説明

内燃機関の制御装置

【課題】減速時における浄化手段の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることのできる内燃機関の制御装置を提供すること。
【解決手段】車両1の減速時で、且つ、床温が所定の温度以上の場合には、エンジン10の制御装置であるECU110が有する触媒劣化抑制制御判定部123によって、触媒劣化抑制制御を行うと判定する。触媒劣化抑制制御は、フューエルカットを禁止し、変速機15のギアポジションに応じた空気量を加算空気量として、空気量加算部124で目標吸入空気量に加算する。エンジン制御部125は、この目標吸入空気量の空気と燃料とをエンジン10に供給する。これにより、酸素を含んだ排気ガスが触媒100に流れることを抑制することができ、減速時における触媒100の温度上昇を抑制できる。また、ギアポジションに応じた吸入空気量と燃料とを供給するため、減速時における出力を変速比に適した出力にすることができ、減速感を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。特に、この発明は、排気ガスを浄化する触媒が備えられた内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃焼室で燃料を燃焼させた際におけるエネルギで運転可能に設けられており、燃料が燃焼した後の排気ガスは、排気通路を通って大気に放出される。ここで、このような燃料の燃焼後の排気ガスには窒素酸化物(NOx)などの不純成分が含まれており、従来の内燃機関では、排気通路に、排気ガスに含まれるこのような不純成分を除去する浄化手段として触媒が設けられている。このため、運転中の内燃機関の燃焼室から排出された排気ガスは、排気通路に設けられる触媒を通ることにより浄化され、大気には触媒によって浄化された後の排気ガスが排出される。しかし、この触媒は、高温時に劣化する場合があるため、従来の内燃機関では、このような触媒の劣化を抑制しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のハイブリッド自動車では、アクセル操作状態がアクセルオフの場合において触媒床温が所定の閾値以上である場合には、触媒床温が閾値より低い場合と比較してスロットル開度を大きくすることにより吸入空気量を増量しつつ燃料の供給を停止している。これにより、燃料供給の停止によりエンジンブレーキを利用してアクセルオフに基づく要求駆動力を確保しつつ、吸入空気量を増加させて触媒に多くの空気を送り込むことにより触媒の温度上昇を抑制し、触媒の劣化を抑制している。
【0004】
また、特許文献2に記載の動力出力装置では、浄化装置の触媒床温度が設定温度以上の場合においてアクセルペダルを戻すことにより軽負荷となる場合には、エンジンのフューエルカットを禁止することにより、大量の空気を浄化装置に供給し、さらに床温が高くなるのを抑制することによって浄化装置の劣化を抑制している。
【0005】
また、特許文献3に記載の内燃機関の制御装置では、触媒の温度が所定の温度よりも高い場合には、変速装置による変速が行われてからの経過時間に応じて燃料供給の停止を禁止するか許可するかを判定している。これにより、変速が頻繁に行われる場合には、燃料供給の停止を禁止して触媒の劣化を抑制し、変速後の経過時間が長い場合には燃料供給の停止を許可することにより、必要以上に燃料供給の停止が禁止され、燃費が悪化することを抑制できる。
【0006】
また、特許文献4に記載のエンジンの制御装置では、触媒温度が所定の温度以上の場合における減速時に、フューエルカットを実施せずに、エンジンに複数設けられる気筒のうちの一部の気筒を休止している。これにより、触媒劣化の抑制と減速感の確保とを両立できる。
【0007】
【特許文献1】特開2007−161209号公報
【特許文献2】特開2007−55475号公報
【特許文献3】特開2006−57628号公報
【特許文献4】特開2004−137969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の内燃機関では、これらのように触媒の温度が高温の場合における減速時等にフューエルカットを禁止して燃料を燃焼させ続けることによって触媒に酸素が流れないようにしたり、吸入空気量を増加させて触媒に大量の空気を流したりすることにより触媒の温度が上昇することを抑制しているが、内燃機関の運転状態が高回転で軽負荷のときに高温の触媒に空気を流した場合、空気中の酸素が触媒と反応することにより温度が上昇する場合がある。この場合、触媒の温度を適切な温度に維持することが出来なくなるため、内燃機関の運転状態が高回転、且つ、軽負荷で、触媒の温度が高温になっている場合に減速する際には、フューエルカットを禁止して触媒に酸素が流れないようにするのが好ましい。
【0009】
このように、減速時にフューエルカットを禁止し、燃料を燃焼させ続けることにより触媒の温度上昇を抑制するには、吸入空気量が少ないことに起因する失火を抑制するために、フューエルカットを行う場合と比較して吸入空気量を加算し、吸入空気量を増加させる。しかし、加算空気量を多くして燃料を燃焼させ続けた場合、減速方向のトルクが減少するため、減速感が低下する場合がある。
【0010】
また、内燃機関の動力は、それぞれ変速比が異なる複数のギア位置を有する変速機を介して駆動輪に伝達されるが、減速時における内燃機関の回転数の下がり方は、ギア位置ごとに異なっている。具体的には、変速比が小さい、即ち、高いギア位置の場合には、内燃機関の回転数の変化に対する駆動輪の回転速度の変化が大きいため、換言すると、駆動輪の回転速度の変化に対する内燃機関の回転数の変化は小さくなっている。これに対し、変速比が大きい、即ち、低いギア位置の場合には、内燃機関の回転数の変化に対する駆動輪の回転速度の変化が小さいため、換言すると、駆動輪の回転速度の変化に対する内燃機関の回転数の変化は大きくなっている。
【0011】
このため、変速機が高いギア位置の場合には、駆動輪の回転速度の変化に対する内燃機関の回転数の変化は小さくなっているため、減速時に駆動輪の回転速度が低下した場合、内燃機関の回転数は緩やかに低下する。これに対し、変速機が低いギア位置の場合には、駆動輪の回転速度の変化に対する内燃機関の回転数の変化は大きくなっているため、減速時に駆動輪の回転速度が低下した場合、内燃機関の回転数は急激に低下する。
【0012】
このように、減速時における内燃機関の回転数の変化速度は、変速機のギア位置によって異なるが、内燃機関の回転数の変化速度に対してフューエルカットを禁止する際の加算空気量が少ない場合には、触媒の温度が上昇し易くなり、加算空気量が多い場合には、減速時における減速感の大幅な低下につながる。このため、減速時に触媒、即ち浄化手段の温度上昇を抑制することと、減速感を得ることとを両立させることは、大変困難なものとなっていた。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、減速時における浄化手段の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関を搭載する車両の減速時における所定の条件が成立した際に、前記内燃機関が有する気筒に供給する燃料を噴射する燃料噴射手段での前記燃料の噴射を停止する制御である燃料噴射停止制御を行う燃料噴射停止制御手段と、前記燃料噴射停止制御を禁止することにより前記内燃機関から排出される排気ガスを浄化する浄化手段の劣化を抑制する制御である浄化手段劣化抑制制御を行うか否かの判定を行うと共に、前記車両の減速時で、且つ、前記浄化手段の温度が所定の温度以上の場合には前記浄化手段劣化抑制制御を行う判定をする浄化手段劣化抑制制御判定手段と、内燃機関から伝達された回転を変速可能に設けられていると共に複数の変速比を切り替え可能な変速機の前記変速比の状態を取得する変速比取得手段と、前記浄化手段劣化抑制制御判定手段で前記浄化手段劣化抑制制御を行うと判定した場合に、前記内燃機関に吸入させる空気量である目標吸入空気量に前記変速比取得手段で取得した前記変速比の状態に応じた空気量を加算空気量として加算する空気量加算手段と、前記浄化手段劣化抑制制御判定手段で前記浄化手段劣化抑制制御を行うと判定した場合に、前記目標吸入空気量の空気を前記内燃機関が吸気することができるように前記内燃機関の吸気通路に設けられる吸入空気量調節手段を制御すると共に前記燃料噴射手段に前記目標吸入空気量に応じた燃料を噴射させる内燃機関制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明では、車両の減速時で、且つ、浄化手段の温度が所定の温度以上の場合には、燃料噴射停止制御を禁止し、変速比取得手段で取得した変速機の変速比の状態に応じた空気量を加算空気量として、空気量加算手段で目標吸入空気量に加算する。