説明

内装材の取り付け構造

【課題】上側内装材の端部と下側内装材の端部の見切り部に隙間が発生することを防止できて、見切り部の外観を向上させることができ、内装材の成形型を簡素化できて成形型の製造コストを低廉化できる内装材の取り付け構造を提供する。
【解決手段】車体パネル6に上側内装材8と下側内装材7が取り付けられ、上側内装材8の端部9Kと下側内装材7の端部7Jが接続し、下側内装材7と車体パネル6の間から上側内装材8と車体パネル6の間にわたって索状体20,21が配索され、上側内装材8と下側内装材7の少なくとも一方の内装材の端部に車体パネル6に向かって突出する突出片15が設けられ、索状体20,21が突出片15を避けて配索されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車体パネルに上側内装材と下側内装材が取り付けられ、
前記上側内装材の端部と前記下側内装材の端部が接続し、
前記下側内装材と前記車体パネルの間から前記上側内装材と前記車体パネルの間にわたって索状体が配索されている内装材の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の内装材の取り付け構造では、前記下側内装材と前記車体パネルの間から前記上側内装材と前記車体パネルの間にわたってドレンホース等の様々な索状体が配索されている。
この索状体に上側内装材の端部や下側内装材の端部が乗り上げると、上側内装材の端部と下側内装材の端部の見切り部に隙間が発生し、前記見切り部の外観が損なわれるという問題がある。
そこで、従来、特許文献1や特許文献2に開示されているように、配索経路を規制する複数の規制片を索状体の長い範囲に亘って成形したり、両内装材にドレンホースの経路を一体で成形したりしてあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−34755号公報
【特許文献2】特開平11−98658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、配索経路を規制する複数の規制片を索状体の長い範囲に亘って成形したり、両内装材にドレンホースの経路を一体で成形したりしてあったために、内装材の成形型が複雑になり、成形型の製造コストが増加していた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、上側内装材の端部と下側内装材の端部の見切り部の外観を向上させることができ、内装材の成形型を簡素化できて成形型の製造コストを低廉化できる内装材の取り付け構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車体パネルに上側内装材と下側内装材が取り付けられ、
前記上側内装材の端部と前記下側内装材の端部が接続し、
前記下側内装材と前記車体パネルの間から前記上側内装材と前記車体パネルの間にわたって索状体が配索されている内装材の取り付け構造であって、
前記上側内装材と前記下側内装材の少なくとも一方の内装材の端部に車体パネルに向かって突出する突出片が設けられ、
前記索状体が前記突出片を避けて配索されている点にある。(請求項1)
【0006】
本発明の上記構成によれば、前記上側内装材と前記下側内装材の少なくとも一方の内装材の端部に車体パネルに向かって突出する突出片が設けられ、前記索状体が前記突出片を避けて配索されているから、前記突出片で索状体の位置規制を行うことができる。
この位置規制を行うことで、上側内装材の端部と下側内装材の端部が索状体に乗り上げることを防止でき、上側内装材の端部と下側内装材の端部の見切り部に隙間が発生することを防止できて、前記見切り部の外観を向上させることができる。
前記位置規制を行う手段としては、前記少なくとも一方の内装材の端部に車体パネルに向かって突出する突出片を設けるだけでよい。従って、内装材の成形型を簡素化でき、成形型の製造コストを低廉化できる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記突出片は前記上側内装材の端部に設けられ、
前記下側内装材の端部を前記車体パネルに固定するクリップ用のクリップ孔が前記突出片の下方の車体パネルに形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記突出片で索状体の位置規制を行うことができるから、下側の内装材の端部を車体パネルに固定する場合に、索状体がクリップとクリップ孔の間に挟まってしまう不具合を防ぐことができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記突出片の突出端部は前記車体パネルに当接していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
