説明

内燃機関の排気制御装置

【課題】内燃機関の冷間始動時における浄化触媒の活性化と、吹き上がり及びポンプロスの改善を両立させた排気制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の排気制御装置で、排気管EPとターボチャージャ10のタービン14を迂回した排気バイパス管8とを設け、これを開閉する弁手段9を設ける。さらにタービンに流込む排気ガス量を調整する排気流量調整手段16並びに、弁手段9及び排気流量調整手段16の駆動を制御する制御手段20を備える。また弁手段9を所定の開度としたときの排気バイパス管8の流路抵抗が、排気流量調整手段16により排気管内を流れる排気ガス流量を所定量としたときの排気管の流路抵抗より小さく設定する。制御手段20は触媒温度が所定温度より低いときに、排気流量調整手段16により排気ガス流量を前記所定量以下とすると共に、前記弁手段9の開度を前記所定の開度以上とする昇温制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ(過給機)を備えた内燃機関の排気制御装置に関する。特に、内燃機関が冷間始動された時のように、排気浄化触媒の低温時に内燃機関が始動(クランキング開始)されたときに有効に機能する排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ターボチャージャを備えた内燃機関の割合が増加しつつある。そして、このようにターボチャージャ備えた内燃機関については、ターボチャージャを迂回するように排気バイパス管を設けると共に、この排気バイパス管の途中にウエイストゲートバルブ(WGV:Waste Gate Valve)を配備する構造が従来から知られている。この構造を備えると、過給圧が一定値以上となったときにウエイストゲートバルブを開くことで、排気ガスを排気バイパス管側に流すことができるので過給圧が過度に高くなるのを防止できる。
【0003】
ところで、内燃機関の排気管の下流には排気ガスを浄化するために排気浄化触媒が配備されている。排気浄化触媒は所定温度以上であるときに活性化して排気ガス中の汚染物資を効率良く捕捉できる。上記のようにターボチャージャの過給圧が高くなる状況のときは、一般に内燃機関が暖機され高負荷運転の状態であり排気ガス温度が高いので排気浄化触媒が十分に機能している。よって、排気ガスを本来の排気経路である排気管、或いは排気バイパス管側のいずれに流しても排気浄化触媒で排気ガスを浄化できる。
【0004】
一方、内燃機関が冷間始動された場合などでは、排気ガス温度が低く排気浄化触媒が不活性な状態にある。このような状況で、排気ガスをターボチャージャのタービンを介してから排気浄化触媒に流すと、周辺に熱が奪われてしまうので排気浄化触媒の活性化に時間を要してしまう。そこで、例えば特許文献1では、排気浄化触媒を早期に活性化する構造を備えた内燃機関の排気装置を提案している。この排気装置も排気管にターボチャージャを迂回する排気バイパス管が設けられており、この排気バイパス管に排気バイパス弁(ウエイストゲートバルブ)が配設されている。そして、ターボチャージャのタービンヘの排気ガス流を制御する排気遮断弁が更に配備されている。この装置は、排気浄化触媒の非活性時に排気遮断弁を全閉にすると共に、排気バイパス弁を開弁する。すなわち、特許文献1の排気装置は、排気浄化触媒を昇温させるときに、排気ガスを排気バイパス管側に流す制御を実行する。このように制御することにより、排気ガスが通過する流路を短くできるので、周辺に吸収される熱量を抑制して排気浄化触媒の昇温を促進できる。
【0005】
【特許文献1】特開平2001−107722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では排気バイパス管に排気ガスを流す場合の流路抵抗については検討していない。なお、ここでの流路抵抗とは配管や通路に排気ガスを流したときに、排気ガスが受ける抵抗である。メインの排気経路、すなわち排気管は流路抵抗を抑制できるように設計されている。しかし、上記排気バイパス管は補助的な排気経路であため流路抵抗について十分な検討がなされていない場合が多い。よって、通常、排気バイパス管の方が排気管よりも流路抵抗が大きいという実情がある。
【0007】
よって、特許文献1で開示する排気装置で、排気浄化触媒を昇温するため排気遮断弁を閉じると共にウエイストゲートバルブを開いて、排気バイパス管側へ排気ガスを流したときに流路抵抗が増加してまう。その結果、この排気装置は、内燃機関の始動時における吹き上がり(運転性、運転応答性)の悪化及びポンプロスの増大が懸念される。さらに、特許文献1の排気装置は、ターボチャージャのタービンヘの排気ガス流量を制御するため排気管に排気遮断弁を配備しているので、製造コストが上昇するという点でも問題がある。
【0008】
