説明

冷却装置の固定構造

【課題】基板に反りを発生させることなく、容易にかつ簡単な構成でヒートパイプやヒートシンクなどの冷却装置を基板に固定することができる冷却装置の実装構造を提供する。
【解決手段】基板1に設置された発熱部材2を冷却するための冷却装置3をその基板1に固定する冷却装置の実装構造において、冷却装置3の受熱部4を発熱部材2に当接させかつ調圧可能に押圧して基板1に固定するとともに、基板1に対して冷却装置3を固定する個所が複数個所形成され、冷却装置3を基板1に固定する際にその基板に発生する応力を複数個所に分散させる補強固定板7を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電子機器や通信機器に搭載されて電子回路の冷却に利用されるヒートパイプやヒートシンクなどの冷却装置を基板に固定するための固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機器の高性能化および小型・軽量化に伴い、それら電子・通信機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit;中央演算装置)やGPU(Graphics Processing Unit;画像処理を専門とする補助装置)の発熱量も増大しており、特にその発熱密度が急増してきている。そのため、熱輸送能力に優れたヒートパイプやベーパーチャンバ、あるいはそれらヒートパイプやベーパーチャンバとヒートシンクとを組み合わせた冷却モジュール等を用いて、CPUやGPUなどの電子回路における発熱体を効果的に冷却することが求められている。
【0003】
上記のCPUやGPUなどの発熱体は、電子・通信機器の電子回路を構成する基板に設置されるが、そのような発熱体を冷却するためのヒートパイプあるいはヒートシンク等の冷却装置も基板に固定する必要がある。具体的には、ヒートパイプあるいはヒートシンク等の受熱板とCPUやGPUなどの発熱体とを、それらの間で所望の熱伝達状態が得られるように押圧して密接させるとともに、それら受熱板およびヒートパイプあるいはヒートシンク本体を基板に確実に固定する必要がある。そのため、上記のようなヒートパイプあるいはヒートシンクは、例えば、ボルトおよびナットを用いたねじ締結やいわゆるプッシュピンを用いた締結機構、あるいはリベットを用いたリベット継手構造などによって基板に固定されている。
【0004】
上記のように基板に対して所定の部材を固定するもしくは実装する技術に関連する発明が特許文献1および特許文献2に記載されている。これら特許文献1,2に記載されたリード端子の取付構造は、端子台にリード端子を取り付ける際の作業コストの低減を図ることを目的としていて、ボルト孔が形成されたリード端子を取り付けるための取付用ボルトを貫通可能な貫通孔が形成された端子台と、その端子台が固定されたときに貫通孔に対向する位置に取付用ナットが嵌合可能でかつその取付用ナットの回動を阻止する嵌合孔が形成されたプリント基板とを含み、嵌合孔に取付用ナットを嵌合させ、かつ端子台をプリント基板に固定したときに、端子台の裏面によって取付用ナットの端子台方向への抜けを阻止するとともに、ボルト孔および貫通孔に貫通させた取付用ボルトと取付用ナットとを締め付けることにより端子台にリード端子を取り付けるように構成されている。
【0005】
また、特許文献3には、簡単なプレス成形によってボルトやナットをベース板に確実に接合することが可能な構成を得ることを目的として、ベース板に椀状膨出部を形成し、この椀状膨出部の頂部にナットの非真円形フランジを重ね、そのフランジを成形用ダイによって椀状膨出部に押し付けることによってそのフランジを囲む襞状突部を形成するとともに、成形用ダイのテーパ面によって襞状突部を内側に倒してフランジにかしめるように構成されたベース板へのねじ部品の接合構造に関する発明が記載されている。
【0006】
そして、特許文献4には、取付ボルトを金属プレートに設けたナット体にねじ込んで取付部材を締付固定する場合に、取付部材あるいは金属プレート自身の供回りを防止するとともに、取り付け後の外部応力に対しても回り止めとなるように構成されるナット付き取付金具に関する発明が記載されている。
【0007】
なお、特許文献5には、径寸法の異なる管体の固定に対して1種類のボルト・ナットを共通に用いることにより、部品管理の簡素化およびコストの低減を図ることを目的として、柵の支柱とビームとを接続する継手金具と、その継手金具とビームまたは継手金具と支柱とを接続して固定するボルトおよび頭付き筒ナットとから構成された柵用フリーサイズ固定金具に関する発明が記載されている。そしてこの柵用フリーサイズ固定金具における頭付き筒ナットは、その内壁に雌ねじが形成されるとともに、その全長がボルトの雄ねじの長さとほぼ等しくなるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−154546号公報
