説明

冷却装置

【課題】車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する。
【解決手段】冷却装置10は、冷媒を循環させるためのコンプレッサ20と、冷媒を凝縮するためのコンデンサ40と、冷媒を用いて車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータ80と、コンデンサ40からコンプレッサ20に流通する冷媒の経路上にエバポレータ80と直列に設けられ、冷媒を用いてインバータ122およびモータジェネレータ124を冷却するための冷却部120とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機を駆動源とする車両に搭載された電気機器の冷却装置であって、特に、空調用冷凍サイクルシステムを利用して電気機器を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の1つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。
【0003】
このような車両においては、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータあるいはバッテリ等の電気機器は電力の授受によって発熱するためこれらの電気機器を冷却する必要がある。この場合、エンジンのみを使用する通常の車両のごとく、電気機器とラジエータとの間で冷却水を循環させるという冷却システムを新たに設けることが考えられるが、このような冷却システムを新たに設ける場合には、専用のラジエータを設ける必要があるため、車両搭載性が低くなる場合がある。
【0004】
このような問題に鑑みて、特開2006−290254号公報(特許文献1)は、構成部品の共用化による組み付け性向上、原価低減そして小型化を図ることができるハイブリッド車の冷却システムを開示する。この冷却システムは、ガス冷媒を吸入圧縮可能なコンプレッサと、高圧のガス冷媒を凝縮させるための周囲空気で冷却可能なるメインコンデンサと、低温の液冷媒を蒸発させて被冷媒物を冷却可能なるエバポレータと、減圧手段とを含み、減圧手段とエバポレータとに、モータから吸熱可能なる熱交換器及び第2減圧手段を並列に接続してなることを特徴とする。
【0005】
上述した公報に開示された冷却システムによると、構成部品の共用化による組み付け性が向上することで、製造原価が低減できる。また、小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−290254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された冷却システムのように、エバポレータとモータから吸熱可能なる熱交換器とを並列に接続する場合には、エバポレータおよび熱交換器のそれぞれに冷媒を供給し、かつ、完全気体まで減圧する必要があるため、冷却に用いられるコンプレッサに要求される動力性能が高くなるという問題がある。そのため、コンプレッサが大型化すれば燃費悪化、更にこのコンプレッサ動力改善のためにコンデンサを大型化すれば搭載性悪化という問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に係る冷却装置は、車両に搭載された電気機器を冷却するための冷却装置である。この冷却装置は、冷媒を循環させるためのコンプレッサと、冷媒を凝縮するためのコンデンサと、冷媒を用いて車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータと、コンデンサからコンプレッサに流通する冷媒の経路上にエバポレータと直列に設けられ、冷媒を用いて電気機器を冷却するための冷却部とを含む。
【0010】
好ましくは、冷却部は、冷却部に供給される冷媒を減圧するための電磁弁を含む。冷却装置は、冷房が行なわれる場合に電磁弁の開度が第1の開度となるように電磁弁を制御し、冷房が行なわれない場合に電磁弁の開度が第2の開度となるように電磁弁を制御するための制御部をさらに含む。第1の開度は、第2の開度よりも大きい。
【0011】
さらに好ましくは、冷却装置は、経路内の冷媒温度を検出するための検出部をさらに含む。制御部は、冷媒温度がしきい値よりも小さいときには、第1の開度が全開となるように電磁弁を制御し、冷媒温度がしきい値よりも大きいときには、第1の開度が全開よりも小さい開度となるように電磁弁を制御する。
【0012】
さらに好ましくは、電磁弁の開度が全開となる場合の第1断面形状は、経路を形成する通路の第2断面形状よりも冷媒の流通時の抵抗が大きくならないように形成される。
【0013】
さらに好ましくは、電磁弁は、電磁弁の開度が全閉となる場合に経路内の冷媒の流通を遮断する。冷却装置は、コンプレッサ側からコンデンサ側への冷媒の流通を許容し、コンデンサ側からコンプレッサ側への冷媒の流通を遮断するための逆止弁をさらに含む。制御部は、冷房が行なわれない場合であって、かつ、電気機器の冷却要求がない場合に電磁弁の開度が全閉となるように電磁弁を制御する。
【0014】
さらに好ましくは、制御部は、電気機器の温度がしきい値よりも低い場合に電気機器の冷却要求がないと判断する。
【0015】
さらに好ましくは、制御部は、冷房が行なわれない場合であっても、冷却部によって電気機器を冷却する場合には、コンプレッサを作動させる。
【0016】
さらに好ましくは、冷却部は、コンデンサとエバポレータとの間に設けられる。エバポレータと冷却部との間には、冷房が行なわれる場合に霧状の冷媒をエバポレータに供給するための弁が設けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、電気機器を冷却するための冷却部をコンデンサからコンプレッサに流通する冷媒の経路上にエバポレータと直列に設けることによって、冷房が行なわれる場合に液相の冷媒を用いて電気機器を冷却することができる。そのため、冷却部を有しない場合の通常の冷房時と同様のコンプレッサの作動量で冷房と電気機器の冷却との両方を実施することができる。すなわち、電気機器を冷却するためにコンプレッサの動力性能を高くする必要がなくなり、コンプレッサを大型化したり電気機器を冷却するための専用のポンプを設けたりすることを回避することができる。さらに冷房が行なわれない場合には、冷却部において気化するように冷媒を供給して電気機器を冷却することによって、必要な冷却性能を確保することができる。したがって、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る冷却装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る冷却装置のECUの機能ブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る冷却装置のECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態に係る冷却装置の全体構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る冷却装置のECUの機能ブロック図である。