例えば、下側内装材(又は上側内装材)を車体パネルに取り付ける時に、上側内装材(又は下側内装材)を車室外側に向かって押す力が生じても、突出片が車体パネルに当接して上側内装材(又は上側内装材)の端部が撓むのを防ぐことができるので、下側内装材の端部と上側内装材の端部との見切り部に隙間ができる不具合を防ぐことができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記車体パネルに形成された凹部に、前記突出片に形成された凸部が嵌合していると、前記上側内装材が車体パネルに対して位置ずれすることを防ぐことができる。(請求項4)
【0012】
本発明において、
前記上側内装材はルーフライニング、
前記下側内装材はフロントピラートリム、
前記索状体は頭部保護用エアバッグのテザーベルトであると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0013】
テザーベルトの位置が正規の場所に配索されないと、カーテンエアバッグの展開時にテザーベルトがクリップに引っ掛る虞がある。これに対して、本発明の上記構成によれば、ルーフライニングとフロントピラートリムの少なくとも一方の端部に車体パネルに向かって突出する突出片が設けられ、頭部保護用エアバッグのテザーベルトが前記突出片を避けて配索されているから、前記突出片で頭部保護用エアバッグのテザーベルトの位置規制を行うことができ、クリップがエアバッグの展開の邪魔になるのを防止できる。(請求項5)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、
上側内装材の端部と下側内装材の端部の見切り部の外観を向上させることができ、内装材の成形型を簡素化できて成形型の製造コストを低廉化できる内装材の取り付け構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動車の斜視図
【図2】自動車の車室内の斜視図
【図3】ルーフライニングとフロントピラートリムの接続部を示す斜視図
【図4】フロントピラートリムを取り外したフロントピラーの斜視図
【図5】図4のA−A断面図
【図6】比較例の図4のA−A断面に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車のフロントウインドガラス1とフロントドア2との間にフロントピラー3が配置され、ルーフ4の前側コーナー部Cにフロントピラー3の上端部が接続している。図2において、42はインストルメントパネル、40はフロントシート、41はリアシートである。
【0017】
図3,図4に示すように、フロントピラー3は、フロントピラーインナパネル6(車体パネルに相当)と、フロントピラーインナパネル6に取り付けられてフロントピラーインナパネル6の車室内側の面を覆う樹脂製のフロントピラートリム7(下側内装材に相当)とを備え、ルーフ4は、ルーフパネル(車体パネルに相当)と、ルーフパネルに取り付けられてルーフパネルを覆う樹脂製のルーフライニング8(上側内装材に相当)とを備えている。
【0018】
前記ルーフライニング8は上面視で車両前後方向に長い長方形状に形成され、ルーフライニング8の前側コーナー部Cからフロントピラートリム7に対する接続部9が下方に延びている。前記接続部9の車両前後方向の両側部は車室外側に折曲されて、前側の側壁10と後ろ側の側壁11(図3,図4参照)が前記接続部9に形成されている。ルーフ4の前端部にはサンバイザー14が取り付けられている。
【0019】
図5に示すように、フロントピラートリム7の車両前後方向の両側部が車室外側に折曲されて、前側の側壁12と後ろ側の側壁13が形成されている。そして、図3,図4に示すように、フロントピラートリム7の上端部7J(下側内装材の端部に相当)とルーフライニング8の接続部9の下端部9K(上側内装材の端部に相当)が車幅方向で重ね合わされて接続し、フロントピラートリム7の上端部7Jとルーフライニング8の接続部9の下端部9Kの互いの合わせ部に見切り線Lが形成されている(図3参照)。
【0020】
また、フロントピラートリム7とフロントピラーインナパネル6の間からルーフライニング8とルーフパネルの間にわたってウォッシャーホースフィーダ線20(索状体に相当)とカーテンエアバッグのテザーベルト21(索状体に相当)が配索されている。
【0021】
ウォッシャーホースフィーダ線20はフロントピラー3の下方からフロントピラー3内を通り、ルーフ4の右側の側部を通って車両後方側Rrまで延びている。このウォッシャーホースフィーダ線20は、クランプ43を介して(図4参照)フロントピラーインナパネル6に固定されており、フロントウインドガラス1やバックウインドガラス43(図2参照)に対する洗浄液噴出ノズルに洗浄液を供給する。
