説明

凝固第IXa因子インヒビターとしての使用のための酒石酸誘導体

本発明は、特に、血液凝固第IXa因子を阻害する抗血栓活性を有する式(I)の化合物、それらを製造するための方法、および薬物としてのそれらの使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血栓活性、特に血液凝固第IXa因子を阻害する活性を有する新規な式Iの化合物、それらを製造するための方法および薬剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は哺乳動物が生存する上で欠かすことができない血流制御プロセスである。凝固プロセスおよびそれに引き続く創傷治癒後の血餅分解のプロセスは血管損傷後に開始され、そしてこれは以下の4相に分けることができる:
1.血管収縮(vasoconstriction)または血管収縮(vasocontraction)の相:これにより、損傷部位における失血を減少させる。
2.次の相はトロンビンによる血小板活性化である。血小板は血管壁の損傷部位に結合し、そして血小板凝集塊を形成する。タンパク質フィブリノゲンは、ここで適切な表面受容体による血小板の架橋形成に関与する。血小板はまた、損傷を受けた血管壁の細胞外マトリクスの露出したコラーゲンに結合し、これによって活性化される。血小板の活性化後、多数のメッセンジャー物質が分泌され、これにより血小板の活性化がさらに誘導される。同時に、膜脂質、ホスファチジルセリンが血小板の膜の内部から外部へ輸送され、そこで凝固因子の複合体が蓄積し得る。血小板はこの機構により血液凝固を促進する。
3.これらの凝固複合体の形成は、大量のトロンビン形成をもたらし、このトロンビンは2つの小さなペプチドを切断することにより可溶性のフィブリノゲンをフィブリンに変換する。フィブリンモノマーは自然に細長い線維を形成し、凝固第XIII因子による架橋後、安定したタンパク質ネットワークを形成する。当初は密でなかった血小板凝集塊もこのフィブリンネットワークによって安定化される;血小板凝集塊およびフィブリンネットワークの2つは、極めて重要な血栓の構成要素である。
4.創傷治癒後、血栓は内因性線維素溶解系鍵となる酵素、プラスミンの作用により溶解される。
【0003】
2つの代替経路、内因性経路および外因性経路は、フィブリン塊の形成をもたらすことができる。これらの経路は、異なる機序により開始されるが、後の段階において、これらは収束し、共通の凝固カスケードの最終経路を与える。この凝固の最終経路において、凝固第X因子が活性化される。活性化第X因子は、血中を循環する不活性な前駆体プロトロンビンからのトロンビン形成に関与する。創傷のない異常な血管壁の下部での血栓の形成は内因性経路の結果である。組織損傷または傷害に対する応答としてのフィブリン塊形成は外因性経路の結果である。両方の経路は、凝固因子として公知である比較的多数のタンパク質を含む。
【0004】
内因性経路は、凝固第V因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子および第XII因子、またプレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、カルシウムイオンおよび血小板に由来するリン脂質を必要とする。
【0005】
内因性経路は、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、第XI因子および第XII因子が負に帯電した表面に結合した時に開始する。この時点は、接触相と呼ばれる。血管壁コラーゲンに対する露出が、接触相の一次刺激である。接触相のプロセスの結果はプレカリクレインからカリクレインへの変換であり、カリクレインはさらに第XII因子を活性化する。第XIIa因子は、さらにプレカリクレインをカリクレインに加水分解し、その結果活性化が起こる。第XII因子の活性化の増加につれて、第XI因子の活性化が起こり、血管拡張因子であるブラジキニンの放出をもたらす。結果として、血管収縮の初期段階が終結する。ブラジキニンは高分子量キニノーゲンから形成される。Ca2+イオンの存在下、第XIa因子が第IX因子を活性化する。第IX因子は、ビタミンK依存性のγ−カルボキシグルタミン酸(GLA)残基を含むプロ酵素である。これらのGLA残基にCa2+が結合した後、セリンプロテアーゼの活性化が顕著になる。血液凝固カスケードの多数のセリンプロテアーゼ(第II因子、第VII因子、第IX因子および第X因子)は、このようなビタミンK依存性GLA残基を含む。第IXa因子は、第X因子を切断し、そして第Xa因子の活性化をもたらす。第IXa因子を形成するための前提条件は、活性化血小板の表面上でのCa2+と第VIIIa因子、第IXa因子および第X因に由来するテナーゼ複合体(tenase complex)の形成である。活性化血小板の反応の1つは、表面に沿ったホスファチジルセリンおよびホスファチジルイノシトールの提示である。これらのリン脂質の露出は、最初にテナーゼ複合体の形成を可能にする。このプロセスにおいて、第VIII因子は、第IXa因子および第X因子に対する受容体の機能を有する。従って、第VIII因子は、凝固カスケードにおける補因子である。実際の受容体である第VIIIa因子の形成を伴う第VIII因子の活性化は、必要最低限量のトロンビンのみを必要とする。トロンビンの濃度の増加に伴って、最終的に第VIIIa因子はさらに切断され、そしてトロンビンによって不活化される。第VIII因子に関連するトロンビンのこのデュアル活性(dual activity)二重活性化は、テナーゼ複合体形成の自己制限をもたらし、従って血液凝固の制限をもたらす。
【0006】
外因性経路は、組織因子(TF)および凝固第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子および第X因子を必要とする。血管傷害に場合において、組織因子(TF)は、凝固第VII因子と共に蓄積し、そして凝固第VII因子が活性化される。TFと凝固第VII因子の複合体は2つの基質、凝固第X因子および第IX因子を有する。
【0007】
凝固第IX因子は内因性経路および外因性経路によって活性化され得る。従って、第IXa因子の活性化は、凝固活性化の2つの経路の交点である。
【0008】
第IXa因子は、血液凝固において重要な役割を果たす。第IXa因子の欠損は、B型血友病を引き起こし、血液中の第IXa因子の濃度が上昇している間、血栓形成の危険性が著しく増大する(非特許文献1)。第IXa因子活性の制御は、動物モデルにおいて血栓形成を減少させることができる(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Weltermann A,et al.,J Thromb Haemost.2003;1:28−32
【非特許文献2】Feuerstein GZ,et al.,Thromb Haemost.1999;82:1443−1445
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の式Iの化合物は、血栓症、塞栓症、凝固能亢進または線維化に伴って起こる疾患に罹患するヒトに予防的および治療的に投与するのに適切である。これらは、二次予防に利用することができ、そして急性療法および長期療法の両方に適切である。
【0011】
従って、本発明は式I:
【化1】

