説明

内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】内燃機関から熱負荷を受ける部品を適切に保護することができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関EGから熱負荷を受ける部品127の温度を推定する温度推定手段11と、前記部品の推定温度に基づいて前記部品に印加された熱負荷による被害度を演算する被害度演算手段11と、前記被害度が所定値以上に達した場合に前記内燃機関に対する燃料噴射量を増量する制御手段11と、を備え、被害度が大きいほど燃料噴射量の増量値を大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系の部品の熱疲労を検出する装置として、運転状態に基づいて部品の温度を推定し、推定された部品温度に基づいて部品の熱疲労に関する指数を求め、当該指数の積算値が閾値を超えると警告を発生させるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−85183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した熱疲労の検出装置では排気系の部品が熱疲労を起こしても適切に保護できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、内燃機関から熱負荷を受ける部品を適切に保護することができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関から熱負荷を受ける部品の温度を推定し、当該推定温度に基づいて部品の被害度を演算し、当該被害度に応じて燃料噴射量を増量制御することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品の被害度に応じて燃料噴射量の増量制御を実行するので、内燃機関から熱負荷を受ける部品を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用した内燃機関を示すブロック図である。
【図2】図1のエンジンコントロールユニットの燃料噴射制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS3〜S7の燃料噴射制御の時間的制御内容を示すタイムチャートである。
【図4】図2のステップS9〜S12の燃料噴射制御の内容を示すグラフである。
【図5】図2のステップS8の被害度をレインフロー法により演算する場合の例を説明するグラフである。
【図6】図5のレインフロー法による演算結果からマイナー則を用いて被害度を演算する場合の例を説明するグラフである。
【図7】図2のステップS10で用いられる被害度超過量と燃料増量との関係の一例を示す制御マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態を適用した内燃機関を示すブロック図であり、火花点火式エンジンEGに本発明の燃料噴射制御装置を適用した例を説明する。
【0010】
図1において、エンジンEGの吸気通路111には、エアーフィルタ112、吸入空気流量を検出するエアフローメータ113、吸入空気流量を制御するスロットルバルブ114およびコレクタ115が設けられている。
【0011】
スロットルバルブ114には、当該スロットルバルブ114の開度を調整するDCモータ等のアクチュエータ116が設けられている。このスロットルバルブアクチュエータ116は、運転者のアクセルペダル操作量等に基づき演算される要求トルクを達成するように、エンジンコントロールユニット11からの駆動信号に基づき、スロットルバルブ114の開度を電子制御する。また、スロットルバルブ114の開度を検出するスロットルセンサ117が設けられて、その検出信号をエンジンコントロールユニット1へ出力する。なお、スロットルセンサ117はアイドルスイッチとしても機能させることができる。
【0012】
また、コレクタ115から各気筒に分岐した吸気通路の燃料噴射ポート111aに臨ませて、燃料噴射バルブ118が設けられている。燃料噴射バルブ118は、エンジンコントロールユニット11において設定される駆動パルス信号によって開弁駆動され、図外の燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に制御された燃料を燃料噴射ポート111a内に噴射する。なお、本発明では、燃料噴射バルブ118からの燃料が燃焼室123に直接噴射されるように設けてもよい。本発明は、エンジンEGから熱負荷を受ける部品が過熱状態になるのを防止するために燃料を増量し、燃焼温度を低下させることで当該部品を保護する制御を実行する。以下の実施の形態では、排気浄化触媒127を保護部品として説明するが、本発明では排気浄化触媒127の他、エンジンEGから熱負荷を受ける、吸気バルブ121、排気バルブ122、排気通路125に設けられた空燃比センサ126、酸素センサ128、排気温度センサ140などを保護部品としてもよい。この燃料増量制御の詳細は後述する。
