内燃機関の制御装置
【課題】気筒間空燃比ばらつき異常がある場合に、より適切に排気空燃比を制御する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置は、複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータ11の上流側および下流側の排気通路にそれぞれ設けられた触媒前センサ17および触媒後センサ18と、触媒前センサ17の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値が初期状態では第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、気筒間空燃比のばらつき異常が検出されたとき、前記第2所定目標値を変更する変更手段とを備える。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置は、複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された触媒コンバータ11の上流側および下流側の排気通路にそれぞれ設けられた触媒前センサ17および触媒後センサ18と、触媒前センサ17の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値が初期状態では第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、気筒間空燃比のばらつき異常が検出されたとき、前記第2所定目標値を変更する変更手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に係り、特に、多気筒内燃機関において気筒間の空燃比がばらついたときに排気エミッションの悪化を抑制し得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御を実施している。
【0003】
一方、多気筒内燃機関においては、通常全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
【0004】
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系や吸気バルブの動弁機構が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きくばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。
【0005】
そのような異常検出の一例を特許文献1は開示する。特許文献1に記載の内燃機関では、排気通路の三元触媒の上流側に設けられた触媒前センサを用いて検出される空燃比をストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御、および、その触媒の下流側に設けられた触媒後センサを用いて検出される空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御が実行される。また、トータルの空燃比のずれ量が同じである2つの場合を比較した結果、ある1気筒の空燃比のみが大きくリッチ側にずれているときの方が、全気筒の空燃比がそれぞれ少なく均等にリッチ側にずれているときよりも、排気通路に排出される排気中の水素量が多い傾向があることが示されている。そして、そのような水素は触媒で浄化可能であるので、気筒間に空燃比ばらつき異常があるとき、触媒前センサによる空燃比と触媒後センサによる空燃比とに違いがある。この関係に基づき、特許文献1の内燃機関では気筒間空然比ばらつき異常が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−74388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く、排気中の有害成分の触媒による浄化を適切に行うためには、排気空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御が実行されることが望まれる。しかし、気筒間空然比ばらつき異常があるときは、上記空燃比フィードバック制御により空燃比を適切に制御することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、上記事情に鑑みて創案され、その目的は、気筒間空燃比ばらつき異常がある場合に、より適切に排気空燃比を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様によれば、複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された排気浄化用触媒よりも上流側の排気通路に設けられた第1空燃比検出手段と、前記排気浄化用触媒よりも下流側の排気通路に設けられた第2空燃比検出手段と、前記第1空燃比検出手段の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、前記第2空燃比検出手段の出力に基づく第2検出値が初期状態では前記第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、気筒間空燃比のばらつき異常を検出するように構成された異常検出手段と、該異常検出手段により気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、前記空燃比フィードバック制御における前記第2所定目標値を変更する変更手段とを備えた、内燃機関の制御装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値を求めるように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて、前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0011】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値を求めるように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0012】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出および前記値の導出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒がいずれの気筒であるのかを特定するように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値および特定された気筒に応じて前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0013】
前記変更手段は、前記異常検出手段により特定された気筒からの排気の前記第2空燃比検出手段の第2検出値への影響が強いほど、前記第2所定目標値の変更量を多くするように、前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0014】
前記変更手段は、エンジン回転速度およびエンジン負荷の少なくともいずれか一方に基づいて前記第2所定目標値を変えるとよい。
【0015】
前記第1空燃比検出手段は広域空燃比センサを含み、前記第2空燃比検出手段はO2センサを含むとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、より適切に排気空燃比を制御することができるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図2】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図3】空燃比制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】主空燃比補正量の算出マップである。
【図5】補助空燃比補正量の設定のためのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】触媒後センサ出力差とその積算の様子を示すタイムチャートである。
【図7】補助空燃比補正量の算出マップである。
【図8】気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた排気空燃比の変動を示すグラフである。
【図9】図8のU部に相当する拡大図である。
【図10】インバランス率と出力変動パラメータとの関係を示すグラフである。
【図11】気筒間空然比ばらつき異常検出ルーチンのフローチャートである。
【図12】インバランス率検出ルーチンのフローチャートである。
【図13】空燃比と排気通路への排気中の水素量との関係を示すグラフである。
【図14】補助空燃比フィードバック制御における目標電圧変更ルーチンのフローチャートである。
【図15】インバランス率と目標電圧との関係を示すグラフである。
【図16】異常気筒特定の原理を説明するための図である。
【図17】本発明の第2実施形態における、補助空燃比フィードバック制御における目標電圧変更ルーチンのフローチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態における、インバランス率と目標電圧との関係を示すグラフである。
【図19】本発明の第3実施形態における、負荷と補正係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。まず、第1実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。図示されるように、内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、ピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態のエンジン1は自動車に搭載された、複数気筒を有する内燃機関つまり多気筒内燃機関であり、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。エンジン1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、用途、形式等は特に限定されない。
【0020】
図示しないが、エンジン1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁はカムシャフトによって開閉させられる。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
【0021】
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管4、サージタンク8および吸気管13はそれぞれ吸気通路の一部を区画形成する。
【0022】
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
【0023】
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14および排気管6はそれぞれ排気通路の一部を区画形成する。
【0024】
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる排気浄化用触媒を有する上流触媒コンバータ11と下流触媒コンバータ19とが直列に取り付けられている。これら触媒コンバータ11,19は酸素吸蔵能(O2ストレージ能)を有する。すなわち、触媒コンバータ11,19は、排気ガスの空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)より大きい(リーンな)ときに排気ガス中の過剰酸素を吸蔵し、NOxを還元する。また触媒コンバータ11,19は、排気ガスの空燃比がストイキより小さい(リッチな)ときに吸蔵酸素を放出し、HC,COを酸化する。
【0025】
上流触媒コンバータ11つまりそこの触媒の上流側および下流側の排気通路にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1および第2の空燃比センサ、すなわち触媒前センサ17および触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17および触媒後センサ18は、上流触媒コンバータ11の直前および直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出することを可能にする。このように上流触媒コンバータ11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。
【0026】
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10およびインジェクタ12等は、制御手段または制御装置としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROMおよびRAMを含む記憶装置、および入出力ポート等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。このように、ECU20は、点火制御手段、燃料噴射制御手段、吸入空気量制御手段、空燃比制御手段の各機能を実質的に担う。なお、空燃比制御手段は、以下で空燃比フィードバック制御手段としてより詳細に説明される。
【0027】
スロットルバルブ10にはスロットル開度センサ(図示せず)が設けられ、スロットル開度センサからの信号がECU20に送られる。ECU20は、通常、アクセル開度に応じて定まる目標スロットル開度に、スロットルバルブ10の開度(スロットル開度)をフィードバック制御する。
【0028】
ECU20は、エアフローメータ5からの信号に基づき、単位時間当たりの吸入空気の量すなわち吸入空気量を検出する。そしてECU20は、検出したアクセル開度、スロットル開度および吸入空気量の少なくとも一つに基づき、エンジン1の負荷を検出する。
【0029】
ECU20は、クランク角センサ16からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出すると共にエンジン1の回転数を検出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。
【0030】
第1空燃比検出手段としての触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキであるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0031】
他方、第2空燃比検出手段としての触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。つまり、触媒後センサ18は、触媒前センサ17の出力特性に比べて、所定空燃比領域における空燃比変化に対して出力変動が大きいという出力特性を有する。図2に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0032】
上流触媒コンバータ11および下流触媒コンバータ19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0033】
そこでエンジン1の通常運転時、ECU20の空燃比フィードバック制御の機能を担う部分は、上流触媒コンバータ11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比フィードバック制御(ストイキ制御)を実行する。この空燃比フィードバック制御は、触媒前センサ17を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御と、触媒後センサ18を用いて検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御とからなる。具体的には、主空燃比フィードバック制御では、触媒前センサ17の出力に基づいて検出される現状の排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるために、第1補正係数を演算して、この第1補正係数に基づいてインジェクタ12からの燃料噴射量を調整するような制御が実行される。そして、さらに補助空燃比フィードバック制御では、触媒後センサ18の出力に基づいて、第2補正係数を演算し、主空燃比フィードバック制御にて得られた第1補正係数を修正するような制御が実行される。
【0034】
ここでこのようなストイキ制御についてさらに説明する。図3にはストイキ制御のメインルーチンを示す。このメインルーチンはECU20により1エンジンサイクル(=720°CA)毎に繰り返し実行される。
【0035】
まずステップS301では、筒内混合気の空燃比をストイキとするような基本の燃料噴射量すなわち基本噴射量Qbが算出される。基本噴射量Qbは例えば、エアフローメータ5からの出力に基づき検出された吸入空気量Gaに基づき、式:Qb=Ga/14.6により算出される。
【0036】
ステップS303では触媒前センサ17の出力Vfが取得される。なお、ここで取得される触媒前センサ17の出力Vfは触媒前センサ17の出力に基づく第1検出値に相当する。
【0037】
ステップS305では、このセンサ出力Vfとストイキ相当センサ出力Vreff(図2参照)との差、すなわち触媒前センサ出力差ΔVf=Vf−Vreffが算出される。なお、ストイキ相当センサ出力Vreffが本発明の第1所定目標値に相当する。
【0038】
ステップS307では、この触媒前センサ出力差ΔVfに基づき、図4に示したようなマップ(関数でもよい、以下同様)から主空燃比補正量(補正係数)Kfが算出される。触媒前センサ出力差ΔVfおよび主空燃比補正量Kfは、主空燃比制御のための制御量をなす。例えばゲインをPfとするとKf=Pf×ΔVfで表される。
【0039】
そしてステップS309では、後述するように図5に示すサブルーチンで設定された補助空燃比補正量Krの値が取得される。最後に、ステップS311にて、インジェクタ12から噴射すべき最終的な燃料噴射量すなわち最終噴射量Qfnlが式:Qfnl=Kf×Qb+Krにより算出される。