の化合物、ならびに/または式Iの化合物の全ての立体異性体形態および/もしくは任意の比率のそれらの形態の混合物、および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩に関する。
【0012】
式中、
R1が、1)−(C6−C14)−アリール−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてアリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C3−C12)−シクロアルキル−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてシクロアルキルは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)4〜15員のHet−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてHetは非置換であるか、またはさらにTで一、二または三置換されている)であり、
R2およびR4が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C0−C4)−アルキレン−Het(ここで、Hetは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、2つのアリールは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
4)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C3−C12)−シクロアルキル(ここで、アリールおよびシクロアルキルは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
5)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−Het(ここで、アリールおよびHetは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
6)−(C0−C4)−アルキレン−Het−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールおよびHetは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)または
7)−(C0−C4)−アルキレン−Het−Q−Het(ここで、2つのHet基は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)であり、
Qが共有結合、−(C1−C4)−アルキレン、−NH−、−N((C1−C4)−アルキル)−、−O−、−SO2−または−S−であり、
Tが、1)ハロゲン、
2)−(C1−C6)−アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、または独立して、−(C1−C3)−フルオロアルキル、−N−C(O)−OHまたは−N−C(O)−(C1−C4)−アルキルで一、二または三置換されている)、
3)−(C1−C3)−フルオロアルキル、
4)−(C3−C8)−シクロアルキル、
5)−OH、
6)−O−(C1−C4)−アルキル、
7)−O−(C1−C3)−フルオロアルキル、
8)−NO2
9)−CN、
10)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子、−(C3−C8)−シクロアルキル、ハロゲンまたは−(C1−C6)−アルキルである)、
11)−C(O)−NH−R10、
12)−NH−C(O)−R10、
13)−NH−SO2−R10、
14)−SO2−(C1−C4)−アルキル、
15)−SO2−NH−R10、
16)−SO2−(C1−C3)−フルオロアルキル、
17)−S−(C1−C4)−アルキルまたは
18)−S−(C1−C3)−フルオロアルキルであり、
R5およびR6が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子、−C(O)−R12、−C(O)−O−R12、−C(O)−NH−R12または−(C1−C4)−アルキル(ここで、R12は、−(C1−C6)−アルキル、−(C3−C8)−シクロアルキル、−(C6−C14)−アリールまたはHetである。
【0013】
さらに、本発明は、式Iの化合物、ならびに/または式Iの化合物の全ての立体異性体形態および/もしくは任意の比率のそれらの形態の混合物、および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩であって、ここで、
R1が1)−(C6−C14)−アリール−Z(ここで、アリールは、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され、そしてアリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されており、そしてZは、アミノ、アミノメチレン、アミジノ、グアニジノ、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピリジニルまたはアミノピリジニルである)または
2)4〜15員のHet−Z(ここで、Hetは以下:アクリジニル、アゼピニル、アゼチジニル、ベンゾイミダゾリニル、ベンゾイミダゾリル、べンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、β−カルボリニル、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ジヒドロフラン[2,3−b]−テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ジオキソリル、ジオキサニル、ジオキソレニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソキノリニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリジニル、2−イソチアゾリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、2−イソオキサゾリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキソチオラニル、フェナントリジニル、フェナントレニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリドチオフェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロピリジニル、6H−1,2,5−チアダジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアジニル、チアゾリル、チエニル、チエノイミダゾリル、チエノオキサゾリル、チエノピリジニル、チエノピロリル、チエノチアゾリル、チエノチオフェニル、チオモルホリニル、チオピラニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルまたはキサンテニルからなる群から選択され、そしてHetは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されており、そしてZは上で定義される通りである)であり、
R2およびR4が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールは、上で定義される通りであり、そして非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、2つのアリールは、各場合において、互いに独立して、上で定義される通りであり、そして各場合において、において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C3−C12)−シクロアルキル(ここで、アリールは、上で定義される通りであり、そしてシクロアルキルは、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、または
4)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−Het(ここで、アリールおよびHetは、上で定義される通りであり、そして各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)であり、
Qが、共有結合、−(C1−C4)−アルキレン、−NH−、−N((C1−C4)−アルキル)−または−O−であり、
Tが、1)ハロゲン、
2)−(C1−C6)−アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、または独立して、−(C1−C3)−フルオロアルキル、−N−C(O)−OHまたは−N−C(O)−(C1−C4)−アルキルで一、二または三置換されている)、
3)−(C1−C3)−フルオロアルキル、
4)−(C3−C6)−シクロアルキル、
5)−OH、
6)−O−(C1−C4)−アルキル、
7)−O−(C1−C3)−フルオロアルキル、
8)−NO2
9)−CN、
10)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子、−(C3−C6)−シクロアルキル、ハロゲンまたは−(C1−C6)−アルキルである)、
11)−C(O)−NH−R10、
12)−NH−C(O)−R10、
13)−NH−SO2−R10、
14)−SO2−(C1−C4)−アルキル、
15)−SO2−NH−R10、
16)−SO2−(C1−C3)−フルオロアルキル、
17)−S−(C1−C4)−アルキルまたは
18)−S−(C1−C3)−フルオロアルキルであり、
R5およびR6が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子、−C(O)−R12、−C(O)−O−R12、−C(O)−NH−R12または−(C1−C4)−アルキル(ここで、R12は、−(C1−C6)−アルキル、−(C3−C8)−
シクロアルキル、−(C6−C14)−アリールまたはHetであり、そしてアリールおよびHetは、上で定義される通りである化合物に関する。
【0014】
さらに、本発明は、式Iの化合物、ならびに/または式Iの化合物の全ての立体異性体形態および/もしくは任意の比率のそれらの形態の混合物、および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩であって、ここで、
R1が、カルバムイミドイルフェニル(ベンゾアミジノ)、アミノメチルフェニルまたはHet−Z(ここでHetは、ベンゾイミダゾリルおよびイソキノリニルからなる群から選択され、そしてZはアミノまたはアミジノである)であり、
R2およびR4が、各場合において、水素原子であり、
R3が1)フェニル(ここで、フェニルは、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)、
2)−フェニル−Q−フェニル(ここで、2つのフェニル基は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)、
3)フェニル−Q−(C3−C6)−シクロアルキル(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)または
4)フェニル−Q−Het−2(ここで、Het−2は、以下:キノリニル、キノキサリニル、フラニル、インドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チエノピロリル、またはチエノチオフェニルからなる群から選択され、そしてフェニルおよびHet−2は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)であり、
Qが、共有結合、−CH2−、−N(CH3)−または−O−であり、
Tが、1)F、ClまたはBr、
2)−(C1−C4)−アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または独立して、−CF3または−N−C(O)−CH3で一または二置換されている)、
3)−CF3
4)−O−(C1−C4)−アルキル、
5)−O−CF3
6)−NO2
7)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルである)または
8)−SO2−CH3であり、そして
R5およびR6が、各場合において、水素原子である化合物に関する。
【0015】
本発明のさらなる主題は、以下:
(2R,3R)−N−(1−アミノイソキノリン−6−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−シクロヘキシルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(4−アミノメチルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド、
(2R,3R)−N−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−クロロフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−フェニルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−ニトロフェニル)−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−イソプロピルフェニル)−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−ピペリジン−1−イルフェニル)タルタルアミドまたは
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−フェノキシフェニル)−タルタルアミド
からなる群からの式Iの化合物である。
【0016】
用語「(C1−C4)−アルキル」または「(C1−C6)−アルキル」とは、炭素鎖が直鎖または分子鎖であり、そして1〜4個または1〜6個の炭素原子を含む炭化水素基を意味するとして理解され、例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2,3−ジメチルブタンまたはネオヘキシルが挙げられる。用語「−(C0−C4)−アルキレン」とは、炭素鎖が直鎖または分子鎖であり、そして1〜4個の炭素原子を含む炭化水素基を意味するとして理解され、例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソブチレン、ブチレンまたは第三級−ブチレンが挙げられる。「−C0−アルキレン」とは共有結合である。用語「−(C1−C4)−アルキレン」とは、炭素鎖が直鎖または分子鎖であり、そして1〜4個の炭素原子を含む炭化水素基を意味するとして理解され、例としては、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2−CH2−)、プロピレン(−CH2−CH2−CH2−)、イソプロピレン、イソブチレン、ブチレンまたは第三級−ブチレンが挙げられる。
【0017】
用語「−(C3−C12)−シクロアルキル」とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンまたはシクロオクタンのような環に3〜8個の炭素原子を有する単環から誘導される化合物、ビシクロ[4.2.0]オクタン、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、デカヒドロアズレン、デカヒドロベンゾシクロヘプタンまたはデカヒドロヘプタレンのような二環(bicycle)から誘導される化合物、またはスピロ[2.5]オクタン、スピロ[3.4]オクタン、スピロ[3.5]ノナン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたはビシクロ[2.2.2]オクタンのような架橋環から誘導される化合物のような3〜12個の炭素原子の環を意味するとして理解される。
【0018】
用語「−(C3−C6)−シクロアルキル」または「−(C3−C8)−シクロアルキル」とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンまたはシクロオクタンのような環に3〜6個または3〜8個の炭素原子を有する単環から誘導される基を意味するとして理解される。
【0019】
用語「−(C6−C14)−アリール」とは、環に6〜14個の炭素原子を有する芳香族炭素水素基を意味するとして理解される。(C6−C14)−アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、例えば1−ナフチル、2−ナフチル、アントリルまたはフルオレニルが挙げられる。ナフチル基および特にフェニル基が、好ましいアリール基である。
【0020】
用語「4〜15員のHet」または「Het」とは、4〜15個の炭素原子を有し、互いに連結される1、2または3個の環系で存在し、そしてこの環系において、酸素、窒素または硫黄からなる群からの1、2、3または4個の同一または異なるヘテロ原子をそれぞれの炭素原子と置き換えることができる環系を意味するとして理解される。これらの環系の例としては、アクリジニル、アゼピニル、アゼチジニル、ベンゾイミダゾリニル、ベンゾイミダゾリル、べンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、β−カルボリニル、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ジヒドロフラン[2,3−b]−テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ジオキソリル、ジオキサニル、ジオキソレニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソキノリニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリジニル、2−イソチアゾリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、2−イソオキサゾリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキソチオラニル、フェナントリジニル、フェナントレニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリドチオフェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロピリジニル、6H−1,2,5−チアダジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアジニル、チアゾリル、チエニル、チエノイミダゾリル、チエノオキサゾリル、チエノピリジニル、チエノピロリル、チエノチアゾリル、チエノチオフェニル、チオモルホリニル、チオピラニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルまたはキサンテニルの基が挙げられる。
【0021】
用語「−(C1−C3)−フルオロアルキル」とは、部分的にまたは完全にフッ素化されたアルキル基を意味するとして理解され、例えば、以下:−CF3、−CHF2、−CH2F、−CHF−CF3、−CHF−CHF2、−CHF−CH2F、−CH2−CF3、−CH2−CHF2、−CH2−CH2F、−CF2−CF3、−CF2−CHF2、−CF2−CH2F、−CH2−CHF−CF3、−CH2−CHF−CHF2、−CH2−CHF−CH2F、−CH2−CH2−CF3、−CH2−CH2−CHF2、−CH2−CH2−CH2F、−CH2−CF2−CF3、−CH2−CF2−CHF2、−CH2−CF2−CH2F、−CHF−CHF−CF3、−CHF−CHF−CHF2、−CHF−CHF−CH2F、−CHF−CH2−CF3、−CHF−CH2−CHF2、−CHF−CH2−CH2F、−CHF−CF2−CF3、−CHF−CF2−CHF2、−CHF−CF2−CH2F、−CF2−CHF−CF3、−CF2−CHF−CHF2、−CF2−CHF−CH2F、−CF2−CH2−CF3、−CF2−CH2−CHF2、−CF2−CH2−CH2F、−CF2−CF2−CF3、−CF2−CF2−CHF2または−CF2−CF2−CH2Fの基から誘導される。
【0022】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味するとして理解され;フッ素、塩素または臭素、特に、塩素または臭素が好ましい。
【0023】
用語「塩基性窒素含有基」とは、この基の共役酸が約5〜15のpKaを有する基を意味するとして理解される。この塩基性窒素含有基の例としては、アミノ、アミノメチレン、アミジノ(カルバムイミドイル)、グアニジノ、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピリジニルまたはアミノピリジニルが挙げられる。
【0024】
使用される中間体の官能基、例えばアミノ基またはカルボキシル基は、適切な保護基によってマスクされていてもよい。アミノ官能基に対する適切な保護基は、例えばt−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはフタロイル(phthalolyl)、およびトリチルまたはトシル保護基である。カルボキシル官能基に対する適切な保護基は、例えばアルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルである。保護基は、良く知られたまたは本明細書中に記載される技術によって導入され、そして除去され得る(Green,T.W.,Wutz,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis(1991),第2版.,Wiley−Interscience,またはKocienski,P.,Protecting Groups(1994),Thiemeを参照のこと)。用語保護基はまた、ポリマー結合保護基を包含し得る。このようにマスクされた式(I)の化合物(ここで、例えば基U、V、XまたはWの官能基もまた、場合によって、マスクされてもよい)は、場合によってはそれ自体薬理学的に活性でないが、場合によって、哺乳動物への投与後、代謝によって本発明の薬理学的に活性な化合物に変換され得る。
【0025】
本発明の化合物は、良く知られた方法または本明細書中に記載される方法によって製造され得る。
【0026】
さらに、本発明は式Iの化合物、ならびに/または式Iの化合物の立体異性体形態、および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩の製造方法であって、スキーム1に従う式Iの化合物を製造することを含む方法に関する。
スキーム1:
【化2】