さらに、内燃機関制御手段によって吸入空気量調節手段を制御することにより目標吸入空気量の空気を内燃機関に吸気させ、燃料噴射手段に目標吸入空気量に応じた燃料を噴射させる。このように、車両の減速時に燃料噴射停止制御を禁止して内燃機関に目標吸入空気量の空気を吸気させると共に気筒に燃料を供給し、燃料を燃焼させることにより、酸素を含んだ排気ガスが浄化手段に流れることを抑制することができる。これにより、浄化手段の温度が上昇することを抑制できる。
【0016】
さらに、減速時に燃料噴射停止制御を禁止する場合に、内燃機関に目標吸入空気量の空気を吸気させると共に気筒に燃料を供給する場合には、変速機の変速比に応じた吸入空気量と燃料とを供給し、これらを気筒内で燃焼させるため、減速時の吸入空気量や燃料の供給量が多くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、減速時における内燃機関の出力を、変速比に適した出力にすることができる。この結果、減速時における浄化手段の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることができる。
【0017】
また、この発明に係る内燃機関の制御装置は、上記発明において、さらに、前記変速機の前記変速比が大きくなる側に切り替えられる際に前記吸入空気量調節手段と前記燃料噴射手段とを制御することにより前記内燃機関の回転を一時的に上昇させる制御であるブリッピングが有るか否かを判定するブリッピング判定手段を備えており、前記空気量加算手段は、前記ブリッピング判定手段で前記ブリッピングが有ると判定された場合には、前記目標吸入空気量にさらに前記ブリッピングの大きさに応じた空気量を前記加算空気量として加算することを特徴とする。
【0018】
この発明では、変速比を切り替える場合においてブリッピングが有る場合には、ブリッピングの大きさに応じた加算空気量を、さらに目標吸入空気量に加算するので、ブリッピングを行うことにより急激な負荷変化が生じる場合でも、適切な吸入空気量と燃料とを供給することができる。これにより、急激な負荷変化が生じる場合でも、燃料の燃焼が不安定になることを抑制し、安定して燃料を燃焼させることができるため、排気ガスに含まれる酸素の量を低減することができ、より確実に酸素を含んだ排気ガスが浄化手段に流れることを抑制できる。この結果、より確実に減速時に浄化手段の温度が上昇することを抑制でき、浄化手段の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることができる。
【0019】
また、この発明に係る内燃機関の制御装置は、上記発明において、前記変速比の状態に応じて前記空気量加算手段で前記目標吸入空気量に加算する前記加算空気量は、前記変速比が小さくなるに従って増加することを特徴とする。
【0020】
この発明では、減速時に目標吸入空気量に加算する加算空気量を、変速比が小さくなるに従って増加させているので、より確実に浄化手段の温度が上昇することを抑制できる。つまり、変速機の変速比が大きい場合には、減速時における内燃機関の回転数は比較的早く低下するため、高回転で軽負荷の状態である時間が短くなっている。このため、高回転で軽負荷であることに起因する浄化手段の温度の上昇は、生じ難くなる。これに対し、変速機の変速比が小さい場合には、減速時における内燃機関の回転数は、緩やかに低下するため、高回転で軽負荷の状態である時間が長くなっている。このため、高回転で軽負荷であることに起因して浄化手段の温度は上昇し易くなるが、変速比が小さくなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を増加させることにより、変速比が小さい場合でも、より確実に酸素を含んだ排気ガスが浄化手段に流れることを抑制することができ、浄化手段の温度が上昇することを抑制できる。
【0021】
また、変速機の変速比が小さくなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を増加させる、つまり、変速比が大きくなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を低下させることにより、変速比が大きい場合における内燃機関の出力を低下させることができる。換言すると、変速比が大きくなるに従って、減速時における内燃機関の減速トルクを大きくすることができる。これらの結果、より確実に減速時に浄化手段の温度が上昇することを抑制でき、且つ、より確実に減速感を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る内燃機関の制御装置は、減速時における浄化手段の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る内燃機関の制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の実施例に係るエンジンの制御装置が設けられた車両の概略図である。なお、以下の説明では、車両1の通常の走行時における進行方向を前方とし、進行方向の反対方向を後方として説明する。本発明に係る内燃機関の制御装置であるエンジン10の制御装置を備える車両1は、内燃機関であるエンジン10が動力発生手段として車両1の進行方向における前側部分に搭載されている。このエンジン10が発生した動力は、変速機15に伝達される。この変速機15は、それぞれ変速比が異なる複数のギアポジションを切り替え可能に設けられており、ギアポジションを切り替えることにより、エンジン10から伝達された動力を変速することができる。即ち、変速機15は、エンジン10から伝達された回転を変速可能に設けられていると共に複数の変速比を切り替え可能に設けられている。変速機15で変速した動力はプロペラシャフト16、デファレンシャルギヤ17、ドライブシャフト18を介して、車両1が有する車輪5のうち駆動輪として設けられる後輪7へ伝達されることにより、車両1は走行可能になっている。
【0025】
このように、実施例に係るエンジン10の制御装置を備える車両1は、エンジン10が車両1の進行方向における前側部分に搭載され、後輪7が駆動輪として設けられた、いわゆるFR(Front engine Rear drive)の駆動形式となっているが、車両1の駆動形式はFR以外でもよい。また、実施例において、エンジン10はガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式エンジンであるが、エンジン10はこれに限定されるものではない。エンジン10は、例えば、LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)やアルコールを燃料とする火花点火式エンジンであってもよいし、いわゆるロータリー式の火花点火式エンジンであってもよいし、ディーゼル機関であってもよい。
【0026】
車両1が有する車輪5のうち後輪7は駆動輪として設けられるのに対し、前輪6は車両1の操舵輪として設けられている。操舵輪である前輪6は、車両1の運転席に配設されるハンドル20によって操舵可能に設けられている。
【0027】