【図6】第2の実施の形態に係る冷却装置のECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に係る冷却装置の全体構成を示す図である。
【図8】第3の実施の形態に係る冷却装置のECUの機能ブロック図である。
【図9】第3の実施の形態に係る冷却装置のECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1に示す、本実施の形態に係る冷却装置10は、回転電機を駆動源とする車両に搭載された電気機器を冷却する。回転電機を駆動源とする車両としては、たとえば、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車両である。本実施の形態において、「電気機器」は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ122と、回転電機であるモータジェネレータ124とを一例として説明するが、特にこれらに限定されるものではない。たとえば、「電気機器」は、蓄電装置であるバッテリと、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータと、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータとをさらに含むようにしてもよい。なお、バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタを用いてもよい。なお、車両に搭載された電気機器としては、少なくとも作動によって熱を発生させる電気機器であれば、特に上記した電気機器に限定されるものではない。
【0021】
なお、冷却の対象となる電気機器が複数個ある場合においては、複数の電気機器は、冷却の目標となる温度範囲が共通していることが望ましい。冷却の目標となる温度範囲は、電気機器を作動させる温度環境として適切な温度範囲である。
【0022】
本実施の形態に係る冷却装置10は、車両の室内の冷房を行なうための空調用冷凍サイクルシステム12と、空調用冷凍サイクルシステム12内を循環する冷媒を用いて電気機器を冷却するための冷却部120と、ECU400とを含む。
【0023】
空調用冷凍サイクルシステム12は、コンプレッサ20と、コンデンサ40と、エバポレータ80と、エキスパンションバルブ150とを含む。冷却部120は、コンデンサ40からコンプレッサ20に流通する冷媒の経路上にエバポレータ80と直列に設けられ、冷媒を用いて電気機器を冷却する。
【0024】
具体的には、コンデンサ40とエバポレータ80とは、第1接続通路302と冷却部120の冷却通路126と第2接続通路304とによって接続される。なお、本実施の形態においては、コンデンサ40の出口にレシーバ60が設けられるとして説明するが特にレシーバ60の有無については限定されるものではない。冷却部120は、レシーバ60とエバポレータ80との間に設けられる。
【0025】
エバポレータ80とコンプレッサ20とは、第3接続通路306によって接続される。さらに、コンプレッサ20とコンデンサ40とは、第4接続通路308によって接続される。
【0026】
コンプレッサ20は、車両に搭載されたモータを動力源として作動し、作動時にエバポレータ80から第3接続通路306を経由して流通する気相冷媒を吸入圧縮して第4接続通路308に吐出する。コンプレッサ20は、ECU400からの制御信号C1に基づいて作動する。なお、コンプレッサ20は、エンジンを動力源とするものであってもよい。
【0027】
空調用冷凍サイクルシステム12を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合あるいは自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されている場合であって、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。
【0028】
コンデンサ40は、コンプレッサ20において圧縮された冷媒を放熱することによって冷媒を凝縮(液化)する。コンデンサ40は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒とコンデンサ40の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンとを含む。コンデンサ40は、たとえば、車両に搭載されたエンジン冷却用ラジエータに隣接して設けられ、車両の走行風あるいは冷却ファンによって供給された冷却風と冷媒との間で熱交換を行なう。コンデンサ40における熱交換によって冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0029】
コンデンサ40の仕様(すなわち、サイズあるいは放熱性能)は、少なくともコンデンサ40を通過した後の液相冷媒の温度が電気機器を冷却するために必要とされる温度よりも低下するように定められることが望ましい。電気機器を冷却するために必要される温度は、少なくとも電気機器の温度範囲として目標となる温度範囲の上限値よりも低い温度であることが望ましい。好ましくは、コンデンサ40は、冷却部120を有しない場合の空調用冷凍サイクルシステム12のコンデンサ40よりも冷却部120において受けることが想定される熱量分だけ大きい放熱量を有するような仕様であることが望ましい。このようにすると、冷房性能を維持しつつ、コンプレッサ20の動力性能を増加させることなく、電気機器を適切に冷却することができる。
【0030】
レシーバ60は、コンデンサ40の出口に設けられ、コンデンサ40から流通する冷媒を気相冷媒と液相冷媒に分離し、分離した冷媒のうちの液相冷媒を貯留する。レシーバ60内の液相冷媒は、第1接続通路302を流通して冷却部120を経由した後に第2接続通路304を流通してエキスパンションバルブ150に供給される。
【0031】