【0040】
図4のマップによれば、触媒前センサ出力Vfがストイキ相当センサ出力Vreffより大きい(ΔVf>0)ほど、すなわち実際の触媒前空燃比がストイキからリーン側に離れるほど、1に対しより大きな補正量Kfが得られ、基本噴射量Qbは増量補正される。反対に、触媒前センサ出力Vfがストイキ相当センサ出力Vreffより小さい(ΔVf<0)ほど、すなわち実際の触媒前空燃比がストイキからリッチ側に離れるほど、1に対しより小さな補正量Kfが得られ、基本噴射量Qbは減量補正される。こうして、触媒前センサ17を用いて検出された空燃比をストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御が実行される。
【0041】
ステップS311で得られた最終噴射量Qfnlの値は、制御対象となる全気筒に対し一律に用いられる。すなわち、1エンジンサイクルの間、最終噴射量Qfnlに等しい量の燃料が各気筒のインジェクタ12から順次噴射され、次のエンジンサイクルでは新たに計算された最終噴射量Qfnlの燃料が各気筒のインジェクタ12から順次噴射される。
【0042】
なお、周知のように、最終噴射量Qfnlの算出に当たっては他の補正(水温補正、バッテリ電圧補正等)を追加することも可能である。
【0043】
図5には、補助空燃比補正量の設定のためのサブルーチンを示す。このサブルーチンはECU20により所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0044】
まずステップS501では、ECU20に装備されたタイマのカウントが実行され、ステップS503では、触媒後センサ18の出力Vrが取得される。なお、ここで取得される触媒後センサ18の出力Vrは触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値に相当する。
【0045】
ステップS505では、このセンサ出力Vrとストイキ相当センサ出力Vrefr(図2参照)との差、すなわち触媒後センサ出力差ΔVr=Vrefr−Vrが算出され、この触媒後センサ出力差ΔVrが前回積算値に積算される。図6には触媒後センサ出力差ΔVrとその積算の様子を示す。なお、ストイキ相当センサ出力Vrefrが本発明の第2所定目標値に相当する。
【0046】
ステップS507では、タイマ値が所定値tsを超えたか否かが判断される。所定値tsを超えていなければルーチンが終了される。
【0047】
タイマ値が所定値tsを超えている場合、ステップS509で、この時点での触媒後センサ出力差積算値ΣΔVrが、触媒後センサ学習値ΔVrgとして更新記憶すなわち学習される。そしてステップS511で、この触媒後センサ学習値ΔVrgに基づき、図7に示したようなマップから、補助空燃比補正量Krが算出され、この補助空燃比補正量Krが更新記憶すなわち学習される。触媒後センサ学習値ΔVrgおよび補助空燃比補正量Krは、補助空燃比制御のための制御量をなす。例えばゲインをPrとするとKr=Pr×ΔVrgで表される。最後に、ステップS513にて、触媒後センサ出力差積算値ΣΔVrおよびタイマがリセットされる。
【0048】
触媒後センサ出力差ΔVrを所定時間tsの間積算する理由は、触媒後センサ出力Vrのストイキ相当センサ出力Vrefrに対する時間平均的なずれ量を検知するためである。積算時間を規定する所定値tsは1エンジンサイクルより遙かに長い時間であり、よって触媒後センサ学習値ΔVrgおよび補助空燃比補正量Krの更新は1エンジンサイクルより長い周期で行われる。
【0049】
図7のマップによれば、触媒後センサ出力Vrが時間平均的にストイキ相当センサ出力Vrefrより小さい(ΔVrg>0)ほど、すなわち実際の触媒後空燃比がストイキからリーン側に離れるほど、0に対しより大きな補正量Krが得られ、最終噴射量算出の際に基本噴射量Qbは増量補正される。反対に、触媒後センサ出力Vrが時間平均的にストイキ相当センサ出力Vrefrより大きい(ΔVrg<0)ほど、すなわち実際の触媒後空燃比がストイキからリッチ側に離れるほど、0に対しより小さな補正量Krが得られ、基本噴射量Qbは減量補正される。こうして、触媒後センサ18を用いて検出された空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0050】
エンジンおよび車両の個体バラツキや触媒前センサ17の劣化等の理由で、主空燃比フィードバック制御を実行してもその結果がストイキからずれることがある。そこでこのずれを補正する目的で、補助的に補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0051】
なお、この例では新たな学習値ΔVrgおよび補正量Krが算出される度にこれらの値自身で更新を行うようにしたが、なまし等の平均化処理を行って更新速度を遅らせるようにしてもよい。
【0052】
以上述べたように、触媒前センサ17の出力に基づく検出値(第1検出値)が第1所定目標値に追従するように、かつ、補助的に触媒後センサ18の出力に基づく検出値(第2検出値)が第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、ECU20の空燃比フィードバック制御手段の機能を担う部分は、空燃比フィードバック制御を実行する。なお、触媒前センサ17の出力に基づく検出値はその出力そのものであってもそれを変換した値であってもよく、また触媒後センサ18の出力に基づく検出値はその出力そのものであってもそれを変換した値であってもよい。
【0053】
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)に何等かの異常が発生し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生することがある。例えば#1気筒のインジェクタ12が故障し、#1気筒の燃料噴射量が相対的に多くなる結果、#1気筒の空燃比が他の#2、#3および#4気筒の空燃比よりも大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに近づけることができる場合があるかもしれない。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3および#4気筒がストイキより若干リーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつきが発生した場合でも排気エミッションを悪化させぬような対策が施されている。
【0054】
まず、気筒間空燃比ばらつき異常の検出に関して説明する。なお、気筒間空燃比ばらつき異常の検出は、該異常を検出するように構成された、異常検出手段、特にその異常検出部の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。
【0055】
図8に示すように、気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル(=720°CA)間での排気空燃比の変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a、b、cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス率でリッチずれ、および1気筒のみ50%のインバランス率でリッチずれの場合の、触媒前センサ17による検出空燃比A/Fを示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
【0056】
ここでインバランス率(%)とは、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す一つのパラメータである。すなわち、インバランス率とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしている場合に、その燃料噴射量ずれを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ずれを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量すなわち基準噴射量からずれているかを示す値である。インバランス率をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量すなわち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qs×100で表される。インバランス率IBの絶対値が大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ずれが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0057】
図8から理解されるように、インバランス率が大きいほど、すなわち気筒間空燃比のばらつき度合いが大きいほど、触媒前センサ17の出力変動が大きくなる。
【0058】
よってこの特性を利用し、本実施形態では、触媒前センサ17の出力変動度合いを表す出力変動パラメータXを、気筒間空燃比ばらつき度合いを表すパラメータとして用い、且つ出力変動パラメータXを検出する。
【0059】
以下に出力変動パラメータXの検出方法を説明する。図9は図8のU部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を簡略的に示す。触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
【0060】
図9(B)に示すように、ECU20は、1エンジンサイクル内において、所定のサンプル周期τ(単位時間、例えば4ms)毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回のタイミング(第2のタイミング)で取得した値A/Fnと、前回のタイミング(第1のタイミング)で取得した値A/Fn−1との差ΔA/Fnを次式(1)により求める。この差ΔA/Fnは今回のタイミングにおける微分値あるいは傾きと言い換えることができる。
ΔA/Fn=A/Fn−A/Fn-1 (1)
【0061】
最も単純には、この差ΔA/Fnが触媒前センサ出力の変動を表す。変動度合いが大きくなるほど空燃比線図の傾きが大きくなり、差ΔA/Fnの絶対値が大きくなるからである。そこで所定の1タイミングにおける差ΔA/Fnの絶対値を出力変動パラメータとすることができる。
【0062】
但し、本実施形態では精度向上のため、複数の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を出力変動パラメータとする。本実施形態では、1エンジンサイクルの間、各タイミングで差ΔA/Fnの絶対値を積算し、最終積算値をサンプル数Nで除し、1エンジンサイクル内の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を求める。そしてさらに、Mエンジンサイクル分(例えばM=100)だけ差ΔA/Fnの絶対値の平均値を積算し、最終積算値をサイクル数Mで除し、Mエンジンサイクル内の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を求める。こうして求められた最終的な平均値を出力変動パラメータXとする。触媒前センサ出力の変動度合いが大きくなるほど出力変動パラメータXは大きくなる。
【0063】
なお、触媒前センサに関する差A/Fは増加する場合と減少する場合とがあるので、これら各場合の一方についてだけ上記差ΔA/Fnあるいはその平均値を求め、これを出力変動パラメータとしても良い。特に1気筒のみリッチずれの場合、当該1気筒に対応した排気ガスを触媒前センサが受けた時に触媒前センサ出力が急速にリッチ側に変化(すなわち急減)するので、触媒前センサ出力の減少側のみの値をリッチずれ検出のために用いることも可能である。もっとも、これに限定されず、増加側の値のみを用いることも可能である。なお、後述するように、本実施形態では、上記出力変動パラメータXを用いて気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定され、かつ、触媒前センサ出力が減少したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値と触媒前センサ出力が増加したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値との比較に基づいてリッチずれかリーンずれかが判定される。
【0064】
図10には、インバランス率IB(%)と出力変動パラメータXの関係を示す。図示されるように、インバランス率IBと出力変動パラメータXの間には強い相関関係があり、インバランス率IBの絶対値が増加するほど空燃比変動パラメータXも増加する。
【0065】
それ故、出力変動パラメータXに基づいて気筒間空燃比ばらつき異常を検出することが可能である。すなわち、出力変動パラメータXの値が所定の異常判定値以上であればばらつき異常ありと判定し、出力変動パラメータXの値が異常判定値未満であればばらつき異常なし、すなわち正常と判定することができる。
【0066】
ここで、このような気筒間空燃比ばらつき異常の検出制御に関して、図11のフローチャートを用いて説明する。なお図11のルーチンはECU20により所定の演算周期τ毎に繰り返し実行される。
【0067】
まずステップS1101では、検出を行うのに適した所定の前提条件が成立しているか否かが判断される。この前提条件は、例えば次の各条件が成立したときに成立する。
(1)エンジンの暖機が終了している。ECU20は、水温センサ(図示せず)を用いて検出された水温が所定値(例えば75℃)を越えているとき暖機終了と判断する。また、エンジンオイルの温度を検出するための油温センサを設け、検出された油温が所定値を越えているとき暖機終了と判断してもよい。
(2)触媒前センサ17および触媒後センサ18が活性化している。ECU20は、両センサのインピーダンスがそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両センサが活性化していると判断する。
(3)上流触媒コンバータ11および下流触媒コンバータ19のそれぞれの触媒が活性化している。ECU20は、エンジン運転状態に基づき推定した上流触媒コンバータ11の触媒の温度および下流触媒コンバータ19の触媒の温度がそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両触媒が活性化したと判断する。
(4)エンジンが定常運転中である。ECU20は、エンジンの回転数Neと負荷KLの所定時間内の変動幅が所定値以内のとき、エンジンが定常運転中と判断する。
(5)通常の上記空燃比フィードバック制御の実行中である。
【0068】
前提条件が成立していない場合にはステップS1101で否定判定される。他方、前提条件が成立している場合には、ステップS1101で肯定判定されて、ステップS1103において、今回のタイミングにおける触媒前センサ出力A/Fnが取得される。なお触媒前センサ出力A/Fnはここでは触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比に換算した値である。
【0069】
次に、ステップS1105において、今回の演算時期における出力差ΔA/Fnが前式(1)より算出される。
【0070】
次に、ステップS1107において、出力差ΔA/Fnの絶対値が積算され、すなわち今回のタイミングにおける積算出力差ΣΔA/Fnが次式(2)より算出される。
ΣΔA/Fn=ΣΔA/Fn-1+|ΔA/Fn| (2)
【0071】
次に、ステップS1109において、1エンジンサイクルが終了したか否かが判断される。終了していなければ上記ステップS1103に戻り、終了した場合にはステップS1111に進む。
【0072】
ステップS1111では、今回の1エンジンサイクル終了時点における最終的な積算出力差ΣΔA/FNがサンプル数Nで除して平均化され、平均出力差Rmが算出される。
【0073】
そしてステップS1113において、平均出力差Rmが積算され、すなわち今回のエンジンサイクル終了時における積算平均出力差ΣRmが次式(3)より算出される。
ΣRm=ΣRm-1+Rm (3)
【0074】
次に、ステップS1115において、Mエンジンサイクル(但しMは2以上の整数)が終了したか否かが判断される。終了していなけれ、上記ステップS1101に戻り、終了した場合にはステップS1117に進む。
【0075】
ステップS1117では、Mエンジンサイクル終了時点における最終的な積算平均出力差ΣRMがサイクル数Mで除して平均化され、出力変動パラメータXが算出される。この算出された出力変動パラメータXが最終的な検出値としての出力変動パラメータXとされる。
【0076】
そして、ステップS1119でパラメータXが所定の異常判定値と比較される。パラメータXが所定の異常判定値以上であるのでステップS1119で肯定判定される場合、異常ありつまり気筒間空燃比ばらつき異常があると判定するように(検出するように)、ステップS1121で初期状態ではOFFである異常フラグがONにされる。他方、ステップS1119でパラメータXが所定の異常判定値未満であるとして否定判定されると、正常であると判定するように、異常フラグをONにせずにつまり異常フラグはOFFのままで当該ルーチンは終了する。なお、異常フラグがONにされることで、本実施形態では、図示しない、運転席のフロントパネルなどに設けられ得る警告ランプなどが点灯されて、運転者などに修理・点検などが促される。
【0077】
なお、ここでは、エンジン1の始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみ、図11にしたがって説明された気筒間空然比ばらつき異常の検出制御が実行される。しかし、適宜の時期に、この制御が実行されてもよい。例えば、エンジン1の運転時間またはエンジン1を搭載した車両の走行距離が所定値になったときに、当該制御が実行されることができる。
