説明

分光器、及びこれを備えている顕微分光装置

【課題】 回折格子の偏光依存性による不具合を回避しつつ、大型化及びコスト増加を抑える。
【解決手段】 入力ファイバ1からの光を第1光路C1及び第2光路C2の2つの光路に分け、且つ各光路C1,C2の光を互いに異なる方向に偏光させる偏光ビームスプリッタ板3と、第1光路C1中の光を第2光路C2中の光の偏光方向に揃えるフレネルロム1/2波長板5と、第1光路C1を進んだ光が回折格子6に入射する入射領域に対して、第2光路2Cを進んだ光が回折格子6に入射する入射領域が重なり合うように、第2光路C2を折り曲げる平面鏡4と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部からの光を分光する分光素子を備えている分光器、及びこれを備えている顕微分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分光器用の分光素子として、回折格子が広く用いられている。この回折格子は、偏光依存性があり、入射光の電場振動方向が回折格子の刻線に平行なP偏光に比べて、回折格子の刻線に垂直なS偏光の方が、一般的に回折効率が高いとされている。特に、入射光の波長が回折格子の周期(刻線のピッチ)と同程度以上の長波長帯域では、上記傾向が顕著に現われる。これは、言い換えると、回折格子の周期が小さいものほど上記傾向が顕著に現われ、偏光依存性が高くなるということであり、高分解能の高い回折格子を用いる場合には、考慮すべき点である。
【0003】
そこで、偏光方向の相違による回折効率の差異を解消するために、以下の特許文献1に開示されている技術がある。
【0004】
この技術は、回折格子への入射光の偏光方向を揃えるものである。具体的には、入射ポートからの光を偏光ビームスプリッタで、P偏光の光とS偏光の光とに分け、P偏光の光を1/2板でS偏光にし、S偏光の光束と、P偏光からS偏光に変えられた光束を互いに平行に回折格子に導く技術である。
【0005】
【特許文献1】US 6,498,872 B2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載の技術では、回折格子への入射光の偏光方向が揃うので、回折格子の偏光依存性による不具合を回避できるものの、回折格子には、S偏光の光と、P偏光からS偏光に変えられた光とが、それぞれ、異なる領域に入射するため、回折格子が大型化し、結果として、装置の大型化及びコスト増加を招いてしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目し、分光素子の偏光依存性による不具合を回避しつつ、大型化及びコスト増加を抑えることができる分光器、及びこれを備えている顕微分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明の分光器は、
入力部と、該入力部からの光を分光する分光素子と、該分光素子で分光された光を出射する出力部又は該分光素子で分光された光を受光する受光部と、を備えている分光器において、
前記入力部からの光を第1光路及び第2光路の2つの光路に分け、且つ各光路の光を互いに異なる方向に偏光させる偏光分離素子と、前記第1光路中に配置され、該第1光路中の光を前記第2光路中の光の偏光方向に揃える偏光回転素子と、前記第1光路と前記第2光路のうちの一方の光路中に配置され、他方の光路を進んだ光が前記分光素子に入射する入射領域に対して、該一方の光路中を進んだ光が該分光素子に入射する入射領域の少なくとも一部が重なり合うように、該一方の光路の向きを変える光路偏向素子と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明の分光器は、
請求項1に記載の分光器において、
前記分光器は、複数の刻線が互いに平行に形成されている回折格子であり、
前記一方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度と、前記他方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度とは、前記刻線が伸びている方向に垂直な面内で実質的に同じ角度であり、該刻線を含む面内で異なる角度であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明の分光器は、
請求項2に記載の分光器において、
前記一方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度と、前記他方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する角度とは、前記刻線を含む面内での該刻線に垂直な線を基準にした角度の絶対値が同じであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明の分光器は、
