説明

内視鏡装置

【課題】表示映像の視認性を向上することができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】映像信号取得部30は、光学系によって結像される像を撮像し映像信号を取得する。マッチング処理部45は、光学系を識別するための映像のマッチング度を算出する。光学系が所定の光学系であると識別された場合に、映像信号処理部34は、光学系からの複数の像を含む映像から、一つの像を含む映像を抽出するように映像信号を処理し、表示用映像信号として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の像を結像する光学系を搭載可能な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用内視鏡は、ボイラー、タービン、エンジン、化学プラント、水道配管等の内部の傷や腐食等の観察や検査に使用されている。工業用内視鏡では、多様な観察物を観察および検査することができるようにするため、複数種類の光学アダプタが用意されており、内視鏡の先端部分は交換可能となっている。
【0003】
上記の光学アダプタとして、観察光学系に左右2つの視野を形成するステレオ計測用光学アダプタがある。特許文献1には、ステレオ計測用光学アダプタを使用し、視差を有する左右の光学系で被写体像を捉えたときの左右の光学系測距点の座標に基づいて、三角測量の原理を使用して被写体の3次元空間座標を求め、被写体の3次元計測(ステレオ計測)を行う内視鏡装置が記載されている。
【特許文献1】特開2005−348870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来の内視鏡装置が表示する画面を示している。表示画面70上には、視差を有する左右の光学系からの視差映像71R,71Lが表示される。さらに、ステレオ計測時には、2つの視差映像のうちの一方(例えば視差映像71L)においてユーザが計測点(計測位置)を指定すると、内視鏡装置は、他方の視差映像(例えば視差映像71R)において、その計測位置に対応したマッチング点を画像処理により探し、その他方の視差映像上にマッチング点を表示する。このように一方の視差映像上で指定された計測点と他方の映像上のマッチング点と視差映像間の視差とに基づいて、三角測量の原理により計測箇所の長さ、深さ、面積等が計算される。
【0005】
しかし、従来の内視鏡装置では、視差を有する光学系から得られる複数の視差映像を表示することによって、表示映像の視認性が問題になることがあった。例えば、使い易さを向上するために内視鏡装置の小型軽量化が進んでおり、映像を表示するモニタも小型化している。したがって、モニタに複数の視差映像を表示すると、各々の視差映像が小さくなるため、被写体を観察しにくくなる。また、複数の視差映像が表示されていると、どの視差映像を見て被写体を観察すればよいのか、ユーザが混乱する場合がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、表示映像の視認性を向上することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、光学系によって結像される像を撮像し映像信号を取得する映像信号取得部と、前記映像信号を処理する映像信号処理部とを備えた内視鏡装置において、前記光学系の種類を識別する識別部をさらに備え、前記識別部によって、前記光学系が所定の光学系であると識別された場合に、前記映像信号処理部は、前記光学系からの複数の像を含む映像から、一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、表示用映像信号として出力することを特徴とする内視鏡装置である。
【0008】
また、本発明の内視鏡装置において、前記識別部は、前記光学系からの複数の像の類似度に基づいて前記光学系を識別することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の内視鏡装置において、前記映像信号処理部はさらに、前記一つの像を拡大するように前記映像信号を処理することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の内視鏡装置は、前記映像信号処理部によって処理された前記映像信号を記憶媒体に記憶させる制御を行う制御部をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の内視鏡装置は、前記映像信号処理部によって処理された前記映像信号に基づいた映像を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の内視鏡装置は、前記表示部として少なくとも第1の表示部と第2の表示部とを備え、前記識別部によって、前記光学系が所定の光学系であると識別された場合に、前記映像信号処理部は、前記光学系からの複数の像を含む映像から、一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