【0078】
さらに、異常フラグがONにされると、図12のフローチャートにしたがって、いずれか1つの気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらいの割合で燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値である上記インバランス率が求められる。ただし、このインバランス率の導出は、該インバランス率を導出するように構成された、異常検出手段のインバランス率導出部の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。なお、インバランス率導出部はパラメータ導出部または値導出部と称されてもよい。ただし、このインバランス率の導出は、後述する制御のために実行される。
【0079】
ステップS1201では異常がある、つまり、気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定される。上記図11のステップS1121で異常フラグがONにされると、その異常フラグに基づいて、ステップS1201で、気筒間空然比ばらつき異常があると判定される。
【0080】
ステップS1201で肯定判定されると、ステップS1203では、触媒前センサ出力が減少したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値つまり負の値である差ΔA/Fに関する負パラメータX(−)と、触媒前センサ出力が増加したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値つまり正の値である差ΔA/Fに関する正パラメータX(+)とが比較される。ただし、負パラメータX(−)と正パラメータ(+)とはそれぞれ図11のフローにしたがって説明したパラメータXの算出と同じようにして算出される。なお、それらパラメータX(−)およびX(+)の算出は、ここでは、ステップS1105で算出した出力差ΔA/Fに基づいて行われる。つまり、それら出力差ΔA/Fは記憶装置に記憶されていて、それら出力差ΔA/Fを用いて、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたときのみパラメータX(−)およびX(+)の算出が行われる。ただし、それらパラメータX(−)およびX(+)の算出は、図11のフローにしたがうパラメータXの算出と並行して行われてもよい。
【0081】
例えば、1気筒のみリッチずれの場合、当該1気筒に対応した排気を触媒前センサ17が受けた時にその出力が急速にリッチ側に変化(すなわち急減)するので、負パラメータX(−)はリッチずれの影響を強く反映した値である。同様に、1気筒のみリーンずれの場合、当該1気筒に対応した排気ガスを触媒前センサ17が受けた時にその出力が急速にリーン側に変化(すなわち急増)するので、正パラメータX(+)はリーンずれの影響を強く反映した値である。
【0082】
それ故、負パラメータX(−)が正パラメータX(+)よりも大きいのでステップS1203で肯定判定される場合、インバランス気筒つまり異常気筒の空燃比がストイキよりもリッチ側にずれていると判定されるように、ステップS1205で初期状態ではOFFであるリッチずれフラグがONにされる。逆に、負パラメータX(−)が正パラメータX(+)よりも大きくないのでステップS1203で否定判定される場合、インバランス気筒の空燃比がストイキよりもリーン側にずれていると判定されるように、ステップS1207で初期状態ではOFFであるリーンずれフラグがONにされる。なお、ここでは負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合、インバランス気筒の空燃比がストイキよりもリーン側にずれているものとして処理するが、その場合にインバランス気筒の空燃比がストイキよりもリッチ側にずれているものとして処理されてもよい。ただし、気筒間空然比ばらつき異常がある場合、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合は実際上ありえないであろう。それ故、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合は排除されることも可能であり、この場合に別の当業者が想到できる他の処理が実行されてもよい。
【0083】
そして、ステップS1209で、上記ステップS1117で算出された出力変動パラメータXで図10に表された如きデータを検索すると共に、ステップS1203〜S1207で判定された排気空燃比のずれ方に基づいて、インバランス率IB(%)が算出される。
【0084】
ところで、このような気筒間空然比ばらつき異常があるときにも、排気通路の触媒で排気中の有害成分を適切に浄化することが望まれる。そのためには、本実施形態の場合、上記説明から明らかなように排気空燃比を概ねストイキに制御することが必要である。
【0085】
図8を用いて上述したように、気筒間空燃比のばらつき度合いが大きいほど、排気空燃比のばらつき度合いが大きく、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒前センサ17で検知される排気空燃比に大きなばらつきがある。また、触媒前センサ17への排気の当たり方または流れ方も、気筒間でばらつきがある。例えば#1気筒からの排気と#4気筒からの排気とで触媒前センサ17への排気の到達の仕方および程度に差がある。したがって、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒前センサ17を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比、特にストイキに一致させるような上記主空燃比フィードバック制御では十分に排気空燃比をコントロールすることが困難である。
【0086】
一方、触媒コンバータ11を通過した排気においても、一般に、未だ各気筒からの排気の混合が不十分であるので、気筒間空然比ばらつき異常があるときに触媒後センサ18で検知される排気空燃比は全気筒に関する平均的な空燃比ではない。それ故、触媒後センサ18を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比、特にストイキに一致させるような上記補助空燃比フィードバック制御によっても排気空燃比のコントロールに限界がある。
【0087】
さらに、気筒間空然比ばらつき異常がある場合と、それがない場合とでは、排気中の水素量が異なる。そして、その水素が触媒前センサ17で検知可能であると共に排気通路の触媒で浄化可能であることから、気筒間空然比ばらつき異常がある場合には、触媒前センサ17の出力に基づく検出値と触媒後センサ18の出力に基づく検出値との間に大きなずれまたは乖離が生じる場合がある。
【0088】
例えば、インジェクタ等の燃料供給系やエアフローメータ等の空気系に全気筒に影響を及ぼすような異常が発生した場合、主空燃比フィードバック制御におけるフィードバック補正量の絶対値が大きくなる。例えば、燃料噴射量が全体的にストイキ相当量より5%ずれている(すなわち、全ての気筒において燃料噴射量がストイキ相当量より5%ずつずれている)と、主空燃比制御におけるフィードバック補正量はその5%ずれを補正するような値、すなわち5%相当の補正量となる。
【0089】
一方、燃料供給系や空気系が全体的にずれているのではなく、気筒間にばらつきつまりインバランスが発生している場合を考える。例えば、#1気筒のインジェクタに異常が発生し、#1気筒の燃料噴射量がストイキ相当から大きく20%ずれており、他方、#2〜#4気筒では正常で、燃料噴射量がストイキ相当であるとする。このときトータルで見れば20%のずれであり(20+0+0+0=20)、これは、全気筒が5%ずつずれているときと同じとなるはずである(5+5+5+5=20)。
【0090】
しかし、1気筒のみ大きくリッチ側にずれているときの方が、全気筒で少なく均等にリッチ側にずれているときよりも、燃焼室から発生する水素量が多くなる。そしてこの水素量が多くなった分、排気中の酸素濃度が減少することから、触媒前センサ17の出力は、1気筒のみずれているときの方が全気筒均等にずれているときよりもリッチ側にずれることとなる。
【0091】
図13には、1気筒の混合気のストイキに対するリッチ側への空燃比ずれ量(横軸)と、燃焼室で発生する水素量(縦軸)との関係を示す。図示するように、空燃比リッチずれ量の増加に対して発生水素量は二次関数的に増加する。よって、1気筒のみリッチ側に20%ずれた場合の方が、全気筒が5%ずつずれた場合より発生水素量が多くなり、触媒前センサ出力Vfはよりリッチ側の値を示すようになる。
【0092】
トータルとして同等のずれであっても、気筒間に空燃比ばらつきのある場合の方が、全体がずれている場合よりもエミッションが悪化する。例えば後者で、全気筒が5%ずつずれている場合には、例えば補助空燃比フィードバック制御で−5%の補正を行えば、全気筒一律に5%ずれを解消することができる。しかし前者で、1気筒のみ20%ずれている場合には、補助空燃比フィードバック制御で−5%の補正をしても、#1気筒=15%、#2気筒=−5%、#3気筒=−5%、#4気筒=−5%のずれとなり、トータルではずれが解消しているように見えるが(15+(−5)+(−5)+(−5)=0)、気筒別に見ればずれているのであり、よって気筒単位でエミッションが悪化する。
【0093】
一方、排気中に水素が含まれている場合、この排気に触媒を作用させることにより、排気中の水素を酸化(燃焼)して浄化することができる。そして、触媒を通過せず水素が浄化されていない排気の空燃比すなわち第1の排気空燃比が触媒前センサ17で検知され、触媒を通過し水素が浄化された排気の空燃比すなわち第2の排気空燃比が触媒後センサ18で検知される。触媒前センサ17での検出値は、触媒後センサ18での検出値よりも、水素の影響でリッチ側にずれる。逆に言えば、触媒後センサ18での検出値は、触媒前センサ17での検出値よりも、水素の影響でリーン側にずれる。
【0094】
分かり易くいうと、水素浄化後の触媒後センサ18での検出値が真の排気空燃比を反映したものと言えるものであり、水素浄化前の触媒前センサ17での検出値は、真の排気空燃比に水素分が加わって見掛け上リッチにずれた排気空燃比に関するものである。言ってしまえば、触媒前センサ17が騙されているのである。一部気筒の残部気筒に対する空燃比リッチずれ量が多いほど、水素分は二次関数的に多くなる。よって、気筒間空燃比ばらつき異常が発生しているとき、触媒前センサ17での検出値が触媒後センサ18での検出値よりリッチ側に大きくずれ、すなわち触媒後センサ18での検出値が触媒前センサ17での検出値よりリーン側に大きくずれる傾向にある。
【0095】
例えば#1気筒のみでインジェクタに異常が発生し、#1気筒の空燃比が他の#2〜#4気筒の空燃比より大きくリッチ側にずれているとする。このとき主空燃比フィードバック制御が実行されているので、全気筒の排気が合流した後のトータルの排気の空燃比つまり触媒前センサ17を用いて検出される空燃比は、ストイキ近傍に制御される。すなわち、触媒前センサ出力Vfはストイキ相当センサ出力Vreffの近傍となっている。しかしながら、#1気筒の空燃比はストイキより大きくリッチであり、#2〜#4気筒の空燃比はストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキ近傍になっているに過ぎない。しかも#1気筒から水素が多量に発生される結果、触媒前センサ17の出力Vfは、真の空燃比よりもリッチ側にずれた空燃比を誤ってストイキとして表示している。
【0096】
一方、水素を含む排気が上流触媒コンバータ11を通過すると、水素が浄化されてその影響が取り除かれる。したがって、触媒後センサ18の出力Vrは、真の空燃比、すなわちストイキよりリーンの空燃比に対応した表示となる。すなわち、触媒後センサ出力Vrはストイキ相当センサ出力Vrefrよりリーン側の低い値となる。
【0097】
別の見方をすると、例えば全体で25という触媒前の空燃比の検出値のリッチずれを補正するため、主空燃比フィードバック制御で−25のリーン補正を行い、触媒前の空燃比の検出値のリッチずれを0とする。しかし、25のうちの5は純粋な空燃比ずれではなく水素の影響によるもので、主空燃比フィードバック制御は5だけリーン側に補正しすぎである。よって触媒後の空燃比はリーンに5だけずれる結果となる。
【0098】
よって、主空燃比フィードバック制御により触媒前の空燃比がストイキに制御されているにも拘わらず、触媒後センサ18では、ストイキよりリーンの触媒後の空燃比に対応する値が継続的に検出されるようになる(すなわち、触媒後センサ出力がリーンに張り付く)。このような触媒前後の空燃比の相違は、一部の気筒のインジェクタ等の故障により水素が顕著に多く発生したからである。
【0099】
一方、1気筒のみ大きくリーン側にずれているときも、全気筒で少なく均等にリーン側にずれているときよりも、燃焼室から発生する水素量が多くなる。例えば全気筒が5%ずつずれている場合には、例えば補助空燃比フィードバック制御で+5%の補正を行えば、全気筒一律に5%ずれを解消することができる。しかし1気筒のみ大きくリーン側にずれているとき、例えば1気筒のみ20%ずれている場合には、補助空燃比フィードバック制御で+5%の補正をしても、#1気筒=−15%、#2気筒=+5%、#3気筒=+5%、#4気筒=+5%のずれとなり、トータルではずれが解消しているように見えるが((−15)+(+5)+(+5)+(+5)=0)、気筒別に見ればずれているのであり、よって気筒単位でエミッションが悪化する。そして、このとき、リッチ側にずれることになる3つの気筒により上記説明から理解できるように水素が生じるので、主空燃比フィードバック制御により触媒前の空燃比がストイキに制御されているにも拘わらず、触媒後センサ18では、ストイキよりリーンの触媒後の空燃比に対応する値が継続的に検出されるようになる。
【0100】
したがって、このような気筒間空然比ばらつき異常があるときには、通常の上記した空燃比フィードバック制御では排気空燃比を適切にストイキに制御することが難しい。
【0101】
そこで、ここでは、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、補助空燃比フィードバック制御における触媒後センサ18に関する目標値がストイキ相当値から変更される。ただし、この目標値の変更量は触媒後センサ18への各気筒からの排気の当たり方、および、気筒間空然比ばらつき異常が発生しているときの排気中の成分の変化特性に着目して、予め実験により定められている。特に、ここでは、この目標値の変更量は触媒後センサ18の検出値への各気筒からの排気の影響の強さに注意を払って定められている。
【0102】
ここで、そのような補助空燃比フィードバック制御における目標値の変更制御に関して、図14のフローチャートを用いて説明する。ただし、この補助空燃比フィードバック制御における目標値の変更は、変更手段の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。
【0103】
ステップS1401では異常がある、つまり、気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定される。上記図11のステップS1121で異常フラグがONにされると、その異常フラグに基づいて、ステップS1401で、気筒間空然比ばらつき異常があると判定される。
【0104】
ステップS1401で肯定判定されると、ステップS1403で、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が算出される。これは、上記ステップS1209で算出されたインバランス率で図15に表した如きマップ化されたデータを検索することで求められる。なお、図15に表されたようなデータは、触媒後センサ18への各気筒からの排気の当たり方、および、気筒間空然比ばらつき異常が発生しているときの排気中の成分(例えばH2)の変化特性つまり触媒後センサ18での検出値の真の空燃比相当値からの乖離度合いに着目して、いずれの気筒に問題がある場合にも平均して適合するように、予め実験により定められている。ただし、ここで求められる目標電圧は、規定のガード範囲内に定められている。なお、図15のデータは、気筒間空燃比のばらつき度合いが大きくなるほど、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧の変更量が略大きくなるように定められている。
【0105】
そして、そのように算出された目標電圧に、ステップS1405で、初期状態ではストイキ相当値である上記ストイキ相当センサ出力Vrefrに設定されている補助空燃比フィードバック制御における目標値が変更される。これにより、以後は、ステップS1403で算出された目標電圧が、補助空燃比フィードバック制御の目標値(本発明の第2所定目標値に相当)となり、それに触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値が追従するように補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0106】
なお、図15から、変更後の目標電圧は、概ねストイキ相当値(例えば0.45V)よりも大きくなる(リッチ側の電圧になる)ことが理解できる。これは、上記したように、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒後センサ18の検出値はストイキよりもリーン側にずれる傾向が強いからである。しかし、図15では明瞭に示されていないが、変更後の目標電圧はストイキ相当値よりも小さくなる(リーン側による)場合もあり得る。これは、例えば、エンジンの排気系の形状、大きさなどの構成による。ただし、補助空燃比フィードバック制御の変更後の目標電圧がストイキ相当値よりも必ず大きくなるように、データ等が構築されることを本発明は排除しない。
【0107】