請求項1から3のいずれか一項に記載の分光器において、
前記一方の光路を進んで前記分光素子で分光された光が前記出力部又は前記受光部に入射する入射領域に対して、前記他方の光路を進んで前記分光素子で分光された光が該出力部又は該受光部に入射する入射領域の少なくとも一部を重なり合わせる光学素子を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明の分光器は、
請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光分離素子は、平行平板形状の偏光ビームスプリッタ板であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明の分光器は、
請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光分離素子は、入射面及び出射面を有する偏光ビームスプリッタキューブであり、前記偏光ビームスプリッタキューブの前記入射面は、前記出射面に対して傾いており、且つ入射光に対する角度が垂直ではないことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明の分光器は、
請求項1から6のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光回転素子は、フレネルロム1/2波長板であることを特徴とする。
【0015】
前記課題を解決するための顕微分光装置は、
レーザ光源と、該レーザ光源からの光を観察面上に集光させる光学系と、観察面と共役な位置にピンホールが形成されているピンホール部材と、観察面からの反射光をピンホールで集光させることができる光学系と、を備えている共焦点顕微鏡と、請求項1から7のいずれか一項に記載の分光器と、を備え、
前記分光器の前記分光素子は、前記共焦点顕微鏡の前記ピンホールを通過した光を分光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏光分離素子で分けられた2つの光路を通る光は、光路偏光素子により、分光素子上でほぼ重なり合うので、分光素子の大型化を回避することができ、結果として、装置の大型化及びコスト増加を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態における分光器は、図1に示すように、入力ファイバ1と、入力ファイバ1からの光をコリメートするコリメートレンズ2と、コリメートされた光を第1光路C1及び第2光路C2の2つの光路に分け、且つ各光路C1,C2の光を互いに異なる方向に偏光させる偏光ビームスプリッタ板3と、第1光路C1を経てきた光及び第2光路C2を経てきた光をそれぞれ分光する反射型回折格子6と、この回折格子6の刻線6aと平行な回転軸を有する回折格子台7と、第1光路C1中の光を第2光路C2中の光の偏光方向に揃えるためのフレネルロム1/2波長板5と、第1光路C1を経た光が回折格子6に入射する入射領域に対して第2光路C2を経た光が回折格子6に入射する入射領域が重なるように、第2光路C2を曲げる平面鏡4と、回折格子6で分光された各波長域の光の強度を検出する光検出アレイ9と、第1光路C1を経て回折格子6で分光された光を光検出アレイ9の受光面で集光させる第1凹面鏡8aと、第2光路C2を経て回折格子6で分光された光を光検出アレイ9の受光面で集光させる第2凹面鏡8bと、を備えている。なお、以下の説明の都合上、コリメートレンズ2の光軸と平行な方向をZ方向、コリメートレンズ2からの光が偏光ビームスプリッタ板3により反射される方向とZ方向とに平行な面内でZ方向に垂直な方向をY方向、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向とする。
【0019】
偏光ビームスプリッタ板3は、平行平板ガラスに誘電体反射コーティングを施したもので、図2(a)に示すように、その入射面3aに対する光の入射角度は60°に設定されている。なお、入射角度とは、入射面の法線nに対する入射光の角度である。コリメートレンズ2からの光は、その一部が、この偏光ビームスプリッタ板3で反射してS偏光の光となり、YZ平面に平行な第2光路C2を進み、残りの一部が、この偏光ビームスプリッタ板3を通過してP偏光の光となり、Z方向に平行な第1光路C1を進む。なお、図2(a)は、本実施形態の分光器の要部をX方向から見た状態を示す図で、同図(b)は、フレネルロム1/2波長板5をZ方向から見た状態を示す図で、同図(c)は、回折格子6をZ方向から見た状態を示す図である。
【0020】