、第1の表示用映像信号として前記第1の表示部に出力すると共に、前記光学系からの複数の像を含む映像から、前記一つの像とは異なる他の一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、第2の表示用映像信号として前記第2の表示部に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学系が所定の光学系であると識別された場合に、複数の光学系からの複数の像を含む映像から、一の光学系からの像を含む映像を抽出するように映像信号を処理することによって、一の光学系からの像を他の光学系からの像とは独立に表示することが可能となるので、表示映像の視認性を向上することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による計測内視鏡装置の外観を示している。図2は、本実施形態による計測内視鏡装置の機能構成を示している。図3は、本実施形態による計測内視鏡装置が備えるコントロールユニットの機能構成を示している。
【0015】
本実施形態の計測内視鏡装置1は、被検体を撮像し、その画像から画像計測を行うため、内視鏡挿入部の先端の光学アダプタを交換したり、内蔵された計測処理プログラムを適宜選択したり、計測処理プログラムを適宜追加することにより、種々の観察や画像計測を行うことが可能である。以下では、画像計測の一例としてステレオ計測を行う場合について説明する。
【0016】
図1および図2に示すように、計測内視鏡装置1は、ステレオ計測用光学アダプタ2、内視鏡挿入部3、内視鏡ユニット7、CCU9(カメラコントロールユニット)、液晶モニタ6(表示部)、リモートコントローラ5、およびコントロールユニット4からなる。ステレオ計測用光学アダプタ2は、視差を有する映像を取得するために所定距離だけ離間して配置された対物レンズ2A、2Bが略円筒状のアダプタ本体2a内に配置されたもので、例えば、雌ねじなどが形成されたマウント部2bにより、内視鏡挿入部3の先端に着脱可能に装着されるものである。
【0017】
対物レンズ2A、2Bの位置は、ステレオ計測用光学アダプタ2の軸方向先端面側に視野を有する直視タイプと、同じく側面方向に視野を有する側視タイプとで異なるが、本実施形態では直視タイプとして図示している。このため、対物レンズ2A、2Bは、光軸をステレオ計測用光学アダプタ2の軸方向に向けて、先端面に設けられた入射開口の近傍に配置されている。また、ステレオ計測用光学アダプタ2の先端面には、アダプタ本体2a内を導光された照明光を被検体に向けて出射する照明窓2cが設けられている。
【0018】
内視鏡挿入部3は、被検体の内部に挿入して計測部分を撮像し、撮像信号をコントロールユニット4に向けて出力するためのものである。湾曲可能に設けられた先端部には、ステレオ計測用光学アダプタ2などの複数の光学アダプタに共通のマウント部が設けられ、各光学アダプタが交換可能に装着されるようになっている。特に図示しないが、先端部の内部には、光学アダプタの複数の対物レンズによって結像される像を撮像する、例えばCCDなどの撮像素子が配置されるとともに、照明光を被検体に照射するライトガイドが設けられている。
【0019】
内視鏡挿入部3の構造は、先端部から基端部にわたって屈曲可能な細長い管状とされ、その内部に、撮像素子の信号線、ライトガイド本体、および先端部の湾曲を操作するためのワイヤ機構などが配置されている(いずれも不図示)。内視鏡挿入部3にステレオ計測用光学アダプタ2が装着される場合には、撮像素子によって、視差を有する一対の映像(以下、視差映像と称する)が取得され、内視鏡挿入部3内部の信号線により撮像信号がCCU9に伝送されるようになっている。
【0020】
内視鏡ユニット7は、内視鏡挿入部3のライトガイドに導光する照明光を発生する照明用光源、ワイヤ機構の電動湾曲駆動ユニット、および電動湾曲駆動ユニットを駆動する制御パラメータを記憶するためのEEPROM8などを備える装置部分であり、内視鏡挿入部3の基端部に接続された状態でコントロールユニット4に内蔵されている。
【0021】
CCU9は、内視鏡挿入部3に設けられた撮像素子の撮像を制御すると共に、撮像素子で取得された撮像信号を、例えばNTSC信号などの映像信号に変換し、入力映像信号100(図3参照)としてコントロールユニット4に出力するものである。このように、ステレオ計測用光学アダプタ2、内視鏡挿入部3、内視鏡ユニット7、CCU9は、ステレオ計測用光学アダプタを含む内視鏡からなり、視差映像を取得する映像信号取得部30(図3参照)を構成している。
【0022】
液晶モニタ6は、コントロールユニット4から出力される表示用映像信号101a(図3参照)に基づいて、被検体の映像およびその他の情報表示を行うものであり、表示部33(図3参照)を構成するものである。これらの映像、情報はそれぞれ必要に応じて単独に、または合成して表示される。本実施形態のようにステレオ計測を行う場合には、表示用映像信号101aは視差映像の一方または両方を含むものに対応する。
【0023】
