説明

処理液供給ノズル及び基板処理装置

【課題】 基板が大型化した場合でも、特別な駆動源を用いることなく、基板表面を満遍なく洗浄することが可能な処理液供給ノズルを提供する。
【解決手段】 下端部にスリット状吐出口14が形成された処理液供給ノズル2において、この処理液供給ノズル2は2つの半体(2a,2b)を接合することでスリット状吐出口14に連通する処理液の供給路3が形成され、少なくとも一方の半体の突き合わせ面(2a)には供給路3を流下する処理液を左右に分配する凸部(8,9,10)を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板や半導体ウェーハ等の基板に対し、洗浄液や現像液等の処理液を供給する処理液供給ノズル、およびこの処理液供給ノズルを備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大画面高精細なTFT−LCD(液晶表示装置)の需要が、パソコン、テレビジョン、携帯電話などの分野で高まっている。上記LCD(液晶表示装置)の製作工程の1つとして、例えばTFTアレイ工程があるが、この工程においてガラス基板表面に微細なパーティクル(例えば、ごみ、埃、異物等)が存在すると歩留り低下の原因となる。
【0003】
そこで、ガラス基板表面の微細なパーティクルを洗浄によって除去する方法として特許文献1の方法が知られている。この特許文献1には、図6に示すように、
ガラス基板の下面から超音波を印加することでガラス基板表面に付着されていた微細なパーティクルを表面から浮き上がらせ、この浮き上がったパーティクルを整流されたイオン水によって洗い流す方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−013960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】


しかしながら、このような方法は、超音波発生装置を設けなければならず、コスト的に高価になることが予想される。また、例えば基板が大型化された場合、部分的に超音波が弱くなる箇所が生じ、基板を満遍なく洗浄することが困難になることが予想される。
【0006】
上述した点に鑑み、本発明は、基板が大型化された場合でも、特別な駆動源を用いることなく、基板表面を満遍なく洗浄することが可能な処理液供給ノズル及びこの処理液供給ノズルを備えた基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る処理液供給ノズルは、2つの半体を接合することで下端部に開口するスリット状吐出口に連通する処理液の供給路が形成され、少なくとも一方の半体の突き合わせ面には供給路を流下する処理液を左右に分配する凸部が設けられた構成とする。
【0008】
本発明に係る処理液供給ノズルによれば、供給路に設けられた凸部によって流下する処理液が左右に分岐する。この分岐は左右均等に行われず、左右の一方の流量が多くなり他方の流量が少なくなる。すると、少なくなった側の圧が低下しこの圧を補うように一方の流量が他方に流れる。この結果、他方の流量が多くなり一方の流量が少なくなる。
ノズルから処理液を噴出している間は上記の現象が繰り返し生じるため、ノズルのスリット状吐出口からカーテン状に流下する処理液を、左右に振られるように基板上へ噴出させることができる。
従って、実際にこのような処理液供給ノズルを備えた基板処理装置を構成し、処理液として例えば洗浄液を流下させた場合は、基板表面を満遍なく洗浄することができる。
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、上記処理液供給ノズルが搬送路の上方に配置され、処理液供給ノズルが、基板の幅方向と処理液供給ノズルのスリット状吐出口とが平行に配置されている構成とする。
【0010】
本発明に係る基板処理装置によれば、上記処理液供給ノズルが搬送路の上方に配置され、処理液供給ノズルが、基板の幅方向と処理液供給ノズルのスリット状吐出口とが平行に配置されているので、処理液として例えば洗浄液を流下させた場合は、基板表面を満遍なく洗浄することができ、基板上のパーティクルの洗浄効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の処理液供給ノズルによれば、処理液を、所定のサイクルで、スリット状吐出口の長さ方向に左右に振られるように噴出させることが可能になる。
本発明の基板処理装置によれば、このような処理液供給ノズルを有するので、基板上を満遍なく洗浄することができ、基板表面の洗浄効果を高めることが可能になる。
従って、基板が大型化された場合においても、例えば洗浄処理や現像処理に好適な処理液供給ノズル及び基板処理装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る処理液供給ノズルを備えた基板処理装置の一実施の形態を示す側面図である。
図2は、一方のノズル半体の突き合わせ面を示す図であり、図3(a)及び(b)は、図2の要部拡大図である。
図4(a)及び(b)は、ノズルから噴出される処理液の振れ方向を説明する図であり、図5は、搬送される基板に対して、ノズルから噴出される処理液の振れ方向を説明する図である。
なお、以下に示す実施の形態では、本発明を、洗浄液を基板上へ噴出させる洗浄液供給ノズル及びこの洗浄液供給ノズルを備えた基板洗浄装置に適用した場合を説明する。
【0013】
本実施の形態に係る基板洗浄装置15は、図1に示すように、ガラス基板Gを搬送する複数のローラ1と、これらローラ1の上方において、基板Gに対して垂直に配置された洗浄液を供給する洗浄液供給ノズル2を備えている。