フレネルロム1/2波長板5は、全反射を利用した複屈折素子で、波長依存性が極めて小さく、各種波長の光に対して用いることができる。このフレネルロム1/2波長板5では、入射面5aから入射した光は、一平面上で4回反射して出射面5bから出射される。このフレネルロム1/2波長板5は、入射面5a及び出射面5bがZ方向に対して垂直で且つ前述の一平面が図2(b)に示すように、ZX平面に対して45°を成すように、設けられている。このように、フレネルロム1/2波長板5を設けることにより、偏光ビームスプリッタ板3を通過してP偏光の光になった光は、このフレネルロム1/2波長板5内での全反射1回につき、偏光方向がλ/8分変化して、合計で1/2分変化し、結果として、S偏光の光に変換される。このS偏光の光は、コリメートレンズ2の光軸上、言い換えると、Z方向に平行な方向に進み、回折格子6に入射する。
【0021】
第2光路C2を折り曲げる平面鏡4は、第2光路C2中のS偏光の入射角度が56°になるように設けられている。仮に、第2光路C2中のS偏光の入射角度が60°になるように、平面鏡4を設けた場合、この平面鏡4で反射したS偏光の光は、偏光ビームスプリッタ板3を通過したP偏光の光束、及びフレネルロム1/2波長板5でS偏光に変換れた光の束に平行、つまりZ方向に対して平行になる。これに対して、本実施形態では、前述したように、第2光路C2中のS偏光の入射角度が56°になるように、平面鏡4を設けているため、この平面鏡4で反射された第2光路C2を進むS偏光の光束は、この平面鏡4から所定距離離れた位置で、第1光路C1を進んできたS偏光の光束と、8°の角度で交わることになる。この2つの光束が交わる位置に、前述の回折格子6が設けられている。したがって、回折格子6の受光面上での、第1光路C1を進んできたS偏光の入射領域と、第2光路C2を進んできたS偏光の入射領域とは重なり合う。このため、回折格子6のY方向の幅、言い換えると、回折格子6の刻線6aが伸びている方向の幅を狭くすることができる。
【0022】
回折格子6は、その受光面に対する法線nが、ZX平面に対して4°傾き(図2(a))、YZ平面に対してθ傾き(図2(c))、且つその刻線6aが実質的にY方向に伸びるように、正確にはY方向に対して8°の角度を成す方向に伸びるように、設けられている。回折格子6は、以上のように設けられているため、YZ平面内において、P偏光からS偏光に変換されてZ方向に第1光路C1を進んできた光の回折格子6に対する入射角度が4°となり、第2光路C2を進んできたS偏光の回折格子6に対する入射角度が−4°となる。
【0023】
すなわち、第1光路C1を進んだS偏光が回折格子6に入射する入射角度と、第2光路C2を進んだS偏光が回折格子6に入射する入射角度とは、いずれの光路C1,C2もYZ平面に平行であるため、回折格子6の刻線6aに垂直な面内で同じ角度θであり、YZ平面に平行な面内において第1光路C1に対して第2光路C2が8°の角度を成しているため、回折格子6の刻線6aを含む面内で異なる角度であるものの、それらの絶対値は同じである。なお、S偏光のYZ平面に平行な面内での入射角度の絶対値は、第1光路C1と第2光路C2とにおいて、所定の公差の範囲内であれば問題ない。
【0024】
ところで、回折格子6に光が入射する方向が、回折格子6の刻線6aに垂直な面に平行である場合には、基本的に、回折格子6から出射する各波長域の光の方向も、回折格子6の刻線6aに垂直な面に平行になる。この場合、回折格子6への入射角度をθ、回折格子6からの出射角度をφとすると、以下の式(1)で示される関係が成立する。
【0025】
sinθ+sinφ=nλ ・・・・・・・・・(1)
但し、n:回折格子の刻線の本数、λ:光の波長、である。
【0026】
しかしながら、本実施形態では、回折格子6に光が入射する方向が、回折格子6の刻線6aに垂直な面に対して傾いているため、式(1)で示される関係が成立せず、以下の式(2)で示される関係が成立する。
【0027】
(sinθ+sinφ)cosη=nλ ・・・・ (2)
但し、η:回折格子の刻線に垂直な面に対する入射光束の角度、つまり入射俯角度である。
【0028】
本実施形態では、入射俯角度ηが±4°であるため、式(2)におけるcosηが0.9975≒1となり、実質的に無視でき、結局、本実施形態でも、式(1)の関係が成立することになる。但し、本実施形態において、式(1)の関係が成立するのは、回折格子6の刻線6aに垂直な面に対して、第1光路C1で回折格子6に入射するS偏光の入射俯角度の絶対値(4°)と、第2光路C2で回折格子6に入射するS偏光の入射俯角度の絶対値(4°)とが同じになるように、回折格子6の受光面をXY平面に対して8°傾けているからであり、仮に、第1光路C1で回折格子6に入射するS偏光の入射俯角度が0°で、第2光路C2で回折格子6に入射するS偏光の入射俯角度−8°にした場合、第1光路C1で回折格子6に入射するS偏光に関しては、cosη(=0°)が1になり、式(1)が成立するものの、第2光路C2で回折格子6に入射するS偏光に関しては、cosη(=−8°)が0.990となり、場合によっては無視できなくなり、同一検出器上で検出される二つの光路を通ってきた二つの光の間に約1%の波長誤差が生じてしまう。