【特許文献2】特開平7−245132号公報
【特許文献3】特開2008−93700号公報
【特許文献4】特開平11−303833号公報
【特許文献5】特開2003−41810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、電子・通信機器においては小型・軽量化が求められており、機器の筐体内のスペースも可及的に狭く設定される。したがって、上記のようなヒートパイプやヒートシンク等の冷却装置も、機器の筐体内の限られたスペースの中で、無駄なく効率良く収容して設置する必要がある。しかしながら、ヒートパイプやヒートシンク等の冷却装置を、上記のようなねじ締結やプッシュピンを用いた締結機構あるいはリベット継手構造によって基板に固定する場合には、基板の裏面側にナットやプッシュピン先端のフック部分あるいはリベットの頭部分の配置スペースを確保しなければならず、それによって基板裏面側の高さスペースを削減することに限界が生じてしまう。
【0010】
そこで、上記の特許文献1,2,3に記載されているような取り付け構造もしくは接合構造を応用して、ヒートパイプやヒートシンクなどの冷却装置を基板に取り付けることが考えられる。その場合には、基板裏面側のナット等の配置スペースを不要にして、もしくは低減して、基板裏面側の必要高さスペースを削減することができる。また、ナットが回り止めされて基板に固定されることにより、ボルトのねじ締め作業を容易に行うこともできる。しかしながら、一方では、端子台を用意してそれを別途基板に固定しなければならず、あるいは予めプレス加工等を施して基板にナットを固定しておかなければならず、取り付けのための構造および工程が複雑になってしまう。
【0011】
また、上記の各特許文献に記載されているようなボルト・ナットを用いたねじ締結、あるいは前述のプッシュピンを用いた締結機構やリベット継手構造によって基板にヒートパイプやヒートシンク等の冷却装置を固定する場合には、複数のボルトおよびナットによる締結部分、あるいは複数のプッシュピンやリベットによる締結部分のそれぞれで、冷却装置が基板に対して固定される。そのため、その締結部分の1個所毎で基板に局部的な応力が発生し、その応力に起因して基板に反りが発生してしまう可能性がある。
【0012】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、基板に反りを発生させることなく、容易にかつ簡単な構成でヒートパイプやヒートシンクなどの冷却装置を基板に固定することができる冷却装置の実装構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、基板に設置された発熱部材を冷却するための冷却装置を該基板に固定する冷却装置の固定構造において、前記冷却装置の受熱部を前記発熱部材に当接させかつ調圧可能に押圧して前記基板に固定するとともに、前記基板に対して前記冷却装置を固定する個所が複数個所形成されて、前記冷却装置を前記基板に固定する際に該基板に発生する応力を前記複数個所に分散させる補強固定板を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記補強固定板が、前記基板の一方の面に配置された前記冷却装置を前記複数個所でねじ締結して前記基板に固定する際にそれぞれボルトと嵌り合う前記複数個所の雌ねじ部と、前記冷却装置をねじ締結して前記基板に固定する際に該基板の他方の面に当接して反力を受ける反力受け部とが形成されている構成を含むことを特徴とするものである。
【0015】
そして、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記複数個所の雌ねじ部が、前記反力受け部を介して互いに応力の伝播が可能に連結されている構成を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、冷却装置を基板に固定する場合、例えばねじ締結などによって、冷却装置の受熱部を所望する押圧力で発熱部材に当接させた状態で、冷却装置を基板に固定することができる。そして、冷却装置を固定する際に、冷却装置側から締結力等の力が基板に作用することにより基板に発生する応力を複数の個所に分散させることができ、その結果、基板に反りが発生してしまうことを防止もしくは抑制することができる。したがって、基板に反りを発生させることなく、容易にかつ簡単な構成で冷却装置を基板に固定することができる。
