説明

内部パイロット式減圧弁

【課題】内部パイロット式減圧弁の組立作業性とダイヤフラムの交換作業性を向上させる。
【解決手段】内部パイロット式減圧弁10は、一次側ポート11に供給された圧縮空気を減圧して二次側ポート12に流出する。二次側に流入される圧力は、ハンドル61を回転させてパイロットダイヤフラム49に加わるばね力を調整することにより設定される。パイロットダイヤフラム49と調圧ばね部材59が組み込まれるボンネット47は、調圧アダプター28に挿入した後に回転させると、外方突起部71が内方突起部73に当接して装着される。調圧アダプター28とボンネット47との間にロック部材77を挿入すると、調圧アダプター28はロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側圧力が導入されるパイロット圧室を有する内部パイロット式減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧源から供給される圧縮空気を所定の圧力に調圧して空気圧シリンダ等の空気圧機器に供給するためにレギュレータとも言われる減圧弁が使用されている。このような減圧弁としては、例えば、特許文献1および非特許文献1に記載されるように、圧縮空気が供給される一次側ポートと、空気圧機器が接続される二次側ポートとを連通する連通孔を開閉する主弁体を有し、主弁体には連通孔を閉じる方向のばね力が主弁ばね部材により加えられている。減圧弁は二次側ポートの圧力が供給される二次側圧力室を区画するダイヤフラムを有しており、ダイヤフラムには主弁体が設けられた主弁軸が当接している。
【0003】
このダイヤフラムを調圧ばね部材により主弁体を軸方向に直接駆動するようにしたタイプは直動式減圧弁となる。直動式減圧弁においては、ダイヤフラムにより二次側圧力室と大気圧室とを区画し、ダイヤフラムにはリリーフ孔が形成されている。ダイヤフラムには主弁軸の先端が当接してリリーフ孔を閉じるようになっており、ダイヤフラムには調圧ばね部材により主弁軸を介して主弁体を開く方向のばね力が加えられている。二次側ポートの圧力が設定値よりも低くなると、調圧ばね部材のばね力によりダイヤフラムは主弁軸を介して主弁体が連通孔を開放する方向に変位して二次側ポートに一次側ポートの圧縮空気が流出する。二次側ポートの圧力が設定圧力となると、ダイヤフラムに加わる圧縮空気の圧力によりダイヤフラムは主弁体から離れる方向に変位して主弁体が連通孔を閉じることになる。
【0004】
上述した直動式減圧弁においては、主弁体を閉じる方向にはダイヤフラムに加わる二次側圧力と、主弁体に加わる一次側圧力と、主弁ばね部材のばね力との合計の推力が加わる。一方、主弁体を開く方向には調圧ばね部材のばね力と、弁体に加わる二次側ポートの圧力との合計の推力が加わることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−268943号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人日本油空圧学会編集「新版油空圧便覧」第461頁〜第465頁、株式会社オーム社、1989年2月25日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
減圧弁には上述した直動式に加えて、一次側ポートの空気をパイロット圧とした内部パイロット式型がある。このタイプの減圧弁は、直動式減圧弁をパイロット弁とした構造であり、二次側圧力室と内部パイロット室とを区画する主弁ダイヤフラムを有し、この主弁ダイヤフラムには主弁軸が当接している。このタイプの減圧弁は、さらに、一次側ポートの空気の圧力に応じて内部パイロット室へ供給される圧力を調整するパイロットダイヤフラムを有している。このように、主弁ダイヤフラムとパイロットダイヤフラムとが設けられた内部パイロット式減圧弁は、流量特性を直動式減圧弁よりも高めることができる。流量特性は、横軸に二次側流量を示し、縦軸に二次側圧力を示すグラフによって示すことができる。二次側流量が増加しても二次側圧力を設定圧力通りの一定値に保持できることが望ましい。実際には二次側流量の増加に伴い二次側圧力は低下する傾向を有するが、二次側流量を増加しても二次側圧力があまり低下しない二次側流量範囲があり、通常ではこの範囲で減圧弁が使用される。
【0008】