【0029】
第1光路C1を経て回折格子6で分光された光は、図1に示すように、第1凹面鏡8aで、光検出アレイ9の受光面上に集光され、第2光路C2を経て回折格子6で分光された光は、第2凹面鏡8bで、同じく光検出アレイ9の受光面上の同一領域に集光される。
【0030】
ところで、「背景技術」の欄で述べた特許文献1に記載の技術では、S偏光の光束と、P偏光からS偏光に変えられた光束とを互いに平行に回折格子に導いているため、回折格子で分光されたS偏光の各波長域の光束と、同じく回折格子で分光された元P偏光の各波長域の光束とは、互いに平行になり、これらの光束を、光検出アレイの受光面上の同一領域に集光させるためには、大型の凹面鏡一つか、軸外しの小型の凹面鏡を二つ設ける必要がある。これら大型の凹面鏡や軸外しの凹面鏡は、いずれも製作コストが嵩んでしまう。
【0031】
これに対して、本実施形態では、小型の2つの凹面鏡を用いるものの、第1光路C1を経て回折格子6で分光された光と、第2光路C2を経て回折格子6で分光された光とは、互いに所定の角度、具体的には8°の角度を成し、さらに光検出器上に入射する際にも同様の角度を成すようにすることで、各凹面鏡を軸外しにする必要が無く、製作コストの増加を抑えることができる。
【0032】
光検出アレイ9は、32個のPMT(Photomultiplier Tube)を用いたものである。この複数のPMTは、回折格子6の複数の刻線6aが並んでいる方向、つまり回折格子6の光分散方向に並んでいる。このように、本実施形態では、光検出器として、複数の検出セルを持つ光検出アレイ9を用いているので、複数の波長域の光を同時に検出することができる。また、本実施形態では、回折格子6を載せている回折格子台7を回転させることで、この回折格子6に対する光の入射角度θ及び出射角度φが変わるため、光検出アレイ9で検出できる波長領域を変えることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ板3及びフレネルロム1/2波長板5を用いて、回折格子6に、偏光方向の揃った光を入射させているので、回折格子6の偏光依存性による不具合を解消することができる。しかも、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ板で2つの光路C1,C2に分けられたそれぞれの光は、回折格子6の受光面上の同一領域に入射するので、回折格子6の大型化を回避することができ、分光器の大型化及びコスト増加を抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態では、偏光分離素子として、平行平板形状の偏光ビームスプリッタ板3を用いているため、図3に示すように、この偏光ビームスプリッタ板3の入射面3aから入射した光の一部が出射面3bで反射し、この光L2が入射面3aで反射した後、出射面3bから出射しても、この光L2は、入射面3aから入射して出射面3bを通過した光L1に対して、シフトしているため、光検出アレイ9の受光面上でゴーストとして現れるのを回避することができる。また、光検出器アレイ9の受光面で反射した光が、凹面鏡8a若しく8b及び回折格子表面で反射して戻ってきても、再び光検出アレイ9の方向に反射されることがないため、ゴーストを回避することができる。特に、本実施形態では、偏光ビームスプリッタ板3への入射角度を45°よりも大きな60°にしているため、前述のシフトの量が大きくなり、ゴースト回避の効果が大きい。
【0035】
なお、ゴースト回避の方法としては、以上のように、平行平板状の偏光ビームスプリンタ板3を大きく傾ける方法の他に、図4に示すように、偏光ビームスプリッタキューブ3Aを用いる方法もある。具体的には、反射面3cが出射面3bに対して45°の角度を成し、入射面3aが出射面3bに対して僅かに傾いているものを用いる。この場合、この偏光ビームスプリッタキューブ3Aを、反射面3cに対する光の入射角度が45°になるように設置し、この反射面3cで反射された光の向きを変える平面鏡4を、偏光ビームスプリッタキューブ3Aからの反射光の入射角度が41°になるように設置すると、先の実施形態と同様に、偏光ビームスプリッタキューブ3Aを直進した光と、平面鏡4で反射された光とが、8°の角度で交わることになる。このように、入射面3aが出射面3bに対して傾いていると、この偏光ビームスプリッタキューブ3Aの入射面3aから入射した光の一部が出射面3bで反射し、この光L2が入射面3aで反射した後、出射面3bから出射しても、この光L2は、入射面3aから入射して出射面3bを通過した光L1に対して、一定の角度を成しているため、光検出アレイ9の受光面上でゴーストとして現れるのを回避することができる。また、光検出器アレイ9の受光面で反射した光が、凹面鏡8a若しく8b及び回折格子表面で反射して戻ってきても、再び光検出アレイ9の方向に反射されることがないため、ゴーストを回避することができる。