また、各車輪5の近傍には、油圧によって作動するホイールシリンダ31と、このホイールシリンダ31と組みになって設けられると共に車輪5の回転時には車輪5と一体となって回転するブレーキディスク32とが設けられている。さらに、車両1には、ホイールシリンダ31と油圧経路35によって接続され、ブレーキ操作時に、ホイールシリンダ31に作用させる油圧を制御するブレーキ油圧制御装置30が設けられている。このブレーキ油圧制御装置30は、各車輪5の近傍に設けられる各ホイールシリンダ31に対して、それぞれ独立して油圧の制御が可能に設けられている。これによりブレーキ油圧制御装置30は、複数の車輪5の制動力をそれぞれ独立して制御可能に設けられている。
【0028】
また、車両1には、車両1の運転席に運転者が座った状態における運転者の足元付近に、エンジン10の出力を調整する際に操作するアクセルペダル21と、走行中の車両1を制動する際に操作するブレーキペダル22とが併設されている。このうち、アクセルペダル21の近傍には、アクセルペダル21の開度を検出可能なアクセル開度検出手段であるアクセル開度センサ41が設けられている。また、ブレーキペダル22の近傍には、ブレーキペダル22のストロークを検出可能なブレーキストローク検出手段であるブレーキストロークセンサ42が設けられている。
【0029】
また、ハンドル20の近傍には、変速機15のギアポジションを切り替える際に操作をする変速比切替手段である変速スイッチ23が設けられている。この変速スイッチ23は、運転者が手でハンドル20を握ったまま指で操作をすることができるように、ハンドル20における運転者に対向する側の反対側に、板状の形状で形成されて設けられている。また、変速スイッチ23は、進行方向に向かってハンドル20の左側と右側とに設けられており、運転者が左手と右手とで操作可能に設けられている。
【0030】
このように、ハンドル20の左右に設けられている変速スイッチ23は、例えば、ハンドル20の右側に位置する変速スイッチ23は、変速機15のギアポジションを、変速比が小さくなる側に切り替える際に操作をするスイッチとして設けられており、左側に位置する変速スイッチ23は、変速機15のギアポジションを、変速比が大きくなる側に切り替える際に操作をするスイッチとして設けられている。つまり、ハンドル20の右側に位置する変速スイッチ23は、変速機15のギアポジションをアップシフトする際に操作をするスイッチとして設けられており、左側に位置する変速スイッチ23は、変速機15のギアポジションをダウンシフトする際に操作をするスイッチとして設けられている。
【0031】
このように設けられる変速スイッチ23を操作することによりギアポジションを切り替え可能な変速機15は、ギアポジションの選択は運転者が行い、エンジン10の動力の伝達や遮断を切り替えるクラッチ(図示省略)の操作や、選択されたギアポジションへの切り替え動作を行うアクチュエータ(図示省略)の作動は、制御により自動的に行う公知のマニュアルトランスミッションとして設けられている。また、この変速機15には、現在のギアポジションを検出するギア位置検出手段であるギアポジションセンサ45と、変速機15の出力軸(図示省略)の回転速度を検出することを介して車速を検出可能な車速検出手段である車速センサ46とが設けられている。
【0032】
これらのエンジン10、変速機15、ブレーキ油圧制御装置30、アクセル開度センサ41、ブレーキストロークセンサ42、変速スイッチ23、ギアポジションセンサ45、車速センサ46は、車両1に搭載されると共に車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)110に接続されている。このECU110は、本実施例におけるエンジン1の制御装置として設けられている。
【0033】
図2は、図1に示したエンジンの概略図である。上述したエンジン10は、複数の気筒50を有している。各気筒50は、内部に燃焼室55が形成されたシリンダヘッド51及びシリンダブロック52を有している。また、シリンダブロック52におけるシリンダヘッド51側の反対側には、クランクケース53が位置している。このうち、シリンダブロック52の内部には、気筒50内を往復運動可能に設けられたピストン60が内設されており、当該エンジン10の運転時におけるピストン60の下死点方向には、クランク軸であるクランクシャフト62が設けられている。このクランクシャフト62は、クランクケース53内に設けられており、ピストン60の往復運動の方向と直交する方向に回転軸を有し、当該回転軸を中心に回転可能に形成されている。このように設けられるピストン60とクランクシャフト62とは、コネクティングロッド61によって接続されている。これにより、クランクシャフト62はピストン60の往復運動に伴って回転運動が可能になっている。
【0034】
また、クランクシャフト62の近傍には、クランクシャフト62の回転角度位置であるクランク角を検出するクランク角検出センサ63が設けられている。詳しくは、このクランク角は、クランクシャフト62の回転軸を中心とした場合におけるコネクティングロッド61が接続されている部分の回転角度位置となっている。このクランク角検出センサ63は、検出するクランク角の変化速度を検出することを介してエンジン10の単位時間当りの回転数を検出可能な回転数検出手段としても設けられている。
【0035】
また、シリンダヘッド51は、シリンダブロック52の、当該シリンダブロック52におけるピストン60が上死点に向かう方向側の端部に固定されている。また、シリンダヘッド51には、気筒50内に供給された燃料に点火可能な点火手段である点火プラグ85と、吸気バルブ71及び排気バルブ72が設けられている。また、これらの点火プラグ85、吸気バルブ71及び排気バルブ72は、複数形成される気筒50のそれぞれの気筒50に設けられている。また、燃焼室55には吸気通路65と排気通路66とが接続されており、吸気バルブ71は、吸気通路65側に設けられており、排気バルブ72は、排気通路66側に設けられている。
【0036】
シリンダヘッド51に設けられる吸気バルブ71及び排気バルブ72は、吸気バルブ71や排気バルブ72における燃焼室55側の反対側に設けられたカム75によって往復運動が可能になっている。詳しくは、このカム75は、クランクシャフト62の回転に連動して回転するカムシャフト76に設けられており、カムシャフト76の回転に伴い、カム75も回動する。また、吸気バルブ71及び排気バルブ72にはバルブスプリング77が設けられており、これらの吸気バルブ71及び排気バルブ72は、バルブスプリング77によってカム75に押し付けられているため、カム75が回動することにより、往復運動が可能になっている。
【0037】
このうち、吸気バルブ71は、往復運動をすることにより、吸気通路65と燃焼室55とを連通または遮断するように設けられており、排気バルブ72は、往復運動をすることにより、排気通路66と燃焼室55とを連通または遮断するように設けられている。また、点火プラグ85は、吸気バルブ71と排気バルブ72との間に設けられており、さらに、高電圧をかけた際に放電する点火部86を有し、この点火部86が燃焼室55内に位置するように設けられている。
【0038】
また、吸気通路65には、吸気通路65内に燃料を噴射する燃料噴射手段である燃料インジェクタ80が設けられている。この燃料インジェクタ80は、吸気通路65内に燃料を噴射することにより、気筒50内に燃料を供給可能に設けられている。
【0039】
また、吸気通路65には、当該吸気通路65内を流れる空気の流れ方向において、燃料インジェクタ80が設けられている位置の上流側に、吸気通路65内を開閉可能な吸入空気量調節手段であるスロットルバルブ90が設けられている。吸気通路65内を流れる空気の流量は、このスロットルバルブ90の開度を調整することにより調整可能になっている。このスロットルバルブ90の近傍には、スロットルバルブ90の全閉時にはONになり、スロットルバルブ90が全閉以外の場合にはOFFになることにより、スロットルバルブ90が全閉か否かを検出可能なスイッチであるアイドルスイッチ95が設けられている。
【0040】