【0017】
また、請求項2の発明によれば、冷却装置を基板に固定する場合、基板の両面に冷却装置と補強固定板とがそれぞれ配置され、それら冷却装置と補強固定板とで基板を挟み込むようにして複数個所でねじ締結されることにより、冷却装置が基板に固定される。したがって、冷却装置をねじ締結する際にボルトをねじ締めする場合には、ナット側の雌ねじ部が補強固定板に形成されていることにより、いわゆるナットが回り止めされた状態になるので、ボルトを容易にねじ締めすることができる。
【0018】
そして、請求項3の発明によれば、ねじ締結により冷却装置を基板に固定する場合に、基板を挟んでボルトからの締結力を受ける補強固定板の複数個所の雌ねじ部が、補強固定板の基板との対向面側に形成された反力受け部により、互いの間で応力の伝播が可能なように形成される。そのため、冷却装置をねじ締結する際に、基板および補強固定板が冷却装置側から締結力を受けることにより発生する応力を確実に複数個所に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る冷却装置の固定構造の構成を説明するための側断面図であって、図3におけるI-I線断面図である。
【図2】この発明に係る冷却装置の固定構造の構成を説明するための拡大断面図であって、図3におけるII-II線断面図である。
【図3】この発明に係る冷却装置の固定構造の構成を説明するための上面図である。
【図4】この発明に係る冷却装置の固定構造における補強固定板の一例を示す図である。
【図5】この発明に係る冷却装置の固定構造における補強固定板の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。この発明で対象としている冷却装置は、例えば薄型テレビやパーソナルコンピュータなどの電子・通信機器に搭載されるものであって、具体的には、電子・通信機器の電子回路に実装されるCPUやGPUなどの発熱体を冷却するために設置されるものである。より具体的には、ヒートパイプやベーパーチャンバ、あるいはそれらヒートパイプやベーパーチャンバとヒートシンクとを組み合わせた冷却モジュールなどの冷却装置である。そして、この発明に係る冷却装置の固定構造は、上記のような冷却装置を、CPUやGPUなどの発熱体が設置された電子回路基板に固定するための構造である。
【0021】
図1ないし図3に示すように、この発明に係る冷却装置の固定構造は、基板1に半田付けなどにより取り付けられ、電流が流されることによりその電気抵抗によって発熱する半導体やCPUやGPUなどの電子部品2すなわちこの発明における発熱部材と、その電子部品2の熱を受熱するためにその電子部品2に面接触して配置された冷却装置3の受熱板4とが積層して配置されている。
【0022】
冷却装置3は、上述のように、ヒートパイプやベーパーチャンバ、あるいはそれらとヒートシンクとを組み合わせた冷却モジュールにより構成されるものであり、この具体例では、ヒートパイプ5とヒートシンク6とからなる冷却モジュールによって構成された例を示している。
【0023】
受熱板4すなわちこの発明における受熱部は、電子部品2の放熱面よりも大きい受熱面を有していて、基板1に固定された電子部品2の上面(すなわち放熱面)に、その受熱面が密着させられて配置されている。そして、その受熱板4に、上記のヒートパイプ5の一方の端部が一体に固着され、そのヒートパイプ5の他方の端部に、ヒートシンク6が連結されている。したがって、電子部品2で発熱して受熱板4に伝達された熱は、ヒートパイプ5に吸熱され、そしてヒートパイプ5内で熱輸送されて、ヒートシンク6において外気と熱交換して冷却されるようになっている。
【0024】
前述したように、この発明に係る冷却装置3の固定構造は、発熱体である電子部品2を冷却する冷却装置3を基板1に取り付けて固定するためのものであり、その取り付けの際に、基板1に反りを発生させることなく、容易にかつ簡単な構成で冷却装置3を基板に固定することができるように構成されている。すなわち図1,図2,図4に示すように、この発明に係る冷却装置3の固定構造は、冷却装置3の受熱部4を電子部品2の発熱面に当接させ、かつ調圧可能に押圧して基板1に固定するとともに、その基板1に対して冷却装置3を固定する個所が複数個所形成されて、冷却装置3を基板1に固定する際に基板1に発生する応力をその複数個所に分散させるように構成された補強固定板7を備えている。
【0025】