【0022】
カーテンエアバッグのテザーベルト21は、カーテンエアバッグのバッグ本体の前端部から延出し、テザーベルト21の先端部側のブラケット48がフロントピラーインナパネル6の幅方向中央部にスクリューSで締結されている(図4参照)。
【0023】
そして、側突時にインフレータからバッグ本体にガスが供給されて前記バッグ本体が下方に膨張展開し、テザーベルト21がバッグ本体によって車両後方側Rrに引っ張られながらフロントピラートリム7の裏側から車室内側に引き出される。これにより、テザーベルト21が位置決め作用位置に位置してバッグ本体の下端部の位置を保持し、バッグ本体が所定の形状に膨張展開した状態で乗員の頭部を保護する。
【0024】
[突出片15の構造]
図4,図5に示すように、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kの裏面に、フロントピラーインナパネル6に向かって突出する上面視台形板状の突出片15が一体に設けられ、ウォッシャーホースフィーダ線20が突出片15を避けて、突出片15よりも車両前方側Frのフロントピラーインナパネル6の側部に配索され、テザーベルト21が前記突出片15を避けて、突出片15よりも車両後方側Rrのフロントピラーインナパネル6の側部に配索されている。(図4参照)。
【0025】
前記突出片15は接続部9の下端部9Kの幅方向(車両前後方向)中央部に位置し、両板面(突出片15の両板面)がウォッシャーホースフィーダ線20とテザーベルト21の長手方向(すなわちフロントピラートリム7の長手方向)を向く状態にルーフライニング8の接続部9の下端部9Kの裏面に設けられている。
【0026】
そして、この突出片15の突出端部15Tがフロントピラーインナパネル6に当接している。フロントピラーインナパネル6と前記接続部9の下端部9Kとは車両後方側Rrほど互いの間隔が狭くなっている。
【0027】
また、フロントピラーインナパネル6に凹部6Uが形成され、突出片15に形成された凸部15Cが前記凹部6Uに嵌合している。凹部6Uと凸部15Cは円弧状に形成されている。これにより、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kがフロントピラーインナパネル6に対してフロントピラー3の幅方向(車両前後方向)に位置ずれすることを防止することができる。
【0028】
図5に示すように、ルーフライニング8の接続部9の下端部9K(図4参照)の裏面には、前記突出片15の基部に連なるリブ47が前記接続部9の下端部9Kのほぼ全幅にわたって突設されている。これにより、突出片15の剛性・強度を向上させることができ、突出片15の耐久性を向上させることができる。図5の符号31はフロントドアオープニングトリムである。
【0029】
また、図3,図4に示すように、フロントピラートリム7の上端部7Jをフロントピラーインナパネル6に固定するクリップ用のクリップ孔16が突出片15の下方のフロントピラーインナパネル6に形成されている。突出片15はクリップ孔16に上下方向で近接している。
【0030】
図5に示すように、フロントピラートリム7の上端部7Jにはフロントピラーインナパネル6側に膨出する断面台形状のクリップ座17が形成され、クリップ座17の座面17Jからクリップ19が突出している。
【0031】
上記の自動車においては、カーテンエアバッグがフロントピラーインナパネル6等の車体パネルに取り付けられた後に、ルーフライニング8がルーフパネルに取り付けられ、その後にフロントピラートリム7がフロントピラーインナパネル6に取り付けられる。
【0032】
上記の構成によれば、
(1) 前記ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kにフロントピラーインナパネル6に向かって突出する突出片15が設けられ、前記ウォッシャーホースフィーダ線20とテザーベルト21が前記突出片15を避けて配索されているから、前記突出片15でウォッシャーホースフィーダ線20とテザーベルト21の位置規制を行うことができる。
この位置規制を行うことで、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kとフロントピラートリム7の上端部7Jがウォッシャーホースフィーダ線20やテザーベルト21に乗り上げることを防止でき、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kとフロントピラートリム7の上端部7Jの見切り部に隙間が発生することを防止できて、前記見切り部の外観を向上させることができる。