また、スロットルバルブ90が設けられる吸気通路65には、スロットルバルブ90をバイパスする通路であるアイドルアジャスト通路96が設けられている。このアイドルアジャスト通路96には、アイドル運転時の空気流量を調節するISCV(Idol Speed Control Valve:アイドル回転速度制御弁)97が設けられている。さらに、吸気通路65には、吸気通路65内を流れる空気の流れ方向においてスロットルバルブ90が設けられている位置の上流側に、吸気通路65内を流れる空気の流量を検出可能な吸入空気量検出手段であるエアフロメータ91が設けられている。このように形成される吸気通路65の入口には、吸気通路65に流入する空気の不純物を除去するエアクリーナ92が設けられている。
【0041】
また、排気通路66には、エンジン10から排出される排気ガスを浄化可能な浄化手段である触媒100が内設されている。なお、この触媒100は、炭化水素(HC)と、一酸化炭素(CO)と、窒素酸化物(NOx)との3物質を酸化・還元反応によって同時に除去する、いわゆる三元触媒となっている。また、排気通路66には、この触媒100の温度である床温を検出可能な床温検出手段である床温センサ101が設けられている。
【0042】
また、シリンダヘッド51に設けられる点火プラグ85は、当該点火プラグ85が有する点火部86の放電を制御する点火回路105に接続されている。この点火回路105は、クランク角検出センサ63、燃料インジェクタ80、スロットルバルブ90、エアフロメータ91、アイドルスイッチ95、ISCV97、床温センサ101と共に、ECU110に接続されており、ECU110によって制御可能に設けられている。
【0043】
図3は、図1に示すエンジンの制御装置の要部構成図である。ECU110には、処理部111、記憶部131及び入出力部132が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU110に接続されている変速機15、ブレーキ油圧制御装置30、アクセル開度センサ41、ブレーキストロークセンサ42、変速スイッチ23、ギアポジションセンサ45、車速センサ46、点火回路105、クランク角検出センサ63、燃料インジェクタ80、スロットルバルブ90、エアフロメータ91、アイドルスイッチ95、ISCV97、床温センサ101は、入出力部132に接続されており、入出力部132は、これらのセンサ類等との間で信号の入出力を行う。また、記憶部131には、エンジン10や変速機15を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部131は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0044】
また、処理部111は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも、アクセル開度センサ41での検出結果よりアクセルペダル21の開度を取得するアクセル開度取得手段であるアクセル開度取得部112と、変速スイッチ23への入力情報を取得することにより、変速機15への変速指令を取得する変速指令取得手段である変速指令取得部113と、床温センサ101での検出結果より床温を取得する床温取得手段である床温取得部114と、アイドルスイッチ95の状態を取得することを介して車両の減速状態を取得する減速状態取得手段であるアイドルスイッチ状態取得部115と、クランク角検出センサ63での検出結果よりエンジン10の回転数を取得するエンジン回転数取得手段であるエンジン回転数取得部116と、車速センサ46での検出結果より車速を取得する車速取得手段である車速取得部117と、ギアポジションセンサ45での検出結果より、変速機15の変速比の状態であるギアポジションを取得する変速比取得手段であるギアポジション取得部118と、を有している。
【0045】
また、処理部111は、エンジン10にアイドリングを行わせる制御であるアイドル回転速度制御の実行条件が成立したか否かを、アイドルスイッチ状態取得部115で取得したアイドルスイッチ95の状態と車速取得部117で取得した車速とに基づいて判定するアイドル回転速度制御判定手段であるアイドル回転速度制御判定部119と、また、処理部111は、変速機15のダウンシフトが有るか否かを、変速指令取得部113で取得した変速指令に基づいて判定するダウンシフト判定手段であるダウンシフト判定部120と、変速機15がダウンシフトする際にスロットルバルブ90と燃料インジェクタ80とを制御することによりエンジン10の回転を一時的に上昇させる制御であるブリッピングが有るか否かを、後述するエンジン制御部125での制御指令に基づいて判定するブリッピング判定手段であるブリッピング判定部121と、を有している。
【0046】
また、処理部111は、車両1の減速時に燃料インジェクタ80での燃料の噴射を停止する制御であるフューエルカットの実行条件が成立したか否かを、アイドルスイッチ状態取得部115で取得したアイドルスイッチ95の状態、及びエンジン回転数取得部116で取得したエンジン10の回転数に基づいて判定する燃料噴射停止制御判定手段であるフューエルカット判定部122と、フューエルカットを禁止することによりエンジン10から排出される排気ガスを浄化する触媒100の劣化を抑制する制御である触媒劣化抑制制御を行うか否かを、床温取得部114で取得した床温と、アイドルスイッチ状態取得部115で取得したアイドルスイッチ95の状態とに基づいて判定する浄化手段劣化抑制制御判定手段である触媒劣化抑制制御判定部123と、を有している。
【0047】
また、処理部111は、触媒劣化抑制制御判定部123で触媒劣化抑制制御を行うと判定した場合に、エンジン10に吸入させる空気量である目標吸入空気量にギアポジション取得部118で取得したギアポジションに応じた空気量を加算空気量として加算する空気量加算手段である空気量加算部124と、エンジン10の運転時の各部を制御可能に設けられており、且つ、触媒劣化抑制制御判定部123で触媒劣化抑制制御を行うと判定した場合に、目標吸入空気量の空気をエンジン10が吸気することができるようにスロットルバルブ90を制御すると共に燃料インジェクタ80に目標吸入空気量に応じた燃料を噴射させる内燃機関制御手段であるエンジン制御部125と、変速機15の変速比を切り替える制御を行う変速機制御手段である変速機制御部126と、を有している。
【0048】
ECU110によって制御されるエンジン10や変速機15の制御は、例えば、アクセル開度センサ41等による検出結果に基づいて、処理部111が上記コンピュータプログラムを当該処理部111に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて燃料インジェクタ80等を作動させることにより制御する。その際に処理部111は、適宜記憶部131へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このようにエンジン10や変速機15を制御する場合には、上記コンピュータプログラムの代わりに、ECU110とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
【0049】
この実施例に係るエンジン10の制御装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。車両1の走行時には、エンジン10を運転させてエンジン10の動力を駆動輪である後輪7に伝達することにより走行する。エンジン10の運転中は、ピストン60がシリンダブロック52内で往復運動を繰り返すことにより、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を1つのサイクルとしてこのサイクルを繰り返す。ピストン60の往復運動は、コネクティングロッド61によってクランクシャフト62に伝達され、コネクティングロッド61とクランクシャフト62との作用により往復運動が回転運動に変換され、クランクシャフト62が回転する。クランクシャフト62が回転すると、この回転に連動してカムシャフト76が回転し、カムシャフト76の回転に伴ってカム75が回動する。これにより吸気バルブ71や排気バルブ72は往復運動をし、吸気通路65や排気通路66と燃焼室55、或いは吸気通路65や排気通路66と気筒50内との連通と遮断とを繰り返す。
