説明

内燃機関の排気エネルギー回収装置

【課題】内燃機関の排気エネルギー回収装置に関し、排気ガス性能や燃費性能の悪化を効果的に抑制しつつ、排気エネルギーの回収を効率的に行う。
【解決手段】ターボ過給機20よりも上流側に位置する排気系15,16とターボ過給機20よりも下流側に位置する吸気系11,12とを連通する高圧EGR通路25を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置1であって、高圧EGR通路25に、高圧EGR通路25を流れる環流排気からエネルギーを回収するエネルギー回収手段30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧EGR通路を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を使用する自動車エンジンや産業エンジン等への排気ガス規制は厳しくなる傾向にある。また、排気ガス規制と同様に、世界的な地球温暖化対応として、燃費規制も厳しくなる傾向にある。これらの規制に対応すべく、近年のエンジン技術開発としては、例えば、ハイブリッド化やエネルギー回生が急速に進んでいる。特に、内燃機関のエンジン本体においては、排気エネルギーを回収するターボコンパウンドエンジンのシステム開発が行われている。
【0003】
一般的に、内燃機関においては、ガソリンエンジンに対してディーゼルエンジンの方が熱効率は高く燃費も優れている。しかし、ディーゼルエンジンであっても、熱効率は40〜50%程度にとどまり、100%の燃料に対して55〜60%の燃料が損失されていることになる。係る損失のなかで排気損失が特に大きく、エンジンの熱効率を向上させるためには、排気エネルギーを効率よく回収することが有効と考えられている。
【0004】
このように、排気エネルギーを効率よく回収するシステムとして、例えば、エンジンの排気ガスライン上に取り付けたターボ過給機のターボシャフト本体に発電装置を組み込み、この発電装置で発電した電力でモータを駆動させるとともに、モータの駆動力をエンジンのアシスト力として、エンジン出力軸に連結されたギヤ又はベルトを介して伝達する排気エネルギー回収システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、エンジン排気ライン上にターボ過給機を設け、このターボ過給機よりも下流側のエンジン排気ラインにターボジェネレータを取り付けた排気エネルギー回収システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−33668号公報
【特許文献2】特開2007−85226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のターボ過給機のターボシャフト本体に発電装置を組み込んだシステムにおいては、ターボシャフト本体の重量が発電装置を有さない通常のターボ過給機のターボシャフト本体よりも増加する。したがって、発電を行っていない状態であっても、係る発電装置の重量によってターボの応答性が悪化し、エンジンの排気ガス性能や燃費性能も悪化する可能性がある。
【0008】
また、前述のターボ過給機よりも下流の排気通路にターボジェネレータを設けたシステムでは、ターボの応答性悪化は解消するものの、ターボジェネレータよりも前段で上流側に設けられたターボ過給機によって排気エネルギーが回収されてしまうため、排気エネルギーの回収効率が低下する。さらに、エンジンの排気ガスライン上にフリクションの大きいターボジェネレータを設けているので、エンジン本体の排気圧力損失(エンジンのポンピング)が増加され、エンジンの排気ガス性能や燃費性能が悪化する可能性がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、高圧EGR通路を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置に関し、内燃機関の排気ガス性能や燃費性能の悪化を効果的に抑制しつつ、排気エネルギーの回収を効率的に行うことができる内燃機関の排気エネルギー回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の排気エネルギー回収装置は、ターボ過給機よりも上流側に位置する排気系と前記ターボ過給機よりも下流側に位置する吸気系とを連通する高圧EGR通路を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置であって、前記高圧EGR通路には、前記高圧EGR通路を流れる環流排気からエネルギーを回収するエネルギー回収手段が設けられることを特徴とする。
【0011】
また、前記高圧EGR通路に前記環流排気を冷却するEGRクーラを有するとともに、前記エネルギー回収手段は、前記EGRクーラよりも環流排気流れの上流側に位置する前記高圧EGR通路に設けられるようにしてもよい。
【0012】
また、前記エネルギー回収手段は、前記高圧EGR通路に設けられるタービン翼と、前記タービン翼に接続されるともに、前記タービン翼の回転により発電する発電装置とを備えるようにしてもよい。
