説明

内燃機関のオイルフィルタ取付構造

【課題】オイルフィルタを飛石等から確実に保護でき、オイル通路を短くして内燃機関の小型軽量化を図ることができるオイルフィルタ取付構造を供する。
【解決手段】クランクケース31のクランク軸方向外側がケースカバー150で覆われる内燃機関Eにおいて、クランクケース31とケースカバー150との間にスペーサ110が介装され、スペーサ110に潤滑系が構成され、スペーサ110にクランクケース31との合せ面110fと同一面をなすオイルフィルタ取付面118にオイルフィルタ128が取り付けられ、クランクケース31におけるスペーサ110のオイルフィルタ取付面128が臨む部分に、上方を開放したオイルフィルタ128を取り付けできる凹部31aが形成された内燃機関のオイルフィルタ取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイルフィルタ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の潤滑系は、一般にオイルパンに溜められたオイルをオイルポンプが汲み上げ、同オイルポンプにより吐出したオイルが内燃機関の各潤滑部位に供給される。
このオイルポンプから吐出されたオイルは、各潤滑部位に供給される前にオイルフィルタを経由するようにしてオイルから不純物を取り除くようにしている。
【0003】
オイルフィルタは、オイル通路が構成されるクランクケースにメンテナンス時に容易に取り外し可能なように外部から取り付けられており、通常クランクケースに突設される構造となる。
そのため、車載内燃機関においては、クランクケースに突設されたオイルフィルタは走行時に外乱を受け易い。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されたオイルフィルタ取付構造は、クランクケースの下部に連結されるオイルパンに一部切欠くようにして縦方向の湾曲凹部が形成され、湾曲凹部に沿わせてオイルフィルタをクランクケースの下面に取り付けられるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−317521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、同特許文献1に開示されたオイルフィルタは、オイルパンの縦方向の湾曲凹部に沿ってクランクケースの下面に下方に向けて突設され、オイルフィルタの側方は縦方向の湾曲凹部で部分的囲まれているが、下方は開放されている。
前方から飛んでくる飛石に対しては、湾曲凹部に設けられたオイルフィルタは保護されるが、下方から跳ね上げられる飛石等に対しては保護されない。
【0007】
また、オイルフィルタがオイルパンと同じ高さのクランクケース下面に配置されるので、オイルフィルタより高い位置にあるオイルポンプからのオイルのフィルタ導入路およびオイルフィルタより高い位置にある各潤滑部位に向かうオイルフィルタからのフィルタ導出路が長くなりオイルの総量が増すとともに、これらオイル通路を形成するクランクケースが大型化して内燃機関の重量が増大していた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、オイルフィルタを飛石等から確実に保護でき、オイル通路を短くして内燃機関の小型軽量化を図ることができるオイルフィルタ取付構造を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、クランクケースのクランク軸方向外側がケースカバーで覆われる内燃機関において、前記クランクケースと前記ケースカバーとの間にスペーサが介装され、前記スペーサに潤滑系が構成され、前記スペーサに前記クランクケースとの合せ面と同一面をなすオイルフィルタ取付面にオイルフィルタが取り付けられ、前記クランクケースにおける前記スペーサの前記オイルフィルタ取付面が臨む部分に、上方を開放した前記オイルフィルタを取り付けできる凹部が形成された内燃機関のオイルフィルタ取付構造とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造において、前記スペーサは、オイルポンプが組み込まれるとともに、前記オイルポンプのポンプ吐出口と前記オイルフィルタ取付面のオイル導入口とを連通するフィルタ導入路が少なくとも凹状断面をなす対向する通路壁と底壁で形成され、前記オイルフィルタ取付面のオイル導出口とオイル供出口とを連通するフィルタ導出路が少なくとも凹状断面をなす対向する通路壁と底壁で形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造において、前記スペーサにおける前記対向する通路壁の開口端面が、前記ケースカバーとの合せ面と同一平面をなし、同対向する通路壁の開口端面に仕切り平板を当接して前記フィルタ導入路と前記フィルタ導出路が構成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造において、前記スペーサのクランクケースとの合せ面寄りの側壁と前記ケースカバーとの間にオイルタンク室が形成され、前記スペーサは、前記通路壁とともに前記オイルポンプのポンプボディが形成され、前記ポンプボディに形成されたポンプ吸入路が前記オイルタンク室下部にポンプ吸入口を開口させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造によれば、クランクケースとケースカバーとの間に介装されるスペーサのオイルフィルタ取付面に取り付けられるオイルフィルタが、クランクケースの上方を開放した凹部に配置されるので、下方からの飛石等からオイルフィルタを確実に保護することができる。
また、スペーサには潤滑系が構成されているので、スペーサに取り付けられるオイルフィルタへのオイルポンプからのオイルのフィルタ導入路およびオイルフィルタより各潤滑部位に向かうフィルタ導出路等が短く構成され、オイルの総量が軽減されるとともに、クランクケース自体が小型化され、内燃機関の小型軽量化が図れる。
【0014】
請求項2記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造によれば、スペーサは、オイルポンプが組み込まれるとともに、少なくとも凹状断面をなすフィルタ導入路とフィルタ導出路が形成されるので、スペーサにオイルポンプおよびオイルフィルタを集中的に配置して簡易な構成で短いオイル通路を形成することができ、クランクケースにオイル通路を複雑に形成する必要がなく、クランクケース自体をより小型化することができる。
