの生成が可能になりうる。一実施態様では、生成される(または生成可能な)過酸化水素のモル量は、さらなるオキシドレダクターゼを伴わずにポリオールオキシダーゼ系から生成可能な過酸化水素のモル量の最大2倍である。
【0172】
好ましい一実施態様では、少なくとも1種のさらなる酵素/オキシドレダクターゼの量は、本発明による組成物中に存在するポリオールオキシダーゼ(例えばソルビトールオキシダーゼ)などの第1の酵素/オキシダーゼの量と比較し、組成物中に存在する酵素単位の各番号による測定では1より大きく、例えば約1.5より大きく、例えば約2より大きく、例えば約3より大きく、例えば約5より大きく、例えば約10より大きく、例えば約20より大きく、例えば約50より大きく、例えば約100より大きく、例えば約150より大きく、例えば約200より大きく、例えば約300より大きく、例えば約500より大きく、例えば約1000より大きい。
【0173】
本発明による組成物のさらなる利点は、製品として齲蝕原性の甘味料または糖類を蓄積させることなく、ホワイトニング剤の過酸化水素を生成する酵素および基質の組み合わせを選択する可能性である。
【0174】
一例として、SOXは、D−ソルビトールの酸化を触媒し、1モルのD−グルコースおよび1モルのHを生成する。HOXなどのオキシドレダクターゼは、D−グルコースの酸化を触媒し、1モルのD−グルコン酸および1モルのHを生成する。それ故、SOXおよびHOXの併用により、以下のスキームに図示のように、1モルのソルビトールオキシダーゼ基質から2モルのHが生成される。
【0175】
SOXの酵素反応の結果、グルコン酸への迅速な変換時に齲蝕原性であるが短い寿命を有する中間体のグルコースが得られる。本発明のさらなる利点は、過酸化水素2モルごとに形成されるグルコン酸が1モルにすぎない点である。
【化1】

【0176】
上記の反応は、2つの連続する酵素工程によるポリオールの対応する酸への変換を表す。例としてD−ソルビトールのグルコン酸への変換が挙げられる。(1)D−ソルビトール、(2)ポリオールオキシダーゼによる触媒作用、(3)D−グルコース、(4)ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコオリゴ糖オキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼによる触媒作用、(5)D−グルコノ−1,5−ラクトン、(6)水性環境下での加水分解、(7)D−グルコン酸。
【0177】
反応は以下のように一般化されうる。
第1のオキシダーゼ さらなる
オキシドレダクターゼ
ポリオール → 糖 → ラクトン
【0178】
さらなる具体例として以下が挙げられる。
ソルビトール → グルコース → D−グルコノ−1,5−ラクトン
ガラクチトール → ガラクトース → D−ガラクトノ−1,5−ラクトン
マンニトール → マンノース → D−マンノノ−1,5−ラクトン
ラクチトール → ラクトース → D−ラクトノ−1,5−ラクトン
キシリトール → キシロース → D−キシロノ−1,5−ラクトン
(またはD−ガラクトヘキサジアルドース(ガラクトースオキシダーゼが用いられる場合)はC6で酸化する)
【0179】
ラクトン生成物は、典型的には水性環境下で酸に変換される。第1のオキシダーゼは、本明細書で開示されるものから選択されうる。さらなるオキシドレダクターゼ酵素は、本明細書中に記載の糖オキシダーゼ、例えばヘキソースオキシダーゼまたは(マンノースにおける)マンノースオキシダーゼである。
【0180】
本発明の組成物中に存在する各酵素の量、あるいは存在するかまたは本明細書中に記載の組成物もしくは(応用)製品に添加される酵素の総量は、用いられる酵素および要求される所望の製剤に依存することになるが、典型的には最終組成物の約0.0001重量%〜約20重量%、例えば約0.001重量%〜約10重量%、例えば約0.005重量%〜約2重量%、例えば約0.01%〜約1重量%の範囲でありうる。
【0181】
典型的には、2つの酵素の共役により、過酸化水素の生成の速度において第1の酵素/第1の基質系単独に対して約200〜300%が得られることが見出されている。ポリオールオキシダーゼ(ソルビトールオキシダーゼなど)とヘキソースまたはグルコースオキシダーゼなどのさらなるオキシドレダクターゼの双方の単位用量に相当する単位を用いると、過酸化水素中にかなりの改善が得られたが、過剰のさらなるオキシドレダクターゼの組成物への添加により相乗効果がさらに高まり、結果としてより多量の過酸化水素がより迅速に生成された。
【0182】
本発明の一態様では、組成物はソルビトールオキシダーゼおよびヘキソースオキシダーゼおよび第1の基質としてD−ソルビトールを含有する。
【0183】
本発明の別の態様では、組成物はソルビトールオキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼおよび第1の基質としてD−ソルビトールを含有する。
【0184】
一実施態様では、例えばさらなるオキシドレダクターゼがHOXである場合、ソルビトールまたはキシリトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼはD−キシリトールの酸化を触媒し、1モルのキシロースおよび1モルのHを生成しうる。これは、HOXのキシロースに対する活性が低い故にキシロースが蓄積することになる点で、特にソルビトールなどのキシリトール以外の別のポリオールが存在する場合の実施態様において有利でありうる。キシロースはプレバイオティクス化合物である。それ故、かかる組成物を、食品および飼料組成物中、または薬剤中、または食品または飼料組成物もしくは薬剤の調製物中で用いることで、キシロース含量が増加しうる一方で本発明の他の有益な効果も得られる。
【0185】
ソルビトールオキシダーゼまたはキシリトールオキシダーゼなどのポリオールオキシダーゼおよびD−キシリトールまたはソルビトールなどのポリオールの使用には、Hによる抗微生物作用および/またはホワイトニング効果が非毒性成分を用いて得られ、かつ糖などの齲蝕原性化合物の添加が回避されるという利点がある。
【0186】
組成物マトリックス
本発明による組成物は、適切には、通常は本明細書に記載の製品および用途または他の適切な用途/製品にて用いられる他の原料を含有しうる。
【0187】
マトリックス原料を適切に選択することで、組成物中で用いられる酵素との適合性が保証され、酵素の有効量の使用が可能になる。
【0188】
生成物
上記のように、好ましい実施態様は、さらなる酵素の第2の基質に対する作用によりさらなる過酸化水素および生成物が生成される場合である。したがって、生成物は過酸化水素以外のものである。
【0189】
一実施態様では、さらなる酵素の第2の基質に対する作用により得られる生成物は、単一の生成物を超えるもの、すなわち複数の生成物でありうる。
【0190】
本発明の組成物または本明細書中に記載の用途における生成物の蓄積は、好ましくは第1の酵素による第1の基質の変換からの過酸化水素の生成の速度にマイナスの影響を及ぼさない。事実、発明者らが発見しているように、第2の基質の生成物への変換により第2の基質が効果的に除去され、それにより、第1の酵素の第1の基質に対する活性に作用することにより過酸化水素の生成の速度が大幅に高まるだけでなく、生じ得る望ましくない第2の基質の蓄積が低減される。
【0191】
好ましい実施態様では、生成物は、さらなるオキシドレダクターゼによる第2の基質の酸化により生成され、例えばラクトン(C1での酸化)、ジアルドース(ペントースにおけるC5、ヘキソースにおけるC6での酸化など)でありうる。一例として、酸化が糖鎖の中央の任意の他の位置で生じる場合には、ガラクトースオキシダーゼまたはデヒドロ糖(dehydro sugar)により生成されるD−ガラクトヘキサジアルドースが挙げられる。さらなる例として、C2でのグルコースの酸化により、ピラノースオキシダーゼによって生成される2−デヒドロ−D−グルコースが挙げられる。
【0192】
生成物は、D−グルコノ−1,5−ラクトン、D−キシロノ−1,5−ラクトン、D−マルトノ−1,5−ラクトン、D−マンノノ−1,5−ラクトン、D−ガラクトノ−1,5−ラクトン、D−ヘキサジアルドース(hexadialdose)、D−ラクトノ−1,5−ラクトン、D−アラボノ−1,5−ラクトン、D−エリスロノ−1,5−ラクトン、D−リボノ−1,5−ラクトン、D−リクソノ(lyxono)−1,5−ラクトン、D−アロノ(allono)−1,5−ラクトン、D−アルトロノ(altrono)−1,5−ラクトン、D−グロノ−1,5−ラクトン、D−イドノ−1,5−ラクトン、D−タロノ−1,5−ラクトン、およびイソマルツロースのラクトン、ならびに所望により糖類のC6位置上でのガラクトースオキシダーゼの酸化から得られる一部のさらなる生成物からなる群から選択されうる。
【0193】
定義
他に指示されない限り、本発明の実施には、分子生物学、微生物学、タンパク質精製、タンパク質工学、タンパク質およびDNAの配列決定、組換えDNA分野、ならびに産業用酵素の利用および開発において一般に用いられる従来の技術が含まれ、それらのすべては当該分野の技術の範囲内にある。
【0194】
本明細書で他に規定されない限り、本明細書中で用いられるあらゆる科学技術用語は、本発明に関連する当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2d Ed., John Wiley and Sons, NY (1994); and Hale and Margham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、当業者に本発明にて用いられる多数の用語の一般的な辞書を提供する。本明細書中に記載される任意の方法および原料に類似または相当する任意の方法および原料は本発明の実施において用途が見出されるが、好ましい方法および原料が本明細書中に記載される。したがって、次に定義される用語は、本明細書を全体的に参照することにより、より十分に示される。また、本明細書で用いられる単数形の用語の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈上他に明記されない限り複数形の参照を含む。他に指示されない限り、核酸は5'から3'の方向においてそれぞれ左から右へ記載され、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向においてそれぞれ左から右へ記載される。本発明が、特定の方法論、プロトコル、および記載される試薬が当業者により用いられるという文脈に応じて変化しうることから、これらに限定されないことは理解されるべきである。
【0195】
本明細書全体を通して与えられるあらゆる最大の数値制限があらゆる低域の数値制限をあたかも本明細書中で明示的に記載されるように含むことが意図されている。本明細書全体を通して与えられるあらゆる最小の数値制限は、あらゆる高域をあたかも本明細書中で明示的に記載されるように含むことになる。本明細書全体を通して与えられるあらゆる数値範囲は、かかる広域の数値範囲内に該当するあらゆる狭域の数値範囲をあたかも本明細書中ですべて明示的に記載されるように含むことになる。
【0196】
酵素の「各ポリオール基質」に関しては、それは酵素が用いる基質を示し、例えば、ソルビトールオキシダーゼの各基質はソルビトールであり、キシリトールオキシダーゼの各基質はキシリトールである。
【0197】
本明細書で用いられる「適合性がある」という用語は、組成物のマトリックス材(他の成分)が本明細書中に提供されるオキシダーゼ酵素の酵素活性を、オキシダーゼが通常の使用状況の間での要求に対して有効でなくなるほどまでに低下させないことを意味する。特定のクリーニング組成物の原料が以下に詳細に例示される。
【0198】
本明細書で用いられる「酵素の有効量」は、特定の用途にて要求される酵素活性を得るのに必要な酵素の量を示す。かかる有効量は、当業者により容易に確認され、かつ、用いられる特定の酵素変異体、クリーニング用途、クリーニング組成物の特定の組成物、および液体または乾燥(例えば粒状)組成物が必要とされるか否かなどの多数の因子に基づく。
【0199】
アミノ酸とポリヌクレオチドの相同性は、標準設定:http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.htmlを参照、方法:EMBOSS::水(局所):ギャップオープン=10.0、ギャップ延長=0.5、Blosum 62(タンパク質)を用いるか、またはヌクレオチド配列におけるDNAフルを用いる、クラスタル(Clustal)Wアルゴリズムを用いて判定されうる。
【0200】
「第2の基質が少なくとも1種のさらなる酵素により変換可能であることで生成物を生成する」に関しては、第2の基質がさらなる酵素(オキシドレダクターゼ)により酸化可能であることで過酸化水素および生成物を形成するということが好ましい。
【0201】
配列番号1および配列番号2などのポリペプチド(配列)と関連して、本明細書で用いられる「変異体」という用語は、元の(親)ポリペプチドから、あるいは配列内の1つもしくは複数のアミノ酸、すなわち少なくとも1個のアミノ酸であるが、好ましくは約50個未満、例えば約40個未満、約30個未満、約20個未満のアミノ酸、約10個未満のアミノ酸、または1個のアミノ酸、1〜2個のアミノ酸、1〜3個のアミノ酸、1〜4個のアミノ酸、1〜5個のアミノ酸など約10個未満のアミノ酸の挿入、欠失または置換による、ポリペプチドからの配列情報を用いて調製されるポリペプチドを示す。