内部パイロット式減圧弁は2つのダイヤフラムを有しており、パイロットダイヤフラムは減圧弁のケース体のボンネット内に組み込まれている。ボンネットはケース体としてのアダプターに対してねじ部材を用いて取り付ける形態と、ボンネットの外周面に形成された雄ねじをケース体としてのアダプターの雌ねじにねじ結合させて取り付ける形態とがある。したがって、複数本のねじ部材を用いた形態においては、減圧弁を組み立てる際にはボンネットをアダプターにねじ止めする作業が不可避であり、パイロットダイヤフラムを交換する際には複数本のねじを緩めてボンネットをハウジングから取り外す必要がある。また、ボンネットをケース体にねじ結合させる形態においては、ボンネットを多数回回転させる必要があり、ボンネットの着脱に時間がかかることになる。このため、内部パイロット式減圧弁は直動型減圧弁に比して組立時の作業性とパイロットダイヤフラムの交換時の作業性が悪いという問題点がある。
【0009】
本発明の目的は、内部パイロット式減圧弁の組立時およびダイヤフラムの交換時の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内部パイロット式減圧弁は、圧縮空気が供給される一次側ポートと、当該一次側ポートに連通孔を介して連通し調圧された圧縮空気を流出する二次側ポートとが形成され、前記連通孔を開閉する主弁体を備えた主弁軸が前記連通孔に軸方向に移動自在に装着されるポートブロックと、前記ポートブロックに着脱自在に装着され、前記二次側ポートに連通する二次側圧力室と反対側のパイロット圧室とに仕切る主弁ダイヤフラムを前記ポートブロックとの間で固定する調圧アダプターと、前記パイロット圧室と前記一次側ポートとを連通させる連通孔を開閉するパイロット弁体を開閉するパイロットダイヤフラムと、前記パイロット圧室内のパイロット圧を調整する調圧ばね部材とが組み込まれる円筒部を備え、前記調圧アダプターの円筒形装着部内に着脱自在に装着されるボンネットと、前記円筒部の外周面に径方向外方に突出して設けられる外方突起部と、前記円筒形装着部内に突出して設けられ、前記ボンネットを前記調圧アダプター内に軸方向に挿入した後に回転させると前記外方突起部が当接する内方突起部と、前記外方突起部が前記内方突起部に当接した状態のもとで、前記円筒部の内面に設けられたストッパと前記外方突起部と前記円筒形装着部と前記円筒部とに区画される隙間内に挿入されるロック部材とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の内部パイロット式減圧弁は、前記ロック部材が軸方向に移動して脱落することを防止する環状の脱落防止部材を有することを特徴とする。本発明の内部パイロット式減圧弁は、前記外方突起部を前記ボンネットに2つ設け、前記内方突起部を前記外方突起部の数に対応させて前記調圧アダプターに2つ設け、前記ボンネットを前記調圧アダプター内に挿入した後に前記ボンネットをほぼ4分の1回転させると、それぞれの前記外方突起部が前記内方突起部に当接することを特徴とする。本発明の内部パイロット式減圧弁は、前記パイロットダイヤフラムとの間で前記調圧ばね部材を保持するばね受け部材にねじ結合される調整ねじ部材を前記ボンネットに回転自在に設け、前記調整ねじ部材に嵌合する端壁部と前記ボンネットの外周を覆う円筒部とを有するハンドルを、前記ボンネットに軸方向に押し付けて前記ボンネットに噛み合い前記ハンドルの回転を阻止するロック位置と、前記ハンドルを前記ボンネットから軸方向に引っ張って前記ハンドルの回転を許容する回転位置との間で軸方向に往復動自在に前記ボンネットの外側に装着し、前記ハンドルが回転位置となったときに外部に露出され、前記ハンドルがロック位置となったときに前記ハンドルにより覆われるハンドル位置報知部を前記ボンネットの外周面に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパイロット減圧弁においては、パイロットダイヤフラムと調圧ばね部材とが組み込まれるボンネットを調圧アダプターに挿入し、1回転以下の角度で回転させることにより、突起部とストッパとが当接してボンネットが調圧アダプターに装着される。ボンネットと調圧アダプターとの間にロック部材を挿入すると、ボンネットの回転が阻止される。このように、簡単な作業でボンネットを調圧アダプターに組み付けることができるとともに、ボンネットを調圧アダプターから取り外すことができ、内部パイロット式減圧弁の組立作業性およびダイヤフラムの交換作業性を向上させることができる。ロック部材の脱落を脱落防止部材により防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態である内部パイロット式減圧弁の正面図である。
【図2】(A),(B)はそれぞれ図1の側面図である。
【図3】図1における3−3線拡大断面図である。
【図4】ハンドルをロック位置に移動したときにおけるハンドルとボンネットの部分を示す断面図である。
【図5】パイロット減圧弁の調圧アダプターとこれに挿入前のボンネットとを示す斜視図である。
