説明

内燃機関の燃焼制御装置

【課題】製造コストや制御負担を増加させることなく、イオン電流に基づいて適切な運転制御が可能となる内燃機関の燃焼制御装置を提供する。
【解決手段】点火プラグ5に高電圧を供給して放電動作を実現する点火コイル1と、スイッチング動作によって点火コイル1に高電圧を誘起させるスイッチング素子2と、点火プラグの放電動作と逆方向の電流を検出するイオン電流検出回路3と、電子制御回路4と、を有する。イオン電流検出回路3の検出信号SGを受ける電子制御回路4は、12ビットの分解能で、検出信号SGをデジタル変換して記憶するデータ記憶手段(ST1)と、記憶された信号データにBPF処理を施して抽出されるノック信号に基づいて燃焼制御を実行する制御手段(ST2〜ST4)と、を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジンなどの内燃機関において、電子制御回路の制御負担を増加させることなく、運転状態の異常を確実に検出できる燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室で混合気を燃焼させるとイオンが発生することが一般に知られている。昨今、このイオンに対応するイオン電流に着目した燃焼制御の研究が盛んであり、例えば、イオン電流の波形に基づいて失火検知することが行われている。具体的には、燃焼から排気に至る工程において、イオン電流が所定レベルを越えると燃焼状態であると判定し、一方、所定レベルを越えない場合には失火状態であると判定している。
【0003】
また、イオン電流の波形に基づいてノックングの発生を検知することも行われている。ノッキングは、混合気の自然発火(プレ・イグニッション)によって発生した爆発と、点火プラグによって発生した爆発がぶつかり合い、衝撃波を発生する異常状態を意味するが、イオン電流に重畳するノック信号によって、この異常事態を把握することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、イオン電流を解析することによって、運転状態の異常を検知できるものの、そもそもイオン電流は、運転状態に応じてそのレベルが大きく変化して、ダイナミックレンジが非常に大きいので、その取り扱いが困難であるという問題がある。
【0005】
具体的には、低回転・低負荷時には、イオン電流のレベルが非常に小さいが、これが、高回転・高負荷では大きくなるので、このダイナミックレンジの広さに対応して、如何なる運転条件でも、確実にイオン電流信号を取得できる構成が必要となる。
【0006】
ここで、低回転・低負荷時の非常に微弱なイオン電流を確実に取得するべく、イオン電流検出回路の検出感度を高めることはできるが、このような構成では、高回転・高負荷時にイオン電流が飽和してしまい適切な燃焼制御が不可能となる。
【0007】
一方、A/Dコンバータの分解能を上げることで、低回転・低負荷時のイオン電流を取得することも考えられるが、このような構成では、A/D変換時に多大な処理時間を要するため、サンプリング周波数をあまり上げることができないという問題がある。そして、仮に、製造コストを無視して処理速度の速いA/Dコンバータを採用したとしても、取得した大ビット長のデジタルデータについて、その演算処理などの制御負担が著しく増大するという弊害が生じる。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、製造コストや制御負担を増加させることなく、イオン電流に基づいて適切な運転制御が可能となる内燃機関の燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明者は、イオン電流の検出レベルが異なる種々の運転状態における燃焼制御実験を繰り返した。その結果、検出されるイオン電流のダイナミックレンジは相当に広いものの、
(1)イオン電流の時間積分値に基づいて運転制御を実行するだけであれば、それほど、分解能を上げる必要はないこと、
(2)一方、イオン電流のピーク値やピーク位置(以下、イオンピークという)に基づいて運転状態を把握する場合、或いは、ノック信号に基づいて運転異常状態を検出する場合には、より精密にイオン電流を検出する必要があること、
(3)但し、運転状態の変化に拘らず、0V〜5Vの電圧レベルの範囲で検出信号を取得するイオン電流検出回路で実験すると、せいぜい0.3mV以上のノック信号を検出できれば十分であって、運転制御上、それより微細な変化まで検出することは不要であること、
(4)したがって、イオン電流のダイナミックレンジが如何に広いとはいえ、分解能14ビット(つまり、16384段階≒5V/0.3mV)を超えて、検出信号を取得しても余り意味がないこと、