【0015】
請求項3記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造によれば、ケースカバーとの合せ面と同一平面をなす対向する通路壁の開口端面に、仕切り平板を当接してフィルタ導入路とフィルタ導出路を構成するので、少ない部品点数で簡易にフィルタ導入路とフィルタ導出路を構成することができ、内燃機関の軽量化および組付け作業の軽減が図れる。
【0016】
請求項4記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造によれば、スペーサのクランクケースとの合せ面寄りの側壁とケースカバーとの間にオイルタンク室が形成されるので、オイルタンク室がクランクケース側に膨らんで構成され、スペーサにポンプボディ等の潤滑系を形成した簡易な構成でオイルタンク室の容積を大きく確保することができる。
また、スペーサのポンプボディに形成されたポンプ吸入路がオイルタンク室下部にポンプ吸入口を開口させており、ポンプボディとポンプ吸入口を一体に形成することで、オイルポンプを簡易な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図14に基づいて説明する。
本実施の形態に係る水冷式の内燃機関Eが搭載された不整地走行用車両1の車体カバー等を外した状態の側面図を図1に、同平面図を図2に示す。
なお、本実施の形態においては、車両の前進方向を向いた状態を基準にして前後左右を決めることとする。
【0018】
不整地走行用車両1は、鞍乗り型の4輪車で、不整地用の低圧のバルーンタイヤが装着される左右一対の前輪FWと、同じバルーンタイヤが装着される左右一対の後輪RWが、車体フレーム2の前後に懸架される。
【0019】
車体フレーム2は、複数種の鋼材を結合して構成され、内燃機関Eおよび変速機Tをクランクケース31内に一体に構成したパワーユニットPが搭載されるセンタフレーム部3、センタフレーム部3の前部に連接され前輪WFを懸架するフロントフレーム部4、センタフレーム部3の後部に連接されシート7を支持するシートレール6を有するリヤフレーム部5からなる。
【0020】
センタフレーム部3は、左右一対のアッパパイプ3aが前後を下方へ屈曲させて略3辺をなし、他の略1辺を左右一対のロアパイプ3bが連結して側面視で概ね矩形をなし、左右両パイプをクロスメンバが連結して構成されている。
【0021】
ロアパイプ3bの後部の斜め上方へ屈曲して延びた部分に固着されたピボットプレート8に、前端を軸支されたスイングアーム9が揺動自在に設けられ、スイングアーム9の後部とリヤフレーム部5との間にリヤクッション10が介装され、スイングアーム9の後端に設けられた後ファイナルリダクションギヤユニット19に後輪RWが懸架されている。
【0022】
左右のアッパパイプ3aの前端部間に架設されたクロスメンバの幅方向中央にステアリングコラム11が支持されており、同ステアリングコラム11で操舵可能に支承されるステアリングシャフト12の上端部に操向ハンドル13が連結され、ステアリングシャフト12の下端部は前輪操舵機構14に連結される。
【0023】
パワーユニットPの内燃機関Eは、水冷式2気筒内燃機関であり、クランク軸30を車体前後方向に指向させた所謂縦置きの姿勢で、センタフレーム部3に搭載される。
パワーユニットPの変速機Tは、内燃機関Eの左側に配置され、同左側に寄った変速機Tから前後方向に指向した出力軸80が前後に突出しており、同出力軸80の回転動力は、出力軸80の前端から前ドライブシャフト16および前ファイナルリダクションギヤユニット17を介して左右の前輪FWに伝達され、後端から後ドライブシャフト18および前記後ファイナルリダクションギヤユニット19を介して左右の後輪RWに伝達される。
【0024】
車体フレーム2のフロントフレーム部4にはラジエータ27が支持されており、その前方にオイルクーラ28が配設されている。
【0025】
パワーユニットPの後面図である図3を参照して、パワーユニットPの内燃機関Eおよび変速機Tを内部に構成するクランクケース31は、クランク軸30を含む平面で上下に分割された上クランクケース31Uと下クランクケース31Lからなる上下割りの構造をしている。
【0026】
上クランクケース31Uの上部には2つのシリンダボア32cを直列に配列して一体に成形されたシリンダブロック部32が幾らか左方に傾いて上方に延出形成され、同シリンダブロック部32の上にシリンダヘッド33が重ねられ、シリンダヘッド33の上にはシリンダヘッドカバー34が被せられる。
一方、下クランクケース31Lの下にはオイルパン35が取り付けられる。
【0027】
シリンダヘッド33の右側壁から湾曲して略上方に延出する吸気管20が途中スロットルボディ21を介装して内燃機関Eの上方に配置されたエアクリーナ22に接続され、シリンダヘッド33の左側壁から湾曲して後方に延出した排気管23が、リヤフレーム部5の左側に取付けられた排気マフラー24に接続する。
【0028】
図3および図4を参照して、シリンダブロック部32の2つのシリンダボア32cにピストン40が往復摺動可能に嵌合され、クランク軸30のクランクウエブ30w,30w間のクランクピン30pとピストン40のピストンピン40pとを、コンロッド41が連接してクランク機構を構成している。
【0029】
シリンダヘッド33には、シリンダボア32c毎に、ピストン40に対向して形成される燃焼室42と、燃焼室42に開口して1対の吸気弁45により開閉される吸気ポート43が右方かつ上方に延出し、1対の排気弁46により開閉される排気ポート44が前方に延出し、さらに燃焼室42に臨む点火プラグ47が装着される。
なお、吸気ポート43に吸気管20が連結される。
【0030】
シリンダヘッド33に回転可能に軸支されるカム軸48の吸気カムロブ48iに吸気弁45の上端が当接し、同カム軸48の排気カムロブ48eにロッカアーム軸49に軸支されたロッカアーム50の一端が接し、ロッカアーム50の他端に排気弁46の上端が当接している。
したがって、カム軸48によりクランク軸30の回転に同期して吸気弁45と排気弁46が、それぞれ吸気ポート43と排気ポート44を所定のタイミングで開閉する。
【0031】
そのために、カム軸48は、後部にカムスプロケット48sが嵌着され、クランク軸30の後端部近傍に嵌着される駆動スプロケット30sとカムスプロケット48sの間にタイミングチェーン51が掛け渡され(図4参照)、クランク軸30の半分の回転速度で回転駆動される。
【0032】