以上述べたように、第1実施形態のエンジンでは、排気通路の触媒の前後にそれぞれ第1空燃比検出手段としての触媒前センサ17と第2空燃比検出手段としての触媒後センサ18とが設けられる。初期状態、始動直後、および、気筒間空然比ばらつき異常が検出されていない場合には、触媒前センサ17での検出値が第1所定目標値としてのストイキ相当値に追従するように主空燃比フィードバック制御が、および、触媒後センサ18での検出値が第2所定目標値としてのストイキ相当値に追従するように補助空燃比フィードバック制御が、空燃比フィードバック制御として実行される。これに対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合には、主空燃比フィードバック制御における第1所定目標値は変更されずに、補助空燃比フィードバック制御における初期状態では第1所定目標値に相当する第2所定目標値が上記したように定められるインバランス率に応じた値に変更される。つまり、インバランス率に対応する量、第2所定目標値は変更される。例えば、第2所定目標値は、ストイキ相当値(例えば0.45V)からリッチ側の値(例えば0.6V)に変更される。
【0108】
その結果、触媒後センサ18での検出値を変更後の第2所定目標値に追従させるように補助空燃比フィードバック制御が実行される。例えば、気筒間空燃比ばらつき異常が発生しているので、触媒前センサ17での検出値が概ねストイキ相当値であるが、触媒後センサ18での検出値がリーン側の低い値になっている場合を考える。この場合、上記したように、触媒後センサ18での検出値が真の値である。このときに、触媒後センサ18での検出値を変更後の第2所定目標値(例えば0.6V)に追従させるように補助空燃比フィードバック制御が実行されると、触媒前センサ17での検出値は補助空燃比フィードバック制御により大きな補正が成される結果ストイキからずれ得る。しかし、触媒前センサ17での検出値と触媒後センサ18での検出値との間に上記したようなずれまたは乖離が生じ得るので、触媒後センサ18での検出値をストイキ相当値に一致させるまたは近づけることができる。したがって、触媒前センサ17での検出誤差に伴う主空燃比フィードバック制御の問題を是正しつつ、排気空燃比をストイキ近傍に制御することができる。よって、適切に排気を浄化することができる。
【0109】
なお、第1実施形態では、出力変動パラメータXとして、出力差ΔA/Fnの絶対値の平均値が用いられた。しかし、例えば、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも出力変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内における触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークとの差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)、または2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値に基づいて、出力変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど、触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差は大きくなり、また2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値も大きくなるからである。
【0110】
また、上記第1実施形態では、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)との比較結果に基づいてリッチずれかリーンずれかが判定された。しかし、他の方法でリッチずれかリーンずれかが判定されてもよい。その一例が図16に基づいて説明される。なお、図16に基づいて以下説明される方法を適用して気筒間空然比ばらつき異常そのものの検出が行われてもよい。
【0111】
例えば図16(A)に示すように、#1気筒の燃料噴射量のみがストイキ相当量に対し40%の割合でリッチ側にずれており(すなわちインバランス率が+40%)、他の#2,#3,#4気筒では燃料噴射量がストイキ相当量となっている(すなわちインバランス率が0%)場合を想定する。このとき、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(B)に示すように、トータルの燃料噴射量がストイキ相当量となるように#1気筒では+30%のインバランス率、他の#2,#3,#4気筒ではそれぞれ−10%のインバランス率となる。このときにもやはり各気筒でストイキ相当量に対し+または−の噴射量ずれが生じている。よって1エンジンサイクル間で比較的大きな排気空燃比の変動が生じ、出力変動パラメータXの値は大きい。
【0112】
この図16(B)の状態から、例えば図16(C)に示すように、#1気筒の燃料噴射量をストイキ相当量の40%だけ強制的に減量する。こうすると#1気筒は−10%のインバランス率となり、他の#2,#3,#4気筒のインバランス割合と等しくなる。
【0113】
この状態から、#1気筒の燃料噴射量減量状態を維持しつつ、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(D)に示すように、各気筒の燃料噴射量が+10%ずつ補正され、各気筒の燃料噴射量がストイキ相当量になる(すなわち各気筒のインバランス割合は0%)。よって1エンジンサイクル間での排気空燃比の変動は小さくなり、出力変動パラメータXの値は小さくなる。
【0114】
このことから、燃料噴射量を強制的に所定量減量したときに出力変動パラメータXが所定値以上低下した気筒をインバランス気筒つまり異常気筒(特にリッチずれ異常気筒)と特定することができる。つまり、リッチずれと特定することができる。
【0115】
一方、図16(B)の状態から、例えば図16(E)に示すように、正常な#2気筒において燃料噴射量をストイキ相当量の40%だけ強制的に減量したとする。こうすると各気筒のインバランス率は#1気筒では変わらず+30%、#2気筒では−50%、#3,#4気筒では変わらずー10%となる。
【0116】
この状態から、#2気筒の燃料噴射量減量状態を維持しつつ、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(F)に示すように、トータルの燃料噴射量がストイキ相当量となるように#1気筒では+40%、#2気筒では−40%、#3,#4気筒では0%となる。この場合、1エンジンサイクル間での排気空燃比の変動は大きいままであり、出力変動パラメータXの値も大きいままである。
【0117】
このことから、燃料噴射量を強制的に所定量減量したときに出力変動パラメータXが所定値以上低下しなかった気筒はインバランス気筒つまり異常気筒ではなく、正常気筒であると特定することができる。
【0118】
図示しないが、逆のパターンで、例えば図16(A)の例のうち#1気筒のみが異常でその燃料噴射量が−40%少なくなっている(すなわちインバランス率が−40%)場合を想定する。すると、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量した場合に、出力変動パラメータXが所定値以上低下した気筒は異常気筒(特にリーンずれ異常気筒)であり、出力変動パラメータXが所定値以上低下しなかった気筒は正常気筒であると特定することができる。したがって、リーンずれを特定することができる。
【0119】
このように、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量または減量したときの増量または減量前後の出力変動パラメータXの変化量を検出し、この変化量が所定値以上である気筒は異常気筒、所定値未満である気筒は正常気筒というように異常気筒が特定されると共に、リッチずれかリーンずれかを特定することができる。なお、この場合、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量または減量する燃料噴射量変更制御の実行はECU20の一部により担われ、その部分は燃料噴射量変更制御手段と称され得る。また、この場合、そのような異常のある気筒の特定はECU20の一部により担われ、その部分は、異常検出手段の機能を担うECU20の一部に含まれ得、異常気筒特定部と称され得る。
【0120】
次に、本発明に係る第2実施形態が説明される。第2実施形態は、第1実施形態に対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合、いずれか1つの気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、インバランス気筒つまり異常気筒を特定して、その気筒からの排気の触媒後センサ(の検出値)への影響を特に考慮して、補助空燃比フィードバック制御の目標値を変更するという特徴を有する。以下では、この特徴に関して説明し、上記第1実施形態の説明と実質的に重複する説明は概ね省略される。例えば、第2実施形態のエンジンは、直列3気筒の内燃機関であること以外、第1実施形態の内燃機関と概ね同じ構成を有するので、ここでは上記符号を同様に用いて、第2実施形態の構成のさらなる説明は省略される。
【0121】
第2実施形態では、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、仮にまたは暫定的に異常気筒を特定し、その異常気筒に適した第2所定目標値の変更が成される。以下に、図17のフローチャートに基づいて説明する。ただし、図17のステップS1701、S1705、S1707は、それぞれ、図14のステップS1401〜S1405に対応する。
【0122】
ステップS1701で気筒間空然比ばらつき異常があると肯定判定されると、ステップS1703で異常気筒が特定される。この異常気筒の特定は、図16に基づいて上記した方法で実行される。なお、ここでは、いずれか1つの気筒のみに異常があるものと仮定して、以下説明を続ける。
【0123】
ステップS1703で異常気筒が特定されると、次ぐステップS1705で補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が算出される。これは、ステップS1703で特定された気筒に適したデータを用いて実行される。図18には#1気筒に関するデータ、#2気筒に関するデータ、#3気筒に関するデータが重ねて表されている。ここで、ステップS1703で#1気筒が異常気筒と特定されたと仮定すると、#1気筒に関するデータを上記ステップS1209で算出されたインバランス率で検索することで目標電圧が求められる。なお、異常気筒と特定された気筒からの排気の触媒後センサ18への影響が強いほど、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧つまり第2所定目標値のストイキ相当値からの変更量を多くするように図18のデータは定められている。異常気筒と特定された気筒からの排気の触媒後センサ18への影響が強いということは、その気筒からの排気が触媒後センサ18へ到達し易いまたは当たり易いということと関係する。具体的には、ここでは、図18のデータは、#1気筒からの排気は#2および#3気筒からの排気よりも触媒後センサ18への検出値に強く影響し、#2気筒からの排気は#3気筒からの排気よりも触媒後センサ18への検出値に強く影響するという関係に基づく。
【0124】
そして、そのように算出された目標電圧に、ステップS1707で、初期状態ではストイキ相当値である上記ストイキ相当センサ出力Vrefrに設定されている補助空燃比フィードバック制御における目標値が変更される。これにより、以後は、ステップS1403で算出された目標電圧が、補助空燃比フィードバック制御の目標値(本発明の第2所定目標値に相当)となり、それに触媒後センサ18の出力に基づく検出値が追従するように補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0125】
このように本第2実施形態は、上記第1実施形態に比べて、より触媒後センサ18への異常気筒からの排気の影響を考慮した制御を可能にする。それ故、本第2実施形態によれば、より適切に排気空燃比を制御し、排気エミッションを改善することができる。
【0126】
次に、本発明に係る第3実施形態が説明される。第3実施形態は、第1および第2実施形態に対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合、補助空燃比フィードバック制御の目標値を同様に変更するが、その目標値がさらにエンジン運転状態に応じて適宜変更されるという特徴を有する。以下では、この特徴に関して説明し、上記説明と実質的に重複する説明は概ね省略される。なお、以下では、第3実施形態に係るエンジンが第2実施形態に係るエンジンの全要素を実質的に備えるとして第3実施形態を説明するが、第3実施形態の特徴(エンジン運転状態に基づく目標値の補正)は第1実施形態に適用されてもよい。
【0127】
第3実施形態でも、図17および図18に基づいて補助空燃比フィードバック制御の目標値が変更されるように、同目標値が変更される。ただし、ステップS1705で算出される目標電圧は、目標電圧基準値とされる。
【0128】
補助空燃比フィードバック制御の目標値がその目標電圧基準値に変更されると、このように変更された目標値は、エンジン運転状態に基づいてつまりそのときの運転領域に基づいて適宜補正される。具体的には、その目標値はエンジン回転速度Neおよびエンジン負荷KLに基づいて適宜補正される。例えば、図19に示すようなエンジン負荷KLと補正係数との関係データを、適宜エンジン負荷で検索することで補正係数が求められる。そして、その補正係数がステップS1705で算出された目標電圧基準値に加算または乗算されて、目標電圧が求められ、その目標電圧に補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が適宜変更される。なお、目標電圧基準値は、エンジン回転速度およびエンジン負荷のいずれか一方に基づいて補正されてもよい。
【0129】
運転状態に応じて排気流量は異なるので、運転状態に応じて排気の触媒後センサ18への影響が変化する。本第3実施形態は、上記したように運転状態に基づいて補助空燃比フィードバック制御の目標値の変更量を変えるので、上記第2実施形態に比べて、より触媒後センサ18への排気の影響を考慮した制御を可能にする。それ故、本第3実施形態によれば、より適切に排気空燃比を制御し、排気エミッションを改善することができる。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、上記3つの実施形態では、エンジンの始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみ気筒間空然比ばらつき異常の検出が行われ、その異常があるときに補助空燃比フィードバック制御の目標値が概ね一度のみ変更された(第3実施形態では、目標電圧基準値の変更はエンジンの始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみである)。しかし、適宜、気筒間空然比ばらつき異常の検出、インバランス率の導出および/または異常気筒の特定が行われて、補助空燃比フィードバック制御の目標値が変更されてもよい。また、上記実施形態では、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値つまりパラメータとして、インバランス率を用いたが、他の値が用いられてもよい。そのような値は、例えば、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値であるとよい。また、上記の数値はあくまで例示であり、他の値に変更可能である。
【0131】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
11 上流触媒コンバータ
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の制御装置に係り、特に、多気筒内燃機関において気筒間の空燃比がばらついたときに排気エミッションの悪化を抑制し得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御を実施している。
【0003】
一方、多気筒内燃機関においては、通常全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
【0004】
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系や吸気バルブの動弁機構が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きくばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。
【0005】
