説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】PMが自己着火する温度以下の比較的低い温度で効率良くDPFの再生を行うことができ、オイル希釈を回避して、燃費を向上させる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】OSC性能を有する触媒が担持されたパティキュレートフィルタを備え、パティキュレートフィルタの再生時に、パティキュレートフィルタの温度を、OSC性能を有する触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つパティキュレートフィルタに堆積したPMが自己着火する温度以下の目標温度範囲にする内燃機関の排気浄化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パティキュレートフィルタに堆積された粒子状物質が自己着火しない比較的低い温度で効率よくパティキュレートフィルタを再生する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排気中に含まれるパティキュレートマター(Particulate
matter:粒子状物質、以下、「PM」と称する。)を除去するために、排気通路にPMの捕獲を行うパティキュレートフィルタ(以下、「フィルタ」又は「DPF(Diesel Particulate Filter)」と称する。)とを備えた内燃機関の排気浄化装置が知られている。なお、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気中には、微量のSOx(硫黄酸化成分、以下「硫黄分」と称する。)も含んでいる。
【0003】
内燃機関の排気中に含まれるPMは、DPFを構成する多孔質壁に捕集されて堆積するので、目詰まり等による排気抵抗が増加しないうちに、DPFに堆積したPMを燃焼により除去してDPFを再生する必要がある。
【0004】
DPFの再生方法として、排気中の燃料添加量(HC量)を調整することにより、フィルタの温度をPMの自己燃焼温度よりも低く且つ触媒活性温度よりも高い温度に保持し、その後、更にHCを添加して、フィルタの温度をPMの自己燃焼温度まで昇温させる方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−163699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のDPFの再生方法は、PMを自己着火させた後の自然延焼(伝播燃焼)により緩慢に焼却させた後、メイン燃料噴射後の追加燃料の噴射であるポスト噴射を行って、排気中にHCを添加して排気温度を600℃以上に上昇させてPMを自己燃焼させている。
【0007】
排気温度を昇温させるためには、内燃機関の吸気流量を調整するか、ポスト噴射を行うか、メイン燃料噴射の噴射時期のリタード(遅角)を行うことによって、HCを排気中に添加して排気温度を昇温させている。
【0008】
排気温度を600℃以上に昇温させるためには、ポスト噴射や、メイン噴射燃料の噴射時期の遅角を多く行って、多量のHCを添加する必要があり、大幅に燃費が悪化し、オイルが希釈されるという問題を生じる。
【0009】
また、上記特許文献1のように、PMを自己着火させた後の自然延焼(伝播燃焼)を利用すると共に、更に600℃以上に昇温させてPMを燃焼させているため、PMの堆積量が多い場合は、PMの酸化発熱によって一気に高温化し、DPFが損傷する場合もある。
【0010】
このようなDPFの損傷を防ぐために、急激なPMの燃焼が起こらないように、空気過剰率(λ)を細かく制御する必要があり、制御性がよくなかった。
【0011】
また、比較的運転負荷が低い状況で走行を続けている場合は、DPFの再生が可能となる温度まで昇温することができず、PMを燃焼させて除去することができず、目詰まりを起こしてDPFが閉塞してしまう場合がある。
【0012】
また、上記のような低負荷の運転状態では、DPFの再生が可能になる温度まで昇温することができず、再生処理を行う運転領域が限定されてしまい、再生処理の機会が減少する場合があった。
【0013】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、PMが自己着火する温度以下の低い温度で効率良くパティキュレートフィルタの再生を行うことができ、従来の600℃以上の温度で再生を行っていた場合と比較して、オイル希釈を回避して、燃費を向上させる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、活性酸素を放出する触媒を担持させたパティキュレートフィルタを用いて、再生処理中のパティキュレートフィルタの温度を、上記触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つPMが自己着火する温度以下の目標温度範囲にすることによって、上記目的を達成し得ることを見出した。
【0015】
また、本発明は、内燃機関と、上記内燃機関の排気通路に配置された、排気中のNOxを吸蔵し還元放出するNOxトラップ触媒と、上記NOxトラップ触媒の排気下流側に配置された、活性酸素を放出する触媒が担持され、排気中の粒子状物質を捕獲するパティキュレートフィルタを備え、上記NOxトラップ触媒に堆積した硫黄分の堆積量を推測する硫黄堆積量推測手段と、上記硫黄分の堆積量に基づいて、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除時期を判定する硫黄被毒解除時期判定手段と、上記硫黄被毒解除時期判定手段が硫黄被毒解除時期であると判定した場合は、硫黄被毒解除を行う前に、上記パティキュレートフィルタの再生要求を行うパティキュレートフィルタ再生要求手段と、上記再生要求に基づいて、上記パティキュレートフィルタの温度を、上記触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質が自己着火する温度以下の目標温度範囲にする再生制御