【0202】
配列番号1および配列番号2などのポリペプチド配列と関連して、本明細書で用いられる「相同体」という用語は、ポリペプチド配列に対して、少なくとも約70%の相同性、例えば少なくとも約80%の相同性、例えば少なくとも約85%の相同性、または少なくとも約90%の相同性、例えば少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%もしくは約99%の相同性があるポリペプチドを示す。2つのポリペプチド配列間の相同性は、本明細書中に記載の標準設定を用いるクラスタル(Clustal)Wアラインメントアルゴリズムを用いて判定されうる。
【0203】
配列番号1および配列番号2などのポリペプチド配列と関連して、本明細書で用いられる「断片」という用語は、ポリペプチド配列のほんの一部からなるポリペプチドを示す。したがって、断片は、ポリペプチド配列の少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、例えば少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約90%または例えば少なくとも約95%を含むかまたはそれらからなりうる。
【0204】
本発明による変異体、相同体および断片はすべて、親酵素の(本発明の目的として)所望の酵素活性の少なくとも一部、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または親酵素のあらゆる酵素活性を保持する。
【0205】
発明者が本発明の組成物および方法における使用にとって好ましい酵素をそれらの特定の配列番号によって同定する場合、これには、それらの天然の宿主種または異種の宿主種のいずれかで、かつ酵素が翻訳と同時にまたは翻訳後に処理されうるものとして発現される場合、対応するアミノ酸の配列番号をコードする核酸から誘導される酵素が含まれることは、当業者により理解されるであろう。
【0206】
濃度、活性および条件などを示すために本明細書で用いられる「約」という用語は、参照される正確な値および正確な範囲を含み、詳細にはそれらを開示する。
【0207】
本明細書で用いられる「ポリオール」という用語は、2つ以上の水酸基を含む糖アルコールを示す。ポリオールは、糖類がカルボニル基(COOH)を有する一方、ポリオールがヒドロキシル(COH)基のみを含みかつ一般基のアルジトールに属することから、糖とは異なる用語である。
【0208】
二糖および単糖の双方は糖アルコールを形成しうるが、還元においては1つのアルデヒド基のみが使用可能であることから、二糖(例えばマルチトールおよびラクチトール)に由来する糖アルコールは全体的に水素化されることはない。一実施態様では、糖アルコールは完全に水素化される。
【0209】
糖アルコールについては、そのカロリー含量が糖類よりも低いことから一般に食品に添加されるが、その甘味も一般に低めであり、甘味が強い甘味料と併用されることが多い。それらは口内で細菌により代謝(すなわち分解)されず、歯の腐食に寄与しないことから、チューイングガムにも添加される。マルチトール、ソルビトールおよびイソマルトは、より一般的なタイプの一部である。糖アルコールは、それに類似の糖類から穏やかな還元条件下で形成されうる。
【0210】
本明細書で用いられる「オキシダーゼ」という用語は、電子受容体として分子酸素(O)を含む酸化/還元反応を触媒する酵素を示す。これらの反応では、酸素は水(HO)または過酸化水素(H)に還元される。オキシダーゼはオキシドレダクターゼのサブクラスである。
【0211】
「ポリオールオキシダーゼ」という用語は、ポリオールを対応する糖に酸化可能な酵素を示す。ポリオールオキシダーゼの作用によるポリオールの酸化の結果、過酸化水素が生成される。
【0212】
本明細書で用いられる「グルコースオキシダーゼ」(「Gox」)という用語は、β−D−グルコース(すなわち6つの炭素糖、グルコースの異性体)に結合しかつ糖のその代謝産物への分解に役立つオキシダーゼ酵素(EC1.1.3.4)を示す。GOxは、β−D−グルコースのD−グルコノ−1,5−ラクトンへの酸化を触媒し、次いでグルコン酸に加水分解するとともに分子酸素を過酸化水素に還元するダイマータンパク質である。
【0213】
本明細書で用いられる「アルコールオキシダーゼ」(「Aox」)という用語は、アルコールをアルデヒドに変換するとともに分子酸素を過酸化水素に還元するオキシダーゼ酵素(EC1.1.3.13)を示す。
【0214】
本明細書で用いられる「コリンオキシダーゼ」(「Cox」)という用語は、中間体としてベタインアルデヒドを伴う、コリンのグリシンベタインへの4電子酸化を触媒するとともに2分子の分子酸素を2分子の過酸化水素に還元するオキシダーゼ酵素(EC1.1.3.17)を示す。
【0215】
本明細書で用いられる「ヘキソースオキシダーゼ」(「Hox」)という用語は、単糖および二糖をそれらの対応するラクトンに酸化するとともに分子酸素を過酸化水素に還元するオキシダーゼ酵素(EC1.1.3.5)を示す。ヘキソースオキシダーゼは、D−グルコース、D−ガラクトース、マルトース、セロビオース、およびラクトースなどを含む種々の基質を酸化可能である。
【0216】
本明細書で用いられる「グリセロールオキシダーゼ」という用語は、グリセロールのグリセルアルデヒドへの酸化を触媒するとともに分子酸素を過酸化水素に還元するオキシダーゼ酵素(EC1.1.3.)を示す。
【0217】
酵素の活性が使用可能な条件および基質に依存することになり、それ故に酵素の活性が、本発明による組成物中または所望の用途におけるかかる組成物の使用と比べ、標準のアッセイ条件(インビトロアッセイ)と異なる場合があると理解されている。一実施態様では、酵素活性は、実施例にて記載のようにインビトロアッセイにより測定される。あるいは、酵素の活性は、原位置すなわち本発明による組成物中で、かつ組成物が用いられるべきである条件下で測定される。インビトロ活性に関しては、同じ分析的方法が、原位置での酵素活性の測定にて用いられる場合があり、ここでのアッセイは、組成物マトリックスを用いてまたは本発明による組成物/製品が用いられる条件下で実施される。
【0218】
本明細書で用いられる「糖」という用語は、単糖、二糖およびオリゴ糖、ヘキソース、例えば、ラクトース、マルトース、ソルボース、トリオース、ペントース、ヘキソース、マンノース、グルコース、ガラクトース、キシロース、フルクトース、イソマルトース、エリスロースからなる群から選択される糖類を示す。
【0219】
糖類はアルデヒド基(−CHO)またはケトン基(C=O)のいずれかを有し、その場合、糖類を反応性にする炭素−酸素二重結合が存在する。好ましくは、糖という用語は、(CHO)(式中、nは3〜6、例えば3、5もしくは6、または5もしくは6である。)に従う。
【0220】
糖類は、トリオース、ペントースまたはヘキソース、好ましくはペントースまたはヘキソースの糖であり、好ましくは閉じた鎖形態をなしうる。
【0221】
糖は、スクロース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースおよびマンノースからなる群から選択されうる。
【0222】
本明細書で用いられる「オーラルケア製品」は、治療薬の全身投与を目的として意図的に飲み込まれることはないが、歯の表面および/または口の粘膜組織の実質的にすべてと経口活性の目的で接触させるのに十分な時間、口腔内で保持される製品を意味する。本発明との関連で、オーラルケア製品は、義歯、人工歯などのクリーニング用の製品も含む。オーラルケア製品は、例えば粉末、ペースト、ゲル、液体、軟膏、チューイングガムタブレットまたはスプレーなどの任意の適切な物理的形態を有しうる。
【0223】
本明細書で用いられる「クリーニング組成物」および「クリーニング製剤」は、織物、皿、コンタクトレンズ、他の固体基材、毛髪(シャンプー)、皮膚(石鹸およびクリーム)、歯(うがい薬、練り歯磨き粉)などのクリーニングが必要とされる物品からの望ましくない化合物の除去における用途が見出される組成物を示す。同用語は、組成物が組成物中で用いられるオキシダーゼおよび他の酵素および組成物中の任意の可逆性の酵素阻害剤に適合する限り、所望のクリーニング組成物の特定のタイプおよび製品の形態(例えば、液体、ゲル、顆粒、またはスプレー組成物)において選択される任意の原料/化合物を包含する。クリーニング組成物の原料における具体的選択は、クリーニングが必要とされる表面、物品または布、および使用中のクリーニング条件に対する組成物の望ましい形態を考慮することによって容易に行われる。
【0224】
同用語は、クリーニング、漂白、消毒、ならびに/または任意の対象および/もしくは表面の殺菌に適合する任意の組成物をさらに示す。同用語は、限定はされないが、洗剤組成物(例えば、液体および/または固体洗濯洗剤および高品質な布用洗剤;例えばガラス製、木製、セラミック製や金属製のカウンタートップおよび窓に対する硬い表面用のクリーニング製剤;カーペットクリーナー;オーブンクリーナー;ファブリックフレッシュナー(fabric fresheners);織物軟化剤;および織物および洗濯用プレ−スポッター(pre−spotters)、ならびに食器用洗剤)を含むように意図されている。
【0225】
事実、本明細書で用いられる「クリーニング組成物」という用語は、他に指示されない限り、顆粒または粉末形態の汎用性のまたは強力な洗剤、特にクリーニング洗剤;液体、ゲルまたはペースト形態の汎用性の洗剤、特にいわゆる強力な液体(HDL)タイプ;液体の高品質な布用洗剤;食器手洗い用洗剤または食器用の軽質洗剤、特に高発泡性タイプのもの;家庭および産業用途の様々なタブレット、顆粒、液体およびリンス助剤タイプを含む食器洗い機用洗剤;抗菌性の手洗いタイプ、クリーニングバー、うがい薬、義歯洗浄剤、車またはカーペット用シャンプー、浴室クリーナーを含む、液体クリーニング剤および消毒剤;ヘアシャンプーおよびヘアリンス;シャワージェルおよびフォームバスおよび金属クリーナー;ならびに漂白添加剤および「ステインスティック(stain−stick)」または前処理タイプなどのクリーニング助剤を含む。
【0226】
本明細書で用いられる「洗剤組成物」および「洗浄製剤」という用語は、汚染対象のクリーニング用の洗浄溶媒内での使用が意図される混合物に関して用いられる。一部の好ましい実施態様では、同用語は織物および/または衣服の洗濯に関して用いられる(例えば「洗濯洗剤」)。別の実施態様では、同用語は、例えば食器、食事用器具などを洗うために用いられる他の洗剤を示す(例えば「食器洗浄用洗剤」)。本発明は任意の特定の洗浄製剤または組成物に限定されることを意図していない。事実、同用語は、オキシダーゼに加え、界面活性剤、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、オキシドレダクターゼ、ペルヒドロラーゼビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、青味剤および蛍光色素、固化阻害剤(caking inhibitors)、マスキング剤、酵素活性化剤、酵素阻害剤、抗酸化剤、ならびに可溶化剤を含有する洗剤を包含することを意図している。一部の好ましい実施態様では、洗浄製剤は、限定はされないが、米国特許出願第10/576,331号および第10/581,014号、ならびに国際公開第05/52161号および国際公開第05/056782号に記載のものを含み、本発明に用途が見出される。しかし、任意の適切な洗浄製剤は本発明に用途が見出されるように、本発明が任意の特定の洗浄製剤に限定されることは意図していない。
【0227】
本明細書で用いられる「食器洗浄組成物」は、食事用器具を含む食器類を洗うためのあらゆる形態の組成物を示し、限定はされないが、粒状および液体形態を含む。本発明は任意の特定のタイプまたは食器類用の組成物に限定されることは意図していない。事実、本発明は、限定はされないが、セラミック、プラスチック、金属、磁器、ガラス、アクリルなどを含む任意の材質の食器類(例えば、限定はされないが、皿、コップ、グラス、ボウルなどを含む食器類)および食事用器具(例えば、限定はされないが、スプーン、ナイフ、フォーク、配膳用具などを含む台所用品)のクリーニングにて用途が見出される。「食器類」という用語は、食器および食事用器具の双方に関して本明細書で用いられる。
【0228】
本明細書で用いられる酵素の「洗浄性能」は、酵素を組成物に添加することなく洗剤にさらなるクリーニング性能をもたらす洗浄への酵素の寄与を示す。洗浄性能は関連の洗浄条件下で比較される。
【0229】
「関連の洗浄条件」という用語は、条件、特に洗浄温度、時間、洗浄機構、泡(sud)濃度、洗剤のタイプおよび水の硬度を示すために本明細書で用いられ、実際には洗剤市場区分における家庭にて用いられる。
【0230】
「改善された洗浄性能」という用語は、関連の洗浄条件下で洗浄される物品(例えば、繊維または食器類および/または食事用器具)からの汚れの除去においてよりよい最終結果が得られること、あるいは別の酵素に関し、同じ最終結果を得るのに重量ベースでより少ない酵素必要とされることを示すために用いられる。
【0231】
「保持された洗浄性能」という用語は、関連の洗浄条件下での酵素の洗浄性能が別の酵素に対して重量ベースで少なくとも80%であることを示すために用いられる。
