説明

内燃機関における動弁装置

【課題】 内燃機関における動弁装置の組立作業が容易にできるようにする。
【解決手段】 クランクケース16およびシリンダ21により構成されるエンジン外殻部材22と、クランク軸19に取り付けられる駆動ギヤ34と、エンジン外殻部材22側に軸受48,49により支持される回転軸50と、この回転軸50に取り付けられて駆動ギヤ34に噛合する従動ギヤ51と、回転軸50に取り付けられる駆動プーリ53と、カム軸32,33に取り付けられる従動プーリ54とを備える。エンジン外殻部材22とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材22に取り付けられ、軸受48,49により回転軸50を支持するブラケット36を設ける。軸受48,49、回転軸50、従動ギヤ51、駆動プーリ53、およびブラケット36をユニット59とし、このユニット59を一体的にエンジン外殻部材22に取り付け可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸から出力させる駆動力をギヤ組により一旦減速した後、カム軸に伝達するようにした内燃機関における動弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記内燃機関における動弁装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、内燃機関は、クランクケースおよびこのクランクケースから突出するシリンダにより構成されるエンジン外殻部材を備えている。そして、上記内燃機関における動弁装置は、上記クランクケースに支持されたクランク軸に取り付けられる駆動ギヤと、上記エンジン外殻部材側に軸受により支持される回転軸と、この回転軸に取り付けられて上記駆動ギヤに噛合する従動ギヤと、上記回転軸に取り付けられる駆動プーリと、上記シリンダに支持されたカム軸に取り付けられる従動プーリと、上記駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられる無端伝動体とを備えている。なお、上記したように、クランク軸とカム軸との間に減速用の駆動ギヤと従動ギヤとによる減速用のギヤ組を設けたのは、動弁装置を全体的に小型にするためである。
【0003】
上記内燃機関が駆動すると、上記クランク軸から出力される駆動力の一部が、順次、上記駆動ギヤ、従動ギヤ、回転軸、駆動プーリ、無端伝動体、および従動プーリを介して上記カム軸に伝達される。すると、これらカム軸に吸、排気弁が連動して、上記内燃機関の駆動が維持される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−73729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術では、エンジン外殻部材に直接軸受が取り付けられ、この軸受により上記エンジン外殻部材に上記従動ギヤが支持され、この従動ギヤに上記回転軸が支持されている。
【0006】
このため、上記内燃機関における動弁装置の組立作業をしようとするときには、まず、上記エンジン外殻部材に軸受を取り付け、次に、この軸受に対し従動ギヤや回転軸を組み付ける必要がある。つまり、上記エンジン外殻部材に対し、上記動弁装置の各構成部品を個別に組み付ける必要がある。しかし、これでは、上記組立作業が煩雑になりがちである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、内燃機関における動弁装置の組立作業が容易にできるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、クランクケース16およびこのクランクケース16から突出するシリンダ20,21により構成されるエンジン外殻部材22と、上記クランクケース16に支持されたクランク軸19に取り付けられる駆動ギヤ34と、上記エンジン外殻部材22側に軸受48,49により支持される回転軸50と、この回転軸50に取り付けられて上記駆動ギヤ34に噛合する従動ギヤ51と、上記回転軸50に取り付けられる駆動プーリ53と、上記シリンダ20,21に支持されたカム軸32,33に取り付けられる従動プーリ54と、上記駆動プーリ53と従動プーリ54とに巻き掛けられる無端伝動体56とを備えた内燃機関における動弁装置において、