(5)一方、少なくとも、2.5mVの電圧変化を読み落としたのでは、適切な運転制御を実現できないこと、
(6)したがって、少なくとも、分解能11ビット(つまり、2048段階>5V/2.5mV)以上の精密さで検出信号を取得する必要があること、
を知見して本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、点火プラグに高電圧を供給して放電動作を実現する点火コイルと、スイッチング動作によって前記点火コイルに高電圧を誘起させるスイッチング素子と、前記点火プラグの放電動作と逆方向の電流を検出するイオン電流検出回路と、前記イオン電流検出回路の検出信号を受ける電子制御回路とを備え、前記電子制御回路は、11ビット以上〜14ビット以下の分解能で、前記検出信号をデジタル変換して記憶するデータ記憶手段と、前記記憶された信号データにBPF処理を施して抽出されるイオン電流信号の付随信号に基づいて燃焼制御を実行する制御手段と、を有して構成されている。本発明の付随信号は、点火プラグの放電動作によらない、混合気の自然着火を示すノック信号が、その典型例である。
【0011】
また、本発明は、点火プラグに高電圧を供給して放電動作を実現する点火コイルと、スイッチング動作によって前記点火コイルに高電圧を誘起させるスイッチング素子と、前記点火プラグの放電動作と逆方向の電流を検出するイオン電流検出回路と、前記イオン電流検出回路の検出信号を受ける電子制御回路とを備え、前記電子制御回路は、11ビット以上〜14ビット以下の分解能で、前記検出信号をデジタル変換して記憶するデータ記憶手段と、前記記憶された信号データに基づいて、イオン電流信号の時間積分値、及び/又は、そのピークを含んだ特徴パラメータを抽出し、この特徴パラメータに基づいて燃焼制御を実行する制御手段と、を有して構成されている。
【0012】
上記いずれの発明も、11ビット以上〜14ビット以下の分解能で、イオン電流検出回路からの検出信号をデジタル変換して記憶する点に大きな特徴がある。11ビット未満の分解能で検出信号を取得した場合には、先に説明した通り、低レベルのノック信号やイオンピークが検出不能となる。
【0013】
一方、14ビットを超える分解能で検出信号を取得しても、抽出されるノック信号やイオンピークに基づく制御性能に殆ど寄与しないため制御性能が飽和する。しかも、扱うデジタルデータのビット長が大きい分だけ、演算処理に長時間を要し、高価な電子制御回路を要するという弊害も生じる。したがって、市場での入手容易性や製造コストなども含めて考慮すると、最適には、12ビットの分解能で検出信号を取得すべきである。
【0014】
すなわち、本発明の電子制御回路には、検出信号を受けるA/Dコンバータが設けられ、検出信号は正電圧レベルの信号としてA/Dコンバータに供給され、12ビット長の信号データに変換されて記憶されるのが好ましい。
【0015】
例えば、ノック信号の周波数は、内燃機関の構造によって異なるものの、典型的には7kHz程度であるので、A/Dコンバータは、20kHz以上のサンプリング周波数で動作して、検出信号をデジタル変換するのが好ましい。但し、本発明では、11ビット以上の分解能で検出信号を取得する必要があるので、むやみに、サンプリング周波数を上げるべきではなく、40kHz未満に設定される。
【0016】
本発明においてBPF処理の対象となる信号データは、点火プラグの放電終了後に発生する放電ノイズの振動が収束した後の信号データとすべきである。このような構成を採る場合には、放電ノイズは、運転制御のための解析対象から除外されるので、BPF処理の対象となる検出信号を、A/Dコンバータのフルレンジ(0〜MAX)を超えない最大限まで増幅して供給することができる。言い換えると、予想される検出信号の最大値が、A/Dコンバータへの最大入力許容値MAXになるよう、BPF処理の対象となる検出信号を最大限まで増幅することができる。
【0017】
BPF処理は特に限定されないが、ノック信号を抽出する目的では、5kHz〜10kHz程度の通過域を有するBPF処理を使用するのが好適である。
【発明の効果】
【0018】
上記した通り、本発明によれば、製造コストや制御負担を増加させることなく、イオン電流に基づいて適切な運転制御が可能となる内燃機関の燃焼制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1(a)は、内燃機関用の燃焼制御装置EQUを示す回路図である。この燃焼制御装置EQUは、1次コイル1Pと2次コイル1Sとが電磁結合された点火コイル1と、点火コイル1を断続的に駆動するスイッチングトランジスタ2と、点火コイルの2次コイル1Sに接続されたイオン電流検出回路3と、スイッチングトランジスタ2をON/OFF制御すると共にイオン電流検出回路3からのアナログ検出信号SGを受けるECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)4とで構成されている。そして、点火コイルの2次コイル1Sとグランドラインとの間に点火プラグ5が接続されている。