クランク軸30は、上クランクケース31Uと下クランクケース31Lにプレーンベアリング52を介して挟まれて回転自在に軸支され、図4に示すように、クランク軸30のクランク室より後方に突出した後側部分には、上記駆動スプロケット30sが形成され、そのさらに後側端部に流体継手であるフルードカップリング55を介してプライマリドライブギヤ56が設けられる。
【0033】
フルードカップリング55は、クランク軸30に固定されているポンプインペラ55pとそれに対向するタービンランナ55t、およびステータ55sを備えている。
クランク軸30に対して回転可能なタービンランナ55tに前記プライマリドライブギヤ56aは結合されており、クランク軸30からの動力は、作動油を介してプライマリドライブギヤ56aに伝達される。
プライマリドライブギヤ56aは、後記するメイン軸61に軸支されるプライマリドリブンギヤ56bに噛合して、クランク軸30の回転をメイン軸61側に伝達する。
【0034】
他方、クランク軸30のクランク室Cより前方に突出した前側部分には、交流発電機57と一方向クラッチ58を介して始動用被動ギヤ59が軸支されている。
また、クランク軸30のクランク室Cの前壁の内面に沿った部分には、バランサ軸駆動用ギヤ54が嵌着されている。
【0035】
クランク軸30のクランクウエブ30wを収容するクランク室Cの左方に仕切り壁により仕切られてミッション室Mが形成されている。
ミッション室Mに収容される変速ギヤ機構60は、常時噛合い式のギヤ機構であり、クランク軸10の左方で斜め上方位置にメイン軸61が上クランクケース31Uに軸支され、同メイン軸61の左方で斜め下方位置でクランク軸30の左方位置にカウンタ軸71が上下のクランクケース31U,31Lの割り面に挟まれて軸支されている(図3参照)。
【0036】
メイン軸61は、内筒61iと同内筒61iの一部に回転自在に嵌合する外筒61oとからなり、内筒61iの前端が上クランクケース31Uのミッション室Mの前側壁31fに形成された軸受凹部62にベアリング62bを介装して回転自在に軸支され、内筒61iの後方側の略中央位置に外筒61oが相対回転自在に嵌合されており、外筒61oの一部がミッション室Mの後側壁31rに形成された軸受開口63にベアリング63bを介装して回転自在に軸支され、内筒61iとともに支持される。
【0037】
外筒61oは、ベアリング63bより内側部分に第2変速駆動ギヤm2と第4変速駆動ギヤm4が前後に一体に形成され、ベアリング63bより外側に一部外側部分が突出している。
内筒61iには、外筒61oの第2,第4変速駆動ギヤm2,m4より前方に前から順に第1変速駆動アイドルギヤm1、シフタと一体に形成され内筒61iにスプライン嵌合された第5変速駆動ギヤm5、第3変速駆動アイドルギヤm3が軸支されており、外筒61oの外側部分よりさらに後方に内筒61iの外側部分が突出している。
【0038】
前側壁31fに形成された軸受凹部62は、小径の内筒61iの前端を軸支すべく内径が小さく形成されているのに対して、後側壁31rに形成された軸受開口63は、最大径の第5変速駆動ギヤm5よりは小さいが第4変速駆動ギヤm4の径より大きい内径を有しており、メイン軸61の組付け作業用に利用される。
【0039】
内筒61iの外側部分には、外筒61oと並んで入力スリーブ65が回転自在に嵌合し、同入力スリーブ65の中央に前記プライマリドリブンギヤ56bが嵌着されており、同プライマリドリブンギヤ56bがクランク軸30側のプライマリドライブギヤ56aと噛合する。
この入力スリーブ65のプライマリドリブンギヤ56bより後方に第1変速クラッチ66が組付けられ、プライマリドリブンギヤ56bより前方に第2変速クラッチ67が組付けられる。
【0040】
一対の第1変速クラッチ66と第2変速クラッチ67は、同一構造の油圧式の多板摩擦クラッチである。
第1変速クラッチ66は、後方に開口した椀状をしたクラッチアウタ66oが入力スリーブ65に一体に嵌着され、クラッチインナ66iが内筒61iに一体に嵌着されている。
他方、第2変速クラッチ67は、前方に開口した椀状をしたクラッチアウタ67oが入力スリーブ65に一体に嵌着され、クラッチインナ67iが外筒61oの外側部分に一体に嵌着されている。
【0041】
第1変速クラッチ66に油圧が供給されてクラッチアウタ66oとクラッチインナ66iが接続されると、プライマリドリブンギヤ56bと一体の入力スリーブ65の回転が外筒61oの第2,第4変速駆動ギヤm2,m4の回転に伝達され、油圧が供給されないとクラッチアウタ66oとクラッチインナ66iが切断されて外筒61oの第2,第4変速駆動ギヤm2,m4に回転が伝達されない。
【0042】
同様に、第2変速クラッチ67に油圧が供給されてクラッチアウタ67oとクラッチインナ76iが接続されると、プライマリドリブンギヤ56bと一体の入力スリーブ65の回転が内筒61iに伝達され、内筒61iにスプライン嵌合された第5変速駆動ギヤm5が回転され、油圧が供給されないとクラッチアウタ67oとクラッチインナ67iが切断されて内筒61i上の第5変速駆動ギヤm5に回転が伝達されない。
【0043】
上記のようなメイン軸61の左方で斜め下方位置に上下のクランクケース31U,31Lの割り面に挟まれて軸支されるカウンタ軸71は、その前側部分がミッション室Mの前側壁31fに形成された軸受開口72にベアリング72bを介装して回転自在に軸支され、後端がミッション室Mの後側壁31fに形成された軸受凹部73にベアリング73bを介装して回転自在に軸支される。
【0044】
カウンタ軸71には、ミッション室M内において前側から順に第1変速被動ギヤn1、第5変速被動アイドルギヤn5、シフタと一体に形成されカウンタ軸71にスプライン嵌合された第3変速被動ギヤn3、リバースアイドルギヤnR、第2変速被動アイドルギヤn2、シフタnS、第4変速被動アイドルギヤn4が軸支されて配列されている。
第1,第2,第4変速被動ギヤn1,n2,n4は、メイン軸61上の第1,第2,第4変速駆動ギヤm1,m2,m4と常に噛合している。
第3変速駆動アイドルギヤm3と第3変速被動ギヤn3および第5変速駆動ギヤm5と第5変速被動アイドルギヤn5は、シフタを移動することで噛合させることができる。
【0045】
なお、カウンタ軸71の上方位置には、リバースアイドル軸70が配設され(図3,図4参照)、リバースアイドル軸70にリバース大径ギヤr1とリバース小径ギヤr2が一体に回転自在に軸支され、リバース大径ギヤr1がメイン軸61上の第2変速駆動ギヤm2に噛合し、リバース小径ギヤr2がカウンタ軸71上のリバースギヤnRに噛合している。
【0046】