エキスパンションバルブ150は、第2接続通路304を流通する高温・高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させるための弁である。エキスパンションバルブ150は、エバポレータ80よりも上流の位置に設けられるバルブ本体152と、エバポレータ80よりも下流の位置に設けられる感温部材154とを含む。
【0032】
エキスパンションバルブ150においては、感温部材154における冷媒の温度に応じてバルブ本体152における冷媒の流量が定まる。この冷媒の流量は、霧状に変化した冷媒の全てがエバポレータ80において完全に気化されるように定められる。
【0033】
エキスパンションバルブ150においては、たとえば、容器内部にガスが封入された感温部材154における冷媒の温度に応じたガスの圧力の変化を利用してバルブ本体152の弁体を移動させることによって冷媒の流量が定まる。なお、冷媒の温度と弁体の移動量との関係は容器の大きさあるいはガス量等によって予め調整される。
【0034】
エバポレータ80は、霧状冷媒が気化することによってエバポレータ80に接触するように導入された車両の室内の空気の熱を吸熱する。吸熱によって温度が低下した空気は、車両の室内に再び戻されることによって車両の室内の冷房が行なわれる。
【0035】
エバポレータ80は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒とエバポレータ80の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンとを含む。チューブ内には、霧状の冷媒が流通する。チューブ内の流通する冷媒が蒸発することによって車両の室内の空気の熱をフィンを経由して吸熱する。気化した冷媒は、第3接続通路306を経由してコンプレッサ20に流通する。
【0036】
冷却部120は、インバータ122およびモータジェネレータ124(以下の説明においては、これらの電気機器を単に「電気機器」と記載する場合がある)と冷媒との間で熱交換が可能なように設けられる。本実施の形態においては、冷却部120は、たとえば、電気機器の筐体に冷媒が接触するように形成された冷却通路126によって電気機器と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するとして説明するが、冷却部120は、電気機器とヒートパイプ等の熱伝達手段を経由して熱交換器とが接続されている場合に熱交換器と冷媒とが接触可能に設けられる構造を有していてもよい。
【0037】
本実施の形態において、冷却部120は、インバータ122を冷却した後にモータジェネレータ124を冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよいし、あるいは、モータジェネレータ124を冷却した後にモータジェネレータ124を冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよいし、あるいは、インバータ122とモータジェネレータ124とを並行して冷却するように冷却通路126を形成するようにしてもよい。好ましくは、冷却部120は、冷却の対象となる電気機器のうちの目標となる温度範囲の上限値が低い方の電気機器を冷却した後に目標となる温度範囲の上限値が高い方の電気機器を冷却するように設けられることが望ましい。
【0038】
冷却部120は、冷却通路126と、電磁弁132と、温度センサ134とを含む。冷却通路126の両端は、第1接続通路302と第2接続通路304とにそれぞれ接続される。
【0039】
冷却通路126は、インバータ122およびモータジェネレータ124のそれぞれの筐体と隣接する部分を有する。当該部分において冷却通路126を流通する冷媒とインバータ122およびモータジェネレータ124との間で熱交換が可能となる。
【0040】
電磁弁132は、冷却通路126の入口側、すなわち、インバータ122およびモータジェネレータ124の筐体と隣接する冷却通路126の部分よりも上流側の位置に設けられる。電磁弁132は、ECU400によって全開状態から全閉状態までの間で開度が制御される。すなわち、電磁弁132は、ECU400から受信する制御信号S1に基づいて開度を絞ることによって冷媒を減圧したり、全開状態となることによって冷媒を減圧することなく通過させたりする。
【0041】
電磁弁132は、全開状態である場合に冷媒が電磁弁132を流通するときの通路から受ける抵抗が、冷媒が冷却通路126の電磁弁132以外の部分を流通するときの通路から受ける抵抗と同じになるように形成される。
【0042】
具体的には、電磁弁132は、電磁弁132が全開状態である場合の内部形状が冷却通路126の電磁弁132以外の部分の内部形状と一致するように形成される。たとえば、冷却通路126の内部形状が円形である場合には、電磁弁132が全開状態である場合の内径が第1接続通路302の内径と一致する円形になるように形成される。このようにすると、電磁弁132が全開状態である場合の電磁弁132の前後での冷媒の圧力の変化を抑制することができる。
【0043】
温度センサ134は、冷却通路126の出口側、すなわち、インバータ122およびモータジェネレータ124の筐体と隣接する冷却通路126の部分よりも下流側の位置に設けられ、当該位置における冷媒の温度を検出する。温度センサ134は、検出した冷媒の温度T1を示す信号をECU400に送信する。
【0044】
ECU400は、冷房が行なわれる場合および冷却部120によって電気機器を冷却する場合にコンプレッサ20を作動させるために制御信号C1を生成してコンプレッサ20に送信したり、温度センサ134から受信する冷媒の温度T1に基づいて電磁弁132における流量を決定し、決定された流量となるように電磁弁132を作動させるための制御信号S1を生成して電磁弁132に送信したりする。
【0045】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る冷却装置10において、ECU400が、以下のように動作する点に特徴を有する。
【0046】
すなわち、ECU400は、冷房が行なわれる場合に電磁弁132の開度が第1の開度となるように電磁弁132を制御し、冷房が行なわれない場合に電磁弁132の開度が第1の開度よりも小さい第2の開度となるように電磁弁132を制御する点に特徴を有する。
【0047】
さらに、本実施の形態において、ECU400は、温度センサ134によって検出される冷媒温度がしきい値よりも小さいときには、第1の開度が全開となるように電磁弁132を制御し、冷媒温度がしきい値よりも大きいときには、第1の開度が全開よりも小さい開度となるように電磁弁132を制御する。