【図6】(A)はボンネットを調圧アダプターに挿入した状態における図5の6A−6A線断面図であり、(B)は(A)と同様の状態における図5の6B−6B線断面図である。
【図7】(A)は図6の状態からボンネットを90度回転させた状態における調圧アダプターの断面図であり、(B)は(A)に示される隙間にロック部材が挿入された状態における調圧アダプターの断面図である。
【図8】(A)はロック部材を挿入している状態における調圧アダプターとボンネットを示す斜視図であり、(B)はハンドル位置報知部を取り付けている状態における調圧アダプターとボンネットを示す斜視図である。
【図9】ボンネットに設けられた突起部とロック部材との位置関係を示す調圧アダプターとボンネットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。この内部パイロット式減圧弁10は、図3に示されるように、圧縮空気が図示しない空気圧源から一次側配管を介して供給される一次側ポート11と、空気圧機器が二次側配管を介して接続される二次側ポート12とが形成されたブロック本体13aを有している。一次側ポート11には一次側の配管がねじ結合されるねじ孔11aが形成され、二次側ポート12には二次側の配管がねじ結合されるねじ孔12aが形成されている。それぞれのねじ孔11a,12aは、中心軸が一致した状態となってブロック本体13aに形成され、ブロック本体13aの相互に反対側の外面に開口されている。ブロック本体13aの中心部にはそれぞれのねじ孔11a,12aに対して直角方向となって軸方向に延びる連通孔14が形成されており、連通孔14を介して一次側ポート11は二次側ポート12に連通されている。一次側ポート11から連通孔14を介して二次側ポート12に至る空気流通部が減圧弁の主流路部となっている。
【0015】
連通孔14内には主弁軸15が軸方向に移動自在に装着されている。この主弁軸15の一端部側には連通孔14の内径よりも大径のフランジ部16aが設けられ、連通孔14の連通側開口部に形成された主弁座17に当接するゴム製の主弁体16がフランジ部16aに設けられている。主弁軸15の他端部は、ブロック本体13aに形成されたガイド孔18内に摺動自在に嵌合されており、ガイド孔18を連通孔14よりも小径とすることにより、主弁軸15の摺動抵抗を小さくしている。
【0016】
ブロック本体13aの開口端部には雌ねじ19aが形成され、この雌ねじ19aにねじ結合される雄ねじ19bを有するカバー13bがブロック本体13aに取り付けられている。カバー13bとブロック本体13aとによりポートブロック13が構成される。このポートブロック13内には一次側ポート11に連通する一次側室21が形成され、一次側室21を介して連通孔14は一次側ポート11に連通している。カバー13bにはガイド筒体22が形成されており、ガイド筒体22には主弁軸15の一端部に設けられた円筒形状の摺動部15aが摺動自在に嵌合されている。主弁軸15内には主弁軸15の一端面に開口し、二次側ポート12に連通する連通流路23が形成されており、ガイド筒体22と主弁軸15の一端面とによりガイド筒体22内に区画されるバランス室24には連通流路23を介して二次側ポート12の圧力が供給されるようになっている。バランス室24は摺動部15aの環状溝に装着されたシール材25により一次側ポート11に対してシールされている。
【0017】
バランス室24内の摺動部15aには圧縮コイルばねからなる主弁ばね部材26が装着されており、この主弁ばね部材26の一端はカバー13bに当接し、他端は主弁軸15に当接している。この主弁ばね部材26により主弁軸15には主弁体16を主弁座17に向けて押圧して連通孔14を閉じる方向のばね力が加えられている。一次側室21から主弁軸15の軸方向に加えられる力としては、フランジ部16aの図中下方に向かう力、つまり一次側受圧部27aにかかる推力がある。また、フランジ部16aの図中上方に向かう力、つまり主弁体16の一次側室21内部分の反対側受圧部27bにかかる推力とがある。その2つの推力は受圧面積がほぼ同じであるので、ほぼ相殺される。バランス室24の内径は、連通孔14の内径とほぼ同一、つまり受圧面積はほぼ同一であるので、バランス室24の二次側圧により主弁体16を閉じる方向に主弁軸15に加わる推力と、二次側ポート12の二次側圧により主弁体16を開く方向に主弁軸15に加わる推力とがほぼ同一となって相殺されている。
【0018】
以上のように、一次側圧力と二次側圧力とによる主弁軸15の軸方向推力はほぼ相殺されるので、主弁軸15の軸方向に加えられる力は主弁ばね部材26のばね力となる。
【0019】