メイン軸61上の第5変速駆動ギヤm5およびカウンタ軸71上の第3変速被動ギヤn3は、シフタギヤであり、この2つのシフタギヤとカウンタ軸71上のシフタnSが、変速駆動機構により軸方向に移動されて、第1変速クラッチ66と第2変速クラッチ67の制御と相俟って各変速段の切換えがなされる。
【0047】
カウンタ軸71の前端は、ベアリング72bより前方に突出しており、同前端に出力ギヤ74がスプライン嵌合されている。
カウンタ軸71の下方で斜め右方に前記出力軸80が配設されており(図3参照)、同出力軸80の前側部分にスプライン嵌合された被動ギヤ75が、カウンタ軸71の前端の出力ギヤ74と噛合してカウンタ軸71から出力軸80へ動力が伝達されるようになっている。
【0048】
カウンタ軸71の前端の出力ギヤ74には出力軸80の被動ギヤ75との噛合により大きな負荷が加わるため、カウンタ軸71の前部を軸支するベアリング72bを比較的大きなものを用いて構成している。
したがって、前側壁31fにおける同ベアリング72bを嵌合する軸受開口72の内径も大きくなるが、隣接するメイン軸61の軸受凹部62が前記したように小径に形成されているので、出力ギヤ74周辺のクランクケース31の前側壁31fの強度を高く維持することができる。
【0049】
上下割りに構成された上下のクランクケース31U,31Lのカウンタ軸71と出力軸80が突出する前面には割り面を跨いで前ケースカバー85が被せられ、上下のクランクケース31U,31Lの後面には割り面を跨いでクランク軸30の後端のフルードカップリング55とメイン軸61の後端の第1,第2変速クラッチ66,67を覆うように後ケースカバー150が一部ケースカバーも兼ねるスペーサ110を介して被せられる。
【0050】
前記出力軸80は、鋳造成形された前端被軸受部81と後端被軸受部82とを中空筒部材83が連結して構成されており、前端被軸受部81が前ケースカバー85に形成された軸受開口86にベアリング86bを介装して前端を前方に突出させて軸支され、後端被軸受部82がスペーサ110に形成された軸受開口111にベアリング111bを介装して後端を後方に突出させて軸支される。
すなわち、出力軸80は、前端被軸受部81と後端被軸受部82が前後を突出させてそれぞれ前ケースカバー85とスペーサ110に回転自在に支持される。
【0051】
そして、前端被軸受部81にはベアリング85bの内側に隣接して前記被動ギヤ75がスプライン嵌合されている。
したがって、カウンタ軸71の前端の出力ギヤ74は、出力軸80の前端被軸受部81にスプライン嵌合された被動ギヤ75に噛合して、カウンタ軸71から出力軸80へ動力が伝達される。
【0052】
出力軸80は、鋳造成形された前端被軸受部81と後端被軸受部82とを中空筒部材83が連結して構成されているので、出力軸80を軽量化することができるとともに、従来のように出力軸全体を鋳造成形するのに比べ鋳造装置が小型化できる。
【0053】
一方、クランク軸30の右方位置にバランサ軸90が上下のクランクケース31U,31Lの割り面に挟まれて軸支されている(図3参照)。
図5を参照して、バランサ軸90は、その前端と後端が上下のクランクケース31U,31Lの前側壁と後側壁に形成された軸受開口91,92に、それぞれベアリング91b,92bを介装して回転自在に軸支される。
【0054】
バランサ軸90はクランク軸30に可及的に近づいて配置されており、図5に図示するように、クランク軸方向(前後方向)でバランサ軸90のバランサウエイト90wがクランク軸30のクランクウエブ30w(のカウンタウエイト)と重なる位置関係にある。
【0055】
バランサ軸90の前端に嵌合されたベアリング91bに内側で隣接して被動ギヤ93がスプライン嵌合されており、同被動ギヤ93はクランク軸30に嵌合された前記バランサ軸駆動用ギヤ54と噛合してクランク軸30の回転がバランサ軸90に同じ回転速度で伝達されるようになっている。
したがって、バランサ軸90のクランク軸30と同速度の回転でピストン40の往復動による1次振動を打ち消す。
【0056】
このバランサ軸90の前方には、前記交流発電機57等を前方から覆うフロントカバー部材87に設けられた水ポンプ95が配設されており、フロントカバー部材87の軸受筒部87aに回転自在に軸支された水ポンプ駆動軸96が、バランサ軸90と同軸に配置されている。
【0057】
そしてバランサ軸90の前端から前方へ突出した連結凸部90fと水ポンプ駆動軸96の後端に形成された連結凹部96aが嵌合され、バランサ軸90の回転が水ポンプ駆動軸96に伝達されて水ポンプ95が駆動される。
水ポンプ95の前方は吸入筒97aを備えた水ポンプカバー97が被せられる。
水ポンプカバー97の吸入筒97aは、車体前方に配置されるラジエータ27と水配管で連結されて、水ポンプ95はラジエータ27から冷却水を吸入する。
【0058】
他方、バランサ軸90の後方には、前記スペーサ110に設けられたオイルポンプユニット100が配設されており、同オイルポンプユニット100に回転自在に軸支されたオイルポンプ駆動軸101が、バランサ軸90と同軸に配置されている。
【0059】
そしてバランサ軸90の後端に形成された連結凹部90rとオイルポンプ駆動軸101の前端に突出した連結凸部101aが嵌合され、バランサ軸90の回転がオイルポンプ駆動軸101に伝達されてオイルポンプユニット100が駆動される。
【0060】
本パワーユニットPの潤滑は、ドライサンプ方式を採用しており、オイルポンプユニット100におけるオイルポンプ駆動軸101にはスカベンジポンプ102とフィードポンプ103の各ロータがともに取り付けられた構造をしている。
【0061】
以上のように、バランサ軸90の前端に水ポンプ駆動軸96、後端にオイルポンプ駆動軸101が同軸に連結されるので、3軸が同軸に構成され、クランク軸30と平行な互いに離れた回転軸の数が削減できるとともに、回転軸間に複雑な動力伝達機構を必要としないことから、内燃機関の小型化を図ることができる。
【0062】
また、クランク軸30のクランクウエブ30wとバランサウエイト90wが軸方向で重なる位置にバランサ軸90が配置されているので、クランク軸30にバランサ軸90が接近している分、内燃機関Eの一層の小型化が図られている。
【0063】
バランサ軸90の前方に配置される水ポンプ95は、クランクケース31の前面に設けられることになり、車体前方に配置されるラジエータ27に近い位置にあり、よってラジエータ27と水ポンプ95とを連結する水配管を短くすることができる。
したがって、水の総量を減らして車体重量を軽減することができる。