【0048】
なお、コンデンサ40における放熱量が十分に大きく、温度センサ134によって検出される冷媒の温度が確実にしきい値以下になる場合には、ECU400は、冷房が行なわれるときに冷媒の温度に関わらず電磁弁132の開度が全開となるように電磁弁132を制御するようにしてもよい。また、ECU400は、電磁弁132の上流側に設けられた温度検出によって検出された冷媒の温度に基づいて電磁弁132の開度を決定するようにしてもよい。
【0049】
図2に、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400の機能ブロック図を示す。ECU400は、作動判定部402と、液温判定部404と、第1減圧制御部406と、コンプレッサ制御部408と、第2減圧制御部410と、全開制御部412とを含む。
【0050】
作動判定部402は、冷房が行なわれるか否かを判定する。作動判定部402は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合あるいは自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されている場合であって、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に冷房が行なわれると判定する。なお、作動判定部402は、たとえば、冷房が行なわれると判定された場合に作動判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0051】
液温判定部404は、温度センサ134によって検出された冷媒の液温がしきい値よりも大きいか否かを判定する。しきい値は、冷媒の液温が電気機器を冷却するための温度として適切な範囲であるか否かを判定するためのしきい値である。液温判定部404は、たとえば、温度センサ134によって検出された冷媒の液温がしきい値よりも大きい場合に液温判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0052】
第1減圧制御部406は、冷房が行なわれる場合であって、かつ、冷媒の液温がしきい値よりも大きい場合に液温がしきい値以下になるように冷媒を減圧する。たとえば、第1減圧制御部406は、電磁弁132の開度を予め定められた開度だけ閉じるように制御することによって電磁弁132の下流側の冷媒を減圧するようにしてもよい。あるいは、第1減圧制御部406は、冷媒の現在の液温としきい値との差に応じて決定される開度だけ閉じるように電磁弁132を制御するようにしてもよい。なお、第1減圧制御部406は、たとえば、作動判定フラグがオンされており、液温判定フラグがオンされている場合に冷媒を減圧するようにしてもよい。また、第1減圧制御部406は、好ましくは、減圧後の冷媒が液相冷媒を維持した状態で冷却部120における電気機器の冷却に用いられることが望ましい。
【0053】
コンプレッサ制御部408は、冷房が行なわれない場合にコンプレッサ20が作動するように制御信号C1を生成して、コンプレッサ20に出力する。あるいは、コンプレッサ制御部408は、コンプレッサ20が作動中であれば作動状態を維持するように制御信号C1を生成してコンプレッサ20に出力する。コンプレッサ制御部408は、たとえば、コンプレッサ20の作動量が予め定められた作動量になるようにコンプレッサ20を制御する。なお、コンプレッサ制御部408は、たとえば、作動判定フラグがオフされている場合にコンプレッサ20を作動させるようにしてもよい。
【0054】
また、コンプレッサ制御部408は、冷房が行なわれない場合のコンプレッサ20の作動量を冷房が行なわれる場合よりも低下させてもよい。このようにすると、電気機器の過冷却を防止し、適切に電気機器を冷却することができる。
【0055】
第2減圧制御部410は、冷房が行なわれない場合に液相の冷媒を減圧するように電磁弁132を制御する。第2減圧制御部410は、温度センサ134によって検出された冷媒の温度に基づいて電磁弁132における冷媒の流量(減圧量)を決定し、決定された流量で冷媒が流通するように電磁弁132の開度を調整する。第2減圧制御部410は、冷却通路126において冷媒を完全に気化させるために霧状冷媒になるように冷媒を減圧するようにしてもよいし、あるいは、液相冷媒を維持するように減圧するようにしてエキスパンションバルブ150によって霧状冷媒になるように減圧することによってエバポレータ80において完全に気化されるようにしてもよい。
【0056】
なお、第2減圧制御部410は、たとえば、作動判定フラグがオフされている場合に冷媒を減圧するように電磁弁132を制御してもよい。
【0057】
全開制御部412は、冷房が行なわれる場合であって、かつ、冷媒の液温がしきい値以下である場合に電磁弁132の開度が全開になるように電磁弁132を制御する。全開制御部412は、たとえば、作動判定フラグがオンされており、かつ、液温判定フラグがオフされている場合に電磁弁132の開度が全開になるように電磁弁132を制御するようにしてもよい。
【0058】
なお、好ましくは、電磁弁132の開度を全開にするための冷媒の液温のしきい値は、第1減圧制御を実行するためのしきい値より小さくすることが望ましい。このようにすると、電磁弁132の制御ハンチングの発生を抑制することができる。
【0059】
本実施の形態において、作動判定部402と、液温判定部404と、第1減圧制御部406と、コンプレッサ制御部408と、第2減圧制御部410と、全開制御部412とは、いずれもECU400のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0060】
図3を参照して、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0061】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU400は、冷房がオンであるか否か(すなわち、冷房が行なわれているか否か)を判定する。冷房がオンである場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS108に移される。
【0062】
S102にて、ECU400は、冷媒の液温が目標値(しきい値)よりも大きいか否かを判断する。冷媒の液温が目標値よりも大きい場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、処理はS106に移される。
【0063】