ブロック本体13aにはフランジ部28aと円筒形装着部28bとを有する調圧アダプター28が装着されている。図1および図2に示されるように、調圧アダプター28は4本のねじ部材29によりフランジ部28aの部分でポートブロック13のブロック本体13aに締結されており、着脱自在つまり取り外し自在となっている。フランジ部28aには図5に示されるように、ねじ部材29が貫通する取付孔29aが形成されている。ブロック本体13aと調圧アダプター28との間には主弁ダイヤフラム31が固定されている。主弁ダイヤフラム31はゴム製の弾性変形部31aとこれに固定された金属製または樹脂製の補強ディスク31bとを有している。
【0020】
内部パイロット式減圧弁10を図示しない部材に取り付けるために、調圧アダプター28の円筒形装着部28bには雄ねじが形成され、この雄ねじには図2に示されるようにナット30がねじ結合される。
【0021】
ブロック本体13aと調圧アダプター28の突き当て端面には凹部がそれぞれ形成されており、ブロック本体13aと調圧アダプター28との間に配置される主弁ダイヤフラム31によってブロック本体13aの凹部に形成される二次側圧力室32と、調圧アダプター28の凹部に形成されるパイロット圧室33とに区画されている。二次側圧力室32はブロック本体13aに形成された連通孔34を介して二次側ポート12に連通しており、二次側圧力室32は二次側ポート12と同一の二次側圧力となる。主弁ダイヤフラム31には主弁軸15の他端が当接するようになっており、この当接部分はシール構造となっている。二次側圧力室32の圧力がパイロット圧室33の圧力をよりも低くなると、主弁ダイヤフラム31は図中上方に弾性変形し、主弁軸15の他端はシールされ、主弁軸は軸方向上方に変位する。逆に、二次側圧力室32の圧力がパイロット圧室33の圧力より高くなると、主弁ダイヤフラム31は図中下方に弾性変形する。主弁ダイヤフラム31がさらに図中下方に弾性変形すると、主弁体16が主弁座17に当接するので、主弁軸15はそれ以上下方に変位しないから、主弁軸15の他端のシールは解除される。
【0022】
二次側ポート12に接続された二次側配管により空気圧機器に対して圧縮空気が供給されると、二次側圧力室32の圧力が低下する。このため、主弁ダイヤフラム31はパイロット圧室33内のパイロット圧により主弁軸15に向けて変位し、主弁体16は主弁座17から離れることになる。これにより、一次側ポート11から二次側ポート12に一次側圧力の圧縮空気が供給されて二次側ポート12の圧力が高められる。二次側圧が高められると、パイロット圧に抗して主弁ダイヤフラム31は図中下方に弾性変形するから主弁軸15は図中下方へ変位する。したがって、図3に示されるように主弁体16が主弁座17に接触シールして二次側ポート12への圧縮空気の供給が停止する。このようにして、二次側ポート12の圧力は設定値に戻される。
【0023】
主弁軸15の他端部内には主弁ダイヤフラム31が突き当てられる他端面に開口させて排気孔35が形成されており、この排気孔35の内方端は径方向の連通孔35aを介してガイド孔18に向けて開口されている。ガイド孔18には連通孔35aに対して軸方向両側に位置させてシール材36が設けられており、両側のシール材36の間に開口させてブロック本体13aには、排気孔35を外部に連通させる排気孔(図示省略)が形成されている。これにより、二次側圧力室32の圧力がパイロット圧室33の圧力よりも高くなって、主弁ダイヤフラム31が主弁軸15から離れる方向に弾性変形すると、二次側圧力室32内の空気は排気孔35を介して外部に排出される。例えば、空気圧機器を有する電子部品の組立ラインにおいて、減圧弁の二次側に設置した駆動機器がワークを押した際に、一時的に二次側ポート内の圧力がパイロット圧室の圧力よりも高くなるので、二次側配管内の圧縮空気は排気孔35から外部に排出される。
【0024】
調圧アダプター28に形成された収容孔37にはバルブホルダー38が組み込まれている。このバルブホルダー38は収容孔37に嵌合する大径筒体38aとこれとの間に隙間を有する小径筒体38bとを有している。大径筒体38aと小径筒体38bとをそれぞれの基端部で連結する端壁部39は調圧アダプター28の底面に対向しており、小径筒体38bの先端部には弁座部41が調圧アダプター28の底面に向けて設けられている。パイロット流路43は、ポートブロック13と調圧アダプター28と主弁ダイヤフラム31の端部を貫通して設けられている。さらに、パイロット流路43は小径筒体38b内に設けられた弁室42と一次側ポート11に連通している。大径筒体38aと小径筒体38bとの間には連通室44が形成されている。この連通室44は、後述するパイロット弁体55が弁座部41の弁座をシートしていないときに、弁座部に形成された連通孔45と後述するステム51との隙間を通して弁室42と連通する。また、連通室44は、端壁部39に形成された連通孔46と調圧アダプター28に形成された連通孔46aとによりパイロット圧室33に常に連通している。