【0013】
シリンダ119と、当該シリンダ内を往復移動するピストン120の冠面と、吸気バルブ121及び排気バルブ122が設けられたシリンダヘッドとで囲まれる空間が燃焼室123を構成する。点火プラグ124は、各気筒の燃焼室123に臨んで装着され、エンジンコントロールユニット11からの点火信号に基づいて吸入混合気に対して点火を行う。
【0014】
一方、排気通路125には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出することにより排気、ひいては吸入混合気の空燃比を検出する空燃比センサ126が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。この空燃比センサ126は、リッチ・リーン出力する酸素センサであっても良いし、空燃比をリニアに広域に亘って検出する広域空燃比センサであってもよい。
【0015】
また、排気通路125には、排気を浄化するための排気浄化触媒127が設けられている。この排気浄化触媒127としては、ストイキ(理論空燃比,λ=1、空気重量/燃料重量=14.7)近傍において排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCを酸化するとともに、窒素酸化物NOxの還元を行って排気を浄化することができる三元触媒、或いは排気中の一酸化炭素COと炭化水素HCの酸化を行う酸化触媒を用いることができる。
【0016】
排気通路125の排気浄化触媒127の下流側には、排気中の特定成分、たとえば酸素濃度を検出し、リッチ・リーン出力する酸素センサ128が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。ここでは、酸素センサ128の検出値により、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を補正することで、排気浄化触媒127の劣化等に伴う制御誤差を抑制するため(いわゆるダブル空燃比センサシステム採用のため)に下流側酸素センサ128を設けて構成したが、空燃比センサ126の検出値に基づく空燃比フィードバック制御を行なわせるだけでよい場合には、酸素センサ128を省略することができる。
【0017】
排気通路125の排気浄化触媒127の入口近傍には排気温度を検出する排気温度センサ140が設けられ、その検出信号はエンジンコントロールユニット11へ出力される。なお、図1において129はマフラである。
【0018】
エンジンEGのクランク軸130にはクランク角センサ131が設けられ、エンジンコントロールユニット11は、クランク角センサ131から機関回転と同期して出力されるクランク単位角信号を一定時間カウントすることで、又は、クランク基準角信号の周期を計測することで、エンジン回転速度Neを検出することができる。
【0019】
エンジンEGの冷却ジャケット132には、水温センサ133が当該冷却ジャケットに臨んで設けられ、冷却ジャケット131内の冷却水温度Twを検出し、これをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0020】
エンジンEGが搭載された車両のエンジンルームには、外気温センサ141が設けられ、エンジンEGの外部環境温度を検出しこれをエンジンコントロールユニット11へ出力する。また、エンジンルームの前方にはエンジンEGの冷却水を冷却するためのラジエータ(放熱器)が搭載され、ラジエータファンを備えるが、このラジエータファンを駆動するラジエータファンモータには回転速度センサ142が設けられ、ラジエータファンの回転速度を検出しこれをエンジンコントロールユニット11へ出力する。
【0021】
既述したように、各種センサ類113,117,126,128,131,133,140,141,142からの検出信号は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェース等を含んで構成されるマイクロコンピュータからなるエンジンコントロールユニット11に入力され、当該エンジンコントロールユニット11は、センサ類からの信号に基づいて検出される運転状態に応じて、スロットルバルブ114の開度を制御し、燃料噴射バルブ118を駆動して燃料噴射量と燃料噴射時期を制御する。
【0022】
特に本例では、エンジンEGから熱負荷を受ける部品である排気浄化触媒127の推定温度から熱負荷に関する被害度を演算し、所定の上限被害度に達すると燃料噴射量を増量し、保護対象部品である排気浄化触媒127の過熱を防止する。増量制御の際は、燃料噴射量の基本値に対するオフセット補正やゲイン補正を採用することができる。なお、熱負荷に関する被害度の演算例は後述する。