本発明の主な目的は、内燃機関の冷間始動時における浄化触媒の活性化と、吹き上がり及びポンプロスの改善を両立させることができる排気制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、内燃機関から排出される排気ガスをターボチャージャのタービンを介して排気浄化触媒へ流す排気管と、前記タービンに流れ込む排気ガスの流量を調整する排気流量調整手段と、前記排気流量調整手段より上流の前記排気管と、前記ターボチャージャと前記排気浄化触媒との間の前記排気管とを接続する排気バイパス管と、前記排気バイパス管を開閉する弁手段とを備えた内燃機関の排気制御装置であって、前記排気バイパス管の流路抵抗と前記排気管の流路抵抗とについて、少なくとも前記弁手段を所定の開度としたときの前記排気バイパス管の流路抵抗が、前記排気流量調整手段により排気ガス流量を所定量としたときの前記排気管の流路抵抗より小さく設定してあり、前記排気流量調整手段及び前記弁手段の駆動を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、前記排気浄化触媒が所定温度より低いときに、前記排気流量調整手段により排気ガス流量を前記所定量以下とすると共に、前記弁手段の開度を前記所定の開度以上とする昇温制御を実行する内燃機関の排気制御装置によって達成される。
【0010】
本発明によると、弁手段を所定の開度としたときの排気バイパス管の流路抵抗が、排気流量調整手段により排気ガス流量を所定量としたときの排気管の流路抵抗より小さく設定されており、制御手段は触媒温度が所定温度より低いときに排気流量調整手段及び前記弁手段を制御して、排気ガスを排気バイパス管側へ流す。よって、この排気制御装置は、内燃機関の冷間始動時などのように触媒温度が低いときに、吹き上がり及びポンプロスの悪化を抑制しつつ、排気浄化触媒を早期に昇温させることができる。
【0011】
そして、前記排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記触媒温度検出手段が検出した触媒温度が前記所定温度より低いときに、前記排気流量調整手段により前記排気ガス流量を最も絞る全閉状態にすると共に前記弁手段を全開とする昇温制御を実行するように構成してもよい。この場合には、より確実に吹き上がり及びポンプロスの悪化を抑制し、排気浄化触媒を早期に昇温させることができる。
【0012】
また、前記排気流量調整手段は、排気ガスの流量を変更可能とする前記ターボチャージャのタービン側に設けた可変ノズル構造とすることができる。このような構造を採用すると構成を簡素化できるので更に製造コストの低減化を図ることもできる。
【0013】
だだし、前記排気流量調整手段は、前記ターボチャージャの上流に配置した排気遮断弁としてもよい。この場合には、内燃機関の吹き上がり及びポンプロスの悪化を抑制しつつ、排気浄化触媒を早期に昇温させることができる。
【0014】
そして、前記制御手段は、前記内燃機関の始動前に前記昇温制御を実行するようにしてもよい。この場合には、排気ガスを内燃機関の始動時から排気バイパス管側を介して排気浄化触媒へ流して昇温に供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、内燃機関の冷間始動時における浄化触媒の活性化と、吹き上がり及びポンプロスの改善を両立させた排気制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例を説明する。図1は、実施例に係る排気制御装置が適用されている内燃機関(以下、エンジンと称す)の概略を示した図である。
【0017】
エンジン1における燃焼に必要な空気は吸気管SPによって供給される。吸気管SPには、上流側からエアクリーナ2、ターボチャージャ10のコンプレッサ12、インタクーラ3が配備されている。よって、空気はエアクリーナ2でろ過されてから、ターボチャージャ10のコンプレッサ12で圧縮され、インタクーラ3で冷却され、吸気マニホルド4を介してエンジン本体5の各気筒に分配される。上記とは逆に、各気筒において発生した排気ガスは排気マニホルド6で集められて排気管EPへ排出される。この排気管EPには、上流側からターボチャージャ10のタービン14、排気浄化触媒となる触媒コンバータ7が配備されている。よって、排気ガスはタービン14を通過した後、最後に触媒コンバータ7で浄化されて排出される。
【0018】
ターボチャージャ10による過度の過給を防止すべく、従来の排気装置と同様にタービン14を迂回して排気ガスを流す排気バイパス管8が配設されている。そして、排気バイパス管8の途中には、この排気バイパス管8を開閉する弁手段となるウエイストゲートバルブ(WGV)9が設けられている。ウエイストゲートバルブ9はWGV用アクチュエータ90によって開閉される。
【0019】
ターボチャージャ10のタービン14側では、タービンロータ(タービンホイール、タービンブレードなどとも称される)15が排気ガスによって回転される。反対側のコンプレッサ12のコンプレッサロータ13は、軸11によりタービンロータ15と接続されているため、タービンロータ15と共に回転して吸入空気を圧縮する。すなわちターボチャージャ10は過給作用を奏する。
【0020】