S104にて、ECU400は、第1減圧制御を実行する。すなわち、ECU400は、液温がしきい値以下になるまで冷媒を減圧するように電磁弁132を制御する。S106にて、ECU400は、電磁弁132の開度が全開になるように電磁弁132を制御する。S108にて、ECU400は、第2減圧制御を実行する。すなわち、ECU400は、冷媒を減圧するように電磁弁132を制御する。
【0064】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る冷却装置10の動作について説明する。
【0065】
たとえば、冷房が行なわれる場合であって(S100にてYES)、冷媒の液温が目標値よりも高い場合(S102にてYES)、第1減圧制御が実行される(S104)。第1減圧制御の実行によって冷媒の液温が目標値以下になるように冷媒が減圧される。冷媒の液温が目標値以下になる場合に(S102にてNO)、電磁弁132の開度が全開になるように電磁弁132が制御される(S106)。電磁弁132の開度が全開になることによってコンデンサ40からレシーバ60を経由して流通する液相の冷媒が冷却部120に供給されることとなる。
【0066】
冷却部120に供給された液相の冷媒はインバータ122およびモータジェネレータ124とを冷却した後にエキスパンションバルブ150に流通する。エキスパンションバルブ150によって液相の冷媒が霧状冷媒に変化させられてエバポレータ80に供給される。エバポレータ80において霧状冷媒は、蒸発によって車両の室内の空気の熱を吸熱する。蒸発によって気化された気相の冷媒が第3接続通路306を流通してコンプレッサ20に流通する。コンプレッサ20において圧縮された気相の冷媒は、コンデンサ40において放熱されることによって再び液化する。このようにして冷媒が空調用冷凍サイクルシステム12を循環する。
【0067】
一方、冷房が行なわれない場合(S100にてNO)、ECU400は、コンプレッサ20を作動させた後に(S108)、第2減圧制御を実行する(S110)。すなわち、液相の冷媒を減圧するように電磁弁132が制御される。冷却部120には減圧によって温度が低下した冷媒が冷却通路126を流通するためインバータ122およびモータジェネレータ124が冷却される。
【0068】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却装置によると、電気機器を冷却するための冷却部をコンデンサからコンプレッサに流通する冷媒の経路上にエバポレータと直列に設けることによって、冷房が行なわれる場合に液相の冷媒を用いて電気機器を冷却することができる。そのため、冷却部を有しない場合の通常の冷房時と同様のコンプレッサの作動量で冷房と電気機器の冷却との両方を実施することができる。すなわち、電気機器を冷却するためにコンプレッサの動力性能を高くする必要がなくなり、コンプレッサを大型化したり電気機器を冷却するための専用のポンプを設けたりすることを回避することができる。さらに、冷房が行なわれない場合には、冷却部において気化するように冷媒を供給して電気機器を冷却することによって必要な冷却性能を確保することができる。したがって、コンプレッサ所要動力および車両への搭載性を悪化させることなく、電気機器を冷却する冷却装置を提供することができる。
【0069】
<第2の実施の形態>
以下、第2の実施の形態に係る冷却装置について説明する。本実施の形態に係る冷却装置10は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と比較して、電磁弁132を第1電磁弁132とする点と、温度センサ134を第1温度センサ134とする点と、バルブ本体152および感温部材154に代えて、第2電磁弁136と第2温度センサ138とをさらに含む点とが異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0070】
図4に示すように、冷却装置10は、エバポレータ80よりも上流側の第2接続通路304に設けられる第2電磁弁136と、エバポレータ80の下流側の第3接続通路306に設けられ、第3接続通路306の冷媒の温度を検出するための第2温度センサ138とをさらに含む。
【0071】
第2温度センサ138は、検出した冷媒の温度T2を示す信号をECU400に送信する。ECU400は、第2温度センサ138から受信した冷媒の温度T2に基づいて冷媒の流量(減圧量)を決定する。ECU400は、決定された冷媒の流量が実現されるように第2電磁弁136の開度を制御する。
【0072】
第2電磁弁136は、ECU400によって全開状態から全閉状態までの間で開度が制御される。すなわち、第2電磁弁136は、ECU400から受信する制御信号S1に基づいて開度を絞ることによって冷媒を減圧したり、全開状態となることによって冷媒を減圧することなく通過させたりする。
【0073】
第2電磁弁136は、全開状態である場合に冷媒が第2電磁弁136を流通するときの通路から受ける抵抗が、冷媒が第2接続通路304の第2電磁弁136以外の部分を流通するときの通路から受ける抵抗と同じになるように形成される。
【0074】
具体的には、第2電磁弁136は、第2電磁弁136が全開状態である場合の内部形状が第2接続通路304の第2電磁弁136以外の部分の内部形状と一致するように形成される。たとえば、第2接続通路304の内部形状が円形である場合には、第2電磁弁136が全開状態である場合の内径が第2接続通路304の内径と一致する円形になるように形成される。このようにすると、第2電磁弁136が全開状態である場合の第2電磁弁136の前後での冷媒の圧力の変化を抑制することができる。
【0075】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る冷却装置10において、ECU400が、冷房が行なわれない場合に液相の冷媒を冷却部120において気化させるために冷媒を減圧するように第1電磁弁132を制御するとともに第2電磁弁136の開度が全開になるように第2電磁弁136を制御する点に特徴を有する。
【0076】
図5に、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400の機能ブロック図を示す。なお、図5に示すECU400の機能ブロック図は、図2に示したECU400の機能ブロック図と比較して、全開制御部412を第1全開制御部512とする点と、第2全開制御部500および第3減圧制御部502をさらに含む点と、第2減圧制御部410の動作とが異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係るECU400の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。また、第1全開制御部512は、図2で示した全開制御部412と機能は同じである。そのため、その詳細な説明はここでは繰返さない。