【0021】
図示の通り、スイッチングトランジスタ2のベース端子は、ECU4に接続され、コレクタ端子は、点火コイルの一次コイル1Pに接続され、エミッタ端子は、グランドラインに接続されている。
【0022】
イオン電流検出回路3は、点火プラグ5の放電電流で充電されるバイアス用のコンデンサCと、コンデンサCに並列接続されてコンデンサCの充電電圧を規制するツェナーダイオードZDと、ツェナーダイオードZDに直列接続されたダイオードD1と、ダイオードD1の両端に接続された増幅部AMPとで構成されている。
【0023】
ツェナーダイオードZDとダイオードD1のアノード端子は、互いに直結され、ダイオードD1のカソード端子はグランドラインに接続されている。また、ツェナーダイオードZDのカソード端子は、二次コイル1Sに接続されている。
【0024】
イオン電流検出回路3の増幅部AMPは、反転端子と非反転端子と出力端子とを有する増幅素子Q1と、増幅素子Q1の反転端子に接続される入力抵抗R1と、増幅素子Q1の反転端子と出力端子の間に接続される帰還抵抗R2とで構成されている。なお、増幅素子Q1の反転端子とグランドラインとの間に、増幅素子Q1を保護するためのダイオードD2を接続しても良い。
【0025】
増幅素子Q1として、この実施形態では、OPアンプを使用している。OPアンプは、その入力インピーダンスがほぼ無限大で、反転端子と非反転端子との間が、仮想的に短絡状態である。そのため、図1(b)に示す電流Iは、入力抵抗R1と帰還抵抗R2に共通して流れることになり、増幅部AMPの出力電圧Voutは、電流Iと帰還抵抗R2の積となる(Vout=I×R2)。つまり、この増幅部AMPでは、帰還抵抗R2が入力電流Iの検出抵抗として機能している。
【0026】
図1の回路構成において、二次コイル1Sに負の高電圧が発生すると、図1(a)に示すように、点火プラグ5が点火放電し、点火電流がコンデンサCを充電する。この時、コンデンサCにはツェナーダイオードZDが並列接続されているので、コンデンサCの両端電圧は、ツェナーダイオードZDの降伏電圧Vzに一致する。なお、この放電時には、ダイオードD1が短絡状態(ON)となるので、入力抵抗R1やその他の回路素子に流れる電流を無視することができる。
【0027】
その後、二次コイル1Sの高電圧が消滅すると(図1(d)参照)、コンデンサCに充電されたバイアス電圧は、図1(b)に示す経路で放電する。この放電電流は、イオン電流Iに他ならず(図1(e)参照)、イオン電流Iは、増幅素子Q1の出力端子→帰還抵抗R2→入力抵抗R1→コンデンサC→二次コイル1S→点火プラグ5の経路で流れる。先に説明した通り、出力電圧Vout=R2×Iの関係が成立するので、増幅部AMPからはイオン電流Iに比例した電圧が得られる。
【0028】
この出力電圧Voutの電圧レベルは、低回転・低負荷〜高回転・高負荷の運転条件によって相違するが、放電ノイズの発生区間を終えた後の検出信号が、0〜5Vの電圧範囲を目一杯に使用できるよう、帰還抵抗R2が設定されている。言い換えると、予め予想される最大レベルの検出信号において、出力電圧Voutが5Vとなるよう、検出抵抗(帰還抵抗)R2の抵抗値が設定されている。
【0029】
なお、放電ノイズとは、点火プラグの火花放電終了直後に、点火コイルの残留磁気エネルギによって発生するLC共振波を意味する。この放電ノイズは、原理的にLC共振波であるため、ほぼ左右対称であり、且つ、放電ノイズ波形と本来のイオン電流波形とは、その急峻度において区別可能であるので、この点を利用して放電ノイズの終了点を特定することができる。
【0030】
一方、この放電ノイズの終了点や、イオン電流の終了点は、運転条件に応じて変化するものの、運転条件毎に予め実験的に特定することも可能である。したがって、運転条件を示すセンサ出力を検出キーにする「切出しウインドテーブル」をメモリに記憶しておき、リアルタイムに変化するセンサ出力に基づいて最適な切出しウインドを選択するのも好適である。したがって、本実施形態では、後者の方法をとっている。
【0031】
ECU4は、CPU4aと、A/Dコンバータ4bと、出力ポート4cと、メモリ部4dとを有して構成されている。出力ポート4cからは、スイッチングトランジスタ2のベース端子に向けて点火パルスが出力されている。なお、図示の燃焼制御装置EQUでは、イオン電流検出回路3とECU4とが直結されているが、途中にサンプルホールド回路などを設けても良い。