上記エンジン外殻部材22とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材22に取り付けられ、上記軸受48,49により回転軸50を支持するブラケット36を設け、上記軸受48,49、回転軸50、従動ギヤ51、駆動プーリ53、およびブラケット36をユニット59とし、このユニット59を一体的に上記エンジン外殻部材22に取り付け可能としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記クランク軸19と嵌合する貫通孔39を上記ブラケット36に形成したものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明に加えて、上記駆動ギヤ34と従動ギヤ51とを収容するギヤ室44,45を上記ブラケット36に形成し、上記クランクケース16に上記クランク軸19を支持させる軸受18に対し上記クランクケース16の内底部側から供給された潤滑油61の一部を、上記ギヤ室44,45に供給するようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の発明に加えて、上記クランク軸19が鉛直方向に延びるようこのクランク軸19を設置し、上記クランクケース16から左右シリンダ20,21を突出させ、これら両シリンダ20,21のうち、一方のシリンダ20の上面よりも他方のシリンダ21の上面を低くさせた多シリンダV型である内燃機関における動弁装置において、
上記他方のシリンダ21の上方に上記従動ギヤ51を配置したものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明に加えて、上記クランク軸19が鉛直方向に延びるようこのクランク軸19を設置した船外機5用の内燃機関9であって、上記エンジン外殻部材22の上方に上記ブラケット36を配置し、このブラケット36から上方にステー72を突出させ、このステー72の突出端部に補機69を支持させたものである。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、クランクケースおよびこのクランクケースから突出するシリンダにより構成されるエンジン外殻部材と、上記クランクケースに支持されたクランク軸に取り付けられる駆動ギヤと、上記エンジン外殻部材側に軸受により支持される回転軸と、この回転軸に取り付けられて上記駆動ギヤに噛合する従動ギヤと、上記回転軸に取り付けられる駆動プーリと、上記シリンダに支持されたカム軸に取り付けられる従動プーリと、上記駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられる無端伝動体とを備えた内燃機関における動弁装置において、
上記エンジン外殻部材とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材に取り付けられ、上記軸受により回転軸を支持するブラケットを設け、上記軸受、回転軸、従動ギヤ、駆動プーリ、およびブラケットをユニットとし、このユニットを一体的に上記エンジン外殻部材に取り付け可能としている。
【0016】
このため、特に図5において、上記内燃機関における動弁装置の組立作業をしようとするときには、まず、上記クランク軸に駆動ギヤを取り付ける。一方、上記エンジン外殻部材の外方域の広い作業空間で、上記ブラケットに対し軸受、回転軸、従動ギヤおよび駆動プーリを組み付けてユニットを形成する。次に、このユニットを上記エンジン外殻部材に取り付ける。すると、上記組立作業ができる。
【0017】
よって、上記構成によれば、エンジン外殻部材に対し動弁装置の構成部品を個別に組み付けていた従来の技術に比べて、上記組立作業が、より容易にできる。
【0018】
請求項2の発明は、上記クランク軸と嵌合する貫通孔を上記ブラケットに形成している。
【0019】
このため、上記組立作業において、上記クランク軸に上記ブラケットの貫通孔を嵌合させれば、上記エンジン外殻部材の所定位置に対し上記ブラケットの位置決めができる。よって、上記組立作業が更に容易にできる。
【0020】
請求項3の発明は、上記駆動ギヤと従動ギヤとを収容するギヤ室を上記ブラケットに形成し、上記クランクケースに上記クランク軸を支持させる軸受に対し上記クランクケースの内底部側から供給された潤滑油の一部を、上記ギヤ室に供給するようにしている。