手段と、上記ディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が終了したか否かを判定する再生終了判定手段と、上記再生終了判定手段が、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が終了したと判定した場合には、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除をする硫黄被毒解除制御手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、活性酸素を放出する触媒が担持されたパティキュレートフィルタを用いたことにより、堆積したPMを燃焼させて再生するフィルタの再生時に、パティキュレートフィルタの温度を、触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つPMが自己着火する温度以下の目標温度範囲にすることによって、上記触媒から放出された活性酸素によりPMが連続的に燃焼し、従来の温度(PMが自己着火する約600℃以上の温度)よりも低い温度で、パティキュレートフィルタを再生することができる。
【0017】
このように、従来のよりも低い温度でパティキュレートフィルタを再生することができるので、パティキュレートフィルタを損傷するおそれがなくなる。また、温度上昇のために行っていたポスト噴射、メイン燃料噴射の噴射時期のリタード等を少なくすることができ、オイル希釈を回避し、燃費を向上させることができる。
【0018】
従来よりも低い温度で効率的にPMを燃焼させてパティキュレートフィルタを再生することができるので、運転負荷が低い状況下においても比較的容易にパティキュレートフィルタの再生処理を行うことができる。また、再生処理を行うことの可能な運転領域が拡大し、再生処理を行う機会を増加させることが可能である。
【0019】
また、本発明は、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除を行う前に、パティキュレートフィルタの再生を要求するようにしたので、硫黄被毒解除をする際には、パティキュレートフィルタにPMが殆ど堆積していない。NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除をし、その後に、硫黄被毒解除をしたために高温となっている状態で排気の空気過剰率を通常値に復帰させたとしても、パティキュレートフィルタにPMが殆ど堆積していないので、PMの急速な酸化燃焼による急激な温度上昇を生じることがなく、パティキュレートフィルタを損傷するおそれがない。そのため、パティキュレートフィルタの損傷防止のために、排気の空気過剰率λを制御する必要なく、制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態における内燃機関の排気浄化装置を示すシステム構成図である。
【図2】実施形態における排気浄化装置の再生制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】DPF再生時期判定用背圧しきい値を示すマップである。
【図4】DPFの温度とPMの酸化速度の関係を示すグラフである。
【図5】DPFの温度を650℃にし、運転状態を低負荷・低回転のアイドル運転に変更した場合のPM堆積量とDPFの温度との関係を示すグラフである。
【図6】再生処理時のDPFの目標温度と、再生処理時におけるDPFの最高(Max)温度との関係を示すグラフである。
【図7】再生処理時のDPFの目標温度と、オイル希釈、燃費悪化の関係を示すグラフである。
【図8】OSC性能を有する触媒が活性酸素の放出を開始するライトオフ温度と、PM酸化が開始される下限温度との関係を示すグラフである。
【図9】実施形態におけるDPF再生処理のルーチンを示すフローチャートである。
【図10】実施形態における硫黄被毒解除のルーチンを示すフローチャートである。
【図11】実施形態におけるNOxトラップ触媒再生のルーチンを示すフローチャートである。
【図12】実施形態におけるDPF再生要求の設定を示すフローチャートである。
【図13】実施形態における硫黄被毒解除要求の設定を示すフローチャートである。
【図14】実施形態におけるNOxトラップ触媒再生要求の設定を示すフローチャートである。
【図15】DPF再生時期の運転領域を示すマップである。
【図16】硫黄被毒解除時期の運転領域を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の排気浄化装置1が適用されるディーゼルエンジン2(以下、「エンジン1」という。)を示すシステム構成図である。
【0023】
エンジン2の吸気通路3の上流には、可変ノズルターボチャージャ4のコンプレッサ4aが配置されている。
【0024】
吸入空気は、コンプレッサ4aによって過給された後、インタークーラ5で冷却されて、吸気スロットル6を通過した後、各気筒の燃焼室内に流入する。
【0025】
燃料は、燃料噴射ポンプ7により高圧化されてコモンレール8に送られ、各気筒の燃料噴射弁9から燃料室内に直接噴射される。
燃料噴射弁9による噴射には、動力を発生させるためのメイン噴射と、メイン噴射よりも遅角させて行われるポスト噴射とが含まれる。
【0026】
この燃料噴射ポンプ7、コモンレール8及び燃料噴射弁9によって、コモンレール式燃料噴射装置が構成される。
【0027】
そして、燃焼室内に流入した吸入空気と燃料噴射との混合気が燃焼して、所望のエンジントルクを発生させ、排気は、排気通路10に排出される。
【0028】
排気通路10に排出された排気の一部は、排気循環(Exhaust Gas Recirculation 、以下「EGR」と称する。)バルブ12が介装された排気循環通路11を介して吸気側へ還流される。
【0029】
排気の残りは、可変ターボチャージャ4のタービン4bを回転駆動し、該タービン4bと同軸に設けられたコンプレッサ4aが回転し、吸気を過給する。
【0030】
