分布解析方法および装置、異常設備推定方法および装置、上記分布解析方法または異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法および装置であって、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、常に精度良く評価を行えるものを提供すること。
【解決手段】分布形状パターンを、解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、各矩形領域毎に、解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義する(S101)。分布形状パターンに類似し、かつ複数の解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する(S102)。解析対象データが代表データに類似している度合いを表す類似度を求める(S103)。この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する。
【解決手段】分布形状パターンを、解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、各矩形領域毎に、解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義する(S101)。分布形状パターンに類似し、かつ複数の解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する(S102)。解析対象データが代表データに類似している度合いを表す類似度を求める(S103)。この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は分布解析方法および装置に関し、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状に類似しているかどうかを評価する分布解析方法および装置に関する。
【0002】
また、この発明は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を自動的に推定する異常設備推定方法および装置に関する。
【0003】
また、この発明は、そのような分布解析方法または異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0004】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、ハードディスク磁気ヘッドなどの薄膜デバイスの製造ラインでは、歩留まりの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。これらの検査には、例えば基板上に付着した異物等によって生じる回路パターンの欠陥を検出するパターン検査や、形成された回路の電気的な特性を検査する電気特性検査などがある。製造ラインではこれらの検査結果を日々監視しており、例えばパターン検査で検出された欠陥の個数の増大や電気特性検査で測定された電気的特性の変動に基づいて製造工程で異常が発生していないかどうかをチェックしている。基板に対して順次実行される複数の製造工程のうち、或る製造工程において異常が発生した場合には、これらの検査結果の調査や解析を行って迅速に原因を特定して対策を施すことで、歩留まり低下による損害を最小限に食い止めることができる。そのため、製造ラインには、検査情報や各製造装置の処理履歴を収集するシステムが設けられている。
【0006】
製造工程で異常が発生した場合、検査結果は基板表面上の特性的な分布として現れることが多い。これらの分布は異常の状態によって異なり、異常原因と密接に関係しているので、過去の特性分布の事例は異常の原因と共にデータベース化されて、異常発生時の異常原因究明や対策方法の意思決定に活用される。従って、検査工程での特性分布の傾向を早期に検出することが重要となるが、実際には特性分布は数値的には表現し難く、特性値の時間的変化の監視や通常の統計処理では、特性分布の検出や監視は困難である。
【0007】
これらの困難を克服するため、あらかじめ登録した分布の形状的な特徴と基板の特性の分布を比較し、登録された分布と類似した特性分布を持つ基板を検出する手法が提案されている。そのような手法としては、例えば特許文献1(特開平11−45919号公報)に、特性の分布を2値画像として扱い、予め登録した分布形状の2値画像と基板の特性分布の2値画像に対して画像処理で用いられるテンプレートマッチングを行う方法が記載されている。具体的には、同文献の方法では、基板表面に対して設定された格子状の画素毎に、検査工程で基板上に検出された欠陥数を集計する。次に、各画素毎の欠陥数に対して予め定めた閾値で閾値処理を行い、各画素毎の欠陥数を2値化する。この結果から、基板表面の全域の2値画像を作成し、同じく2値画像として事前に作成した図21に例示する不良分布のテンプレートに対して画像認識におけるテンプレートマッチングを行い、テンプレートと2値画像との照合率が高い場合にテンプレートで定義した不良分布に一致すると判定する。
【0008】
また、別の方法としては、例えば特許文献2(特開2003−100825号公報)には、図22(a)に示すように欠陥が集中する領域をテンプレートとして定義し、分析対象の基板は、図22(b)に示すように基板の全欠陥数に対するテンプレート領域内の欠陥数が高い基板ほど一致度が高いと判断する方法が記載されている。また、同文献に記載されている別の方法では、基板表面に設定された格子状の小領域に対する濃度値からなるテンプレートを定義し、そのテンプレートの濃度値と分析対象の基板について各小領域毎に集計された欠陥数との相関係数を一致度として用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−45919号公報
【特許文献2】特開2003−100825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の方法では、次に述べる2つの理由により精度が良くないという問題がある。
【0010】
第1の理由としては、それらの文献に記載の方法では、常に同一のテンプレートで定義された分布形状パターンとの比較を行っているため、実際に発生する欠陥の分布の変動に対応できないことが挙げられる。
【0011】
欠陥の分布は異常原因と密接に関係しているが、同一の異常原因によって発生する欠陥の分布が常に同一の形状を有するとは限らない。例えば、図4(a)〜図4(c)に示すように、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって欠陥の分布形状(欠陥が集中する位置、形状および面積を指す。)が変動することがある。図4(a)は欠陥の分布形状が比較的小面積の円形である例、図4(b)は欠陥の分布形状が楕円である例、図4(c)は欠陥の分布形状が図4(a)のものよりも大面積の円形である例をそれぞれ示している。上記特許文献1、2に記載の方法のように常に同一のテンプレートと比較を行っていたのでは、このような分布の変動には対応できない。
【0012】
第2の理由としては、それらの文献に記載の方法では、欠陥数の大きさに関係なく欠陥の分布形状のみを評価しているため、欠陥数の大きさが評価に反映されないということが挙げられる。
【0013】
異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状だけでなく、欠陥数の大きさも変動する。例えば図5(a)は或る異常原因によって発生した欠陥数とその異常原因の影響を受けた基板数との関係(該当基板数の分布)を示し、図5(b)はその同じ異常原因の影響を受けた該当基板数の分布がシフトした場合を示している。異常原因に対する該当基板数の分布が図5(a)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す典型的な欠陥数をもつ基板201Aは、その異常原因を特定するために重視するのが望ましい。一方、同じ異常原因であっても、その異常原因に対する該当基板数の分布が図5(b)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す欠陥数をもつ基板201Bは、図5(a)の場合に比して、その異常原因を特定するために重視しないのが望ましい。
【0014】
しかし、特許文献1の方法では、各画素毎の欠陥数を2値化しているため、画素内の欠陥数が設定された閾値以上の場合は全て同一の値として扱われる。このため、欠陥数の大きさが評価に反映されない。また、特許文献2に記載の第1の方法および第2の方法では、テンプレートで定義された領域の内外の欠陥数の比率で類似性を評価しているため、欠陥数そのものは評価対象ではなく、欠陥数の大きさが評価に反映されない。
【0015】
このような理由により、上記特許文献1、2に記載の方法では、評価の精度が良くないという問題がある。
【0016】
そこで、この発明の課題は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法および装置であって、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、常に精度良く評価を行える分布解析方法および装置を提供することにある。
【0017】
また、この発明の課題は、基板の検査結果に対してそのような分布解析方法による類似度を用いることにより、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を自動的に推定する異常設備推定方法および装置を提供することにある。
【0018】
また、この発明の課題は、そのような分布解析方法または異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0019】
また、この発明の課題は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、この発明の分布解析方法は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義し、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成し、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価することを特徴とする。
【0021】
ここで、「解析対象データ」とは、平面に沿って何らかの特性が分布しているものであれば、どのようなデータでも良い。
【0022】
また、「多値」とは、2値以上、好ましくは3値以上を指す。
【0023】
この発明の分布解析方法に対応した処理を、例えばコンピュータに実行させれば、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に評価することができる。しかも、上記代表データは上記解析対象データの変動を反映したものである。したがって、この分布解析方法では、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0024】
なお、上記代表データが上記分布形状パターンに類似しているか否かは、上記代表データの特性値の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似しているか否かに基づいて判断するのが望ましい。
【0025】
一実施形態の分布解析方法では、上記代表データの作成は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1ステップと、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2ステップとを備えることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の分布解析方法によれば、上記代表データを、容易に作成できる。
【0027】
一実施形態の分布解析方法では、上記第1ステップは上記第1データ群の上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数が予め定めた閾値以上であるようなデータを上記第2データ群として抽出することを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の分布解析方法では、上記相関係数を用いることによって、特性値の大きさ(絶対値)に関係なく、有用な第2データ群を抽出することができる。抽出された第2データ群は、特性値の大きさ(絶対値)を問わずに、特性値の相対的な大小関係の観点で上記分布形状パターンに類似したものである。
【0029】
一実施形態の分布解析方法では、上記第2ステップは、上記第1ステップで得られた第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均して、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の分布解析方法によれば、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することで、上記代表データは、上記第2データ群のデータ、ひいては上記解析対象データの変動を反映したものになる。
【0031】
一実施形態の分布解析方法では、上記第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均するとき、上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出することを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の分布解析方法によれば、単純平均を算出する場合に比して、上記代表データは、より上記分布形状パターンに類似したものとなる。この結果、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をより重視したものとなる。