【0232】
酵素の洗浄性能は、適切な試験条件下で特定の代表的な汚れを除去するためのその能力により簡便に測定される。これらの試験系では、他の関連因子、例えば洗剤組成物、泡濃度、水の硬度、洗浄機構、時間、pH、および/または温度が特定の市場区分における家庭用途にとって典型的な条件が再現されるといった方法で制御されうる。
【0233】
本明細書で用いられる「消毒」という用語は、表面からの汚染物質の除去ならびに物品の表面上の微生物の阻害または殺滅を示す。本発明が任意の特定の表面、物品、あるいは除去されるべき汚染物質または微生物に限定されることは意図していない。
【0234】
反応の制御
両酸化反応は、酸素の存在を必要とすることから、、組成物が密封容器内、例えば制御された酸素環境(酸素が制限された環境)下、例えば分子酸素の制限または非存在という排除下で含有される限り、有意な程度に生じることはない。一旦容器が開きかつ組成物が大気または別の分子酸素源に暴露されると、反応が生じうる。
【0235】
したがって、本発明は、本発明の組成物を含有するパッケージ製品であって、組成物が、パッケージ製品中での過酸化水素の生成を阻止または低減するように制御された酸素環境下、または酸素が制限された環境下、例えば(使用可能な)分子酸素の非存在下で維持される、パッケージ製品も提供する。
【0236】
別の方法は、水のレベルが組成物中またはパッケージ製品中での過酸化水素の生成を阻止または低減するのに十分に低い場合での制御された水環境下で本発明の組成物を提供している。適切には、かかる組成物中の水のレベルは、約2%未満、例えば約1%未満、例えば約5%未満、例えば約0.2%未満または約0.1%未満でありうる。
【0237】
あるいは、反応は、当該技術分野で周知の区分化(compartmentalisation)方法による酵素および基質成分の相互からの物理的分離により、時期尚早に生じることから阻止されうる。一実施態様では、反応は、第1のオキシダーゼおよびさらなるオキシドレダクターゼを含有する組成物区画からの第1の基質の分離により阻止される。第1の基質を添加することで組成物が活性化されうるか、あるいは用途のマトリックスの通常の成分として、または組成物の適用前、適用中もしくは適用前のいずれかに前記用途のマトリックスに補充されたもののいずれかで、用途のマトリックスの一部を形成しうる。したがって、本発明は、第1の基質を含有するさらなる組成物とともに、部分のキット内に、本明細書中に記載の、第1のオキシダーゼ(ポリオールオキシダーゼなど)およびさらなるオキシドレダクターゼを含有する第1の組成物も提供し、ここで前記第1および第2の組成物は互いに分離される。
【0238】
本発明の組成物が使用時に組み合わせで2種以上のポット系として提供されうることが想定されるが、カプセル化またはマイクロカプセル化などの技術を用いることで基質から分離された組成物の酵素成分が保持されうるとも考えられる。マイクロカプセルからの放出は、例えば本発明の組成物の使用時における機械力または希釈により引き起こされうる。
【0239】
一態様では、本発明による組成物は、少なくとも2つのポット、すなわち第1のオキシダーゼおよびさらなるオキシドレダクターゼを含有する第1のポットおよび第1の基質を含有する第2のポットを含む部分のキットを含む。
【0240】
一実施態様では、本明細書で開示される用途、例えば化粧用途(またオーラルケア用途)においては、過酸化水素の生成が適用時に得られるように本発明の組成物を区分し、例えば機械的研磨により酵素系の放出を可能にしかつそれを保存中ではなく適用中に原位置で第1の基質と接触させることは有利である。
【0241】
本発明の一態様では、組成物のpHは5〜9、好ましくは6〜8である。本発明による組成物がオーラルケア製品である場合、第1のオキシダーゼ、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばSOXおよびオキシドレダクターゼを用いることは好ましく、組成物は口内で一般的なpHすなわち(約)5〜(約)9、好ましくは約6〜約8のpHで実質的に活性を示す。第1のオキシダーゼ、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼおよびオキシドレダクターゼが周囲温度または身体温度で活性を示すことはさらに好ましい
【0242】
一実施態様では、第1のオキシダーゼおよび/またはさらなるオキシドレダクターゼ、ならびに存在する任意の他の酵素は固定化されうる。
【0243】
さらなる酵素および酵素系
本発明による組成物は、ラクトペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、アミログルコシダーゼ、マルトース生成アミラーゼおよび非マルトース生成アミラーゼなどのアミラーゼ、例えばNovamyl(商標)、グルコアミラーゼ、デキストラナーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム、ムタナーゼ(mutanase)、リバーゼ、アシル−トランスフェラーゼ、例えば国際公開第2004064537号に開示されたアシル−トランスフェラーゼ、およびキシラナーゼからなる群から選択される1種もしくは複数種の酵素などのさらなる酵素を含有しうる。
【0244】
一実施態様では、本発明の組成物、例えば本発明の口腔用組成物または本明細書に記載の別の組成物はチオシアネートを含有することから、過酸化水素の生成によりチオシアネートのヒポチオシアネートへの変換が可能になる。オーラルケア製品においては、典型的には口内の唾液中に、過酸化水素の存在下でチオシアネートをヒポチオシアネートに変換するのに十分なラクトペルオキシダーゼが存在する。しかし、本発明による組成物はラクトペルオキシダーゼも含有することでこの変換を促進可能であり、それにより有効な抗菌剤の原位置での生成が可能になる。
【0245】
酸素の使用可能性が限定される場合、過酸化水素の放出の速度が制限されてくると理解されている。したがって、本酵素系の酸素生成系に対する共役が適切でありうると考えられる。
【0246】
用途
本発明による組成物を用い、例えば歯、紙および布など、製mpositionホワイトホワイトニングおよび/または漂白が望ましい場合の任意のタイプの原料を処理可能である。
【0247】
漂白および/またはホワイトニングのための酵素のこの併用の利点は、例えばオーラルケア製品中での漂白剤の先の使用と比べ、ホワイトニング効果および/または漂白効果が無害物質の使用により得られる点である。
【0248】
本発明による組成物は、得られる過酸化水素に起因する抗微生物作用をさらに有する。本発明のさらなる態様は、息の悪臭または歯周炎に関する微生物作用を治療または予防するための、オーラルケア製品の製造における本発明による組成物の使用に関する。
【0249】
本組成物における他の有益な使用は、1モルの糖が用いられるごとに組成物が2モルのOを用いて酸素スカベンジャーとして作用する場合の食品保存におけるものである。
【0250】
パーソナルケア領域内では、本発明の組成物は、練り歯磨き粉、特に歯のホワイトニング、うがい薬、義歯洗浄剤、液体石鹸、スキンケアクリームおよびローション、ヘアケアおよびボディケア製剤ならびにコンタクトレンズのクリーニング用溶液に抗菌剤として作用するための有効量で添加されうる。本発明の組成物は、洗濯洗剤組成物または食器洗浄用洗剤組成物の構成成分でもあり、かつ過酸化水素源として用いられうる。洗濯洗剤組成物は、界面活性剤、前記本発明の組成物を含有しうる。食器洗浄用洗剤組成物は、前記本発明の組成物および漂白前駆体またはペルオキシ酸を含有しうる。本発明の組成物は、汚れの除去に特に有用でありうる。
【0251】
洗剤
本発明による洗剤(製品)は本発明による組成物を含有する。したがって、一実施態様では、本発明は、クリーニング組成物、クリーニング製剤、洗剤組成物または洗浄製剤などの洗剤製品中での本発明の組成物の使用を提供する。
【0252】
洗剤(製品)は、漂白剤またはホワイトニング剤として使用可能であるか、または消毒剤または漂白/ホワイトニング剤と消毒剤の双方として使用可能である

【0253】
洗剤(製品)は、本明細書で開示のように、さらなる酵素または酵素系、特にペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、アシル−トランスフェラーゼおよびラクトペルオキシダーゼ(所望によりチオシアネートの存在下)を含有しうる。
【0254】
一実施態様では、洗剤製品はクリーニング組成物またはクリーニング製剤の形態でありうる。
【0255】
一実施態様では、洗剤製品は洗剤組成物または洗浄製剤の形態でありうる。
【0256】
洗剤製品は食器洗浄組成物でありうる。
【0257】
好ましくは、本発明による洗剤製品は、本発明の組成物を含有しない対応製品と比較し、関連した洗浄条件下で改善された洗浄性能を有する。
【0258】
一部の実施態様では、本発明の組成物および漂白助剤を含有する洗浄製剤を用いると、汚れを漂白するための洗濯洗浄液中に活性酸素種が生成される。
【0259】
一部の実施態様では、アシル−トランスフェラーゼおよびその基質をさらに含有する洗剤組成物を用いると、汚れを漂白するための洗濯洗浄液中に活性酸素種が生成される。
【0260】
一態様では、組成物は食用組成物、例えばオーラルケア組成物、(経口投与された)薬剤組成物、あるいは食品または飼料組成物である。
【0261】
「食用組成物」という用語は、経口投与または口腔を介する消費向けの組成物を示す。
【0262】
食用組成物は、(典型的には)ヒト(または動物)での消費として認められている香味料、防腐剤、生地成分、乳化剤、甘味料、保湿剤、および/または結合剤のうちの1種もしくは複数種を含有しうる。
【0263】
オーラルケア
本発明の一態様では、オーラルケア製品中で用いられる本発明による組成物および成分を含有するオーラルケア製品が提供される。
【0264】
本発明のさらなる態様では、抗菌効果および/またはホワイトニングおよび/または漂白が望まれる場合、第1の酵素、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼ、さらなる酵素、例えばさらなるオキシドレダクターゼおよびポリオール、例えばソルビトールおよびオーラルケア製品中で用いられる成分を含有する本発明によるオーラルケア製品が提供される。
【0265】
オーラルケア製品の例として、練り歯磨き粉、デンタルクリーム、ジェルまたは歯磨き粉、オドンティック、マウスリンス、マウススプレー、ブラッシング前または後のリンス製剤、チューイングガム、ロゼンジ、およびキャンディが挙げられる。
【0266】
オーラルケア製品は、チオシアネート、グルコン酸亜鉛、リゾチーム、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、およびアミログルコシダーゼなどのさらなる活性成分を含有しうる。さらなる成分については国際公開第97/06775号中に挙げられ、かつレドックスメディエーターを含む。
【0267】
一実施態様では、本発明によるオーラルケア組成物/製品はフッ化物をさらに含有する。
【0268】
練り歯磨き粉および歯磨きジェルは、典型的には、砥粒研磨(abrasive polishing)材、起泡剤、香味料、保湿剤、結合剤、増粘剤、甘味料、ホワイトニング/漂白/汚れ除去剤、水、および所望により酵素などの成分を含有する。
【0269】
プラーク除去液(plaque removing liquids)を含むうがい薬は、典型的には、水/アルコール溶液、香味料、保湿剤、甘味料、起泡剤、着色剤、および所望により酵素などの成分を含有する。
【0270】
チューイングガム:チューイングガムの調製に適する組成物は、国際公開第2005/006872号および米国特許第4,564,519号に開示されている。
【0271】
オーラルケア製品中で用いられる場合、第1のオキシダーゼ、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼ、およびさらなる酵素(例えばさらなるオキシドレダクターゼ)の量は安全量および有効量である必要があり、それは処理されるべき状態を有意に改良するかあるいは所望のホワイトニングおよび/または漂白結果を有効にするほどに十分に多い量であるが、重篤な副作用を回避するほどに十分に少ない量であることを意味する。
【0272】
さらなる態様では本発明は、歯に対する漂白および/またはホワイトニングのための方法であって、歯を本発明による組成物を含有するオーラルケア製品と歯の漂白および/またはホワイトニングに適する量および時間で接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0273】
本発明は、非齲蝕原性の基質(すなわち、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトースなどの齲蝕原性の糖類に分解することのない基質)上に作用しうる第1のオキシダーゼ、例えばポリオールオキシダーゼ、例えばソルビトールオキシダーゼの使用を提供することにより、先行技術よりも優れた利点を有する安全な歯用のホワイトニング組成物を提供する。
【0274】
食品および飼料
本発明の組成物は、食品および飼料ならびに食品および飼料環境、例えば製造、加工および調製設備、例えばミルキングパーラー、チーズ製造設備、肉加工設備、野菜および果物洗浄および加工工場、レストランなどにおける一般的な消毒において用いられうる。
