説明

共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法

【課題】 ブロッキングすることなく、捲き取りが可能であるフィルム状のホットメルト接着剤の製造方法を提供する。
【解決手段】 5質量%以下の無機化合物を含有した、数平均分子量が10000以上、融点が70〜150℃、ガラス転移点が20℃以下である共重合ポリエステルを加熱溶融して、ダイから20℃以下に冷却した回転冷却ドラム上に押出し、急冷することを特徴とする共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。無機化合物がシリカまたは炭酸カルシウムである上記共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共重合ポリエステルからなるホットメルト接着剤は、無公害等の特徴を有し、広い分野で利用されている。ホットメルト接着剤の使用方法として、ホットメルト樹脂を加熱溶融し塗布した被着体に、別の被着体をのせ熱圧着する方法や、また、ホットメルト樹脂をパウダーにして散布した被着体に、別の生地をのせ熱圧着する方法が知られている。近年、このような方法をさらに省力化するために、加熱溶融する工程を減らすことが可能なフィルム状のホットメルト接着剤を利用する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、フィルム状のホットメルト接着剤を作製する場合、フィルムどうしがブロッキングしやすく捲き取りが困難であったり、また溶融粘度が低いためにフィルム状にすること自体が難しいという問題があった。
【0004】
フィルムどうしがブロッキングすることを防止するために、特許文献1や特許文献2では、非晶性ポリエステル樹脂、テルペン系フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の高分子樹脂をホットメルト接着剤に混合する方法が開示されている。この方法で得られるフィルムは、ブロッキングや粘着力はコントロールされているが、ホットメルト接着剤以外の高分子樹脂成分を含有するため、融点やガラス転移点が変化し、接着温度が上昇するなどホットメルト接着剤が有する性能を低下させることがあった。
また、Tダイ法により製膜する場合、溶融粘度が低いために、製膜時にフィルムが破れたり、ローラーから剥がれにくくなるなどの問題があった。
【特許文献1】特開2002−138269号公報
【特許文献2】特開2003−171640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記問題点を解決し、ブロッキングすることなく、捲き取りが可能であるフィルム状のホットメルト接着材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の特性を有する共重合ポリエステルを使用することにより、フィルム接着材料が提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)5質量%以下の無機化合物を含有した、数平均分子量が10000以上、融点が70〜150℃、ガラス転移点が20℃以下である共重合ポリエステルを加熱溶融して、ダイから20℃以下に冷却した回転冷却ドラム上に押出し、急冷することを特徴とする共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
(2)無機化合物がシリカまたは炭酸カルシウムであることを特徴とする(1)記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
(3)回転冷却ドラム上に押出し、急冷して得られるフィルムを、(ガラス転移点−10)〜(ガラス転移点+70)℃の温度で縦方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸し、横方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸することを特徴とする(1)または(2)記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
(4)延伸したフィルムを、融点以下の温度で1〜60秒間熱固定することを特徴とする(3)記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、共重合ポリエステルからなり、フィルム状である接着材料を提供することができるようになり、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、共重合ポリエステルは、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分の等モル量から構成された樹脂である。
【0009】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4′−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボンもしくはそのエステル形成性誘導体等を例示できる。
これらのジカルボン酸成分のなかで、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0010】
グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3(4)、8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ(5.2.1.1/2.6)デカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
これらのグリコール成分のなかで、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、1,4−シクロヘキサンジメタノールは汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0011】
上記共重合ポリエステルには、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移点の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として用いることができる。ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、m−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、o−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
これらのヒドロキシカルボン酸のなかで、ε−カプロラクトンは汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0012】
共重合ポリエステルには、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に対し付与したい特性に応じて複数種以上混合して用いることが可能である。このとき、3官能以上のモノマーの割合としては、全カルボン酸成分または全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有せしめた場合には、重合の際、ゲル化点を超えゲル化が問題になる場合がある。
