説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】この発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、脱離水分による触媒浄化能力の低下を抑制できる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内燃機関10の始動後、排気切替バルブ26の開度を第1開度とし、吸着材(吸着ユニット22、NOx吸着材24)に排気ガス中のHC、水分及びNOxを吸着させる。その後、吸着材の吸着完了を判定し、吸着完了の場合には、排気切替バルブ26の開度を第2開度とする。その後、下流触媒18の活性を判定し、活性の場合は、排気切替バルブ26の開度を第3開度とし、吸着材からHC、水分及びNOxを脱離させる。排気切替バルブ26の開度を第3開度とする以前に排気ガス還流通路28を開いて、脱離したHC、水分及びNOxを還流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、詳しくは、排気通路における触媒の上流に、排気ガス中の未浄化成分を吸着するための吸着材を備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、排気通路に設けられた触媒の上流側において、該排気通路の一部をバイパスするバイパス通路と、該バイパス通路に介装された吸着材と、該排気通路に流す排気ガスと該バイパス通路に流す排気ガスとの流量比を制御する制御手段と、を備えた内燃機関の排気浄化装置が開示されている。上記吸着材は、排気ガス中に含まれる未浄化成分を低温時に吸着して高温時に脱離する機能を有し、上記触媒は、高温で活性化する機能を有している。
【0003】
内燃機関の冷間始動後など排気ガスの温度が低い場合には、排気ガス中の未浄化成分を上記触媒で浄化することが困難である。このため、特許文献1では、上記制御手段を実行し、排気ガスの流れを制御する。具体的には、バイパス通路を開き、その後、一旦バイパス通路を閉じてから再度バイパス通路を開く制御を実行する。こうすることで、未浄化成分を上記吸着材に一時的に吸着させ、その後、高温となった排気ガスで脱離できる。また、高温となった排気ガスで上記触媒を活性化できる。したがって、特許文献1によれば、冷間始動時であっても、上記触媒の活性化に併せて上記制御手段を実行することで、脱離させた未浄化成分を浄化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−200750号公報
【特許文献2】特開2003−254050号公報
【特許文献3】特開平5−171929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記吸着材は、排気ガス中に含まれる未浄化成分だけでなく、排気ガス中の水分を吸着・脱離する機能を有している。このため、上記制御手段を実行すると、未浄化成分の脱離と併せて水分が脱離する。水分が脱離すると、排気ガスの温度を下げる原因となる。そして、温度が下がった排気ガスが流入することで、触媒の活性状態が低下してしまう。触媒の活性状態が低下することは、触媒の浄化能力が低下することを意味する。したがって、特許文献1の排気浄化装置を用いた場合には、脱離した未浄化成分を触媒で浄化できないおそれがあった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、脱離水分による触媒浄化能力の低下を抑制できる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の排気浄化装置であって、
内燃機関から排出された排気ガスが流れる主排気通路と、
前記主排気通路に設けられ、排気ガスを浄化可能な触媒と、
前記触媒の上流側において前記主排気通路の一部をバイパスするバイパス通路と、
開度を変化させることで前記主排気通路に流す排気ガスと、前記バイパス通路に流す排気ガスとの流量比を制御する流量比制御手段と、
前記バイパス通路に設けられ、排気ガス中に含まれる未浄化成分及び水分を吸着する機能を有する吸着材と、
前記吸着材の下流側において、前記バイパス通路から前記内燃機関の吸気通路に排気ガスを還流する排気ガス還流通路と、
前記排気ガス還流通路の開閉を制御する排気ガス還流制御手段と、
内燃機関の始動後、排気ガスの流入先が前記バイパス通路となるように前記流量比制御手段の開度を所定の第1開度に設定する第1開度設定手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第1開度に設定した後に、前記吸着材に対する所定の吸着完了条件の成否を判定する吸着完了条件判定手段と、