【0050】
エンジン10の運転時には、このように吸気バルブ71や排気バルブ72が往復運動して吸気通路65や排気通路66と燃焼室55との連通と遮断とを繰り返すことにより、吸排気を行い、上記の4つの行程を繰り返す。各行程の概略は、吸気行程では燃料インジェクタ80から燃料を噴射することによって吸気通路65内で燃料と空気との混合気を生成し、吸気バルブ71の開弁時に、この混合気を気筒50内に吸気させることにより、気筒50内に燃料を供給する。圧縮行程では、吸気バルブ71も排気バルブ72も閉弁し、この状態でピストン60が上死点方向に移動することにより、気筒50内の混合気を圧縮する。
【0051】
また、燃焼行程では、点火回路105によって点火プラグ85に高電圧の電流を印加し、点火プラグ85の点火部86にアーク放電を発生させることにより、圧縮した混合気が点火する。これにより、圧縮した混合気中の燃料が燃焼するので、燃焼時の圧力によりピストン60が下死点方向に移動し、ピストン60の移動に伴って、コネクティングロッド61を介してピストン60に接続されたクランクシャフト62が回動する。また、排気行程では、吸気バルブ71は閉弁し、排気バルブ72は開弁した状態でピストン60が上死点方向に移動することにより、燃料の燃焼後の排気ガスが気筒50内から排気通路66の方向に流れ、気筒50内から排気される。排気通路66の方向に排気された排気ガスは、排気通路66に設けられる触媒100を通過する。その際に、排気ガスは、触媒100の酸化・還元反応によって炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物が除去され、触媒100により浄化される。
【0052】
エンジン10は、これらを繰り返すことにより継続して運転を続け、このエンジン10の運転により発生した動力は、クランクシャフト62の回転がクランクシャフト62から変速機15に伝達されることにより、エンジン10から変速機15に伝達される。変速機15に伝達された回転は、変速機15によって変速された後、プロペラシャフト16、デファレンシャルギヤ17、ドライブシャフト18を介して後輪7に伝達される。これにより、駆動輪である後輪7は回転し、車両1は走行する。
【0053】
また、エンジン10の回転が後輪7に伝達されることにより走行をする車両1の車速は、アクセルペダル21を足で操作することによりエンジン10の回転数や出力を調整したり、変速スイッチ23を操作して変速機15のギアポジションを切り替えたりすることにより調整する。アクセルペダル21を操作した場合には、アクセルペダル21のストローク量、即ちアクセル開度が、アクセルペダル21の近傍に設けられるアクセル開度センサ41によって検出される。アクセル開度センサ41による検出結果は、ECU110の処理部111が有するアクセル開度取得部112に伝達されてアクセル開度取得部112で取得し、さらに、取得したアクセル開度が、ECU110の処理部111が有するエンジン制御部125に伝達される。エンジン制御部125は、アクセル開度取得部112で取得したアクセル開度や、エアフロメータ91で検出した吸気通路65を流れる空気の流量など、その他のセンサによる検出結果に基づいてスロットルバルブ90の開度を調整したり、燃料インジェクタ80で噴射する燃料の噴射量を調整したりすることにより、エンジン10を制御する。
【0054】
このように、エンジン10の運転を制御する場合における燃料噴射の制御は、基本的には、エンジン10の1回転当りの吸入空気量に基づいて、所定の目標空燃比を達成する燃料噴射量、即ち燃料インジェクタ80による燃料の噴射時間を演算し、所定のクランク角に達した時点で燃料インジェクタ80に燃料を噴射させる。なお、エンジン10の1回転当りの吸入空気量は、エアフロメータ91によって検出する吸入空気量とエンジン10の回転数とから算出する。このエンジン10の回転数は、クランク角検出センサ63で検出するクランク角の変化速度に基づいて算出する。また、エンジン10の1回転当りの吸入空気量は、吸気通路65に設けられる吸気圧センサ(図示省略)から得られる吸気管圧力とエンジン10の回転数とにより推定してもよい。
【0055】
また、変速スイッチ23を操作した場合には、変速スイッチ23への入力情報が、変速機15への変速指令としてECU110の処理部111が有する変速指令取得部113で取得する。変速指令取得部113で取得した変速機15への変速指令は、ECU110の処理部111が有する変速機制御部126に伝達される。変速機制御部126は、変速指令取得部113で取得した変速指令に基づいて変速機15を制御する。これにより変速機15は、変速スイッチ23の操作に応じたギアポジションに変速する。
【0056】
ここで、このように変速機15を変速する際には、変速機15での変速の行い易さと変速時のショックを軽減するために、エンジン10の回転数も制御する。具体的には、アップシフトをする際には、エンジン10の回転数が変速後の回転数に近くなるように、エンジン10の回転数を低下させる。これに対し、ダウンシフトをする際には、エンジン10の回転数を一時的に上昇させる。即ち、ダウンシフトをする際には、ブリッピングを行う。これらのように変化させるエンジン10の回転数は、エンジン制御部125でスロットルバルブ90を制御することによって吸入空気量を変化させたり、燃料インジェクタ80を制御することによって燃料の供給量を変化させたりすることにより制御する。つまり、変速指令取得部113は、アップシフトやダウンシフトの変速指令を取得した場合には、取得した変速指令を変速機制御部126に伝達すると共に、エンジン制御部125にも伝達する。変速指令が伝達されたエンジン制御部125は、伝達された変速指令に応じてエンジン10の回転数を制御する。
【0057】
また、車両1の走行時には、ECU110の処理部111が有するアイドル回転速度制御判定部119は、アイドルスイッチ状態取得部115で取得するアイドルスイッチ95の状態、及び車速取得部117で取得する車速センサ46での検出結果より、アイドル回転速度制御の実行条件が成立したか否かを判定する。アイドル回転速度制御判定部119は、アイドルスイッチ95がONになり、且つ、車速センサ46が0km/hであると判定した場合には、アイドル回転速度制御の実行条件が成立したことをエンジン制御部125に伝達し、エンジン制御部125はアイドル回転速度制御を実行する。アイドル回転速度制御は、目標回転速度と、クランク角検出センサ63で検出するクランク角の変化速度に基づいて算出するエンジン10の実際の回転速度とを比較し、その差に応じてエンジン10の回転速度が目標回転速度になるようにISCV97を調節して吸入空気量を調節する。即ち、ISCV97の開度を調節することにより、アイドルアジャスト通路96を通って気筒50内に吸気させる空気量を調節する。これにより、最適なアイドル回転速度を維持する。
【0058】
また、車両1の走行時には、ECU110の処理部111が有するフューエルカット判定部122は、アイドルスイッチ状態取得部115で取得するアイドルスイッチ95の状態、及びエンジン回転数取得部116で取得する、クランク角検出センサ63での検出結果に基づくエンジン10の回転数より、フューエルカットの実行条件が成立したか否かを判定する。フューエルカット判定部122は、アイドルスイッチ95がONになり、且つ、エンジン10の回転数が所定値以上であると判定した場合には、フューエルカットの実行条件が成立したことをエンジン制御部125に伝達し、エンジン制御部125はフューエルカットを実行する。このため、エンジン制御部125は、車両1の減速時における所定の条件が成立した際にフューエルカットを行う燃料噴射停止制御手段としても設けられている。フューエルカットは、エンジン10の運転中に、燃料インジェクタ80で噴射する燃料の噴射を停止する。