その他の情報表示としては、例えば、後述するリモートコントローラ5などの操作部からの操作入力情報や、操作メニュー、操作用のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)(以下、これら操作関連の表示を操作画面画像と総称する。)が挙げられる。また、計測時に用いるカーソル画像の表示や、計測結果などを表示する計測用情報102(図3参照)が挙げられる。
【0024】
リモートコントローラ5は、計測内視鏡装置1の操作入力全般を行うための操作部であり、コントロールユニット4に接続されている。リモートコントローラ5が行う操作入力としては、例えば、電源のオン/オフ、キャリブレーション設定に関する操作、撮像動作に関する操作、照明に関する操作、内視鏡挿入部3の湾曲駆動の操作、計測に関する操作、計測時の計測精度の選択操作、液晶モニタ6に表示する映像の映像処理の選択操作、外部記憶媒体などへの映像記録操作、外部記憶媒体などに記録された映像の読み出し操作などが、適宜、ユーザインタフェースを介して行うことができるようになっている。
【0025】
例えば、特に図示しないが、ジョイスティック、レバースイッチ、フリーズスイッチ、ストアースイッチ、および計測実行スイッチなどがリモートコントローラ5に設けられ、これらにより、操作メニューの選択入力を行ったり、直接的に操作・指示入力したり、液晶モニタ6に表示されたGUIを操作したりすることで、種々の操作入力が行えるようになっている。すなわち、リモートコントローラ5は、計測者が画像計測等の操作入力を行う操作部31(図3参照)の機能を備えている。
【0026】
コントロールユニット4は、撮像された映像の映像処理、および画像計測のための演算処理を含めて、計測内視鏡装置1の全体制御を行うものである。本実施形態では、コントロールユニット4は、ハードウエアとしては、図2に示すように、CPU10、ROM11、RAM12、各種の入出力インタフェース、および映像信号処理回路16から構成される。
【0027】
CPU10は、ROM11や後述する外部記憶媒体44(図3参照)に記憶された制御用プログラムをRAM12にロードして実行し、後述する各機能の動作を行う。入出力インタフェースとしては、例えば、RS−232Cインタフェース15、PCカードインタフェース13、USBインタフェース14などを備える。
【0028】
RS−232Cインタフェース15は、リモートコントローラ5、内視鏡ユニット7、CCU9との間での動作制御を行うための通信を行うものである。PCカードインタフェース13は、PCMCIA準拠のPCカードを接続するためのものであるが、本実施形態では、主としてリムーバルの外部記憶媒体を接続し、装置を動作させるためのプログラムをロードしたり、計測に必要な設定や計測結果などに関する情報や画像情報などを記憶保存したりするために用いている。このため、PCカードインタフェース13には、外部記憶媒体としてフラッシュメモリを用いた各種メモリカード、例えば、PCMCIAメモリカード18や、コンパクトフラッシュ(登録商標)メモリカード19が装着される。
【0029】
USBインタフェース14は、USB機器を接続するためのものであるが、本実施形態では、パーソナルコンピュータ17を着脱可能に接続するために設けられている。そして、パーソナルコンピュータ17が接続された場合には、外部記憶媒体に記憶する上記各種情報、あるいはPCカードインタフェース13に接続された外部記憶媒体に記憶されている各種情報を、パーソナルコンピュータ17の内蔵メモリや記憶装置との間で授受したり、パーソナルコンピュータ17の表示モニタ上に再生したり、リモートコントローラ5に代わってコントロールユニット4に対する各種操作入力を行ったりするための通信を行う。
【0030】
このため、パーソナルコンピュータ17を接続する場合、コントロールユニット4に接続された液晶モニタ6、リモートコントローラ5、および外部記憶媒体の機能を、パーソナルコンピュータ17が兼用することができるようになっている。そのため、例えば、計測に関する制御や、映像処理や、画像表示などを、必要に応じてパーソナルコンピュータ17のリソースを利用して行うことができる。すなわち、この場合、パーソナルコンピュータ17は、図3における操作部31や表示部33の機能を備えるものである。
【0031】
映像信号処理回路16は、CCU9から供給された入力映像信号100(図3参照)に対して、リモートコントローラ5により指定された映像処理を施して出力映像信号101A、101Bを生成し、必要に応じてCPU10によって生成される操作画面画像や計測用情報102と合成し、液晶モニタ6に表示するために、例えばNTSC信号などに変換し、表示用映像信号101aとして、液晶モニタ6に出力するものである。
【0032】
次に、計測内視鏡装置1によるステレオ計測について説明する。計測内視鏡装置1によるステレオ計測では、以下の第1〜第6の処理が少なくとも実行される。第1の処理は、ステレオ計測用光学アダプタ2の光学データを記録した外部記憶媒体から光学情報を読み込む処理である。第2の処理は、内視鏡挿入部3の先端部内に配置された撮像素子とステレオ計測用光学アダプタ2の対物レンズ系との間の位置関係情報を読み込む処理である。