そのような異常検出の一例を特許文献1は開示する。特許文献1に記載の内燃機関では、排気通路の三元触媒の上流側に設けられた触媒前センサを用いて検出される空燃比をストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御、および、その触媒の下流側に設けられた触媒後センサを用いて検出される空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御が実行される。また、トータルの空燃比のずれ量が同じである2つの場合を比較した結果、ある1気筒の空燃比のみが大きくリッチ側にずれているときの方が、全気筒の空燃比がそれぞれ少なく均等にリッチ側にずれているときよりも、排気通路に排出される排気中の水素量が多い傾向があることが示されている。そして、そのような水素は触媒で浄化可能であるので、気筒間に空燃比ばらつき異常があるとき、触媒前センサによる空燃比と触媒後センサによる空燃比とに違いがある。この関係に基づき、特許文献1の内燃機関では気筒間空然比ばらつき異常が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−74388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く、排気中の有害成分の触媒による浄化を適切に行うためには、排気空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御が実行されることが望まれる。しかし、気筒間空然比ばらつき異常があるときは、上記空燃比フィードバック制御により空燃比を適切に制御することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、上記事情に鑑みて創案され、その目的は、気筒間空燃比ばらつき異常がある場合に、より適切に排気空燃比を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様によれば、複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された排気浄化用触媒よりも上流側の排気通路に設けられた第1空燃比検出手段と、前記排気浄化用触媒よりも下流側の排気通路に設けられた第2空燃比検出手段と、前記第1空燃比検出手段の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、前記第2空燃比検出手段の出力に基づく第2検出値が初期状態では前記第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、気筒間空燃比のばらつき異常を検出するように構成された異常検出手段と、該異常検出手段により気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、前記空燃比フィードバック制御における前記第2所定目標値を変更する変更手段とを備えた、内燃機関の制御装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値を求めるように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて、前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0011】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値を求めるように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0012】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出および前記値の導出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒がいずれの気筒であるのかを特定するように構成され、前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値および特定された気筒に応じて前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0013】
前記変更手段は、前記異常検出手段により特定された気筒からの排気の前記第2空燃比検出手段の第2検出値への影響が強いほど、前記第2所定目標値の変更量を多くするように、前記第2所定目標値を変更するとよい。
【0014】
前記変更手段は、エンジン回転速度およびエンジン負荷の少なくともいずれか一方に基づいて前記第2所定目標値を変えるとよい。
【0015】
前記第1空燃比検出手段は広域空燃比センサを含み、前記第2空燃比検出手段はO2センサを含むとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、より適切に排気空燃比を制御することができるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図2】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図3】空燃比制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】主空燃比補正量の算出マップである。
【図5】補助空燃比補正量の設定のためのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】触媒後センサ出力差とその積算の様子を示すタイムチャートである。
【図7】補助空燃比補正量の算出マップである。
【図8】気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた排気空燃比の変動を示すグラフである。
【図9】図8のU部に相当する拡大図である。
【図10】インバランス率と出力変動パラメータとの関係を示すグラフである。
【図11】気筒間空然比ばらつき異常検出ルーチンのフローチャートである。
【図12】インバランス率検出ルーチンのフローチャートである。
【図13】空燃比と排気通路への排気中の水素量との関係を示すグラフである。
【図14】補助空燃比フィードバック制御における目標電圧変更ルーチンのフローチャートである。
【図15】インバランス率と目標電圧との関係を示すグラフである。
【図16】異常気筒特定の原理を説明するための図である。
【図17】本発明の第2実施形態における、補助空燃比フィードバック制御における目標電圧変更ルーチンのフローチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態における、インバランス率と目標電圧との関係を示すグラフである。
【図19】本発明の第3実施形態における、負荷と補正係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。まず、第1実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本第1実施形態に係る内燃機関の概略図である。図示されるように、内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、ピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態のエンジン1は自動車に搭載された、複数気筒を有する内燃機関つまり多気筒内燃機関であり、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。エンジン1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、用途、形式等は特に限定されない。
【0020】
図示しないが、エンジン1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒ごとに配設されており、各吸気弁および各排気弁はカムシャフトによって開閉させられる。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒ごとに取り付けられている。
【0021】
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管4、サージタンク8および吸気管13はそれぞれ吸気通路の一部を区画形成する。
【0022】
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒ごとに配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。
【0023】
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14および排気管6はそれぞれ排気通路の一部を区画形成する。
【0024】
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる排気浄化用触媒を有する上流触媒コンバータ11と下流触媒コンバータ19とが直列に取り付けられている。これら触媒コンバータ11,19は酸素吸蔵能(O2ストレージ能)を有する。すなわち、触媒コンバータ11,19は、排気ガスの空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)より大きい(リーンな)ときに排気ガス中の過剰酸素を吸蔵し、NOxを還元する。また触媒コンバータ11,19は、排気ガスの空燃比がストイキより小さい(リッチな)ときに吸蔵酸素を放出し、HC,COを酸化する。
【0025】
上流触媒コンバータ11つまりそこの触媒の上流側および下流側の排気通路にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1および第2の空燃比センサ、すなわち触媒前センサ17および触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17および触媒後センサ18は、上流触媒コンバータ11の直前および直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出することを可能にする。このように上流触媒コンバータ11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。
【0026】
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10およびインジェクタ12等は、制御手段または制御装置としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROMおよびRAMを含む記憶装置、および入出力ポート等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、エンジン1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。このように、ECU20は、点火制御手段、燃料噴射制御手段、吸入空気量制御手段、空燃比制御手段の各機能を実質的に担う。なお、空燃比制御手段は、以下で空燃比フィードバック制御手段としてより詳細に説明される。
【0027】
スロットルバルブ10にはスロットル開度センサ(図示せず)が設けられ、スロットル開度センサからの信号がECU20に送られる。ECU20は、通常、アクセル開度に応じて定まる目標スロットル開度に、スロットルバルブ10の開度(スロットル開度)をフィードバック制御する。
【0028】
ECU20は、エアフローメータ5からの信号に基づき、単位時間当たりの吸入空気の量すなわち吸入空気量を検出する。そしてECU20は、検出したアクセル開度、スロットル開度および吸入空気量の少なくとも一つに基づき、エンジン1の負荷を検出する。
【0029】
ECU20は、クランク角センサ16からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出すると共にエンジン1の回転数を検出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。
【0030】
第1空燃比検出手段としての触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキであるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0031】
他方、第2空燃比検出手段としての触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。つまり、触媒後センサ18は、触媒前センサ17の出力特性に比べて、所定空燃比領域における空燃比変化に対して出力変動が大きいという出力特性を有する。図2に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0032】
上流触媒コンバータ11および下流触媒コンバータ19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0033】
そこでエンジン1の通常運転時、ECU20の空燃比フィードバック制御の機能を担う部分は、上流触媒コンバータ11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比フィードバック制御(ストイキ制御)を実行する。この空燃比フィードバック制御は、触媒前センサ17を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御と、触媒後センサ18を用いて検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御とからなる。具体的には、主空燃比フィードバック制御では、触媒前センサ17の出力に基づいて検出される現状の排気空燃比を所定の目標空燃比に追従させるために、第1補正係数を演算して、この第1補正係数に基づいてインジェクタ12からの燃料噴射量を調整するような制御が実行される。そして、さらに補助空燃比フィードバック制御では、触媒後センサ18の出力に基づいて、第2補正係数を演算し、主空燃比フィードバック制御にて得られた第1補正係数を修正するような制御が実行される。
【0034】
ここでこのようなストイキ制御についてさらに説明する。図3にはストイキ制御のメインルーチンを示す。このメインルーチンはECU20により1エンジンサイクル(=720°CA)毎に繰り返し実行される。
【0035】
まずステップS301では、筒内混合気の空燃比をストイキとするような基本の燃料噴射量すなわち基本噴射量Qbが算出される。基本噴射量Qbは例えば、エアフローメータ5からの出力に基づき検出された吸入空気量Gaに基づき、式:Qb=Ga/14.6により算出される。
【0036】
ステップS303では触媒前センサ17の出力Vfが取得される。なお、ここで取得される触媒前センサ17の出力Vfは触媒前センサ17の出力に基づく第1検出値に相当する。
【0037】
ステップS305では、このセンサ出力Vfとストイキ相当センサ出力Vreff(図2参照)との差、すなわち触媒前センサ出力差ΔVf=Vf−Vreffが算出される。なお、ストイキ相当センサ出力Vreffが本発明の第1所定目標値に相当する。
【0038】
ステップS307では、この触媒前センサ出力差ΔVfに基づき、図4に示したようなマップ(関数でもよい、以下同様)から主空燃比補正量(補正係数)Kfが算出される。触媒前センサ出力差ΔVfおよび主空燃比補正量Kfは、主空燃比制御のための制御量をなす。例えばゲインをPfとするとKf=Pf×ΔVfで表される。
【0039】
そしてステップS309では、後述するように図5に示すサブルーチンで設定された補助空燃比補正量Krの値が取得される。最後に、ステップS311にて、インジェクタ12から噴射すべき最終的な燃料噴射量すなわち最終噴射量Qfnlが式:Qfnl=Kf×Qb+Krにより算出される。
【0040】
図4のマップによれば、触媒前センサ出力Vfがストイキ相当センサ出力Vreffより大きい(ΔVf>0)ほど、すなわち実際の触媒前空燃比がストイキからリーン側に離れるほど、1に対しより大きな補正量Kfが得られ、基本噴射量Qbは増量補正される。反対に、触媒前センサ出力Vfがストイキ相当センサ出力Vreffより小さい(ΔVf<0)ほど、すなわち実際の触媒前空燃比がストイキからリッチ側に離れるほど、1に対しより小さな補正量Kfが得られ、基本噴射量Qbは減量補正される。こうして、触媒前センサ17を用いて検出された空燃比をストイキに一致させるような主空燃比フィードバック制御が実行される。
【0041】
ステップS311で得られた最終噴射量Qfnlの値は、制御対象となる全気筒に対し一律に用いられる。すなわち、1エンジンサイクルの間、最終噴射量Qfnlに等しい量の燃料が各気筒のインジェクタ12から順次噴射され、次のエンジンサイクルでは新たに計算された最終噴射量Qfnlの燃料が各気筒のインジェクタ12から順次噴射される。
【0042】
なお、周知のように、最終噴射量Qfnlの算出に当たっては他の補正(水温補正、バッテリ電圧補正等)を追加することも可能である。
【0043】
図5には、補助空燃比補正量の設定のためのサブルーチンを示す。このサブルーチンはECU20により所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0044】
まずステップS501では、ECU20に装備されたタイマのカウントが実行され、ステップS503では、触媒後センサ18の出力Vrが取得される。なお、ここで取得される触媒後センサ18の出力Vrは触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値に相当する。
【0045】
ステップS505では、このセンサ出力Vrとストイキ相当センサ出力Vrefr(図2参照)との差、すなわち触媒後センサ出力差ΔVr=Vrefr−Vrが算出され、この触媒後センサ出力差ΔVrが前回積算値に積算される。図6には触媒後センサ出力差ΔVrとその積算の様子を示す。なお、ストイキ相当センサ出力Vrefrが本発明の第2所定目標値に相当する。
【0046】
ステップS507では、タイマ値が所定値tsを超えたか否かが判断される。所定値tsを超えていなければルーチンが終了される。
【0047】
タイマ値が所定値tsを超えている場合、ステップS509で、この時点での触媒後センサ出力差積算値ΣΔVrが、触媒後センサ学習値ΔVrgとして更新記憶すなわち学習される。そしてステップS511で、この触媒後センサ学習値ΔVrgに基づき、図7に示したようなマップから、補助空燃比補正量Krが算出され、この補助空燃比補正量Krが更新記憶すなわち学習される。触媒後センサ学習値ΔVrgおよび補助空燃比補正量Krは、補助空燃比制御のための制御量をなす。例えばゲインをPrとするとKr=Pr×ΔVrgで表される。最後に、ステップS513にて、触媒後センサ出力差積算値ΣΔVrおよびタイマがリセットされる。
【0048】
触媒後センサ出力差ΔVrを所定時間tsの間積算する理由は、触媒後センサ出力Vrのストイキ相当センサ出力Vrefrに対する時間平均的なずれ量を検知するためである。積算時間を規定する所定値tsは1エンジンサイクルより遙かに長い時間であり、よって触媒後センサ学習値ΔVrgおよび補助空燃比補正量Krの更新は1エンジンサイクルより長い周期で行われる。
【0049】