【0077】
第2減圧制御部410は、冷房が行なわれない場合に液相の冷媒を減圧するように第1電磁弁132を制御する。第2減圧制御部410は、第1温度センサ134によって検出された冷媒の温度に基づいて第1電磁弁132における冷媒の流量(減圧量)を決定し、決定された流量で冷媒が流通するように第1電磁弁132の開度を調整する。第2減圧制御部410は、冷却部120において完全に気化されるように霧状冷媒になるように冷媒を減圧する。なお、第2減圧制御部410は、たとえば、作動判定フラグがオフされている場合に冷媒を減圧するように第1電磁弁132を制御してもよい。
【0078】
第2全開制御部500は、作動判定部402において冷房が行なわれないと判定された場合に、第2電磁弁136の開度が全開になるように第2電磁弁136を制御する。なお、第2全開制御部500は、たとえば、作動判定フラグがオフである場合に第2電磁弁136の開度が全開になるように第2電磁弁136を制御するようにしてもよい。
【0079】
第3減圧制御部502は、作動判定部402において冷房が行なわれると判定された場合に、第2接続通路304を流通する液相の冷媒をエバポレータ80において完全に気化させるために霧状冷媒になるように冷媒を減圧する。第3減圧制御部502は、第2温度センサ138によって検出された冷媒の温度に基づいて第2電磁弁136における冷媒の流量(減圧量)を決定し、決定された流量で冷媒が流通するように第2電磁弁136の開度を調整する。なお、第3減圧制御部502は、たとえば、作動判定フラグがオンである場合に第2接続通路304を流通する液相の冷媒を霧状冷媒になるように冷媒を減圧するように電磁弁112を制御するようにしてもよい。
【0080】
図6を参照して、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0081】
なお、図6に示したフローチャートの中で、前述の図3に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0082】
冷房がオンであると判定した場合(S100にてYES)、S200にて、ECU400は、第3減圧制御を実行する。すなわち、ECU400は、第2接続通路304を流通する液相の冷媒をエバポレータ80において完全に気化させるために冷媒を減圧するように第2電磁弁136の開度を制御して、処理をS102に戻す。
【0083】
冷却通路126の出口側の冷媒の液温が目標値以下であると判定した場合(S102にてNO)、S206にて、ECU400は、第1電磁弁132の開度が全開になるように第1電磁弁132を制御する。
【0084】
第2減圧制御を実行した後(S108)、S210にて、ECU400は、第2全開制御を実行する。すなわち、ECU400は、第2電磁弁136の開度が全開になるように第2電磁弁136を制御する。なお、第2減圧制御と第2全開制御とコンプレッサ作動との実行順序は特に図6のフローチャートに示す順序に限定されるものではない。また、ECU400は、第2減圧制御と第2全開制御とコンプレッサ作動とを並行して実行してもよい。
【0085】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る冷却装置10の動作について説明する。
【0086】
たとえば、冷房が行なわれる場合(S100にてYES)、第3減圧制御が実行されるため、第2電磁弁136を用いて第2接続通路304を流通する液相の冷媒をエバポレータ80において完全に気化させるために霧状冷媒になるように冷媒が減圧される(S200)。
【0087】
第2接続通路304を流通する冷媒の液温が目標値よりも高い場合(S102にてYES)、第1減圧制御が実行される(S104)。第1減圧制御の実行によって冷媒の液温が目標値以下になるまで冷媒が減圧される。冷媒の液温が目標値以下になる場合に(S102にてNO)、第1電磁弁132の開度が全開になることによってコンデンサ40からレシーバ60を経由して流通する液相の冷媒が冷却部120に供給されることとなる。
【0088】
冷却部120に供給された液相の冷媒はインバータ122およびモータジェネレータ124とを冷却した後に第2電磁弁136に流通する。第2電磁弁136に流通した冷媒は第3減圧制御の実行によって減圧されることによって霧状冷媒に変化してエバポレータ80に供給される。エバポレータ80において霧状冷媒は、蒸発するとともに車両の室内の空気の熱を吸熱する。そのため、蒸発した気相の冷媒が第3接続通路306を流通してコンプレッサ20に流通する。コンプレッサ20において圧縮された気相の冷媒は、コンデンサ40において放熱されることによって再び液化する。このようにして冷媒が空調用冷凍サイクルシステム12を循環する。
【0089】
一方、冷房が行なわれない場合(S100にてNO)、ECU400は、コンプレッサ20が作動させた後に(S108)、第2減圧制御を実行する(S110)。すなわち、液相の冷媒が減圧されるように第1電磁弁132が制御される。冷却部120において、減圧された冷媒によってインバータ122およびモータジェネレータ124が冷却される。冷媒は、冷却部120において完全に気化するとともに電気機器の熱を吸熱することによって電気機器が冷却される。冷却部120において気化された気相の冷媒は、第2接続通路304を経由して第2電磁弁136に流通する。
【0090】
第2電磁弁136は、第2全開制御が実行されることによって(S210)全開状態となる。気相の冷媒は、第2電磁弁136、エバポレータ80および第3接続通路306を経由してコンプレッサ20に流通する。
【0091】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却装置によると、上述した第1の実施の形態に係る冷却装置と同様の作用効果を奏する。
【0092】
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施の形態に係る冷却装置について説明する。本実施の形態に係る冷却装置10は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と比較して、逆止弁140と、機器温度センサ142とをさらに含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0093】