【0064】
また、バランサ軸90の後方に配置されるオイルポンプユニット100は、パワーユニットPの後方に位置することになり、登坂時におけるオイルの後方への偏りによりオイルの枯渇やエア噛みを防止することが容易にできる。
【0065】
本パワーユニットPの潤滑系は、オイルポンプユニット100を含めクランクケース31の後方に集中的に構成されており、そのドライサンプ方式の潤滑構造を以下説明する。
【0066】
上下のクランクケース31U,31Lと後ケースカバー150との間に介装されるスペーサ110には、ドライサンプ式潤滑系のオイルポンプユニット100が構成されるとともに、オイルタンク室160の一部が形成される。
図6はスペーサ110の後面図、図7はスペーサ110の前面図である。
【0067】
図6および図7を参照して、スペーサ110は、上下のクランクケース31U,31Lと後ケースカバー150と後ケースカバー150とを連繋するもので、前後平行な環状をなす合わせ面110f,110rを有する。
上下のクランクケース31U,31Lに合わされる前側合せ面110fと後ケースカバー150に合わされる後側合せ面110rとは、互いに平行で閉じた環状をなす。
【0068】
環状をなす前側合せ面110fと後側合せ面110rは、互いに前後方向に視てずれがあり、前側合せ面110fは左側から左下部が後側合せ面110rより外方にはみ出しており、後側合せ面110rは右上部が前側合せ面110fより外方にはみ出している。
前側合せ面110fが後側合せ面110rより左下部にはみ出した両面を連結する側壁110aに出力軸80が貫通する軸受開口111が穿設されている。
【0069】
図6を参照して、閉じた環状の後側合せ面110rの内側を、内壁112が後側合せ面110rの左上部から右方に延びて円弧を描きながら下方へ湾曲し後側合せ面110rの底部に沿って左方に延びて後側合せ面110rの下部に連続し、後側合せ面110rの一部とともに中央部に大きな空洞110sを形成している。
内壁112の後端面と後側合せ面110rとは同一面をなす。
【0070】
後側合せ面110rの内壁112の円弧状部分の外側を湾曲して覆う部分と内壁112との間は、前方に凹出するようにして凹部113が形成されており、凹部113はオイルタンク室160を構成するもので、内壁112の円弧状部分を囲むように弧状に形成されている。
【0071】
この凹部113の右上部において、凹部113の底壁113aから対向した通路壁114a,114aが突出して少なくとも底壁113aとともに凹状断面をなす排油通路114が形成されており、排油通路114はL字状に屈曲して、端部は対向した通路壁114a,114aが連結して閉じている。
【0072】
このL字状の排油通路114の鉛直部の左側の通路壁114aに対向して通路壁115aが突出して少なくとも底壁113aとともに凹状断面をなすフィルタ導入路115が排油通路114の鉛直部の左側に形成されている。
フィルタ導入路115の上下端部は、対向した通路壁114a,115aが連結して閉じている。
【0073】
また、L字状の排油通路114の水平部の下側の通路壁114aに対向して通路壁116aが突出して少なくとも底壁113aとともに凹状断面をなすフィルタ導出路116が排油通路114の水平部の下側に形成されている。
フィルタ導出路116の左右端部は、対向した通路壁114a,116aが連結して閉じている。
【0074】
通路壁114a,115a,116aの各後端面は、同一面をなして連続しており、後側合せ面110rおよび内壁112の後端面とも同一面をなす。
この連続する通路壁114a,115a,116aの同一面をなす後端面に、L字状をしたアルミニウム製の仕切り平板126が当接して凹状断面をなす排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116の後方開口を塞いで排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116を管状の通路とする(図11参照)。
【0075】
したがって、スペーサ110は、排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116の少なくとも凹状断面が形成され、クランクケース31にオイル通路を複雑に形成する必要がなく、クランクケース31自体をより小型化することができる。
また、仕切り平板126を取り付けるだけで、少ない部品点数で簡易に排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116を構成することができ、パワーユニットPの軽量化および組付け作業の軽減が図れる。
【0076】
L字状の排油通路114は、その右下端部の底壁113aに穿孔されたスカベンジポンプ吐出口114iと左上端部の底壁113aに穿孔された排油導出口114eとを連通している。
鉛直に延びるフィルタ導入路115は、その下端部の底壁113aに穿孔されたフィードポンプ吐出口115iと上端部の底壁113aに穿孔されたフィルタ導入路出口115eとを連通している。
水平に延びるフィルタ導出路116は、その右端部の底壁113aに穿孔されたフィルタ導出路入口116iと左端部の底壁113aに穿孔されたオイル供出口116eとを連通している。
【0077】
弧状に形成された凹部113内に、通路壁114a,115a,116aによりL字状に囲まれた排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116が底壁113aから突出して形成されており、この通路壁114a,115a,116a内を除いた凹部113内がオイルタンク室160を構成する。
排油通路114の左上端部の排油導出口114eより通路壁114aを挟んで上方位置の底壁113aに排油戻り口117が穿孔されて凹部113内に開口している。
【0078】
凹部113の底壁113aのうちL字状の排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116の屈曲部に相当する部分の前面には、図7に示すように、オイルフィルタ128が取り付けられる円形をしたオイルフィルタ取付面118が形成されている。
このオイルフィルタ取付面118は、環状をなす前側合せ面110fの右上(図7では左上)の内側に凹んだ部分の外側にはみ出した位置にあり、前側合せ面110fと同一面をなす。
【0079】
オイルフィルタ取付面118は同心の2重円からなり、内円の内側が前記フィルタ導出路入口(オイル導出口)116iとなり、内円と外円との間に前記フィルタ導入路出口(オイル導入口)115eが位置する。