このような構成の基板洗浄装置15では、ガラス基板Gが搬送されると、洗浄液供給ノズル2からガラス基板G上に供給された洗浄液は、相対的にガラス基板Gの搬送方向とは逆方向に向かって流れる。
なお、ガラス基板Gを搬送せずに洗浄液供給ノズル2を移動させることも可能である。
【0014】
洗浄液供給ノズル2は、図1〜図3に示すように、ノズル半体2a及びノズル半体2bとが突き合わされて接合された構成である。そして、一方のノズル半体2aと他方のノズル半体2bとの突き合わせ面には、洗浄液の供給路3が形成されており、この洗浄液の供給路3はノズル上部で横方向に延びる水平方向供給路4と、この水平方向供給路4から下方に分岐した複数の上下方向供給路5からなる。
水平方向供給路4には、外部より洗浄液が水平方向供給路4内に供給される供給穴7が所定間隔で形成されており、水平方向供給路4と上下方向供給路5との間には絞り部6が形成されている。
【0015】
そして、本実施の形態においては特に、少なくとも一方のノズル半体の突き合わせ面に、供給路を流下する処理液を左右に分配する凸部が設けられている。
具体的には、ノズル半体2aの突き合わせ面の、水平方向供給路4から下方に分岐した複数の上下方向供給路5において、例えば、上部に凸部(上部凸部)8 が形成され、中間部に凸部(中間凸部)9が形成され、下部に凸部(下部凸部)10 が形成されている。
【0016】
中間凸部9は左右にそれぞれ一対に形成されており、中間凸部9と上部凸部8 との間には、清浄な乾燥エアが吹き込まれるエア供給穴11が開口されている。また、各凸部(8、9、10)は、所定間隔をあけて形成されており、下部凸部10の左右に形成される流路12及び流路13は、出っ張り16によって絞られている。
【0017】
このように、凸部(8、9、10)が形成された一方の突き合わせ面2aと、凸部が形成されていない他方の突き合わせ面2bとが突き合わされることにより、洗浄液供給ノズル2が構成される。
【0018】
次に、実際に洗浄液が水平方向供給路4内へ供給され、ガラス基板G表面へ噴出されるまでの流れを詳細に説明する。
先ず、供給穴7から供給された洗浄液は、水平方向供給路4内に充満し、絞り部6を介して上下方向供給路5内に入る。
【0019】
上下方向供給路5内に入った洗浄液は上部凸部8によって左右に分けられる。この後、左右に分けられた洗浄液には、エア供給穴11からエア(好ましくは
乾燥した冷却エア)が吹き込まれるため、洗浄液の流速はこのエアによって加速される。
【0020】
そして、上記エアが含まれた洗浄液は、中間凸部9,9の部分で大きく左右に再度分けられ、更に下部凸部10の左右に形成された流路12,13を介して、ノズル下端に形成されたスリット状吐出口14からガラス基板G表面に向けて噴出する。
【0021】
ここで、流路12,13を通過する洗浄液について注目する。
流路12,13を通過する洗浄液の方向と流量は、上部凸部8、中間凸部9及び下部凸部10の形状によって制御され、流路12,13の断面積を等しくしてもアンバランスが生じる。
【0022】
例えば、図3aでは、流路12の流量が流路13の流量よりも多く、左側に振れている(図中矢印X参照)。この状態では流路13の圧力が流路12の圧力よりも低くなっているため、これを是正するために今度は流路13の流量が多くなる。この結果、図3bに示すように右側に振れる(図中矢印Y参照)。
【0023】
このような現象が連続して発生することで、洗浄液供給ノズル2からガラス基板G表面に噴出される洗浄液は、図4a及び図4bに示す状態を繰り返すことになる。即ち、洗浄液供給ノズル2からガラス基板G表面に噴出される洗浄液は、スリット状吐出口14に沿って左右に往復運動することになる。
【0024】
また、この際ガラス基板Gはスリット状吐出口14の長さ方向と直交する方向に搬送されているので、図5に示すように、洗浄液供給ノズル2からの洗浄液はガラス基板Gの搬送方向と反対方向で且つ左右に振れながら噴出されることになり(図中矢印C参照)、ガラス基板Gの表面に付着している微細なパーティクルは効果的に除去される。
即ち、例えば、スリット状吐出口14よりガラス基板Gの表面に単に洗浄液を噴出させた場合は、図5に示すように、基板Gの搬送方向(図中矢印A参照)に対して、同じライン軸(X軸)上の洗浄液の流れ(図中矢印B参照)のみの力により洗浄を行うことになる。
しかしながら、本実施の形態の洗浄装置15を用いた場合では、図5に示すように、ガラス基板Gの搬送方向(図中矢印A参照)に対して、クロスするライン軸(Y軸)上の洗浄液の流れ(図中矢印C参照)の力により洗浄を行うことができる。
このため、このような均一に交差する洗浄液の力により、同じライン軸(X軸)上の洗浄液の流れ(図中矢印B参照)のみの力により洗浄を行う場合と比較して、洗浄効果を大幅に向上させることができる。
【0025】
本実施の形態によれば、上述したように、洗浄液供給ノズル2からガラス基板G表面に噴出される洗浄液を、スリット状吐出口14に沿って左右に往復運動させることができる。
これにより、このような洗浄液供給ノズル2を備える基板洗浄装置15を構成し、実際に処理液として洗浄液を流下させた場合は、上述したような洗浄液の左右への往復運動により、基板上に付着していたパーティクルの洗浄効果(除去効果)を、例えば従来の基板の下面から超音波振動を印加する場合と比較して更に高めることができる。
また、例えば基板が大型化されても、例えば部分的に超音波が弱くなるようなこともなく、上述したような洗浄液の左右への往復運動により、基板上に付着していたパーティクルを満遍なく洗浄することができる。