補強固定板7は、例えばアルミニウム合金や銅合金などの金属製の板状部材であり、基板1の表面1a側(図1,図2での上側)に配置された冷却装置3を、複数個所(この具体例では4個所)でねじ締結して基板1に固定する際に、それぞれボルト8と嵌り合う4個所の雌ねじ部9と、基板1の裏面1b側(図1,図2での下側)に当接して反力を受ける反力受け部10とが形成されている。
【0026】
上記の4個所の雌ねじ部9は、図4に示すように、補強固定板7の四隅に設けられた円筒形状の突起であって、その円筒状突起の内周部分に、上記のボルト8と嵌り合う雌ねじが形成されている。それら4個所の雌ねじ部9の位置は、基板1および受熱板4にそれぞれ形成された貫通孔11,12の位置と対応しており、冷却装置3をねじ締結して基板1に固定する際に、各雌ねじ部9が貫通孔11,12に嵌合するようになっている。したがって、基板1とその基板1の表面1a側に設置されている電子部品2とを挟み込むようにして、受熱板4と補強固定板7とを配置して、受熱板4側からボルト8によりねじ締結することにより、受熱板4およびその受熱板4と一体のヒートパイプ5およびヒートシンク6を基板1に固定すること、すなわち冷却装置3を基板1に固定することができる。
【0027】
具体的には、図2に示すように、貫通孔11,12に挿入された雌ねじ部9に、上側からボルト8が螺合されている。さらに、そのボルト8の頭部8aと受熱板4との間には、ボルト8が締め付けられることにより受熱板4を下方に付勢するスプリング13が設けられている。したがって、基板1と受熱板4とは、雌ねじ部9が形成された補強固定板7と、その雌ねじ部9に螺合して固定されるボルト8の頭部8aと受熱板4との間に設けられたスプリング13とにより挟持されて固定される。
【0028】
スプリング13は、この具体例では、例えば圧縮コイルばねにより構成された弾性部材であり、上記のようにボルト8と受熱板4との間に、このスプリング13のような弾性部材を装着してボルト8をねじ締めすることにより、受熱板4と電子部品2の発熱面との接触圧力を適宜の圧力に調圧して、冷却装置3を基板1に固定することができる。すなわち、雌ねじ部9に対するボルト8のねじ締め量を調整することにより、あるいはスプリング13のばね定数を調整して設定することにより、受熱板4と電子部品2の発熱面との間の接触圧力を適宜の大きさに調圧することできる。
【0029】
さらに、上記のように、複数の雌ねじ部9が補強固定板7に固定されていることから、雌ねじ部9に対してボルト8をねじ締めする場合、雌ねじ部9は回り止めされた状態となっている。そのため、雌ねじ部9に対してボルト8をねじ締めする際には、例えばボルトとナットとを締結する場合のようなナットを供回りさせないようにスパナ等で付勢する工程が不要になり、その分作業性を向上させることができる。
【0030】
なお、上記の図2に示す例では、スプリング13として圧縮コイルばねを用いた構成を示しているが、これに限定されず、例えば板ばねを用いてもよく、あるいはゴムや樹脂などの弾性体を用いてもよい。要するに、冷却装置3をねじ締結して基板1に固定する際に、ボルト8と受熱板4との間で圧縮弾性変形し、受熱板4に電子部品2側への付勢力を与える弾性部材であればよい。
【0031】
また、図示してはいないが、ボルト8と雌ねじ部9とによるねじ締結部分において、ボルト8の頭部8aとスプリング13との間、および、スプリング13と受熱板4との間に、座金を介在させてもよい。その場合、ボルト8をねじ締めする際の軸力、あるいはスプリング13による付勢力を適切に受熱板4側へ作用させることができる。
【0032】
そして、補強固定板7の反力受け部10は、図4に示す例では、補強固定板7の周縁部に形成されたリブ状の厚肉部分であって、その表面部分が、冷却装置3をねじ締結して基板1に固定する際に基板1の裏面1bと面接触するように形成されている。また、この反力受け部10は、上記の雌ねじ部9が形成された補強固定板7の四隅を含んで連続した一体形状となっていて、反力受け部10のいずれかの個所で応力が発生した場合に、その応力が反力受け部10を介してその反力受け部10の各部へ伝播するように形成されている。すなわち、いずれか1個所の雌ねじ部9で応力が発生した場合には、反力受け部10を介して、他の3個所の雌ねじ部9の方向へ応力が伝播するようになっている。言い換えると、いずれか1個所の雌ねじ部9で発生した応力が、反力受け部10を介して、他の3個所の雌ねじ部9の部分へ分散される構成となっている。
【0033】