排気通路10のタービン4bの下流側には、排気の上流側から酸化触媒13と、吸着型のNOxトラップ触媒14と、DPF15がこの順序で配置されている。
【0031】
酸化触媒13は、排気中の炭化水素(以下「HC」と称する。)及び一酸化炭素(以下「CO」と称する。)を浄化する。
【0032】
NOxトラップ触媒14は、排気空燃比が理論空燃比よりもリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気空燃比が理論空燃比(ストイキオメトリ、以下「ストイキ」と略称する。)又はリッチのときにNOxを脱離させて浄化する触媒である。
NOxトラップ触媒14には、NOx以外に排気中に含まれる硫黄分もトラップされる。
【0033】
DPF15は、排気中のPMを捕集するセラミックス等を素材とした多孔質のフィルタエレメントに、PMの燃焼を促進させるPt等の貴金属等から成る触媒を担持させたものであり、排気中のPMを捕集する機能を有する。
更に、本例の排気浄化装置に用いるDPF15は、酸素の吸蔵放出性能(Oxygen Storage Capacity;以下「OSC」と略記する)の高い触媒を担持させたものである。OSC性能の高い触媒としては、遷移金属、具体的にはセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)の酸化物等が挙げられる。
本実施形態のDPF15に担持させるOSC性能を有する触媒は、400℃以下の温度で活性酸素を放出するものであることが好ましい。
【0034】
エンジンコントロールユニット(以下「ECU」と称する。)20には、エンジンの制御のため、各種センサからの検出信号が入力される。
【0035】
本例のエンジン1の排気浄化装置には、各種センサとして、運転状況判定センサである、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転センサ(クランク角センサ)21と、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ22とを備えている。
【0036】
また、エンジン2の排気浄化装置1は、NOxトラップ触媒の温度を測定するNOxトラップ触媒温度センサ23と、DPF15の入口側でエンジン1からの排気圧力を測定する圧力センサ24と、DPF15の温度を測定するDPF温度センサ25と、DPF15の出口側で空気過剰率λを測定するλセンサ26とを備えている。
【0037】
なお、NOxトラップ触媒14及びDPF15の温度は、これらの上流側又は下流側に排気温度センサを備え、この排気温度センサで検出される排気温度に基づいて、NOxトラップ触媒14及びDPF15の温度を推測するようにしてもよい。
【0038】
上記各種センサの検出信号の出力は、ECU20に入力される。ECU20は、クランク角センサ21の出力に基づいてエンジンの回転数Neを演算し、アクセル開度センサ22の出力に基づいてアクセル開度APOを演算する。
【0039】
ECU20は、上記各種センサの検出信号に基づいて、燃料噴出量及び噴射時期を制御するための燃料噴射弁8への燃料噴射指令信号、吸気スロットル6への開度指令信号、EGRバルブ12への開度指令信号、可変ノズルターボチャージャ4への可動指令信号等を出力する。
【0040】
また、ECU20は、DPF15の再生処理を行う。
本実施形態の排気浄化装置1におけるECU20は、運転状況測定センサであるクランク角センサ21及びアクセル開度センサ22の測定結果に基づいて、エンジン2の運転状態が複数の運転領域のどの運転領域に属するかを判定する運転領域判定手段と、圧力センサ24の測定結果に基づいて、DPF15に捕獲されたPMの堆積量を推測するPM堆積量推測手段と、PMの堆積量に基づいて、DPFの再生時期を判定する再生時期判定手段と、再生制御手段を備えている。
【0041】
ECU20の再生制御手段は、DPFの再生時に、DPF15に担持させたOSC性能を有する触媒から活性酸素を放出する温度以上、且つDPF15に堆積したPMが自己着火する温度以下の目標温度範囲にして、DPF15を再生する処理を行う。
本実施形態の排気浄化装置1は、DPF15の再生処理時に、OSC性能を有する触媒から放出される活性酸素により、DPF15に堆積したPMが連続的に燃焼し、PMが自己着火する温度以下の温度でDPF15の効率的な再生を行うことができる。
上記目標温度範囲は450〜550℃であることが好ましい。
【0042】
また、ECU20は、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒を解除する処理を行う。
本実施形態の排気浄化装置1におけるECU20は、NOxトラップ触媒14に堆積した硫黄分の堆積量を推測する硫黄堆積量推測手段と、硫黄分の堆積量に基づいて、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒解除の時期を判定する硫黄被毒解除時期判定手段と、硫黄被毒解除判定手段が硫黄被毒解除時期であると判定した場合は、硫黄被毒解除を行う前に、DPF15の再生要求を行うDPF再生要求手段と、DPFの再生が終了したか否かを判定する再生終了判定手段と、DPFの再生が終了したと判定した場合には、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒を解除する硫黄被毒解除制御手段を備えている。
【0043】
ECU20の硫黄被毒解除手段は、硫黄被毒解除時に、NOxトラップ触媒14の温度を目標温度範囲にし、排気をリッチ〜ストイキ雰囲気となるように空気過剰率λを目標値にして、NOxトラップ触媒15の硫黄被毒を解除する処理を行う。
NOxトラップ触媒14の温度の目標温度範囲は680〜720℃であることが好ましい。
また、空気過剰率λの目標値は、0.9であることが好ましい。
【0044】
また、ECU20は、排気をリッチ雰囲気(好ましくは空気過剰率λが0.8)にして、NOxトラップ触媒14に堆積したNOxを脱離・還元させてNOxトラップ触媒14を再生する処理を行う。
【0045】
以下、ECU20の動作をフローチャートにより説明する。