【0036】
また、以上の実施形態では、2つの光路C1,C2をそれぞれ進んだ光が、回折格子6上の同一領域に入射するように、第2光路C2中に平面鏡4を設けたが、第1光路C1中に平面鏡4を設けてもよいことは言うまでもない。また、以上の実施形態では、回折格子6で分光された光を凹面鏡8a,8bで集光した後、光検出アレイ9で受光しているが、この光検出アレイ9の換わりに、特定の波長域の光を出射する出射スリットを設けてもよい。さらに、以上の実施形態では、第1光路C1を進んだ光が回折格子6に入射する入射角度と、第2光路C2を進んだ光が回折格子6に入射する入射角度とは、回折格子6の刻線6aが伸びている方向に垂直な面内で実質的に同じ角度であり、刻線6aを含む面内で異なる角度であるが、回折格子6の刻線6aが伸びている方向に垂直な面内で異なる角度であり、刻線6aを含む面内で実質的に同じ角度になるようにしてもよい。つまり、本実施形態の回折格子6の縦と横の関係が逆になるように回折格子6を設置してもよい。但し、本実施形態のように回折格子6を設置する方が、回折格子6において2次分散の違いを避けられることから、好ましい。
【0037】
次に、以上で説明した分光器を用いた顕微分光装置の実施形態について、図5を用いて説明する。
【0038】
本実施形態の顕微分光装置は、共焦点顕微鏡20と、この共焦点顕微鏡20からの光を分光して各波長域毎の光の強度を検出する前述の分光器10と、この分光器10からの出力を画像処理して、そのデータを表示装置31に表示させると共に、共焦点顕微鏡20の動作を制御するコントローラ30と、を備えている。
【0039】
共焦点顕微鏡20は、レーザ光源21と、このレーザ光源21からの光を所定の位置まで導く光ファイバ22と、光ファイバ22から出射されたレーザ光をコリメートするコリメートレンズ23と、コリメートレンズ23でコリメートされたレーザ光を受けるダイクロイックミラー24と、ダイクロイックミラー24で反射されたレーザ光を試料S上で2次元的に走査するガルバノミラー25と、このガルバノミラー25からの光を試料Sの観察面上に集光させる対物レンズ26と、試料Sの観察面と共役な位置に配置されているピンホール板29と、試料Sの観察面で反射されたレーザ光をピンホール板29のピンホールの位置に集光させる集光レンズ28と、を備えている。
【0040】
この共焦点顕微鏡20の照明光学系は、レーザ光源21、光ファイバ22、コリメートレンズ23、ダイクロイックミラー24、ガルバノミラー25、対物レンズ26を有して構成され、この共焦点顕微鏡の観察光学系は、対物レンズ26、ガルバノミラー25、ダイクロイックミラー24、集光レンズ28を有して構成されている。したがって、照明光学系と観察光学系とは、対物レンズ26、ガルバノミラー25、ダイクロイックミラー24を共有している。
【0041】
共焦点顕微鏡20のピンホールを通過した光は、分光器10の入力ファイバ1により、分光器10の内部に導かれる。分光器10では、共焦点顕微鏡20からの光を前述したように回折格子66で分光し、各波長域の光の強度を光検出アレイ99で検出する。
【0042】
光検出アレイ99は、この検出データをコントローラ30に送る。コントローラ30は、このデータに対して所定の画像処理を行った後、これを画像データとして、表示装置31に送信する。
【0043】
なお、この実施形態では、共焦点顕微鏡20のビンホールを通過した光を入力ファイバ1で、分光器10内に導いているが、ピンホールの位置にピンホールとして機能するスリットを形成し、この上に分光器10を直接取り付け、このスリットを分光器10の入力ポートにしてもよい。すなわち、分光器10の入力部が共焦点顕微鏡20のピンホールを兼ねるようにしてもよい。このように、共焦点顕微鏡20の上に分光器10を直接取り付ける場合には、前述したように、分光器10を小型化できるというメリットが大きな意義を持つことになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る一実施形態としての分光器の斜視図である。
【図2】本発明に係る一実施形態としての分光器を示す図で、同図(a)が分光器の要部側面図、同図(b)がフレネルロム1/2波長板をZ方向から見た状態を示す図で、同図(c)が回折格子をZ方向から見た状態を示す図である。