【0059】
また、車両1の走行時には、ECU110の処理部111が有する触媒劣化抑制制御判定部123は、床温センサ101での検出結果より床温取得部114で取得する触媒100の温度である床温と、アイドルスイッチ状態取得部115で取得するアイドルスイッチ95の状態とより、触媒劣化抑制制御の実行条件が成立したか否かを判定する。触媒劣化抑制制御判定部123は、床温取得部114で取得した床温が所定の温度以上で、且つ、アイドルスイッチ95がONであると判定した場合には、触媒劣化抑制制御の実行条件が成立したことをエンジン制御部125に伝達し、エンジン制御部125は触媒劣化抑制制御を実行する。即ち、触媒劣化抑制制御判定部123は、車両1の減速時で、且つ、床温が所定の温度以上の場合には、触媒劣化抑制制御を行う判定をする。触媒劣化抑制制御は、フューエルカットを禁止し、さらに、エンジン10に吸入させる目標となる空気量である目標吸入空気量に、エンジン10の運転状態に応じた空気量を加算する事により行う。
【0060】
図4は、触媒劣化抑制制御の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例に係るエンジン10の制御装置での触媒劣化抑制制御の処理手順について説明する。触媒劣化抑制制御を行う場合には、まず、触媒劣化抑制制御条件が成立しているか否かを判定する(ステップST101)。この判定は、ECU110の処理部111が有する触媒劣化抑制制御判定部123で行う。触媒劣化抑制制御判定部123で、触媒劣化抑制制御条件が成立しているか否かを判定する場合は、床温センサ101での検出結果より床温取得部114で取得した床温と、アイドルスイッチ状態取得部115で取得したアイドルスイッチ95の状態とに基づいて判定する。触媒劣化抑制制御判定部123は、床温取得部114で取得した床温が所定の温度以上で、且つ、アイドルスイッチ状態取得部115で取得したアイドルスイッチ95の状態がONである場合には、触媒劣化抑制制御の実行条件が成立したと判定し、床温が所定の温度未満、または、アイドルスイッチ95の状態がOFFである場合には、触媒劣化抑制制御の実行条件は成立していないと判定する。この判定により、触媒劣化抑制制御の実行条件は成立していないと判定した場合には、この処理手順から抜け出る。なお、この判定を行う際の基準の温度である床温の所定の温度は、予めECU110の記憶部131に記憶されている。
【0061】
触媒劣化抑制制御判定部123での判定(ステップST101)により、触媒劣化抑制制御の実行条件が成立したと判定した場合には、次に、ギアポジションを取得する(ステップST102)。このギアポジションは、ECU110の処理部111が有するギアポジション取得部118で取得する。ギアポジション取得部118は、変速機15に設けられるギアポジションセンサ45の検出結果より、変速機15の現在のギアポジションを取得する。
【0062】
次に、目標吸入空気量にギアポジションに応じた空気量を加算する(ステップST103)。この加算は、ギアポジション取得部118で取得したギアポジションが、ECU110の処理部111が有する空気量加算部124に伝達され、空気量加算部124によって行う。エンジン10に吸入させる目標となる空気量である目標吸入空気量は、アイドルスイッチ95の状態がONの場合、つまり、スロットルバルブ90が全閉の場合は、スロットルバルブ90が全閉の状態でアイドルアジャスト通路96を流れる吸入空気量が目標吸入空気量になるが、空気量加算部124は、この目標吸入空気量に、ギアポジション取得部118から伝達されたギアポジションに応じた空気量を加算する。このギアポジションに応じて加算する空気量である加算空気量は、ギアポジションごとにエンジン10の回転数に応じて加算する空気量が予めマップとして設定されており、ECU110の記憶部131に記憶されている。詳しくは、加算空気量は、変速比以外の条件が同じ条件の場合には、変速比が小さくなるに従って増加する、つまり、ギアポジションが高くなるに従って増加し、ギアポジションが低くなるに従って少なくなるように設定されている。
【0063】
空気量加算部124は、ギアポジション取得部118から伝達されたギアポジションと、クランク角検出センサ63の検出結果よりECU110の処理部111が有するエンジン回転数取得部116で取得したエンジン10の回転数とより、ECU110の記憶部131に記憶されたマップを用いて加算空気量を導出する。空気量加算部124は、目標吸入空気量に、導出した加算空気量を加算する。
【0064】
次に、ダウンシフトが有るか否かを判定する(ステップST104)。この判定は、ECU110の処理部111が有するダウンシフト判定部120で行う。このダウンシフト判定部120は、変速スイッチ23を変速操作した場合にECU110の処理部111が有する変速指令取得部113に伝達される変速指令が有るか否かを判定し、さらに、変速指令が有る場合には、その変速指令はアップシフトの指令であるかダウンシフトの指令であるかを判定する。これにより、ダウンシフト判定部120は、ダウンシフトが有るか否かを判定する。
【0065】
ダウンシフト判定部120での判定(ステップST104)により、ダウンシフトは有ると判定された場合には、次に、ブリッピングが有るか否かを判定する(ステップST105)。この判定は、ECU110の処理部111が有するブリッピング判定部121で行う。このブリッピング判定部121は、エンジン10に対するエンジン制御部125での制御指令を取得し、変速指令取得部113がダウンシフトの変速指令をエンジン制御部125に伝達した際に、エンジン制御部125はエンジン10に対してブリッピングを行わせる制御を行うか否かを判定する。
【0066】
ダウンシフト判定部120での判定(ステップST104)により、ダウンシフトは無いと判定された場合、または、ブリッピング判定部121での判定(ステップST105)により、ブリッピングは無いと判定された場合には、通常の触媒劣化抑制制御の実行条件で触媒劣化抑制制御を実行する(ステップST106)。つまり、ダウンシフトが行われていない場合には、エンジン制御部125は、空気量加算部124でギアポジションに応じた加算空気量を加算した目標吸入空気量を吸気させることができる開度になるようにスロットルバルブ90を制御する。さらに、エンジン制御部125は、この目標吸入空気量の空気と混合させた場合に適切な空燃比になる量の燃料を噴射させことができるように燃料インジェクタ80を制御する。これにより、この空気と燃料との混合気は気筒50内に吸気され、燃焼後の排気ガスは排気通路66に流れ、排気通路66に設けられる触媒100を通過する際に浄化される。
【0067】
このように触媒100によって浄化される排気ガスは、燃料が燃焼した後のガスであるため酸素を含んでおらず、このため、この排気ガスが触媒100に流れた場合でも、高温の触媒100と排気ガス中の酸素とが反応し、触媒100の温度が上昇することを抑制できる。このように、通常の触媒劣化抑制制御の実行条件で触媒劣化抑制制御を実行した後は、この処理手順から抜け出る。
【0068】
これに対し、ブリッピング判定部121での判定(ステップST105)により、ブリッピングが有ると判定された場合には、目標吸入空気量にブリッピングの大きさに応じた空気量を加算して触媒劣化抑制制御を実行する(ステップST107)。目標吸入空気量にブリッピングの大きさに応じた空気量を加算する場合には、空気量加算部124で行う。ブリッピング判定部121でブリッピングが有ると判定された場合には、空気量加算部124には、エンジン制御部125からブリッピングを行う際におけるスロットルバルブ90の開度と、一時的にスロットルバルブ90の開度を大きくする時間、及び燃料インジェクタ80での燃料の噴射量が、ブリッピングの大きさとして伝達される。ブリッピングの大きさが伝達された空気量加算部124は、ギアポジションに応じた加算空気量が加算された目標吸入空気量に、さらにブリッピングの大きさに応じた空気量を加算空気量として加算する。