【0021】
このため、上記駆動、従動ギヤの噛合部と軸受との潤滑は、上記クランク軸の軸受から漏出する潤滑油を上記ギヤ室に供給することにより達成される。もしくは、上記潤滑は、上記クランク軸にガイド溝など簡単な加工を施し、このガイド溝を通して潤滑油を上記ギヤ室に供給することにより達成される。よって、上記潤滑のための構成を簡単にでき、これに伴い、上記動弁装置の構成を簡単にできる。
【0022】
また、上記したようにクランク軸を支持する軸受に対し供給された潤滑油の一部を、エンジン外殻部材の外部に設けられる上記駆動、従動ギヤの噛合部などの潤滑に利用するようにしている。このため、上記軸受には、上記エンジン外殻部材の外部に向かって潤滑油が漏出することを防止するためのシール体は設けなくてよい。このため、上記動弁装置の構成を、より簡単にできる。
【0023】
請求項4の発明は、上記クランク軸が鉛直方向に延びるようこのクランク軸を設置し、上記クランクケースから左右シリンダを突出させ、これら両シリンダのうち、一方のシリンダの上面よりも他方のシリンダの上面を低くさせた多シリンダV型である内燃機関における動弁装置において、
上記他方のシリンダの上方に上記従動ギヤを配置している。
【0024】
このため、上記エンジン外殻部材と従動ギヤとがコンパクトに配置されることとなり、内燃機関を小型にできる。
【0025】
また、上記駆動、従動ギヤの噛合部などを潤滑した後の潤滑油は、高さが低い上記他方のシリンダの上面に集め易い。このため、潤滑油を上記他方のシリンダ21の上面からクランクケースの内底部側に戻すことは、構造上、容易にできる。
【0026】
請求項5の発明は、上記クランク軸が鉛直方向に延びるようこのクランク軸を設置した船外機用の内燃機関であって、上記エンジン外殻部材の上方に上記ブラケットを配置し、このブラケットから上方にステーを突出させ、このステーの突出端部に補機を支持させている。
【0027】
このため、補機の支持のために上記動弁装置のブラケットが利用される。よって、内燃機関は、その構成部品が少なくなって構成が簡単となり、かつ、軽量になる。
【0028】
また、上記ブラケット、ステー、および補機は上記エンジン外殻部材の上方に位置することとなるため、幅寸法を小さく抑制することが求められる船外機にとって有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の内燃機関における動弁装置に関し、内燃機関における動弁装置の組立作業が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0030】
即ち、内燃機関は、クランクケースおよびこのクランクケースから突出するシリンダにより構成されるエンジン外殻部材を備えている。また、上記内燃機関の動弁装置は、上記クランクケースに支持されたクランク軸に取り付けられる駆動ギヤと、上記エンジン外殻部材側に軸受により支持される回転軸と、この回転軸に取り付けられて上記駆動ギヤに噛合する従動ギヤと、上記回転軸に取り付けられる駆動プーリと、上記シリンダに支持されたカム軸に取り付けられる従動プーリと、上記駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられる無端伝動体とを備えている。
【0031】
上記エンジン外殻部材とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材に取り付けられ、上記軸受により回転軸を支持するブラケットが設けられる。上記軸受、回転軸、従動ギヤ、駆動プーリ、およびブラケットがユニットとされ、このユニットが一体的に上記エンジン外殻部材に取り付け可能とされている。
【実施例】
【0032】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0033】
図2において、符号1は小型の船で、この船1は、水2面に浮く船体3と、この船体3の船尾にクランプブラケット4により支持される船外機5とを備えている。また、図中矢印Frは、船1の推進方向の前方を示している。
【0034】
