説明

内燃機関の過給システム

【課題】電動過給機とターボ過給機を併せ持つ過給システムにおいて、ターボ過給機の過給圧が立ち上がるまでの時間を短縮する。
【解決手段】ターボ過給機6と、前記ターボ過給機6の上流の吸気通路に設けられ、電動機15により駆動される電動過給機4と、前記電動過給機下流かつ前記ターボ過給機上流の吸気通路内圧力を検出する第1圧力検出手段29と、前記ターボ過給機下流の吸気通路内圧力を検出する第2圧力検出手段30と、前記第1圧力検出手段29により検出される第1圧力Paと前記第2圧力検出手段30により検出される第2圧力Pbとの差圧に応動して、前記ターボ過給機6の過給圧が所定圧力を超えないように制御する過給圧制御手段25と、車両の加速要求を検出する手段20と、加速要求を検出した場合には前記電動過給機を作動させ、前記過給圧制御手25によって制御されながら上昇する前記第2圧力が所定圧力に達した後に、前記電動過給機4の駆動力を低下させる電動過給機駆動力低下手段18と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスにより駆動される過給機と、電動機により駆動される過給機を併せ持つ過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン出力を上げる技術として、エンジンの排気ガスを利用してエンジンに強制的に空気を送り込むターボ過給機が知られている。ターボ過給機の過給圧の制御方法としては、ターボ過給機のタービンを迂回するバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉する過給圧アクチュエータとを設け、過給圧が目標値に達したときに前記過給圧アクチュエータを開き、前記バイパス通路を通して排気する方法が一般的である。なお、前記過給圧アクチュエータとしては、通常はバネ等の力により閉じられており、ターボ過給機のコンプレッサ下流の吸気通路内圧力と大気圧との差圧が前記バネ等の力を上回ったときに開く構造のものが広く用いられており、前記コンプレッサ下流の吸気通路内圧力が目標値に達したときの大気圧との差圧によって開くようバネ等の力を設定して用いられている。
【0003】
ところで、ターボ過給機には、排気ガスの流速が高まるまでは十分な過給を行うことができない、いわゆるターボラグと呼ばれる欠点があった。
【0004】
この欠点を解消するための方法として、ターボ過給機の上流の吸気通路に電動機によって駆動される過給機を設け、ターボ過給機が十分な過給を行えない領域では電動過給機による過給を行うことにより、ターボラグを解消する過給システムが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−21573号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にはターボ過給機の過給圧制御に関して、「ターボ過給機が必要とされる過給圧に達したら電動過給機による過給を終了する」旨の記載しかなく、詳細な制御方法についての記載はない。
【0006】
仮に、前述した一般的な過給圧アクチュエータを用いて制御を行うと、ターボ過給機の過給圧が低くても、電動過給機による過給によってターボ過給機下流の圧力は目標値に達してしまい、大気圧との差圧により作動する過給圧アクチュエータが開き、電動過給機を停止してしまう。
【0007】
つまり、ターボ過給機の過給圧が目標値に達していないのにもかかわらず、電動過給機を停止してしまうので、ターボ過給機の過給圧が目標値に達するまでの時間が長くなる。
【0008】
そこで、本発明ではターボ過給機の過給圧が目標値に達するまでの時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内燃機関の過給システムは、エンジンの排気ガスにより駆動されるターボ過給機と、前記ターボ過給機の上流の吸気通路に設けられ、電動機により駆動される電動過給機と、前記電動過給機下流かつ前記ターボ過給機上流の吸気通路内圧力を検出する第1圧力検出手段と、前記ターボ過給機下流の吸気通路内圧力を検出する第2圧力検出手段と、