【0033】
一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求める処理は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3ステップと、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第2の差異を算出する第4ステップと、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする。
【0034】
ここで「基準データ」は、類似度算出の基準となる固定されたデータであれば足りる。例えば「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。
【0035】
この一実施形態の分布解析方法では、上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて、つまり、上記基準データがもつ特性値の分布、上記解析対象データがもつ特性値の分布に対して上記解析対象データがもつ特性値の分布が相対的にどのような位置づけにあるかに応じて、上記類似度が算出される。このようにした場合、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データを一定の尺度で評価できる。
【0036】
一実施形態の分布解析方法では、上記第5ステップで算出する類似度は、上記第2の差異の逆数を上記第1の差異の逆数と上記第2の差異の逆数との和で割ることで得られることを特徴とする。
【0037】
一実施形態の分布解析方法では、
上記第3ステップで算出する第1の差異は上記基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であり、
上記第4ステップで算出する第2の差異は上記代表データの特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であることを特徴とする。
【0038】
一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求めるとき、上記解析対象データの特性値の分布形状が上記代表データの特性値の分布形状と類似しているか否かの判定を行って、この判定結果に応じて上記類似度を算出することを特徴とする。
【0039】
この一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求めるために、特性値の分布形状(特性値の相対的な大小関係によって表される)が加味される。この結果、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をより重視したものとなる。
【0040】
一実施形態の分布解析方法では、上記判定を行うとき、上記解析対象データの上記各矩形領域に対応する特性値と上記代表データの上記各矩形領域に対応する特性値との間の相関係数を算出し、この相関係数が予め定めた閾値以上であるか否かを判断することを特徴とする。
【0041】
この一実施形態によれば、上記判定を容易に実行できる。
【0042】
一実施形態の分布解析方法では、上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする。
【0043】
ここで「基板」は、薄膜デバイスが作製されるガラス基板、半導体デバイスが作製されるウェハなどを広く指す。
【0044】
この一実施形態の分布解析方法では、上記基板を処理する製造工程で発生した様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0045】
この発明の異常設備推定方法は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定方法であって、
請求項11に記載の分布解析方法を実施して上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出することを特徴とする。
【0046】
この発明の異常設備推定方法によれば、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出するので、異常が発生した製造装置を精度良く推定することができる。
【0047】
この発明の分布解析装置は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析装置であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義するパターン登録部と、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する代表データ作成部と、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する類似度評価部とを備えることを特徴とする。
【0048】
ここで、「解析対象データ」とは、平面に沿って何らかの特性が分布しているものであれば、どのようなデータでも良い。
【0049】
また、「多値」とは、2値以上、好ましくは3値以上を指す。
【0050】
この発明の分布解析装置によれば、上記発明の分布解析方法を実施することができる。すなわち、上記パターン登録部、代表データ作成部、類似度評価部を例えばコンピュータプログラムによって構成して、処理を実行させれば、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0051】
一実施形態の分布解析装置では、上記代表データ作成部は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1部分と、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2部分とを備えることを特徴とする。
【0052】
この一実施形態の分布解析装置によれば、上記代表データを、容易に作成できる。
【0053】
一実施形態の分布解析装置では、上記類似度評価部は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3部分と、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との第2の間の差異を算出する第4部分と、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5部分とを備えることを特徴とする。
【0054】
ここで「基準データ」は、類似度算出の基準となる固定されたデータであれば足りる。例えば「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。
【0055】
この一実施形態の分布解析装置では、上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて、つまり、上記基準データがもつ特性値の分布、上記解析対象データがもつ特性値の分布に対して上記解析対象データがもつ特性値の分布が相対的にどのような位置づけにあるかに応じて、上記類似度が算出される。このようにした場合、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データを一定の尺度で評価できる。
【0056】
一実施形態の分布解析装置では、上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする。
【0057】
ここで「基板」は、薄膜デバイスが作製されるガラス基板、半導体デバイスが作製されるウェハなどを広く指す。
【0058】
この一実施形態の分布解析装置では、上記基板を処理する製造工程で発生した様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0059】
この発明の異常設備推定装置は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定装置であって、
請求項13に記載の分布解析装置を備え、この分布解析装置によって上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出する異常設備推定部を備えたことを特徴とする。
【0060】
この発明の異常設備推定装置によれば、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出するので、異常が発生した製造装置を精度良く推定することができる。
【0061】
この発明のプログラムは、上記発明の分布解析方法をコンピュータに実行させるための分布解析プログラムである。
【0062】
別の局面では、この発明のプログラムは、上記発明の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるための異常設備推定プログラムである。
【0063】
この発明の記録媒体は、上記発明の分布解析プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0064】
別の局面では、この発明の記録媒体は、上記発明の異常設備推定プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0066】
図1は、基板の製造工程において異物などによって生じる回路パターンの欠陥を特性値として検出するパターン検査の結果を例に、本発明の一実施形態の分布解析方法の概念を模式的に示している。パターン検査とは、図2に示すように、基板201に形成された回路パターンの欠陥202の座標を検出する検査工程である。或る製造装置に異常が発生した場合、基板201の面内でその異常に固有の領域に欠陥202が集中して分布することが多い。この分布解析方法は、製造工程でパターン検査を経た基板群から特定の領域に欠陥が集中する基板を検出する場合に適用される(後述するように、この分布解析結果に基づいて、その欠陥分布の原因となった製造装置(異常設備)を早期に特定することができる。)。
【0067】
この分布解析方法では、ステップS101で、解析対象基板と比較するための特性値の分布形状を分布形状パターンとして登録する。分布形状パターンの例を図3に示す。分布形状パターンは、図3(a)に示すように基板の表面を格子状に区分して複数の矩形領域301,301,…を設定し、各矩形領域301毎に濃度値を設定することで定義される。濃度値は、0〜1の範囲内で多値(この例では3値以上)をとり得るものとする。各矩形領域301毎に設定された濃度値の集合は、基板上における特性値の相対的な大小関係を表す。パターン検査では、各矩形領域内の欠陥数が「特性値」に相当するので、各矩形領域毎に設定された濃度値は、欠陥密度を0〜1の範囲内の相対値に変換したものに相当する。図3(b)および図3(c)に分布形状パターンの例を示す。図中の領域の色は濃度値を表しており、色が濃いほど濃度値が高い。従って、図3(b)の分布形状パターン302は基板右下の領域に欠陥が集中して発生するパターンを表し、また、図3(c)の分布形状パターン303は基板左上の領域に欠陥が集中して発生するパターンを表す。通常、製造工程では、欠陥の分布形状が異なれば、それぞれの領域内に発生する欠陥数(生の値)が異なる。上述の濃度値は、基板表面上の特性値の相対的な大小関係のみを表すので、欠陥数の大きさ(生の値)に関係なく、基板表面上でどの領域に欠陥が集中して発生するかという相対的な観点のみから、容易に設定され得る。上記分布形状パターンは、解析担当者が製造工程に関する知見を利用して手入力しても良く、過去の事例などを利用して自動的に作成しても良い。
【0068】
次に、図1中のステップS102では、分布形状パターンと後述する代表データ作成用データ群とから、上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する。
【0069】
ここで、図4および図5を用いて、そのような代表データの必要性を説明する。先に触れた図4(a)〜図4(c)は、或る異常設備によって発生した欠陥の分布の例を示している。同一の異常設備が起因となっていても、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状(つまり、欠陥が集中する位置、形状、面積)が異なることがある。例えば図4(a)の欠陥分布401は、欠陥の分布形状が図3(c)の分布形状パターン303のものとほぼ一致する。一方、図4(b)の欠陥分布402は、欠陥の集中する領域の形状が楕円形であり、図3(c)の分布形状パターン303のもの(円形)とは一致しない。また、図4(c)の欠陥分布403は、欠陥の集中する領域の面積が図3(c)の分布形状パターン303のものよりも広く、一致しない。実際に図4(a)の欠陥分布401が発生している状況下では、図3(c)の分布形状パターン303と一致する図4(a)の欠陥分布401が発生した基板を検出すれば異常設備を推定でき、したがって、図4(b)の欠陥分布402を重視すべきではないと考えられる。一方、図4(b)の欠陥分布がより多く発生している状況下では、異常設備を推定するために、上記の場合に比して図4(b)の欠陥分布402を重視する方が適切であると考えられる。
【0070】