【0275】
肉(すなわち魚を含む動物の肉)の加工設備では、本発明の組成物は、動物の死体およびそれから得られる食品に対する洗浄および消毒にて用いられうる。ポリオールオキシダーゼ/さらなる酵素系の使用は、肉製品中またはその表面上に存在する発酵性糖のレベルを低下させ、望ましくない微生物の成長を低減することから特に好ましい。本発明による組成物はアルカリケイ酸塩をさらに含有する場合があり(米国特許第2004062851号、本明細書によって参照により援用される。)、かかる組成物は肉製品の浄化に特に有用と考えられる。アルカリケイ酸塩の使用により肉および肉製品における水の保持特性も高まったことから、その使用で肉および肉製品における本発明の組成物の保持が高まる可能性がある。
【0276】
さらなる利点は、酸性のさらなる生成物の生成によるpHの低下であり、それにより肉中またはその表面上での微生物の生成も阻害される。野菜および果物の洗浄および加工設備において同様の利点が見られる。
【0277】
本発明の組成物は、食品および飼料製品中でも用いられうる。過酸化水素は、乳製品および卵製品における抗微生物剤として広範に用いられる。本発明による組成物は、適切には、乳製品、例えば牛乳、クリーム、チーズ、乳漿、ヨーグルト、バター、または卵、例えば卵黄もしくは卵白からなる群から選択される食品に添加されうるか、あるいは同食品でありうる。
【0278】
酸性のさらなる生成物の蓄積によるpHの低下についても、他の食品タイプ、例えばチーズの生産において考えられる利点であり、この場合、pHの迅速な低下によりチーズ、例えばチェダーチーズおよびイタリア産ハードチーズの熟成の速度が増加し、熟成および保存時間が低下する。したがって、pHの低下はチーズの味の向上にも寄与する。
【0279】
一実施態様では、本発明の組成物は、飲料中、例えば果汁中に用いられる。果汁は、典型的には適切な第1の基質を含有し、それ故にさらなる第1の基質を果汁に添加することは不要でありうるか、あるいはそれらに本明細書中に記載の第1の基質が補充されうる。
【0280】
さらに、Oはキシロースの生成により除去され、それは食物の腐敗を阻止しうる。SOXが単独で用いられる場合でpHの低下が全く見られない場合の系と比べるとpHが低下することはさらなる利点であり、pHの低下により食物の腐敗の阻止または低減も生じうる。
【0281】
パーソナルケア製品
パーソナルケア分野では、本発明の組成物は、義歯洗浄剤などのオーラルケア製品以外にも、液体石鹸、スキンケアクリームおよびローション、ヘアケアおよびボディケア製剤ならびにコンタクトレンズのクリーニング用の溶液といったパーソナルケア製品に抗菌剤として作用するための有効量で添加されうる。
【0282】
紙の生産
本発明の組成物は製紙のクリーニングにおいても用いられる場合があり、生成された過酸化水素は炭水化物を対応する酸に酸化させ、次いでスケールなどの無機塩の陽イオン部分でキレートすると考えられる。これにより堆積物のより良好なクリーニングおよび/または制御が可能になり、かつ水流においてはそれは濁度の低下、沈殿挙動の改善、および色の低下をもたらし、それらすべてにより、クリーニングおよび流出の制御手順が簡易化され、費用が低下する(国際公開第06/061018号を参照)。
【0283】
化粧品
グルコースオキシダーゼは、化粧品およびトイレタリー向けの市販の防腐剤系の基礎原料として用いられている。しかし、本発明は、過酸化水素の生成にとって極めてより有効な系を提供し、かつ/または使用時に有効な抗微生物/抗菌作用も提供しうることから、グルコースオキシダーゼの使用に適する代替品を提供する。それは使用中に皮膚に対する漂白またはホワイトニングも施す化粧品としての二元機能製品も提供しうる。
【0284】
ラクトペルオキシダーゼ系は、極めて多数の化粧品中で用いられる。したがって、本発明による化粧組成物または製品は、ラクトペルオキシダーゼおよびチオシアネートをさらに含有しうる。
【0285】
ポリオール、例えばソルビトールは、典型的には化粧品の主要な構成成分であり、または化粧品に添加されることで本発明による組成物中でのポリオールオキシダーゼに適する基質を提供しうる。
【0286】
化粧品中での本発明の組成物の使用により、化粧品の防腐剤、および皮膚に適用される場合における微生物/細菌活性、皮膚のライトニング/漂白効果といった利点のうちの1つもしくは複数が提供されうる。
【0287】
化粧品成分は、抗酸化剤、結合剤、エモリエント、乳化剤、保湿剤、色素、潤滑剤、防腐剤、溶剤、香料、界面活性剤、賦形剤物質、例えば不活性基材、安定剤および増粘剤を含む。
【0288】
本発明の組成物/製品は、リップスティック、リップグロス、リップペンシル、およびリップインク;リキッドファンデーション;クリームファンデーション;粉末;ルージュ(Rouge)(ブラッシュまたはブラッシャー);ブロンザー;マスカラ;アイライナーおよびアイシャドウ;マニキュア液;コンシーラー;例えば顔および身体の保湿用のクリームおよびローションなどのスキンケア製品;サンスクリーンおよびサンローション;皮膚の欠点を修復または隠すためのトリートメント製品からなる群から選択される化粧品のうちの1つもしくは複数の形態で用いられうる。
【0289】
化粧品は、製品の形態ならびに用途に対する領域によっても示されうる。化粧品は、リキッドまたはクリームエマルジョン;プレストおよびルース双方のパウダー;ディスパージョン;および無水クリームまたはスティックでありうる。
【0290】
本発明による組成物/製品は、スキンブリーチングおよび/またはホワイトニングなどの化粧技術でも用いられうる。
【0291】
スキンブリーチング
ヒドロキノンは、スキンブリーチング用の製剤中の成分として用いられている。しかし、最近では米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)が、ヒドロキノンに基づく一般用医薬品(OTC)のスキンブリーチング薬品には潜在的に発癌性があり、安全かつ有効という認識は一般的ではなく(GRAS)、不正表示であることを確立するであろう規則制定の提案の通知を発表した。
【0292】
本発明による組成物および製品は、スキンブリーチング用の酵素ベースの製品を調製するために使用されることから、ヒドロキノンの使用に対する安全な代替物質を提供しうる。
【0293】
スキンブリーチング製品は、他の漂白剤、例えば甘草抽出物、桑抽出物、アルブチン、コジック酸、ベアベリー抽出物、AHAブレンド、サリチル酸、aloeleic酸、クエン酸、乳酸、ならびに適切なベースマトリックス(base matrixies)、ならびにサンスクリーンを含有しうる。
【0294】
毛髪漂白
ヘアカラリング、毛髪漂白においては、化学酸化剤が用いられる。適切な酸化剤は、過硫酸塩、亜塩素酸塩や、特に過酸化水素または尿素、メラニンおよびホウ酸ナトリウムを有するそれらの付加生成物である。したがって、本発明の組成物は、毛髪漂白における過酸化水素の安全な別のソースとしても用いられる場合がある。
【0295】
適切には毛髪漂白組成物は、ケラチン繊維の着色用にも用いられ、それ故に少なくとも1種の色素前駆体ならびに本発明の組成物を含有しうる。本発明は、本発明の組成物を用い、繊維を含有するケラチンを着色するためのプロセスにも関する。
【0296】
塗料
本明細書中で本発明と関連して用いられる「塗料」という用語は、色素性または非色素性の被覆剤で対象または表面を被覆することによる、それに対する色の保護および/または付加に用いられる製品のファミリーを示し、ニス、木材着色剤、セラック、ラッカー、およびエナメル質を含む。塗料はほぼあらゆる種類の対象に対して適用可能である。最終製品が塗料商品自体であることから塗料は半製品である。
【0297】
塗料は、乾燥塗料が海洋塗料など、天然水の環境に暴露される場合の用途での使用に向く場合がある。海洋塗料は、藻、フジツボなどの生物の成長によってもたらされるボートおよび船の船体表面での汚染の阻止または低減に用いられる。
【0298】
塗料は、例えば建物の内外および他の対象にて用いられる装飾塗料でありうる。
【0299】
塗料は、塗料の適用時における表面または原料の微生物による腐敗、例えば湿腐または乾腐を阻止または低減する保護塗料でありうる。
【0300】
本発明による組成物は、塗料中の防腐剤として用いられうる。その代わり、またはそれに加え、組成物は、過酸化水素の生成が表面上での汚染生物の付着または成長を阻止または低減する酸化層をもたらす場合、汚染低減のため、塗料中、例えば海洋塗料中に用いられうる。本発明による組成物を含有するかかる塗料は、過酸化水素がその添加なしに生成されることから、この課題に対して有益な酵素の解決策を提供し、あるいは塗料中での発酵性基質の大量の蓄積により、特に塗料内の酵素が不活性状態になる場合、実際に抗汚染性が高まりうる。
【0301】
殺虫剤
殺虫剤製品は、通常では35%以下の過酸化水素を含有し、それは次いで、スプレーまたは液体として適用される場合、通常は1%以下に希釈される。過酸化水素は、多数の非食用作物および農作物(例えば、果物、ナッツ、および野菜)に、屋内および屋外の双方で、収穫の前後に、また食品貯蔵設備の消毒用に用いられる。標的の害虫は、典型的には、植物病害を誘発する真菌および細菌を含む微生物である。植物病原菌の予防および制御に用いられる過酸化水素を含有する殺虫剤は、典型的には葉にスプレーとして、または切り枝および根にディップとして、または移植前の土壌処理(pre−planting soil treatment)として適用される。
【0302】
したがって、本発明による組成物は、直接的に原位置での過酸化水素の生成を可能にするか、または後に適切な表面に適用されうる過酸化水素を生成するための系として、殺虫剤として用いられうる。
【0303】
さらなる実施態様
1.ソルビトールオキシダーゼ、第1の基質、およびオキシドレダクターゼを含有する組成物であって、第1の基質はソルビトールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ第2の基質はオキシドレダクターゼにより酸化可能であることで過酸化水素および生成物を形成を形成する、組成物。
2.実施態様1などの本発明による組成物であって、第1の基質はD−ソルビトール、D−キシリトール、D−マンニトール、D−アラビトール、グリセロール、イノシトール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選択される1種もしくは複数種である、組成物。
3.実施態様2などの本発明による組成物であって、第1の基質はD−ソルビトールまたはD−キシリトールからなる群から選択される1種もしくは複数種である、組成物。
4.実施態様3などの本発明による組成物であって、第1の基質はD−ソルビトールである、組成物。
5.実施態様1などの本発明による組成物であって、オキシドレダクターゼはヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、およびオリゴ糖オキシダーゼからなる群から選択される1種もしくは複数種である、組成物。
6.実施態様5などの本発明による組成物であって、オキシドレダクターゼは炭水化物オキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼからなる群から選択される1種もしくは複数種である、組成物。
7.実施態様6などの本発明による組成物であって、オキシドレダクターゼはヘキソースオキシダーゼである、組成物。
8.実施態様1などの本発明による組成物であって、ソルビトールオキシダーゼはストレプトマイセスの株に由来する、組成物。
9.実施態様1〜8のいずれか一つなどの本発明による組成物であって、組成物のpHは5〜9である、組成物。
10.実施態様1〜9のいずれか一つなどの本発明による組成物であって、組成物のpHは6〜8である、組成物。
11.実施態様1〜10のいずれか一つなどの本発明による組成物であって、ソルビトールオキシダーゼおよびオキシドレダクターゼは周囲温度で活性がある、組成物。
12.実施態様1〜11のいずれか一つなどの本発明による組成物およびオーラルケア製品中で用いられる成分を含有するオーラルケア製品。
13.ホワイトニングおよび/または漂白のためのソルビトールオキシダーゼの使用。
14.ホワイトニングおよび/または漂白のための実施態様1〜10のいずれか一つなどの本発明による組成物の使用。
15.歯のホワイトニングおよび/または漂白のための実施態様13〜14のいずれか一つなどの本発明による使用。
16.歯の漂白および/またはホワイトニングのための方法であって、歯を、実施態様1〜10のいずれか一つなどの本発明による組成物を含有するオーラルケア製品と歯の漂白および/またはホワイトニングに適する量および時間で接触させる工程を含む、方法。
17.薬剤として使用するためのソルビトールオキシダーゼおよびD−キシリトール。
18.実施態様17などの本発明による薬剤であって、ソルビトールオキシダーゼはストレプトマイセスの株に由来する、薬剤。
19.ソルビトールオキシダーゼおよびD−キシリトール、ならびにオーラルケア製品中で用いられる成分を含有するオーラルケア製品。
20.歯のホワイトニングおよび/または漂白のためのソルビトールオキシダーゼおよびD−キシリトールの使用。
【実施例】
【0304】
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施態様および態様を実証しかつさらに例示するように提供され、かつその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0305】