図2は、DPF15及びNOxトラップ触媒14の再生制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0046】
ステップS1では、運転状態として、エンジンの回転数Neとアクセル開度APOと読み込み、これらをパラメータとするマップから演算されているメイン燃料噴射量Qを読み込む。
【0047】
ステップS2では、NOxトラップ触媒14に堆積されたNOxの量を推測し検知する。NOx堆積量推測手段は、エンジン回転センサ21で測定されたエンジンの回転数Neの積算値からNOx堆積量を推測する。また、NOx堆積量推測手段は、走行距離に基づいて単位時間当たりにNOxトラップ触媒14に堆積されていくNOxの量を演算し、これを積算して算出して、NOx堆積量を推測してもよい。
【0048】
ステップS3では、NOxトラップ触媒14に堆積された硫黄分の量を推測し検知する。硫黄堆積量推測手段は、NOx堆積量を推測するのと同様に、エンジン回転センサ21で測定されたエンジンの回転数Neの積算値から硫黄分の堆積量を推測してもよく、走行距離に基づいて単位時間当たりにNOxトラップ触媒14に堆積されていく硫黄分の量を演算し、これを積算して硫黄分の堆積量を推測してもよい。
【0049】
NOxトラップ触媒14に堆積されている硫黄分は定期的に放出させる必要があり、ECU20は、そのための制御を行う。NOxトラップ触媒14に堆積された硫黄分を放出させることを硫黄被毒解除という。
【0050】
ステップS4では、DPF15に捕獲されたPMの量を推測し検知する。PM堆積量推測手段は、圧力センサ24で測定されたエンジンの背圧をモニタし、予め作成されたマップから近似するPMの堆積量を推測する。背圧が高いときほど大きな値として推定する。
【0051】
図3は、DPF再生時期判定用背圧しきい値を示すマップであり、横軸は回転速度Ne、縦軸はメイン(Main)噴射量Qを示している。
【0052】
PM堆積量推測手段は、エンジン回転数Ne及びメイン(Main)噴射量Qにより図3に示すマップを検索し、圧力センサ24で測定された背圧がマップに示されているしきい値を超えているか否かを判定し、PMの堆積量を推測する。
【0053】
また、PMの堆積量は、エンジン2の運転状態と相関するため、クランク角センサ21のエンジン回転数Neや、前回のDPF15の再生時からの走行距離に基づいてエンジン2から単位時間当たりに排出されるPMの量を演算し、これを積算して推定してもよい。
【0054】
ステップS5では、DPF15の再生(PM酸化)モード中であるか否を示すregフラグを判定する。DPF15に堆積しているPMを酸化燃焼させる処理をDPF15の再生という。
【0055】
そして、regフラグ=0であって、DPF15の再生モード中ではない場合は、ステップS6に進む。
【0056】
一方、regフラグ=1であって、DPF15の再生モード中である場合は、図9に示すフローチャートのステップS101に進み、DPFの再生処理を行う。
【0057】
ステップS6では、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒解除モード中であるか否かを示すdesulフラグを判定する。
【0058】
そして、desulフラグ=0であって、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒解除モード中ではない場合は、ステップS7に進む。
【0059】
一方、desulフラグ=1であって、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除モード中である場合は、図10に示すフローチャートのステップS201に進み、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除を行う。
【0060】
ステップS7では、NOxトラップ触媒14に堆積されたNOxの脱離・還元処理を行うために、排気空燃比を一時的にリッチ化するリッチスパイクモード中であるか否かを示すspフラグを判定する。
【0061】
そして、spフラグ=0であって、リッチスパイクモード中ではない場合は、ステップ8に進む。
【0062】
一方、spフラグ=1であって、リッチスパイクモード中である場合は、図11に示すフローチャートのステップS301に進み、NOx再生(NOxの脱離・還元)のためのリッチスパイクを行う。
【0063】
ステップS8では、ステップS4で検知したPM堆積量が、DPF15の再生が必要な所定量PM1に達しているか否か、即ち、DPF再生時期になったか否かを判定する。
【0064】
そして、PM堆積量≦PM1であって、DPF再生時期ではないと判定された場合には、ステップS9に進む。
【0065】
一方、PM堆積量>PM1であって、DPF再生時期であると判定された場合には、図12に示すフローチャートのステップS401に進む。
【0066】
ステップS9では、ステップS3で検知した硫黄堆積量が、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒の解除が必要な所定量SM1に達しているか否か、即ち、硫黄被毒解除時期になったか否かを判定する。
【0067】
そして、硫黄堆積量≦SM1であって、硫黄被毒解除時期ではないと判定された場合には、ステップS10に進む。
【0068】
一方、硫黄堆積量>SM1であって、硫黄被毒解除時期であると判定された場合には、図13に示すフローチャートのステップS501に進む。
【0069】
ステップS10では、ステップS2で検知したNOx堆積量が、NOxの脱離・還元を行う必要がある所定量NOx1に達しているか否か、即ち、NOxの脱離・還元期になったか否かを判定する。
【0070】
そして、NOx堆積量≦NOx1であって、NOxの脱離・還元処理時期ではないと判定された場合には、そのまま本ルーチンを終了させる。
【0071】
一方、NOx堆積量>1であって、NOxの脱離・還元時期であると判定された場合には、図14に示すフローチャートのステップS601に進む。
【0072】