また、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状だけでなく、欠陥数も変動する。既述のように、図5(a)は或る異常原因によって発生した欠陥数とその異常原因の影響を受けた基板数との関係(該当基板数の分布)を示し、図5(b)はその同じ異常原因の影響を受けた該当基板数の分布がシフトした場合を示している。異常原因に対する該当基板数の分布が図5(a)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す典型的な欠陥数をもつ基板201Aは、その異常原因を特定するために重視するのが望ましい。一方、同じ異常原因であっても、その異常原因に対する該当基板数の分布が図5(b)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す欠陥数をもつ基板201Bは、図5(a)の場合に比して、その異常原因を特定するために重視しないのが望ましい。
【0071】
このように、現実には、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象基板の特性データ(これを適宜「解析対象データ」と呼ぶ。)が変動する。そこで、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、欠陥が発生した基板(のデータ)を適切に検出できるように、上述の代表データが必要とされる。代表データは、特性値の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映したものである。代表データは解析対象データとの比較の対象となる。
【0072】
上述の図1中のステップS102では、そのような代表データを、分布形状パターンのデータと、解析対象基板と同時期に同じ製造工程で製造された基板群の特性データがなす第1のデータ群(以下、これを「代表データ作成用データ群」と呼ぶ。)とを用いて作成する。代表データ作成用データ群には、解析対象基板の特性データが含まれていても良い。具体的な代表データの作成方法は、後の実施例で説明する。
【0073】
最後に、図1中のステップS103では、解析対象基板の特性データ(解析対象データ)と上記ステップS102で作成した代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを定量的に(数値で)表す類似度を求める。この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に評価する。
【0074】
このようにした場合、上記代表データ作成用データ群から得られた上記代表データは上記解析対象データの変動を反映したものであるから、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0075】
なお、本発明による分布解析方法は基板のパターン検査のみに適用されるものではなく、特性が平面的に分布しているデータであれば適用可能である。
【0076】
図6は、上述の分布解析方法(図1参照)を実施するのに適した本発明の一実施形態の分布解析装置600の構成を示している。この分布解析装置600は、パターン登録部602、入力部としてのデータ収集部603、代表データ作成部606、類似度評価部607、およびデータ出力部608から構成されている。また、この分布解析装置600のデータ収集部603には、入力装置601、検査情報収集システム604、および検査装置605が接続されており、データ出力部608には出力装置609が接続されている。
【0077】
入力装置601は、例えばキーボードやマウスで構成される。この例では、入力装置601は、分布解析装置600に対して、分布形状パターンの定義や解析対象基板の識別ID、代表データ作成用データ群をなす条件(つまり、解析対象基板と同時期に同じ製造工程で製造された基板群の特性データのうち、代表データ作成用データ群として用いられるための条件)の指定などを入力するために用いられる。
【0078】
パターン登録部602は、入力装置601で定義された分布形状パターンを受け取り、データベースに記録するステップS101の処理を行う。入力装置601から受け取る情報は分布形状パターンだけでなく、分布形状パターンと関連した情報、例えばその分布形状パターンの原因となる装置に関する情報などを分布形状パターンと関連付け(紐つけ)して記録しても良い。
【0079】
データ収集部603は、入力装置601から分布解析装置600に送信された解析対象基板の識別情報や代表データ作成用データ群をなす条件に合致する基板の特性データを検査情報収集システム604や検査装置605から収集する。そして、データ収集部603は、得られた代表データ作成用データ群を代表データ作成部606に渡すと共に、解析対象基板の特性データを類似度評価部607に渡す。このとき、必要があれば基板の識別IDや検査日時などの情報を検査データと共に収集しても良い。
【0080】
検査情報収集システム604は、製造工程内に配置された検査装置から検査情報を収集する検査情報収集システムである。この例では、検査情報収集システム604は検査装置605と接続されており、検査装置605で処理された基板の検査データや検査日時、基板の識別IDなどが蓄積されている。また、検査情報収集システム604は分布解析装置600と接続されており、データ収集部603は検査情報収集システム604から必要な検査データを収集する。
【0081】
検査装置605は、製造工程内に配置されており、実際に基板の検査を行う。検査装置605は分布解析装置600と接続されており、データ収集部603は検査装置605から必要な検査データを収集する。
【0082】
代表データ作成部606は、データ収集部603が検査情報収集システム604や検査装置605から収集した代表データ作成用データ群とパターン登録部602に登録された分布形状データとを受け取り、ステップS102の処理を行って代表データを作成する。作成された代表データは類似度評価部607に渡される。
【0083】
類似度評価部607は、データ収集部603が収集した解析対象基板の特性データと代表データ作成部606が作成した代表データとを受け取り、ステップS103の類似度評価処理を行う。算出された類似度はデータ出力部608に渡される。このとき、必要があれば基板の識別IDや検査日時などの条件、代表データなどを類似度と共に送っても良い。
【0084】
データ出力部608は、類似度評価部608が算出した類似度を受け取り、出力装置609で用いるデータ形式に加工して出力装置609に送信する。このとき、必要があればパターン登録部602、データ収集部603、代表データ作成部606などから各種のデータを受け取り、出力装置608で用いる形式に加工しても良い。
【0085】
出力装置609は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して分布解析装置600による分布解析結果を出力する。
【0086】
なお、パターン登録部602には複数の分布形状パターンが登録されていても良い。この場合、代表データ作成部606は登録された分布形状パターンの各々に対して代表データを作成する。そして、類似度評価部607は、解析対象基板の特性データと各々の代表データとの間の類似度を評価する。
【0087】
また、検査情報システム604および検査装置605のいずれか一方から分布解析に必要な情報を全て取得できる場合、取得できる一方のみが接続されていてもよい。
【0088】
また、解析に必要な条件を分布解析装置600内部に保存しておき、検査装置605で基板が検査されると自動的にデータ収集部603が解析対象基板の特性データと代表データ作成用データ群を取得しても良い。
【0089】
また、入力装置601と出力装置609は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのキーボードを備えて一体に構成にした装置としてもよい。また、入力装置601と出力装置609は、分布解析装置600に含まれていても良い。
【0090】
また、出力装置609は、分布解析装置600を通して入力装置601、検査情報収集システム604または検査装置605から分布解析に必要な情報以外の情報を受け取り、出力しても良い。
【0091】
この構成の分布解析装置600により、上述の分布解析方法を実施することができる。
【0092】
なお、上述の分布解析方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムとして構築してもよい。
【0093】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしてもよい。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記分布解析方法を実行することが可能である。
【0094】
なお、本発明はパターン検査の分布解析装置600に限定されるものではなく、特性が平面的に分布しているデータであれば適用可能である。その場合、データ収集部603は、対象となるデータが保存されている情報収集システムや特性計測装置に接続される。
【実施例1】
【0095】
次に、実施例1として、図1中のステップS102およびステップS103を実現する方法を具体的に説明する。
【0096】
図7に、ステップS102を実現するための手順として、ステップS1021とステップS1022とを示す。ステップS102におけるステップS1021では、代表データ作成用データ群から、基板上の特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2のデータ群(以下、これを「類似データ群」と呼ぶ。)を抽出する。類似データ群は、この類似データ群に含まれている特性データ(特性値)の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似するように選択する必要がある。ただし、類似データ群には、分布形状が類似しない特性データが含まれていてもよく、分布形状が類似する特性データの全てが含まれている必要はない。また、ステップS102におけるステップS1022では、上記ステップS1021で抽出された類似データ群の分布から類似データ群の分布を最もよく表す特性データを算出し、算出した特性データを上述の代表データとする。
【0097】
次に、ステップS1021において代表データ作成用データ群から類似データ群を抽出する方法を具体的に説明する。
【0098】
代表データ作成用データ群に含まれる各特性データは、解析対象基板の特性データと同様に、回路パターンの欠陥の位置を表す座標である。そこで、代表データ作成用データ群に含まれる各特性データと分布形状パターンとを比較するために、まず、図8に例示するように、代表データ作成用データ群を与える各基板801の面を、分布形状パターンを定義したのと同様に、格子状の複数の矩形領域301に区画して、各矩形領域301内の欠陥数をその矩形領域の特性値としてカウントする。各基板上の矩形領域301の数をg個とすると、この処理によって代表データ作成用データ群の各特性データは、分布形状パターンと同じくg個の数字の組で表現される。図8中に例示する各矩形領域301内の数字は、図2中に示した欠陥分布をもつ基板201について各矩形領域301毎に欠陥数をカウントして得られたものである。数字の記述されていない矩形領域の特性値は0である。以下、説明を簡略化するため、特に指定しない限りg=2とする。
【0099】
図9は、分布形状パターン901と代表データ作成用データ群について矩形領域としての領域1、領域2における濃度値および特性値を、g次元特性データ空間にプロットした例である。分布形状パターン901や代表データ作成用データ群をなす各基板のデータ902,903をプロットすると、原点と特性データ(プロットされた点)との距離は濃度値や特性値の大きさを表す。したがって、特性値が大きいデータほど原点から離れた位置にプロットされる。また、複数の矩形領域間の特性値の相対的な大小関係(この例では比)が等しい基板の特性データは特性値の大きさによらず同一直線状にプロットされる。したがって、原点と特性データのなす角度はそのデータの分布形状を表す。それらを踏まえて考えると、例えば或る異常設備が分布形状パターン901とほぼ等しい分布形状で欠陥を発生させている場合、図9(a)に示すように、代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち類似データ群として抽出されるべきデータ群902は、分布形状パターン901を表す点と原点とを通る直線905上の或る点を中心とし、かつ正規分布的な広がりをもって密に分布する。その場合、類似データ群として抽出されるべきでないデータ群は、データ群902が存在する範囲以外に疎に散らばって存在している。また、或る異常設備が分布形状パターン901から若干ずれた分布形状で欠陥を発生させている場合、図9(b)に示すように、代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち類似データ群として抽出されるべきデータ群903は、分布形状パターン901を表す点と原点とを通る直線905から少しだけずれた点を中心とし、かつ正規分布的な広がりをもって密に分布する。
【0100】
そこで、分布形状パターン901に対して解析対象データの変動を反映した許容範囲として、分布形状パターン901を表す点を含む態様で、原点から見込んだ或る角度範囲904を設定する。代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち、そのデータを表す点が上記角度範囲904に含まれているデータは、類似データ群として抽出されるべきデータである。したがって、このような特性データの集合を類似データ群として抽出する。一方、そのデータを表す点が上記角度範囲904に含まれていないデータは、類似データ群として抽出されるべきでないデータであるから、抽出しない。