【0033】
第3の処理は、この位置関係情報と、生産時に求めた主となる内視鏡の撮像素子とこのステレオ計測用光学アダプタ2の対物レンズ系との間の位置関係情報とから、計測内視鏡装置1の撮像素子の位置誤差を求める処理である。第4の処理は、位置誤差から光学データを補正する処理である。第5の処理は、補正した光学データを基に、計測する画像を座標変換する処理である。第6の処理は、座標変換された画像を基に2画像のマッチングにより任意の点の三次元座標を求める処理である。
【0034】
CPU10は、例えば上記第1〜第4の処理をステレオ計測用光学アダプタ2に対して一度実行し、結果を外部記憶媒体上に計測環境データとして記録しておくように制御する。上記第1〜第4の処理をまとめてキャリブレーション処理と呼ぶ。これ以降に、ステレオ計測を実行するときは、CPU10は、計測環境データをRAM12に上にロードして、上記第5、第6の処理を実行するように制御する。
【0035】
なお、先端部の撮像素子とステレオ計測用光学アダプタ2の対物レンズ系との間の位置関係情報を読み込む第2の処理を行う場合、ステレオ計測用光学アダプタ2に設けられているマスクの形状を取り込み、生産時のマスクの形状と位置とを比較することにより行う。この場合、マスク形状の取り込みは、キャリブレーション用の被検体を撮像し、白画像を取り込むことにより行う。
【0036】
次に、図3を参照して、コントロールユニット4の機能構成について、映像信号処理回路16に関連する各機能ブロックを中心に説明する。コントロールユニット4の機能ブロックは、映像信号処理部34、信号変換部38、画像記憶部42、画像計測処理部43、マッチング処理部45、および制御部46からなる。ここで、映像信号処理部34および信号変換部38は、図2に示した映像信号処理回路16から構成される。
【0037】
ステレオ計測用光学アダプタ2、内視鏡挿入部3、内視鏡ユニット7、およびCCU9からなる映像信号取得部30からは、CCU9によって輝度レベル調整やノイズ除去処理などの前処理が施された、一対の視差映像を含む1フレーム分の映像情報が、入力映像信号100として映像信号処理部34に入力される。前処理は、映像信号処理部34が映像処理として行ってもよい。
【0038】
映像信号処理部34は、入力された入力映像信号100に映像処理を施し、出力映像信号101Aを生成して信号変換部38に出力すると共に、出力映像信号101Bを生成して画像記憶部42に出力できるようになっている。なお、出力映像信号101A、101Bは、異なる信号とは限らず、同一の映像処理が施された同一の信号であってもよい。
【0039】
信号変換部38は、映像信号処理部34から出力された出力映像信号101Aを表示用映像信号101aとして表示部33に出力する。その際、表示用映像信号101aは、必要に応じて、操作画面画像などの他の画像データを合成することができるようになっている。また、画像計測処理部43から計測用情報102が出力された場合には、計測用情報102も合成した状態で表示用映像信号101aを生成できるようになっている。
【0040】
映像信号処理部34には、操作部31からの計測開始/終了信号103も入力される。操作部31から計測開始の信号を受信した場合、映像信号処理部34は、ステレオ計測用光学アダプタ2が有する2つの対物レンズからの像を含む映像から、一方の対物レンズからの像を含む視差映像を抽出するように入力映像信号100を処理し、出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。また、操作部31から計測開始前及び計測終了の信号を受信した場合、映像信号処理部34は映像信号取得部30からの入力映像信号100を出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。
【0041】
画像記憶部42は、映像信号処理部34から出力される出力映像信号101Aを静止画像データとして記憶するためのもので、RAM12上に設けられる。また、操作部31から画像記録信号104が入力されると、制御部46による制御に従って、静止画像データが画像記憶部42から読み出されて外部記憶媒体44に出力され、外部記憶媒体44に記憶される。
【0042】
画像計測処理部43は、画像記憶部42に記憶された静止画像データを用いて計測処理を行うと共に、計測の操作入力に必要な計測用GUI画像を生成する。本実施形態では、画像計測処理部43は、周知のアルゴリズムによりステレオ計測を行う。例えば、操作部31によって、液晶モニタ6の表示画像上で計測点が入力されると、計測点に対応する各視差画像の対応点の位置情報を用いて、三角測量の原理により被写体の3次元位置座標を求めるような画像処理を行う。なお、計測点に対応する各視差画像の対応点の位置情報は、後述するマッチング処理部45がマッチング処理によって取得するものである。
【0043】