【0013】
また、前記発電装置で発電される電力で駆動する電動モータと、前記電動モータの出力軸と前記内燃機関の出力軸とを接続するとともに、前記電動モータの駆動力を前記内燃機関の出力軸に伝達する動力伝達手段とをさらに有するようにしてもよい。
【0014】
また、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状態検出手段によって検出される運転状態に応じて、前記発電装置の作動を制御する発電装置作動制御手段と、前記運転状態検出手段によって検出される運転状態に応じて、前記電動モータの作動を制御する電動モータ作動制御手段とをさらに有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の高圧EGR通路を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置によれば、内燃機関の排気ガス性能や燃費性能の悪化を効果的に抑制しつつ、排気エネルギーの回収を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置の制御部(ECU)を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置によるタービンジェネレータ作動制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置によるモータ作動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面により、本発明に係る一実施形態について説明する。
【0018】
図1〜4は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置1を説明するものである。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関は、6気筒のディーゼルエンジン(以下、エンジンという)10である。エンジン10の各気筒の吸気口には、吸気マニホールド11を介して吸気通路12が接続されている。また、吸気通路12には、上流側から順に、エアクリーナ13と、マスエアフローセンサ14と、ターボ過給機20を構成するコンプレッサ21と、吸気を冷却するインタクーラ23とが設けられている。また、エンジン10の各気筒の排出口には、排気マニホールド15を介して排気通路16が接続され、この排気通路16にはターボ過給機20を構成するタービン22が設けられている。
【0020】
ターボ過給機20は、いわゆる可変型ターボ過給機(バリアブル・ジオメトリー・ターボチャージャ)であって、可変翼(不図示)の角度調節により、タービン22への排気流通面積を調整し、タービン効率を制御するように構成されている。
【0021】
さらに、排気マニホールド15には、エンジン10から排出された排気の一部を高圧で吸気マニホールド11に再循環させる高圧EGR装置24が備えられている。この高圧EGR装置24には、タービンジェネレータ(エネルギー回収手段)30と、高圧EGR通路25と、EGRクーラ26と、EGR弁27とを備えている。本実施形態において、高圧EGR通路25は、排気マニホールド15と吸気マニホールド11とを連通するものとして説明するが、例えば、ターボ過給機20よりも上流の排気通路16とインタクーラ23よりも下流の吸気通路12とを連通するように構成してもよい。
【0022】
タービンジェネレータ30は、図1に示すように、EGRクーラ26よりも排気マニホールド15側の高圧EGR通路25に設けられたタービン翼31と、タービン翼31に接続されたタービンシャフト32と、タービンシャフト32に冷間焼き嵌めによって嵌合接合された永久磁石33と、超高速回転による永久磁石33の破壊を防ぐべく、外周を覆うように形成された繊維状のセラミックス材からなる円筒状のケース本体34とを備え構成されている。また、外周部であるケース本体34には、大量のコイル(不図示)が巻き付けられており、高圧EGR通路25を通って再循環される環流排気(以下、高圧EGRガスという)によってタービン翼31が回転され、タービンシャフト32が回転することによって、高出力の発電を可能に構成されている。
【0023】
また、図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置1は、コンバータ40と、バッテリ41と、インバータ42と、電動モータ43と、パワートレイン(動力伝達手段)44とを備え構成されている。
【0024】
コンバータ40は、タービンジェネレータ30から供給される交流電力を整流するとともに、所定電圧に変換した直流電力をバッテリ41へと供給する。また、バッテリ41は、コンバータ40から供給された直流電力を蓄電するとともに、この蓄電された直流電力をインバータ42へと供給する。また、インバータ42は、バッテリ41から供給される直流電力を所定周波数の交流電力に変換するとともに、この交流電力を電動モータ43へと供給するように構成されている。
【0025】