【0027】
スキーム1で使用される基R1、R2、R3およびR4は、式Iの化合物におけるものと同じ意味を有する;BOCは保護基ブトキシカルボニルである。工程Aにおいて、ジアセチル−L−酒石酸無水物(式IIの化合物)を、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジオキサンまたはジクロロメタンのような溶媒に溶解し、そして式NH(R3)−R4の適切なアミンと反応させ、対応するアミド(III)を得る。このために、N−メチルモルホリンあるいはヒューニッヒ塩基、トリエチルアミン(NEt3)または4−ジメチルアミノピリジン(4−DMAP)のような別のアミン塩基のような適切な塩基を添加する。次の工程Bにおいて、モノアミドIIIをジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、NMP、ジオキサンまたはジクロロメタンのような溶媒に溶解し、そして式NH(R1−BOC)−R2の適切なアミンとカップリングさせ、対応するジアミド(VI)を得る。このために、上記のように、TOTU、PyBrop、PyBop、HATUまたはEDCのような通常のカップリング試薬およびヒューニッヒ塩基、NEt3またはDMAPのようなアミン塩基のような適切な塩基を使用する。
【0028】
N(R1)−R2上のBoc保護基のような保護基を、TFA−CH2Cl2を使用するような標準方法を使用して除去し、そして例えば室温(RT)でNaOHを使用する塩基性加水分解によりアセチル基を除去した後、標的化合物(I)を得る。(保護基を除去するための代替方法について、例えばKocienski,P.J.,Protecting groups,Thieme Verlag 1994,pp.1−16を参照のこと)。この経路により、R6=HのI型の化合物を得る。R6がHでない化合物は、原則として、公知の標準方法(例えば、エステル形成またはカルバモイル化)に従ってこれらから製造し得る。
【0029】
代替方法(C)において、酒石酸モノアミド(IV)をジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、NMP、ジオキサンまたはCH2Cl2のような溶媒中に直接溶解し、そして式NH(R1−BOC)−R2の適切なアミンとカップリングさせ、対応するジアミド(V)を得る。このために、TOTU、PyBrop、PyBop、HatuまたはEDCのような通常のカップリング試薬およびヒューニッヒ塩基、NEt3またはDMAPのようなアミン塩基のような適切な塩基を使用する。N(R1)−R2上のBoc保護基のような保護基を、標準方法(例えば、RTでTFA−CH2Cl2)を使用して除去し、標的化合物(I)を得る。R6がHでない化合物もまた、原則として、この方法に従って製造され得る。
【0030】
さらに、本発明は式Iの化合物、ならびに/または式Iの化合物の立体異性体形態および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩の製造方法であって、
a)式II:
【化3】