上記船外機5は、鉛直方向に長く延びて上記クランプブラケット4により船体3に支持されるケース7と、このケース7の下端部に回転可能に支持されるプロペラ8と、上記ケース7の上端部に支持されて上記プロペラ8を連動連結させる内燃機関9と、この内燃機関9から延出し、この内燃機関9に外部の空気10を吸入可能とさせる吸気装置11と、上記内燃機関9から排出される排気12を水2面下に排出可能とさせる排気装置13と、上記内燃機関9および吸気装置11をその外方から全体的に覆うカウリング14とを備えている。
【0035】
図1−4において、上記内燃機関9は、4サイクルV型多気筒エンジンで、上記ケース7の上面側に支持されるクランクケース16と、軸心17が鉛直方向に延びて上記クランクケース16に軸受18により回転可能に支持されるクランク軸19と、上記クランクケース16から前方に向かってV字形状に突出する左、右シリンダ20,21とを備えている。これら各シリンダ20,21はそれぞれ鉛直方向で複数(3つ)のシリンダを有している。上記クランクケース16およびこのクランクケース16から突出するシリンダ20,21により、エンジン外殻部材22が構成されている。
【0036】
上記各シリンダ20,21のシリンダ孔23にはそれぞれピストン24が嵌入され、これら各ピストン24と上記クランク軸19とが連接棒25によりそれぞれ連動連結されている。上記各シリンダ20,21には、その外部から上記シリンダ孔23の燃焼室に連通する吸気通路26が形成され、これら吸気通路26を開閉可能とする吸気弁27が設けられている。また、上記各シリンダ20,21には、上記シリンダ孔23の燃焼室を外部に連通させる排気通路28が形成され、これら排気通路28を開閉可能とする排気弁29が設けられている。
【0037】
上記内燃機関9は、上記吸気弁27と排気弁29とを上記クランク軸19に連動連結させて、適宜、開閉弁駆動させる動弁装置31を備えている。
【0038】
上記動弁装置31は、上記シリンダ20,21に回転可能に支持されて上記吸気弁27と排気弁29とにカム係合するカム軸32,33と、上記軸心17から上方に突出したクランク軸19の部分に支持される樹脂製の駆動ギヤ34と、上記エンジン外殻部材22とは別体で、このエンジン外殻部材22の上方に設けられ、このエンジン外殻部材22の上面側に締結具35により着脱可能に締結されて取り付けられるアルミ鋳造製のブラケット36とを備えている。
【0039】
上記ブラケット36はほぼ水平方向に延びる偏平な箱形状をなしている。上記ブラケット36には、上記クランク軸19の軸心17上に円形の貫通孔39が形成されている。この貫通孔39は上記クランク軸19とがたつきなく嵌合する。この嵌合により、上記ブラケット36は、上記エンジン外殻部材22の上面の所定位置に対し位置決めされている。上記クランク軸19の外周面と上記貫通孔39の孔縁部との間をシールするシール体40が設けられ、このシール体40は上記ブラケット36に取り付けられている。
【0040】
上記ブラケット36は、上記貫通孔39が形成され、上記クランクケース16の上面に接合されるブラケット基部41と、このブラケット基部41に一体的に形成され、上記エンジン外殻部材22の上面から上方に少し離れて位置するブラケット本体42とを備えている。上記ブラケット基部41の下面には下方に向かって開口する第1ギヤ室44が形成され、この第1ギヤ室44の下端開口は上記クランクケース16の上面により閉じられている。そして、上記第1ギヤ室44に上記駆動ギヤ34が収容されている。また、上記ブラケット本体42の内部には、第2ギヤ室45が形成され、この第2ギヤ室45は上記第1ギヤ室44に連通している。
【0041】
上記動弁装置31は、軸心47が鉛直方向に延びて上、下軸受48,49によりブラケット本体42に回転可能に支持される回転軸50と、上記両軸受48,49の間で上記回転軸50に取り付けられる樹脂製の従動ギヤ51と、上記ブラケット本体42の上端部と上記回転軸50との間をシールするシール体52とを備えている。上記回転軸50は、上記エンジン外殻部材22側であるブラケット本体42に支持され、このブラケット本体42の第2ギヤ室45を貫通している。上記従動ギヤ51は、上記第2ギヤ室45に収容されて、上記駆動ギヤ34に噛合している。
【0042】
また、上記動弁装置31は、上記回転軸50の上端部に取り付けられる駆動プーリ53と、上記各カム軸32,33に取り付けられる従動プーリ54と、上記エンジン外殻部材22の上面側にそれぞれ回転可能に支持される複数のアイドルプーリ55と、これらプーリ53−55に巻き掛けられるタイミングベルト製の無端伝動体56とを備えている。