【図3】本発明に係る一実施形態としての偏光ビームスプリッタ板及びそこを通る光の光路を示す説明図である。
【図4】本発明に係る一実施形態の変形例としての分光器の要部側面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態としての顕微分光装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1:入力ファイバ 2:コリメートレンズ
3:偏光ビームスプリッタ板 3A:偏光ビームスプリッタキューブ
4:平面鏡 5:フレネルロム1/2波長板
6:回折格子 6a:刻線
7:回折格子台 8a,8b:凹面鏡
9:光検出アレイ 10:分光器
20:共焦点顕微鏡 30:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、該入力部からの光を分光する分光素子と、該分光素子で分光された光を出射する出力部又は該分光素子で分光された光を受光する受光部と、を備えている分光器において、
前記入力部からの光を第1光路及び第2光路の2つの光路に分け、且つ各光路の光を互いに異なる方向に偏光させる偏光分離素子と、
前記第1光路中に配置され、該第1光路中の光を前記第2光路中の光の偏光方向に揃える偏光回転素子と、
前記第1光路と前記第2光路のうちの一方の光路中に配置され、他方の光路を進んだ光が前記分光素子に入射する入射領域に対して、該一方の光路中を進んだ光が該分光素子に入射する入射領域の少なくとも一部が重なり合うように、該一方の光路の向きを変える光路偏向素子と、
を備えていることを特徴とする分光器。
【請求項2】
請求項1に記載の分光器において、
前記分光器は、複数の刻線が互いに平行に形成されている回折格子であり、
前記一方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度と、前記他方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度とは、前記刻線が伸びている方向に垂直な面内で実質的に同じ角度であり、該刻線を含む面内で異なる角度である、
ことを特徴とする分光器。
【請求項3】
請求項2に記載の分光器において、
前記一方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する入射角度と、前記他方の光路を進んだ光が前記回折格子に入射する角度とは、前記刻線を含む面内での該刻線に垂直な線を基準にした角度の絶対値が同じである、
ことを特徴とする分光器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の分光器において、
前記一方の光路を進んで前記分光素子で分光された光が前記出力部又は前記受光部に入射する入射領域に対して、前記他方の光路を進んで前記分光素子で分光された光が該出力部又は該受光部に入射する入射領域の少なくとも一部を重なり合わせる光学素子を備えている、
ことを特徴とする分光器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光分離素子は、平行平板形状の偏光ビームスプリッタ板である、
ことを特徴とする分光器。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光分離素子は、入射面及び出射面を有する偏光ビームスプリッタキューブであり、
前記偏光ビームスプリッタキューブの前記入射面は、前記出射面に対して傾いており、且つ入射光に対する角度が垂直ではない、
ことを特徴とする分光器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の分光器において、
前記偏光回転素子は、フレネルロム1/2波長板である、
ことを特徴とする分光器。
【請求項8】
レーザ光源と、該レーザ光源からの光を観察面上に集光させる光学系と、観察面と共役な位置にピンホールが形成されているピンホール部材と、観察面からの反射光をピンホールで集光させることができる光学系と、を備えている共焦点顕微鏡と、
請求項1から7のいずれか一項に記載の分光器と、
を備え、
前記分光器の前記分光素子は、前記共焦点顕微鏡の前記ピンホールを通過した光を分光する、
ことを特徴とする顕微分光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−153587(P2006−153587A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342718(P2004−342718)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】