前記吸着完了条件が成立した場合に、排気ガスの流入先が前記主排気通路となるように前記流量比制御手段の開度を所定の第2開度に設定する第2開度設定手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第2開度に設定した後に、前記触媒に対する所定の活性化条件の成否を判定する活性化条件判定手段と、
前記活性化条件が成立した場合に、前記バイパス通路に流す排気ガスが増量するように前記流量比制御手段の開度を所定の第3開度に設定する第3開度設定手段と、を備え、
前記第3開度設定手段による開度設定時には、排気ガス還流制御手段により前記排気ガス還流通路が開かれていることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記排気ガス還流制御手段は、前記流量比制御手段の開度を前記第2開度に設定した後であって、前記第3開度に設定する前のタイミングで開かれることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記第3開度は、前記第1開度に等しいことを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3いずれか1つの発明において、
前記触媒の温度を取得する触媒温度取得手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第3開度に設定した後に、前記触媒の温度に基づいて、前記主排気通路に流す排気ガスが増量するように前記流量比制御手段の開度を補正する開度補正手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、流量比制御手段の開度を第3開度に設定した際には、排気ガス還流制御手段により排気ガス還流通路が開かれているため、排気ガスを吸着材に流すことにより脱離する水分を吸気通路側に還流できる。これにより、触媒側に流入する脱離水分量を少なくすることができ、脱離水分による触媒浄化能力の低下を抑制できる。
【0012】
第2の発明によれば、流量比制御手段の開度を第3開度に設定する前のタイミングで排気ガス還流通路を開くことができる。したがって、水分を脱離する前に予め排気ガス還流通路を開くことができ、脱離した水分を確実に吸気通路側に還流できる。
【0013】
第3の発明によれば、第3開度を第1開度と等しくできるので、排気ガスの流入先を前記バイパス通路に選択できる。排気ガスの流入先を前記バイパス通路に選択できれば、より多くの排気ガスを吸着材に流すことができる。したがって、吸着した未浄化成分を早期に脱離させることができる。
【0014】
第4の発明によれば、流量比制御手段の開度を第3開度に設定した後に、触媒の温度に基づいて、主排気通路に流す排気ガスが増量するように流量比制御手段の開度を補正できる。これにより、触媒温度が低下した場合に、バイパス通路に流す排気ガスを減量するといった制御が可能となる。したがって、触媒温度の低下に伴う浄化能力の低下をより一層抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1のシステムの制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態1のECU50が実行するルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0017】
実施の形態1.
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態1のシステムの構成を説明するための図である。実施形態1のシステムは、例えば車両の駆動源として用いられる内燃機関10を備えている。この内燃機関10には、吸気通路12及び主排気通路14がそれぞれ接続されている。
【0018】
主排気通路14の途中には、排気ガス中に含まれる特定の物質を浄化するための触媒(例えば三元触媒)として、上流触媒16と、この上流触媒16より下流に位置する下流触媒18とが設けられている。上流触媒16は、内燃機関10の排気マニホールドの直下などに配置されるのが好ましく、下流触媒18は、車両の床下などに配置されるのが好ましい。
【0019】