【0025】
調圧アダプター28にはボンネット47が着脱自在に装着されている。このボンネット47は調圧アダプター28の円筒形装着部28bに嵌合する円筒部47aと、円筒部47aの端部に設けられた端壁部47bとを有しており、円筒部47aはバルブホルダー38の外側に嵌合している。ボンネット47の内周面には径方向内方に突出する突起部48が軸方向に延びて設けられており、突起部48は円周方向に間隔を隔てて複数設けられている。ボンネット47内にはパイロットダイヤフラム49が配置されており、このパイロットダイヤフラム49によりボンネット47内のばね室50とバルブホルダー38内の連通室44とに区画されている。
【0026】
パイロットダイヤフラム49の外周部の上面は、バルブホルダー38の大径筒体38aに当接する。パイロットダイヤフラム49の周端の下面は、複数の突起部48により下面側から図中上方に向かって押圧されるスリップワッシャ48aに当接する。スリップワッシャ48aは環状の樹脂からなっている。このように、パイロットダイヤフラム49の外周部は、大径筒体38aとスリップワッシャ48aとの間に挟み込まれている。パイロットダイヤフラム49の径方向中央部にはステム51が設けられている。このステム51には弁室42とばね室50とを連通させる貫通孔52が形成されており、ステム51の一端部は連通孔45内に入り込んでいる。ステム51にはパイロットダイヤフラム49の連通室44側の中央部を覆うディスク部51aが設けられている。このディスク部51aにパイロットダイヤフラム49を隔てて対向する補強ディスク53がナット54によりステム51に固定されている。
【0027】
弁室42内には鋼球からなるパイロット弁体55が配置されている。このパイロット弁体55にはパイロットばね部材56により連通孔45とステム51の端部の弁座を閉じる方向のばね力が加えられている。パイロット弁体55が弁座部41に当接すると連通孔45が閉じられる。ステム51の弁室42側の端部はパイロット弁体55が当接する弁座となっており、パイロット弁体55がステム51の弁座に当接すると貫通孔52が閉じられる。なお、図3は連通孔45と貫通孔52の両方が閉じられた状態となっている。また、パイロット弁体55と小径筒体38bの内壁との間には、空気が流通可能な隙間がある。
【0028】
ボンネット47の端壁部47bには調整ねじ部材57が回転自在に取り付けられている。この調整ねじ部材57の内方端部には雄ねじ57aが設けられており、この雄ねじ57aにねじ結合されるばね受け58と補強ディスク53との間には、圧縮コイルばねからなる調圧ばね部材59が装着されている。この調圧ばね部材59によりパイロットダイヤフラム49には図中上向きの推力が加えられる。また、連通室44の二次圧と弁室42の一次圧とパイロットばね部材56により、パイロットダイヤフラム49には図中下向きの推力が与えられる。これら上向きと下向きの推力のバランスで、ステム51の軸方向の位置が設定される。
【0029】
ステム51がパイロット弁体55を弁座部41から離す方向に図3において上方に移動すると、パイロット圧室33は連通室44、ステム上端小径部の外周と連通孔45との隙間、弁室42,およびパイロット流路43を介して一次側ポート11と連通する。これにより、パイロット圧室33内のパイロット圧は一次側ポート11の圧力に近づく。また、ステム51の端部の弁座はパイロット弁体55に当接するので、貫通孔52は閉鎖される。したがって、弁室42と連通室44がばね室50つまり大気に開放されることはない。これに対し、ステム51がパイロット弁体55から離れると、弁座部41に接触するパイロット弁体55により弁室42は閉じられる。また、ステム51の端部の弁座とパイロット弁体55は離れるので、ステム51の貫通孔52を介して連通室44がばね室50と連通する。これにより、連通室44および貫通孔52を介してパイロット圧室33は、ばね室50と連通する。ばね室50はボンネット47に形成された息付き孔60により外部と連通しており、貫通孔52および連通孔45を介してパイロット圧室33がばね室50と連通すると、パイロット圧室33内の空気は外部に排出され、パイロット圧は外部の大気圧に近づく。
【0030】