次に、DPF再生処理時におけるDPFの温度とPMの燃焼(酸化速度)との関係について説明する。
図4は、DPFの温度とPMの酸化速度の関係を示すグラフである。
図4に示すように、PMを燃焼させるために、即ち、DPFを再生するために、DPFの温度を昇温させていくと、600℃以上の温度でPMの酸化速度が指数関数的に急激に増大し、PMが暴走的に燃焼する。
【0073】
図5は、例えば再生のためにDPFの温度を650℃にし、運転状態を低負荷・低回転のアイドル運転に変更した場合のPM堆積量とDPFの温度との関係を示すグラフである。
図5に示すように、PM堆積量が多くなる程、PMの酸化速度が急激に増大すると、PMの酸化発熱によって、1000℃以上にDPFが昇温する。このようにDPFが一気に高温化するとDPFを構成する多孔質壁や触媒等が破壊され、DPFが損傷する。
【0074】
図6は、再生処理時のDPFの温度と、再生処理時におけるDPFの最高(Max)温度との関係を示すグラフである。
図6に示すように、PM堆積量が多くなるほど、再生処理時のDPFの温度を600℃程度にしても、PMの急速な酸化燃焼によって、DPFの温度が急激に上昇し、再生処理時におけるDPFの最高(Max)温度が1000℃以上の高温となる。
【0075】
図7は、再生処理時のDPFの目標温度とオイル希釈、燃費悪化の関係を示すグラフである。
図7に示すように、再生処理時のDPFの目標温度を550℃を超える温度にすると、排気温度を昇温するために、メイン燃料噴射後の追加燃料の噴射であるポスト噴射を行うか、メイン燃料噴射の噴射時期のリタード(遅角)を行う必要が生じる。このためオイル希釈が大きくなり、燃費が悪化する。
【0076】
図4に示すように、本発明者らが検討したところ、DPFにOSC性能を有する触媒が担持されている場合は、PMの急速な酸化燃焼が始まる600℃以下の温度、即ち、約450〜550℃の間は、PMの酸化特性が安定化する領域(DPF温度−PM酸化速度曲線が平らな棚状となる領域)があることが確認された。
【0077】
図8は、OSC性能を有する触媒が活性酸素の放出を開始するライトオフ温度と、PM酸化が開始される下限温度との関係を示すグラフである。
図8に示すように、OSC性能を有する触媒から活性酸素の放出を開始するライトオフ温度が低い程、PMの酸化特性が安定化する領域(DPF温度−PM酸化速度曲線が平らとなる棚状の領域)が拡大される。
そのため、DPFに担持させるOSC性能を有する触媒は、ライトオフ温度(活性酸素の放出を開始する温度)が低いものが好ましく、ライトオフ温度が400℃以下のものであることが好ましい。
【0078】
本実施形態の排気浄化装置は、触媒から放出された活性酸素によりPMが連続的に燃焼し、従来の温度(PMが自己着火する約600℃以上の温度)よりも低い温度で、DPFを再生することができる。そのため、DPFの再生処理時に、PMが急速に酸化燃焼して、DPFの温度が急激に上昇することがなく、DPFの損傷を防止することができる。
【0079】
また、本実施形態の排気浄化装置は、従来よりも低い温度で、DPFの再生処理を行うことができるため、温度上昇のために行っていたポスト噴射、メイン燃料噴射の噴射時期のリタード等を少なくすることができ、オイル希釈を回避し、燃費を向上させることができる。
【0080】
本実施形態の排気浄化装置は、低負荷の運転状態でも比較的容易に再生処理を行うことができ、再生処理の機会を増やすことができる。
【0081】
次に、図2に示すフローチャートのステップS5で、regフラグ=1と判定されたときのDPF再生処理を図9のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0082】
ステップS101では、DPFの再生要求に基づいて、DPF温度センサ25によりDPF15の温度を読み込む。
後述するように、DPF15の温度を、DPF15に担持されたOSC性能を有する触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つDPF15に堆積したPMが自己着火する温度以下の目標温度範囲にする。この目標温度範囲は、450〜550℃であることが好ましく、目標下限値T1が450℃、目標上限値T2が550℃である。
【0083】
ステップS102では、DPF15の温度が再生処理中の目標下限値T1以上であるか否かを判定する(T1≦DPF温度)。
【0084】
DPF15の温度が目標下限値T1以上である場合には、ステップS103に進む。
【0085】
一方、DPF15の温度が目標下限値T1未満の温度である場合には、ステップS108に進み、DPF15の温度を目標下限値に上昇させる。
【0086】
図15は、DPF再生時期の運転領域を示すマップであり、横軸は回転速度Ne、縦軸はメイン(Main)燃料噴射量Qを示している。
【0087】
ECU20は、エンジン回転数Ne及びメイン噴射量Qにより図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態に応じて、例えば運転状態が比較的高負荷の第1の運転領域である場合は、排気温度を上昇させる吸気流量を算出する。
【0088】
そして、ECU20は、開度指令信号を出力して、吸気スロットル6の開度を絞り、吸入新気量を減少させることにより、排気温度を上昇させて、DPF15の温度を上昇させる。または、ECU20は、開度指令信号を出力し、EGRバルブ12の開度を増加させて排気還流量を増大させることにより、排気温度を上昇させて、DPGF15の温度を上昇させる。
なお、吸気絞り(吸気スロットル6の開度)と排気絞り(EGRバルブ12の開度)は、吸気流量を変化させる装置なので、どちらか一方を操作すればよい。
【0089】
ECU20は、図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が第2の運転領域である場合は、吸気流量を算出すると共に、排気温度を上昇させるポスト噴射量を算出する。
【0090】
そして、ECU20は、吸気流量を調整すると共に、燃料噴射弁9へ燃料噴射指令信号を出力し、ポスト噴射量を減少させることにより、排気の空気過剰率λを変化(減少)させ排気温度を上昇させて、DPF15の温度を上昇させる。