の化合物を化合物NH(R3)(R4)と反応させ、式III:
【化4】

の化合物(ここで、基R3およびR4は式Iで定義される通りである)を得、式IIIの化合物を化合物NH(R2)(R1)−Bocと反応させ、式IV:
【化5】

の化合物(ここで、基R1、R2、R3およびR4は式Iで定義される通りであり、そしてBocは保護基ブトキシカルボニルである)を得、続いて反応させ、式Iの化合物を得ること、または
【0031】
b)式IV:
【化6】

の化合物(ここで、基R3、R4、R5およびR6は式Iで定義された通りである)を化合物NH(R2)(R1)−Bocと反応させ、式V:
【化7】

の化合物(ここで、基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、式Iで定義された通りであり、そしてBocは保護基ブトキシカルボニルである)を得、そして続いて反応させ、式Iの化合物を得ること、または
【0032】
c)方法a)またはb)に従って製造された式Iの化合物を遊離形態で単離すること、または生理学的に許容されない塩から遊離させること、または酸性基または塩基性基が存在する場合、生理学的に許容される塩に変換すること、または
d)方法a)またはb)に従って製造された式Iの化合物またはその化学構造のために鏡像異性形態またはジアステレオマー形態で存在する式Iの適切な前駆体を、鏡像異性的に純粋な酸または塩基との塩形成、キラル固定相でのクロマトグラフィーまたはアミノ酸のようなキラルな鏡像異性的に純粋な化合物による誘導体化、このようにして得たジアステレオマーの分離、およびキラル補助基の除去によって純粋な鏡像異性体またはジアステレオマーに分離すること
を含む方法に関する。
【0033】
スキーム1に従って製造された式Iの化合物またはその化学構造のために鏡像異性形態で存在する式Iの適切な前駆体を、鏡像異性的に純粋な酸または塩基との塩形成、キラル固定相でのクロマトグラフィーまたはアミノ酸のようなキラルな鏡像異性的に純粋な化合物による誘導体化、このようにして得たジアステレオマーの分離、およびキラル補助基の除去によって純粋な鏡像異性体に分離し得るか(方法d)、またはスキーム1に従って製造された式Iの化合物を遊離形態で単離し得るか、または酸性基または塩基性基が存在する場合、生理的に許容される塩に変換し得る(方法c)。
【0034】
方法d)において、式Iの化合物は、ジアステレオマーまたは鏡像異性体の混合物として存在するか、または選択した合成においてそれらの混合物として得られる場合、場合によってキラルな支持材上でのクロマトグラフィーにより、または式Iのラセミ化合物が塩形成可能である場合、補助剤としての光学活性な塩基または酸を使用して生成したジアステレオマー塩の分別結晶により、純粋な立体異性体に分離される。鏡像異性体の薄層またはカラムクロマトグラフィー分離に適切なキラル固定相としては、例えば改質シリカゲル支持体(「Pirkle相」)およびトリアセチルセルロースのような高分子量糖質が挙げられる。分析目的のために、当業者に公知の適切な誘導体化の後にキラル固定相上のガスクロマトグラフ法もまた使用し得る。ラセミ体カルボン酸の鏡像異性体を分離するために、一般に市販されている、(−)−ニコチン、(+)−および(−)−フェニルエチルアミン、キニン塩基、L−リジンまたはL−およびD−アルギニンのような光学活性塩基を使用して、溶解度の異なるジアステレオマー塩を形成し、より難溶性の成分を固体として単離し、より易溶性のジアステレオマーを母液から沈殿させ、そして純粋な鏡像異性体をこのように得られたジアステレオマー塩から得る。原則として同じ方法で、(+)−ショウノウ−10−スルホン酸、D−およびL−酒石酸、D−およびL−乳酸ならびに(+)および(−)−マンデル酸のような光学活性酸を使用して、アミノ基のような塩基性基を含む式Iのラセミ化合物を純粋な鏡像異性体に変換し得る。アルコールまたはアミン官能基を含むキラル化合物もまた、適切に活性化された、または場合によって、N−保護された鏡像異性的に純粋なアミノ酸を使用して対応するエステルまたはアミドに変換し得るか、または逆に、キラルカルボン酸を、カルボキシ保護された鏡像異性的に純粋なアミノ酸を使用してアミドに変換し得るか、または乳酸のような鏡像異性的に純粋なヒドロキシカルボン酸を使用して対応するキラルエステルに変換し得る。次いで、鏡像異性的に純粋な形態で導入されたアミノ酸またはアルコール基のキラリティーは、結晶化または適切な固定相でのクロマトグラフィーにより現存しているジアステレオマーの分離を行い、次いで含まれるキラル部分を適切な方法により再び除去することによって、異性体を分離するのに使用することができる。
【0035】
さらに、本発明の化合物のいくつかの場合において、環構造を製造するためにジアステレオマー的に(diastereomerically)または鏡像異性的に純粋な出発物質を利用する可能性がある。この方法により、最終生成物を精製するために、他のまたは単純化された方法を利用することができる。これらの出発物質は、文献から公知の方法に従って、鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋な形態で予め製造された。このことは、特に骨格構造の合成においては、エナンチオ選択的な方法を使用するか、あるいは鏡像異性体(またはジアステレオマー)の分離を最終生成物の段階だけではなく合成の初期段階で行なうことを意味し得る。同様に、二段階またはそれ以上の段階で行なうことにより分離の単純化を達成し得る。
【0036】
式Iの化合物の酸性または塩基性の生成物は、それらの塩の形態または遊離形態で存在し得る。薬理学的に許容される塩、例えばアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヘミ硫酸塩、全ての可能性のあるリン酸塩、およびアミノ酸、天然の塩基もしくはカルボン酸の塩が好ましい。
【0037】
塩形成することができる式Iの化合物(その立体異性形態を含む)からの生理学的に許容される塩の製造は、工程c)に従って、それ自体公知の方法で行われる。式Iの化合物は、塩基性試薬、例えば水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、およびアンモニア、または有機塩基、例えばトリメチルアミンもしくはトリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンもしくはトリエタノールアミン、トロメタモールまたは代替の塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチンもしくはアルギニンと、安定なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または場合によって置換されたアンモニウム塩を形成する。式Iの化合物が塩基性基を有する場合、強酸を用いて安定な酸付加塩を製造することもできる。このために、無機酸および有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、ヘミ硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、4−ブロモベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルアミドスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、グリセロールリン酸、乳酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パルミチン酸またはトリフルオロ酢酸が適切である。
【0038】
本発明はまた、薬学的に適切でかつ生理学的に許容されるビヒクル、添加剤、および/または他の活性物質および助剤と一緒に、少なくとも1つの、式Iの化合物、および/または式Iの化合物の生理的に許容される塩および/または式Iの化合物の任意の立体異性形態の有効量を含有する薬剤に関する。
【0039】
それらの薬学的特性のために、本発明の化合物は、例えば血液凝固第IXa因子の阻害によって治療可能である全ての疾患の予防、二次予防および治療に適切である。従って、本発明の化合物は、インヒビターとしてヒトへの予防的投与および治療的投与の両方に適切である。これらは、急性治療および長期療法の両方に適切である。式Iの化合物は、血栓症、塞栓症、凝固能亢進または線維化に伴って起こるウェルビーイングまたは疾患に罹患する患者に利用され得る。これらの疾患としては、心筋梗塞、狭心症および急性冠症候群の全ての他の形態、発作(stroke)、末梢血管疾患、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心不整脈によって引き起こされる塞栓性または血栓性の事象、血管再開通術、血管形成術、およびステント移植およびバイパス術のような同様の介入後の再狭窄のような心臓血管の事象が挙げられる。さらに、式Iの化合物は、透析患者および留置カテーテルを有する患者にあるような異物面と血液との接触をもたらす全ての介入に利用され得る。式Iの化合物はまた、膝関節または股関節の手術のような外科的介入後の血栓症の危険性を低下させるために利用され得る。