したがって、冷却装置3をねじ締結して基板1に固定する際に、補強固定板7の雌ねじ部9に応力が発生することに起因して、その雌ねじ部9が挿入された基板1の貫通孔11の周辺にも応力が発生した場合に、上記のように雌ねじ部9で発生した応力が補強固定板7の反力受け部10の各部へ分散されることから、基板1の貫通孔11周辺に発生した応力も、その貫通孔11周辺に集中することなく、反力受け部10を介して基板1の各部に分散される。そのため、基板1に局部的な力が作用することによる基板1の反りの発生を防止もしくは抑制することができる。
【0034】
なお、補強固定板7の反力受け部10の形状は、上記の図4に示すような形状に限らず、例えば、図5に示すように、上記の図4に示す補強固定板7の周縁部に形成された反力受け部10に加えて、互いに対角で対向する雌ねじ部9を接続するように補強固定板7の対角方向に形成されたリブ14を含めた形状に形成することもできる。あるいは、上記の図4やこの図5に示すようなリブ形状を内部に設けた中空のプレートとして補強固定板7を形成することもできる。
【0035】
以上のように、この発明に係る冷却装置の固定構造によれば、冷却装置3を基板1に固定する場合、例えばねじ締結などによって、冷却装置3の受熱板4を所望する押圧力で、発熱体である基板1上の電子部品2の発熱面に当接させた状態で、冷却装置3を基板1に固定することができる。そして、冷却装置3を固定する際に、冷却装置3側から締結力等の力が基板1に作用することによりその基板1に発生する応力を、複数の個所(上記の具体例では4個所)に分散させることができる。その結果、基板1に反りが発生してしまう事態を防止もしくは抑制することができる。したがって、基板1に反りを発生させることなく、容易にかつ簡単な構成で冷却装置3を基板1に固定することができる。
【0036】
また、上記のように冷却装置3を基板1に固定する場合、基板1の両面に、すなわち基板1の表面1aに冷却装置3が、基板1の裏面1bに補強固定板7がそれぞれ配置され、それら冷却装置3と補強固定板7とで基板1を挟み込むようして4個所でねじ締結されることにより、冷却装置3が基板1に固定される。したがって、冷却装置3をねじ締結する際にボルト8をねじ締めする場合には、ナット側となる雌ねじ部9が補強固定板7に一体に形成されていることにより、いわゆるナット側が回り止めされた状態となるので、ボルト8を容易にねじ締めすることができる。
【0037】
そして、ねじ締結により冷却装置3を基板1に固定する場合に、基板1を挟んでボルト8からの締結力を受ける補強固定板7の四隅に形成された4個所の雌ねじ部9が、補強固定板7の基板1との対向面側に形成された反力受け部10により、各雌ねじ部9の間で互いに応力の伝播が可能なように形成される。そのため、冷却装置3をねじ締結する際に、基板1および補強固定板7が冷却装置3側から締結力を受けることにより発生する応力を確実に複数個所に分散させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…基板、 2…電子部品(発熱部材)、 3…冷却装置、 4…受熱板(受熱部)、 5…ヒートパイプ、 6…ヒートシンク、 7…補強固定板、 8…ボルト、 9…雌ねじ部、 10…反力受け部、 11,12…貫通孔、 13…スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設置された発熱部材を冷却するための冷却装置を該基板に固定する冷却装置の固定構造において、
前記冷却装置の受熱部を前記発熱部材に当接させかつ調圧可能に押圧して前記基板に固定するとともに、前記基板に対して前記冷却装置を固定する個所が複数個所形成されて、前記冷却装置を前記基板に固定する際に該基板に発生する応力を前記複数個所に分散させる補強固定板を備えている
ことを特徴とする冷却装置の固定構造。
【請求項2】
前記補強固定板は、前記基板の一方の面に配置された前記冷却装置を前記複数個所でねじ締結して前記基板に固定する際にそれぞれボルトと嵌り合う前記複数個所の雌ねじ部と、前記冷却装置をねじ締結して前記基板に固定する際に該基板の他方の面に当接して反力を受ける反力受け部とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置の固定構造。
【請求項3】
前記複数個所の雌ねじ部は、前記反力受け部を介して互いに応力の伝播が可能に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−258831(P2011−258831A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133336(P2010−133336)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】