計測点の情報などは、例えば、液晶モニタ6上のカーソルをリモートコントローラ5などで操作するGUIを通して取得された計測入力情報107として、画像計測処理部43に入力されたものを用いる。このステレオ計測の計測結果は、計測距離や計測点のマークなどを含む計測用GUI画像と共に、計測用情報102として、信号変換部38に出力され、信号変換部38で出力映像信号101Aの映像に合成されて、表示部33に表示できるようになっている。
【0044】
マッチング処理部45は、計測者が入力した、一方の視差映像上の指定位置に対応する、もう一方の視差映像の位置を算出するマッチング処理を行う。このマッチング処理は、左右2つの視差画像のマッチング(一致)度合い(以下、マッチング度とする)を算出する処理も含んでいる。制御部46は、CPU10、ROM11、およびRAM12からなる。ROM11に格納されている制御用プログラムをCPU10が読み出してRAM12にロードし、制御用プログラムに記述されている命令をCPU10が実行することにより、制御部46は各部の動作を制御する。なお、図3では、図示が煩雑となることを避けるため、制御部46と各部を結ぶ矢印を省略している。
【0045】
次に、計測内視鏡装置1の動作について説明する。本実施形態では、計測の開始前などにユーザが被写体の観察を行う場合の動作を中心に説明する。まず、図4に示すように、ST101では、映像信号取得部30から1フレーム分の映像情報を取得する。すなわち、映像信号取得部30から入力映像信号100がコントロールユニット4の映像信号処理部34に出力され、映像信号処理部34によって1フレーム分の入力映像信号100が映像情報として取得される。
【0046】
続いて、ST102では、映像信号処理部34は入力映像信号100の1フレーム分の映像信号を分割する。このとき、映像信号処理部34は、映像信号取得部30から取得した1つの映像を左右2つの映像に中央で分割する処理を実行する。分割された2つの映像信号は出力映像信号101Bとして画像記憶部42に出力され、記憶される。
【0047】
続いて、ST103では、マッチング処理部45は、画像記憶部42から左右2つの映像に対応した出力映像信号を読み出し、出力映像信号から得られる輝度情報に基づいて、マッチング処理により左右2つの映像のマッチング度を算出する。このマッチング処理は、通常の計測で使用するものと同様である。算出されたマッチング度の情報は映像信号処理部34に出力される。尚、本実施形態ではマッチング処理部45は画像計測処理部43と別に設けられているが、上述したマッチング処理部45の機能を画像計測処理部43に持たせてもよい。
【0048】
続いて、ST104では、映像信号処理部34は、マッチング度を所定の閾値(一例として、本実施形態では50%とする)と比較する。マッチング度が50%以上であった場合には、処理がST105に進み、マッチング度が50%未満であった場合には、処理がST107に進む。
【0049】
ST105では(マッチング度が50%以上であった場合)、映像信号処理部34は左右2つの映像のうち、一方の映像(一例として、本実施形態では左の映像とする)に対応した1フレーム分の映像信号を出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。続いて、ST106では、信号変換部38は、入力された出力映像信号に対して、表示部33が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101aとして表示部33に出力する。表示部33は、表示用映像信号101aに基づいて映像を表示する。図5は、ST106で表示される画面を示している。表示画面50上には、視差を有する左右の光学系からの視差映像のうち、左の光学系からの視差映像51Lのみが表示される。
【0050】
この視差映像51Lを拡大して表示してもよい。拡大表示を行う場合、映像信号処理部34は左右2つの映像のうち、一方の映像に対応した映像信号に対して拡大処理を実行し、出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。この後の処理は上述した通りである。
【0051】
一方、ST107では(マッチング度が50%未満であった場合)、映像信号処理部34は、映像信号取得部30から取得した1フレーム分の映像信号を出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。続いて、ST108では、信号変換部38は、入力された出力映像信号に対して、表示部33が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101aとして表示部33に出力する。表示部33は、表示用映像信号101aに基づいて映像を表示する。
【0052】
ST106およびST108の後、処理がST101に移行して、次の1フレーム分の映像情報を取得し、上記を繰り返す。これにより、現在の映像処理が施された1フレームごとの映像を表示部33に略リアルタイムで表示する映像表示モードが実現される。
【0053】