【0101】
代表データ作成用データ群に含まれる特性データが上述の角度範囲904に含まれるかどうかは、例えば、2組の特性データのなす角度を評価する統計量である相関係数を用いて判断できる。分布形状パターンTと代表データ作成用データ群に含まれる或る特性データMがg個の矩形領域を持ち、それぞれg次元ベクトルT=(t1,…,tg)、M=(m1,…,mg)で表されるとする。このとき、分布形状パターンTと特性データMの相関係数rは次の(数1)で表される。
【数1】
この相関係数rは−1から1の範囲を取り、値が大きいほど分布形状パターンTと特性データMのなす角度は近い。そこで、相関係数rが予め定めた閾値以上であるような特性データMを分布形状パターンTと類似した類似データ群として抽出する。
【0102】
次に、ステップS1022における代表データを算出する方法を具体的に説明する。ステップS1201の処理によって、類似データ群に含まれる特性データの大部分は分布形状パターン901に類似するデータになっている。分布形状パターン901に類似しないデータは非常に少なく、角度範囲904に一様且つ疎に分布していると考えられる。そこで、類似データ群に含まれる特性データの平均値を代表データとすることで、分布形状パターン901に類似しないデータの寄与を相対的に少なくして、分布形状パターンに類似した代表データを容易に求めることができる。即ち、類似データ群にn個の特性データM1,…,Mnが含まれる時、代表データP=(p1,…,pg)は次の(数2)で表される。
【数2】
【0103】
このようにして、分布形状パターン901に類似し、かつ解析対象データの変動を反映した代表データPを作成することができる。
【0104】
次に、図1中のステップS103における類似度を求める処理について具体的に説明する。
【0105】
まず、図10を用いて類似度の概念を説明する。図10のg次元特性データ空間には、それぞれ解析対象基板の特性データ1001を表す点、図1におけるステップS102で作成した代表データ1002を表す点、予め定められた基準データ1003を表す点がプロットされている。ここで、基準データとは、類似度算出の基準となる固定されたデータであり、この例では異常設備が存在しない状態の製造工程において製造された基板の特性データを用いている(なお、この例のように「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。)。ここで、上記類似度は、解析対象データ1001が代表データ1002に類似している度合いを表す。具体的には、基準データ1003がもつ特性値の分布と解析対象データ1001がもつ特性値の分布との間の第1の差異1004と、代表データ1002がもつ特性値の分布と解析対象データ1001がもつ特性値の分布との間の第2の差異1005とを比較して、第1の差異1004に比して第2の差異1005が小さくなるにつれて、類似度が大きくなるように定量的に定められた値である。
【0106】
図11は、図1中のステップS103において、このような類似度を算出するための手順を示している。図11に示すように、ステップS1031では、基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の第1の差異1004を算出する。次に、ステップS1032では、図1のステップS102で作成した代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の第2の差異1005を算出する。次に、ステップS1033では、上記2つの差異1004,1005から上記類似度を算出する。
【0107】
より具体的には、ステップS1031で基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の第1の差異1004を求めるには、基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の距離D0を求める。解析対象基板の特性データXをg次元ベクトルX=(x1,…,xg)、基準データBをg次元ベクトルB=(b1,…,bg)とすると、上記の距離D0は以下の式で算出される。
【数3】
【0108】
パターン検査では基板上に欠陥が存在しない状態を基準とするのが望ましいので、基準データBとしてB=(0,…,0)とする。なお、(数3)はユークリッド距離と呼ばれる距離尺度である。
【0109】
ステップS1032で代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の第2の差異1005を求めるには、代表データPと解析対象基板の特性データXとの距離Dを求めればよい。距離Dは、ステップS1031の(数3)において基準データBを代表データPに置き換えることで求めることができる。
【0110】
次にステップS1033では距離D0と距離Dとを比較して定量的な類似度Sを算出する。この例では、類似度Sとして、距離D0と比較して距離Dが小さいほど大きな値になり、且つどのような解析対象基板のデータ1001や代表データ1002であっても評価尺度が一定になるように、次の(数4)で定義する。
【数4】
【0111】
この(数4)で定義された類似度Sは必ず0〜1の範囲内の値になるので、どのような分布形状パターンや解析対象データであっても一定の尺度での評価が可能となる。
【0112】
このようにして、図1の処理を具体的に実現することができる。すなわち、予め定義した分布形状パターンに対して、図7中のステップS1021〜ステップS1022の処理によって代表データを作成し、かつ図11中のステップS1031〜ステップS1033の処理によって類似度を算出することで、この類似度に応じて解析対象データが分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に一定の尺度評価することができる。
【0113】
なお、上記説明では、解析対象基板の特性データ1001と基準データ1003との間の第1の差異1004、および解析対象基板の特性データ1001と代表データ1002との間の第2の差異1005はユークリッド距離(数3)で算出したが、マハラノビス距離などユークリッド距離以外の距離尺度を用いて差異を算出しても良い。
【0114】
図12は、上述の分布解析方法(図1、図7および図11参照)を実施するのに適した本発明の一実施形態の分布解析装置600の詳細な構成を示している。
【0115】
データ収集部603の内部構成要素である格子データ変換部1201は、データ収集部603が検査情報収集システム604および検査装置605から収集した代表データ作成用データ群および解析対象基板のパターン検査データを座標単位の情報から図8に示すような各矩形領域301毎の欠陥数に変換する。変換後の特性値(各矩形領域の欠陥数)は、各基板の特性データとしてデータ収集部603によって代表データ作成部606および類似度評価部607に送られる。
【0116】
代表データ作成部606の内部構成要素である類似データ群抽出部1202は、データ収集部603から送られた代表データ作成用データ群とパターン登録部602に登録された分布形状データを受け取り、図7のステップS1021の処理を行って類似データ群を抽出する。抽出された類似データ群は、同じく代表データ作成部606の内部構成要素である代表データ算出部1203に渡される。
【0117】
代表データ作成部606の内部構成要素である代表データ算出部1203は、同じく代表データ作成部606の内部構成要素である類似データ群抽出部1202から類似データ群を受け取り、図7のステップS1022の処理を行って類似データ群の特性値の分布から代表データの特性値を算出する、つまり代表データを作成する。
【0118】
類似度評価部607の内部構成要素である第1距離算出部1204は、図示しないメモリ上に定数として記録された基準データ1003と代表データ作成部603から送られた解析対象基板の特性データ1001とを受け取り、図11のステップS1031の処理を行って基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の距離D0を算出する。算出された距離D0は、同じく類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206に送られる。
【0119】
類似度評価部607の内部構成要素である第2距離算出部1205は、代表データ作成部606が作成した代表データ1002とデータ収集部から送られた解析対象基板の特性データ1001とを受け取り、図11のステップS1032の処理を行って代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の距離Dを算出する。算出された距離Dは、同じく類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206に送られる。
【0120】
類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206は、同じく類似度評価部607の内部構成要素である第1距離算出部1204と第2距離算出部1205が算出した各々の距離D0,Dを受け取り、図11のステップS1033の処理を行って分布形状パターンに対する解析対象基板の特性データの類似度Sを算出する。算出した類似度Sは、データ出力部608に送られる。
【0121】
その他の分布解析装置600の構成は、図6と同様である。
【0122】
この構成の分布解析装置600により、上述の分布解析方法を実現することができる。
【実施例2】
【0123】
次に、実施例2として、図7中のステップS1022において代表データを算出する別の方法を説明する。
【0124】
上述の実施例1では、類似データ群に含まれる特性データの平均値、より詳しくは単純平均して得られた値を代表データとした。これに対して、この実施例2では、単純平均ではなく、類似データ群について各矩形領域毎に特性値を平均するとき、各矩形領域に対応する特性値と分布形状パターンの各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出する。そして、加重平均して得られた値を代表データとする。
【0125】
具体的には、図7のステップS1022において、n個の特性データからなる類似データ群M1,…,Mnと分布形状パターンTとの相関係数をri(i=1,…,n)とする。相関係数riは、図7のステップS1021において、(数1)によって既に算出された値である。このとき、代表データPとして、類似データ群に含まれる各データに対して相関係数rの重みを付けた加重平均を、次の(数5)によって算出する。
【数5】
【0126】
図13を用いて、実施例1で算出する代表データと実施例2で算出する代表データとの違いを説明する。図13(a)は、或る分布形状パターン1301に対して類似データ群1302が抽出された場合において、実施例1の方法によって代表データ1303を算出した態様を示している。一方、図13(b)は、或る分布形状パターン1301に対して類似データ群1302が抽出された場合において、実施例2の方法によって代表データ1303を算出した態様を示している。なお、図13中には、分布形状パターン1301を表す点と原点とを通る直線1305と、その直線1305を含むように設定された、解析対象データの変動を反映した許容範囲としての角度範囲1304とが併せて示されている。
【0127】
実施例1では代表データ1303は類似データ群の単純な平均値として算出されるので、図13(a)に示すように、g次元特性データ空間で、代表データ1303を表す点は類似データ群1302を表す点(点の集合)のほぼ中央に位置する。一方、実施例2では代表データ1303は(数5)によって加重平均で算出されるので、図13(b)に示すように、g次元特性データ空間で、代表データ1303を表す点は、実施例1で作成されたものに比して、分布形状パターン1301を表す点と原点とを通る直線1305に近い位置に代表データ1303がプロットされる。この結果、実施例2の方法によって代表データ1303を算出した場合、実施例1の方法によって代表データを算出した場合に比して、図1におけるステップS103での評価結果は、解析対象基板の特性データが分布形状パターン1301の分布形状に近いほど、より大きな類似度Sに評価される。
【0128】
このようにした場合、類似度の評価は、実施例1の場合に比して、分布形状パターン1301の分布形状をより重視したものとなる。
【実施例3】
【0129】
次に、実施例3として、図1中のステップS103において類似度を算出する別の方法を説明する。
【0130】
図14に示すように、g次元特性データ空間における点として代表データ1401が得られたとする。なお、図13中には、代表データ1401を表す点と原点とを通る直線1405が併せて示されている。既に述べたように、g次元特性データ空間で、原点と特性データ(プロットされた点)との距離は特性値の大きさを表す。また、原点と特性データのなす角度はそのデータの分布形状を表す。一般的に言って、代表データ1401に対する特性値の大きさの違い1402に比して、分布形状の違い1403を重視した解析を行うことが多い。しかしながら、そのような解析では、図11におけるステップS1033において(数4)によって類似度を算出すると、特性値の大きさの違い1402と形状の違い1403とが同じように扱われるため、目的の解析結果を得られないことがある。そこで、より分布形状の違い1403を重視して類似度を評価しても良い。
【0131】
このように、より分布形状の違い1403を重視して類似度を評価する具体な方法としては、例えば図1におけるステップS103において、代表データ1401と解析対象基板の特性データとがなす角度が或る範囲内にある場合についてのみ(数4)で類似度を算出することが考えられる。図15にその手順を示す。