【0040】
式Iの化合物は、播種性血管内凝固症候群、敗血症、および炎症に伴って起こる他の血管内事象を有する患者の治療に適切である。さらに、式Iの化合物は、アテローム性動脈硬化症、糖尿病および代謝症候群、およびそれらの続発症を有する患者の予防および治療に適切である。止血系の障害(例えば、フィブリン沈着)は、腫瘍増殖および腫瘍転移をもたらす機序において、ならびに関節リウマチおよび関節症のような炎症性および変形性の関節疾患において関係している。式Iの化合物は、このようなプロセスの遅延または予防に適切である。
【0041】
式Iの化合物の使用についてのさらなる適応症は、慢性閉塞性肺疾患のような肺の線維化、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、および目の手術後のフィブリン沈着のような目の線維化である。式Iの化合物はまた、瘢痕形成の予防および/または治療に適切である。
【0042】
本発明の薬剤は、経口投与、吸入投与、直腸投与もしくは経皮投与により、または皮下注射、関節内注射、腹腔内注射もしくは静脈内注射により投与され得る。経口投与が好ましい。ステントおよび身体の血液と接触するようになる他の表面を式Iの化合物でコーティングすることが可能である。
【0043】
本発明はまた、薬学的に適切でかつ生理学的に許容される担体、および場合によってさらなる適切な活性物質、添加剤または助剤を使用して、少なくとも1つの式Iの化合物を適切な投与形態にすることを含む薬剤の製造方法に関する。
【0044】
適切な固形のまたはガレヌスの製剤形態としては、例えば顆粒剤、散剤(末)、コーティング錠剤、錠剤、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、ジュース剤、懸濁剤、乳剤、滴剤または注射剤、および活性成分の持続放出を有する薬剤が挙げられ、これらの調製において、通常の賦形剤、例えばビヒクル、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤または滑沢剤、着香料、甘味料および可溶化剤が使用される。頻繁に使用され挙げ得る助剤としては、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、乳糖、マンニトールおよび他の糖類、タルク、ラクトース、ゼラチン、デンプン、セルロースおよびその誘導体、動物油および植物油(例えば、タラ肝油、ヒマワリ油、ラッカセイ油またはゴマ油)、ポリエチレングリコールならびに溶剤(例えば、滅菌水、および一価アルコールまたは多価アルコール(例えば、グリセリン))が挙げられる。
【0045】
医薬製剤は、好ましくは投薬単位で調製され、そして投与され、ここで各単位は活性成分として一定の用量の本発明の式Iの化合物を含む。錠剤、カプセル剤、コーティング錠剤または坐剤のような固形投薬単位の場合では、この用量は約1000mgの可能性があるが、好ましくは約50〜300mgであり、そしてアンプル形態の注射剤の場合、約300mgの可能性があるが、好ましくは約10〜100mgである。
【0046】
体重約70kgの成人患者の治療について、式Iの化合物の効果に依存して、約2mg〜1000mgの活性物質、好ましくは約50mg〜500mgのそれの日用量が適応される。しかし、一定の状況下では、より高いかまたはより低い日用量も適切であり得る。日用量は、単一投薬単位または多数のより小さい投薬単位の形態での単回投与により、および一定の間隔での分割された用量の反復投与により投与され得る。
【0047】
式Iの化合物は、単剤療法として、および全ての抗血栓剤(抗凝固剤および血小板凝集阻害剤)、血栓溶解剤(任意の型のプラスミノーゲンアクチベーター)、他の繊維素溶解促進(profibrinolytically)活性成分、降圧剤、血糖調節剤、脂質低下剤および抗不整脈剤と組み合わせるか、またはこれらと一緒に投与され得る。
【実施例】
【0048】
最終生成物は、通常、質量分光法(FAB−、ESI−MS)および1H−NMRにより測定され、各場合において、主要ピークまたは2つの主要ピークが示される。温度データは摂氏であり、Yld.は収率である。使用される略語は説明されているか、または通常の取り決めに従う。
【0049】
他に記載がない場合、クロマトグラフ分離は溶離液として酢酸エチル/ヘプタン混合物を使用してシリカゲルで行った。他に記載がない場合、以下の条件下、分取用の分離(preparative separation)は逆相(RP)シリカゲル(HPLC)で行った:カラム Merck Hibar RT 250−25 Lichrospher 100 RP−18e 5μm,Merck KGaA,Germany,Life Science & Analytics,64293 Darmstadt;移動相A:H2O+0.1% TFA、相B:80% アセトニトリル+0.1% TFA、流速25ml/分、0〜7分 100% A、7〜22分 100% Bまで、22〜30分 100% B、30〜33分 100% Aまで、33〜35分 100% A。
【0050】
通常、溶媒のエバポレートを減圧下、35℃〜45℃のロータリーエバポレーターで行った。他に記載がない場合、LC/MS分析を以下の条件で行った:
方法A:
カラム:YMC J’shere H80 33×2,1mm;Waters GmbH,Helfmann−Park 10, 65760 Eschborn,Germany;充填剤 4μm,
溶媒:ACN+0.05% TFA:H2O+0.05% TFA(流速 1.3ml/分)
グラジエント:5:95(0分)〜95:5(2.5分)〜95:5(3.0分)
イオン化法:ESI+
方法B:
カラム:YMC J’shere H80 33×2,1mm;充填剤 4μm,
溶媒:ACN+0.05% TFA:H2O+0.05% TFA(流速 1ml/分)
グラジエント:5:95(0分)〜95:5(3.4分)〜95:5(4.4分)
イオン化法:ESI+
方法D:
カラム:YMC J’shere ODS H80 20×2,1mm 充填剤 4μm、
溶媒:ACN:H2O+0.05% TFA(流速 1ml/分)
グラジエント:4:96(0分)〜95:5(2分)〜95:5(2.4分)〜96:4(2.45分)
イオン化法:ESI+
以下の方法を使用して、分取用HPLCを行った:
カラム:Waters Atlantis dC18 OBD 30×100mm 5μm;Waters GmbH,Helfmann−Park 10,65760 Eschborn,Germany
溶媒:ACN:H2O+0.1%TFA(流速 60ml/分)
グラジエント:10:90(0分)〜90:10(10分)
【0051】
使用される略語:
ACN アセトニトリル
Boc ブトキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
(DHQ)2PHAL 1−[(R)−((4S,5R)−5−エチル−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イル)−(6−メトキシ−キノリン−4−イル)メトキシ]−4−[(R)−((4R,5S)−5−エチル−1−アザビシクロ−[2.2.2]オクタ−2−イル)−(6−メトキシキノリン−4−イル)メトキシ]フタラジン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミドHATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
2[OsO2(OH)4] オスミウム酸カリウム二水和物
LC/MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
MeOH メタノール
NMM N−メチルモルホリン
PyBop 1−ベンゾトリアゾリルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
PyBrop ブロモトリスピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Rt 保持時間
TDBTU O−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトフルオロボレート
TFA トリフルオロ酢酸
TOTU O−((エトキシカルボニル)シアノメチレンイミノ)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
RT 室温(21℃〜24℃)
【0052】
実施例1
(2R,3R)−N−(1−アミノイソキノリン−6−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化8】