図3に示されるように、パイロットダイヤフラム49にかかる上向きと下向きの推力がバランスすると、パイロット弁体55が連通孔45を閉じるとともにステム51がパイロット弁体55に当接してステム上端の弁座を閉じた状態となり、パイロット圧は設定された圧力に保持される。したがって、ばね受け58とパイロットダイヤフラム49との間の調圧ばね部材59の圧縮ストロークを調整して調圧ばね部材59によりパイロットダイヤフラム49に加えられるばね力を調整することによって、パイロット圧室33内のパイロット圧が調整され、パイロット圧に応じて二次側ポート12に吐出される圧縮空気の二次圧が設定される。
【0031】
調整ねじ部材57を回転させるためのハンドル61がボンネット47の外側に取り付けられている。このハンドル61はボンネット47の外周を覆う円筒部61aと、これと一体となった端壁部61bとを有している。ボンネット47の端壁部47bには調整ねじ部材57の外方端部57bに軸方向に摺動自在に嵌合する嵌合部62が設けられている。外方端部57bは横端面が四角形となっており、嵌合部62の内周面は外方端部57bに対応して横断面が四角形となっている。したがって、ハンドル61を回転させると、調整ねじ部材57は回転することになる。
【0032】
ボンネット47の端壁部47bの外周面には軸方向に延びる噛み合い溝63が円周方向に多数形成され、ハンドル61の内周面には噛み合い溝63に噛み合う噛み合い突起64が設けられている。図3に示すように、ハンドル61を引っ張ると、噛み合い突起64と噛み合い溝63との噛み合いが解かれて回転位置となる。この回転位置においては、ハンドル61の回転が許容され、ハンドル61をボンネット47の外側で回転させることができる。これに対し、図4に示すように、ハンドル61をボンネット47に向けて軸方向に押し付けると、噛み合い突起64が噛み合い溝63に噛み合ってハンドル61はロック位置となる。このロック位置ではハンドル61を回転することが阻止される。
【0033】
作業者が二次側圧力を調整する際には、ハンドル61を図3に示す回転位置に移動させてハンドル61を回転する。これにより、雄ねじ57aにねじ結合するばね受け58が調整ねじ部材57の軸方向に移動し、調圧ばね部材59の軸方向の長さが変化してばね力が調整される。一方、図3に示すようにハンドル61をロック位置に移動させると、ハンドル61を不用意に回転操作することが防止される。図1および図2に示されるように、ハンドル61の円筒部61aには、これにスリットを形成することにより径方向に弾性変形する係合片65が形成されている。係合片65の先端部には、図3に示されるように係合突起66が形成されており、ハンドル61を回転位置にまで移動させたときに、係合突起66に係合してハンドル61が外れるのを防止するために、ボンネット47にはストッパ67が形成されている。
【0034】
ボンネット47にはハンドル位置報知部68が設けられており、このハンドル位置報知部68は帯状の部材をボンネット47に巻き付けることにより構成されており、この部材の色彩はハンドル61およびボンネット47とは相違した色彩となっている。図3に示すようにハンドル61を回転位置に移動させると、図1および図2(A)に示すように、ハンドル位置報知部68が外部に露出される。これに対し、図2(B)および図6に示すように、ハンドル61をロック位置に移動させると、ハンドル位置報知部68はハンドル61により覆われて外部からは観察されることがなくなる。このように、ハンドル位置報知部68を設けることにより、ハンドル61がロック位置となっているか、回転位置となっているかを作業者は外部から容易に識別することができる。ハンドル位置報知部68は、上述したように、帯状の部材を巻き付けることにより構成されているが、ボンネット47の外周面に色彩を施すことにより、ハンドル位置報知部68を形成するようにしても良い。ハンドル位置報知部68をハンドル61およびボンネット47とは相違した色彩とすることにより、外部からハンドル61の位置を容易に識別することができる。
【0035】
上述した内部パイロット式減圧弁10により二次側圧を設定するには、ハンドル61を回転位置とした状態のもとでハンドル61を回転させる。これにより、調圧ばね部材59のばね力が調整され、パイロット圧室33におけるパイロット圧が調整される。パイロット圧により二次側ポート12に供給される二次側圧が設定される。
【0036】
図5は調圧アダプターとこれに挿入前のボンネットとを示す斜視図である。図6(A)はボンネットを調圧アダプターに挿入した状態における図5の6A−6A線断面図であり、(B)は(A)と同様の状態における図5の6B−6B線断面図である。
【0037】