また、例えば超音波発振機を設ける必要もなく、コストを安価にすることもできる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、上下方向供給路5の途中にエア供給口11が開口され、実際に洗浄液をガラス基板G上に噴出させる際に、エア供給口11よりエアを供給するようにしたので、処理液の流速が加速され、洗浄効果を大幅に向上させることができる。
【0027】
上述した実施の形態では、図3に示したように、上下方向供給路5内に設ける凸部を、上部、中間部及び下部の3段階に分けた場合を説明したが、凸部の配列はこれに限定されなく様々な形態が考えられる。
【0028】
また、上述した実施の形態では、一方の突き合わせ面2aに凸部を設けた場合を説明したが、一方のみではなく、両方の突き合わせ面2a及び2bに凸部を形成しても構わない。
【0029】
また、上述した実施の形態では、基板上のパーティクルの除去方法として、洗浄液を用いた場合を説明したが、例えば洗浄液を用いずに、気体(エア)のみで行う方法も考えられる。
この場合は、上述した洗浄液供給ノズル2において、例えば、水平方向供給路4の供給穴7から気体を導入する構成とすることができる。
これにより、上述したような洗浄液の流れと同様にして、気体がガラス基板G表面に噴出され、基板G上の微細なパーティクルを除去することができる。
なお、気体(エア)としてドライエアや、オゾンエア・ガス関連を用いることにより微細なパーティクルの洗浄力を向上させることができる。また、気体としてイオン化エアを用いることにより除電機能を付加させることもできる。
【0030】
また、上述した実施の形態では、垂直に配置された処理液供給ノズル2を用いた場合を説明したが、処理液供給ノズル2としてはこのような構成に限定されず、その上部が前方に倒れるように斜めに配置された処理液供給ノズル2を用いることもできる。
この場合は、洗浄液を基板Gの搬送方向と反対方向にスムーズに流すことができる。
【0031】
また、上述した実施の形態では、洗浄液にエアを混合して流速を加速させたが、エアを混入させないようにしても構わない。この場合であっても、洗浄液供給ノズル2からガラス基板G表面に噴出される洗浄液を、スリット状吐出口14に沿って左右に往復運動させることができ、基板上に付着していたパーティクルの洗浄効果を、例えば従来の基板の下面から超音波振動を印加する場合と比較して高めることができる。
また、洗浄液の流量を多くすることで、洗浄液の往復運動の流速(速さ)をあげることもでき、このようにして洗浄力を向上させることもできる。
【0032】
また、上述した実施の形態では、処理液として洗浄液を用いた場合を説明したが、用いられる用途によっては現像液を用いることもできる。この場合は、基板上に形成された膜等の均一な現像処理が可能となる。
【0033】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の処理液供給ノズルを備えた基板処理装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】一方のノズル半体の突き合わせ面を示す図である。
【図3】図2の要部の拡大図である。
【図4】ノズルから噴出される処理液の振れ方向を説明する図である。
【図5】搬送される基板に対して、ノズルから噴出される処理液の振れ方向を説明する図である。
【図6】洗浄方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・ローラ、2・・・洗浄液供給ノズル、2a,2b・・・ノズル半体、3・・・洗浄液の供給路、4・・・水平方向供給路、5・・・上下方向供給路、6・・・絞り部、7・・・洗浄液供給穴、8・・・上部凸部、9・・・中間凸部、10・・・下部凸部、11・・・エア供給穴、12,13・・・流路、14・・・スリット状吐出口、15・・・基板洗浄装置、16・・・出っ張り、G…ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にスリット状吐出口が形成された処理液供給ノズルにおいて、該処理液供給ノズルは2つの半体を接合することで前記スリット状吐出口に連通する処理液の供給路が形成され、少なくとも一方の半体の突き合わせ面には前記供給路を流下する処理液を左右に分配する凸部が設けられていることを特徴とする処理液供給ノズル。
【請求項2】
前記供給路は、処理液の供給口が開口する水平方向供給路と、該水平方向供給路から下方に分岐された複数の上下方向供給路からなり、該上下方向供給路に前記凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理液供給ノズル。
【請求項3】
前記供給路の途中には、エア供給口が開口されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の処理液供給ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の処理液供給ノズルが搬送路の上方に配置された基板処理装置であって、前記基板の幅方向と前記処理液供給ノズルのスリット状吐出口とが平行に配置されていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−54695(P2007−54695A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240527(P2005−240527)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】