図7のマップによれば、触媒後センサ出力Vrが時間平均的にストイキ相当センサ出力Vrefrより小さい(ΔVrg>0)ほど、すなわち実際の触媒後空燃比がストイキからリーン側に離れるほど、0に対しより大きな補正量Krが得られ、最終噴射量算出の際に基本噴射量Qbは増量補正される。反対に、触媒後センサ出力Vrが時間平均的にストイキ相当センサ出力Vrefrより大きい(ΔVrg<0)ほど、すなわち実際の触媒後空燃比がストイキからリッチ側に離れるほど、0に対しより小さな補正量Krが得られ、基本噴射量Qbは減量補正される。こうして、触媒後センサ18を用いて検出された空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0050】
エンジンおよび車両の個体バラツキや触媒前センサ17の劣化等の理由で、主空燃比フィードバック制御を実行してもその結果がストイキからずれることがある。そこでこのずれを補正する目的で、補助的に補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0051】
なお、この例では新たな学習値ΔVrgおよび補正量Krが算出される度にこれらの値自身で更新を行うようにしたが、なまし等の平均化処理を行って更新速度を遅らせるようにしてもよい。
【0052】
以上述べたように、触媒前センサ17の出力に基づく検出値(第1検出値)が第1所定目標値に追従するように、かつ、補助的に触媒後センサ18の出力に基づく検出値(第2検出値)が第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、ECU20の空燃比フィードバック制御手段の機能を担う部分は、空燃比フィードバック制御を実行する。なお、触媒前センサ17の出力に基づく検出値はその出力そのものであってもそれを変換した値であってもよく、また触媒後センサ18の出力に基づく検出値はその出力そのものであってもそれを変換した値であってもよい。
【0053】
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)に何等かの異常が発生し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生することがある。例えば#1気筒のインジェクタ12が故障し、#1気筒の燃料噴射量が相対的に多くなる結果、#1気筒の空燃比が他の#2、#3および#4気筒の空燃比よりも大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述の主空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに近づけることができる場合があるかもしれない。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3および#4気筒がストイキより若干リーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつきが発生した場合でも排気エミッションを悪化させぬような対策が施されている。
【0054】
まず、気筒間空燃比ばらつき異常の検出に関して説明する。なお、気筒間空燃比ばらつき異常の検出は、該異常を検出するように構成された、異常検出手段、特にその異常検出部の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。
【0055】
図8に示すように、気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル(=720°CA)間での排気空燃比の変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a、b、cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス率でリッチずれ、および1気筒のみ50%のインバランス率でリッチずれの場合の、触媒前センサ17による検出空燃比A/Fを示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
【0056】
ここでインバランス率(%)とは、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す一つのパラメータである。すなわち、インバランス率とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしている場合に、その燃料噴射量ずれを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ずれを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量すなわち基準噴射量からずれているかを示す値である。インバランス率をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量すなわち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qs×100で表される。インバランス率IBの絶対値が大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ずれが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0057】
図8から理解されるように、インバランス率が大きいほど、すなわち気筒間空燃比のばらつき度合いが大きいほど、触媒前センサ17の出力変動が大きくなる。
【0058】
よってこの特性を利用し、本実施形態では、触媒前センサ17の出力変動度合いを表す出力変動パラメータXを、気筒間空燃比ばらつき度合いを表すパラメータとして用い、且つ出力変動パラメータXを検出する。
【0059】
以下に出力変動パラメータXの検出方法を説明する。図9は図8のU部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を簡略的に示す。触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
【0060】
図9(B)に示すように、ECU20は、1エンジンサイクル内において、所定のサンプル周期τ(単位時間、例えば4ms)毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回のタイミング(第2のタイミング)で取得した値A/Fnと、前回のタイミング(第1のタイミング)で取得した値A/Fn−1との差ΔA/Fnを次式(1)により求める。この差ΔA/Fnは今回のタイミングにおける微分値あるいは傾きと言い換えることができる。
ΔA/Fn=A/Fn−A/Fn-1 (1)
【0061】
最も単純には、この差ΔA/Fnが触媒前センサ出力の変動を表す。変動度合いが大きくなるほど空燃比線図の傾きが大きくなり、差ΔA/Fnの絶対値が大きくなるからである。そこで所定の1タイミングにおける差ΔA/Fnの絶対値を出力変動パラメータとすることができる。
【0062】
但し、本実施形態では精度向上のため、複数の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を出力変動パラメータとする。本実施形態では、1エンジンサイクルの間、各タイミングで差ΔA/Fnの絶対値を積算し、最終積算値をサンプル数Nで除し、1エンジンサイクル内の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を求める。そしてさらに、Mエンジンサイクル分(例えばM=100)だけ差ΔA/Fnの絶対値の平均値を積算し、最終積算値をサイクル数Mで除し、Mエンジンサイクル内の差ΔA/Fnの絶対値の平均値を求める。こうして求められた最終的な平均値を出力変動パラメータXとする。触媒前センサ出力の変動度合いが大きくなるほど出力変動パラメータXは大きくなる。
【0063】
なお、触媒前センサに関する差A/Fは増加する場合と減少する場合とがあるので、これら各場合の一方についてだけ上記差ΔA/Fnあるいはその平均値を求め、これを出力変動パラメータとしても良い。特に1気筒のみリッチずれの場合、当該1気筒に対応した排気ガスを触媒前センサが受けた時に触媒前センサ出力が急速にリッチ側に変化(すなわち急減)するので、触媒前センサ出力の減少側のみの値をリッチずれ検出のために用いることも可能である。もっとも、これに限定されず、増加側の値のみを用いることも可能である。なお、後述するように、本実施形態では、上記出力変動パラメータXを用いて気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定され、かつ、触媒前センサ出力が減少したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値と触媒前センサ出力が増加したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値との比較に基づいてリッチずれかリーンずれかが判定される。
【0064】
図10には、インバランス率IB(%)と出力変動パラメータXの関係を示す。図示されるように、インバランス率IBと出力変動パラメータXの間には強い相関関係があり、インバランス率IBの絶対値が増加するほど空燃比変動パラメータXも増加する。
【0065】
それ故、出力変動パラメータXに基づいて気筒間空燃比ばらつき異常を検出することが可能である。すなわち、出力変動パラメータXの値が所定の異常判定値以上であればばらつき異常ありと判定し、出力変動パラメータXの値が異常判定値未満であればばらつき異常なし、すなわち正常と判定することができる。
【0066】
ここで、このような気筒間空燃比ばらつき異常の検出制御に関して、図11のフローチャートを用いて説明する。なお図11のルーチンはECU20により所定の演算周期τ毎に繰り返し実行される。
【0067】
まずステップS1101では、検出を行うのに適した所定の前提条件が成立しているか否かが判断される。この前提条件は、例えば次の各条件が成立したときに成立する。
(1)エンジンの暖機が終了している。ECU20は、水温センサ(図示せず)を用いて検出された水温が所定値(例えば75℃)を越えているとき暖機終了と判断する。また、エンジンオイルの温度を検出するための油温センサを設け、検出された油温が所定値を越えているとき暖機終了と判断してもよい。
(2)触媒前センサ17および触媒後センサ18が活性化している。ECU20は、両センサのインピーダンスがそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両センサが活性化していると判断する。
(3)上流触媒コンバータ11および下流触媒コンバータ19のそれぞれの触媒が活性化している。ECU20は、エンジン運転状態に基づき推定した上流触媒コンバータ11の触媒の温度および下流触媒コンバータ19の触媒の温度がそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両触媒が活性化したと判断する。
(4)エンジンが定常運転中である。ECU20は、エンジンの回転数Neと負荷KLの所定時間内の変動幅が所定値以内のとき、エンジンが定常運転中と判断する。
(5)通常の上記空燃比フィードバック制御の実行中である。
【0068】
前提条件が成立していない場合にはステップS1101で否定判定される。他方、前提条件が成立している場合には、ステップS1101で肯定判定されて、ステップS1103において、今回のタイミングにおける触媒前センサ出力A/Fnが取得される。なお触媒前センサ出力A/Fnはここでは触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比に換算した値である。
【0069】
次に、ステップS1105において、今回の演算時期における出力差ΔA/Fnが前式(1)より算出される。
【0070】
次に、ステップS1107において、出力差ΔA/Fnの絶対値が積算され、すなわち今回のタイミングにおける積算出力差ΣΔA/Fnが次式(2)より算出される。
ΣΔA/Fn=ΣΔA/Fn-1+|ΔA/Fn| (2)
【0071】
次に、ステップS1109において、1エンジンサイクルが終了したか否かが判断される。終了していなければ上記ステップS1103に戻り、終了した場合にはステップS1111に進む。
【0072】
ステップS1111では、今回の1エンジンサイクル終了時点における最終的な積算出力差ΣΔA/FNがサンプル数Nで除して平均化され、平均出力差Rmが算出される。
【0073】
そしてステップS1113において、平均出力差Rmが積算され、すなわち今回のエンジンサイクル終了時における積算平均出力差ΣRmが次式(3)より算出される。
ΣRm=ΣRm-1+Rm (3)
【0074】
次に、ステップS1115において、Mエンジンサイクル(但しMは2以上の整数)が終了したか否かが判断される。終了していなけれ、上記ステップS1101に戻り、終了した場合にはステップS1117に進む。
【0075】
ステップS1117では、Mエンジンサイクル終了時点における最終的な積算平均出力差ΣRMがサイクル数Mで除して平均化され、出力変動パラメータXが算出される。この算出された出力変動パラメータXが最終的な検出値としての出力変動パラメータXとされる。
【0076】
そして、ステップS1119でパラメータXが所定の異常判定値と比較される。パラメータXが所定の異常判定値以上であるのでステップS1119で肯定判定される場合、異常ありつまり気筒間空燃比ばらつき異常があると判定するように(検出するように)、ステップS1121で初期状態ではOFFである異常フラグがONにされる。他方、ステップS1119でパラメータXが所定の異常判定値未満であるとして否定判定されると、正常であると判定するように、異常フラグをONにせずにつまり異常フラグはOFFのままで当該ルーチンは終了する。なお、異常フラグがONにされることで、本実施形態では、図示しない、運転席のフロントパネルなどに設けられ得る警告ランプなどが点灯されて、運転者などに修理・点検などが促される。
【0077】
なお、ここでは、エンジン1の始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみ、図11にしたがって説明された気筒間空然比ばらつき異常の検出制御が実行される。しかし、適宜の時期に、この制御が実行されてもよい。例えば、エンジン1の運転時間またはエンジン1を搭載した車両の走行距離が所定値になったときに、当該制御が実行されることができる。
【0078】
さらに、異常フラグがONにされると、図12のフローチャートにしたがって、いずれか1つの気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらいの割合で燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値である上記インバランス率が求められる。ただし、このインバランス率の導出は、該インバランス率を導出するように構成された、異常検出手段のインバランス率導出部の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。なお、インバランス率導出部はパラメータ導出部または値導出部と称されてもよい。ただし、このインバランス率の導出は、後述する制御のために実行される。
【0079】
ステップS1201では異常がある、つまり、気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定される。上記図11のステップS1121で異常フラグがONにされると、その異常フラグに基づいて、ステップS1201で、気筒間空然比ばらつき異常があると判定される。
【0080】
ステップS1201で肯定判定されると、ステップS1203では、触媒前センサ出力が減少したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値つまり負の値である差ΔA/Fに関する負パラメータX(−)と、触媒前センサ出力が増加したときのみに関する差ΔA/Fの絶対値の平均値つまり正の値である差ΔA/Fに関する正パラメータX(+)とが比較される。ただし、負パラメータX(−)と正パラメータ(+)とはそれぞれ図11のフローにしたがって説明したパラメータXの算出と同じようにして算出される。なお、それらパラメータX(−)およびX(+)の算出は、ここでは、ステップS1105で算出した出力差ΔA/Fに基づいて行われる。つまり、それら出力差ΔA/Fは記憶装置に記憶されていて、それら出力差ΔA/Fを用いて、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたときのみパラメータX(−)およびX(+)の算出が行われる。ただし、それらパラメータX(−)およびX(+)の算出は、図11のフローにしたがうパラメータXの算出と並行して行われてもよい。
【0081】
例えば、1気筒のみリッチずれの場合、当該1気筒に対応した排気を触媒前センサ17が受けた時にその出力が急速にリッチ側に変化(すなわち急減)するので、負パラメータX(−)はリッチずれの影響を強く反映した値である。同様に、1気筒のみリーンずれの場合、当該1気筒に対応した排気ガスを触媒前センサ17が受けた時にその出力が急速にリーン側に変化(すなわち急増)するので、正パラメータX(+)はリーンずれの影響を強く反映した値である。
【0082】
それ故、負パラメータX(−)が正パラメータX(+)よりも大きいのでステップS1203で肯定判定される場合、インバランス気筒つまり異常気筒の空燃比がストイキよりもリッチ側にずれていると判定されるように、ステップS1205で初期状態ではOFFであるリッチずれフラグがONにされる。逆に、負パラメータX(−)が正パラメータX(+)よりも大きくないのでステップS1203で否定判定される場合、インバランス気筒の空燃比がストイキよりもリーン側にずれていると判定されるように、ステップS1207で初期状態ではOFFであるリーンずれフラグがONにされる。なお、ここでは負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合、インバランス気筒の空燃比がストイキよりもリーン側にずれているものとして処理するが、その場合にインバランス気筒の空燃比がストイキよりもリッチ側にずれているものとして処理されてもよい。ただし、気筒間空然比ばらつき異常がある場合、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合は実際上ありえないであろう。それ故、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)とが同じである場合は排除されることも可能であり、この場合に別の当業者が想到できる他の処理が実行されてもよい。