【0043】
上記軸受48,49、回転軸50、従動ギヤ51、シール体52、駆動プーリ53、およびブラケット36はユニット59とされている。このユニット59は、上記締結具35により一体的に上記エンジン外殻部材22の上面側に着脱可能に取り付けられている。
【0044】
上記内燃機関9は、この内燃機関9の各被潤滑部を潤滑油61により潤滑する潤滑装置62を備えている。これにつき説明する。上記クランクケース16における最上部の軸受18に対し、クランクケース16の内底部側から吸入されて加圧された潤滑油61を供給可能とする油路63が上記クランク軸19に形成されている。上記潤滑油61の吸入、加圧は、上記クランク軸19に連動連結される不図示の油ポンプによりなされる。上記軸受18に対し供給された潤滑油61の一部は上記第1ギヤ室44に供給される。この潤滑油61の一部は、上記駆動ギヤ34の遠心力により、この駆動ギヤ34と従動ギヤ51との噛合部に達してこれを潤滑し、また、上記第2ギヤ室45内に達して、上記軸受48,49を潤滑する。
【0045】
上記一方のシリンダ20と他方のシリンダ21の各連接棒25が上記クランク軸19に対しその軸方向で交互に外嵌する関係で、上記両シリンダ20,21のうち、一方のシリンダ20の上面よりも他方のシリンダ21の上面が低くされている。この他方のシリンダ21の上方に上記軸受48,49、回転軸50、および従動ギヤ51のそれぞれ少なくとも一部が配置されている。上記他方のシリンダ21の上面は油溜め部66とされ、この油溜め部66の内底部を上記クランクケース16内に連通させる連通路67が形成されている。
【0046】
上記駆動、従動ギヤ34,51の噛合部と軸受48,49とを潤滑した後の潤滑油61は、上記油溜め部66と連通路67とを自然流下させられて、上記クランクケース16内に流入させられる。そして、上記潤滑油61は、上記クランクケース16の内底部側に戻され、上記油ポンプにより再び吸入される。
【0047】
上記内燃機関9の補機69であるフライホイールマグネトーが設けられている。この補機69は、上記クランク軸19の上端部に支持されるローター70と、上記ブラケット36側に支持されるステータ71とを備えている。この場合、上記ブラケット36の上面から上方に向けて一体的に突設される複数(4つ)のステー72が設けられ、これら各ステー72の上端部に上記ステータ71が締結具73により締結されて支持されている。また、上記ブラケット36の上面と補機69とで挟まれた余剰の空間75に上記ユニット59が配置されている。
【0048】
上記内燃機関9の回転数を検出する検出センサー76が設けられている。上記ブラケット36の上面に一体的に突設される他のステー77が設けられている。このステー77の突出端部に上記検出センサー76が締結具78により着脱可能に締結されている。
【0049】
その他、81は燃料噴射弁、82は点火プラグである。
【0050】
上記内燃機関9が駆動すると、上記クランク軸19から出力される駆動力の一部が、順次、上記駆動ギヤ34、従動ギヤ51、回転軸50、駆動プーリ53、無端伝動体56、および従動プーリ54を介して上記カム軸32,33に伝達される。すると、これらカム軸32,33に吸、排気弁27,29が連動して、上記内燃機関9の駆動が維持される。
【0051】
上記の場合、駆動ギヤ34と従動ギヤ51とは樹脂製であるため、噛合音を低減でき、また、動弁装置31を軽量にできる。なお、上記駆動ギヤ34と従動ギヤ51とは、いずれか一方のみが樹脂製であってもよい。この場合にも、上記と同様の作用効果が生じる。
【0052】
一方、上記クランク軸19に連動して上記クランク軸19の軸受18、駆動、従動ギヤ34,51の噛合部、および回転軸50の軸受48,49が潤滑油61により潤滑されて、内燃機関9の円滑な駆動が維持される。
【0053】
そして、上記内燃機関9の駆動力のほとんどにより上記プロペラ8が回転駆動させられて、上記船1が推進させられる。
【0054】
上記構成によれば、エンジン外殻部材22とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材22に取り付けられ、上記軸受48,49により回転軸50を支持するブラケット36を設け、上記軸受48,49、回転軸50、従動ギヤ51、駆動プーリ53、およびブラケット36をユニット59とし、このユニット59を一体的に上記エンジン外殻部材22に取り付け可能としている。