以下に示す実験的開示では、以下の略語、すなわち、℃(摂氏温度);rpm(毎分回転数);HO(水);HCl(塩酸);aa(アミノ酸);bp(塩基対);kb(キロベース);kD(キロダルトン);gm(グラム);μgおよびug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μlおよびul(マイクロリットル);ml(ミリリットル);mm(ミリメーター);nm(ナノメーター);μmおよびum(マイクロメーター);M(モーラー);mM(ミリモーラー);μMおよびuM(マイクロモーラー);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);hr(s)(時間);MgCl(塩化マグネシウム);NaCl(塩化ナトリウム);OD280(280nmでの吸光度);OD600(600nmでの吸光度);EFT(「有効な発酵時間」);HDL(強力洗浄液);EtOH(エタノール);PBS(リン酸塩緩衝生理食塩水[150mM NaCl、10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2]);SDS(ナトリウムドデシルサルフェート);トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン);TAED(N,N,N’N’−テトラアセチルエチレンジアミン);w/v(質量対容量);v/v(容量対容量);GOXおよびGOx(グルコースオキシダーゼ);AOXおよびAOx(アルコールオキシダーゼ);COXおよびCox(コリンオキシダーゼ);HOXおよびHOx(ヘキソースオキシダーゼ);SOXおよびSox(ソルビトールオキシダーゼ);AATCC(米国繊維染色協会(American Association of Textile and Coloring Chemists));WFK(ダブリュー・エフ・ケイ・テストゲヴェーエ(wfk Testgewebe GmbH)、ブリュッヘン−ブラハト(Bruggen−Bracht)、ドイツ);テストファブリックス(Testfabrics)(テストファブリックス(Testfabrics Inc)、ピッツトン(Pittston)、ペンシルバニア州);ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、マナサス(Manassas)、バージニア州);ゲネアルト(Geneart)(ゲネアルト(Geneart)、レゲスブルグ(Regensburg)、ドイツ);インビトロジェン(Invitrogen)(インビトロジェン(Invitrogen,Inc.)、カールスバッド(Carlsbad)、カリフォルニア州);Baker(J.T.ベーカー(J.T.Baker)、フィリップスバーグ(Phillipsburg)、ニュージャージー州);NAEF(NAEF、プレス・アンド・ディエス(Press and Dies,Inc.)、ボルトンランディング(Bolton Landing)、ニューヨーク州);フルカ(Fluka)(フルカ・ケミ(Fluka Chemie AG)、ブーフス(Buchs)、スイス);プロメトリック(Prometric)(プロメティック・バイオサイエンス(Prometic Biosciences)、ウェイン(Wayne)、ニュージャージー州);ミノルタ(Minolta)(コニカミノルタ(Konica Minolta)、グレンコーブ(GlenCove)、ニューヨーク州);およびシグマ(Sigma)(シグマ−アルドリッチ・ケミカル(Sigma−Aldrich Chemical Co.)、セントルイス(St.Louis)、ミズーリ州)が適用される。
【0306】
実施例1:ストレプトマイセス・リビダンス中でのストレプトマイセス属h−7775のソルビトールオキシダーゼを発現する株の作成
ソルビトールオキシダーゼのタンパク質配列(配列番号1)を公開されたアミノ酸配列から取得した(例えば、Hiraga et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62: 4347-353 [1998]を参照)。ストレプトマイセス・コエリコロルSCO6772遺伝子のツインのアルギニン経路のシグナル配列(配列番号3)をストレプトマイセス・コエリコロルの完全ゲノム配列から取得した。
【0307】
ソルビトールオキシダーゼを、SCO6772タンパク質のシグナル配列(配列番号3)とソルビトールオキシダーゼ(配列番号1)の融合タンパク質として、ストレプトマイセス内で発現させた。NcoIにおける制限部位を、クローニングを目的にDNAの5’末端に導入した結果、アミノ酸のグリシン残基が位置2に付加された(配列番号4を参照)。
【0308】
BamHIにおける制限部位についても、クローニングを目的にDNAの3’末端に導入した。融合遺伝子のコドンを、ストレプトマイセス・リビダンス内で発現させるために最適化した。DNAをゲネアルト(Geneart)により合成した。2つの制限部位にわたるDNA断片(すなわちNcoIからBamHIにかけて(配列番号5))をストレプトマイセスの発現プラスミドpKB105にクローニングし(2005年12月16日提出の米国特許出願第11/303,650号を参照。参照によりその全体が援用される。)、それをBamHIで完全にかつNcoIで部分的に切断した。
【0309】
発現プラスミド(pKB105−TAT−SOX−7775;図1)をストレプトマイセス・リビダンス株g3s3に形質転換し(米国特許出願第11/305,650号、上記を参照)、3つの形質転換体を選択し、TS培地内、50ug/mlのチオストレプトンの存在下、30℃で2〜3日間増殖させた。次いで、細胞を、抗菌薬を含有しない生成培地に移し、増殖をさらに3日間持続させた。次いで、培養物1mlを2つの培養管の各々に移し、細胞を、細胞を上清から分離するのに十分な条件下で遠心分離機により除去した。これら2つの培養管から取得した上清を酵素活性アッセイにて試験した。2種のオリゴ(配列番号6および配列番号7)をインビトロジェン(Invitrogen)から取得した。
GCGCTAGCCGGCCCCCCGGCACAGGCCATGACCCCGGCCGAGAAGAACTGGG(配列番号6)
CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号7)
【0310】
プライマーをPCRにて用い、ソルビトールオキシダーゼ遺伝子を増幅しかつソルビトールオキシダーゼ遺伝子をcelAシグナル配列に融合させた。1×緩衝液中にDNA、dNTP、プライマーおよび4%DMSOを含有するPCR反応混合物を98℃に4分間加熱し、DNA鋳型を変性させた。Herculase(登録商標)II酵素(ストラタジーン(Stratagene))を管に添加し、PCR反応を98℃で30秒間、62℃で30秒間および72℃で1分間と8秒間で30サイクル行った。最終の伸長を72℃で5分間行い、反応を4℃で停止させた。
【0311】
得られたPCR断片は、celAシグナル配列の一部、ソルビトールオキシダーゼ遺伝子、および2つの制限酵素部位を有するベクター配列の一部を有した(配列番号8)。
【0312】
PCR断片を制限酵素NheIおよびBamHIで消化し、ベクター配列部分を除去した。次いで、得られた断片を発現ベクターpKB105にクローニングし、プラスミド「pKB105−CelA−Sox7775」を生成した(図2を参照)。発現プラスミドをストレプトマイセス・リビダンス株g3s3に形質転換し、3種の形質転換体を選択し、TS培地内、50ug/mlのチオストレプトンの存在下、30℃で2〜3日間増殖させた。次いで、細胞を抗生物質を含有しない生成培地に移し、増殖をさらに3日間持続させた。次いで、実施例2に記載のように、試料1mlを2つの新しい培養管の各々に移し、細胞を除去し、酵素を精製した。
【0313】
実施例2:大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)pLysS内でのストレプトマイセス属H−7775由来のソルビトールオキシダーゼ遺伝子の発現
Hiraga et al. 1998. Bioscience Biotech Biochem. 61:1699-1704, 1998で公表されたストレプトマイセス属H−7775 SOX遺伝子に由来するソルビトールオキシダーゼ遺伝子のアミノ酸配列を配列データベースから検索した。
【0314】
H−7775 SOX遺伝子をコードする(ニュートラルコドン(neutral codon)を有する)合成遺伝子を用い、ソルビトールオキシダーゼ遺伝子を大腸菌株BL21(DE3)pLysS内で発現させた。SOX遺伝子を有する発現ベクターpET24aをNde1+Bam H1断片としてクローニングした。得られたプラスミド(図5a)を形質転換し、大腸菌Top10細胞(インビトロジェン(Invitrogen)、米国)内で増殖させた。1.2kb SOX遺伝子を有するカナマイシン耐性形質転換体を直接コロニーPCR法により同定した。SOX陽性の形質転換体を培養し、プラスミドDNAを単離した。クローニングされたSOX遺伝子を有するプラスミドDNAを用い、宿主株BL21(DE3)pLysSを形質転換した。形質転換反応全体を直接用い、25ml LB+抗生物質カナマイシン(50ug/ml)およびクロラムフェニコール(34ug/ml)を含有する250mlのフラスコに接種した。培養物を37℃で振盪しながら一晩インキュベートした。カナマイシン(50ug/ml)およびクロラムフェニコール(34ug/ml)を含有するLB500mlを有する2リットルのフラスコに一晩培養物25mlを接種し、さらに2時間増殖させておき、OD600 約0.4〜0.6の対数増殖期中期に到達させた。最終濃度が1mMになるようにIPTGを培養物に添加した。培養物をさらに2時間インキュベートし、次いで遠心分離により回収した。得られたペレットをリン酸塩緩衝液中に再懸濁し、細胞を細胞破壊/溶解のためフレンチプレスに通過させた。異なる細胞溶解液におけるsox活性について分析し(下記表1を参照)、ゲル電気泳動により分画した(天然および変性条件)。細胞溶解液を天然ゲル上で分画し、同ゲルを、ソルビトールを基質として用いたインゲルオーバーレイ(in−gel overlay)活性アッセイおよびNBTのPMS媒介性の還元に基づくアッセイにてさらに試験した。図5bは、ソルビトールに対して活性を有するSOXタンパク質のフラビンタンパク質に対応する離散的な染色タンパク質バンドが存在することを示す。PMS/NBTは、PMS=フェナジンメトサルフェートが還元されたFADにより還元されるレドックスメディエーターである場合におけるフラビンタンパク質に対する診断アッセイである。グルコースオキシダーゼは、図5bのレーン1におけるフラビンタンパク質でもあるが、ソルビトールに対して活性を示さず、それ故に染色バンドが存在しない。P10は、活性SOXタンパク質バンドの非存在を示す(SOX遺伝子を有しない)空のベクターpET24aを有する形質転換体である。レーン1における染色バンドの非存在は、グルコースオキシダーゼがオーバーレイアッセイミックスにて用いられる基質のソルビトールに対して活性を示さないことを示した。したがって、このアッセイを用い、本発明のポリオールオキシダーゼなどの第1のオキシダーゼが第2の基質に対して有意な活性を有しないか否かを判定することが可能である。
【0315】
【表1】

表1:6つの異なる大腸菌細胞抽出物を有する(ABTS/HRPアッセイ)使用におけるSOX活性。P10抽出物はバックグラウンド活性を有する陰性対照である。
【0316】
表1は、大腸菌BL21(DE3)pLysS内での活性酵素としてのソルビトールオキシダーゼの生成について示す。陰性対照は、0.2U/mgのバックグラウンド活性を示した。酵素活性は細胞を含有しない抽出物P6H&P19Hの加熱(H)により改善され、それは熱処理工程がSOXタンパク質を精製するために利用できることを示した。大腸菌で発現されたSOXは、Kohei Oda & Kazumi Hiragaにより実施された先行研究(Biosci Biotech Biochem 61:1699-1704, 1997)に類似の比活性を有する。
【0317】
実施例3:ストレプトマイセス・リビダンス株S3G3内でのストレプトマイセス・コエリコロル/リビダンス由来の推定上のソルビトールオキシダーゼ遺伝子の発現