【0032】
いずれにしても、A/Dコンバータ4bは、イオン電流検出回路3からアナログ検出信号SGを受けて、これを12ビット長のデジタルデータに変換している。ここで、A/Dコンバータ4bは、サンプリング周波数30kHzで動作している。イオン電流の周波数は、運転状態に応じて変化するものの、ノック信号の周波数を超えることはない。そして、ノック信号の周波数も、典型的には10kHzを超えないので、これらの信号を取得する上で、サンプリング周波数30kHzで動作するA/Dコンバータ4bは、十分な性能を発揮する。
【0033】
また、先に説明した通り、この実施形態では、運転状態の推移に拘らず、A/Dコンバータ4bには、0〜5Vの電圧範囲のアナログ検出信号SGが供給されるよう構成されている。そのため、A/Dコンバータ4bから、12ビット長のデジタルデータを受けるECU4には、1.22mV(=5mV/4096)を超えるイオン電流のレベル変化が取得されることになる。
【0034】
先に説明した通り、16384段階(分解能14ビット)を超えて、検出信号を取得しても余り意味がない反面、少なくとも、2048段階(分解能11ビット)以上の精密さで検出信号を取得する必要があるので、4096段階(分解能12ビット)で検出信号を取得する本実施形態は、実用的に最適な条件で動作していることになる。
【0035】
続いて、以上の構成からなる燃焼制御装置において、ノック検出を行う場合の概略動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。図示の通り、先ず、点火プラグ5の放電動作後のイオン電流検出回路3の出力電圧SGが、サンプリング周波数30kHzでA/D変換されて取得される(ST1)。
【0036】
次に、取得された全データのうち、運転条件毎に予め設定されている切り出しウインド内の全データSIN(1)〜SIN(n)に対して、デジタルフィルタによるBPF処理を施してSOUT(1)〜SOUT(n)を求める(ST2)。
【0037】
このBPF処理では、図3に示すような、サンプリング周期Tの32次の直線位相FIRフィルタを使用している。このデジタルフィルタの場合、h(nT)をz変換した伝達関数H(z)は、2M=32として、H(z)=Z[h(nT)]=Σh(nT)z−nであり、これを変形すると、
H(z)={α(0)+Σα(mT)(z+z−m)}z−Mとなる。なお、Σは、m=1〜Mとするシグマ記号であり、h{(M+m)T}=h{(M−m)T}=α(mT)である。また、m=0,1,・・・,Mである。
【0038】
図4(a)は、図3に示す直線位相FIRフィルタのインパルス応答h(n)を示しており、Mを中心として線対称となっている。また、図4(b)は、図3に示すFIRフィルタで実現したBPFの周波数特性を示している。なお、サンプリング周波数が30KHzであるから、サンプリング周期Tは、T=1/30mSである。
【0039】
図4(b)の周波数特性から明らかな通り、図3に示すBPF処理では、直流成分が完全には除去されず、−50dBとはいえ残存している。そこで、この実施形態では、直流オフセット分を確実に除去して、微細なイオン電流のイオンピークや、微弱なノック信号を誤りなく検出するべく、BPF処理後のデータSOUT(i)について、補正処理を施している(ST3)。
【0040】
具体的には、SOUT(i)=SOUT(i)−{SIN(i−DLY)}OFTの演算によって、BPF処理後のデータSOUTから、不要な直流成分を除去している。ここで、OFTは、補正率であって、OFT=Σh(n)とされる。また、DLYは、位相遅れであって、DLY=Mである。なお、SIN(i−DLY)は、現在時点iよりDLY前のタイミングでのBPF処理前の検出信号を意味する。
【0041】
以上の処理が終われば、補正演算後のイオン電流波形にノック信号が重畳されているか否かに基づいてノック判定を行うことになる(ST4)。
【0042】
以上、イオン電流波形に重畳するノック信号を抽出してノック判定を実行する燃焼制御について説明した。しかし、12ビットの分解能で取得したイオン電流波形を解析して、確実な失火判定をすることもできるのは勿論である。
【0043】
また、イオン電流波形の第2ピーク位置に基づいてMBT(Minimum spark advance for Best Torque)制御を実行することもできる。なお、MBT制御とは、そのエンジン回転速度及び空燃比において、最大のトルクが得られるよう点火時期を制御することを意味する。
【0044】