このオイルフィルタ取付面118にオイルフィルタ128が前方から取り付けられ、図11に示すようにフィルタ導入路出口115eから入ったオイルがろ過されてフィルタ導出路入口116に出て行く。
【0080】
環状の前側合せ面110fに上下のクランクケース31U,31Lが合わされるが、前側合せ面110fのオイルフィルタ取付面118を避けるように凹んだ右上部に対応して上クランクケース31Uも切欠かれるように内側に凹出し上方を開放した凹部31aが形成されており(図7、図11参照)、凹部31aに臨んで形成されたオイルフィルタ取付面118に取り付けられたオイルフィルタ128は、凹部31aに配置されることになる。
したがって、上クランクケース31Uの凹部31aによりオイルフィルタは下側から右側にかけて覆われることになり、下方からの飛石等から確実に保護される。
【0081】
スペーサ110にはオイルポンプユニット100等の潤滑系が構成されており、同スペーサ110にオイルフィルタ128が取り付けられるので、フィルタ導入路115やフィルタ導出路116等が短く構成され、オイルの総量が軽減されるとともに、クランクケース31自体が小型化され、パワーユニットPの小型軽量化が図れる。
【0082】
オイルフィルタ取付面118の左上方に位置する排油導出口114eと排油戻り口117は、オイルフィルタ取付面118と同様に環状をなす前側合せ面110fの外側にはみ出した位置にあって、外部に開口している。
この排油導出口114eと排油戻り口117にそれぞれ結合されて前方に延出したパイプ(図示せず)が、車体前方に配置された前記オイルクーラ28に連結される。
【0083】
オイルポンプユニット100は、スペーサ110の右下部に設けられ、前記L字状をした排油通路114、フィルタ導入路115の下部辺りから下方に底壁113aを後方へ凹出してフィードポンプ103のフィードポンプボディ120が形成されており、内壁112の内側にはみ出している。
【0084】
図7を参照して、同フィードポンプボディ120は、前側合せ面110fと同一面をなす合せ面120fに囲まれた内部が後方へ凹出しており、上部にフィードポンプ103の内外ロータ103rが嵌合される円形凹部121が形成され、円形凹部121の吸入ポート121iから斜め下方に凹状断面をなすフィードポンプ吸入路122が延出しており、フィードポンプ吸入路122の下端に凹部113側(オイルタンク室160側)に向けてフィードポンプ吸入口123が開口している。
フィードポンプ吸入口123はスペーサ110に形成された貫通孔であって凹部113の最下部に位置する。
【0085】
スペーサ110のフィードポンプボディ120に形成されたフィードポンプ吸入路122がオイルタンク室160の下部にフィードポンプ吸入口123を開口させており、フィードポンプボディ120とフィードポンプ吸入口123を一体に形成することで、フィードポンプ103を簡易な構成としている。
【0086】
円形凹部121の中心より偏心した位置には前記オイルポンプ駆動軸101の後端を軸支する軸受凹部121cが形成され、その若干斜め左右に吸入ポート121iと吐出ポート121eが凹出形成されている。
吸入ポート121iは、前記フィードポンプ吸入路122に連通するとともに、上方にリリーフ戻り通路124eが延びている。
【0087】
吐出ポート121eは、上方に延出してフィードポンプ吐出口115iに連通するとともに、左方(図7では右方)のリリーフバルブ125が取り付けられるリリーフバルブ取付面124までリリーフ通路124iが延びている。
フィードポンプボディ120の合せ面120fの上部右角部には前記スカベンジポンプ吐出口114iが開口している。
【0088】
このフィードポンプボディ120の合せ面120fに仕切り板130を重ね、仕切り板130の上にスカベンジポンプボディ140を重ね合わせてオイルポンプユニット100が構成される。
すなわち、スカベンジポンプボディ140とフィードポンプボディ120が間に仕切り板130を挟んで、内部をスカベンジポンプ102側とフィードポンプ103側に仕切った構造である。
仕切り板130の後面図を図8に、前面図を図9に図示する。
【0089】
仕切り板130は、フィードポンプボディ120の合せ面120fに対応した後側合せ面130rとスカベンジポンプボディ140の合せ面140rに対応した前側合せ面130fが、平行で略同形の環状に形成され、この後側合せ面130rと前側合せ面130fの内側に隔壁130a,130bによって仕切られて後側と前側に背中合わせに凹部が形成されている。
【0090】
仕切り板130の後面は、図8を参照して、フィードポンプボディ120の合せ面120fと対応した合せ面130rの内側に隔壁130aを底面としてフィードポンプボディ120とともにフィードポンプ吸入路122、吸入ポート121i、リリーフ戻り通路124eを構成する凹部が形成され、隔壁130bを底面として吐出ポート121eとリリーフ通路124iを構成する凹部が形成されている。
【0091】
また、仕切り板130には、フィードポンプボディ120の軸受凹部121cとスカベンジポンプ吐出口114iに対応してそれぞれ軸受円孔130cとスカベンジポンプ吐出孔131が穿設されるとともに、リリーフバルブ取付面124に対応して円筒状をしたリリーフバルブ125が嵌合されるリリーフバルブ嵌合孔132が形成されている。
【0092】
仕切り板130の前面は、図9を参照して、隔壁130aに仕切られてフィードポンプ吸入路122、吸入ポート121iと背中合わせにスカベンジポンプ吸入路142、吸入ポート141iを構成する凹部が形成され、隔壁130bに仕切られて吐出ポート121eと背中合わせに吐出ポート141eが形成されている。
【0093】
仕切り板130の前面の隔壁130bを底面とする凹部にはスカベンジポンプ吐出孔131が開口しており、吐出ポート141eが上方に延出してスカベンジポンプ吐出孔131との間を連通している。
また、リリーフバルブ嵌合孔132の下方に近接してリリーフ戻り孔133が穿設されて後面側のリリーフ戻り通路124eに連通している。
【0094】
この仕切り板130の前側合せ面130fに合わされるスカベンジポンプボディ140は、図10に後面(裏面)図で示すように、仕切り板130の前側合せ面130fに対応する環状をなす合せ面140rの内側に、スカベンジポンプ102の内外ロータ102rが収容される円形凹部141が形成されるとともに、仕切り板130の隔壁130aに対応して形成された凹部が仕切り板130とともにスカベンジポンプ吸入路142、吸入ポート141iを構成し、仕切り板130の隔壁130bに対応して形成された凹部が仕切り板130とともに吐出ポート141eを構成している。