【0132】
すなわち、まずステップS1030で代表データと解析対象基板の特性データとの間の相関係数を既述の(数1)によって求める。求めた相関係数の値が予め定めた閾値以上である場合、代表データと解析対象基板の特性データとの分布形状の差異は許容範囲であると判断して、実施例1におけるステップS1031〜ステップS1033の処理で類似度を求める。一方、ステップS1030で求めた相関係数の値が予め定めた閾値未満であった場合、代表データと解析対象基板の特性データとの分布形状の差異は許容範囲外であると判断して、ステップS1034にて類似度を0(ゼロ)とする。この結果、ステップS1033またはステップS1034で求めた類似度が解析対象基板の特性データの類似度となる。
【0133】
このようにした場合、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をさらに重視したものとなる。
【実施例4】
【0134】
次に、実施例4として、上記分布解析方法によって得られた基板の解析結果を用いて、製造工程において特性分布の発生原因となった製造設備(つまり、異常が発生した装置)を推定する異常設備推定方法について説明する。
【0135】
図16は、この異常設備推定方法の適用対象となる基板の製造プロセスの例を模式的に示している。この製造プロセスは、基板に対して順次実行される複数の製造設備a,b,c,dを含んでいる。これらの製造工程終了後にパターン検査eが実行される。
【0136】
製造プロセスに含まれた或る工程、この例では工程b,dには、その製造工程を並行して行うためにそれぞれその製造工程を実行可能な設備が複数台配置されている。この例では、工程bには、1号機、2号機、3号機という3台の設備が配置され、工程dには、1号機、2号機という2台の設備が配置されている。製造プロセスが進行してその製造工程に流れてきた各基板は、生産能力を高めるために随時、その製造工程内に配置されたいずれかの設備によって処理される。各基板がその工程においてどの設備を用いて処理されるかは定まっていない。このような配置になっている場合、図16中のパターン検査で検査された基板が各工程においてどの設備で処理されたかを調べると、図17(a)に示すように、工程bの各設備で処理された基板の割合は1/3ずつ、工程dの各設備で処理された基板の割合は1/2ずつというように、それぞれ工程内でほぼ均等になる。以下、各基板が各工程でどの設備によって処理されたかといった情報を処理履歴と呼ぶ。
【0137】
一方、工程内のいずれかの設備で異常が発生して基板上の特定の領域に欠陥が集中して発生した場合、特性分布が類似した基板を抽出すると、原因となった設備が存在する工程では原因設備で処理された基板を偏って抽出することになる。しかしながら、これらの基板は原因工程以外の工程で処理される設備は一定ではないので、他の工程では上記の偏りは生じない。例えば、図16の製造プロセスを経た各基板のうち、工程bの1号機で右上部に欠陥が集中して発生している基板群を抽出すると、図17(b)に示すように、工程bでは原因となった1号機で処理された基板の割合(この例では4/5)が多く、2号機や3号機で処理された基板の割合(この例では1/10)は少なくなり、設備間に処理基板数の偏りが生じている。同じ基板群について工程dで処理された基板の割合には、設備間の偏りが生じていない。このことから、類似した特性分布を持つ基板群を抽出して基板の処理履歴を収集し、同一工程に割り当てられた設備間での処理基板数が最も偏っている工程を解析することで、異常設備が推定できることがわかる。
【0138】
図18は、このような状況を前提として、上述の分布解析方法による基板特性値の分布解析結果を用いて原因となった異常設備を推定する方法を示している。
【0139】
まず、図1中の一連のステップS101〜S103を含むステップS1801において、異常設備推定の対象となる基板群に含まれた各基板に対して、推定対象となる分布形状パターンに対する類似度を評価する。ただし、ステップS102では上記推定対象基板群に含まれた全ての基板の特性データから代表データ作成用データ群を得て、その代表データ作成用データ群を用いて代表データを作成し、ステップS103では、上記推定対象基板群に含まれた全ての基板について上記分布形状パターンに対する類似度を評価する。
【0140】
ステップS1802では、ステップS1801で得られた類似度が予め定められた閾値以上であるような基板を抽出して、それらの基板を推定対象の分布形状パターンに該当する基板グループとする。上記閾値としては、例えばその基板が推定対象の分布形状パターンに該当すると人間が視覚的に判断できる値を採用する。
【0141】
ステップS1803では、ステップS1802で抽出した基板グループに含まれる基板について、各製造工程での処理履歴を取得する。この情報は、通常、製造工程内に設置された工程情報収集システムで収集・管理されているので、容易に取得することができる。
【0142】
ステップS1804では、ステップS1803で取得した処理履歴を製造工程の各工程別に集計し、設備別の処理枚数を算出する。
【0143】
最後に、ステップS1805では、各工程内の設備別の処理枚数を比較し、最も処理枚数の偏りが大きい設備を統計的に調べて異常設備であると推定する。また、処理枚数に顕著な差が存在しない場合は、特定の設備に起因しない特性分布であると判断する。
【0144】
この異常設備推定によれば、特性分布が類似した基板から処理履歴の偏りを比較するので、精度が高い異常設備推定を行うことができる。
【0145】
図19は、上述の異常設備推定方法を実施するのに適した本発明の一実施形態の異常設備推定装置1900の構成を示している。この異常設備推定装置1900は、パターン登録部1902、入力部としての特性データ収集部1903、分布解析部1904、基板グループ抽出部1905、入力部としての履歴データ収集部1906、処理頻度算出部1908、異常設備推定部1909およびデータ出力部1910で構成されている。また、特性データ収集部1903には入力装置1901、検査情報収集システム604および検査装置605が、履歴データ1906には工程情報収集システム1907が、データ出力部1910には出力装置1911がそれぞれ接続されている。
【0146】
入力装置1901は、例えばキーボードやマウスで構成される。この例では、入力装置1901は、異常設備推定装置1900に対して、異常設備推定対象となる基板の検査日時の範囲や検査装置で検出された欠陥数の範囲、または異常設備推定の対象となる製造工程の範囲などの異常設備推定対象の条件を入力するために用いられる。また、異常設備推定のために用いられる分布形状パターンも入力装置1901を用いて異常設備推定装置1900に登録される。
【0147】
パターン登録部1902は、図6に示した分布解析装置600のパターン登録部602と同様の機能を持ち、入力装置1901で定義された分布形状パターンを受け取り、データベースに記録する。入力装置1901から受け取る情報は分布形状パターンだけでなく、分布形状パターンと関連した情報、例えばその分布形状パターンの原因となる装置に関する情報などを分布形状パターンと関連付け(紐つけ)して記録しても良い。
【0148】
特性データ収集部1903は、入力装置1901から異常設備推定装置1900に送信された推定対象基板の条件に合致する基板群の検査データと基板の識別IDを検査情報収集システム604や検査装置605から収集して、分布解析部1904に渡す。このとき、検査日時などの情報を検査データと共に収集しても良い。
【0149】
検査情報収集システム604は、分布解析装置600と接続する検査情報収集システム604と同一のものである。検査情報収集システム604は異常設備推定装置1900と接続されており、特性データ収集部1903は検査情報収集システム604から必要な検査データを収集する。
【0150】
検査装置605は、分布解析装置600と接続する検査装置605と同一のものである。検査装置605は異常設備推定装置1900と接続されており、データ収集部1903は検査装置605から必要な検査データを収集する。
【0151】
分布解析部1904は、特性データ収集部1903から送られる推定対象基板群の特性データとパターン登録部1902に登録された分布形状パターンとを取得して、図1中のステップS102およびS103の処理を行う。そして、得られた各推定対象基板群の上記分布形状パターンに対する類似度を、それぞれ基板の識別IDと関連付けして基板グループ抽出部1905に渡す。分布解析部1904の内部構成は、分布解析装置600と同様に代表データ作成部606と類似度評価部607を持つ(図6参照)。
【0152】
基板グループ抽出部1905は、分布解析部1904から推定対象基板群の類似度を受け取り、類似度が予め定めた閾値以上であるような基板を抽出する。抽出された基板の識別IDは、履歴データ収集部1906および処理頻度算出部1908に渡される。
【0153】
履歴データ収集部1906は、基板グループ抽出部1905が推定対象基板群から抽出した基板グループの識別IDを受け取り、その基板グループに含まれた基板の処理履歴情報を工程情報収集システム1907から検索して、その検索結果を処理頻度算出部1908に渡す。
【0154】
処理頻度算出部1908は、基板グループ抽出部1905から受け取った基板の識別IDと履歴データ収集部1906から受け取った各基板の処理履歴情報とを用いて各工程に配置された設備別の処理枚数を算出して、異常設備推定部1909に渡す。
【0155】
異常設備推定部1909は、処理頻度算出部1909から受け取った設備別の処理枚数に対して統計処理を行って、設備間の処理枚数の偏りが最も大きい工程に割り当てられた処理枚数が最も多い設備を検出して異常設備推定結果としてデータ出力部1910に渡す。
【0156】
データ出力部1910は、異常設備推定部1908から異常設備推定結果を受け取り、出力装置1911で用いられるデータ形式に加工して出力装置1911に送信する。このとき、必要があればパターン登録部1902、特性データ収集部1903、分布解析部1904、履歴データ収集部1906などから各種のデータを受け取り、出力装置1911で用いる形式に加工しても良い。
【0157】
出力装置1911は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して異常設備推定装置1900による異常設備推定結果を出力する。
【0158】
なお、パターン登録部1902に複数の分布形状パターンを登録しておき、それぞれの分布形状パターンについて異常設備推定を実施しても良い。
【0159】
また、検査情報収集システム604、工程情報収集システム1907および検査装置605のいずれかから異常設備推定に必要な情報が全て取得できる場合、取得に必要な装置またはシステムのみが接続されていても良い。
【0160】
また、入力装置1901と出力装置1911は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのキーボードを備えて一体に構成した装置としてもよい。また、入力装置1901と出力装置1911は、異常設備推定装置1900に含まれていても良い。
【0161】
また、出力装置1911は、異常設備推定装置1900を通して入力装置1901、検査工程情報収集システム604、工程情報収集システム1907および検査装置605から異常設備推定に必要な情報以外の情報を受け取り、出力しても良い。
【0162】
上述の通り、パターン登録部1902および分布解析部1904は分布解析装置600と同様の機能を持つ。従って、図20に示すように、それらの構成要素を分布解析装置600として異常設備推定装置1900とは別に構成することも可能である。この図20に示す構成では、入力装置1901は分布解析装置600から各基板の類似度と識別IDを受け取って基板グループ抽出部1905に送信する。以後の処理は図19における異常設備推定装置1900による処理と同様に行われる。
【0163】
この異常設備推定装置1900によれば、上述の異常設備推定方法を実施することができる。
【0164】
なお、上述の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0165】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記異常設備推定方法を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の一実施形態の分布解析方法の概念を模式的に示す図である。
【図2】パターン検査の検査結果の例を示す図である。
【図3】矩形領域および分布形状パターンの概念を模式的に示す図である。
【図4】様々な要因による欠陥の分布形状の変動を模式的に示す図である。
【図5】様々な要因による欠陥数の変動を模式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の分布解析装置の構成を示す図である。
【図7】上記一実施形態の分布解析方法において代表データを作成する手順を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態における特性データの概念を模式的に示す図である。
【図9】上記代表データを作成するために代表データ作成用データ群から類似データ群を抽出する仕方を模式的に示す図である。
【図10】本発明の一実施形態における類似度の概念を模式的に示す図である。
【図11】上記類似度を評価する手順を示す図である。
【図12】上記一実施形態の分布解析装置の内部構成を具体的に示す図である。
【図13】上記代表データを定義する2つの態様を示す図である。
【図14】上記代表データがもつ分布形状、特性値の大きさからのずれ(違い)を説明する図である。