推定上のキシリトールオキシダーゼ(XOX)として注釈づけられたストレプトマイセス・コエリコロルgi|28380233|sp|Q9ZBU1|XYOA_STRCOは、ブラスト(blast)検索により、配列同一性でストレプトマイセス属H−7775のソルビトールオキシダーゼ遺伝子に最も近い(アラインメントにより54〜60%)ことが同定されている。ストレプトマイセス・コエリコロルの推定上のXOX遺伝子を有する遺伝子座、SCO6147、ORFNames=SC1A9.11c配列を配列データベースから検索し、数種の遺伝子に特異的なプライマーおよび隣接(flanking)プライマーを用い、対応するストレプトマイセス・リビダンス遺伝子をPCRにより単離した。ストレプトマイセス・リビダンスの完全ゲノム配列はまだ使用可能でないが、完全に配列決定されたストレプトマイセス・コエリコロルのゲノムとほぼ同一である。最終のPCR反応は、プライマーus−sco1 5'gcccatatgagcgacatcacggtcacc(配列番号9)およびls−sco1 5'ggatcctcagcccgcgagcacccc(配列番号10)、鋳型としてのストレプトマイセス・リビダンス由来のゲノムDNAからなり、1.269kb PCR断片の合成をもたらした。この最終のPCRステップで用いられるPCR条件は、94℃で55秒間の変性、55℃で55秒間のアニーリング、68℃で1〜2分間の伸長からなる30サイクルからなっていた。用いたポリメラーゼは、インビトロジェン(Invitrogen)から入手したPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ+エンハンサー溶液である。得られたPCR産物を、大腸菌ベクターPCR Blunt TOPOに直接クローニングした。プライマーus−s1 5'gccatgggcgacatcacggtcaccaac(配列番号11)、およびls−s15'atggatcctcagcccgcgagcacccc(配列番号12)を、上記と同じ条件を用いるPCR反応にて用いた。1.268kbのPCR産物をNco1−BamH1で消化し、得られた断片をNco1+Bam H1で消化したストレプトマイセスのベクターpKB105に直接クローニングした。最終のコンストラクトを、図6中でpSMM−SOX(ストレプトマイセス・リビダンス)と称される発現ベクターと称する。PCR Blunt TOPO内のクローニングされたSOXを用い、推定上のSOX遺伝子のヌクレオチド配列を検証した。5ulのプラスミドDNA(図6)を用い、ストレプトマイセスg3s3プロトプラストを形質転換した。形質転換反応物をR5プレート上に蒔き、32℃で18時間インキュベートした。チオストレプトンを含有するソフトな栄養寒天重層をプレート上に注ぎ、さらに3日間インキュベートした。単一のコロニーを用い、チオストレプトンを含有するTS−G培地20mlを有する250mlのフラスコに接種した。30℃で3日間振盪培養した後、2mlのアリコートを用い、生成培地を含有する250mlのフラスコに接種した。細胞ペレットを遠心分離により回収し、緩衝液中に再懸濁し、破壊した。表2は、異なるストレプトマイセス形質転換体に由来する無細胞抽出液中に存在するSOXの活性を示す。
【0318】
【表2】

表2:様々な量の活性を示す、20種の異なるストレプトマイセス形質転換体に由来する無細胞抽出液におけるSOX活性。推定上のSOX活性アッセイ(ABTS/HRP)(U/mg)。
【0319】
ストレプトマイセス・コエリコロル(SCO6147)由来のソルビトールオキシダーゼのDNAおよびタンパク質の配列はそれぞれ配列番号2および13として示される。
【0320】
実施例4:ソルビトールオキシダーゼの精製
この実施例では、ストレプトマイセス・リビダンスにより生成されたソルビトールオキシダーゼを精製するのに用いられる方法(実施例1〜4を参照)を記載する。ストレプトマイセス・リビダンス由来のソルビトールオキシダーゼは菌糸内に局在化される。したがって、酵素を、フレンチプレスを用いる細胞溶解により、100mM Kpiの緩衝液、リン酸カリウム、pH7.0の中の細胞抽出物から単離した。細胞抽出物を50℃に1時間加熱後、残渣の除去に十分な遠心分離を行った。次いで、細胞溶解液の上清を硫酸アンモニウムと混合して32%の飽和状態にし、ソルビトールオキシダーゼを含有するタンパク質画分を沈殿させた。タンパク質沈殿物を、4℃で一晩保持し、次いでソルバル(Sorvall)遠心分離機およびSLA−1500 ソルバル(Sorvall)ローターを用いる10,000RPMでの遠心分離により母液から分離した。
【0321】
次いで、タンパク質沈殿物を32%に飽和された硫酸アンモニウム溶液で洗浄した。洗浄したタンパク質沈殿物を再度Kpi緩衝液中に溶解し、不溶性物質を廃棄した。可溶性分画を25mM Kpi緩衝液、pH7.0に対して一晩透析し、次いで反応性オレンジ樹脂(プロメティック(Prometic))上で親和性クロマトグラフィーを用いてさらに精製した。この部分精製したソルビトールオキシダーゼ調製物および発酵培養液の細胞溶解物(108時間のEFT)を、バイオブリーチングにおける実験にて試料として用いた。酵素の分子量を、SDS−PAGEゲル電気泳動により約45,000Daであると判定した。補欠分子族は共有結合されたFADである(FAD1モルからSOX1モル)。
【0322】
実施例5:強力液体洗濯洗浄条件(HDL Laundry Wash Conditions)におけるSOXの安定性および漂白性能
この実施例では、AATCC液体洗剤による洗濯洗浄条件におけるSOXの安定性および漂白性能を判定するための方法について記載する。これらの実験では、AATCCの標準洗剤(光沢剤を含有しない米国繊維染色協会(American Association of Textile Chemists and Colorists)の強力液体洗剤(Heavy Duty Liquid Detergent)、バージョン2003;主要構成成分は線状のアルカンスルホン酸塩、アルコールエトキシレート、プロパンジオール、クエン酸、脂肪酸、かせいソーダおよび水を含む;テストファブリックス(Testfabrics))を用いる。
【0323】
ジュース(STCCFTCS−15)、ワイン(STCCFTCS−3)、およびティー(STCCFTBC−3)の場合の3つの漂白可能な綿の見本を用いる。見本を布パンチ(5/8インチのダイカッターを具備したモデルB;モデル93046;NAEF)で15mmの円に切断する。
【0324】
単一のディスク見本を24ウェルマイクロプレート(コスター(Costar)3526)の各ウェルに置く。1リットル当たり、1.5mlのAATCC HDL洗剤、75〜100mMのソルビトール、(1.735Mの塩化カルシウムおよび0.67Mの塩化マグネシウムを含有するストック用の15000gpgの硬度溶液から希釈された)6gpgの硬度、および0.05% TAED(テトラアセチルエチレンジアミン、フルカ(Fluka))を含有するpH8の洗浄溶液1mlを各ウェルに添加する。実施例1および2に記載のように生成された、部分精製されたソルビトールオキシダーゼまたは発酵の最終回(108時間のEFT「有効な発酵時間))から得られたソルビトールオキシダーゼ5〜50ulを容積式ピペットで1つのカラム内の3〜8個のウェルに添加する。ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼを0.5、5、50、500、1000および1500Uで添加する。対照ウェルは酵素を全く含有しなかった。マイクロプレートをプラスチック製の蓋およびアルミニウムホイルで覆い、100rpmでゆっくり回転させながら37℃で14時間インキュベートした。次いで、プレートを振とう器から取り出し、過酸化物のテストストリップ(ベーカー(Baker))を用い、過酸化水素の存在について試験した。
【0325】
0.1mM炭酸ナトリウム100ulを各ウェルに添加し、pHを10に上昇させる。マイクロプレートを回転させながらさらに90分インキュベートし、上清を吸引により除去する。各ウェルをドゥルベッコ(Dulbecco)のPBS1.5ml、pH7.3で3回、蒸留水1.5mlで3回洗浄する。各ディスクをそのウェルから取り出し、数枚の紙タオルの間で一晩乾燥させ、直射日光に暴露させない。ディスクを目視で点検し、次いで標準白色タイルで較正されたReflectometer CR−200(ミノルタ(Minolta))で分析する。平均L値をソイル放出(soil release)の百分率(%SR=100%×(最終反射率−初期反射率)/(白色標準の反射率−初期反射率)として計算する。
【0326】
予備試験の結果では、ソルビトールオキシダーゼ/ヘキソースオキシダーゼ組成物が典型的な液体洗剤系中で安定でありかつ洗剤と混合されたその基質のソルビトールおよび使用可能な大気中の酸素の存在下での有効濃度の過酸化水素を生成可能であることが確認される。さらに、漂白助剤(すなわちTAED)の存在下で組成物から生成された過酸化水素は、ブルーベリー、ティーおよびワインなど、典型的な着色された汚れの漂白を促進しうる。
【0327】
実施例6:ソルビトールオキシダーゼにおける基質の範囲の試験
実施例3〜4に記載の方法を用いて得られるソルビトールオキシダーゼにおける、様々なポリオール基質とのその活性を見出すために試験した。アッセイにて用いられるすべての基質は、25℃、pH7.0での100mMリン酸塩緩衝液中で55mMであった。ソルビトールを用いる相対活性が(++++++=100%)として下記の表1中に示される。これらの基質に加え、グリセロールを含むがこれに限定されない他の基質における用途が本発明中に見出されると考えられる。
【0328】
【表3】

【0329】
実施例7:SOX、HOXおよびGOX活性の判定
グルコースオキシダーゼは、グルコースを酸化して過酸化水素を生成する能力を有する。例として、炭水化物オキシダーゼ、グルコオリゴ糖オキシダーゼおよびグルコースオキシダーゼが挙げられる。ヘキソースオキシダーゼはグルコースオキシダーゼとしても分類される場合があるが、それは典型的にはより広範な特異性を有し、他のヘキソースならびにマルトースなどの二糖に対して有意な活性を有する。
【0330】
単位の定義
1ポリオール単位(POX)は酵素の量に対応し、特定の条件下で1分当たり1μモルの特定のポリオールの変換をもたらす結果、1μモルの過酸化水素(H)が生成される。
【0331】
1ソルビトールオキシダーゼ(SOX)単位は酵素の量に対応し、特定の条件下で1分当たり1μモルのソルビトールの変換をもたらす結果、1μモルの過酸化水素(H)が生成される。
【0332】
定義:1ヘキソースオキシダーゼ(HOX)単位は酵素の量に対応し、特定の条件下で1分当たり1μモルのグルコースまたは別のヘキソース糖の変換をもたらす結果、1μモルの過酸化水素(H)が生成される。
【0333】
定義:1グルコースオキシダーゼ(gluOX)単位は酵素の量に対応し、特定の条件下で1分当たり1μモルのグルコースの変換をもたらす結果、1μモルの過酸化水素(H)が生成される。
【0334】
マイクロタイタープレート(300μl)におけるSOX、HOXまたはGOX活性のアッセイ
一般に用いられる西洋わさびペルオキシダーゼ色素基質ABTSをアッセイに取り込み、HOXまたはGOXの各々により生成されたHの生成について測定した。ABTSはペルオキシダーゼにおける発色基質として役立つ。Hと組み合わせたペルオキシダーゼは発色色素からの電子輸送を促進し、それは際立った緑色/青色の化合物に酸化される。
【0335】
インビトロアッセイ
アッセイ混合物は、266μlのソルビトール(シグマ(Sigma)P−5504、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中に0.055M、pH6.3)、(または別の基質、例えばキシリトール)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチオゾリン(ethylbenzothiozoline)−6−スルホン酸)(ABTS)(シグマ(Sigma)A−9941、5mg/ml水溶液)12μl、ペルオキシダーゼ(POD)(シグマ(Sigma)P−6782、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液中に0.1mg/ml、pH6.3)12μlおよび酵素(SOXまたはHOX)水溶液10μlを含有した。
【0336】
アッセイは25℃で行われる。
【0337】
インキュベーションをグルコースの添加により開始させた。405nmでの吸光度をELISAリーダーでモニターした。上記の定義に従い、Hの様々な濃度に基づく標準曲線を酵素活性の計算のために用いた。
【0338】
ソルビトールを用いて図示される反応は、以下のように記載されうる。
ソルビトール+O+→グルコース+H
(1)
グルコース+O+HO→グルコン酸+H
(2)
+2ABTS(無色)+2H→2HO+2ABTS(青色/緑色)
(3)
反応(1)は酵素(SOX)により触媒される。
反応(2)は酵素(HOXまたはGOX)により触媒される。
反応(3)は酵素(POD)により触媒される。
【0339】
反応(2)に関しては、GOOXおよびMnCOはこの反応を触媒可能な酵素でもある。
【0340】
「原位置」アッセイにおいては、アッセイの実施に先立ちマトリックスの希釈が必要である場合があることから、アッセイ成分と非特異的に反応する干渉物質の効果は無視できるほどに小さくなる。あるいは、マトリックス組成物は干渉物質を除いて調製可能である。
【0341】
実施例8:キシリトールおよびソルビトールに対する相対活性
目的は、ソルビトールオキシダーゼのD−ソルビトールおよびD−キシリトールに対する活性における差異を測定することであった。D−ソルビトールとD−キシリトールの双方が過剰である場合、上記のようにABTSアッセイを用い、Hの生成の速度を測定した。両方の場合に、前述の実施例にて調製した同量の酵素を用いた。下表は、(百分率値で与えられる)2種の基質に対する相対活性を示す。使用酵素は、実施例3および4で調製したものであった。
【0342】
【表4】

【0343】
実施例9:2つの酵素間の相乗効果
この実施例で用いた3種の酵素を以下に示す。
1.ダニスコ(Danisco A/S)から入手したヘキソースオキシダーゼ:Hoxypure(商標)