そして、上記ターボチャージャ10は、いわゆるバリアブルノズル式のターボチャージャであり、タービン14には後に詳細に説明するように、開度の可変な複数のノズルベーン(NV)16が設けられている。これにより、ノズルベーン16間に形成されるタービンノズルの面積(排気ガスの通路面積)を変えることができるようになっている。ノズルベーン16の開度はNV用アクチュエータ40によって調節される。
【0021】
さらに、エンジン1の回転数NEを検出する回転数センサ21、エンジンの負荷LDを検出する負荷センサ22などが配備されている。そして、エンジン1の駆動を全体的に制御するコントローラ20が配備されている。上記各センサからの各信号はコントローラ20に入力されており、コントローラ20はこれらの信号に基づいてエンジン本体5及びターボチャージャ10の駆動を制御する。なお、コントローラ20は、ECU(Electronic Control Unit)を中心に形成したマイコンであり、制御に関連する一連のデータ、プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、処理を行う際の領域を提供するRAM(Random Access Memory)などを備えている。
【0022】
以上で説明した構成は、ターボチャージャを備えた従来のエンジンと同様であるが、本実施例のエンジン1には新規な排気制御装置が組込まれている。この排気制御装置は、冷間始動時などのように触媒温度が低いときに、エンジンの吹き上がり及びポンプロスの悪化を抑制しつつ、触媒コンバータ7を昇温させる。以下、更に排気制御装置に係る構成について説明する。
【0023】
触媒コンバータ7の温度THを検出する触媒温度センサ25が配備されている。この触媒温度センサ25からの信号についても上記コントローラ20に供給されている。よって、コントローラ20は前述した回転数センサ21及び負荷センサ22からの信号と共に、触媒温度センサ25からの信号に基づいてエンジン1が始動(クランキング開始)するときの触媒コンバータ7の温度を確認できる。
【0024】
また、図2はバリアブルノズル式ターボチャージャ10の構造例を示した図である。特に、図2はノズルベーン16の開度調整に関連する可変ノズル構造部分を模式的に示している。タービンロータ15に排気ガスを導くタービン入口のガス通路には、開度の可変な複数のノズルベーン16が設けられている。ノズルベーン16の開度は、リンク19を介して駆動リング18を回動することによって調整されるようになっており、リンク19はNV用アクチュエータ40のロッド48に連結されている。
【0025】
図2において、ロッド48が左側へ移動されると、ノズルベーン16がピン17を中心として反時計方向に回動してその開度が大きくなる。その結果として、ノズルベーン16間に形成されるタービンノズルの面積が大となる。これとは逆に、ロッド48が右側へ移動されると、ノズルベーン16はピン17を中心として時計方向に回動してその開度が小さくなる。その結果として、ノズルベーン16間に形成されるタービンノズルの面積が小となる。
【0026】
アクチュエータ40には、ダイアフラム41によって隔成されたダイアフラム室42が形成されている。ダイアフラム41には、ロッド48が連結されている。また、ダイアフラム41は、スプリング43によってノズルベーン16を閉じる方向に付勢されている。ダイアフラム室42の入口ポート44は、バキュームレギュレーティングバルブ(VRV)50に接続されている。このVRV50はバキュームポンプ52に接続されている。また、VRV50は、上記コントローラ20に接続されており、コントローラ20からの信号に基づきバキュームポンプ52からの負圧と大気ポート51からの大気圧とを用いて圧力を調整し、ダイアフラム室42に導入する。なお、本実施例では、ダイアフラム室42に大気圧が導入された場合にノズルベーン開度が最小となる。その結果、ノズルベーン間に形成されるタービンノズル面積も最小となる。このバリアブルノズルはノーマルクローズ型である。なお、図2に示したターボチャージャ10のノズルベーン16の構造は、タービン14に流れ込む排気ガス流量を調整する可変ノズル構造の一例である。
【0027】
さらに、再度図1を参照して説明すると、コントローラ20はWGV用アクチュエータ90を制御してウエイストゲートバルブ9(以下、WGV9とする)を開閉する。また、コントローラ20はNV用アクチュエータ40を制御して、ターボチャージャ10のノズルベーン16(以下、NV16とする)の開度を調整してタービンノズルの面積を変えることで排気管EPに流す排気ガス量を調整する。特に、触媒コンバータ7の昇温制御を実行するときに、コントローラ20はWGV9を全開にすると共に、NV16の開度を最も絞った状態(全閉状態と称す)を形成してタービンノズルを絞る。
【0028】
さらに、本実施例装置は排気ガスが流される排気管EPと排気パイパス管8との間に一定の関係が設定されている。上記のようにコントローラ20がWGV9全開かつNV16全閉の状態を形成したときには、実質的に排気バイパス管8へのみ排気ガスが流れることになる。これと逆の場合には、WGV9全閉かつNV16全開の状態となる。このときには、排気管EPへのみ排気ガスが流れる。前述したように従来の一般的な排気装置ではメインの排気経路である排気管EPの流れに配慮しているので排気ガスを流したときの流路抵抗は排気管EP側が小さい。すなわち、排気管EPに排気ガスを流した時の方がスムーズに流れる。