【0055】
このため、特に図5において、上記内燃機関9における動弁装置31の組立作業をしようとするときには、まず、上記クランク軸19に駆動ギヤ34を取り付ける。一方、上記エンジン外殻部材22の外方域の広い作業空間で、上記ブラケット36に対しシール体40、各軸受48,49、回転軸50、従動ギヤ51、シール体52、および駆動プーリ53を組み付けてユニット59を形成する。次に、このユニット59を上記エンジン外殻部材22に取り付ける。すると、上記組立作業ができる。
【0056】
よって、上記構成によれば、エンジン外殻部材22に対し動弁装置31の構成部品を個別に組み付けていた従来の技術に比べて、上記組立作業が、より容易にできる。
【0057】
また、前記したように、クランク軸19と嵌合する貫通孔39を上記ブラケット36に形成している。
【0058】
このため、上記組立作業において、上記クランク軸19に上記ブラケット36の貫通孔39を嵌合させれば、上記エンジン外殻部材22の所定位置に対し上記ブラケット36の位置決めができる。よって、上記組立作業が更に容易にできる。
【0059】
また、前記したように、駆動ギヤ34と従動ギヤ51とを収容する第1、第2ギヤ室44,45を上記ブラケット36に形成し、上記クランクケース16に上記クランク軸19を支持させる軸受18に対し上記クランクケース16の内底部側から供給された潤滑油61の一部を、上記第1、第2ギヤ室44,45に供給するようにしている。
【0060】
このため、上記駆動、従動ギヤ34,51の噛合部と軸受48,49との潤滑は、上記クランク軸19の軸受18から漏出する潤滑油61を上記第1、第2ギヤ室44,45に供給することにより達成される。もしくは、上記潤滑は、上記クランク軸19にガイド溝など簡単な加工を施し、このガイド溝を通して潤滑油61を上記第1、第2ギヤ室44,45に供給することにより達成される。よって、上記潤滑のための構成を簡単にでき、これに伴い、上記動弁装置31の構成を簡単にできる。
【0061】
また、上記したようにクランク軸19を支持する軸受18に対し供給された潤滑油61の一部を、エンジン外殻部材22の外部に設けられる上記駆動、従動ギヤ34,51の噛合部などの潤滑に利用するようにしている。このため、上記軸受18には、上記エンジン外殻部材22の外部に向かって潤滑油61が漏出することを防止するためのシール体は設けなくてよい。このため、上記動弁装置31の構成を、より簡単にできる。
【0062】
また、前記したように、クランク軸19が鉛直方向に延びるようこのクランク軸19を設置し、上記クランクケース16から左右シリンダ20,21を突出させ、これら両シリンダ20,21のうち、一方のシリンダ20の上面よりも他方のシリンダ21の上面を低くさせた多シリンダV型である内燃機関における動弁装置において、
上記他方のシリンダ21の上方に上記従動ギヤ51を配置している。
【0063】
このため、上記エンジン外殻部材22と従動ギヤ51とがコンパクトに配置されることとなり、内燃機関9を小型にできる。
【0064】
また、上記駆動、従動ギヤ34,51の噛合部などを潤滑した後の潤滑油61は、高さが低い上記他方のシリンダ21の上面に集め易い。このため、潤滑油61を上記他方のシリンダ21の上面からクランクケース16の内底部側に戻すことは、構造上、容易にできる。
【0065】
また、前記したように、クランク軸19が鉛直方向に延びるようこのクランク軸19を設置した船外機5用の内燃機関9であって、上記エンジン外殻部材22の上方に上記ブラケット36を配置し、このブラケット36から上方にステー72を突出させ、このステー72の突出端部に補機69を支持させている。
【0066】
このため、補機69の支持のために上記動弁装置31のブラケット36が利用される。よって、内燃機関9は、その構成部品が少なくなって構成が簡単となり、かつ、軽量になる。
【0067】
また、上記ブラケット36、ステー72、および補機69は上記エンジン外殻部材22の上方に位置することとなるため、幅寸法を小さく抑制することが求められる船外機5にとって有益である。
【0068】
また、上記ブラケット36の上面と補機69とで挟まれた余剰の空間75に上記ユニット59を配置している。
【0069】