図7に示すように、冷却装置10は、逆止弁140と、機器温度センサ142とをさらに含む。
【0094】
逆止弁140は、コンプレッサ20とコンデンサ40とを接続する第4接続通路308に設けられる。逆止弁140は、コンプレッサ20からコンデンサ40への冷媒の流通を許容し、コンデンサ40からコンプレッサ20への冷媒の流通を遮断する。なお、逆止弁140は、コンプレッサ20が停止した場合に冷媒の流通を遮断し、コンプレッサ20が作動した場合に冷媒の流通を許容する電磁弁であってもよい。
【0095】
機器温度センサ142は、電気機器の温度T3を検出する。機器温度センサ142は、インバータ122およびモータジェネレータ124の各々に設けられるようにしてもよいし、あるいは、インバータ122およびモータジェネレータ124のうちのいずれか一方に設けられるようにしてもよい。好ましくは、インバータ122およびモータジェネレータ124のうちの発熱量が大きい一方、温度が高い傾向を示す一方あるいは温度の上昇量が大きい一方に設けられることが望ましい。このようにすると、電気機器の冷却要求があるか否かを精度高く判定することができる。機器温度センサ142は、電気機器の温度T3を示す信号をECU400に送信する。あるいは、ECU400が、温度センサ134により検出された冷媒の温度T1に基づいて電気機器の温度を推定するようにしてもよい。
【0096】
以上のような構成を有する本実施の形態に係る冷却装置10において、ECU400が冷房が行なわれない場合であって、かつ、電気機器の冷却要求がない場合に電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御する点に特徴を有する。
【0097】
本実施の形態においてECU400は、機器温度センサ142によって検出された電気機器の温度T3がしきい値よりも低い場合に電気機器の冷却要求がないと判定する。また、ECU400は、機器温度センサ142によって検出された電気機器の温度T3がしきい値以上である場合には電気機器の冷却要求があると判定するようにしてもよいし、あるいは、検出された電気機器の温度T3がしきい値に予め定められた値を加算した値以上である場合に電気機器の冷却要求があると判定するようにしてもよい。
【0098】
図8に、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400の機能ブロック図を示す。なお、図8に示すECU400の機能ブロック図は、図2に示したECU400の機能ブロック図と比較して、冷却要求判定部600と、全閉制御部602とをさらに含む点が異なる。それ以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係るECU400の構成と同じ構成である。それらについては同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0099】
冷却要求判定部600は、作動判定部402において冷房が行なわれないと判定された場合に、電気機器の冷却要求があるか否かを判定する。具体的には、冷却要求判定部600は、機器温度センサ142によって検出された電気機器の温度T3がしきい値以上である場合に電気機器の冷却要求があると判定する。なお、冷却要求判定部600は、たとえば、作動判定フラグがオフである場合に電気機器の冷却要求があるか否かを判定して、電気機器の冷却要求があると判定した場合に冷却要求判定フラグをオンするようにしてもよい。
【0100】
全閉制御部602は、電気機器の冷却要求がない場合にコンプレッサ20の作動を停止させるとともに電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御する。なお、全閉制御部602は、コンプレッサ20が停止状態である場合には、停止させた状態を維持するとともに電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御する。なお、全閉制御部602は、たとえば、作動判定フラグがオフされており、かつ、冷却要求判定フラグがオフされている場合にコンプレッサ20の作動を停止させるとともに電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御するようにしてもよい。
【0101】
図9を参照して、本実施の形態に係る冷却装置10のECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0102】
なお、図9に示したフローチャートの中で、前述の図3に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0103】
冷房がオフであると判定した場合(S100にてYES)、S300にて、ECU400は、電気機器の冷却要求があるか否かを判定する。電気機器の冷却要求がある場合(S30にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S300にてNO)、処理はS302に移される。
【0104】
S302にて、ECU400は、電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御する。S304にて、ECU400は、コンプレッサ20の作動を停止させる、あるいは、コンプレッサ20の作動停止状態を維持する。
【0105】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る冷却装置10の動作について説明する。
【0106】
たとえば、冷房が行なわれる場合であって(S100にてYES)、冷媒の液温が目標値よりも高い場合(S102にてYES)、第1減圧制御が実行される(S104)。第1減圧制御の実行によって冷媒の液温が目標値以下になるように冷媒が減圧される。冷媒の液温が目標値以下になる場合に(S102にてNO)、電磁弁132の開度が全開になるように電磁弁132が制御される(S106)。電磁弁132の開度が全開になることによってコンデンサ40からレシーバ60を経由して流通する液相の冷媒が冷却部120に供給されることとなる。
【0107】
冷却部120に供給された液相の冷媒はインバータ122およびモータジェネレータ124とを冷却した後にエキスパンションバルブ150に流通する。エキスパンションバルブ150によって液相の冷媒は霧状冷媒に変化させられてエバポレータ80に供給される。エバポレータ80において霧状冷媒は、蒸発によって車両の室内の空気の熱を吸熱する。蒸発によって気化された気相の冷媒が第3接続通路306を通通してコンプレッサ20に流通する。コンプレッサ20において圧縮された気相の冷媒は、コンデンサ40において放熱されることによって再び液化する。このようにして冷媒が空調用冷凍サイクルシステム12を循環する。