【0013】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0014】
本発明において、共重合ポリエステルの数平均分子量は、10000以上であることが必要であり、15000以上であることが好ましい。分子量が10000未満であると、溶融粘度が低くなりすぎるために、Tダイ法により製膜する場合、製膜時にフィルムが破れたり、ローラーからフィルムが剥がれにくくなる問題を生じるので好ましくない。
【0015】
また、共重合ポリエステルの融点(以下、Tmと略称する。)は、70〜150℃であることが必要であり、70〜120℃であることが好ましい。Tmが150℃を超えると、接着時に、接着体が溶融される場合があるので好ましくない。また、70℃未満であると、保存条件によっては、フィルム接着材料に変形が生じるので好ましくない。
【0016】
さらに、共重合ポリエステルのガラス転移点(以下、Tgと略称する。)は、20℃以下であることが必要である。Tgが20℃を超えると、接着する際に温度を高く設定しなければならず、接着する素材が限定されるので好ましくない。また、Tgは−20℃以上であることが好ましい。Tgが−20℃未満であると、フィルム製膜時の操業性が損なわれることがある。
【0017】
共重合ポリエステルの数平均分子量は、重合時間や解重合量を制御することにより、また、TmやTgは、共重合するモノマーの組み合わせを設定することにより、それぞれ上記範囲に調整することができる。
【0018】
共重合ポリエステルは、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法により重縮合させることにより製造することができる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を、不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める方法を挙げることができる。
【0019】
エステル化反応および重縮合反応の際には、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、テトラブチルチタネ−トなどのチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどの金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を用いて重合をおこなう。その際の触媒使用量は、生成する樹脂に対し、通常0.5質量%以下で用いる。
【0020】
また、共重合ポリエステルに所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合をおこなう。
【0021】
本発明において、共重合ポリエステルフィルム接着材料は、上記共重合ポリエステルをフィルム状に成形したものである。その厚さは、200μm以下であることが好ましい。また製造時に延伸処理していない場合は、その厚さは50〜200μmであることが好ましく、延伸処理した場合は、12〜100μmであることが好ましい。フィルム接着材料の厚さが200μmを超えると、均整度が悪くなり、捲き姿が悪くなったり、皺が発生したりするなど、商品価値を損ねるため好ましくない。
【0022】
本発明において、共重合ポリエステルフィルム接着材料は、無機化合物を含有することが好ましく、その含有量は5質量%以下であることが必要で、3質量%以下であることがさらに好ましい。無機化合物を含有することでフィルム接着材料の皺を減少させることができるだけでなく、前述した捲き取り時の融着を防止する効果もある。一方、無機化合物の含有量が5質量%を超えると、製膜が困難になることがあり、また得られるフィルム接着材料の物性、特にヒートシール強力などが著しく低下し、実用上問題となる場合があるので好ましくない。
【0023】
無機化合物としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、マイカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、クレー、ガラスビーズなどが例示される。中でもシリカ、炭酸マグネシウムは汎用性があり好ましい。無機化合物を添加する場合には、共重合ポリエステルと無機化合物とを2軸押出機にて溶融混練しコンパウンドしてあらかじめ作製されるマスターペレットを用いることが好適である。
【0024】
また、本発明において、共重合ポリエステルフィルム接着材料は、用途に応じて紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料などの添加剤を含有してもよい。
【0025】
次に、本発明のフィルム接着材料の製造方法について説明する。本発明のフィルム接着材料の製法には、Tダイ法やIダイ法など公知の製膜方法が挙げられる。
【0026】
Tダイ法では、乾燥した共重合ポリエステルを押出機に投入し、溶融した樹脂を、Tダイからフィルム状に押し出し、かかるフィルムは回転冷却ドラムに押しつけて急冷し、巻き取られる。回転冷却ドラムの温度は、20℃以下にすることが必要であり、好ましくは、10℃以下がより好ましい。回転冷却ドラムの温度が20℃よりも高いと、フィルムが冷却ドラムからはがすことができない。
【0027】
フィルムを捲き取る際に、フィルム間に離型紙を挟んでおくことが好ましい。離型紙を挟んでおくことで、捲き取ったあとのブロッキングを防ぐことができる。離型紙としては、公知の紙にポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン等を塗布したものや、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどが挙げられるが、フィルム化後、共重合ポリエステルフィルム接着材料から容易に剥がすことができれば特に限定されない。
【0028】
押出機のスクリュー径は適宜選択され、ポリマー溶融温度は、(Tm+100℃)以下の温度範囲で適宜選択される。また、樹脂の吐出量は、冷却速度と吐出量のバランスで適宜選択する。
【0029】
本発明において、回転冷却ドラム上に押出し、急冷して得られるフィルムは、次いで、(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度で、縦方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸し、横方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸してもよい。延伸することによって、フィルム接着材料の強伸度、弾性率、寸法安定性などが向上し、共重合ポリエステルの組成によっては、フィルム間のブロッキングが防止されることがある。
【0030】
また、上記延伸したフィルムを、融点を超えない温度で1〜60秒間、熱固定してもよい。熱固定することによって、フィルムの寸法安定性を向上させることができる。
熱固定温度が融点を超えると、フィルムが溶融するので好ましくない。また、熱固定時間が1秒未満であるとほとんど熱固定する効果が発現せず、60秒を超えると、フィルムがローラーに捲きついたり、フィルムが溶融する場合があるので好ましくない。
【0031】
本発明において、共重合ポリエステルフィルム接着材料には、必要に応じて、コロナ放電処理、表面硬化処理、メッキ処理、着色処理、あるいは各種のコーティング処理による表面処理を施してもよい。
【実施例】
【0032】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。