電動モータ43は高出力仕様のモータであって、タービンジェネレータ30からコンバータ40、バッテリ41、インバータ42を介して供給される電力で駆動する。また、電動モータ43の出力軸43aは、図1に示すように、図示しないギヤを備えたパワートレイン44を介してエンジン10の出力シャフト10aに接続されている。すなわち、電動モータ43は、タービンジェネレータ30で発電した電力をエンジン10の出力シャフト10aにエネルギー回生(エンジン10の出力をアシスト)するように構成されている。
【0026】
なお、本実施形態において、電動モータ43は高出力仕様のモータであるので、パワートレイン44にはギヤが用いられているが、例えば、ベルトや流体クラッチを介して電動モータ43の駆動力をエンジン10の出力シャフト10aに伝達するように構成することもできる。また、コンバータ40やインバータ42は別体に設けられるものとして説明したが、例えば、コンバータ40をタービンジェネレータ30に内蔵した一体型としてもよく、インバータ42を電動モータ43に内蔵した一体型とすることもできる。
【0027】
以上述べたように構成された排気エネルギー回収装置1には、エンジン10の各種制御を行うための電子制御ユニットであるECU60が設けられている。このECU60は、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。
【0028】
また、ECU60には、エンジン10の各種制御を行うために、エンジン回転センサ35、マスエアフローセンサ14、エンジンブーストセンサ36、アクセル開度センサ(不図示)等が電気配線を介して接続されており、これら各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0029】
また、ECU60には、基本エンジンマップ(横軸をエンジン回転数、縦軸を燃料噴射量としたマップ)が予め記憶されており、この基本エンジンマップと各種センサの検出値とに基づいて、エンジン10を最適な運転状態に制御している。
【0030】
さらに、ECU60は、図2に示すように、EGR制御部61と、タービンジェネレータ作動制御部(発電装置作動制御手段)62と、モータ作動制御部(電動モータ作動制御手段)63と、モータ作動加速判定部64と、バッテリ充電状態判定部65とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアであるECU60に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0031】
EGR制御部61は、高圧EGR装置24に設けられたEGR弁27の開度を調整することでEGRガス量を制御する。このEGR制御部61には、エンジン回転数及びエンジン負荷に応じたEGRガス量の目標値を示すEGRガス量マップが予め記憶されている。すなわち、EGR制御部61は、このEGRガス量マップからエンジン回転数及びエンジン負荷に応じた指示値を算出するとともに、算出した指示値を出力してEGR弁27の開度を調整することで、EGRガス量を制御するように構成されている。
【0032】
また、EGR制御部61は、エンジン10の過渡運転中における運転状態に応じたフィードバック過渡制御も行うように構成されている。このフィードバック過渡制御は、エンジン10の過渡運転中にターボ応答遅れ等によって吸気流量が低下する場合があり、係る吸気流量の低下を抑制するために行うものである。具体的には、EGR制御部61は、マスエアフローセンサ14やエンジンブーストセンサ36の出力値に応じてエンジン10の運転状態を判断する。そして、EGR制御部61は、この判断したエンジン10の運転状態に応じて、吸気流量を増加させるべくターボ過給機20の開度を絞る制御や、新規空気流量を増加させるべくEGR弁27の開度を減少させる制御等のフィードバック過渡制御を行うように構成されている。
【0033】
タービンジェネレータ作動制御部62は、タービンジェネレータ30の作動すなわち、タービンジェネレータ30による発電を制御する。このタービンジェネレータ作動制御部62には、横軸をエンジン回転数、縦軸を燃料噴射量としたタービンジェネレータ基本作動マップ(不図示)が予め記憶されている。また、このタービンジェネレータ基本作動マップにはタービンジェネレータ基本作動領域が設定されている。タービンジェネレータ基本作動領域としては、例えば、EGRガス量が多く且つ安定している状態で、エンジン回転数が中速領域以上でかつ、エンジン負荷も中負荷領域以上の運転領域が設定されている。すなわち、タービンジェネレータ作動制御部62は、エンジン10の運転状態がタービンジェネレータ基本作動領域にあるときに、タービンジェネレータ30に作動指令信号を出力するように構成されている。
【0034】
また、タービンジェネレータ作動制御部62は、EGR制御部61によるEGR弁27の制御に応じて、タービンジェネレータ30の作動も調整又は停止させるEGRフィードバック制御を行う。このEGRフィードバック制御は、エンジン10の運転状態がタービンジェネレータ基本作動マップ上のタービンジェネレータ基本作動領域にある場合であっても、EGR弁27の開度はEGR制御部61によるフィードバック過渡制御によって調整又は全閉されることがあり、これに伴いタービンジェネレータ30の作動も調整又は停止させるものである。