前記第1圧力検出手段により検出される第1圧力と前記第2圧力検出手段により検出される第2圧力との差圧に応動して、前記ターボ過給機の過給圧が所定圧力を超えないように制御する過給圧制御手段と、車両の加速要求を検出する手段と、加速要求を検出した場合には前記電動過給機を作動させ、前記過給圧制御手段によって制御されながら上昇する前記第2圧力が所定圧力に達した後に、前記電動過給機の駆動力を低下させる電動過給機駆動力低下手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ターボ過給機の上流と下流の差圧、つまりターボ過給機のみの過給圧に応動する圧力制御手段、例えば過給圧制御用アクチュエータを用いるので、加速時等に電動過給機を作動させることによって、ターボ過給機の過給圧は低い状態にもかかわらず電動過給機による過給によってターボ過給機下流の圧力が目標過給圧に達した場合には過給圧アクチュエータが作動しない。このとき、ターボ過給機下流の圧力が目標過給圧より大きくならないようにするために、ターボ過給機下流の圧力が目標過給圧に達したら、例えば電動過給機の動力を低下させる等して電動過給機の過給圧を低下させる。
【0011】
したがって、ターボ過給機の過給圧が目標圧力に達するまでは、すべての排気ガスがターボ過給機のタービンを通過することになるので、ターボ過給機の過給圧が速やかに上昇する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本実施形態のシステムの構成を表した図であり、13はエンジン、6はエンジン13の排気ガスにより駆動されるターボ過給機、4はモータ15により駆動される電動過給機、1は吸入空気量Qaを測定するエアフローメータ(以下、AFMという)である。
【0014】
AFM1下流の吸気管2は、電動過給機4が介装されている吸気通路(以下、電動過給機側通路という)21と、電動過給機4の上流の分岐部22にて電動過給機側通路21と分岐して、電動過給機4の下流の合流部23で合流するバイパス通路20とに分岐している。
【0015】
バイパス通路20中の分岐部22と合流部23の間には、アクチュエータにより開閉され、バイパス通路20を通過する空気量を制御するバイパスバルブ3が介装されている。
【0016】
合流部23より下流の吸気管5にはターボ過給機6のコンプレッサ7が介装されている。
【0017】
コンプレッサ7はタービン8とシャフトを介して接続されており、エンジン13の排気マニホールド14下流の排気管24に介装されたタービン8がエンジン13の排気ガスの圧力によって回転することによって回転し、吸気管5を通過する空気を圧縮する。
【0018】
コンプレッサ7に圧縮された空気はコンプレッサ7の下流に設けられたインタークーラ9を通過することにより冷却され、更に下流に設けられたスロットルチャンバー11により流量を制限されて、吸気インテークマニホールド12からエンジン13の各気筒に吸入される。
【0019】
排気管24からは、タービン8を迂回してタービン下流の排気管に連通するバイパス排気通路27が分岐しており、このバイパス排気通路27には、開閉弁26が設けられている。
【0020】
開閉弁26はシャフト35を介して接続されるアクチュエータ25によって開閉制御される。
【0021】
アクチュエータ25は、本体内部が移動可能でシャフト35に接続されている仕切り板32によって2つの部屋に分割されており、一方にはバネ31が格納されている。このバネ31の力は開閉弁26が閉じる方向に作用する。
【0022】
なお、アクチュエータ25のバネ31が格納された部屋はコンプレッサ7上流の吸気通路5と配管33によって連通しており、内部圧力はコンプレッサ7上流と等しい。また、他方の部屋はインタークーラ9下流の吸気通路と配管34によって連通しており、内部圧力はインタークーラ9下流の吸気通路と等しくなっている。
【0023】
つまり、ターボ過給機6による過給によって、インタークーラ9下流の圧力がコンプレッサ7上流の圧力より大きくなると、アクチュエータ25内部にも差圧が発生する。この差圧はシャフト35に対してバネ31の力と反対方向に働き、バネ31の力より大きくなると、開閉弁26は開弁する。
【0024】
開閉弁26が開弁するときの差圧は、バネ31のバネ定数等により任意に設定することが可能であり、エンジン13に対して要求する出力や、エンジン13の耐久性等を考慮して設定する。
【0025】
電動過給機4のON・OFFはエンジンコントロールユニット(以下、ECUという)18により制御され、ECU18からの信号に基いてモータコントローラ17が電源16の電力をモータ15に供給して行われる。
【0026】
ECU18には、バイパスバルブ3および電動過給機4の下流かつターボ過給機6のコンプレッサ7の上流(以下、バイパスバルブ3という)に設けられた圧力センサ29およびインタークーラ9下流に設けられた圧力センサ30の検出信号も読込まれる。