また、図示していないが、映像を記録する場合には、ユーザからの指示に基づいて操作部31から画像記録信号104が入力される。すると、制御部46による制御に従って、静止画像データが画像記憶部42から読み出されて外部記憶媒体44に出力され、外部記憶媒体44に記憶される。このとき、マッチング度が50%以上であった場合、制御部46は左右2つの映像のうち、一方の映像を画像記録媒体44に記憶するようにしてもよいし、左右2つの映像をそれぞれ別個に記憶するようにしてもよい。
【0054】
本実施形態では、ステレオ計測用光学アダプタのように2つの被写体像を結像することが可能な光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着された場合には1つの被写体像を抽出して表示し、それ以外の光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着された場合には、光学アダプタによって結像される被写体像をそのまま表示する制御が行われる。すなわち、内視鏡挿入部3の先端部に装着される光学アダプタの種類が識別され、その種類に応じた制御が行われる。
【0055】
本実施形態では、上記のようにマッチング度に基づいて光学アダプタの種類が識別される。すなわち、ST105において、マッチング度が50%以上であった場合には、類似する2つの映像が左右に並んでいると推定される。したがって、2つの被写体像を結像することが可能な光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着されていると判定することが可能である。
【0056】
次に、本実施形態の変形例を説明する。図6に示す構成では、図3に示す構成と比較して、表示部33とは別の表示部35が設けられている。表示部35は、例えば内視鏡装置に接続可能な外部のモニタである。複数の表示部を設けることによって、複数の検査者が同時に検査を行うことが可能となる。
【0057】
本変形例では、2つの被写体像を結像することが可能な光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着された場合には、表示部33が一方の被写体像を表示し表示部35が他方の被写体像を表示する制御が行われる。また、それ以外の光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着された場合には、表示部33と表示部35が2つの被写体像をそのまま表示する制御が行われる。
【0058】
すなわち、マッチング処理部45が算出したマッチング度が50%以上であった場合、映像信号処理部34は、1フレーム分の映像から左右2つの映像をそれぞれ抽出する処理を実行し、各映像に対応した映像信号を出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。信号変換部38は、左右2つの映像のうち一方の映像(例えば左の映像)に対応した出力映像信号に対して、表示部33が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101aとして表示部33に出力する。表示部33は、表示用映像信号101aに基づいて映像を表示する。また、信号変換部38は、左右2つの映像のうち他方の映像(例えば右の映像)に対応した出力映像信号に対して、表示部35が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101bとして表示部35に出力する。表示部35は、表示用映像信号101bに基づいて映像を表示する。
【0059】
一方、マッチング度が50%未満であった場合、映像信号処理部34は、映像信号取得部30から取得した1フレーム分の映像信号を出力映像信号101Aとして信号変換部38に出力する。信号変換部38は、入力された出力映像信号に対して、表示部33が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101aとして表示部33に出力する。表示部33は、表示用映像信号101aに基づいて映像を表示する。また、信号変換部38は、入力された出力映像信号に対して、表示部35が表示できるサイズに画像サイズを変更するなどの処理を施し、表示用映像信号101bとして表示部35に出力する。表示部35は、表示用映像信号101bに基づいて映像を表示する。
【0060】
なお、マッチング度が50%以上であった場合に、表示部33と表示部35のうちの一方が左右2つの映像のうち1つの映像を表示し、他方が1フレーム分の映像をそのまま表示するようにしてもよい。
【0061】
上述したように、本実施形態によれば、2つの被写体像を結像することが可能な光学アダプタが内視鏡挿入部3の先端部に装着されていることが検出された場合に、光学アダプタからの2つの像を含む映像から、1つの像を含む映像を抽出するように映像信号を処理することによって、一方の像を他方の像とは独立に表示することが可能となる。これによって、表示映像の視認性を向上することができる。
【0062】