エンジン2の運転状態が比較的低負荷である場合は、エンジンの吸気流量と、ポスト噴射量の両方を調整することによって、DPF15の温度を目標下限値T1以上に上昇させることができる。
【0091】
ECU20は、図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が第3の運転領域である場合は、吸気流量を算出すると共に、排気温度を上昇させるポスト噴射量を算出し、さらに必要に応じてメイン燃料の噴射時期を算出する。
【0092】
そして、ECU20は、吸気流量とポスト噴射量の調整の両方を行うと共に、必要に応じて、燃料噴射弁9への燃料噴射指令信号を出力し、メイン燃料の噴射時期を遅角(リタード)させ、排気温度を上昇させて、DPF15の温度を上昇させる。
【0093】
ステップS103では、DPF15の温度が再生処理中の目標上限値T2以下であるか否かを判定する(T2≧DPF温度)。
【0094】
DPF15の温度が目標上限値T2以下である場合には、ステップS104に進む。
【0095】
一方、DPF15の温度が目標上限値T2を超える温度である場合には、ステップS107に進み、DPF15の温度を目標上限値以下に下降させる。
【0096】
ECU20は、図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態に応じて、例えば運転状態が比較的高負荷の第1の運転領域である場合は、排気温度を上昇させる吸気流量を算出する。
【0097】
そして、ECU20は、吸気スロットル6の開度指令信号を出力して、吸気スロットル6の開度を開放し、吸入新気量を増大させることにより、排気温度を下降させて、DPF15の温度を下降させる。または、ECU20は、EGRバルブ12への開度指令信号を出力し、EGRバルブ12の開度を減少させて排気還流量を減少させることにより、排気温度を下降させて、DPGF15の温度を下降させる。
【0098】
ECU20は、図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が第2の運転領域である場合は、吸気流量を算出すると共に、排気温度を下降させるポスト噴射量を算出する。
【0099】
そして、ECU20は、吸気流量を調整すると共に、燃料噴射弁8へ燃料噴射指令信号を出力し、ポスト噴射量を増加させることにより、排気の空気過剰率λを変化(増加)させ排気温度を下降させて、DPF15の温度を目標上限値T2以下に下降させる。
【0100】
ECU20は、図15に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が第3の運転領域である場合は、吸気流量を算出すると共に、排気温度を下降させるポスト噴射量を算出し、さらに必要に応じてメイン燃料の噴射時期を算出する。
【0101】
そして、ECU20は、吸気流量とポスト噴射量の調整の両方を行うと共に、必要に応じて、燃料噴射弁8への燃料噴射指令信号を出力し、メイン燃料の噴射時期を進角させ、排気温度を下降させて、DPF15の温度を目標上限値T2以下に下降させる。
【0102】
ステップS104では、ステップS108又はステップS107でDPF15の温度を目標温度範囲にした後、この温度が維持されて所定時間tdpfregが経過したか否かを判断する。目標温度範の温度にDPF15が所定時間維持されると、PMが燃焼し、DPFが再生する。
目標温度範囲の温度にDPF15の維持された時間、即ち、DPFの再生処理時間time1が、所定時間tdpfregを経過した(time1≧tdpfreg)場合は、ステップS105に進む。
【0103】
一方、DPFの再生処理時間time1が、所定時間tdpfregを経過していないとき(time1<tdpfreg)は、DPF再生を継続させるべくステップS105〜ステップS106を迂回して、本ルーチンを終了させる。
【0104】
ステップS105では、DPFの再生処理が終了したと判定し、ポスト噴射を中止し、ステップS106に進む。
【0105】
ステップS106では、regフラグを0に設定する(regフラグ=0)。
【0106】
次に、図2に示すフローチャートのステップS6で、deselフラグ=1と判定されたときの硫黄被毒解除処理を、図10のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0107】
ステップS201では、硫黄被毒解除の要求に基づいて、NOxトラップ触媒の温度及び排気の空気過剰率を読み込む。
硫黄被毒解除処理においては、NOxトラップ触媒の温度の目標温度範囲は、680〜720℃であることが好ましい。
また、硫黄被毒解除処理においては、排気の空気過剰率λは0.9程度であることが好ましい。
【0108】
ステップS202では、NOxトラップ触媒の温度が硫黄被毒解除処理中の目標下限値t1以上であるか否か(t1≦NOxトラップ触媒温度)、排気中の空気過剰率λが目標値(λ=0.9)であるか否を判定する。
【0109】
NOxトラップ触媒14の温度が目標下限値t1以上であり、空気過剰率λが目標値(0.9)である場合には、ステップS203に進む。
【0110】
一方、NOxトラップ触媒14の温度が目標下限値t1以下であり、空気過剰率λが目標値ではない場合には、ステップS211に進み、NOxトラップ触媒14の温度を上昇させ、排気の空気過剰率を目標値にする。
【0111】
図16は、硫黄被毒解除時期の運転領域を示すマップであり、横軸は回転速度Ne、縦軸はメイン(Main)噴射量Qを示している。
【0112】
ECU20は、エンジン回転数Ne及びメイン噴射量Qにより図16に示すマップを検索し、エンジンの運転状態に応じて、例えば運転状態が比較的高負荷の運転領域である場合は、排気温度を上昇させる吸気流量と、ポスト噴射量を算出する
【0113】
そして、ECU20は、吸入新気量を減少させ又は排気還流量を増大させると共に、ポスト噴射量を減少させることにより、排気の空気過剰率λを0.9に調整する。