【0027】
なお、圧力センサ29を設けずに、電動過給機4が一回転あたりに圧送する空気量を予め求めておき、この空気量と電動過給機4の回転数とから計算によりバイパスバルブ3等の下流の圧力を算出することもできる。
【0028】
また、電動過給機4を駆動するか否かは、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ20からの信号により判定する。例えば、アクセル開度が予め定めた所定開度を超えたときや、アクセル開度の開度変化速度が予め定めた所定値より速くなったときに、加速要求があると判定する。
【0029】
次にECU18が実行する制御について図2を参照して説明する。
【0030】
図2は本実施形態の制御を表すフローチャートである。ターボ過給機6は前述したようにエンジン13の排気ガスにより駆動されるが、排気ガスの圧力が高まるまでは十分に過給できないという欠点がある。一方、電動過給機4はモータ15により駆動されるので、ターボ過給機6に比べて過給の立ち上がりが早い。
【0031】
そこで、図2のフローチャートにしたがって、ターボ過給機6が十分に過給できない領域では電動過給機4による過給を行い、加速要求に対する過給圧の応答性を高めるよう制御する。また、バイパスバルブ3の開閉はECU18によって電動過給機4のON・OFFに関連付けて制御される。
【0032】
以下、フローチャートにしたがって説明する。
【0033】
ステップS100では、アクセル開度が各エンジン回転数ごとに設定した所定値以上であるか否かを判定する。所定値以上であればステップS110に進み、電動過給機4による過給を開始し、バイパスバルブ3を全閉にする。
【0034】
ステップS120ではインタークーラ9下流の圧力Pbと、ターボ過給機の目標過給圧として予め設定した圧力(設定圧力)P2とを比較する。
【0035】
目標過給圧P2の方が大きい場合にはステップS100にリターンし、小さい場合にはステップS130に進む。
【0036】
ステップS130では、圧力Pbが設定圧力P2を維持するように、電流値制御によって電動過給機4の回転数を制御する。つまり、電動過給機4の回転数を低下させる。このとき、バイパスバルブ3等の下流の過給圧Paは電動過給機4の過給により大気圧より高くなっているので、バイパスバルブ3等の下流とインタークーラ9下流の差圧は目標過給圧P2よりも小さい。したがってアクチュエータ25が開くことはない。
【0037】
ステップS140ではバイパスバルブ3等の下流の圧力Paが大気圧以下であるか否かの判定を行う。大気圧より大きい場合にはステップS100にリターンし、低い場合にはステップS150に進み、電動過給機4を停止し、バイパスバルブ3を全開にする。
【0038】
上記のように、本実施形態では、加速要求を検知して、バイパスバルブ3を全閉にして電動過給機4による過給を開始した後、インタークーラ9下流の圧力Pbが目標過給圧P2に達しても、バイパスバルブ3等の下流とインタークーラ9下流の差圧で作動するアクチュエータ25は開かない。このときインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力以上にならに用に、電動過給機4の回転数を低下させる。
【0039】
これは、最初に目標過給圧P2に達した時点では、電動過給機4による過給圧とターボ過給機6による過給圧を合わせたものが設定圧力P2となっているだけであり、ターボ過給機6の過給圧は設定圧力P2に達していないと考えられるからである。
【0040】
そして、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paがほぼ大気圧に等しくなったとき、つまり、電動過給機4がほぼ停止したときに、ターボ過給機6の過給圧が設定圧力P2に達したと判断して、電動過給機4を完全に停止させ、バイパスバルブ3を全開にする。この後にターボ過給機6の過給圧がさらに高まると、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paとインタークーラ9下流の圧力Pbの差圧によりアクチュエータ25は開き、設定圧力P2が維持される。
【0041】
次に、上記の制御を実行した場合について、図3、図4を参照して説明する。
【0042】
図3は本実施形態と同様のシステムに、従来のように大気圧とコンプレッサ下流の差圧により開弁するアクチュエータ25bを用いて制御を実行した場合の、電動過給機4とターボ過給機6による過給圧の変化を示す図である。一点鎖線Aは電動過給機4の過給圧Pas、点線Bはターボ過給機6の過給圧Ptc、実線Cは電動過給機4とターボ過給機6を合わせたもの、つまりターボ過給機下流の圧力Pbについての変化を表している。