【0108】
一方、冷房が行なわれない場合であって(S100にてNO)、電気機器の温度T3がしきい値よりも高いことにより冷却要求があると判定された場合(S300にてYES)、ECU400は、コンプレッサ20を作動させた後に(S108)、第2減圧制御を実行する(S110)。すなわち、液相の冷媒を減圧するように電磁弁132が制御される。冷却部120には減圧によって温度が低下した冷媒が冷却通路126を流通するためインバータ122およびモータジェネレータ124が冷却される。
【0109】
また、冷房が行なわれない場合であって(S100にてNO)、電気機器の温度T3がしきい値以下であることにより冷却要求がないと判定された場合(S300にてNO)、ECU400は、電磁弁132の開度が全閉になるように電磁弁132を制御するとともに(S302)、コンプレッサ20が作動している場合は停止させ、コンプレッサ20の作動が停止している場合は停止状態を維持する(S304)。
【0110】
コンデンサ40を含む逆止弁140と電磁弁132との間の冷媒の流通が遮断されるため、この区間における冷媒の圧力は、保持される。そのため、コンプレッサ20を停止している間にコンプレッサ20が停止するまでにした仕事分を保持することができる。
【0111】
以上のようにして、本実施の形態に係る冷却装置によると、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置による作用効果に加えて、冷房が行なわれない場合であって、かつ、電気機器の冷却要求がない場合に、コンプレッサ20の作動を停止させることにより、逆止弁と電磁弁によってコンプレッサ20を停止している間に停止するまでの仕事分を保持することができる。そのため、コンプレッサ20が再び作動した場合に保持した仕事分を有効に利用することができる。
【0112】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
10 冷却装置、12 空調用冷凍サイクルシステム、20 コンプレッサ、40 コンデンサ、60 レシーバ、80 エバポレータ、132,136 電磁弁、134,138 温度センサ、120 冷却部、122 インバータ、124 モータジェネレータ、126 冷却通路、134 温度センサ、140 逆止弁、142 機器温度センサ、150 エキスパンションバルブ、152 バルブ本体、154 感温部材、302,304,306,308 接続通路、402 作動判定部、404 液温判定部、406 第1減圧制御部、408 コンプレッサ制御部、410 第2減圧制御部、412 全開制御部、500 第1全開制御部、502 第3減圧制御部、512 第2全開制御部、600 冷却要求判定部、602 全閉制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電気機器を冷却するための冷却装置であって、
冷媒を循環させるためのコンプレッサと、
前記冷媒を凝縮するためのコンデンサと、
前記冷媒を用いて前記車両の室内の冷房を行なうためのエバポレータと、
前記コンデンサから前記コンプレッサに流通する前記冷媒の経路上に前記エバポレータと直列に設けられ、前記冷媒を用いて前記電気機器を冷却するための冷却部とを含む、冷却装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記冷却部に供給される前記冷媒を減圧するための電磁弁を含み、
前記冷却装置は、前記冷房が行なわれる場合に前記電磁弁の開度が第1の開度となるように前記電磁弁を制御し、前記冷房が行なわれない場合に前記電磁弁の開度が第2の開度となるように前記電磁弁を制御するための制御部をさらに含み、
前記第1の開度は、前記第2の開度よりも大きい、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記経路内の冷媒温度を検出するための検出部をさらに含み、
前記制御部は、前記冷媒温度がしきい値よりも小さいときには、前記第1の開度が全開となるように前記電磁弁を制御し、前記冷媒温度が前記しきい値よりも大きいときには、前記第1の開度が前記全開よりも小さい開度となるように前記電磁弁を制御する、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記電磁弁の開度が前記全開となる場合の第1断面形状は、前記経路を形成する通路の第2断面形状よりも前記冷媒の流通時の抵抗が大きくならないように形成される、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記電磁弁は、前記電磁弁の開度が全閉となる場合に前記経路内の前記冷媒の流通を遮断し、
前記冷却装置は、前記コンプレッサ側から前記コンデンサ側への前記冷媒の流通を許容し、前記コンデンサ側から前記コンプレッサ側への前記冷媒の流通を遮断するための逆止弁をさらに含み、
前記制御部は、前記冷房が行なわれない場合であって、かつ、前記電気機器の冷却要求がない場合に前記電磁弁の開度が前記全閉となるように前記電磁弁を制御する、請求項2〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記電気機器の温度がしきい値よりも低い場合に前記電気機器の冷却要求がないと判断する、請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記冷房が行なわれない場合であっても、前記冷却部によって前記電気機器を冷却する場合には、前記コンプレッサを作動させる、請求項2〜6のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷却部は、前記コンデンサと前記エバポレータとの間に設けられ、
前記エバポレータと前記冷却部との間には、前記冷房が行なわれる場合に霧状の前記冷媒を前記エバポレータに供給するための弁が設けられる、請求項1〜7のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−56352(P2012−56352A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199024(P2010−199024)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】