上流触媒16と下流触媒18との間には、主排気通路14をバイパスするバイパス通路20が設けられている。すなわち、バイパス通路20の両端部は、それぞれ上流触媒16の下流側及び下流触媒18の上流側に接続されている。別の言い方をすれば、バイパス通路20は、上流触媒16の下流側から分岐し、下流触媒18の上流側において再び主排気通路14に合流する。
【0020】
バイパス通路20の途中には、排気ガス中のHC及び水分を吸着可能な吸着ユニット22が設けられている。吸着ユニット22としては、例えば、活性炭やゼオライトなどを用いることができる。また、バイパス通路20の途中の吸着ユニット22の下流には、排気ガス中のNOxを吸着可能なNOx吸着材24が設けられている。NOx吸着材24としては、例えば、セリウムにパラジウムを担持したものなどを用いることができる。ここで、NOx吸着材24の上流に吸着ユニット22を設けるのは、NOx吸着材24に対するNOx吸着の阻害要因となる水分を、NOx吸着材24の上流において事前に除去することを目的としている。
【0021】
バイパス通路20が再び主排気通路14に合流する箇所には、排気切替バルブ26が設置されている。この排気切替バルブ26は、吸着ユニット22、NOx吸着材24に排気ガスを流す状態と、吸着ユニット22、NOx吸着材24に排気ガスを流さない状態とに切り替えが可能になっている。
【0022】
NOx吸着材24よりも下流側には、バイパス通路20を流れる排気ガスの一部を還流するための排気ガス還流通路28の一端が接続されている。この排気ガス還流通路28の他端は、吸気通路12と接続されている。排気ガス還流通路28を流れる排気ガスは、スロットルバルブ30を経由して吸気通路12を流れる吸入空気と混合し、内燃機関10に流入する。排気ガス還流通路28の途中には、開くことにより排気ガス還流を可能とするパージバルブ32が設置されている。
【0023】
本実施形態のシステムは、更に、内燃機関10のエンジン水温Tを検出する水温センサ34と、内燃機関10の吸入空気量GAを検出するエアフローメータ36と、ECU(Electronic Control Unit)50とを備えている。ECU50には、上述した水温センサ34、エアフローメータ36等の各種センサ、排気切替バルブ26等の各種アクチュエータがそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
[実施の形態1の動作の概要]
内燃機関10の冷間始動直後は、下流触媒18の温度Tが低いため、その活性が不十分である。このため、HCやNOxを下流触媒18で十分に浄化することができない。そこで、本システムでは、冷間始動直後の排気ガスをバイパス通路20に流すことにより、HC、水分及びNOxを吸着ユニット22及びNOx吸着材24にそれぞれ吸着させる。これにより、冷間始動直後におけるHC及びNOxの大気中への放出量を大幅に低減することができる。
【0025】
また、本システムでは、吸着ユニット22に吸着されたHCや、NOx吸着材24に吸着されたNOxを浄化するために、下流触媒18が十分に活性化した後、排気ガスをバイパス通路20に流し、吸着ユニット22及びNOx吸着材24に吸着させたHC及びNOxをパージする。
【0026】
パージしたHC及びNOxは、2つの経路により浄化できる。一方は、下流触媒18に直接導入することで浄化できる。他方は、パージバルブ32を開くことで排気ガスを吸気通路12に還流し、HCは内燃機関10の筒内で燃焼し、内燃機関10から排出されたNOxは上流触媒16や下流触媒18で浄化できる。
【0027】
ところで、このパージに際しては、吸着ユニット22に吸着された水分もパージされる。水分がパージされると、その気化潜熱に伴って排気ガスの保有する熱エネルギーを吸収するため、排気ガスの温度が低下する。そして、温度が低下した排気ガスを下流触媒18に導入すると、下流触媒18の温度が下がり、その結果、活性化している下流触媒18の触媒浄化能力が低下してしまう。
【0028】
そこで、本システムでは、パージを実施する前にパージバルブ32を開くことで、パージ開始後に発生する水分によって温度の低下した低温排気ガスを還流させる制御を行うこととしている。
【0029】
図2は、本システムにおける制御の一例を示すタイミングチャートである。図2(A)は、パージバルブ32の開度ODPGを示し、図2(B)は、排気切替バルブ26の開度ODSWをそれぞれ示す。また、図2(C)は、下流触媒18の温度Tを示す。
【0030】