【0043】
図4は、本実施形態、つまりバイパスバルブ3等の下流の圧力とインタークーラ9下流の圧力の差圧により駆動されて開閉弁26を開弁するアクチュエータ25を用いる場合についての、過給圧Pas、過給圧Ptc、圧力Pbの変化と、両過給機の回転数の変化、そしてバイパス弁3の開度の変化を示す図である。
【0044】
図3では、t20で加速要求を検知して電動過給機4の駆動を開始し、過給圧PasおよびPtcが上昇する。したがって圧力Pbも上昇する。
【0045】
t21で電動過給機4の過給圧Pasは上限値P1に達するが、ターボ過給機6の回転数は上昇を続けて過給圧Ptcは上昇し続ける。
【0046】
t22では、圧力Pbが設定圧力P2に達する。このとき、大気圧とコンプレッサ下流(この場合インタークーラ9下流)の圧力Pbとの差圧が設定圧力P2になったときに作動するアクチュエータ25bは、開閉弁26を開弁する。これにより、インタークーラ9下流の圧力Pbは設定圧力P2を維持する。
【0047】
t22以降もターボ過給機6の回転数は上昇し続け、t23で設定圧力P2に達したら、電動過給機4を停止する。
【0048】
上記のように、t22で開閉弁26が開いてしまうので、t22以降はエンジンの排気ガスの一部がバイパス排気通路27を流れるようになる。つまり、電動過給機4による過給によってエンジン13の回転数を上昇させ、排気ガス流量を増加させても、その一部はタービン8を回転させることなく排出されてしまう。
【0049】
これに対して、図4に示す本実施形態では、t10で加速要求を検出して電動過給機4の駆動を開始し、t11で電動過給機4の過給圧が上限値P1に達し、t12で圧力Pbが設定圧力P2に達するまでは図3と同様である。
【0050】
しかし、アクチュエータ25は、t12で開閉弁26を開弁しない。これは、アクチュエータ25はバイパスバルブ3等の下流の圧力Paとインタークーラ9下流の圧力Pbの差圧により作動するものであり、t12ではインタークーラ9下流の圧力Pbは設定圧力P2に達しているものの、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paは電動過給機4によってP1まで上昇しているので、差圧は開閉弁26を開弁する設定圧力P2に達していないからである。
【0051】
t12で圧力Pbが設定圧力P2に達した後は、ターボ過給機6の過給圧が上昇してもインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2を維持するように、電動過給機4の回転数を低下させる。
【0052】
電動過給機4の回転数が低下してt13で回転が止まったときには、ターボ過給機6の過給圧Pbは設定圧力P2に達しており、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paとインタークーラ下流の圧力Pbの差圧は設定圧力P2となる。したがって、アクチュエータ25によって開閉弁26は開弁し、これ以降は開閉弁26から排ガスを逃がすことによって過給圧を設定圧力P2に維持する。
【0053】
上記のように、本実施形態では図3のt22に相当するt12で開閉弁26を開弁しないので、インタークーラ下流の圧力Pbが設定値P2になった後も、エンジン13の排気ガスは全てタービン8の回転に用いられることになる。
【0054】
したがって、図3と図4とを比較すると、電動過給機4の駆動開始からインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に到達するまでは同じ時間を要するが、その後、ターボ過給機6の過給圧Ptcが設定圧力P2に到達するまでの時間は、図4の方が短くなる。
【0055】
以上により、本実施形態では、ターボ過給機6と、ターボ過給機6の上流に直列に設置され、加速要求を検知したときに駆動する電動過給機4とを併せ持つ過給システムにおいて、ターボ過給機6の過給圧を制御するために、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paと、ターボ過給機6下流に設けたインタークーラ9下流の圧力Pbとの差圧によって作動するアクチュエータ25を使用し、電動過給機4の駆動開始後にインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に達したら、設定圧力P2を維持するように、ターボ過給機6の回転上昇に応じて電動過給機4の回転数を低下させるので、従来から用いられているような、大気圧とインタークーラ9下流の圧力Pbとの差圧により作動するアクチュエータ25bを使用するのに比べて、ターボ過給機6の過給圧の立ち上がり時間を短縮できる。