【0023】
図2はこの制御内容の一例を示すフローチャートであり、排気浄化触媒127の過熱を防止するための燃料の増量制御について説明する。この制御フローは短い演算サイクル周期で(例えば100msec毎に)繰り返し実行される。ステップS1では、排気温度センサ140により排気通路125の排気浄化触媒127の上流側近傍の排気温度を読み込み、エアフローメータ113により吸入空気量を読み込み、外気温度センサ141によりエンジンルーム内のエンジンEGの外部環境温度を読み込み、クランク角センサ131によりエンジン回転速度を介して車速を読み込み、ラジエータファン回転速度センサ142よりラジエータファン回転速度を読み込む。
【0024】
ステップS2では、ステップS1にて読み込まれた排気温度、吸入空気量、外気温度、車速及びラジエータファン回転速度の各検出値に基づいて排気浄化触媒127の温度Tを推定する。排気浄化触媒127の温度は、排気温度センサ140の検出温度に対し、当該排気温度センサ140自体の応答遅れ補正と、吸入空気量による過渡応答補正と、外気温度,車速及びラジエータファン回転速度による雰囲気温度の補正を実行して求める。たとえば、吸入空気量が多いと過渡応答が速く、吸入空気量が少ないと過渡応答が遅い。また、外気温度が低い場合や車速が大きい場合やラジエータファン回転速度が大きい場合は、雰囲気温度により排気通路125が冷却される方向に作用するので排気温度をマイナス側に補正する。逆に外気温度が高い場合や車速が小さい場合やラジエータファン回転速度が小さい場合は、雰囲気温度により排気通路125が加熱される方向に作用するので排気温度をプラス側に補正する。
【0025】
ステップS3では、ステップS2にて求めた排気浄化触媒127の推定温度Tと、予め設定された増量開始閾値とを比較し、推定温度Tが増量開始閾値以上である場合は、ステップS9の被害度の大きさに拘らずステップS5へ進んで燃料噴射量を増量制御する。以降の演算サイクルで、推定温度Tが増量開始閾値以上であり続ければ、ステップS5に進んで増量制御が継続される。これにより、耐熱性が限られた温度以下である触媒を含む排気浄化触媒127を適切に保護することができる。ステップS3にて推定温度Tが増量開始閾値未満である場合はステップS4へ進み、エンジンEGの運転状態(負荷)が燃料噴射量の増量制御領域、たとえば所定回転速度以上かつ所定トルク以上であるか否かを判断する。ステップS4にてエンジンEGの運転状態が燃料増量制御領域内にある場合はステップS6へ進み、燃料噴射量の増量制御中か否かを判断する。ステップS6にて燃料噴射量の増量制御中でない場合はステップS8へ進み、燃料噴射量の増量制御は実行しない。すなわち、運転条件が燃料増量制御領域内に入ったとしても、触媒推定温度Tが増量開始閾値を超えてステップS5を実行しない限り増量制御は開始されない。また、増量開始後は、触媒推定温度Tが増量開始閾値を下回ったとしても、燃料増量制御領域内から外れない限り、ステップS4からステップS6及びステップS7へと進んで増量制御が継続する。ステップS7では、ステップS5で設定した増量よりも少ない量の増量が実施される。運転状態が燃料増量制御領域内から外れると、ステップS4からステップS8へと進んで増量制御が終了する。この様子を図3に示す。
【0026】
図3は、エンジン負荷が上昇して燃料増量制御領域に入り、排気浄化触媒127の推定温度が増量開始閾値に達すると、燃料噴射バルブ118からの燃料噴射量の増量制御を開始し、推定した排気浄化触媒127の温度が増量開始閾値以下になるまで増量大の制御を継続することを示す。ステップS4にてエンジンEGの運転状態が燃料増量制御領域内にない場合はステップS8へ進み、燃料噴射の増量制御は実行せず、通常のエンジン負荷に基づいた燃料噴射量とする。また、ステップS4にてエンジンEGの運転状態が燃料増量制御領域内にある場合はステップS6へ進み、燃料噴射量の増量制御中か否かを判断する。
【0027】
ステップS6にて、燃料噴射量の増量制御中である場合はステップS7へ進み、燃料噴射量の増量を低減する。すなわち、図3に示すように燃料噴射量の増量制御を増量大→増量小に変更する。これにより、無駄な燃料噴射を抑制して燃費を向上させる一方で、再びエンジン負荷が上昇して排気浄化触媒127の推定温度が像了解し閾値を超えても迅速に対応することができる。
【0028】
なお、ステップS6にて燃料噴射量の増量制御中でない場合はステップS8へ進み、それまで燃料噴射量の増量制御を行っていた場合はその増量制御を停止し、増量制御を行っていなかった場合は継続して燃料噴射量の増量制御は実行しない。
【0029】