NOxトラップ触媒に堆積している硫黄分を放出させるには、排気中の還元剤(HC、CO等)を増加させ、リッチ〜ストイキ雰囲気を形成するだけではなく、NOxトラップ触媒の温度を上昇させることが必要になるので、例えばNOxトラップ触媒を加熱する等して、NOxトラップ触媒の温度を目標下限値t1以上に上昇させる。
【0114】
また、ECU20は、図16に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が比較的低負荷の運転領域である場合は、排気温度を上昇させる吸気流量と、ポスト噴射量を算出し、さらに必要に応じてメイン噴射の噴射時期を算出する。
【0115】
そして、ECU20は、吸気流量及びポスト噴射量の調整の両方を行うと共に、必要に応じて、メイン燃料の噴射時期を遅角(リタード)させ、排気の空気過剰率λを0.9に調整し、排気温度を上昇させる。排気温度の上昇だけでは、NOxトラップ触媒の温度が目標下限値以上にならない場合は、NOxトラップ触媒を加熱する等して、NOxトラップ触媒の温度を目標下限値t1以上に上昇させる。
【0116】
ステップS203では、NOxトラップ触媒14の温度が硫黄被毒解除中の目標上限値t2以下であるか否か(t2≧NOxトラップ触媒温度)、排気中の空気過剰率λが目標値(λ=0.9)であるか否を判定する。
【0117】
NOxトラップ触媒14の温度が目標上限値t2以下であり、空気過剰率λが目標値(0.9)である場合には、ステップS204に進む。
【0118】
一方、NOxトラップ触媒14の温度が目標上限値t2以下であり、空気過剰率λが目標値ではない場合には、ステップS210に進み、NOxトラップ触媒14の温度を下降させ、排気の空気過剰率を目標値にする。
【0119】
ECU20は、エンジン回転数Ne及びメイン噴射量Qにより図16に示すマップを検索し、エンジンの運転状態に応じて、例えば運転状態が比較的高負荷の運転領域である場合は、排気温度を下降させる吸気流量と、ポスト噴射量を算出する
【0120】
そして、ECU20は、吸入新気量を増大させ又は排気還流量を減少させると共に、ポスト噴射量を増大させることにより、排気の空気過剰率λを0.9に調整し、NOxトラップ触媒の温度を目標上限値t2以下に下降させる。
【0121】
また、ECU20は、図16に示すマップを検索し、エンジンの運転状態が比較的低負荷の運転領域である場合は、排気温度を上昇させる吸気流量と、ポスト噴射量を算出し、さらに必要に応じてメイン噴射の噴射時期を算出する。
【0122】
そして、ECU20は、吸気流量及びポスト噴射量の調整の両方を行うと共に、必要に応じて、メイン燃料の噴射時期を遅角(リタード)させ、排気の空気過剰率λを0.9に調整し、NOxトラップ触媒の温度を目標上限値t2以下に下降させる。
【0123】
ステップS204では、ステップS211又はステップS210でNOxトラップ触媒の温度を目標温度範囲にし、排気の空気過剰率を目標値にした後、この目標温度範囲の温度及び空気過剰率が所定時間(tdesul)が維持されたか否かを判断する。tdesulが経過するまでの間に、硫黄分が分解され、放出されて、硫黄被毒解除が終了する。
【0124】
硫黄被毒解除処理の時間time2が所定時間tdesulを経過した場合した場合は(time2≧tdesul)、ステップS205に進む。
【0125】
一方、硫黄被毒解除処理の時間time2が、所定時間tdesulを経過していないとき(time2<tdesul)は、硫黄被毒解除処理を継続させるべく、ステップS205〜ステップS209を迂回して本ルーチンを終了させる。
【0126】
ステップS205では、硫黄被毒解除処理が終了したと判定し、吸気流量の調整及びポスト噴射によるストイキ運転を解除し、通常の燃焼に戻し、ステップS206に進む。
【0127】
ステップS206では、desulフラグを0に設定する(desulフラグ=0)。
【0128】
ステップS207では、NOxトラップ触媒14のNOx堆積量を0にリセットする。
これは硫黄被毒解除を行うことで、NOxトラップ触媒14が長時間、リッチ〜ストイキの雰囲気に曝されることにより、硫黄分と共にNOxも放出され、NOx再生が同時に行われるためである。
【0129】
ステップS208では、NOxとラップ触媒14の硫黄堆積量を0にリセットする。
【0130】
ステップS209では、spフラグを0に設定する(spフラグ=0)。
【0131】
次に、図2に示すフローチャートのステップS7で、spフラグ=1と判定されたときのNOxトラップ触媒の再生処理を、図11のフローチャートに従って詳細に説明する。
【0132】
ステップS301では、NOxトラップ触媒14の再生要求に基づいて、排気の空気過剰率λをNOxトラップ触媒再生のために空気過剰率を目標値にする。
NOxトラップ触媒再生処理においては、排気の空気過剰率λは0.8程度であることが好ましい。
【0133】
NOxトラップ触媒14の雰囲気を一時的にリッチ(還元雰囲気)にすることにより、NOxトラップ触媒14にトラップされていたNOxを脱離・還元処理する。
【0134】
ステップS302では、空気過剰率を目標値にした時間、即ち、NOxトラップ触媒の再生処理時間(time3)が、所定時間(tspike)が維持されたか否かを判断する。リッチスパイク時間tspikeが経過するまでの間に、NOxが脱離され、還元されて、NOxトラップ触媒の再生処理が終了する。
【0135】
NOxトラップ触媒の再生処理時間time3が、リッチスパイク時間tspikeを経過した場合した場合は(time2≧tdesul)、ステップS303に進む。
【0136】
一方、NOxトラップ触媒の再生処理時間time3が、リッチスパイク時間tspikeを経過していないとき(time3<tspike)は、再生処理を継続させるべく、ステップS303を迂回して本ルーチンを終了させる。
【0137】
ステップS303では、NOxトラップ触媒の再生処理が終了したと判定し、spフラグを0に設定する(spフラグ=0)。
【0138】