【図15】上記類似度とは別の定義をもつ類似度を算出する手順を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態の異常設備推定方法の適用対象となる基板の製造プロセスの例を模式的に示す図である。
【図17】上記製造プロセスにおける正常時と異常時の製造設備による処理枚数を比較した例を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態における異常設備推定の概念を模式的に示す図である。
【図19】本発明の一実施形態の異常設備推定装置の構成を示す図である。
【図20】図19の異常設備推定装置の変形例を示す図である。
【図21】或る従来技術を説明する図である。
【図22】別の従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0167】
600 分布解析装置
1900 異常設備推定装置
【技術分野】
【0001】
この発明は分布解析方法および装置に関し、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状に類似しているかどうかを評価する分布解析方法および装置に関する。
【0002】
また、この発明は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を自動的に推定する異常設備推定方法および装置に関する。
【0003】
また、この発明は、そのような分布解析方法または異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0004】
また、この発明は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、ハードディスク磁気ヘッドなどの薄膜デバイスの製造ラインでは、歩留まりの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。これらの検査には、例えば基板上に付着した異物等によって生じる回路パターンの欠陥を検出するパターン検査や、形成された回路の電気的な特性を検査する電気特性検査などがある。製造ラインではこれらの検査結果を日々監視しており、例えばパターン検査で検出された欠陥の個数の増大や電気特性検査で測定された電気的特性の変動に基づいて製造工程で異常が発生していないかどうかをチェックしている。基板に対して順次実行される複数の製造工程のうち、或る製造工程において異常が発生した場合には、これらの検査結果の調査や解析を行って迅速に原因を特定して対策を施すことで、歩留まり低下による損害を最小限に食い止めることができる。そのため、製造ラインには、検査情報や各製造装置の処理履歴を収集するシステムが設けられている。
【0006】
製造工程で異常が発生した場合、検査結果は基板表面上の特性的な分布として現れることが多い。これらの分布は異常の状態によって異なり、異常原因と密接に関係しているので、過去の特性分布の事例は異常の原因と共にデータベース化されて、異常発生時の異常原因究明や対策方法の意思決定に活用される。従って、検査工程での特性分布の傾向を早期に検出することが重要となるが、実際には特性分布は数値的には表現し難く、特性値の時間的変化の監視や通常の統計処理では、特性分布の検出や監視は困難である。
【0007】
これらの困難を克服するため、あらかじめ登録した分布の形状的な特徴と基板の特性の分布を比較し、登録された分布と類似した特性分布を持つ基板を検出する手法が提案されている。そのような手法としては、例えば特許文献1(特開平11−45919号公報)に、特性の分布を2値画像として扱い、予め登録した分布形状の2値画像と基板の特性分布の2値画像に対して画像処理で用いられるテンプレートマッチングを行う方法が記載されている。具体的には、同文献の方法では、基板表面に対して設定された格子状の画素毎に、検査工程で基板上に検出された欠陥数を集計する。次に、各画素毎の欠陥数に対して予め定めた閾値で閾値処理を行い、各画素毎の欠陥数を2値化する。この結果から、基板表面の全域の2値画像を作成し、同じく2値画像として事前に作成した図21に例示する不良分布のテンプレートに対して画像認識におけるテンプレートマッチングを行い、テンプレートと2値画像との照合率が高い場合にテンプレートで定義した不良分布に一致すると判定する。
【0008】
また、別の方法としては、例えば特許文献2(特開2003−100825号公報)には、図22(a)に示すように欠陥が集中する領域をテンプレートとして定義し、分析対象の基板は、図22(b)に示すように基板の全欠陥数に対するテンプレート領域内の欠陥数が高い基板ほど一致度が高いと判断する方法が記載されている。また、同文献に記載されている別の方法では、基板表面に設定された格子状の小領域に対する濃度値からなるテンプレートを定義し、そのテンプレートの濃度値と分析対象の基板について各小領域毎に集計された欠陥数との相関係数を一致度として用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−45919号公報
【特許文献2】特開2003−100825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の方法では、次に述べる2つの理由により精度が良くないという問題がある。
【0010】
第1の理由としては、それらの文献に記載の方法では、常に同一のテンプレートで定義された分布形状パターンとの比較を行っているため、実際に発生する欠陥の分布の変動に対応できないことが挙げられる。
【0011】
欠陥の分布は異常原因と密接に関係しているが、同一の異常原因によって発生する欠陥の分布が常に同一の形状を有するとは限らない。例えば、図4(a)〜図4(c)に示すように、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって欠陥の分布形状(欠陥が集中する位置、形状および面積を指す。)が変動することがある。図4(a)は欠陥の分布形状が比較的小面積の円形である例、図4(b)は欠陥の分布形状が楕円である例、図4(c)は欠陥の分布形状が図4(a)のものよりも大面積の円形である例をそれぞれ示している。上記特許文献1、2に記載の方法のように常に同一のテンプレートと比較を行っていたのでは、このような分布の変動には対応できない。
【0012】
第2の理由としては、それらの文献に記載の方法では、欠陥数の大きさに関係なく欠陥の分布形状のみを評価しているため、欠陥数の大きさが評価に反映されないということが挙げられる。
【0013】
異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状だけでなく、欠陥数の大きさも変動する。例えば図5(a)は或る異常原因によって発生した欠陥数とその異常原因の影響を受けた基板数との関係(該当基板数の分布)を示し、図5(b)はその同じ異常原因の影響を受けた該当基板数の分布がシフトした場合を示している。異常原因に対する該当基板数の分布が図5(a)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す典型的な欠陥数をもつ基板201Aは、その異常原因を特定するために重視するのが望ましい。一方、同じ異常原因であっても、その異常原因に対する該当基板数の分布が図5(b)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す欠陥数をもつ基板201Bは、図5(a)の場合に比して、その異常原因を特定するために重視しないのが望ましい。
【0014】
しかし、特許文献1の方法では、各画素毎の欠陥数を2値化しているため、画素内の欠陥数が設定された閾値以上の場合は全て同一の値として扱われる。このため、欠陥数の大きさが評価に反映されない。また、特許文献2に記載の第1の方法および第2の方法では、テンプレートで定義された領域の内外の欠陥数の比率で類似性を評価しているため、欠陥数そのものは評価対象ではなく、欠陥数の大きさが評価に反映されない。
【0015】
このような理由により、上記特許文献1、2に記載の方法では、評価の精度が良くないという問題がある。
【0016】
そこで、この発明の課題は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法および装置であって、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、常に精度良く評価を行える分布解析方法および装置を提供することにある。
【0017】
また、この発明の課題は、基板の検査結果に対してそのような分布解析方法による類似度を用いることにより、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を自動的に推定する異常設備推定方法および装置を提供することにある。
【0018】
また、この発明の課題は、そのような分布解析方法または異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0019】
また、この発明の課題は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、この発明の分布解析方法は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義し、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成し、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価することを特徴とする。
【0021】
ここで、「解析対象データ」とは、平面に沿って何らかの特性が分布しているものであれば、どのようなデータでも良い。
【0022】
また、「多値」とは、2値以上、好ましくは3値以上を指す。
【0023】
この発明の分布解析方法に対応した処理を、例えばコンピュータに実行させれば、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に評価することができる。しかも、上記代表データは上記解析対象データの変動を反映したものである。したがって、この分布解析方法では、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0024】
なお、上記代表データが上記分布形状パターンに類似しているか否かは、上記代表データの特性値の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似しているか否かに基づいて判断するのが望ましい。
【0025】
一実施形態の分布解析方法では、上記代表データの作成は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1ステップと、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2ステップとを備えることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の分布解析方法によれば、上記代表データを、容易に作成できる。
【0027】
一実施形態の分布解析方法では、上記第1ステップは上記第1データ群の上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数が予め定めた閾値以上であるようなデータを上記第2データ群として抽出することを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の分布解析方法では、上記相関係数を用いることによって、特性値の大きさ(絶対値)に関係なく、有用な第2データ群を抽出することができる。抽出された第2データ群は、特性値の大きさ(絶対値)を問わずに、特性値の相対的な大小関係の観点で上記分布形状パターンに類似したものである。
【0029】
一実施形態の分布解析方法では、上記第2ステップは、上記第1ステップで得られた第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均して、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の分布解析方法によれば、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することで、上記代表データは、上記第2データ群のデータ、ひいては上記解析対象データの変動を反映したものになる。
【0031】
一実施形態の分布解析方法では、上記第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均するとき、上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出することを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の分布解析方法によれば、単純平均を算出する場合に比して、上記代表データは、より上記分布形状パターンに類似したものとなる。この結果、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をより重視したものとなる。
【0033】
一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求める処理は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3ステップと、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第2の差異を算出する第4ステップと、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする。