【0053】
工程1:
[6−((2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−3−p−トリルカルバモイルプロピオニルアミノ)イソキノリン−1−イル]−N−ジカルボキシアミノ第三級−ブチルエステル
【化9】

NMM(0.037ml、0.334mmol)を、DMF(1.5ml)中の(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−N−p−トリル酒石酸(26.6mg、0.111mmol)、(6−アミノイソキノリン−1−イル)−N−ジカルボキシアミノtert−ブチルエステル(40.0mg、0.111mmol)((6−アミノイソキノリン−1−イル)−N−ジカルボキシアミノtert−ブチルエステルはWO2004/072101、108頁に記載される方法と同様にして得た)、およびHOAt(15.1mg、0.111mmol)の溶液に添加し、そして混合物を10分間撹拌した。PyBrop(52mg、0.111mmol)を添加した後、反応混合物をRTで42時間撹拌した。反応混合物を濾過し、そして分取用HPLCにより精製した。生成物の精製画分を凍結乾燥させた。白色固体(4mg)を得た。
収率:6% LC/MS(方法D)(M+H)+581
【0054】
工程2:
(2R,3R)−N−(1−アミノイソキノリン−6−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
TFA(1ml)を工程1から得られた化合物(4mg、6.9μmol)のDCM(3ml)溶液に添加し、そして混合物をRTで2時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸留し、残留物をMeOHおよび水に溶解し、続いて溶液を一晩凍結乾燥させ、そして白色固体として表題化合物(4mg)を得た。純度 85%。
LC/MS(方法B)380.15(Rt=1.05分、97%)
1H NMR(500MHz,DMSO−d6)δ(ppm):1.73(不純物),2.26(s,3H),3.01(不純物),4.51(dd,1H),4.57(dd,1H),6.05(d,1H),6.22(d,1H),7.13(d,2H),7.18(d,1H),7.62(m,3H),8.04(dd,1H),8.48(q,2H),8.76(s,2H),9.55(s,1H),10.29(s,1H),12.71(s,1H)
【0055】
実施例2:
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化10】

【0056】
工程1:
(2R,3R)−2−アミノ−6−(2,3−ジヒドロキシ−3−p−トリルカルバモイルプロピオニルアミノ)−ベンゾイミダゾール−1−カルボキシアミノtert−ブチルエステル
【化11】

(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−N−p−トリル酒石酸(119mg、0.5mmol)およびtert−ブチル2,5−ジアミノベンゾイミダゾール−1−カルボキシレート(124mg、0.5mmol)(tert−ブチル2,5−ジアミノ−N−Boc−ベンゾイミダゾール−1−カルボキシレートを国際出願WO2002/042273に従って製造した)をDMF(5ml)に溶解した。HOAt(74mg、0.55mmol)、PyBrop(180mg、0.55mmol)およびDIPEA(193mg、1.5mmol)をDCM(1.5ml)およびDMF(1.5ml)の混合物に溶解し、そして反応混合物に添加した。一晩撹拌した後、混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。油状物として表題化合物を得た。
LC/MS(方法D)(M+H−tBu)+414
【0057】
工程2:
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
工程1からの残留物をDCM(2ml)およびTFA(2ml)の混合物に溶解した。RTで2時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去し、そしてHPLCを使用して精製した。白色固体として表題化合物(90mg、収率:37%)を得た。
LC/MS(方法A)370.15(Rt=1.0分、100%)
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):2.23(s,3H),4.47(t,2H),6.00(dd,2H),7.12(d,2H),7.28(s,1H),7.48(d,1H),7.62(d,2H),8.03(s,1H),8.39(s br,2H),9.51(s,1H),9.78(s,1H)
【0058】
実施例3:
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−シクロヘキシルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−タルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化12】

【0059】
工程1:
(2R,3R)−2,3−ジアセトキシ−N−(4−シクロヘキシルフェニル)酒石酸
【化13】

(+)−ジアセチル−L−酒石酸無水物(216mg、1mmol)および4−シクロヘキシル−フェニルアミン(263mg、1.5mmol)およびN−メチルモルホリン(200μl)をDMF(5ml)に溶解し、そして混合物をRTで3時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を1 N HCl溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。油状物として表題化合物(430mg)を得た (収率 約100%)。LC/MS(方法D)(M+H)+392
【0060】
工程2:
tert−ブチル(2R,3R)−2−アミノ−6−[2,3−ジアセトキシ−3−(4−シクロヘキシルフェニルカルバモイル)−プロピオニルアミノ]ベンゾイミダゾール−1−カルボキシレート
【化14】

工程1から得られた化合物(118mg、0.3mmol)およびN−メチルモルホリン(110μl)を0℃でDMF(2ml)に溶解した。TDBTU(115mg、0.33mmol)を添加し、そして混合物をさらに30分間撹拌した。tert−ブチル2,5−ジアミノベンゾイミダゾール−1−カルボキシレート(82mg、0.33mmol)を添加し、そして混合物を0℃で4時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。油状物として表題化合物を得た。LC/MS (方法D)(M+H)+622
【0061】
工程3:
(2R,3R)−2−アセトキシ−2−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イルカルバモイル)−1−(4−シクロヘキシル−フェニルカルバモイル)酢酸エチル;トリフルオロ酢酸との化合物
【化15】

工程2からの化合物をDCM(3ml)およびTFA(1.5ml)に溶解し、そして混合物をRTで2時間撹拌した。油状物として表題化合物を得た。
【0062】
工程4:
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−シクロヘキシルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−タルタルアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
工程3からの油状物をメタノール(3ml)に溶解し、そして5 N NaOH(500μl)で一晩処理した。溶媒を減圧下で蒸留し、そして残留物をTFA(2ml)に溶解し、そしてエバポレートした。残留物をHPLCにより精製し、白色固体として表題化合物(7mg)を得た。LC/MS(方法A)437.21(Rt=1.39分、100%)
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):1.16−1.42(m,5H),1.68−1.83(m,5H),4.49(dd,2H),5.99(dd,2H),7.17(d,2H),7.25(d br,1H),7.45(d,1H),7.62(d,2H),8.02(s br,1H),8.36(s br,2H),9.53(s,1H),9.78(s,1H)
【0063】
実施例4:
(2R,3R)−N−(4−アミノメチルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化16】

【0064】
工程1:
tert−ブチル[4−((2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−3−p−トリルカルバモイルプロピオニルアミノ)ベンジル]カルバメート
【化17】

実施例1、工程1と同様にして、tert−ブチル(4−アミノベンジル)カルバメート(33mg、0.15mmol)および(2R,3R)−2,3−ジヒドロキシ−N−p−トリル−コハク酸(36mg、0.15mmol)をDCM(1ml)およびDMF(1ml)に溶解し、そしてDIPEA(78μl、0.45mmol)、HOAt(22.5mg、0.165mmol)およびPyBrop(76.9mg、0.165mmol)で連続的に処理した。さらに後処理することなく、得られたバッチを濾過し、そしてHPLCにより精製した。生成物含有画分を凍結乾燥させた。
【0065】
工程2:
(2R,3R)−N−(4−アミノメチルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化18】