内燃機関10の始動後、すなわち、図2に示す時刻tにおいては、下流触媒18の温度Tは下流触媒18が十分に活性化する温度TCAよりも低い。このため、下流触媒18で排気ガスを浄化できない。したがって、排気切替バルブ26の開度ODSWは、ODsw1に制御される。これにより、排気切替バルブ26が第1状態に制御され、排気ガス中のHC、水分及びNOxは、吸着ユニット22及びNOx吸着材24にそれぞれ吸着される。一方、パージバルブ32の開度ODPGは、ほぼ閉状態に近いODPG1に制御される。したがって、吸着ユニット22及びNOx吸着材24を通過した排気ガスは、下流触媒18を流れて大気中へ放出される。
【0031】
時刻tから一定時間経過後の時刻tにおいては、排気切替バルブ26の開度ODSWは、ODSW2に制御される。これにより、排気切替バルブ26が第2状態に制御される。ここで、時刻tは、吸着ユニット22への吸着が完了するタイミングを表すものである。具体的に、時刻tは、吸着ユニット22の吸着能力が最大に達したときのタイミングを表す。このタイミングは、吸入空気量GAの積算等により推定される吸着ユニット22の温度に基づいて設定できる。これにより、最適な吸着の完了タイミングが実現されている。なお、この時刻tは、予めECU50に記憶されているものとする。
【0032】
ところで、パージバルブ32の開度ODPGは、ODPG1に制御されているが、時刻tにおいて、ODPG2に制御される。これにより、パージバルブ32が開かれるため、排気ガスの還流が可能な状態となる。ここで、時刻tは、内燃機関10の暖機が完了するタイミングよりも遅いタイミングに設定されることが好ましく、吸着ユニット22が水分を脱離可能な温度まで上昇するタイミングよりも遅いタイミングに設定されることがより好ましい。これにより、脱離した水分を排気ガスと共に確実に還流できる。なお、この時刻tは、予めECU50に記憶されているものとする。
【0033】
また、図2に示す時刻tにおいては、下流触媒18の温度TがTCAに達する。TCAに達すれば、吸着ユニット22に吸着されたHCや、NOx吸着材24に吸着されたNOxを下流触媒18で浄化できる。このため、排気切替バルブ26の開度ODSWがODSW1に制御される。これにより、排気切替バルブ26が第1状態に制御され、吸着ユニット22及びNOx吸着材24に吸着したHC、水分及びNOxのパージが開始される。
【0034】
水分のパージが始まると、上述したように、気化潜熱に伴う排気ガスの温度が低下し、これに伴い、下流触媒18の温度Tも低下してしまう。図2(C)の破線52は、この現象を示すものであり、下流触媒18の温度Tがパージ開始後に低下することを表す。そして、下流触媒18の温度Tがパージ開始後に低下すれば、下流触媒18の浄化能力が低下してしまうため、HC及びNOxを十分に浄化できないことが想定される。
【0035】
本システムでは、上述した時刻tにおいて、パージバルブ32の開度ODPGがODPG2に制御される。これにより、排気ガスの還流が可能な状態となっているため、時刻tで水分のパージが始まったとしても、低温排気ガスを還流できる。低温排気ガスを還流できれば、下流触媒18に流入する低温排気ガスの量を低減できるので、下流触媒18の浄化能力の低下を抑制できる。
【0036】
[実施の形態1における具体的処理]
図3は、上記の機能を実現するためにECU50が実行するルーチンのフローチャートである。なお、本ルーチンは、内燃機関10の始動時に実行されるものとする。図3に示すルーチンによれば、まず、吸着条件が成立するか否かが判別される(ステップ100)。具体的には、水温センサ34により検出されるエンジン水温Tが取得され、所定の判定値TWAと比較される。エンジン水温Tが所定の判定値TWA以上である場合には、下流触媒18の暖機状態が十分であると判断できる。この場合には、HC、水分及びNOxを吸着ユニット22及びNOx吸着材24に吸着させる必要はない。したがって、排気切替バルブ26が第2状態とされ(ステップ102)、本ルーチンは一旦終了する。
【0037】
一方、上記ステップ100において、エンジン水温Tが上記判定値TWA未満である場合には、排気切替バルブ26が第1状態とされる(ステップ104)。これにより、排気ガスはバイパス通路20を流れ、吸着ユニット22及びNOx吸着材24にHC、水分及びNOxがそれぞれ吸着される。
【0038】
ステップ104に続いて、吸着時間tが取得される(ステップ106)。この吸着時間tは、始動後、排気切替バルブ26が第1状態に制御されている期間である。続いて、この吸着時間tが所定値tを超えているか否かが判別される(ステップ108)。この所定値tは、図2の説明で述べた時刻tと時刻tとの間隔に等しい。吸着時間tが所定値tを超えている場合には、吸着ユニット22の吸着能力が最大となっているため、排気ガス中の水分をこれ以上吸着できない。したがって、排気切替バルブ26が第2状態とされる(ステップ110)。一方、吸着時間tが所定値t未満の場合には、吸着時間tが所定値t以上となるまで排気切替バルブ26の第1状態が維持される。