【0056】
また、ターボ過給機6の過給が短時間で立ち上がり、電動過給機4の作動時間が短くなるので、電動機15の消費電力を低減することができる。
【0057】
さらに、電動機15の作動時間が短くなるので、電動機15の発熱量を低減することができ、電動機15の効率・寿命を向上することができる。
【0058】
第2実施形態について、図5、図6を参照して説明する。
【0059】
図5は本実施形態の制御フローチャートであり、図6は本実施形態の制御を実行した場合について、図4と同様にタイムチャートに示した図である。
【0060】
図5のステップS200〜S220は、図2に示した第1実施形態のステップS100〜S120と同様であるので説明を省略する。
【0061】
ステップS230では、インタークーラ下流の圧力Pbが設定圧力P2を維持するように、ターボ過給機6の回転上昇に応じて、バイパスバルブ3を開く方向に制御する。これは、バイパスバルブ3を開くことによって、電動過給機4に加圧された空気の一部は圧力の低いバイパスバルブ3上流の吸気通路20を逆流するようになり、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paが低下するからである。
【0062】
ステップS240では、バイパスバルブ3が全開になったか否かを判定する。全開でない場合にはステップS200にリターンする。全開の場合にはステップS250に進み、電動過給機4を停止する。これは、バイパスバルブ3が全開であることからバイパスバルブ3等の下流の圧力Paはほぼ大気圧となっていると推定でき、また、インタークーラ9下流の圧力Pbは設定圧力P2を維持していることから、ターボ過給機6の過給圧が設定圧力P2になったと推定できるからである。
【0063】
図6のタイムチャートは、電動過給機4の駆動を開始するt30からインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に達するt32までは、図3、図4と同様である。
【0064】
t32でインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に達した後も、電動過給機4は回転数を一定に保つ。しかし、バイパスバルブ3の開度が徐々に大きくなるので、バイパスバルブ3から上流の吸気通路20へ流れる空気量が増加し、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paは低下し、インタークーラ9下流の圧力Pbは設定圧P2のまま維持される。
【0065】
t33でバイパスバルブ3は全開となるので、電動過給機4を停止する。なお、前述した図5のフローチャートの説明では、バイパスバルブ3が全開になったときに、バイパスバルブ3等の下流の圧力Paとインタークーラ9下流の圧力Pbとの差圧は設定圧力P2であると推定できると述べたが、厳密には、図6に示すように、電動過給機4の回転が完全に停止するt34で前記差圧は設定圧力P2となる。
【0066】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、電動過給機4駆動開始後にインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に達しても、アクチュエータ25は開閉弁26を開弁しないので、すべての排気ガスがタービン8の回転に用いられ、これによりターボ過給機6の過給圧が速やかに立ち上がる。
【0067】
以上により、本実施形態では、第1実施形態と同様の過給システムにおいて、電動過給機4の駆動開始後にインタークーラ9下流の圧力Pbが設定圧力P2に達したら、設定圧力P2を維持するように、ターボ過給機6の回転上昇に応じてバイパスバルブ3の開度を大きくしていくので、従来から用いられているような、大気圧とインタークーラ9下流の圧力Pbとの差圧により作動するアクチュエータ25bを使用する場合に比べて、ターボ過給機6の過給圧の立ち上がり時間を短縮できる。
【0068】
また、第1実施形態と同様に、電動機15の消費電力の低減および効率・寿命の向上を図ることができる。
【0069】