【0034】
ここで「基準データ」は、類似度算出の基準となる固定されたデータであれば足りる。例えば「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。
【0035】
この一実施形態の分布解析方法では、上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて、つまり、上記基準データがもつ特性値の分布、上記解析対象データがもつ特性値の分布に対して上記解析対象データがもつ特性値の分布が相対的にどのような位置づけにあるかに応じて、上記類似度が算出される。このようにした場合、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データを一定の尺度で評価できる。
【0036】
一実施形態の分布解析方法では、上記第5ステップで算出する類似度は、上記第2の差異の逆数を上記第1の差異の逆数と上記第2の差異の逆数との和で割ることで得られることを特徴とする。
【0037】
一実施形態の分布解析方法では、
上記第3ステップで算出する第1の差異は上記基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であり、
上記第4ステップで算出する第2の差異は上記代表データの特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であることを特徴とする。
【0038】
一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求めるとき、上記解析対象データの特性値の分布形状が上記代表データの特性値の分布形状と類似しているか否かの判定を行って、この判定結果に応じて上記類似度を算出することを特徴とする。
【0039】
この一実施形態の分布解析方法では、上記類似度を求めるために、特性値の分布形状(特性値の相対的な大小関係によって表される)が加味される。この結果、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をより重視したものとなる。
【0040】
一実施形態の分布解析方法では、上記判定を行うとき、上記解析対象データの上記各矩形領域に対応する特性値と上記代表データの上記各矩形領域に対応する特性値との間の相関係数を算出し、この相関係数が予め定めた閾値以上であるか否かを判断することを特徴とする。
【0041】
この一実施形態によれば、上記判定を容易に実行できる。
【0042】
一実施形態の分布解析方法では、上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする。
【0043】
ここで「基板」は、薄膜デバイスが作製されるガラス基板、半導体デバイスが作製されるウェハなどを広く指す。
【0044】
この一実施形態の分布解析方法では、上記基板を処理する製造工程で発生した様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0045】
この発明の異常設備推定方法は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定方法であって、
請求項11に記載の分布解析方法を実施して上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出することを特徴とする。
【0046】
この発明の異常設備推定方法によれば、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出するので、異常が発生した製造装置を精度良く推定することができる。
【0047】
この発明の分布解析装置は、平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析装置であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義するパターン登録部と、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する代表データ作成部と、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する類似度評価部とを備えることを特徴とする。
【0048】
ここで、「解析対象データ」とは、平面に沿って何らかの特性が分布しているものであれば、どのようなデータでも良い。
【0049】
また、「多値」とは、2値以上、好ましくは3値以上を指す。
【0050】
この発明の分布解析装置によれば、上記発明の分布解析方法を実施することができる。すなわち、上記パターン登録部、代表データ作成部、類似度評価部を例えばコンピュータプログラムによって構成して、処理を実行させれば、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0051】
一実施形態の分布解析装置では、上記代表データ作成部は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1部分と、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2部分とを備えることを特徴とする。
【0052】
この一実施形態の分布解析装置によれば、上記代表データを、容易に作成できる。
【0053】
一実施形態の分布解析装置では、上記類似度評価部は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3部分と、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との第2の間の差異を算出する第4部分と、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5部分とを備えることを特徴とする。
【0054】
ここで「基準データ」は、類似度算出の基準となる固定されたデータであれば足りる。例えば「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。
【0055】
この一実施形態の分布解析装置では、上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて、つまり、上記基準データがもつ特性値の分布、上記解析対象データがもつ特性値の分布に対して上記解析対象データがもつ特性値の分布が相対的にどのような位置づけにあるかに応じて、上記類似度が算出される。このようにした場合、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データを一定の尺度で評価できる。
【0056】
一実施形態の分布解析装置では、上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする。
【0057】
ここで「基板」は、薄膜デバイスが作製されるガラス基板、半導体デバイスが作製されるウェハなどを広く指す。
【0058】
この一実施形態の分布解析装置では、上記基板を処理する製造工程で発生した様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0059】
この発明の異常設備推定装置は、基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定装置であって、
請求項13に記載の分布解析装置を備え、この分布解析装置によって上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出する異常設備推定部を備えたことを特徴とする。
【0060】
この発明の異常設備推定装置によれば、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出するので、異常が発生した製造装置を精度良く推定することができる。
【0061】
この発明のプログラムは、上記発明の分布解析方法をコンピュータに実行させるための分布解析プログラムである。
【0062】
別の局面では、この発明のプログラムは、上記発明の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるための異常設備推定プログラムである。
【0063】
この発明の記録媒体は、上記発明の分布解析プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0064】
別の局面では、この発明の記録媒体は、上記発明の異常設備推定プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0066】
図1は、基板の製造工程において異物などによって生じる回路パターンの欠陥を特性値として検出するパターン検査の結果を例に、本発明の一実施形態の分布解析方法の概念を模式的に示している。パターン検査とは、図2に示すように、基板201に形成された回路パターンの欠陥202の座標を検出する検査工程である。或る製造装置に異常が発生した場合、基板201の面内でその異常に固有の領域に欠陥202が集中して分布することが多い。この分布解析方法は、製造工程でパターン検査を経た基板群から特定の領域に欠陥が集中する基板を検出する場合に適用される(後述するように、この分布解析結果に基づいて、その欠陥分布の原因となった製造装置(異常設備)を早期に特定することができる。)。
【0067】
この分布解析方法では、ステップS101で、解析対象基板と比較するための特性値の分布形状を分布形状パターンとして登録する。分布形状パターンの例を図3に示す。分布形状パターンは、図3(a)に示すように基板の表面を格子状に区分して複数の矩形領域301,301,…を設定し、各矩形領域301毎に濃度値を設定することで定義される。濃度値は、0〜1の範囲内で多値(この例では3値以上)をとり得るものとする。各矩形領域301毎に設定された濃度値の集合は、基板上における特性値の相対的な大小関係を表す。パターン検査では、各矩形領域内の欠陥数が「特性値」に相当するので、各矩形領域毎に設定された濃度値は、欠陥密度を0〜1の範囲内の相対値に変換したものに相当する。図3(b)および図3(c)に分布形状パターンの例を示す。図中の領域の色は濃度値を表しており、色が濃いほど濃度値が高い。従って、図3(b)の分布形状パターン302は基板右下の領域に欠陥が集中して発生するパターンを表し、また、図3(c)の分布形状パターン303は基板左上の領域に欠陥が集中して発生するパターンを表す。通常、製造工程では、欠陥の分布形状が異なれば、それぞれの領域内に発生する欠陥数(生の値)が異なる。上述の濃度値は、基板表面上の特性値の相対的な大小関係のみを表すので、欠陥数の大きさ(生の値)に関係なく、基板表面上でどの領域に欠陥が集中して発生するかという相対的な観点のみから、容易に設定され得る。上記分布形状パターンは、解析担当者が製造工程に関する知見を利用して手入力しても良く、過去の事例などを利用して自動的に作成しても良い。
【0068】
次に、図1中のステップS102では、分布形状パターンと後述する代表データ作成用データ群とから、上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する。
【0069】
ここで、図4および図5を用いて、そのような代表データの必要性を説明する。先に触れた図4(a)〜図4(c)は、或る異常設備によって発生した欠陥の分布の例を示している。同一の異常設備が起因となっていても、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状(つまり、欠陥が集中する位置、形状、面積)が異なることがある。例えば図4(a)の欠陥分布401は、欠陥の分布形状が図3(c)の分布形状パターン303のものとほぼ一致する。一方、図4(b)の欠陥分布402は、欠陥の集中する領域の形状が楕円形であり、図3(c)の分布形状パターン303のもの(円形)とは一致しない。また、図4(c)の欠陥分布403は、欠陥の集中する領域の面積が図3(c)の分布形状パターン303のものよりも広く、一致しない。実際に図4(a)の欠陥分布401が発生している状況下では、図3(c)の分布形状パターン303と一致する図4(a)の欠陥分布401が発生した基板を検出すれば異常設備を推定でき、したがって、図4(b)の欠陥分布402を重視すべきではないと考えられる。一方、図4(b)の欠陥分布がより多く発生している状況下では、異常設備を推定するために、上記の場合に比して図4(b)の欠陥分布402を重視する方が適切であると考えられる。
【0070】
また、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、欠陥の分布形状だけでなく、欠陥数も変動する。既述のように、図5(a)は或る異常原因によって発生した欠陥数とその異常原因の影響を受けた基板数との関係(該当基板数の分布)を示し、図5(b)はその同じ異常原因の影響を受けた該当基板数の分布がシフトした場合を示している。異常原因に対する該当基板数の分布が図5(a)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す典型的な欠陥数をもつ基板201Aは、その異常原因を特定するために重視するのが望ましい。一方、同じ異常原因であっても、その異常原因に対する該当基板数の分布が図5(b)中に示す分布になっている状況下では、点501が示す欠陥数をもつ基板201Bは、図5(a)の場合に比して、その異常原因を特定するために重視しないのが望ましい。
【0071】