工程1からの生成物を実施例1、工程2と同様に反応させ、次いで混合物を濃縮し、水で処理し、そして凍結乾燥させた。
収率:15.5mg(2段階で23%)。LC/MS(方法A)M−NH2=327.36(Rt=0.88分、93%)
1H NMR(500MHz,DMSO−d6)δ(ppm):2.25(s,3H),3.98(s br,2H),4.49(m,2H),5.99(d,1H),6.09(d,1H),7.12(d,2H),7.39(d,2H),7.62(d,2H),7.79(d,2H),8.12(s br,3H),9.51(s,1H),9.72(s,1H)。
【0066】
実施例5:
(2R,3R)−N−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化19】

【0067】
工程1:
(2R,3R)−2,3−ジアセトキシ−N−(4−カルバムイミドイルフェニル)コハク酸;トリフルオロ酢酸との化合物
【化20】

4−アミノベンズアミジン二塩酸塩(500mg、2.39mmol)および(3R,4R)−4−アセトキシ−2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イルアセテート(519mg、2.40mmol)をピリジン(2ml)およびDMF(2ml)に溶解し、そして4−DMAP(25mg)で処理した。次いで、混合物を100℃で1時間加熱した。混合物を濾過し、そしてHPLCを使用して精製した。生成物含有画分を合わせて、そして凍結乾燥させた。
収率:130mg(12%)。
【0068】
工程2:
(2R,3R)−N−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド;トリフルオロ酢酸との化合物
【化21】

工程1で得られた誘導体(52mg、0.11mmol)をDMF(1ml)に溶解し、続いてトルイジン(15mg、0.13mmol)、PyBrop(62mg、0.13mmol)、HOAt(18mg、0.13mmol)およびNMM(65μl、0.58mmol)で処理した。RTで1時間撹拌した後、MeOH(2ml)およびナトリウムメトキシド(90mg)を添加した。変換が完了した後、混合物を濾過し、そしてHPLCにより精製した。
収率:19mg(2段階で36%)。
LC/MS(方法A)357.43(Rt=0.88分、100%)
1H NMR(500MHz,DMSO−d6)δ(ppm):2.26(s,3H),4.48(m,1H),4.53(m,1H),6.01(m,1H),6.16(m,1H),7.13(d,2H),7.63(d,2H),7.81(d,2H),8.01(d,2H),8.86(s br,2H),9.20(s br,2H),9.53(s,1H),10.13(s,1H)。
【0069】
以下の表1の化合物を上記の実施例と同様の方法で製造した。
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
薬理学的実施例
第IXa因子の定量法
基質PEFA 3107(Pentapharm/Loxo;via S.Black GmbH,Baumstrasse 41,47198 Duisburg,Germany;Pr.No.095−20)および第IXa因子(Calbiochem,Merck KGaAmarkets Calbiochem in Germany,Life Science & Analytics,64293 Darmstadt;Pr.NO.233290)を使用して、FIXaの酵素活性の阻害について、実施例からの製造物質を試験した。この方法において、試験緩衝液(50mM α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)、100mM NaCl、5mM CaCl2、0.1% ウシ血清アルブミン、pH 7.4)(28μl)および第IXa因子(277nM試験バッチの最終濃度)(10μl)を各試験物質の10mM ジメチルスルホキシド溶液(2μl)に添加し、そして混合物を96ハーフウェルマイクロタイタープレート中室温で15分間インキュベートした。基質(水中1mM ストック溶液)(10μl)を添加することにより酵素反応を開始した。反応の時間的経過をマイクロタイタープレートリーダー(SpectraMax plus 384;Molecular Devices)中、405nmで15分間モニターした。ソフトウェアGrafit 4(Erithacus Software,UK)を用いて、試験物質の希釈系列の平均値(二重測定)からIC50を計算した。Cheng Prusoff式Ki=IC50/(1+(S/Km)(ここで、Sは試験における試験物質の濃度であり、そしてKmはMichaelis−Menten定数である)に従って、阻害定数(Ki)を計算した。表2に結果を示す。
【0072】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物、ならびに/または式Iの化合物の全ての立体異性体形態および/もしくは任意の比率のそれらの形態の混合物、および/もしくは式Iの化合物の生理的に許容される塩。
式中、
R1が、1)−(C6−C14)−アリール−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてアリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C3−C12)−シクロアルキル−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてシクロアルキルは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)4〜15員のHet−Z(ここで、Zは塩基性窒素含有基であり、そしてHetは非置換であるか、またはさらにTで一、二または三置換されている)であり、
R2およびR4が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C0−C4)−アルキレン−Het(ここで、Hetは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、2つのアリールは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
4)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C3−C12)−シクロアルキル(ここで、アリールおよびシクロアルキルは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
5)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−Het(ここで、アリールおよびHetは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
6)−(C0−C4)−アルキレン−Het−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールおよびHetは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)または
7)−(C0−C4)−アルキレン−Het−Q−Het(ここで、2つのHet基は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)であり、
Qが共有結合、−(C1−C4)−アルキレン、−NH−、−N((C1−C4)−アルキル)−、−O−、−SO2−または−S−であり、
T が、1)ハロゲン、
2)−(C1−C6)−アルキル(ここで、アルキルは 非置換であるか、または独立して、−(C1−C3)−フルオロアルキル、−N−C(O)−OHまたは−N−C(O)−(C1−C4)−アルキルで一、二または三置換されている)、
3)−(C1−C3)−フルオロアルキル、
4)−(C3−C8)−シクロアルキル、
5)−OH、
6)−O−(C1−C4)−アルキル、
7)−O−(C1−C3)−フルオロアルキル、
8)−NO2
9)−CN、
10)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子、−(C3−C8)−シクロアルキル、ハロゲンまたは−(C1−C6)−アルキルである)、
11)−C(O)−NH−R10、
12)−NH−C(O)−R10、
13)−NH−SO2−R10、
14)−SO2−(C1−C4)−アルキル、
15)−SO2−NH−R10、
16)−SO2−(C1−C3)−フルオロアルキル、
17)−S−(C1−C4)−アルキル、または
18)−S−(C1−C3)−フルオロアルキルであり、
R5およびR6が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子、−C(O)−R12、−C(O)−O−R12、−C(O)−NH−R12または−(C1−C4)−アルキル(ここで、R12は、−(C1−C6)−アルキル、−(C3−C8)−シクロアルキル、−(C6−C14)−アリールまたはHetである)である。
【請求項2】
R1が、1)−(C6−C14)−アリール−Z(ここで、アリールは、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され、そしてアリールは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されており、そしてZは、アミノ、アミノメチレン、アミジノ、グアニジノ、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピリジニルまたはアミノピリジニルである)、または
2)4〜15員のHet−Z(ここで、Hetは以下:アクリジニル、アゼピニル、アゼチジニル、ベンゾイミダゾリニル、ベンゾイミダゾリル、べンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、β−カルボリニル、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ジヒドロフラン[2,3−b]−テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ジオキソリル、ジオキサニル、ジオキソレニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソキノリニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリジニル、2−イソチアゾリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、2−イソオキサゾリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、オキソチオラニル、フェナントリジニル、フェナントレニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリドチオフェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロピリジニル、6H−1,2,5−チアダジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアジニル、チアゾリル、チエニル、チエノイミダゾリル、チエノオキサゾリル、チエノピリジニル、チエノピロリル、チエノチアゾリル、チエノチオフェニル、チオモルホリニル、チオピラニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルまたはキサンテニルからなる群から選択され、そしてHetは非置換であるか、またはTで一、二または三置換されており、そしてZは上記定義の通りである)であり、
R2およびR4が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルであり、
R3が、1)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール(ここで、アリールは、上記定義の通りであり、そして非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
2)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C6−C14)−アリール(ここで、2つのアリールは、各場合において、互いに独立して、上記定義の通りであり、そして各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、
3)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−(C3−C12)−シクロアルキル(ここで、アリールは、上記定義の通りであり、そしてシクロアルキルは、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)、または
4)−(C0−C4)−アルキレン−(C6−C14)−アリール−Q−Het(ここで、アリールおよびHetは、上記定義の通りであり、そして各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一、二または三置換されている)であり、
Qが、共有結合、−(C1−C4)−アルキレン、−NH−、−N((C1−C4)−アルキル)−または−O−であり、
Tが、1)ハロゲン、
2)−(C1−C6)−アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、または独立して、−(C1−C3)−フルオロアルキル、−N−C(O)−OHまたは−N−C(O)−(C1−C4)−アルキルで一、二または三置換されている)、
3)−(C1−C3)−フルオロアルキル、
4)−(C3−C6)−シクロアルキル、
5)−OH、
6)−O−(C1−C4)−アルキル、
7)−O−(C1−C3)−フルオロアルキル、
8)−NO2
9)−CN、
10)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子、−(C3−C6)−シクロアルキル、ハロゲンまたは−(C1−C6)−アルキルである)、
11)−C(O)−NH−R10、
12)−NH−C(O)−R10、
13)−NH−SO2−R10、
14)−SO2−(C1−C4)−アルキル、
15)−SO2−NH−R10、
16)−SO2−(C1−C3)−フルオロアルキル、
17)−S−(C1−C4)−アルキル、または
18)−S−(C1−C3)−フルオロアルキルであり、
R5およびR6が、同一であるか、または異なり、そして互いに独立して、水素原子、−C(O)−R12、−C(O)−O−R12、−C(O)−NH−R12または−(C1−C4)−アルキル(ここで、R12は、−(C1−C6)−アルキル、−(C3−C8)−シクロアルキル、−(C6−C14)−アリールまたはHetであり、そしてアリールおよびHetは、上記定義の通りである)である、
請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
R1が、カルバムイミドイルフェニル、アミノメチルフェニルまたはHet−Z(ここでHetは、ベンゾイミダゾリルおよびイソキノリニルからなる群から選択され、そしてZはアミノまたはアミジノである)であり、
R2およびR4が、各場合において、水素原子であり、
R3が、1)フェニル(ここで、フェニルは、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)、
2)−フェニル−Q−フェニル(ここで、2つのフェニル基は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)、
3)フェニル−Q−(C3−C6)−シクロアルキル(ここで、フェニルおよびシクロアルキルは、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)、または
4)フェニル−Q−Het−2(ここで、Het−2は、以下:キノリニル、キノキサリニル、フラニル、インドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピペリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チエノピロリルまたはチエノチオフェニルからなる群から選択され、そしてフェニルおよびHet−2は、各場合において、互いに独立して、非置換であるか、またはTで一または二置換されている)であり、
Qが、共有結合、−CH2−、−N(CH3)−または−O−であり、
Tが、1)F、ClまたはBr、
2)−(C1−C4)−アルキル(ここで、アルキルは、非置換であるか、または独立して、−CF3または−N−C(O)−CH3で一または二置換されている)、
3)−CF3
4)−O−(C1−C4)−アルキル、
5)−O−CF3
6)−NO2
7)−N(R10)(R11)(ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素原子または−(C1−C4)−アルキルである)または
8)−SO2−CH3であり、そして
R5およびR6が、各場合において、水素原子である、
請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
化合物が、
(2R,3R)−N−(1−アミノイソキノリン−6−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−シクロヘキシルフェニル)−2,3−ジヒドロキシタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(4−アミノメチルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド、
(2R,3R)−N−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−p−トリルスクシンアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロキシタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−N’−(4−クロロフェニル)−2,3−ジヒドロキシタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−フェニルタルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−ニトロフェニル)−タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−イソプロピルフェニル)タルタルアミド、
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−ピペリジン−1−イルフェニル)タルタルアミド、または
(2R,3R)−N−(2−アミノ−3H−ベンゾイミダゾール−5−イル)−2,3−ジヒドロキシ−N’−(4−フェノキシフェニル)タルタルアミド
である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物を製造する方法であって、
a)式II:
【化2】