例えば、抽出した1つの像を拡大するように映像信号を処理することによって、1つの視差映像が拡大表示されるので、表示映像の視認性をより向上することができる。また、従来のように複数の視差映像が表示されていると、どの視差映像を見て被写体を観察すればよいのか、ユーザが混乱する場合があるが、本実施形態によれば、1つの視差映像のみを表示することが可能となるので、ユーザの混乱を防止することができる。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施形態では、2つの映像のマッチング度を光学アダプタの種類の識別に用いているが、映像の色分布やテクスチャ等を特徴量として左右の映像の類似の度合い(類似度)を算出し、その類似度を光学アダプタの種類の識別に用いてもよい。また、光学アダプタの識別方法は、上記の実施形態で説明した方法に限られない。例えば、光学アダプタに対して、種類毎に固有の抵抗値を有する抵抗を設けておき、その抵抗値を検出して光学アダプタの識別を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態による内視鏡装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による内視鏡装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による内視鏡装置が備えるコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による内視鏡装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による内視鏡装置の表示画面を示す参考図である。
【図6】本発明の一実施形態による内視鏡装置が備えるコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】従来の内視鏡装置の表示画面を示す参考図である。
【符号の説明】
【0065】
1・・・計測内視鏡装置、2・・・ステレオ計測用光学アダプタ、3・・・内視鏡挿入部、4・・・コントロールユニット、5・・・リモートコントローラ、6・・・液晶モニタ、9・・・CCU、30・・・映像信号取得部、31・・・操作部、33・・・表示部、34・・・映像信号処理部、38・・・信号変換部、42・・・画像記憶部、43・・・画像計測処理部、44・・・外部記憶媒体、45・・・マッチング処理部(識別部)、46・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系によって結像される像を撮像し映像信号を取得する映像信号取得部と、前記映像信号を処理する映像信号処理部とを備えた内視鏡装置において、
前記光学系の種類を識別する識別部をさらに備え、
前記識別部によって、前記光学系が所定の光学系であると識別された場合に、前記映像信号処理部は、前記光学系からの複数の像を含む映像から、一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、表示用映像信号として出力する
ことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記識別部は、前記光学系からの複数の像の類似度に基づいて前記光学系を識別することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記映像信号処理部はさらに、前記一つの像を拡大するように前記映像信号を処理することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記映像信号処理部によって処理された前記映像信号を記憶媒体に記憶させる制御を行う制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記映像信号処理部によって処理された前記映像信号に基づいた映像を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記表示部として少なくとも第1の表示部と第2の表示部とを備え、
前記識別部によって、前記光学系が所定の光学系であると識別された場合に、前記映像信号処理部は、前記光学系からの複数の像を含む映像から、一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、第1の表示用映像信号として前記第1の表示部に出力すると共に、前記光学系からの複数の像を含む映像から、前記一つの像とは異なる他の一つの像を含む映像を抽出するように前記映像信号を処理し、第2の表示用映像信号として前記第2の表示部に出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198787(P2009−198787A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39982(P2008−39982)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】