【0069】
このブリッピングの大きさに応じて加算する加算空気量は、ブリッピングの大きさに応じて加算する空気量が予めマップとして設定されており、ECU110の記憶部131に記憶されている。詳しくは、ブリッピングの大きさに応じて加算する加算空気量は、ブリッピングが大きくなるに従って増加するように設定されている。つまり、この加算空気量は、ブリッピングを行う際のスロットルバルブ90の開度が大きかったり、スロットルバルブ90の開度を大きくする時間が長かったり、燃料インジェクタ80での燃料の噴射量が多かったりするに従って、増加するように設定されている。空気量加算部124は、エンジン制御部125から伝達されたブリッピングの大きさより、ECU110の記憶部131に記憶されたマップを用いて加算空気量を導出する。空気量加算部124は、ギアポジションに応じた加算空気量が加算された目標吸入空気量に、導出した加算空気量を加算する。
【0070】
空気量加算部124で、ブリッピングの大きさに応じた空気量が加算された目標吸入空気量は、エンジン制御部125に伝達され、エンジン制御部125は、この目標吸入空気量を吸気させることができる開度になるようにスロットルバルブ90を制御すると共に、適切な空燃比になる量の燃料を噴射させことができるように燃料インジェクタ80を制御する。これにより、排気通路66に設けられる触媒100には、燃料が燃焼することにより酸素が無くなった後の排気ガスが流れるため、高温の触媒100と排気ガス中の酸素とが反応し、触媒100の温度が上昇することを抑制できる。このように、目標吸入空気量にブリッピングの大きさに応じた空気量を加算して触媒劣化抑制制御を実行した後は、この処理手順から抜け出る。
【0071】
図5は、触媒劣化抑制制御を行った際の床温の変化を示す説明図である。同図における横軸は経過時間を示しており、縦軸はエンジン10の回転数の高さ、スロットルバルブ90の開度、ギアポジションの状態、床温の高さを示している。車両1の運転時には、アクセルペダル21を操作することによりスロットルバルブ90の開度であるスロットル開度TAを調節したり、変速機15のギアポジションSPを切り替えたりすることにより所望の運転状態で運転をする。この場合、例えばスロットル開度TAが大きくなった場合は、エンジン回転数NEが上昇し、スロットル開度TAが小さくなった場合には、エンジン回転数NEは低下する。
【0072】
また、車速は連続的に変化するのに対し、変速機15は所定の段数で変速比が設定されているため、変速機15のギアポジションを切り替えた場合には、連続的に変化する車速を補うため、エンジン10の回転数が変化する。例えば、加速中に変速機15のギアポジションを切り替えてアップシフトした場合は、アップシフトした際にエンジン回転数NEは低下する。また、減速時においてダウンシフトをする際には、ダウンシフトをした際にエンジン回転数NEは上昇する。
【0073】
通常、減速時にはアクセルペダル21を戻すため、スロットル開度TAは全閉になり、触媒劣化抑制制御を行わない場合におけるスロットル開度として図5において非制御時スロットル開度TAnとして示すように、スロットル開度TAは全閉を維持し続ける。スロットル開度TAが全閉になった場合、アイドルスイッチ95がONになるため、アイドルスイッチ95がONの状態でエンジン回転数NEが所定の回転数より高い場合には、従来のエンジン10ではフューエルカットを行う。この場合、スロットル開度TAが全閉の状態でも、アイドルスイッチ95がONの場合にはISCV97が開くので、気筒50が吸入する空気はアイドルアジャスト通路96を流れる。このため、気筒50には、アイドルアジャスト通路96を通って空気が流れる。これにより、触媒100には多くの酸素を含んだ空気が流れるため、この酸素と触媒100とが反応して床温CTが上昇し、触媒劣化抑制制御を行わない場合における床温CTとして図5において非制御時床温CTnとして示すように、非制御時スロットル開度TAnを全閉にした場合における床温CTは大きく上昇する。
【0074】
これに対し、床温CTが触媒劣化抑制制御を行うか否かの判定に用いる所定の温度である床温適合値以上であることにより触媒劣化抑制制御を行い、減速時に吸入空気量にギアポジションSPに応じた空気量を加算して触媒劣化抑制制御を行った場合、床温CTの温度が上昇し過ぎることを抑制できる。即ち、触媒劣化抑制制御では、触媒劣化抑制制御を行った場合におけるスロットル開度TAとして図5において制御時スロットル開度TAcとして示すように、ギアポジションSPに応じた空気量を加算した吸入空気量を気筒50に吸気させることができるようにスロットル開度TAを調節する。
【0075】
また、減速時におけるエンジン回転数NEは、触媒劣化抑制制御を行わない場合には、図5において触媒劣化抑制制御を行わない場合におけるエンジン回転数NEである非制御時エンジン回転数NEnとして示すように、車速と変速機15のギアポジションSPとに応じた回転数になる。
【0076】
これに対し、触媒劣化抑制制御を行う場合には、スロットル開度TAは制御時スロットル開度TAcで示すように、ギアポジションSPに応じた空気量を加算した吸入空気量を吸気させることができるように調節する。このため、触媒劣化抑制制御を行う場合におけるエンジン回転数NEは、図5において触媒劣化抑制制御を行う場合におけるエンジン回転数NEである制御時エンジン回転数NEcで示すように、スロットル開度TAに応じて変化する。
【0077】
さらに、減速時にはダウンシフトを行う場合があるが、減速時にダウンシフトを行った場合には、触媒劣化抑制制御を行わない場合におけるエンジン回転数NEは、非制御時エンジン回転数NEnで示すように、ダウンシフトを行った場合にのみ上昇する。
【0078】
これに対し、触媒劣化抑制制御時においてダウンシフトをする際に、ブリッピングを行った場合、即ち、制御時スロットル開度TAcで示すように、ダウンシフトに合わせて一時的にスロットル開度TAを大きくした場合(ブリッピング時TAb)には、エンジン回転数NEは、制御時エンジン回転数NEcで示すように制御時スロットル開度TAcに応じて上昇する。
【0079】
これらのように、触媒劣化抑制制御時にギアポジションSPに応じて、或いはブリッピングの大きさに応じてスロットル開度TAを調節し、吸入空気量の加算空気量を調節した場合、気筒50には加算空気量が加算された量の空気が吸入されると共に、この吸入空気量に応じた燃料が供給される。このため、気筒50内で燃料が燃焼するので、排気ガスには酸素が残らなくなり、触媒100には、酸素の含有量が少ない排気ガスが流れる。このため、触媒100は酸素と反応し難くなるため温度が上昇し難くなり、触媒劣化抑制制御を行う場合における床温CTは、図5において触媒劣化抑制制御を行う場合における床温CTである制御時床温CTcで示すように温度が上昇することを抑制でき、非制御時床温CTnと比較して温度を低下させることができる。
【0080】
以上のエンジン10の制御装置は、車両1の減速時で、且つ、床温が所定の温度以上の場合には、フューエルカットを禁止し、ギアポジション取得部118で取得した変速機15のギアポジションに応じた空気量を加算空気量として、空気量加算部124で目標吸入空気量に加算する。さらに、エンジン制御部125によってスロットルバルブ90を制御することにより目標吸入空気量の空気をエンジン10に吸気させ、燃料インジェクタ80に目標吸入空気量に応じた燃料を噴射させる。このように、車両1の減速時にフューエルカットを禁止してエンジン10に目標吸入空気量の空気を吸気させると共に気筒50に燃料を供給し、燃料を燃焼させることにより、酸素を含んだ排気ガスが触媒100に流れることを抑制することができる。これにより、触媒100の温度が上昇することを抑制できる。
【0081】