(1)共重合ポリエステルの数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(2)共重合ポリエステルのTm、Tg
共重合ポリエステル10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、1stスキャンにおいての吸熱ピークの頂点温度をTmとし、2ndスキャンの昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をTgとした。
(3)共重合ポリエステルの組成
H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)により求めた。
(4)フィルム接着材料の厚さ
フィルム接着材料の厚さは、SONY製デジタルマイクロメーターを用いて測定をおこなった。
(5)ヒートシール強度(N/15mm)
本発明で得られたフィルムを、厚さ100μmの塩ビフィルムの間にはさんで、温度150℃、圧力0.2MPaで、1秒間ヒートシールし、幅15mm、長さ100mmのサンプルを作製した。サンプルを、島津製作所製オートグラフを用い、JIS K−6854に準じて、剥離速度300mm/分で剥離をおこない、測定値のピーク値をヒートシール強度として求め、25N/15mm以上を○、25N/15mm未満を×とした。
(6)フィルムの皺
長さ5mのフィルム接着材料を目視し、表面皺が10箇所以上の場合を○、5〜9箇所の場合を△、0〜4箇所の場合を×と判断した。
【0033】
共重合ポリエステルA
テレフタル酸831g(50モル部)、イソフタル酸415g(25モル部)、ε−カプロラクトン285g(25モル部)、ブタンジオール1217g(125モル部)からなる混合物を、攪拌しながら、オートクレーブ中240℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、240℃のまま、触媒としてテトラブチレンチタネート0.2gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応をおこなった。適当な粘度になるまで重縮合をおこない、得られたものを共重合ポリエステルAとした。その組成と特性を表1に示した。
【0034】
共重合ポリエステルB〜F
使用モノマー、仕込みモル部を変更し、上記共重合ポリエステルAと同様の操作を行って、共重合ポリエステルB〜Fを得た。得られた共重合ポリエステルの組成と特性を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1
十分乾燥させた共重合ポリエステルAのペレットを押出機に投入し、溶融した樹脂を、Tダイから、20℃に冷却した回転冷却ドラムに押し出した。その後、4本のローラーを通した後、離型フィルム(ポリプロピレンフィルム、東セロ社製、50μm)をはさんで、捲取機によって100m捲き取った。押出機のスクリュー径は65mm、ポリマー溶融温度は160℃であった。得られたフィルム接着材料は、厚みが100μm、フィルム幅が420mmであった。
【0037】
実施例2〜4、比較例1〜3
共重合ポリエステルの種類、回転冷却ドラムの温度を変えた以外は実施例1と同様にして、フィルム接着材料を作製した。
【0038】
実施例5
十分乾燥させた95質量部の共重合ポリエステルAと、5質量部のシリカ(平均粒径4μm)とを、二軸押出機で混錬し、ペレットを作製した。乾燥させたこのペレットを用いた以外は実施例1と同様にして、フィルム接着材料を作製した。
【0039】
実施例6、比較例4
共重合ポリエステルや無機化合物の種類とその配合量を変えた以外は実施例5と同様にして、フィルム接着材料を作製した。なお、実施例6では、無機化合物として平均粒径5μmの炭酸カルシウムを用いた。
【0040】
実施例7
押出機の吐出量を変えた以外は実施例1と同様にして厚さ120μmのフィルムを作製し、このフィルムを、60℃の温度でフラット同時二軸延伸機のクリップに把持させ、縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍に延伸した。その後、100℃の温度で熱固定した後、横方向の弛緩率を2%として、フィルムを冷却して捲取機で捲き取り、延伸された厚さが12μmのフィルム接着材料を得た。
【0041】
実施例8〜10
共重合ポリエステルや無機化合物の種類とその配合量、延伸温度を変えた以外は実施例7と同様にして、フィルム接着材料を作製した。
【0042】
比較例5〜8
延伸温度、延伸倍率、熱固定温度を変えた以外は実施例7と同様にフィルムの作製を試みた。
【0043】
実施例、比較例で得られたフィルム接着材料の製造条件およびその特性を表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例1〜10の製造方法では、いずれもフィルム接着材料を製造することができた。
これに対して、比較例1の製造方法では、共重合ポリエステルの融点が高いために、150℃の接着温度ではヒートシール力が得られずホットメルト接着剤としての性質を示さなかった。
比較例2の製造方法では、共重合ポリエステルの数平均分子量が10000よりも小さかったために、また比較例3の製造方法では、回転冷却ドラムの温度が高かったために、ローラーからフィルム状に剥がすことができず、それぞれフィルム接着材料を得ることができなかった。
比較例4の製造方法では、無機化合物の含有量が多かったために、また比較例5の製造方法では、延伸温度が低かったために、さらに比較例7の製造方法では、延伸倍率が高かったために、それぞれフィルムが破けて延伸することができなかった。
比較例6の製造方法では、延伸温度が高かったために、また比較例8の製造方法では、熱固定温度が高かったために、それぞれフィルムが溶融して、延伸することができなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5質量%以下の無機化合物を含有した、数平均分子量が10000以上、融点が70〜150℃、ガラス転移点が20℃以下である共重合ポリエステルを加熱溶融して、ダイから20℃以下に冷却した回転冷却ドラム上に押出し、急冷することを特徴とする共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
【請求項2】
無機化合物がシリカまたは炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
【請求項3】
回転冷却ドラム上に押出し、急冷して得られるフィルムを、(ガラス転移点−10)〜(ガラス転移点+70)℃の温度で縦方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸し、横方向に1.1〜5.0倍の倍率で延伸することを特徴とする請求項1または2記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。
【請求項4】
延伸したフィルムを、融点以下の温度で1〜60秒間熱固定することを特徴とする請求項3記載の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法。


【公開番号】特開2008−50433(P2008−50433A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226575(P2006−226575)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】