ステップS9では、排気浄化触媒127に印加された熱負荷による被害度を演算する。本例における被害度は、排気浄化触媒127に印加された熱負荷の時系列データに基づいてサイクルカウントを行い、熱負荷振幅とその頻度を抽出し、これら熱負荷振幅とその頻度に基づいて累積損傷則により被害度を求める。以下、その演算例を説明する。
【0030】
まず、ステップS2の演算によって得られた推定温度の時系列データの一例を図5に示す。時系列データは、本例では例えば、1トリップ(イグニッションスイッチONで運転を開始した後イグニッションスイッチOFFで運転を終える迄の期間)毎にトリップ中の推定温度の経過を記録したものを採用している。時系列に沿って温度T→T→T→T→T→T→T→T→T→T→T10という温度履歴を経たものとする。この推定温度の時系列データを、レインフロー法(雨だれ法)を用いてサイクルカウントし、熱負荷振幅とその頻度を抽出する。なお、サイクルカウントを行うアルゴリズムはレインフロー法にのみ限定されず、ピークカウント法、レベルクロッシングカウント法、ミーンクロッシングカウント法、レンジカウント法、レンジペアカウント法なども用いることができる。
【0031】
レインフロー法により図5の温度履歴をサイクルカウントすると、図示する矢印1本が半サイクルに相当する。すなわち、T→T→Tの半サイクルと、T→T→T→T→T10の半サイクルと、T→T(厳密にはTの手前まで)の半サイクルと、T→T(厳密にはTの手前まで)の半サイクルと、T→Tの半サイクルと、T→T→T(厳密にはTの手前まで)の半サイクルと、T→T→Tの半サイクルと、T→T(厳密にはTの手前まで)の半サイクルと、T→T(厳密にはTの手前まで)の半サイクルと、T→T10(厳密にはT10の手前まで)の半サイクルと、にカウントできる。このようにして熱負荷振幅とその頻度を抽出する。抽出された熱負荷振幅を縦軸の温度T、その頻度を横軸nとして図6の棒グラフに示す。図6の棒グラフは、排気浄化触媒127の使用時間(ライフ)に相関して増加するものであり、トリップ毎の時系列データから得られる熱負荷振幅の頻度を累積したものである。なお、図6は累積損傷則(修正マイナー則又はマイナー則)を用いた被害度の演算例を説明するための図であって、図5の具体的数値と図6の数値は対応しない。
【0032】
図6の棒グラフは熱負荷振幅Tとその頻度nを示し、同図右の直線は当該排気浄化触媒127のS−N線図を示す。厳密には、S−N線図の傾きを疲労限度以下まで直線で延長したものである。このS−N線図は、該当する排気浄化触媒127を用いて実験的又はコンピュータシミュレーションにより予め求めることができる。そして、各熱負荷振幅がS−N線図と交わる点の頻度(繰り返し回数)をNとすると、
[数1]
D=(n/N)+(n/N)+…+(n/N)=Σ(n/N
を排気浄化触媒127の熱負荷に関する被害度と定義し、D≧1の場合に、排気浄化触媒127が熱疲労により破壊するものとする。
【0033】
図2のステップS9に戻り、熱負荷に関する被害度Dを演算したらステップS10へ進み、演算された被害度Dと被害度閾値(図4及び図7では被害度コントロールライン)と比較する。図4に被害度閾値の一例を点線で示す。図4は排気浄化触媒127の使用時間(ライフ)に相関する累積の走行距離を横軸に、被害度Dを縦軸にプロットしたグラフであり、排気浄化触媒127が熱疲労により破損しない保証距離と被害度D=1が対応する直線を被害度閾値(被害度コントロールライン)に設定した例である。勿論、これ以外の被害度閾値を設定してもよい。
【0034】
そして、所定の走行距離間隔(時間間隔でもよい)で演算した被害度Dが被害度閾値を超えているか否かをステップS10で判断する。被害度Dが被害度閾値以上の場合はステップS11へ進み、被害度Dの被害度閾値からの超過量を演算し、図7に示す制御マップにしたがって増量値を求め、ステップS12へ進んで燃料噴射量を増量制御する。すなわち、被害度Dが被害度閾値から超過すればするほど燃料噴射量の増量を大きく設定する。これにより、理想的な被害度Dの推移を実現し(被害度コントロールラインを辿らせて)、被害度が早く大きくなって触媒が早期に破損するのを防ぎつつ、一方で過剰な増量制御による燃費の悪化を防止して、効率的に排気浄化触媒127を保護することができる。
【0035】
ステップS10にて被害度Dが被害度閾値未満の場合はステップS13へ進み、燃料噴射量の増量を低減する。ここでの低減は増量値=0も含むものとする。これにより、不必要な燃料消費を抑制することができ、燃費向上に寄与することができる。本例では、触媒推定温度Tが増量開始閾値を超えている場合、増量の量が元々大きいことから被害度Dに基づく燃料噴射量の増量は行なっていないが、触媒推定温度Tが増量開始閾値を超えたことに基づく増量を行なっている場合にも、被害度Dに基づく燃料噴射量の増量を行なっても良い。
【0036】