このため、上記ブラケット36、ユニット59、および補機69がコンパクトに配置される。よって、内燃機関9を小型にできる。
【0070】
なお、以上は図示の例によるが、上記駆動ギヤ34と従動ギヤ51とは金属製であってもよい。また、上記各プーリ53−55をスプロケットホイールとし、上記無端伝動体56をチェーンとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図4の1−1線矢視断面図である。
【図2】船外機の全体側面図である。
【図3】船外機の部分平面部分断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図1に相当する図で、動弁装置の展開図である。
【符号の説明】
【0072】
5 船外機
9 内燃機関
16 クランクケース
17 軸心
18 軸受
19 クランク軸
20 シリンダ
21 シリンダ
22 エンジン外殻部材
31 動弁装置
32 カム軸
33 カム軸
34 駆動ギヤ
35 締結具
36 ブラケット
39 貫通孔
44 第1ギヤ室
45 第2ギヤ室
47 軸心
48 軸受
49 軸受
50 回転軸
51 従動ギヤ
53 駆動プーリ
54 従動プーリ
56 無端伝動体
59 ユニット
61 潤滑油
62 潤滑装置
63 油路
66 油溜め部
67 連通路
69 補機
72 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースおよびこのクランクケースから突出するシリンダにより構成されるエンジン外殻部材と、上記クランクケースに支持されたクランク軸に取り付けられる駆動ギヤと、上記エンジン外殻部材側に軸受により支持される回転軸と、この回転軸に取り付けられて上記駆動ギヤに噛合する従動ギヤと、上記回転軸に取り付けられる駆動プーリと、上記シリンダに支持されたカム軸に取り付けられる従動プーリと、上記駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられる無端伝動体とを備えた内燃機関における動弁装置において、
上記エンジン外殻部材とは別体に設けられてこのエンジン外殻部材に取り付けられ、上記軸受により回転軸を支持するブラケットを設け、上記軸受、回転軸、従動ギヤ、駆動プーリ、およびブラケットをユニットとし、このユニットを一体的に上記エンジン外殻部材に取り付け可能としたことを特徴とする内燃機関における動弁装置。
【請求項2】
上記クランク軸と嵌合する貫通孔を上記ブラケットに形成したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関における動弁装置。
【請求項3】
上記駆動ギヤと従動ギヤとを収容するギヤ室を上記ブラケットに形成し、上記クランクケースに上記クランク軸を支持させる軸受に対し上記クランクケースの内底部側から供給された潤滑油の一部を、上記ギヤ室に供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関における動弁装置。
【請求項4】
上記クランク軸が鉛直方向に延びるようこのクランク軸を設置し、上記クランクケースから左右シリンダを突出させ、これら両シリンダのうち、一方のシリンダの上面よりも他方のシリンダの上面を低くさせた多シリンダV型である内燃機関における動弁装置において、
上記他方のシリンダの上方に上記従動ギヤを配置したことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関における動弁装置。
【請求項5】
上記クランク軸が鉛直方向に延びるようこのクランク軸を設置した船外機用の内燃機関であって、上記エンジン外殻部材の上方に上記ブラケットを配置し、このブラケットから上方にステーを突出させ、このステーの突出端部に補機を支持させたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関における動弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−144651(P2006−144651A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335026(P2004−335026)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】