の化合物を化合物NH(R3)(R4)と反応させ、式III:
【化3】

(ここで、基R3およびR4は式Iで定義される通りである)の化合物を得、式IIIの化合物を化合物NH(R2)(R1)−Bocと反応させ、式IV:
【化4】

(ここで、基R1、R2、R3およびR4は式Iで定義される通りであり、Bocは保護基ブトキシカルボニルである)の化合物を得、続いて反応させ、式Iの化合物を得ること、または
b)式IV:
【化5】

(ここで、基R3、R4、R5およびR6は式Iで定義された通りである)の化合物を化合物NH(R2)(R1)−Bocと反応させ、式V:
【化6】

(ここで、基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、式Iで定義された通りであり、Bocは保護基ブトキシカルボニルである)の化合物を得、そして続いて反応させ、式Iの化合物を得ること、または
c)方法a)またはb)に従って製造された式Iの化合物を遊離形態で単離するか、または生理学的に許容されない塩からそれを遊離させるか、または酸性基または塩基性基が存在する場合、生理学的に許容される塩に変換すること、または
d)方法a)またはb)に従って製造された式Iの化合物またはその化学構造のために鏡像異性形態またはジアステレオマー形態で存在する式Iの適切な前駆体を、鏡像異性的に純粋な酸または塩基との塩形成、キラル固定相でのクロマトグラフィーまたはアミノ酸のようなキラルな鏡像異性的に純粋な化合物による誘導体化、このようにして得たジアステレオマーの分離、およびキラル補助基の除去によって純粋な鏡像異性体またはジアステレオマーに分離すること
を含む、上記方法。
【請求項6】
薬学的に適切でかつ生理学的に許容されるビヒクル、添加剤、および/または他の活性物質および助剤と一緒に、少なくとも1つの請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の有効量を含む薬剤。
【請求項7】
血栓症、塞栓症、凝固能亢進または線維化に伴って起こる全ての疾患を予防、二次予防および治療する薬剤を製造するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
疾患が、心筋梗塞、狭心症および急性冠症候群の他の形態、卒中、末梢血管疾患、深部静脈血栓症、肺塞栓症、心不整脈によって引き起こされる塞栓性または血栓性の事象、血管再開通術および血管形成術、およびステント移植およびバイパス術のような同様の介入後の再狭窄のような心臓血管の事象、または膝関節および股関節の手術のような外科的介入後の血栓症の危険性の低下、または播種性血管内凝固症候群、敗血症、および炎症に伴って起こる他の血管内事象、アテローム性動脈硬化症、糖尿病および代謝症候群、およびそれらの続発症、腫瘍増殖および腫瘍転移、関節リウマチおよび関節症のような炎症性および変形性の関節疾患、フィブリン沈着のような止血系の障害、慢性閉塞性肺疾患のような肺の線維化、成人呼吸窮迫症候群、または目の手術後の目におけるフィブリン沈着、または瘢痕形成の予防および/または治療である、請求項7に記載の使用。

【公表番号】特表2010−503624(P2010−503624A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527719(P2009−527719)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007612
【国際公開番号】WO2008/031508
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】