【0095】
スカベンジポンプボディ140の円形凹部141の中心より偏心した位置には前記オイルポンプ駆動軸101の前端を軸支する軸受凹部141cが形成され、スカベンジポンプ吸入路142の下端は前方に向けてスカベンジポンプ吸入口143が開口している。
スカベンジポンプボディ140の吐出ポート141eは上方に延出して仕切り板130のスカベンジポンプ吐出孔131に連通している。
【0096】
また、スカベンジポンプボディ140の円形凹部141の上方の合せ面140rには、リリーフバルブ125を嵌装する嵌合凹部144が形成され、嵌合凹部144の一部が下方に延出して仕切り板130のリリーフ戻り孔133に連通している。
【0097】
以上のスペーサ110のフィードポンプボディ120と仕切り板130とスカベンジポンプボディ140の組付けによりオイルポンプユニット100が構成される。
オイルポンプユニット100とその周辺の潤滑系の断面図を図11に、同オイルポンプユニット100の部分展開断面図を図12に示す。
【0098】
スペーサ110のフィードポンプボディ120の円形凹部121との間にフィードポンプ103のロータ103rを介装して、フィードポンプボディ120の合せ面120fにオイルポンプ駆動軸101とともに仕切り板130を重ね、仕切り板130とスカベンジポンプボディ140の円形凹部141との間にスカベンジポンプ102のロータ102rを介装し、かつ仕切り板130のリリーフバルブ嵌合孔132を介してフィードポンプボディ120のリリーフバルブ取付面124とスカベンジポンプボディ140の嵌合凹部144との間にリリーフバルブ125を介装して仕切り板130の前側合せ面130fにスカベンジポンプボディ140を重ね、ボルト145によりスペーサ110に形成されたフィードポンプボディ120にフィードポンプボディ120と仕切り板130とスカベンジポンプボディ140を一体に締結してオイルポンプユニット100を構成する。
【0099】
なお、オイルフィルタ128は、スペーサ110のオイルフィルタ取付面118に上クランクケース31Uの凹部31aを利用して外部から取り付けられる。
そして、スペーサ110の後面には後ケースカバー150が被せられる。
後ケースカバー150の前面(裏面)図を図13に図示する。
【0100】
後ケースカバー150は、スペーサ110の後側合せ面110rに対応して合せ面150fを有するとともに、スペーサ110の内壁112に対応する内壁152が形成されており、内壁152の外側のスペーサ110の弧状に形成される凹部113に対応して後方に凹出した凹部153が形成されており、スペーサ110に後ケースカバー150が重ね合わされると、凹部113と凹部153が合わさってオイルタンク室160を構成する。
【0101】
すなわち、スペーサ110の上下クランクケース31U,31Lとの合せ面110f寄りの底壁(側壁)113aと後ケースカバー150との間にオイルタンク室160が形成されているので、オイルタンク室160がクランクケース31側に膨らんで構成され、スペーサ110にフィードポンプボディ120等の潤滑系を形成した簡易な構成でオイルタンク室160の容積を大きく確保することができる。
【0102】
オイルタンク室160内には、スペーサ110の排油通路114、フィルタ導入路115、フィルタ導出路116およびフィードポンプボディ120が膨出しているが、部分的であるので、オイルタンク室160の容積を僅かに損する程度である。
なお、オイルタンク室160の右側部には上下を仕切るようにストレーナ154が介装される。
【0103】
内壁152の内側の凹部150sは、スペーサ110の空洞110sに対応し、前記クランク軸30の後端に設けられるフルードカップリング55およびメイン軸61の後端に設けられる第1変速クラッチ66と第2変速クラッチ67を後方から覆う。
【0104】
後ケースカバー150の凹部150sのクランク軸30に対向する部分には、軸受有底円筒部155が形成されていて、軸受有底円筒部155はクランク軸30の後端を軸支するとともに、クランク軸30内の油路30aを介してフルードカップリング55に油圧を供給するために油圧を中継する油室155aが形成されている(図4、図13参照)。
【0105】
また、後ケースカバー150の凹部150sのメイン軸61に対向する部分には、軸受円筒部156が形成されていて、メイン軸61の内筒61iの後端が軸支される。
さらに、図4および図13を参照して、軸受円筒部156は、外側に延出して外側円筒部157を形成しており、内筒61iの後端から第2変速クラッチ67の位置まで穿孔された軸孔61aに挿入された2重導通管158が外側円筒部157内まで貫入しており、外側円筒部157の後端開口を蓋部材159で閉塞されて内部に形成された2つの油室157a,157bが2重導通管158を介してそれぞれ第1変速クラッチ66と第2変速クラッチ67に連通して油圧を供給することができるようになっている。
【0106】
後ケースカバー150の後面の外側円筒部157の斜め上辺りに油圧制御弁ユニット170が設けられる。
この油圧制御弁ユニット170により第1変速クラッチ66と第2変速クラッチ67の油圧による駆動制御がなされるとともに、フルードカップリング55の駆動制御もなされる。
【0107】
後ケースカバー150がスペーサ110に重ね合わされた状態のパワーユニットPの潤滑系の様子を図14に示す。
オイルポンプユニット100およびその周辺の潤滑系は、パワーユニットPの後部のスペーサ110および後ケースカバー150に集中的に配設されている。
【0108】
図14に示すようにオイルパン35の底面に近接して設けられオイルストレーナ165は、図5に破線で示すようにクランク軸30の下方であってクランク室Cの後方に位置しおり、スカベンジポンプ吸入路142の下端のスカベンジポンプ吸入口143の略真下で連通管(図示せず)で連結されている。
【0109】
ドライサンプ方式の本潤滑系のオイルの流れを以下説明する。
オイルポンプ駆動軸101が回転し、スカベンジポンプ102のロータ102rが回転駆動すると、オイルパン35に溜まったオイルは、その後方位置でオイルストレーナ165に吸入されてスカベンジポンプ吸入口143からスカベンジポンプ吸入路142を通ってスカベンジポンプ102の吸入ポート141iに至り(図11参照)、スカベンジポンプ102の吐出ポート141eから吐出したオイルはスカベンジポンプ吐出口114iからL字状の排油通路114を通って排油導出口114eから外部パイプに出て車体前方に配置されたオイルクーラ28に至り、オイルクーラ28で冷却されたオイルは外部パイプを通ってオイルタンク室160の上部に開口する排油戻り口117からオイルタンク室160に流入される(図6,図14参照)。