エンジンが正常に燃焼している場合、イオン電流は第一ピークを示した後、上死点TDCの手前で減少して再び増加し、燃焼圧が最大となるクランク角の近傍で最大となり、イオン電流の第二ピークを示すが(図5(a)参照)、点火時期がMBTに適合している場合には、燃焼圧の最大値となる圧力ピーク位置が、上死点TDCから特定のクランク角度だけ遅角した点に一致することが判明している。燃焼圧のピーク位置は、例えば、上死点から15°CA(クランク角)遅角した位置に現れる。
【0045】
そこで、検出された第二ピーク位置が、目標値に一致するようフィードバック制御(進角/遅角制御)することで(図5(b)参照)、イオンピークに基づいてMBT制御を実現している。
【0046】
以上説明した各種の高度な燃焼制御を実現するには、その処理時間を確保するべく、データ取得処理に多大の処理時間を割り振ることはできない。しかし、本実施形態では、12ビット長のデジタルデータで検出信号を取得しているので、必要な情報を読み飛ばすことなく、最小の処理時間で必要な情報を確実に取得することができ、その後の制御処理に十分な処理時間を割り振ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態に係る燃焼制御装置の回路構成を示す回路図である。
【図2】図1の燃焼制御装置の動作内容を概略的に説明するフローチャートである。
【図3】BPF処理を説明する図面である。
【図4】BFP処理を実現するデジタルフィルタのインパルス応答と周波数特性を図示したものである。
【図5】MBT制御を説明する図面である。
【符号の説明】
【0049】
5 点火プラグ
1 点火コイル
2 スイッチング素子
3 イオン電流検出回路
ST1 データ記憶手段
ST2〜ST4 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグに高電圧を供給して放電動作を実現する点火コイルと、スイッチング動作によって前記点火コイルに高電圧を誘起させるスイッチング素子と、前記点火プラグの放電動作と逆方向の電流を検出するイオン電流検出回路と、前記イオン電流検出回路の検出信号を受ける電子制御回路とを備え、
前記電子制御回路は、
11ビット以上〜14ビット以下の分解能で、前記検出信号をデジタル変換して記憶するデータ記憶手段と、
前記記憶された信号データにBPF処理を施して抽出されるイオン電流信号の付随信号に基づいて燃焼制御を実行する制御手段と、を有することを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項2】
点火プラグに高電圧を供給して放電動作を実現する点火コイルと、スイッチング動作によって前記点火コイルに高電圧を誘起させるスイッチング素子と、前記点火プラグの放電動作と逆方向の電流を検出するイオン電流検出回路と、前記イオン電流検出回路の検出信号を受ける電子制御回路とを備え、
前記電子制御回路は、
11ビット以上〜14ビット以下の分解能で、前記検出信号をデジタル変換して記憶するデータ記憶手段と、
前記記憶された信号データに基づいて、イオン電流信号の時間積分値、及び/又は、そのピークを含んだ特徴パラメータを抽出し、この特徴パラメータに基づいて燃焼制御を実行する制御手段と、を有して構成されていることを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記電子制御回路には、前記検出信号を受けるA/Dコンバータが設けられ、前記検出信号は正電圧レベルで前記A/Dコンバータに供給され、12ビット長の信号データに変換されて記憶される請求項1又は2に記載の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記A/Dコンバータは、20kHz以上〜40kHz未満のサンプリング周波数で前記検出信号をデジタル変換する請求項3に記載の燃焼制御装置。
【請求項5】
前記付随信号は、点火プラグの放電動作によらない、混合気の自然着火を示すノック信号である請求項1に記載の燃焼制御装置。
【請求項6】
前記BPF処理の対象となる信号データは、点火プラグの放電終了後に発生する放電ノイズの振動が収束した後の信号データである請求項5に記載の燃焼制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−138586(P2009−138586A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314342(P2007−314342)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】