【0039】
ステップ110に続いて、水温センサ34により検出されるエンジン水温Tが再び取得され(ステップ112)、所定の判定値TWBと比較される(ステップ114)。エンジン水温Tが判定値TWB以上である場合には、吸着ユニット22及びNOx吸着材24からHC、水分及びNOxが脱離可能な温度に達していると共に、内燃機関10の暖機が完了していると判断できる。したがって、パージバルブ32が開かれる(ステップ116)。これにより排気ガスの還流が開始される。一方、エンジン水温Tが判定値TWB未満の場合には、エンジン水温Tが判定値TWB以上となるまで排気切替バルブ26の第2状態が維持される。
【0040】
ステップ110に続いて、下流触媒18の温度Tが取得され(ステップ118)、所定の判定値TCAと比較される(ステップ120)。ここで、所定の判定値TCAは、上述したように、下流触媒18が十分に活性化する温度TCAに等しく、吸入空気量GAの積算等により推定されるものである。下流触媒18の温度Tが判定値TCA以上である場合には、吸着ユニット22及びNOx吸着材24から脱離したHC及びNOxを浄化可能であると判断できる。したがって、排気切替バルブ26が再び第1状態とされる(ステップ122)。これによりパージが開始される。一方、下流触媒18の温度Tが判定値TCA未満の場合には、温度Tが判定値TCA以上となるまで排気切替バルブ26の第2状態が維持される。
【0041】
以上説明したように、図3に示すルーチンの処理によれば、排気切替バルブ26の開度を制御して排気ガス中のHC、水分及びNOxを吸着し、最適なタイミングでパージすることができると共に、バージ開始後に発生する水分に起因した低温排気ガスによる下流触媒18の触媒浄化能力の低下を抑制できる。
【0042】
なお、上述した実施の形態1では、排気切替バルブ26は、吸着ユニット22、NOx吸着材24に排気ガスを流す状態と、吸着ユニット22、NOx吸着材24に排気ガスを流さない状態との間での切り替えが可能であるが、これらの状態の中間の状態に更に切り替え可能になっていてもよい。また、この中間の状態を変化させて、吸着ユニット22、NOx吸着材24を流す排気ガスと、吸着ユニット22、NOx吸着材24を流さない排気ガスとの混合割合を調節できる構成になっていてもよい。
【0043】
排気ガスの混合割合を調節できる場合には、主排気通路14に一部の排気ガスを流しつつ、残りの排気ガスを吸着ユニット22、NOx吸着材24に流してHC、水分及びNOxをパージするといった制御を実施できる。このため、パージ速度を変更する制御が実現できる。すなわち、吸着ユニット22、NOx吸着材24に排気ガスをより多く流してパージの完了を早めるといった制御が可能となる。
【0044】
特に、パージ実施中に吸着ユニット22、NOx吸着材24を通過した排気ガスは、これらを通過しない排気ガスよりも相対的に低温である。パージ実施中に吸着ユニット22、NOx吸着材24を通過した排気ガスが、低温排気ガスとなることは既述のとおりである。逆を言えば、吸着ユニット22、NOx吸着材24を通過しない排気ガスは、相対的に高温である。したがって、この高温排気ガスを下流触媒18に導入すれば、下流触媒18の温度Tの低下を抑制できる。
【0045】
具体的に、パージ実施中に下流触媒18の温度Tを取得し、この温度TがTCAを大幅に下回るような所定の温度TCBとなった場合に、より多くの高温排気ガスが下流触媒18に流入するように排気切替バルブ26の開度ODSWを変更する。こうすることで、パージ実施中における下流触媒18の温度Tの低下を抑制することができる。
【0046】
また、上述した実施の形態1では、吸着の完了タイミング及びパージの開始タイミングを吸入空気量GAの積算により推定しているが、それらの推定方法はこれに限定されるものではない。例えば、吸着ユニット22に温度センサを設け、それらのセンサによって計測される温度や、吸着ユニット22を通過した排気ガス中の水分濃度に基づいて最適な吸着終了タイミングを推定してもよい。同様に、下流触媒18に設けた温度センサや、下流触媒18を流れる排気ガス中の水分濃度に基づいて最適なパージ開始タイミングを推定してもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態1においては、下流触媒18が前記第1の発明における「触媒」に、吸着ユニット22及びNOx吸着材24が前記第1の発明における「吸着材」に、排気切替バルブ26が前記第1の発明における「流量比制御手段」に、パージバルブ32が前記第1の発明における「排気ガス還流制御手段」に、それぞれ相当している。