2.先の実施例3〜4に記載のストレプトマイセス・コエリコロル(SCO6147)のソルビトールオキシダーゼを入手した。
3.グルコースオキシダーゼ:シグマ(Sigma)G7141
【0344】
下記の例では、酵素の量は単位量として与えられる。
HOXの単位は、基質が過剰である場合に1分当たり1umolのHを生成した酵素の量である。
GOXの単位は、基質が過剰である場合に1分当たり1umolのHを生成した酵素の量である。
SOXの単位は、基質が過剰である場合に1分当たり1umolのHを生成した酵素の量である。
【0345】
注意。下記の例では、SOXのみが過剰の基質を有することになる。生成される糖は二次酵素における制限因子ということになる。上記のように、活性は、D−ソルビトールと酸素の双方が過剰である場合、D−ソルビトールを触媒するSOXの百分率値として与えられる。
【0346】
初期速度を、(上記の)300uLのABTSアッセイにて5分間にわたり測定した。過酸化水素生成の速度の生成を標準曲線から外挿した。図3および図4に示される測定された活性は、百分率値で与えられる。100%は、基質のD−ソルビトールおよび酸素が過剰である場合(線形速度曲線)におけるソルビトールオキシダーゼ単独による過酸化水素の生成の速度として定義される。
【0347】
実施例10:チュアブルタブレット
酵素組成物を(実施例1〜4にて調製された)SOX1単位の添加により調製し、ヘキソースオキシダーゼまたはグルコースオキシダーゼのいずれかを、0.5、5、50、500、1000および1500Uで1マイクロリットル当たり100mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.7、50mMソルビトールに添加する。水性酵素組成物を用い、チュアブルタブレットを調製する。タブレットおよびガム組成物を含有する酵素組成物を、下記に示される従来の基礎成分(wt%によって列挙される成分)を用いて調製する。
【0348】
タブレットおよびガム組成物を含有する酵素組成物を、下記の従来の基礎成分(wt%によって列挙される成分)を用いて調製する。
【0349】
酵素組成物 0.5%(水構成成分の一部として提供される)
リカシン(Lycasin)75% 48.9%
イソマルトまたはキシリトール 23.1%
水素化された植物油 8.7%
水 4.8%
ゼラチン(40%溶液) 2.9%
澱粉でコーティングした二リン酸カルシ ウム 8.7%
モノ−ジグリセリド混合物 0.8%
レシチン 0.3%
アスパルテーム 0.05%
アスパルテームK 0.05%
バニリン 0.05%
グリセリン 0.1%
重炭酸ナトリウム 0.10%
ミントフレーバー 0.19%
【0350】
チュアブルタブレットを、イソマルト、リカシン、水、脂肪、モノおよびジグリセリド混合物、グリセリン、およびレシチンを沸騰させることにより131℃に調製し、その後、グリセリンを添加し、混合物を30℃(HOX)または60℃(GOX)に冷却する。その後、重炭酸ナトリウム、酵素組成物、二リン酸カルシウムおよび残りの成分を添加する。その後、室温(23℃)に冷却した混合物をすりつぶして粉末にし、タブレットプレスを用いてタブレットに圧縮した。
【0351】
インビボでのプラーク低減の有効性。ヒドロキシアパタイトディスク上の口内の固定装置内でインビボで成長させたプラークを用い、ヒト志願者によるチューイング後、チュアブルタブレットにおけるプラーク低減について2および5時間試験する。共焦点顕微鏡を使用し、プラークの範囲およびプラークの超構造における変化を可視化して定量する。プラークの除去についても、従来の光学顕微鏡により、クリスタルバイオレット指示薬による処理の前後にプラークを染色し、色強度の変化を測定することによって測定した。Image Pro Analysis Softwareを用いて画像分析および定量測定を行う。色強度を測定して用い、汚れの除去について判定した。強度が強くなると、クリーニングの有効性が高くなる。
【0352】
実施例11:チューイングガム
本発明の組成物を含有するチューイングガムを調製するため、以下の成分が組み合されうる。
【0353】
ガムベース 31.20%
ソルビトール 28.08%
キシリトール 5.23%
酵素組成物 1.00%(前述の実施例を参照)
アセスルファム(Acesulfame)K 0.16%
アスパルテーム 0.16%
メントール粉末 1.00%
液体フレーバー 0.47%
イソマルトPF 11.70%
イソマルトDC 16.00%
抗固化剤 4.00%
フレーバー 2.00%
ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカゲル
【0354】
実施例12:水性塗料
本発明の組成物を含有する水性塗料を調製するため、以下の成分が組み合されうる。
【0355】
酵素組成物 0.5%
ソルビトール 0.5%
色素 15%
アクリル結合剤 25%
水 50%
他の添加剤 9.5%
塗料のタイプにより、分散剤(dispersion agent)、懸濁剤、分散剤(dispersant)、消泡剤、浸潤剤、合体剤、様々な充填剤、界面活性剤、コ・バイオサイド(co−biocides)、増粘剤、コ・プリザーバティブ(co−preservatives)、ラテックスを含みうる。
【0356】
実施例13:油性塗料
本発明の組成物を含有する油性塗料を調製するため、以下の成分が組み合されうる。
【0357】
酵素組成物 0.5%、80%ソルビトール中に溶解
TiO色素 20%
アルキド結合剤 40%
炭化水素溶媒 20%
他の添加剤 19.5%
塗料のタイプにより、分散剤(dispersion agent)、懸濁剤、分散剤(dispersant)、消泡剤、浸潤剤、合体剤、様々な充填剤、界面活性剤、コ・バイオサイド(co−biocides)、増粘剤、コ・プリザーバティブ(co−preservatives)、ラテックスを含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0358】
【図1】発現プラスミド(pKB105−TAT−SOX−7775)。
【図2】プラスミド「pKB105−CelA−Sox7775」。
【図3】300μLのABTSアッセイにおける5分にわたる測定としての、第1のオキシダーゼ(SOX)と比べて1倍〜3000倍過剰のさらなる酵素(オキシドレダクターゼ)を有する組成物を用いたHの生成における初期反応速度。さらなる酵素としてグルコースオキシダーゼとヘキソースオキシダーゼの双方を用いて劇的な相乗効果が見られ、過酸化水素の生成速度において最大で約250〜300%の増大が見られた。
【図4】300μLのABTSアッセイにおける5分にわたる測定としての、ポリオールオキシダーゼと比べて1倍〜3000倍過剰のさらなる酵素(オキシドレダクターゼ)を有する組成物を用いたHの生成における初期反応速度。さらなる酵素としてグルコースオキシダーゼとヘキソースオキシダーゼの双方を用い、特にポリオールオキシダーゼと比べて1倍より大きい用量、例えば少なくとも2倍の用量のさらなる酵素にて劇的な相乗効果が見られた。
【図5a】pET24a−ソルビトールオキシダーゼ(H7775)発現ベクター。
【図5b】大腸菌BL21(DE3)pLysS株内での活性ソルビトールオキシダーゼの発現a)ストレプトマイセスH−7775 SOX合成遺伝子をコードする1.27 NdeI−BamHI断片を有する発現ベクター。b)基質としてソルビトールを用いるゲルオーバーレイ活性アッセイ(PMS/NBT)。陰性対照はレーン1でのグルコースオキシダーゼ(GOX)であり、レーン2〜10は異なる形質転換体に由来する細胞溶解液である。
【図6】ストレプトマイセス・リビダンス株g3s3内で推定上のSOX遺伝子を発現するためのコンストラクト。推定上のSOX遺伝子はNco1−BamH1 PCR断片としてクローニングされ、挿入された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のオキシダーゼ、第1の基質、および少なくとも1種のさらなる酵素を含有する組成物であって、前記第1の基質は前記第1のオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素および第2の基質を形成し、かつ前記第2の基質は前記少なくとも1種のさらなる酵素により変換可能であることで生成物を形成する、組成物。
【請求項2】
前記第1の基質がポリオールである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオールがペンチトールまたはヘキシトールである請求項2または3に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオールが、ヘキシトール、ペンチトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ガラクチトール、イソマルト、ラクチトール、アラビトール、エリスリトール、およびリビトールからなる群から選択される請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオールがキシリトールである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールがソルビトールである請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2の基質が糖である請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記糖が単糖または二糖である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記糖がグルコース、キシロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、イソマルトース、ラクトース、アラビノース、エリスロースおよびリボースからなる群から選択される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記糖がキシロースまたはグルコースである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1のオキシダーゼがポリオールオキシダーゼである請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のオキシダーゼが、ヘキシトールオキシダーゼ、ペンチトールオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、キシリトールオキシダーゼ、マルチトールオキシダーゼ、マンニトールオキシダーゼ、ガラクチトールオキシダーゼ、イソマルトオキシダーゼ、ラクチトールオキシダーゼ、アラビトールオキシダーゼ、アラビトールオキシダーゼ、エリスリトールオキシダーゼ、およびリビトールオキシダーゼからなる群から選択される請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1のオキシダーゼが、前記各ポリオール基質の使用時、少なくとも5単位/gのタンパク質のポリオールオキシダーゼの(特異的)活性を有する請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリオールオキシダーゼがソルビトールオキシダーゼまたはキシリトールオキシダーゼである請求項11〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリオールオキシダーゼが、対応する糖に対して、1より大きい、前記各ポリオールに対する比活性の比を有する請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリオールオキシダーゼが、グルコースに対して、1より大きい、前記各ポリオールに対する比活性の比を有する請求項11〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリオールオキシダーゼが、ソルビトールに対して、キシリトールよりも高い比活性を有する請求項11〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリオールオキシダーゼがストレプトマイセス(Streptomyces)またはキサントモナス(Xanthomonas)の株に由来する請求項11〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1のオキシダーゼが配列番号1もしくは配列番号2のポリペプチド配列または相同体、変異体あるいはこれらの断片を含有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記第1のオキシダーゼが配列番号1もしくは配列番号19のポリペプチド配列からなる請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中に存在する(または前記組成物に添加された)第1のオキシダーゼの活性のレベルが前記組成物の約0.1〜約200,000単位/kgである請求項11〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種のさらなる酵素がさらなるオキシドレダクターゼである請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記第2の基質が前記さらなるオキシドレダクターゼにより酸化可能であることで過酸化水素および前記生成物を形成する請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記さらなるオキシドレダクターゼが糖オキシダーゼである請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記糖オキシダーゼが、炭水化物オキシダーゼ、オリゴ糖オキシダーゼ、マルトースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、マンノースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、イソマルツロースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ、アラビノースオキシダーゼ、エリスロースオキシダーゼ、ペントースオキシダーゼ、キシロースオキシダーゼ、およびトリオースオキシダーゼからなる群から選択される請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記糖オキシダーゼが、EC1.1.3.4グルコースオキシダーゼ、EC1.1.3.5ヘキソースオキシダーゼ、EC1.1.3.9ガラクトースオキシダーゼ、EC1.1.3.10ピラノースオキシダーゼ、EC1.1.3.11 