【0083】
そして、ステップS1209で、上記ステップS1117で算出された出力変動パラメータXで図10に表された如きデータを検索すると共に、ステップS1203〜S1207で判定された排気空燃比のずれ方に基づいて、インバランス率IB(%)が算出される。
【0084】
ところで、このような気筒間空然比ばらつき異常があるときにも、排気通路の触媒で排気中の有害成分を適切に浄化することが望まれる。そのためには、本実施形態の場合、上記説明から明らかなように排気空燃比を概ねストイキに制御することが必要である。
【0085】
図8を用いて上述したように、気筒間空燃比のばらつき度合いが大きいほど、排気空燃比のばらつき度合いが大きく、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒前センサ17で検知される排気空燃比に大きなばらつきがある。また、触媒前センサ17への排気の当たり方または流れ方も、気筒間でばらつきがある。例えば#1気筒からの排気と#4気筒からの排気とで触媒前センサ17への排気の到達の仕方および程度に差がある。したがって、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒前センサ17を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比、特にストイキに一致させるような上記主空燃比フィードバック制御では十分に排気空燃比をコントロールすることが困難である。
【0086】
一方、触媒コンバータ11を通過した排気においても、一般に、未だ各気筒からの排気の混合が不十分であるので、気筒間空然比ばらつき異常があるときに触媒後センサ18で検知される排気空燃比は全気筒に関する平均的な空燃比ではない。それ故、触媒後センサ18を用いて検出された排気空燃比を所定の目標空燃比、特にストイキに一致させるような上記補助空燃比フィードバック制御によっても排気空燃比のコントロールに限界がある。
【0087】
さらに、気筒間空然比ばらつき異常がある場合と、それがない場合とでは、排気中の水素量が異なる。そして、その水素が触媒前センサ17で検知可能であると共に排気通路の触媒で浄化可能であることから、気筒間空然比ばらつき異常がある場合には、触媒前センサ17の出力に基づく検出値と触媒後センサ18の出力に基づく検出値との間に大きなずれまたは乖離が生じる場合がある。
【0088】
例えば、インジェクタ等の燃料供給系やエアフローメータ等の空気系に全気筒に影響を及ぼすような異常が発生した場合、主空燃比フィードバック制御におけるフィードバック補正量の絶対値が大きくなる。例えば、燃料噴射量が全体的にストイキ相当量より5%ずれている(すなわち、全ての気筒において燃料噴射量がストイキ相当量より5%ずつずれている)と、主空燃比制御におけるフィードバック補正量はその5%ずれを補正するような値、すなわち5%相当の補正量となる。
【0089】
一方、燃料供給系や空気系が全体的にずれているのではなく、気筒間にばらつきつまりインバランスが発生している場合を考える。例えば、#1気筒のインジェクタに異常が発生し、#1気筒の燃料噴射量がストイキ相当から大きく20%ずれており、他方、#2〜#4気筒では正常で、燃料噴射量がストイキ相当であるとする。このときトータルで見れば20%のずれであり(20+0+0+0=20)、これは、全気筒が5%ずつずれているときと同じとなるはずである(5+5+5+5=20)。
【0090】
しかし、1気筒のみ大きくリッチ側にずれているときの方が、全気筒で少なく均等にリッチ側にずれているときよりも、燃焼室から発生する水素量が多くなる。そしてこの水素量が多くなった分、排気中の酸素濃度が減少することから、触媒前センサ17の出力は、1気筒のみずれているときの方が全気筒均等にずれているときよりもリッチ側にずれることとなる。
【0091】
図13には、1気筒の混合気のストイキに対するリッチ側への空燃比ずれ量(横軸)と、燃焼室で発生する水素量(縦軸)との関係を示す。図示するように、空燃比リッチずれ量の増加に対して発生水素量は二次関数的に増加する。よって、1気筒のみリッチ側に20%ずれた場合の方が、全気筒が5%ずつずれた場合より発生水素量が多くなり、触媒前センサ出力Vfはよりリッチ側の値を示すようになる。
【0092】
トータルとして同等のずれであっても、気筒間に空燃比ばらつきのある場合の方が、全体がずれている場合よりもエミッションが悪化する。例えば後者で、全気筒が5%ずつずれている場合には、例えば補助空燃比フィードバック制御で−5%の補正を行えば、全気筒一律に5%ずれを解消することができる。しかし前者で、1気筒のみ20%ずれている場合には、補助空燃比フィードバック制御で−5%の補正をしても、#1気筒=15%、#2気筒=−5%、#3気筒=−5%、#4気筒=−5%のずれとなり、トータルではずれが解消しているように見えるが(15+(−5)+(−5)+(−5)=0)、気筒別に見ればずれているのであり、よって気筒単位でエミッションが悪化する。
【0093】
一方、排気中に水素が含まれている場合、この排気に触媒を作用させることにより、排気中の水素を酸化(燃焼)して浄化することができる。そして、触媒を通過せず水素が浄化されていない排気の空燃比すなわち第1の排気空燃比が触媒前センサ17で検知され、触媒を通過し水素が浄化された排気の空燃比すなわち第2の排気空燃比が触媒後センサ18で検知される。触媒前センサ17での検出値は、触媒後センサ18での検出値よりも、水素の影響でリッチ側にずれる。逆に言えば、触媒後センサ18での検出値は、触媒前センサ17での検出値よりも、水素の影響でリーン側にずれる。
【0094】
分かり易くいうと、水素浄化後の触媒後センサ18での検出値が真の排気空燃比を反映したものと言えるものであり、水素浄化前の触媒前センサ17での検出値は、真の排気空燃比に水素分が加わって見掛け上リッチにずれた排気空燃比に関するものである。言ってしまえば、触媒前センサ17が騙されているのである。一部気筒の残部気筒に対する空燃比リッチずれ量が多いほど、水素分は二次関数的に多くなる。よって、気筒間空燃比ばらつき異常が発生しているとき、触媒前センサ17での検出値が触媒後センサ18での検出値よりリッチ側に大きくずれ、すなわち触媒後センサ18での検出値が触媒前センサ17での検出値よりリーン側に大きくずれる傾向にある。
【0095】
例えば#1気筒のみでインジェクタに異常が発生し、#1気筒の空燃比が他の#2〜#4気筒の空燃比より大きくリッチ側にずれているとする。このとき主空燃比フィードバック制御が実行されているので、全気筒の排気が合流した後のトータルの排気の空燃比つまり触媒前センサ17を用いて検出される空燃比は、ストイキ近傍に制御される。すなわち、触媒前センサ出力Vfはストイキ相当センサ出力Vreffの近傍となっている。しかしながら、#1気筒の空燃比はストイキより大きくリッチであり、#2〜#4気筒の空燃比はストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキ近傍になっているに過ぎない。しかも#1気筒から水素が多量に発生される結果、触媒前センサ17の出力Vfは、真の空燃比よりもリッチ側にずれた空燃比を誤ってストイキとして表示している。
【0096】
一方、水素を含む排気が上流触媒コンバータ11を通過すると、水素が浄化されてその影響が取り除かれる。したがって、触媒後センサ18の出力Vrは、真の空燃比、すなわちストイキよりリーンの空燃比に対応した表示となる。すなわち、触媒後センサ出力Vrはストイキ相当センサ出力Vrefrよりリーン側の低い値となる。
【0097】
別の見方をすると、例えば全体で25という触媒前の空燃比の検出値のリッチずれを補正するため、主空燃比フィードバック制御で−25のリーン補正を行い、触媒前の空燃比の検出値のリッチずれを0とする。しかし、25のうちの5は純粋な空燃比ずれではなく水素の影響によるもので、主空燃比フィードバック制御は5だけリーン側に補正しすぎである。よって触媒後の空燃比はリーンに5だけずれる結果となる。
【0098】
よって、主空燃比フィードバック制御により触媒前の空燃比がストイキに制御されているにも拘わらず、触媒後センサ18では、ストイキよりリーンの触媒後の空燃比に対応する値が継続的に検出されるようになる(すなわち、触媒後センサ出力がリーンに張り付く)。このような触媒前後の空燃比の相違は、一部の気筒のインジェクタ等の故障により水素が顕著に多く発生したからである。
【0099】
一方、1気筒のみ大きくリーン側にずれているときも、全気筒で少なく均等にリーン側にずれているときよりも、燃焼室から発生する水素量が多くなる。例えば全気筒が5%ずつずれている場合には、例えば補助空燃比フィードバック制御で+5%の補正を行えば、全気筒一律に5%ずれを解消することができる。しかし1気筒のみ大きくリーン側にずれているとき、例えば1気筒のみ20%ずれている場合には、補助空燃比フィードバック制御で+5%の補正をしても、#1気筒=−15%、#2気筒=+5%、#3気筒=+5%、#4気筒=+5%のずれとなり、トータルではずれが解消しているように見えるが((−15)+(+5)+(+5)+(+5)=0)、気筒別に見ればずれているのであり、よって気筒単位でエミッションが悪化する。そして、このとき、リッチ側にずれることになる3つの気筒により上記説明から理解できるように水素が生じるので、主空燃比フィードバック制御により触媒前の空燃比がストイキに制御されているにも拘わらず、触媒後センサ18では、ストイキよりリーンの触媒後の空燃比に対応する値が継続的に検出されるようになる。
【0100】
したがって、このような気筒間空然比ばらつき異常があるときには、通常の上記した空燃比フィードバック制御では排気空燃比を適切にストイキに制御することが難しい。
【0101】
そこで、ここでは、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、補助空燃比フィードバック制御における触媒後センサ18に関する目標値がストイキ相当値から変更される。ただし、この目標値の変更量は触媒後センサ18への各気筒からの排気の当たり方、および、気筒間空然比ばらつき異常が発生しているときの排気中の成分の変化特性に着目して、予め実験により定められている。特に、ここでは、この目標値の変更量は触媒後センサ18の検出値への各気筒からの排気の影響の強さに注意を払って定められている。
【0102】
ここで、そのような補助空燃比フィードバック制御における目標値の変更制御に関して、図14のフローチャートを用いて説明する。ただし、この補助空燃比フィードバック制御における目標値の変更は、変更手段の機能を担うECU20の一部により実質的に実行される。
【0103】
ステップS1401では異常がある、つまり、気筒間空然比ばらつき異常があるか否かが判定される。上記図11のステップS1121で異常フラグがONにされると、その異常フラグに基づいて、ステップS1401で、気筒間空然比ばらつき異常があると判定される。
【0104】
ステップS1401で肯定判定されると、ステップS1403で、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が算出される。これは、上記ステップS1209で算出されたインバランス率で図15に表した如きマップ化されたデータを検索することで求められる。なお、図15に表されたようなデータは、触媒後センサ18への各気筒からの排気の当たり方、および、気筒間空然比ばらつき異常が発生しているときの排気中の成分(例えばH2)の変化特性つまり触媒後センサ18での検出値の真の空燃比相当値からの乖離度合いに着目して、いずれの気筒に問題がある場合にも平均して適合するように、予め実験により定められている。ただし、ここで求められる目標電圧は、規定のガード範囲内に定められている。なお、図15のデータは、気筒間空燃比のばらつき度合いが大きくなるほど、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧の変更量が略大きくなるように定められている。
【0105】
そして、そのように算出された目標電圧に、ステップS1405で、初期状態ではストイキ相当値である上記ストイキ相当センサ出力Vrefrに設定されている補助空燃比フィードバック制御における目標値が変更される。これにより、以後は、ステップS1403で算出された目標電圧が、補助空燃比フィードバック制御の目標値(本発明の第2所定目標値に相当)となり、それに触媒後センサ18の出力に基づく第2検出値が追従するように補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0106】
なお、図15から、変更後の目標電圧は、概ねストイキ相当値(例えば0.45V)よりも大きくなる(リッチ側の電圧になる)ことが理解できる。これは、上記したように、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、触媒後センサ18の検出値はストイキよりもリーン側にずれる傾向が強いからである。しかし、図15では明瞭に示されていないが、変更後の目標電圧はストイキ相当値よりも小さくなる(リーン側による)場合もあり得る。これは、例えば、エンジンの排気系の形状、大きさなどの構成による。ただし、補助空燃比フィードバック制御の変更後の目標電圧がストイキ相当値よりも必ず大きくなるように、データ等が構築されることを本発明は排除しない。
【0107】
以上述べたように、第1実施形態のエンジンでは、排気通路の触媒の前後にそれぞれ第1空燃比検出手段としての触媒前センサ17と第2空燃比検出手段としての触媒後センサ18とが設けられる。初期状態、始動直後、および、気筒間空然比ばらつき異常が検出されていない場合には、触媒前センサ17での検出値が第1所定目標値としてのストイキ相当値に追従するように主空燃比フィードバック制御が、および、触媒後センサ18での検出値が第2所定目標値としてのストイキ相当値に追従するように補助空燃比フィードバック制御が、空燃比フィードバック制御として実行される。これに対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合には、主空燃比フィードバック制御における第1所定目標値は変更されずに、補助空燃比フィードバック制御における初期状態では第1所定目標値に相当する第2所定目標値が上記したように定められるインバランス率に応じた値に変更される。つまり、インバランス率に対応する量、第2所定目標値は変更される。例えば、第2所定目標値は、ストイキ相当値(例えば0.45V)からリッチ側の値(例えば0.6V)に変更される。
【0108】
その結果、触媒後センサ18での検出値を変更後の第2所定目標値に追従させるように補助空燃比フィードバック制御が実行される。例えば、気筒間空燃比ばらつき異常が発生しているので、触媒前センサ17での検出値が概ねストイキ相当値であるが、触媒後センサ18での検出値がリーン側の低い値になっている場合を考える。この場合、上記したように、触媒後センサ18での検出値が真の値である。このときに、触媒後センサ18での検出値を変更後の第2所定目標値(例えば0.6V)に追従させるように補助空燃比フィードバック制御が実行されると、触媒前センサ17での検出値は補助空燃比フィードバック制御により大きな補正が成される結果ストイキからずれ得る。しかし、触媒前センサ17での検出値と触媒後センサ18での検出値との間に上記したようなずれまたは乖離が生じ得るので、触媒後センサ18での検出値をストイキ相当値に一致させるまたは近づけることができる。したがって、触媒前センサ17での検出誤差に伴う主空燃比フィードバック制御の問題を是正しつつ、排気空燃比をストイキ近傍に制御することができる。よって、適切に排気を浄化することができる。
【0109】
なお、第1実施形態では、出力変動パラメータXとして、出力差ΔA/Fnの絶対値の平均値が用いられた。しかし、例えば、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも出力変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内における触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークとの差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)、または2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値に基づいて、出力変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど、触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差は大きくなり、また2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値も大きくなるからである。
【0110】
また、上記第1実施形態では、気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、負パラメータX(−)と正パラメータX(+)との比較結果に基づいてリッチずれかリーンずれかが判定された。しかし、他の方法でリッチずれかリーンずれかが判定されてもよい。その一例が図16に基づいて説明される。なお、図16に基づいて以下説明される方法を適用して気筒間空然比ばらつき異常そのものの検出が行われてもよい。
【0111】