また、ECU50が、図3のステップ100、104の処理を実行することにより前記第1の発明における「第1開度設定手段」が、同ステップ106、108の処理を実行することにより前記第1の発明における「吸着完了条件判定手段」が、同ステップ110の処理を実行することにより前記第1の発明における「第2開度設定手段」が、同ステップ118、120の処理を実行することにより前記第1の発明における「活性化条件判定手段」が、同ステップ122の処理を実行することにより前記第1の発明における「第3開度設定手段」が、それぞれ実現されている。
【0048】
また、上述した実施の形態1の変形例においては、ECU50が、パージ実施中に下流触媒18の温度Tを取得することにより前記第4の発明における「温度取得手段」が実現されている。また、下流触媒18の温度TがTCBとなった場合に、排気切替バルブ26の開度ODSWを変更することにより前記第4の発明における「開度補正手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0049】
10 内燃機関
14 主排気通路
18 下流触媒
20 バイパス通路
22 吸着ユニット
24 NOx吸着材
26 排気切替バルブ
28 排気ガス還流通路
32 パージバルブ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが流れる主排気通路と、
前記主排気通路に設けられ、排気ガスを浄化可能な触媒と、
前記触媒の上流側において前記主排気通路の一部をバイパスするバイパス通路と、
開度を変化させることで前記主排気通路に流す排気ガスと、前記バイパス通路に流す排気ガスとの流量比を制御する流量比制御手段と、
前記バイパス通路に設けられ、排気ガス中に含まれる未浄化成分及び水分を吸着する機能を有する吸着材と、
前記吸着材の下流側において、前記バイパス通路から前記内燃機関の吸気通路に排気ガスを還流する排気ガス還流通路と、
前記排気ガス還流通路の開閉を制御する排気ガス還流制御手段と、
内燃機関の始動後、排気ガスの流入先が前記バイパス通路となるように前記流量比制御手段の開度を所定の第1開度に設定する第1開度設定手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第1開度に設定した後に、前記吸着材に対する所定の吸着完了条件の成否を判定する吸着完了条件判定手段と、
前記吸着完了条件が成立した場合に、排気ガスの流入先が前記主排気通路となるように前記流量比制御手段の開度を所定の第2開度に設定する第2開度設定手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第2開度に設定した後に、前記触媒に対する所定の活性化条件の成否を判定する活性化条件判定手段と、
前記活性化条件が成立した場合に、前記バイパス通路に流す排気ガスが増量するように前記流量比制御手段の開度を所定の第3開度に設定する第3開度設定手段と、を備え、
前記第3開度設定手段による開度設定時には、排気ガス還流制御手段により前記排気ガス還流通路が開かれていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気ガス還流制御手段は、前記流量比制御手段の開度を前記第3開度に設定する前のタイミングで開かれることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第3開度は、前記第1開度に等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記触媒の温度を取得する触媒温度取得手段と、
前記流量比制御手段の開度を前記第3開度に設定した後に、前記触媒の温度に基づいて、前記主排気通路に流す排気ガスが増量するように前記流量比制御手段の開度を補正する開度補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−169026(P2010−169026A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13197(P2009−13197)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】