L−ソルボースオキシダーゼ、およびEC1.1.3.40 D−マンニトールオキシダーゼからなる群から選択される請求項23〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物中に存在する酵素単位の前記各番号による測定によると、前記組成物中に存在する前記ポリオールオキシダーゼなどの前記第1のオキシダーゼの量に対する前記少なくとも1種のさらなるオキシドレダクターゼの量が1より大きい、請求項22〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2の基質から生成される前記生成物の存在により、前記第1のオキシダーゼによる前記第1の基質の酸化からの過酸化水素の生成の速度が低下しない、請求項1〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第2の基質から生成される前記生成物がラクトン、ジアルドースまたはデヒドロ糖である請求項1〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が食用である請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
請求項30に記載の組成物を含有する食用組成物。
【請求項32】
薬剤としての使用を目的とする請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の組成物、およびオーラルケア製品中に用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有するオーラルケア製品。
【請求項34】
前記オーラルケア製品が、チューイングガム、うがい薬、マウススプレー、芳香錠、ロゼンジ、マウスフレッシュナー、鼻腔用スプレー、および口腔用ペーストからなる群から選択される形態である請求項33に記載のオーラルケア製品。
【請求項35】
キシリトールおよび/またはソルビトールを含有する請求項33または34に記載のオーラルケア製品。
【請求項36】
請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物、および化粧品中で用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する化粧品。
【請求項37】
請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物、ならびに皮膚、毛髪または歯の漂白製品および/またはホワイトニング製品において用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する皮膚、毛髪または歯の漂白製品。
【請求項38】
哺乳類の外部組織に対する漂白および/またはホワイトニングのための化粧方法であって、前記哺乳類の外部組織を、請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物または請求項33〜37のいずれか一項に記載の製品と、前記哺乳類の外部組織の漂白および/またはホワイトニングに適する量および持続時間で接触させる工程を含む、化粧方法。
【請求項39】
前記哺乳類の外部組織が歯、毛髪および皮膚からなる群から選択される請求項38に記載の化粧方法。
【請求項40】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物、および洗剤または漂白製品中に用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する、非生体組織上での使用に適する洗剤または漂白製品。
【請求項41】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物、および塗料中に用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する、海洋、装飾または保護塗料などの塗料製品。
【請求項42】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の組成物、および殺虫剤中に用いられる少なくとも1種のさらなる成分を含有する殺虫剤。
【請求項43】
過酸化水素を生成するための請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物、または請求項33〜35のいずれか一項に記載のオーラルケア製品の使用。
【請求項44】
使用の前または使用中に有益な歯の漂白および/もしくはホワイトニング効果、ならびに/または貯蔵寿命の延長、ならびに/または抗微生物/抗菌効果をもたらすためのオーラルケア製品中で行われる請求項43に記載の使用。
【請求項45】
各哺乳動物によって消費される場合における有益なプレバイオティクス効果、および/または貯蔵寿命の延長をもたらすための食用製品中で行われる請求項43に記載の使用。
【請求項46】
貯蔵寿命の延長をもたらすために化粧品中で行われ、かつ/あるいは哺乳類の外部組織に対する漂白および/またはホワイトニングが可能であり、かつ/あるいは前記ヒト皮膚に適用される場合に抗微生物/抗菌効果を有する請求項43に記載の使用。
【請求項47】
非生物上で用いられる場合、洗剤の前記漂白、ホワイトニングまたは消毒の能力を高めるために洗剤中で行われる請求項43に記載の使用。
【請求項48】
適用の前または後のいずれかにおいて、改善された保護性を示す塗料製品中で行われる請求項43に記載の使用。
【請求項49】
微生物害虫を予防、低減または殺滅するための改善された能力を示す殺虫剤製品中で行われる請求項43に記載の使用。
【請求項50】
組成物を調製するための方法であって、請求項1〜49のいずれか一項に記載の第1のオキシダーゼ、請求項1〜49のいずれか一項に記載の第1の基質、および請求項1〜49のいずれか一項に記載の少なくとも1種のさらなるオキシドレダクターゼ、および適切なマトリックスを混合する工程を含む、方法。
【請求項51】
前記マトリックスが食用である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記組成物が薬剤、オーラルケア製品、および飲料からなる群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記マトリックスが洗剤または漂白の成分または製品である請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記マトリックスが海洋または装飾塗料などの塗料である請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記マトリックスが殺虫剤マトリックスである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
歯周病、歯肉炎、過敏性腸症候群、乳糖不耐症、大腸癌、高血中コレステロール、高血圧、血圧上昇、感染、炎症および栄養欠乏から選択される医学的障害を治療または予防することを目的とした薬剤の製造における請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項57】
医学的治療の方法であって、請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物、または請求項33〜35のいずれか一項に記載のオーラルケア製品を、治療または予防を必要とする患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項58】
歯周病、歯肉炎、過敏性腸症候群、乳糖不耐症、大腸癌、高血中コレステロール、高血圧、血圧上昇、感染、炎症および栄養欠乏から選択される医学的障害を治療または予防することを目的とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1〜30のいずれか一項に記載の組成物であって、パッケージ製品中の酸素が制限された環境下に維持されることで、前記パッケージ製品中での過酸化水素の生成を予防または低減する組成物を含有する、パッケージ製品。
【請求項60】
第1の酵素、少なくとも1種のさらなる酵素および第1の基質といった構成成分を含有する部分のキットであって、前記第1の酵素および前記第1の基質が相互から単離される、キット。
【請求項61】
過酸化水素を生成する方法であって、第1のオキシダーゼ、第1の基質、および少なくとも1種のさらなる酵素ならびに適切なマトリックスを、前記第1のオキシダーゼの活性による前記第1の基質の酸化からの過酸化水素および第2の基質の双方の生成に適する条件下で混合する工程を含み、前記第2の基質は前記少なくとも1種のさらなる酵素により生成物に変換可能である、方法。
【請求項62】
前記少なくとも1種のさらなる酵素が、前記第2の基質をさらなる過酸化水素および前記生成物に変換するさらなるオキシドレダクターゼである請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記混合する工程が請求項60に記載の部分のキットの前記構成成分を混合する工程を含む請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
請求項59に記載のパッケージ製品中に含有される前記組成物を外部から供給される酸素に暴露する工程を含む、請求項61または62に記載の方法。
【請求項65】
ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する塗料組成物であって、前記第1の基質が前記ポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、塗料組成物。
【請求項66】
ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する化粧組成物であって、前記第1の基質が前記ポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、化粧組成物。
【請求項67】
ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する食品または飼料組成物であって、前記第1の基質が前記ポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、食品または飼料組成物。
【請求項68】
前記食品または飼料組成物が、牛乳、クリーム、チーズ、乳漿などの乳製品、果汁などの飲料からなる群から選択される、請求項59に記載の食品または飼料組成物。
【請求項69】
ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する薬剤組成物であって、前記第1の基質が前記ポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、薬剤組成物。
【請求項70】
前記第1の基質がキシリトールである、請求項66に記載の薬剤組成物。
【請求項71】
ポリオールオキシダーゼおよび第1の基質を含有する殺虫剤組成物であって、前記第1の基質が前記ポリオールオキシダーゼにより酸化可能であることで過酸化水素を形成する、殺虫剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−511078(P2009−511078A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535891(P2008−535891)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000590
【国際公開番号】WO2007/045251
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508122275)ダニスコ・アクティーゼルスカブ (8)
【氏名又は名称原語表記】Danisco A/S
【Fターム(参考)】