さらに、減速時にフューエルカットを禁止する場合に、エンジン10に目標吸入空気量の空気を吸気させると共に気筒50に燃料を供給する場合には、変速機15のギアポジションに応じた吸入空気量と燃料とを供給し、これらを気筒50内で燃焼させるため、減速時の吸入空気量や燃料の供給量が多くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、減速時におけるエンジン10の出力を、変速比に適した出力にすることができる。この結果、減速時における触媒100の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることができる。
【0082】
また、変速機15のギアポジションを切り替える場合においてブリッピングが有る場合には、ブリッピングの大きさに応じた加算空気量を、さらに目標吸入空気量に加算するので、ブリッピングを行うことにより急激な負荷変化が生じる場合でも、適切な吸入空気量と燃料とを供給することができる。これにより、急激な負荷変化が生じる場合でも、燃料の燃焼が不安定になることを抑制し、安定して燃料を燃焼させることができるため、排気ガスに含まれる酸素の量を低減することができ、より確実に酸素を含んだ排気ガスが触媒100に流れることを抑制できる。この結果、より確実に減速時に触媒100の温度が上昇することを抑制でき、触媒100の温度上昇の抑制と減速感とを両立させることができる。
【0083】
また、減速時に目標吸入空気量に加算する加算空気量を、変速機15のギアポジションが高くなるに従って増加させているので、より確実に触媒100の温度が上昇することを抑制できる。つまり、変速機15のギアポジションが低い場合には、車両1の減速時におけるエンジン10の回転数は比較的早く低下するため、高回転で軽負荷の状態である時間が短くなっている。このため、高回転で軽負荷であることに起因する触媒100の温度の上昇は、生じ難くなる。これに対し、変速機15のギアポジションが高い場合には、減速時におけるエンジン10の回転数は、緩やかに低下するため、高回転で軽負荷の状態である時間が長くなっている。このため、高回転で軽負荷であることに起因して触媒100の温度は上昇し易くなるが、ギアポジションが高くなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を増加させることにより、ギアポジションが高い場合でも、より確実に酸素を含んだ排気ガスが触媒100に流れることを抑制することができ、触媒100の温度が上昇することを抑制できる。
【0084】
また、変速機15のギアポジションが高くなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を増加させる、つまり、ギアポジションが低くなるに従って目標吸入空気量に加算する加算空気量を低下させることにより、ギアポジションが低い場合におけるエンジン10の出力を低下させることができる。換言すると、ギアポジションが低くなるに従って、減速時におけるエンジン10の減速トルクを大きくすることができる。これらの結果、より確実に減速時に触媒100の温度が上昇することを抑制でき、且つ、より確実に減速感を確保することができる。
【0085】
なお、上述した実施例に係るエンジン10の制御装置では、変速機15の変速はハンドル20の近傍に設けられた変速スイッチ23により行うが、変速スイッチ23はハンドル20の近傍以外の場所に設けられていてもよい。また、変速機15の変速は、運転者が変速スイッチ23を操作することにより行うのではなく、ECU110によって車両1の走行状態に応じて自動的に変速してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明に係る内燃機関の制御装置は、排気ガスが触媒によって浄化される内燃機関に有用であり、特に、複数の変速比を切り替え可能な変速機に接続された内燃機関を制御する制御装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施例に係るエンジンの制御装置が設けられた車両の概略図である。
【図2】図1に示したエンジンの概略図である。
【図3】図1に示すエンジンの制御装置の要部構成図である。
【図4】触媒劣化抑制制御の処理手順を示すフロー図である。
【図5】触媒劣化抑制制御を行った際の床温の変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
5 車輪
10 エンジン
15 変速機
20 ハンドル
21 アクセルペダル
22 ブレーキペダル
23 変速スイッチ
41 アクセル開度センサ
42 ブレーキストロークセンサ
45 ギアポジションセンサ
46 車速センサ
50 気筒
63 クランク角検出センサ
65 吸気通路
66 排気通路
80 燃料インジェクタ
90 スロットルバルブ
91 エアフロメータ
95 アイドルスイッチ
96 アイドルアジャスト通路
97 ISCV
100 触媒
101 床温センサ
110 ECU
111 処理部
112 アクセル開度取得部
113 変速指令取得部
114 床温取得部
115 アイドルスイッチ状態取得部
116 エンジン回転数取得部
117 車速取得部
118 ギアポジション取得部
119 アイドル回転速度制御判定部
120 ダウンシフト判定部
121 ブリッピング判定部
122 フューエルカット判定部
123 触媒劣化抑制制御判定部
124 空気量加算部
125 エンジン制御部
126 変速機制御部
131 記憶部
132 入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を搭載する車両の減速時における所定の条件が成立した際に、前記内燃機関が有する気筒に供給する燃料を噴射する燃料噴射手段での前記燃料の噴射を停止する制御である燃料噴射停止制御を行う燃料噴射停止制御手段と、
前記燃料噴射停止制御を禁止することにより前記内燃機関から排出される排気ガスを浄化する浄化手段の劣化を抑制する制御である浄化手段劣化抑制制御を行うか否かの判定を行うと共に、前記車両の減速時で、且つ、前記浄化手段の温度が所定の温度以上の場合には前記浄化手段劣化抑制制御を行う判定をする浄化手段劣化抑制制御判定手段と、
内燃機関から伝達された回転を変速可能に設けられていると共に複数の変速比を切り替え可能な変速機の前記変速比の状態を取得する変速比取得手段と、
前記浄化手段劣化抑制制御判定手段で前記浄化手段劣化抑制制御を行うと判定した場合に、前記内燃機関に吸入させる空気量である目標吸入空気量に前記変速比取得手段で取得した前記変速比の状態に応じた空気量を加算空気量として加算する空気量加算手段と、
前記浄化手段劣化抑制制御判定手段で前記浄化手段劣化抑制制御を行うと判定した場合に、前記目標吸入空気量の空気を前記内燃機関が吸気することができるように前記内燃機関の吸気通路に設けられる吸入空気量調節手段を制御すると共に前記燃料噴射手段に前記目標吸入空気量に応じた燃料を噴射させる内燃機関制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
さらに、前記変速機の前記変速比が大きくなる側に切り替えられる際に前記吸入空気量調節手段と前記燃料噴射手段とを制御することにより前記内燃機関の回転を一時的に上昇させる制御であるブリッピングが有るか否かを判定するブリッピング判定手段を備えており、
前記空気量加算手段は、前記ブリッピング判定手段で前記ブリッピングが有ると判定された場合には、前記目標吸入空気量にさらに前記ブリッピングの大きさに応じた空気量を前記加算空気量として加算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記変速比の状態に応じて前記空気量加算手段で前記目標吸入空気量に加算する前記加算空気量は、前記変速比が小さくなるに従って増加することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−299668(P2009−299668A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158304(P2008−158304)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】