例えば図16(A)に示すように、#1気筒の燃料噴射量のみがストイキ相当量に対し40%の割合でリッチ側にずれており(すなわちインバランス率が+40%)、他の#2,#3,#4気筒では燃料噴射量がストイキ相当量となっている(すなわちインバランス率が0%)場合を想定する。このとき、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(B)に示すように、トータルの燃料噴射量がストイキ相当量となるように#1気筒では+30%のインバランス率、他の#2,#3,#4気筒ではそれぞれ−10%のインバランス率となる。このときにもやはり各気筒でストイキ相当量に対し+または−の噴射量ずれが生じている。よって1エンジンサイクル間で比較的大きな排気空燃比の変動が生じ、出力変動パラメータXの値は大きい。
【0112】
この図16(B)の状態から、例えば図16(C)に示すように、#1気筒の燃料噴射量をストイキ相当量の40%だけ強制的に減量する。こうすると#1気筒は−10%のインバランス率となり、他の#2,#3,#4気筒のインバランス割合と等しくなる。
【0113】
この状態から、#1気筒の燃料噴射量減量状態を維持しつつ、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(D)に示すように、各気筒の燃料噴射量が+10%ずつ補正され、各気筒の燃料噴射量がストイキ相当量になる(すなわち各気筒のインバランス割合は0%)。よって1エンジンサイクル間での排気空燃比の変動は小さくなり、出力変動パラメータXの値は小さくなる。
【0114】
このことから、燃料噴射量を強制的に所定量減量したときに出力変動パラメータXが所定値以上低下した気筒をインバランス気筒つまり異常気筒(特にリッチずれ異常気筒)と特定することができる。つまり、リッチずれと特定することができる。
【0115】
一方、図16(B)の状態から、例えば図16(E)に示すように、正常な#2気筒において燃料噴射量をストイキ相当量の40%だけ強制的に減量したとする。こうすると各気筒のインバランス率は#1気筒では変わらず+30%、#2気筒では−50%、#3,#4気筒では変わらずー10%となる。
【0116】
この状態から、#2気筒の燃料噴射量減量状態を維持しつつ、通常の空燃比フィードバック制御をある程度の時間実行すると、やがて図16(F)に示すように、トータルの燃料噴射量がストイキ相当量となるように#1気筒では+40%、#2気筒では−40%、#3,#4気筒では0%となる。この場合、1エンジンサイクル間での排気空燃比の変動は大きいままであり、出力変動パラメータXの値も大きいままである。
【0117】
このことから、燃料噴射量を強制的に所定量減量したときに出力変動パラメータXが所定値以上低下しなかった気筒はインバランス気筒つまり異常気筒ではなく、正常気筒であると特定することができる。
【0118】
図示しないが、逆のパターンで、例えば図16(A)の例のうち#1気筒のみが異常でその燃料噴射量が−40%少なくなっている(すなわちインバランス率が−40%)場合を想定する。すると、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量した場合に、出力変動パラメータXが所定値以上低下した気筒は異常気筒(特にリーンずれ異常気筒)であり、出力変動パラメータXが所定値以上低下しなかった気筒は正常気筒であると特定することができる。したがって、リーンずれを特定することができる。
【0119】
このように、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量または減量したときの増量または減量前後の出力変動パラメータXの変化量を検出し、この変化量が所定値以上である気筒は異常気筒、所定値未満である気筒は正常気筒というように異常気筒が特定されると共に、リッチずれかリーンずれかを特定することができる。なお、この場合、気筒毎に燃料噴射量を強制的に増量または減量する燃料噴射量変更制御の実行はECU20の一部により担われ、その部分は燃料噴射量変更制御手段と称され得る。また、この場合、そのような異常のある気筒の特定はECU20の一部により担われ、その部分は、異常検出手段の機能を担うECU20の一部に含まれ得、異常気筒特定部と称され得る。
【0120】
次に、本発明に係る第2実施形態が説明される。第2実施形態は、第1実施形態に対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合、いずれか1つの気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、インバランス気筒つまり異常気筒を特定して、その気筒からの排気の触媒後センサ(の検出値)への影響を特に考慮して、補助空燃比フィードバック制御の目標値を変更するという特徴を有する。以下では、この特徴に関して説明し、上記第1実施形態の説明と実質的に重複する説明は概ね省略される。例えば、第2実施形態のエンジンは、直列3気筒の内燃機関であること以外、第1実施形態の内燃機関と概ね同じ構成を有するので、ここでは上記符号を同様に用いて、第2実施形態の構成のさらなる説明は省略される。
【0121】
第2実施形態では、気筒間空然比ばらつき異常があるとき、仮にまたは暫定的に異常気筒を特定し、その異常気筒に適した第2所定目標値の変更が成される。以下に、図17のフローチャートに基づいて説明する。ただし、図17のステップS1701、S1705、S1707は、それぞれ、図14のステップS1401〜S1405に対応する。
【0122】
ステップS1701で気筒間空然比ばらつき異常があると肯定判定されると、ステップS1703で異常気筒が特定される。この異常気筒の特定は、図16に基づいて上記した方法で実行される。なお、ここでは、いずれか1つの気筒のみに異常があるものと仮定して、以下説明を続ける。
【0123】
ステップS1703で異常気筒が特定されると、次ぐステップS1705で補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が算出される。これは、ステップS1703で特定された気筒に適したデータを用いて実行される。図18には#1気筒に関するデータ、#2気筒に関するデータ、#3気筒に関するデータが重ねて表されている。ここで、ステップS1703で#1気筒が異常気筒と特定されたと仮定すると、#1気筒に関するデータを上記ステップS1209で算出されたインバランス率で検索することで目標電圧が求められる。なお、異常気筒と特定された気筒からの排気の触媒後センサ18への影響が強いほど、補助空燃比フィードバック制御の目標電圧つまり第2所定目標値のストイキ相当値からの変更量を多くするように図18のデータは定められている。異常気筒と特定された気筒からの排気の触媒後センサ18への影響が強いということは、その気筒からの排気が触媒後センサ18へ到達し易いまたは当たり易いということと関係する。具体的には、ここでは、図18のデータは、#1気筒からの排気は#2および#3気筒からの排気よりも触媒後センサ18への検出値に強く影響し、#2気筒からの排気は#3気筒からの排気よりも触媒後センサ18への検出値に強く影響するという関係に基づく。
【0124】
そして、そのように算出された目標電圧に、ステップS1707で、初期状態ではストイキ相当値である上記ストイキ相当センサ出力Vrefrに設定されている補助空燃比フィードバック制御における目標値が変更される。これにより、以後は、ステップS1403で算出された目標電圧が、補助空燃比フィードバック制御の目標値(本発明の第2所定目標値に相当)となり、それに触媒後センサ18の出力に基づく検出値が追従するように補助空燃比フィードバック制御が実行される。
【0125】
このように本第2実施形態は、上記第1実施形態に比べて、より触媒後センサ18への異常気筒からの排気の影響を考慮した制御を可能にする。それ故、本第2実施形態によれば、より適切に排気空燃比を制御し、排気エミッションを改善することができる。
【0126】
次に、本発明に係る第3実施形態が説明される。第3実施形態は、第1および第2実施形態に対して、気筒間空然比ばらつき異常が検出された場合、補助空燃比フィードバック制御の目標値を同様に変更するが、その目標値がさらにエンジン運転状態に応じて適宜変更されるという特徴を有する。以下では、この特徴に関して説明し、上記説明と実質的に重複する説明は概ね省略される。なお、以下では、第3実施形態に係るエンジンが第2実施形態に係るエンジンの全要素を実質的に備えるとして第3実施形態を説明するが、第3実施形態の特徴(エンジン運転状態に基づく目標値の補正)は第1実施形態に適用されてもよい。
【0127】
第3実施形態でも、図17および図18に基づいて補助空燃比フィードバック制御の目標値が変更されるように、同目標値が変更される。ただし、ステップS1705で算出される目標電圧は、目標電圧基準値とされる。
【0128】
補助空燃比フィードバック制御の目標値がその目標電圧基準値に変更されると、このように変更された目標値は、エンジン運転状態に基づいてつまりそのときの運転領域に基づいて適宜補正される。具体的には、その目標値はエンジン回転速度Neおよびエンジン負荷KLに基づいて適宜補正される。例えば、図19に示すようなエンジン負荷KLと補正係数との関係データを、適宜エンジン負荷で検索することで補正係数が求められる。そして、その補正係数がステップS1705で算出された目標電圧基準値に加算または乗算されて、目標電圧が求められ、その目標電圧に補助空燃比フィードバック制御の目標電圧が適宜変更される。なお、目標電圧基準値は、エンジン回転速度およびエンジン負荷のいずれか一方に基づいて補正されてもよい。
【0129】
運転状態に応じて排気流量は異なるので、運転状態に応じて排気の触媒後センサ18への影響が変化する。本第3実施形態は、上記したように運転状態に基づいて補助空燃比フィードバック制御の目標値の変更量を変えるので、上記第2実施形態に比べて、より触媒後センサ18への排気の影響を考慮した制御を可能にする。それ故、本第3実施形態によれば、より適切に排気空燃比を制御し、排気エミッションを改善することができる。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、上記3つの実施形態では、エンジンの始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみ気筒間空然比ばらつき異常の検出が行われ、その異常があるときに補助空燃比フィードバック制御の目標値が概ね一度のみ変更された(第3実施形態では、目標電圧基準値の変更はエンジンの始動後、それが停止するまでの間に、たった一度のみである)。しかし、適宜、気筒間空然比ばらつき異常の検出、インバランス率の導出および/または異常気筒の特定が行われて、補助空燃比フィードバック制御の目標値が変更されてもよい。また、上記実施形態では、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値つまりパラメータとして、インバランス率を用いたが、他の値が用いられてもよい。そのような値は、例えば、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値であるとよい。また、上記の数値はあくまで例示であり、他の値に変更可能である。
【0131】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
11 上流触媒コンバータ
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
20 電子制御ユニット(ECU)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された排気浄化用触媒よりも上流側の排気通路に設けられた第1空燃比検出手段と、
前記排気浄化用触媒よりも下流側の排気通路に設けられた第2空燃比検出手段と、
前記第1空燃比検出手段の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、前記第2空燃比検出手段の出力に基づく第2検出値が初期状態では前記第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、
気筒間空燃比のばらつき異常を検出するように構成された異常検出手段と、
該異常検出手段により気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、前記空燃比フィードバック制御における前記第2所定目標値を変更する変更手段と
を備えた、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値を求めるように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて、前記第2所定目標値を変更する、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値を求めるように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて前記第2所定目標値を変更する、
請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出および前記値の導出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒がいずれの気筒であるのかを特定するように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値および特定された気筒に応じて前記第2所定目標値を変更する、
請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記異常検出手段により特定された気筒からの排気の前記第2空燃比検出手段の第2検出値への影響が強いほど、前記第2所定目標値の変更量を多くするように、前記第2所定目標値を変更する、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記変更手段は、エンジン回転速度およびエンジン負荷の少なくともいずれか一方に基づいて前記第2所定目標値を変える、請求項2から5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記第1空燃比検出手段は広域空燃比センサを含み、前記第2空燃比検出手段はO2センサを含む、請求項1から6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
複数気筒を有する内燃機関の排気通路に配置された排気浄化用触媒よりも上流側の排気通路に設けられた第1空燃比検出手段と、
前記排気浄化用触媒よりも下流側の排気通路に設けられた第2空燃比検出手段と、
前記第1空燃比検出手段の出力に基づく第1検出値が第1所定目標値に追従するように、かつ、前記第2空燃比検出手段の出力に基づく第2検出値が初期状態では前記第1所定目標値に相当する第2所定目標値に追従するように、空燃比フィードバック制御を実行する空燃比フィードバック制御手段と、
気筒間空燃比のばらつき異常を検出するように構成された異常検出手段と、
該異常検出手段により気筒間空然比ばらつき異常が検出されたとき、前記空燃比フィードバック制御における前記第2所定目標値を変更する変更手段と
を備えた、内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す値を求めるように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて、前記第2所定目標値を変更する、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒の燃料噴射量がどれくらい燃料噴射量ずれを起こしていない気筒の燃料噴射量からずれているかを示す値を求めるように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値に応じて前記第2所定目標値を変更する、
請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、前記気筒間空燃比ばらつき異常の検出および前記値の導出に加えて、該異常がある場合に、いずれか1気筒のみが燃料噴射量ずれを起こしていると仮定して、該燃料噴射量ずれを起こしている気筒がいずれの気筒であるのかを特定するように構成され、
前記変更手段は、該異常検出手段により求められた値および特定された気筒に応じて前記第2所定目標値を変更する、
請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記異常検出手段により特定された気筒からの排気の前記第2空燃比検出手段の第2検出値への影響が強いほど、前記第2所定目標値の変更量を多くするように、前記第2所定目標値を変更する、請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記変更手段は、エンジン回転速度およびエンジン負荷の少なくともいずれか一方に基づいて前記第2所定目標値を変える、請求項2から5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記第1空燃比検出手段は広域空燃比センサを含み、前記第2空燃比検出手段はO2センサを含む、請求項1から6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−19334(P2013−19334A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153636(P2011−153636)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【特許番号】特許第5110194号(P5110194)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【特許番号】特許第5110194号(P5110194)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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