また、前記位置規制を行う手段としては、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kにフロントピラーインナパネル6に向かって突出する突出片15を設けるだけでよく、ルーフライニング8及びフロントピラートリム7の成形型を簡素化できる。従って、成形型の製造コストを低廉化できる。
【0033】
(2) フロントピラートリム7の上端部7Jをフロントピラーインナパネル6に固定するクリップ用のクリップ孔16が突出片15の下方のフロントピラーインナパネル6に形成されているから、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kをフロントピラーインナパネル6に固定する場合に、ウォッシャーホースフィーダ線20とテザーベルト21がクリップ19とクリップ孔16の間に挟まってしまう不具合を防ぐことができる。
【0034】
(3) 例えば、フロントピラートリム7をフロントピラーインナパネル6に取り付ける時に、ルーフライニング8を車室外側に向かって押す力が生じても、突出片15がフロントピラーインナパネル6に当接してルーフライニング8の接続部9の下端部9Kが撓むのを防ぐことができるので、フロントピラートリム7の端部とルーフライニング8の端部との見切り部に隙間ができる不具合を防ぐことができる。
【0035】
(4) 図6に示すように、テザーベルト21の位置が正規の場所に配索されることなく、例えば、クリップ19よりも車両前方側Frに配置されていると、カーテンエアバッグの展開時にテザーベルト21が矢印A方向(車両後方側Rr)に引っ張られてクリップ19に引っ掛る虞がある。
これに対して、本発明の上記構成によれば、ルーフライニング8の接続部9の下端部9Kにフロントピラートリム7に向かって突出する突出片15が設けられ、前記テザーベルト21が突出片15を避けて配索されているから、前記突出片15でテザーベルト21の位置規制を行うことができて、クリップ19がエアバッグの展開の邪魔になるのを防止できる。
【0036】
[別実施形態]
(1) 上記の構造に加えて、前記突出片15がフロントピラートリム7の上端部7Jの裏面にフロントピラーインナパネル6に向かって突出する状態に設けられていてもよい。
(2) 前記索状体はウォッシャーホースフィーダ線やテザーベルト以外の索状体であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
6 車体パネル
6U 凹部(車体パネルに形成された凹部)
7 下側内装材(フロントピラートリム)
7J 下側内装材の端部(フロントピラートリムの上端部)
8 上側内装材(ルーフライニング)
9K 上側内装材の端部(ルーフライニングの接続部の下端部)
15 突出片
15C 凸部(突出片に形成された凸部)
15T 突出片の突出端部
16 クリップ孔
20 索状体(ウォッシャーホースフィーダ線)
21 索状体(テザーベルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに上側内装材と下側内装材が取り付けられ、
前記上側内装材の端部と前記下側内装材の端部が接続し、
前記下側内装材と前記車体パネルの間から前記上側内装材と前記車体パネルの間にわたって索状体が配索されている内装材の取り付け構造であって、
前記上側内装材と前記下側内装材の少なくとも一方の内装材の端部に車体パネルに向かって突出する突出片が設けられ、
前記索状体が前記突出片を避けて配索されている内装材の取り付け構造。
【請求項2】
前記突出片は前記上側内装材の端部に設けられ、
前記下側内装材の端部を前記車体パネルに固定するクリップ用のクリップ孔が前記突出片の下方の車体パネルに形成されている請求項1記載の内装材の取り付け構造。
【請求項3】
前記突出片の突出端部は前記車体パネルに当接している請求項1又は2記載の内装材の取り付け構造。
【請求項4】
前記車体パネルに形成された凹部に、前記突出片の突出端部に形成された凸部が嵌合している請求項3記載の内装材の取り付け構造。
【請求項5】
前記上側内装材はルーフライニング、
前記下側内装材はフロントピラートリム、
前記索状体は頭部保護用エアバッグのテザーベルトである請求項1〜4のいずれか一つに記載の内装材の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136183(P2012−136183A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290826(P2010−290826)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】