ボンネット47は、上述のように、調圧アダプター28の円筒形装着部28bに着脱自在に装着されている。ボンネット47の外周面には、図5に示されるように、径方向外方に突出する外方突起部71が円周方向に伸びて設けられている。外方突起部71は円周方向に180度位相をずらして2個所に設けられ、それぞれの外方突起部71は図6(A)に示すようにボンネット47の円周方向に角度θの範囲に設けられている。外方突起部71の両端面71a,71b間の角度θは約90度となっている。調圧アダプター28の円筒形装着部28bの内周面には、ボンネット47を調圧アダプター28に挿入したときに外方突起部71の軸方向移動を案内するガイド凹部72が形成されている。このガイド凹部72の内径は、ボンネット47をスムーズに調圧アダプター28内に挿入し得るように、ボンネット47の中心から外方突起部71の外周面までの半径よりも僅かに大きく設定されている。
【0038】
図5に示すように、円筒形装着部28bの端部には径方向内方に突出する内方突起部73が円周方向に伸びて設けられている。内方突起部73は外方突起部71の間の部分に円周方向に180度位相をずらして2個所に設けられている。それぞれの内方突起部73の両端面73a,73b間の角度は、外方突起部71の角度θよりも小さい角度となっている。
【0039】
それぞれの内方突起部73の軸方向内側には、ガイド凹部72の円周方向一端部側に連なってロック用凹部74が形成されている。ロック用凹部74の内径はガイド凹部72の内径と同一となっており、ロック用凹部74の幅は外方突起部71の幅よりもやや大きく設定されている。したがって、図5に示すように、外方突起部71の円周方向位置をガイド凹部72の位置に合わせてボンネット47を円筒形装着部28b内に挿入すると、図6(A),(B)に示すように、それぞれの外方突起部71はガイド凹部72内に入り込むことになる。この状態のもとで、ボンネット47を図6において時計方向に約90度つまり4分の1回転させると、図7(A)に示すように、それぞれの外方突起部71はロック用凹部74内に入り込む。これにより、外方突起部71は内方突起部73に係合し、ボンネット47の抜けが防止される。この状態のもとでは、調圧ばね部材59のばね力がボンネット47に加わるので、外方突起部71は内方突起部73に押し付けられる。
【0040】
調圧アダプター28の円筒形装着部28bの内周面には、外方突起部71の端面71bに当接するストッパ75が設けられており、ボンネット47の回転角度がストッパ75により規制されている。
【0041】
図7(A)に示すように、外方突起部71がロック用凹部74内に入り込んで内方突起部73に当接した状態のもとでは、ガイド凹部72の内周面とボンネット47の円筒部47aの外周面と外方突起部71の端面71aとストッパ75とにより円弧状の隙間76が区画形成されることになる。隙間76内には、図7(B)に示されるように、横断面円弧状のロック部材77が挿入される。ロック部材77が挿入されると、ロック部材77の円周方向一方の側面が外方突起部71の端面71aに当接し、他方の側面がストッパ75に当接するので、ボンネット47が調圧アダプター28に対して回転することが防止される。
【0042】
図8(A)はロック部材77の挿入過程を示し、図8(B)はロック部材77が挿入完了した状態を示す。このように、ボンネット47は、調圧アダプター28に対して軸方向に挿入する操作と、1回転以下の僅かな角度回転させる操作によって調圧アダプター28に装着されることになる。さらに、ロック部材77を挿入することによって、ボンネット47の回転が防止されてロック状態となる。図8(B)に示すように、ハンドル位置報知部68は、環状に形成され切り込み68aが設けられた帯状の樹脂部材により形成されている。ロック部材77を挿入した後に、ボンネット47の外側にハンドル位置報知部68を切り込み68aを広げながら取り付けることにより、ハンドル位置報知部68がロック部材77に当接する。これにより、ロック部材77が外れることをハンドル位置報知部68により防止することができる。ハンドル位置報知部材68は、このように、ロック部材77が軸方向に移動してボンネット47から脱落することを防止する脱落防止部材としても機能する。
【0043】
したがって、従来のように、ボンネット47を調圧アダプター28にねじ部材を用いて取り付けるようにした場合や、ボンネット47と調圧アダプター28とをねじ結合させるようにした場合に比して、短時間で容易にボンネット47を調圧アダプター28に対して着脱することができ、これらの作業性が高められる。これにより、内部パイロット式減圧弁の組立作業やボンネット47内のパイロットダイヤフラム49の交換作業を迅速に行うことができる。
【0044】