さらに、バイパスバルブ3の開度を徐々に大きくしていくので、エンジン13の吸入空気量が急激に変化することがなく、エンジントルク段差の発生を防止することができる。
【0070】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、電動機により駆動される電動過給機と、エンジンの排気ガスにより駆動されるターボ過給機を併せ持つ内燃機関に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態のシステムの構成を表す図である。
【図2】第1実施形態の制御フローチャートである。
【図3】従来型のアクチュエータを用いた場合のタイムチャートである。
【図4】第1実施形態の制御を実行した場合のタイムチャートである。
【図5】第2実施形態の制御フローチャートである。
【図6】第2実施形態の制御を実行した場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 エアフローメータ
3 バイパスバルブ
4 電動過給機
6 ターボ過給機
7 コンプレッサ
8 タービン
9 インタークーラ
11 スロットルバルブ
13 エンジン
14 排気マニホールド
15 電動機
16 バッテリ
17 モータコントローラ
18 コントロールユニット(ECU)
20 アクセル開度センサ
25 アクチュエータ
26 開閉弁
29 圧力センサ
30 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスにより駆動されるターボ過給機と、
前記ターボ過給機の上流の吸気通路に設けられ、電動機により駆動される電動過給機と、
前記電動過給機下流かつ前記ターボ過給機上流の吸気通路内圧力を検出する第1圧力検出手段と、
前記ターボ過給機下流の吸気通路内圧力を検出する第2圧力検出手段と、
前記第1圧力検出手段により検出される第1圧力と前記第2圧力検出手段により検出される第2圧力との差圧に応動して、前記ターボ過給機の過給圧が所定圧力を超えないように制御する過給圧制御手段と、
車両の加速要求を検出する手段と、
加速要求を検出した場合には前記電動過給機を作動させ、前記過給圧制御手段によって制御されながら上昇する前記第2圧力が所定圧力に達した後に、前記電動過給機の駆動力を低下させる電動過給機駆動力低下手段と、を有することを特徴とする内燃機関の過給システム。
【請求項2】
前記電動過給機を迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路中に設けられ、前記バイパス通路を連通・遮断するバイパスバルブと、を設け、
加速要求を検出した場合には、前記バイパスバルブを全閉にして前記電動過給機を作動させ、前記過給圧制御手段によって制御されながら上昇する前記第2圧力が所定圧力に達した後に、前記電動過給機駆動力低下手段は前記バイパスバルブと前記電動過給機とを関連付けて制御し、前記電動過給機の駆動力を低下させる請求項1に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項3】
前記第2圧力が所定圧力に達した場合には、前記電動過給機の駆動力を維持したまま前記バイパスバルブを徐々に開いていき、前記第1圧力と第2圧力との差圧が前記所定圧力と等しくなったときに前記電動過給機の駆動力を低下させる請求項2に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項4】
前記バイパスバルブが全開となったときに前記電動過給機を停止させる請求項3に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項5】
前記第2圧力が所定圧力に達した場合には、前記バイパスバルブは閉じたまま、前記電動過給機の駆動力を徐々に低下させる請求項2に記載の内燃機関の過給システム。
【請求項6】
前記第1圧力が大気圧と略等しくなったときに、前記バイパスバルブを全開にするとともに前記電動過給機を停止させる請求項5に記載の内燃機関の過給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−105034(P2006−105034A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293408(P2004−293408)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】