以上のとおり、本例の内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、熱負荷に関する被害度Dが被害度閾値以上になった場合に燃料噴射量の増量制御を実行するので、排気浄化触媒127などの熱負荷を受ける部品を適切に保護することができる。
【0037】
また本例によれば、排気温度センサ140だけでなくエンジンEGの種々の環境温度を検出して排気浄化触媒127などの部品温度を推定するので、推定精度が向上すると同時に被害度の演算精度も向上する。これにより、排気浄化触媒127等の適切な保護と燃費向上が達成できる。
【0038】
また本例によれば、被害度Dの被害度閾値からの超過量に応じて増量値を設定するので、被害度Dを被害度閾値に沿って制御することができ、その結果、排気浄化触媒127等の延命が図られる。
【0039】
また本例によれば、被害度Dの値に拘らず、推定温度が増量開始閾値以上となったら増量制御を実行するので、熱負荷に弱い触媒が含まれていても排気浄化触媒127の破損を適切に防止することができる。
【0040】
上記エンジンコントロールユニット11は本発明に係る温度推定手段,被害度演算手段及び制御手段に相当し、上記排気浄化触媒127は本発明に係る部品に相当し、上記排気温度センサ140は本発明に係る温度センサに相当し、上記エアフローメータは本発明に係る吸入空気量センサに相当する。
【符号の説明】
【0041】
EG…エンジン(内燃機関)
11…エンジンコントロールユニット
111…吸気通路
111a…燃料噴射ポート
112…エアーフィルタ
113…エアフローメータ
114…スロットルバルブ
115…コレクタ
116…スロットルバルブアクチュエータ
117…スロットルセンサ
118…燃料噴射バルブ
119…シリンダ
120…ピストン
121…吸気バルブ
122…排気バルブ
123…燃焼室
124…点火プラグ
125…排気通路
126…空燃比センサ
127…排気浄化触媒
128…酸素センサ
129…マフラ
130…クランク軸
131…クランク角センサ
132…冷却ジャケット
133…水温センサ
140…排気温度センサ
141…外気温センサ
142…ラジエータファン回転速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から熱負荷を受ける部品の温度を推定する温度推定手段と、
前記部品の推定温度に基づいて前記部品に印加された熱負荷による被害度を演算する被害度演算手段と、
前記被害度が所定値以上に達した場合に前記内燃機関に対する燃料噴射量を増量する制御手段と、を備える内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記所定値が、触媒使用時間に応じて予め定められている請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記温度推定手段は、
前記部品の近傍に設けられて前記部品の環境温度を検出する温度センサと、
前記内燃機関の吸入空気量を検出する吸入空気量センサと、
前記内燃機関の外部の環境温度を検出する外気温センサと、
前記内燃機関が搭載された車両の速度を検出する車速センサと、
前記車両に設けられたラジエータファンモータの回転速度を検出するファン回転速度センサと、を含み、
前記温度センサにより検出された部品の環境温度を、前記吸入空気量センサで検出された吸入空気量と、前記外気温センサにより検出された外部の環境温度と、前記車速センサにより検出された車両の速度と、前記ファン回転速度センサにより検出されたラジエータファンモータの回転速度とにより補正して前記部品の温度を推定する請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記被害度演算手段は、前記部品に印加された熱負荷の時系列データに基づいてサイクルカウントを行い、熱負荷振幅とその頻度を抽出し、これら熱負荷振幅とその頻度に基づいて累積損傷則により前記被害度を演算する請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記被害度の所定値からの超過量が大きいほど前記燃料噴射量の増量値を大きく設定する請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記部品の推定温度が所定温度以上に達した場合には、前記被害度の大きさに拘らず前記燃料噴射量を増量する請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7289(P2013−7289A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139042(P2011−139042)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】