図1に示すように、ポートブロック13の左右両側面にはポートプラグ78が取り付けられている。それぞれのポートプラグ78は二次側ポート12に連通させて形成された連通ポートを閉塞するために使用されている。一方のポートプラグ78を取り外してこれに代えて圧力計を取り付けると、圧力計を備えた減圧弁となる。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えは、外方突起部71と内方突起部73はそれぞれ2つずつ設けられているが、それぞれの数は任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 一次側ポート
12 二次側ポート
13 ポートブロック
14 連通孔
15 主弁軸
16 主弁体
23 連通流路
24 バランス室
26 主弁ばね部材
28 調圧アダプター
28a フランジ部
28b 円筒形装着部
31 主弁ダイヤフラム
32 二次側圧力室
33 パイロット圧室
38 バルブホルダー
41 弁座部
42 弁室
43 パイロット流路
47 ボンネット
49 パイロットダイヤフラム
50 ばね室
55 パイロット弁体
56 パイロットばね部材
59 調圧ばね部材
61 ハンドル
66 係合突起
67 ストッパ
68 ハンドル位置報知部
71 外方突起部
72 ガイド凹部
73 内方突起部
75 ストッパ
76 隙間
77 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気が供給される一次側ポートと、当該一次側ポートに連通孔を介して連通し調圧された圧縮空気を流出する二次側ポートとが形成され、前記連通孔を開閉する主弁体を備えた主弁軸が前記連通孔に軸方向に移動自在に装着されるポートブロックと、
前記ポートブロックに着脱自在に装着され、前記二次側ポートに連通する二次側圧力室と反対側のパイロット圧室とに仕切る主弁ダイヤフラムを前記ポートブロックとの間で固定する調圧アダプターと、
前記パイロット圧室と前記一次側ポートとを連通させる連通孔を開閉するパイロット弁体を開閉するパイロットダイヤフラムと、前記パイロット圧室内のパイロット圧を調整する調圧ばね部材とが組み込まれる円筒部を備え、前記調圧アダプターの円筒形装着部内に着脱自在に装着されるボンネットと、
前記円筒部の外周面に径方向外方に突出して設けられる外方突起部と、
前記円筒形装着部内に突出して設けられ、前記ボンネットを前記調圧アダプター内に軸方向に挿入した後に回転させると前記外方突起部が当接する内方突起部と、
前記外方突起部が前記内方突起部に当接した状態のもとで、前記円筒部の内面に設けられたストッパと前記外方突起部と前記円筒形装着部と前記円筒部とに区画される隙間内に挿入されるロック部材とを有することを特徴とする内部パイロット式減圧弁。
【請求項2】
請求項1記載の内部パイロット式減圧弁において、前記ロック部材が軸方向に移動して脱落することを防止する環状の脱落防止部材を有することを特徴とする内部パイロット式減圧弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の内部パイロット式減圧弁において、前記外方突起部を前記ボンネットに2つ設け、前記内方突起部を前記外方突起部の数に対応させて前記調圧アダプターに2つ設け、前記ボンネットを前記調圧アダプター内に挿入した後に前記ボンネットをほぼ4分の1回転させると、それぞれの前記外方突起部が前記内方突起部に当接することを特徴とする内部パイロット式減圧弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部パイロット式減圧弁において、前記パイロットダイヤフラムとの間で前記調圧ばね部材を保持するばね受け部材にねじ結合される調整ねじ部材を前記ボンネットに回転自在に設け、
前記調整ねじ部材に嵌合する端壁部と前記ボンネットの外周を覆う円筒部とを有するハンドルを、前記ボンネットに軸方向に押し付けて前記ボンネットに噛み合い前記ハンドルの回転を阻止するロック位置と、前記ハンドルを前記ボンネットから軸方向に引っ張って前記ハンドルの回転を許容する回転位置との間で軸方向に往復動自在に前記ボンネットの外側に装着し、
前記ハンドルが回転位置となったときに外部に露出され、前記ハンドルがロック位置となったときに前記ハンドルにより覆われるハンドル位置報知部を前記ボンネットの外周面に設けることを特徴とする内部パイロット式減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−230643(P2012−230643A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100074(P2011−100074)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】