【0035】
さらに、タービンジェネレータ作動制御部62は、タービンジェネレータ30に設けられたタービンジェネレータ回転センサ(不図示)の検出値に応じて、エンジン10の過渡運転中にタービンジェネレータ30の作動を調整又は停止させるタービンジェネレータ回転数フィードバック制御も行う。このタービンジェネレータ回転数フィードバック制御は、タービンジェネレータ30の回転数が低下しすぎると十分な発電量を得られず、また、タービンジェネレータ30の負荷(フリクション)が増加しすぎると高圧EGRガスの応答性が悪化し、エンジン10の排気ガス性能にも悪影響を与えてしまうため、これらの現象を抑制するために行うのである。具体的には、基本エンジンマップ上にエンジン10の性能に影響を与えないタービンジェネレータリミット回転数(以下、リミット回転数という)を設定し、タービンジェネレータ回転センサの検出値がこのリミット回転数に達しているか否かで、タービンジェネレータ30の作動を調整又は停止するように構成されている。
【0036】
モータ作動制御部63は、バッテリ41からインバータ42を介して供給される交流電力で駆動する電動モータ43の作動を制御する。このモータ作動制御部63には、モータ作動基本マップ(不図示)が予め記憶されている。モータ作動基本マップは、横軸をエンジン回転数、縦軸をエンジン出力としたマップ上に、予め実験等で作成した電動モータ43によるアシスト効率を最大限に引き出すモータ作動領域が設定されている。すなわち、モータ作動制御部63は、モータ作動基本マップ上でエンジン10のエンジン回転数とエンジン出力とがモータ作動領域になった場合に、電動モータ43に作動指令信号を出力するように構成されている。
【0037】
モータ作動加速判定部64は、エンジン10にトルクアシストが必要となるエンジン10の加速要求状態を判定する。具体的には、モータ作動加速判定部64には、燃料流量センサ(不図示)の検出値が出力されている。モータ作動加速判定部64は、この燃料流量センサの出力に応じて、前回燃料噴射時の燃料流量に対する今回燃料噴射時の燃料流量の増加割合を算出してエンジン10の加速状態を判定する。そして、モータ作動加速判定部64は、エンジン10の運転状態が基本エンジンマップ上に設定された加速判定閾値を超えた場合に、エンジン10が加速要求状態にあると判定するとともに、電動モータ43に作動指令信号を出力する。この基本エンジンマップ上に設定された加速判定閾値は、エンジン10の過渡性能試験において、エンジン10の排気ガス性能や燃費性能で最もトルクが不足する領域を基準に設定される。すなわち、最もトルクが不足する領域を電動モータ43の基本作動領域に設定することにより、電動モータ43でエンジン10のアシストを効率的に行うことが可能となり、エンジン10の燃費性能が向上される。また、最もトルクが不足する領域を電動モータ43の基本作動領域に設定することにより、電動モータ43にこの基本作動領域を超えるような性能を持たせる必要がなくなり、電動モータ43のサイズ最適化も図ることができる。
【0038】
バッテリ充電状態判定部65は、バッテリ41の充電状態を判定するとともに、この判定に応じて電動モータ43の作動を制御する。具体的には、バッテリ充電状態判定部65には、バッテリセンサ38の検出値が出力されており、この出力値がバッテリ判定閾値より小さい場合はバッテリ41の充電量を少ないと判定する。そして、バッテリ充電状態判定部65は、バッテリ41の充電量は少ないと判定すると、エンジン10の運転状態が電動モータ43の基本作動領域にある場合であっても、電動モータ43に作動指令信号を出力しないように構成されている。
【0039】
本発明の一実施形態に係る排気エネルギー回収装置1は、以上のように構成されているので、例えば図3,4に示すフローチャートに従って以下のような制御が行われる。
【0040】
まず、図3に示す、タービンジェネレータ作動フローから説明する。本制御は、エンジン10の始動(キー操作ON)と同時にスタートする。
【0041】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、ECU60にエンジン回転センサ35の検出値が出力され、S110では、ECU60にアクセル開度センサの検出値が出力される。そして、S120では、S100とS110で出力されたエンジン回転数とアクセル開度とに基づいて燃料噴射量が算出される。
【0042】
S130では、タービンジェネレータ作動制御部62によって、エンジン回転数と燃料噴射量とが、タービンジェネレータ基本作動マップ上のタービンジェネレータ基本作動領域にあるか否かが確認される。エンジン回転数と燃料噴射量とが、タービンジェネレータ基本作動領域にある場合はS140へと進む。一方、エンジン回転数と燃料噴射量とが、タービンジェネレータ基本作動領域にない場合は前述のS100へと戻る。
【0043】
S140では、タービンジェネレータ作動制御部62によって、EGR制御部61のフィードバック過渡制御が行われているか否かが確認される。フィードバック過渡制御が行われていない場合はS150に進む。一方、フィードバック過渡制御が行われている場合は前述のS100へと戻る。