【0029】
上記に対して、本実施例ではWGV9全開かつNV16全閉の状態を形成して排気バイパス管8に排気ガスを流した時の流路抵抗が、WGV9全閉かつNV16全開の状態を形成して排気管EPに排気ガスを流した時の流路抵抗よりも小さくなるように設計してある。すなわち、仮にWGV9及びNV16を共に全開状態としたときには、図3で示すバイパス管経路BRの方が、排気管経路MRより流れ易いように設計されている。これを実現する具体的な構造としては、例えば排気バイパス管8側の流路面積(横断面積)AexBを、排気管EPの流路面積AexEより大きくすればよい。ただし、排気管EPの流路面積AexEは従来の排気装置と同程度に維持することが好ましい。よって、本実施例装置では排気バイパス管8側の流路面積AexBを、従来の排気装置の場合と比較して拡径することで実現できる。
【0030】
コントローラ20は触媒コンバータ7の昇温を図るときに、WGV9全開かつNV16全閉の状態を形成する。ここで、上記のように流路抵抗が設定してあるので、排気ガスが排気バイパス管8側へスムーズに流れることになる。よって、エンジン1は触媒コンバータ7の昇温制御時に吹き上がりが悪化したり、ポンプロスが増加したりするのを抑制できる。
【0031】
図4は、コントローラ20が実行する触媒コンバータ7の昇温制御に係るルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンは、例えばイグニッションスイッチが回されたときに起動される。
【0032】
コントローラ20は、上記センサ21、22から信号に基づいてエンジン1が始動(クランキング開始)したことを確認すると(S11)、触媒温度センサ25の信号により触媒コンバータ7の温度THを検出する。そして、確認した触媒温度THが、予め定めた所定温度Tcより低いか否かを判断する(S12)。触媒温度THが所定温度Tcより低い場合、コントローラ20はエンジン1が冷間始動されたものと判断する。そして、前述したWGV9全開かつNV16全閉とすることにより触媒コンバータ7の昇温制御を実行する(S13)。よって、エンジン1の始動時での吹き上がりの改善及びポンプロスの低減を図りながら、触媒コンバータ7を早期に活性化できる。
【0033】
一方、上記ステップS12で触媒温度THが所定温度Tc以上である場合、コントローラ20はエンジン1が十分に暖機されていると判断して、WGV9全閉として(S14)排気ガスを排気管EPに流し、通常通りにターボチャージャ10を制御する(S15)。すなわち、ターボチャージャ10のノズルベーン(NV)16の開度をエンジン回転数NE及びエンジン負荷LDに応じて制御する。
【0034】
なお、上記図4で示したフローチャートでは最初にステップ11を設け、エンジン1の始動後に触媒温度を確認してWGV9全開かつNV16全閉の状態を形成するようにしている。しかし、このような制御フローに限定するものではない。クランキング開始前から触媒温度センサ25で触媒温度を検出して、WGV9全開かつNV16全閉の状態を形成するようにしてもよい。このように制御すると、エンジン1の始動直後の排気ガスから排気バイパス管8へ流すことができるので昇温を促進できる。この場合の制御に係るフローチャートは、図4におけるステップ11を削除しイグニッションスイッチが回されたときに、コントローラ20が触媒温度センサ25からの信号で触媒温度を検出し、所定温度Tcより低いか否かを判断すればよい。
【0035】
以上で説明した実施例は、ターボチャージャ10の可変ノズル構造を利用して排気管EPの開度調整を行うので、前述した従来装置のようにタービンヘの排気ガス流量を制御する排気遮断弁を設ける必要がない。すなわち、タービンに流れ込む排気ガスの流量を調整する排気流量調整手段が、可変ノズル構造により実現されている。よって、上記実施例装置は、エンジンの始動時における吹き上がり及びポンプロスの改善を図りつつ排気浄化触媒を昇温できるという第1の効果だけでなく、排気遮断弁を用いないので構成を簡素化できるという第2の効果も得られる。したがって、上記実施例装置は従来の排気装置と比較して製造コストも低減できる。
【0036】
だだし、上記実施例の装置を変形して、上記第1の効果だけを得る排気制御装置を備えたエンジンとしてもよい。図5は上記実施例装置の変形例であり、ターボチャージャ10の上流に従来装置と同様に排気遮断弁61を配置したエンジン60である。なお、図1のエンジン1と同様の部位には、同じ符号を付すことで重複する説明は省略する。
【0037】
このエンジン60の場合も、排気バイパス管8の流路抵抗が排気管EPの流路抵抗より小さく設定されている点については上記エンジン1と同様である。よって、このエンジン60によっても、冷間始動されて触媒温度が低いときに、吹き上がり及びポンプロスの悪化を抑制しつつ、触媒コンバータ7を昇温させることができる。
【0038】