図12は、DPF再生要求の設定のルーチンを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートのステップS8で、PM堆積量がDPF15の再生に必要な所定量PM1に達しており、DPF再生時期である判定された場合は、ステップS401でregフラグ=1に設定して、DPF再生要求を出す。
【0139】
図13は、硫黄被毒解除要求の設定のルーチンを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートのステップS9で、硫黄堆積量が、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒の解除が必要な所定量SM1に達しており、硫黄被毒解除時期であると判定された場合には、ステップS501でdesulフラグ=1に設定して、硫黄被毒解除要求を出し、ステップS502に進む。
【0140】
ステップS502では、regフラグ=1に設定して、硫黄被毒解除を行う前にDPF再生要求を出す。
【0141】
DPF再生要求に基づいて、図9に示すフローチャートのステップS101に進み、DPFの再生処理を行う。そして、ステップS106でregフラグ=0に設定され、DPF15の再生が終了したと判定した場合は、図10に示すフローチャートのステップS201に進み、NOxトラップ触媒14の硫黄被毒解除を行う。
【0142】
本実施形態においては、硫黄被毒解除を行う前に、必ずDPFの再生処理を行うようにしたので、硫黄被毒解除時には、DPFにはPMが堆積していないか、堆積量が少ない。DPF後に硫黄被毒解除をし、硫黄被毒解除が終了した時点の高温下で、空気過剰率λを即時に通常値に復帰させたとしても、DPFにPMが殆ど堆積していないので、PMの急速な酸化燃焼によるDPFの急激な温度上昇がない。そのため、DPFを損傷するおそれがなく、損傷防止のための空気過剰率λ制御が必要なくなり、制御性を向上させることができる。
【0143】
図14は、NOxトラップ触媒再生要求の設定のルーチンを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートのステップS10で、NOx堆積量がNOxトラップ触媒の再生に必要な所定量NOx1に達しており、NOxトラップ触媒再生時期である判定された場合は、ステップS601でspフラグ=1に設定して、NOxトラップ触媒再生要求を出す。
【0144】
本実施形態に関して、図2に示すフローチャートのステップS1が運転領域判定手段を、
ステップS4がPM堆積量推定手段を、ステップS5とステップS8が再生時期判定手段を構成し、図9に示すフローチャート全体が再生制御手段を構成する。
【0145】
また、本実施形態に関して、図2に示すフローチャートのステップS3が硫黄堆積量推測手段を、ステップS6とステップS9が硫黄被毒解除時期判定手段を、図13に示すフローチャートのステップS502がパティキュレートフィルタ再生要求手段を、図9に示すステップS106が再生終了判定手段を、図10に示すフローチャート全体が硫黄被毒解除制御手段を構成する。
【0146】
本発明の排気浄化装置は、空燃比をリーンにして運転を行う直噴ガソリンエンジンに適用することもできる。
【符号の説明】
【0147】
1 内燃機関の排気浄化装置
2 ディーゼルエンジン
3 吸気通路
4 可変ノズルターボチャージャ
4a コンプレッサ
4b タービン
5 インタークーラ
6 吸気スロットル
7 燃料噴射ポンプ
8 高圧コモンレール
9 燃料噴射弁
10 排気通路
11 排気循環通路
12 EGRバルブ
13 酸化触媒
14 NOxトラップ触媒
15 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)
20 ECU(エンジンコントロールユニット)
21 エンジン回転センサ(クランク角センサ)
22 アクセル開度センサ
23 NOxトラップ触媒温度センサ
24 圧力センサ
25 DPF温度センサ
26 λセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
上記内燃機関の排気通路に配置された、排気中のNOxを吸蔵し還元放出するNOxトラップ触媒と、
上記NOxトラップ触媒の排気下流側に配置された、活性酸素を放出する触媒が担持され、排気中の粒子状物質を捕獲するパティキュレートフィルタを備え、
上記NOxトラップ触媒に堆積した硫黄分の堆積量を推測する硫黄堆積量推測手段と、
上記硫黄分の堆積量に基づいて、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除時期を判定する硫黄被毒解除時期判定手段と、
上記硫黄被毒解除時期判定手段が硫黄被毒解除時期であると判定した場合は、硫黄被毒解除を行う前に、上記パティキュレートフィルタの再生要求を行うパティキュレートフィルタ再生要求手段と、
上記再生要求に基づいて、上記パティキュレートフィルタの温度を、上記触媒が活性酸素を放出する温度以上、且つパティキュレートフィルタに堆積した粒子状物質が自己着火する温度以下の目標温度範囲にする再生制御手段と、
上記ディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が終了したか否かを判定する再生終了判定手段と、
上記再生終了判定手段が、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理が終了したと判定した場合には、NOxトラップ触媒の硫黄被毒解除をする硫黄被毒解除制御手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−246930(P2012−246930A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157256(P2012−157256)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2008−221580(P2008−221580)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】