【0044】
S150では、タービンジェネレータ作動制御部62によって、タービンジェネレータ回転センサの検出値がリミット回転数に達しているか否かが確認される。タービンジェネレータ回転センサの検出値がリミット回転数よりも小さい場合は、S160でタービンジェネレータ30に作動指令信号が出力されて本制御はリターンされる。一方、タービンジェネレータ回転センサの検出値がリミット回転数以上の場合は、前述のS100へと戻る。その後、本制御はエンジン10が停止(キー操作OFF)されるまで繰り返し行われる。
【0045】
次に、図4に示す、モータ作動フローを説明する。本制御は、エンジン10の始動(キー操作ON)と同時にスタートする。
【0046】
S200では、ECU60にエンジン回転センサ35の検出値が出力され、S210では、ECU60にアクセル開度センサの検出値が出力される。そして、S220では、S200とS210で出力されたエンジン回転数とアクセル開度とに基づいて燃料噴射量が算出される。
【0047】
S230では、モータ作動制御部63によって、エンジン回転数と燃料噴射量とがモータ作動基本マップ上のモータ作動領域にあるか否かが確認される。エンジン回転数と燃料噴射量とがモータ作動領域にある場合はS240へと進む。一方、エンジン回転数と燃料噴射量とがモータ作動領域にない場合は前述のS200へと戻る。
【0048】
S240では、モータ作動加速判定部64によって、エンジン回転数と燃料噴射量とが基本エンジンマップ上に設定された加速判定閾値を超えたか否かが確認される。エンジン回転数と燃料噴射量とが加速判定閾値を超えた場合は、エンジン10の運転状態を加速要求状態にあると判定しS250へ進む。一方、エンジン回転数と燃料噴射量とが加速判定閾値を超えていない場合は、エンジン10の運転状態を加速要求状態にないと判定し、前述のS200へと戻る。
【0049】
S250では、バッテリ充電状態判定部65によって、バッテリ41の充電状態が判定される。バッテリセンサ38の検出値がバッテリ判定閾値以上の場合はバッテリ41の充電量は十分にあると判定する。そして、S260でモータ作動制御部63から電動モータ43に作動指令信号が出力されて本制御はリターンされる。一方、バッテリセンサ38の検出値がバッテリ判定閾値より小さい場合は、バッテリ41の充電量を少ないと判定して前述のS200へと戻る。その後、本制御はエンジン10が停止(キー操作OFF)されるまで繰り返し行われる。
【0050】
上述のような構成により、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気エネルギー回収装置1によれば以下のような作用・効果を奏する。
【0051】
本実施形態において、エンジン10の排気からエネルギーを回収するタービンジェネレータ30は、排気通路16(排気ライン上)ではなく高圧EGR通路25に設けられている。
【0052】
したがって、例えばタービンジェネレータ30を排気ライン上に設けた排気エネルギー回収システムで生ずる排気圧力増加やポンピング損失増加、係る排気圧力増加やポンピング損失増加による燃費性能や排気ガス性能の悪化を効果的に抑制しつつ、環流排気から排気エネルギーを効率的に回収することができる。
【0053】
また、エンジン10の排気からエネルギーを回収する排気エネルギー回収装置1は、高圧EGR通路25に設けられたタービンジェネレータ30によって構成され、ターボ過給機20には、発電装置等が組み込まれていない。
【0054】
したがって、例えばターボ過給機20のターボシャフト本体に発電装置を組み込んだ排気エネルギー回収システムで生ずるターボ効率やターボ応答性の悪化、係る悪化による排気ガス性能や燃費性能の悪化を効果的に抑制しつつ、環流排気から排気エネルギーを効率的に回収することができる。
【0055】
また、タービンジェネレータ30は、EGRクーラ26よりも排気マニホールド15側(高圧EGRガス流れの上流側)に位置する高圧EGR通路25に設けられている。すなわち、高圧EGRガスはEGRクーラ26に達する前に、EGRクーラ26よりも高圧EGRガス流れの上流側に位置して設けられたタービンジェネレータ30を通過することになる。
【0056】
したがって、例えば、タービンジェネレータ30に達する直前の高圧EGRガス温度が700℃の場合、タービンジェネレータ30を通過した後の高圧EGRガス温度は、タービンジェネレータ30によって550℃程度まで低下されるので、高圧EGRガスを吸気マニホールド11に戻す前に冷却するEGRクーラ26の仕事量を低減することができ、エンジン10の冷却損失を低減させてエンジン10の燃費性能も向上することができる。
【0057】
また、タービンジェネレータ30によって発電された電力は、コンバータ40を介してバッテリ41に蓄電され、さらにインバータ42を介して電動モータ43へと供給される。そして、電動モータ43に供給された電力は、電動モータ43を駆動させるとともに、係る電動モータ43の駆動力はパワートレイン44を介してエンジン10の出力シャフト10aにアシスト力として伝達される。