なお、上記した実施例は、より好ましい形態として、触媒コンバータ7の温度を検出する触媒温度センサ25が配備してある。そして、コントローラ20は、触媒温度THが所定温度Tcより低いことを確認した場合に、WGV9全開かつNV16全閉とする昇温制御を実行する。これにより、エンジン1の状態を良好に維持しつつ触媒コンバータ7を昇温できる。しかし、エンジン1の運転状態から触媒コンバータ7の温度を推定できるような場合には、触媒温度センサ25を省略して排気制御装置を形成してもよい。
【0039】
また、上記実施例ではWGV9及びNV16を共に全開状態としたときに、バイパス管経路BRの方が排気管経路MRより流れ易いように設計されていた。しかし、排気バイパス管8の流路抵抗と排気管EPの流路抵抗との関係についても、これに限るものではない。WGV9を所定の開度としたときの排気バイパス管8の流路抵抗が、NV16により排気管EP内を流れる排気ガス流量を所定量としたときの流路抵抗より小さくなるように設定してもよい。そして、コントローラ20が触媒コンバータ7の温度が所定温度より低いときに、NV16により排気ガス流量を所定量以下とすると共に、WGV9の開度を所定の開度以上とする昇温制御を実行すればよい。
【0040】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例に係る排気制御装置が適用されている内燃機関の概略を示した図である。
【図2】バリアブルノズル式ターボチャージャの構造例を示した図である。
【図3】排気バイパス管と排気管の流路抵抗の関係を説明するために示した図である。
【図4】コントローラが実行する触媒コンバータの昇温制御に係るルーチンの一例を示したフローチャートである。
【図5】実施例装置の変形例の排気制御装置について示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン(内燃機関)
7 触媒コンバータ(排気浄化触媒)
8 排気バイパス管
9 ウエイストゲートバルブ(弁手段)
10 ターボチャージャ
14 タービン
16 ノズルベーン
20 コントローラ(制御手段)
25 触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
EP 排気管
TH 触媒温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスをターボチャージャのタービンを介して排気浄化触媒へ流す排気管と、
前記タービンに流れ込む排気ガスの流量を調整する排気流量調整手段と、
前記排気流量調整手段より上流の前記排気管と、前記ターボチャージャと前記排気浄化触媒との間の前記排気管とを接続する排気バイパス管と、
前記排気バイパス管を開閉する弁手段とを備えた内燃機関の排気制御装置であって、
前記排気バイパス管の流路抵抗と前記排気管の流路抵抗とについて、少なくとも前記弁手段を所定の開度としたときの前記排気バイパス管の流路抵抗が、前記排気流量調整手段により排気ガス流量を所定量としたときの前記排気管の流路抵抗より小さく設定してあり、
前記排気流量調整手段及び前記弁手段の駆動を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記排気浄化触媒が所定温度より低いときに、前記排気流量調整手段により排気ガス流量を前記所定量以下とすると共に、前記弁手段の開度を前記所定の開度以上とする昇温制御を実行する、ことを特徴とする内燃機関の排気制御装置。
【請求項2】
前記排気浄化触媒の温度を検出する触媒温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記触媒温度検出手段が検出した触媒温度が前記所定温度より低いときに、前記排気流量調整手段により前記排気ガス流量を最も絞る全閉状態にすると共に前記弁手段を全開とする昇温制御を実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項3】
前記排気流量調整手段は、排気ガスの流量を変更可能とする前記ターボチャージャのタービン側に設けた可変ノズル構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項4】
前記排気流量調整手段は、前記ターボチャージャの上流に配置した排気遮断弁である、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記内燃機関の始動前に前記昇温制御を実行することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関の排気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−285222(P2007−285222A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114627(P2006−114627)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】