【0110】
こうしてオイルタンク室160に流入し溜まったオイルは、フィードポンプ103のロータ103aの回転駆動によりオイルタンク室160の下部に開口したフィードポンプ吸入口123から汲み上げられてフィードポンプ吸入路122を通ってフィードポンプ103の吸入ポート121iに至り、フィードポンプ103の吐出ポート121eから吐出したオイルはフィードポンプ吐出口115iからフィルタ導入路115を通ってフィルタ導入路出口115eからオイルフィルタ128に至り、オイルフィルタ128でろ過されたオイルはフィルタ導出路入口116iからフィルタ導出路116に出てオイル供出口116eから各潤滑部位に供給される(図6,図11,図14参照)
【0111】
フィードポンプ103による吐出油圧が所定圧以上になると、リリーフバルブ125が開弁してフィードポンプ103の吐出ポート121eに連通するリリーフ通路124iと吸入ポート121iに連通するリリーフ戻り通路124eとを連通して吐出オイルがフィードポンプ吸入路122に戻される。
【0112】
したがって、フィードポンプ吸入路122に戻されるオイルが再びフィードポンプ64に吸入されることからフィードポンプ吸入口123から吸入されるオイルの量が減り、そのため吸入流速も低下してフィードポンプ64のエア噛みがより低減される。
また、オイルタンク室160もいくらか小さくできる。
【0113】
以上のように、クランクケース31の後方のスペーサ110にオイルポンプユニット100およびオイルフィルタ128を集中的に配置し、オイルストレーナ165もオイルパン35の後部位置に配置し、クランクケース31の後方でオイル通路が集中的に形成されるので、オイル通路を短く構成することができ、オイルの総量を減らし車体重量を軽減するとともに、登坂時のオイルの枯渇やスカベンジポンプ102やフィードポンプ103におけるエア噛みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパワーユニットが搭載された不整地走行用車両の車体カバー等を外した状態の側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同パワーユニットの後面図である。
【図4】同パワーユニットの展開断面図(図3のIV−IV線断面図)である。
【図5】同パワーユニットの断面図(図3のV−V線、V´−V´線断面図)である。
【図6】スペーサの後面図である。
【図7】同スペーサの前面図である。
【図8】仕切り板の後面図である。
【図9】同仕切り板の前面図である。
【図10】スカベンジポンプボディの後面(裏面)図である。
【図11】オイルポンプユニットおよびその周辺の展開断面図(図14のXI−XI線断面図)である。
【図12】オイルポンプユニットの部分展開断面図である。
【図13】後ケースカバーの前面(裏面)図である。
【図14】パワーユニットの潤滑系の主要部を示す後面図である。
【符号の説明】
【0115】
P…パワーユニット、E…内燃機関、T…変速機、
1…不整地走行用車両、27…ラジエータ、28…オイルクーラ、30…クランク軸、31L…下クランクケース、31U…上クランクケース、35…オイルパン、
100…オイルポンプユニット、101…オイルポンプ駆動軸、102…スカベンジポンプ、103…フィードポンプ、
110…スペーサ、114…排油通路、115…フィルタ導入路、116…フィルタ導出路、117…排油戻り口、118…オイルフィルタ取付面、
120…フィードポンプボディ、122…フィードポンプ吸入路、123…フィードポンプ吸入口、125…リリーフバルブ、126…仕切り平板、128…オイルフィルタ、130…仕切り板、140…スカベンジポンプボディ、142…スカベンジポンプ吸入路、143…スカベンジポンプ吸入口、150…後ケースカバー、160…オイルタンク室、165…オイルストレーナ、170…油圧制御弁ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースのクランク軸方向外側がケースカバーで覆われる内燃機関において、
前記クランクケースと前記ケースカバーとの間にスペーサが介装され、
前記スペーサに潤滑系が構成され、
前記スペーサに前記クランクケースとの合せ面と同一面をなすオイルフィルタ取付面にオイルフィルタが取り付けられ、
前記クランクケースにおける前記スペーサの前記オイルフィルタ取付面が臨む部分に、上方を開放した前記オイルフィルタを取り付けできる凹部が形成されたことを特徴とする内燃機関のオイルフィルタ取付構造。
【請求項2】
前記スペーサは、
オイルポンプが組み込まれるとともに、
前記オイルポンプのポンプ吐出口と前記オイルフィルタ取付面のオイル導入口とを連通するフィルタ導入路が少なくとも凹状断面をなす対向する通路壁と底壁で形成され、
前記オイルフィルタ取付面のオイル導出口とオイル供出口とを連通するフィルタ導出路が少なくとも凹状断面をなす対向する通路壁と底壁で形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造。
【請求項3】
前記スペーサにおける前記対向する通路壁の開口端面が、前記ケースカバーとの合せ面と同一平面をなし、
同対向する通路壁の開口端面に仕切り平板を当接して前記フィルタ導入路と前記フィルタ導出路が構成されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造。
【請求項4】
前記スペーサのクランクケースとの合せ面寄りの側壁と前記ケースカバーとの間にオイルタンク室が形成され、
前記スペーサは、前記通路壁とともに前記オイルポンプのポンプボディが形成され、
前記ポンプボディに形成されたポンプ吸入路が前記オイルタンク室下部にポンプ吸入口を開口させていることを特徴とする請求項3記載の内燃機関のオイルフィルタ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−64080(P2008−64080A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246098(P2006−246098)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】