【0058】
したがって、高圧EGRガスから回収したエネルギーを効率的にエンジン10へとエネルギー回生しつつ、エンジン10の燃費性能を効果的に向上することができる。
【0059】
また、タービンジェネレータ30の作動は、タービンジェネレータ作動制御部62によって、エンジン10の過渡運転中にタービンジェネレータ回転センサの検出値がリミット回転数に達した場合は停止される。
【0060】
したがって、エンジン10の過渡運転中にタービンジェネレータ30の負荷(フリクション)が増加して高圧EGRガスの応答性やエンジン10の排気ガス性能が悪化することを効果的に抑制することができる。
【0061】
また、モータ作動加速判定部64は、エンジン10の運転状態が基本エンジンマップ上に設定された加速判定閾値を超えた場合に、エンジン10が排気ガス性能や燃費性能で最もトルクが不足する加速要求状態にあると判定するとともに、電動モータ43に作動指令信号を出力する。そして、作動指令信号に基づいて作動する電動モータ43の駆動力は、パワートレイン44を介してエンジン10の加速アシスト力として伝達される。
【0062】
したがって、エンジン10の排気ガス性能や燃費性能で最もトルクが不足する加速要求状態において、電動モータ43の駆動力をエンジン10のアシスト力として効率的に伝達することが可能となり、エンジン10の排気ガス性能や燃費性能を向上することができる。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0064】
上述の実施形態において、エネルギー回収手段として、発電機能を備えたタービンジェネレータ30を用いて説明したが、例えば、タービン翼31に取り付けられたタービンシャフト32をクラッチやギヤを介してエンジン10の出力シャフト10aに接続するように構成することもできる。
【0065】
また、エンジン10は6気筒に限られず、単気筒やそれ以上の気筒を備えた複数気筒のエンジンにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ディーゼルエンジン(内燃機関)
11 吸気マニホールド(吸気系)
12 吸気通路(吸気系)
15 排気マニホールド(排気系)
16 排気通路(排気系)
25 高圧EGR通路
26 EGRクーラ
30 タービンジェネレータ(エネルギー回収手段)
31 タービン翼
43 電動モータ
44 パワートレイン(動力伝達手段)
60 ECU
62 タービンジェネレータ制御部(発電装置作動制御手段)
63 モータ作動制御部(電動モータ作動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機よりも上流側に位置する排気系と前記ターボ過給機よりも下流側に位置する吸気系とを連通する高圧EGR通路を有する内燃機関の排気エネルギー回収装置であって、
前記高圧EGR通路には、前記高圧EGR通路を流れる環流排気からエネルギーを回収するエネルギー回収手段が設けられる
ことを特徴とする内燃機関の排気エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記高圧EGR通路に前記環流排気を冷却するEGRクーラを有するとともに、
前記エネルギー回収手段は、前記EGRクーラよりも環流排気流れの上流側に位置する前記高圧EGR通路に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記エネルギー回収手段は、
前記高圧EGR通路に設けられるタービン翼と、
前記タービン翼に接続されるともに、前記タービン翼の回転により発電する発電装置と、を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の排気エネルギー回収装置。
【請求項4】
前記発電装置で発電される電力で駆動する電動モータと、
前記電動モータの出力軸と前記内燃機関の出力軸とを接続するとともに、前記電動モータの駆動力を前記内燃機関の出力軸に伝達する動力伝達手段と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項3記載の内燃機関の排気エネルギー回収装置。
【請求項5】
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段によって検出される運転状態に応じて、前記発電装置の作動を制御する発電装置作動制御手段と、
前記運転状態検出手段によって検出される運転状態に応じて、前記電動モータの作動を制御する電動モータ作動制御手段と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項4記載の内燃機関の排気エネルギー回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21511(P2012−21511A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161936(P2010−161936)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】