このように、現実には、異常原因の発生時期や程度、状態の違いによって、特性の分布形状が変化したり、特性値の大きさが変化したりするなど、様々な要因によって解析対象基板の特性データ(これを適宜「解析対象データ」と呼ぶ。)が変動する。そこで、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、欠陥が発生した基板(のデータ)を適切に検出できるように、上述の代表データが必要とされる。代表データは、特性値の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映したものである。代表データは解析対象データとの比較の対象となる。
【0072】
上述の図1中のステップS102では、そのような代表データを、分布形状パターンのデータと、解析対象基板と同時期に同じ製造工程で製造された基板群の特性データがなす第1のデータ群(以下、これを「代表データ作成用データ群」と呼ぶ。)とを用いて作成する。代表データ作成用データ群には、解析対象基板の特性データが含まれていても良い。具体的な代表データの作成方法は、後の実施例で説明する。
【0073】
最後に、図1中のステップS103では、解析対象基板の特性データ(解析対象データ)と上記ステップS102で作成した代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを定量的に(数値で)表す類似度を求める。この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に評価する。
【0074】
このようにした場合、上記代表データ作成用データ群から得られた上記代表データは上記解析対象データの変動を反映したものであるから、様々な要因によって解析対象データが変動したとしても、上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを常に精度良く評価できる。
【0075】
なお、本発明による分布解析方法は基板のパターン検査のみに適用されるものではなく、特性が平面的に分布しているデータであれば適用可能である。
【0076】
図6は、上述の分布解析方法(図1参照)を実施するのに適した本発明の一実施形態の分布解析装置600の構成を示している。この分布解析装置600は、パターン登録部602、入力部としてのデータ収集部603、代表データ作成部606、類似度評価部607、およびデータ出力部608から構成されている。また、この分布解析装置600のデータ収集部603には、入力装置601、検査情報収集システム604、および検査装置605が接続されており、データ出力部608には出力装置609が接続されている。
【0077】
入力装置601は、例えばキーボードやマウスで構成される。この例では、入力装置601は、分布解析装置600に対して、分布形状パターンの定義や解析対象基板の識別ID、代表データ作成用データ群をなす条件(つまり、解析対象基板と同時期に同じ製造工程で製造された基板群の特性データのうち、代表データ作成用データ群として用いられるための条件)の指定などを入力するために用いられる。
【0078】
パターン登録部602は、入力装置601で定義された分布形状パターンを受け取り、データベースに記録するステップS101の処理を行う。入力装置601から受け取る情報は分布形状パターンだけでなく、分布形状パターンと関連した情報、例えばその分布形状パターンの原因となる装置に関する情報などを分布形状パターンと関連付け(紐つけ)して記録しても良い。
【0079】
データ収集部603は、入力装置601から分布解析装置600に送信された解析対象基板の識別情報や代表データ作成用データ群をなす条件に合致する基板の特性データを検査情報収集システム604や検査装置605から収集する。そして、データ収集部603は、得られた代表データ作成用データ群を代表データ作成部606に渡すと共に、解析対象基板の特性データを類似度評価部607に渡す。このとき、必要があれば基板の識別IDや検査日時などの情報を検査データと共に収集しても良い。
【0080】
検査情報収集システム604は、製造工程内に配置された検査装置から検査情報を収集する検査情報収集システムである。この例では、検査情報収集システム604は検査装置605と接続されており、検査装置605で処理された基板の検査データや検査日時、基板の識別IDなどが蓄積されている。また、検査情報収集システム604は分布解析装置600と接続されており、データ収集部603は検査情報収集システム604から必要な検査データを収集する。
【0081】
検査装置605は、製造工程内に配置されており、実際に基板の検査を行う。検査装置605は分布解析装置600と接続されており、データ収集部603は検査装置605から必要な検査データを収集する。
【0082】
代表データ作成部606は、データ収集部603が検査情報収集システム604や検査装置605から収集した代表データ作成用データ群とパターン登録部602に登録された分布形状データとを受け取り、ステップS102の処理を行って代表データを作成する。作成された代表データは類似度評価部607に渡される。
【0083】
類似度評価部607は、データ収集部603が収集した解析対象基板の特性データと代表データ作成部606が作成した代表データとを受け取り、ステップS103の類似度評価処理を行う。算出された類似度はデータ出力部608に渡される。このとき、必要があれば基板の識別IDや検査日時などの条件、代表データなどを類似度と共に送っても良い。
【0084】
データ出力部608は、類似度評価部608が算出した類似度を受け取り、出力装置609で用いるデータ形式に加工して出力装置609に送信する。このとき、必要があればパターン登録部602、データ収集部603、代表データ作成部606などから各種のデータを受け取り、出力装置608で用いる形式に加工しても良い。
【0085】
出力装置609は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して分布解析装置600による分布解析結果を出力する。
【0086】
なお、パターン登録部602には複数の分布形状パターンが登録されていても良い。この場合、代表データ作成部606は登録された分布形状パターンの各々に対して代表データを作成する。そして、類似度評価部607は、解析対象基板の特性データと各々の代表データとの間の類似度を評価する。
【0087】
また、検査情報システム604および検査装置605のいずれか一方から分布解析に必要な情報を全て取得できる場合、取得できる一方のみが接続されていてもよい。
【0088】
また、解析に必要な条件を分布解析装置600内部に保存しておき、検査装置605で基板が検査されると自動的にデータ収集部603が解析対象基板の特性データと代表データ作成用データ群を取得しても良い。
【0089】
また、入力装置601と出力装置609は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのキーボードを備えて一体に構成にした装置としてもよい。また、入力装置601と出力装置609は、分布解析装置600に含まれていても良い。
【0090】
また、出力装置609は、分布解析装置600を通して入力装置601、検査情報収集システム604または検査装置605から分布解析に必要な情報以外の情報を受け取り、出力しても良い。
【0091】
この構成の分布解析装置600により、上述の分布解析方法を実施することができる。
【0092】
なお、上述の分布解析方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムとして構築してもよい。
【0093】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしてもよい。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記分布解析方法を実行することが可能である。
【0094】
なお、本発明はパターン検査の分布解析装置600に限定されるものではなく、特性が平面的に分布しているデータであれば適用可能である。その場合、データ収集部603は、対象となるデータが保存されている情報収集システムや特性計測装置に接続される。
【実施例1】
【0095】
次に、実施例1として、図1中のステップS102およびステップS103を実現する方法を具体的に説明する。
【0096】
図7に、ステップS102を実現するための手順として、ステップS1021とステップS1022とを示す。ステップS102におけるステップS1021では、代表データ作成用データ群から、基板上の特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2のデータ群(以下、これを「類似データ群」と呼ぶ。)を抽出する。類似データ群は、この類似データ群に含まれている特性データ(特性値)の分布形状が上記分布形状パターンの濃度値の分布形状に類似するように選択する必要がある。ただし、類似データ群には、分布形状が類似しない特性データが含まれていてもよく、分布形状が類似する特性データの全てが含まれている必要はない。また、ステップS102におけるステップS1022では、上記ステップS1021で抽出された類似データ群の分布から類似データ群の分布を最もよく表す特性データを算出し、算出した特性データを上述の代表データとする。
【0097】
次に、ステップS1021において代表データ作成用データ群から類似データ群を抽出する方法を具体的に説明する。
【0098】
代表データ作成用データ群に含まれる各特性データは、解析対象基板の特性データと同様に、回路パターンの欠陥の位置を表す座標である。そこで、代表データ作成用データ群に含まれる各特性データと分布形状パターンとを比較するために、まず、図8に例示するように、代表データ作成用データ群を与える各基板801の面を、分布形状パターンを定義したのと同様に、格子状の複数の矩形領域301に区画して、各矩形領域301内の欠陥数をその矩形領域の特性値としてカウントする。各基板上の矩形領域301の数をg個とすると、この処理によって代表データ作成用データ群の各特性データは、分布形状パターンと同じくg個の数字の組で表現される。図8中に例示する各矩形領域301内の数字は、図2中に示した欠陥分布をもつ基板201について各矩形領域301毎に欠陥数をカウントして得られたものである。数字の記述されていない矩形領域の特性値は0である。以下、説明を簡略化するため、特に指定しない限りg=2とする。
【0099】
図9は、分布形状パターン901と代表データ作成用データ群について矩形領域としての領域1、領域2における濃度値および特性値を、g次元特性データ空間にプロットした例である。分布形状パターン901や代表データ作成用データ群をなす各基板のデータ902,903をプロットすると、原点と特性データ(プロットされた点)との距離は濃度値や特性値の大きさを表す。したがって、特性値が大きいデータほど原点から離れた位置にプロットされる。また、複数の矩形領域間の特性値の相対的な大小関係(この例では比)が等しい基板の特性データは特性値の大きさによらず同一直線状にプロットされる。したがって、原点と特性データのなす角度はそのデータの分布形状を表す。それらを踏まえて考えると、例えば或る異常設備が分布形状パターン901とほぼ等しい分布形状で欠陥を発生させている場合、図9(a)に示すように、代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち類似データ群として抽出されるべきデータ群902は、分布形状パターン901を表す点と原点とを通る直線905上の或る点を中心とし、かつ正規分布的な広がりをもって密に分布する。その場合、類似データ群として抽出されるべきでないデータ群は、データ群902が存在する範囲以外に疎に散らばって存在している。また、或る異常設備が分布形状パターン901から若干ずれた分布形状で欠陥を発生させている場合、図9(b)に示すように、代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち類似データ群として抽出されるべきデータ群903は、分布形状パターン901を表す点と原点とを通る直線905から少しだけずれた点を中心とし、かつ正規分布的な広がりをもって密に分布する。
【0100】
そこで、分布形状パターン901に対して解析対象データの変動を反映した許容範囲として、分布形状パターン901を表す点を含む態様で、原点から見込んだ或る角度範囲904を設定する。代表データ作成用データ群に含まれる特性データのうち、そのデータを表す点が上記角度範囲904に含まれているデータは、類似データ群として抽出されるべきデータである。したがって、このような特性データの集合を類似データ群として抽出する。一方、そのデータを表す点が上記角度範囲904に含まれていないデータは、類似データ群として抽出されるべきでないデータであるから、抽出しない。
【0101】
代表データ作成用データ群に含まれる特性データが上述の角度範囲904に含まれるかどうかは、例えば、2組の特性データのなす角度を評価する統計量である相関係数を用いて判断できる。分布形状パターンTと代表データ作成用データ群に含まれる或る特性データMがg個の矩形領域を持ち、それぞれg次元ベクトルT=(t1,…,tg)、M=(m1,…,mg)で表されるとする。このとき、分布形状パターンTと特性データMの相関係数rは次の(数1)で表される。
【数1】
この相関係数rは−1から1の範囲を取り、値が大きいほど分布形状パターンTと特性データMのなす角度は近い。そこで、相関係数rが予め定めた閾値以上であるような特性データMを分布形状パターンTと類似した類似データ群として抽出する。
【0102】
次に、ステップS1022における代表データを算出する方法を具体的に説明する。ステップS1201の処理によって、類似データ群に含まれる特性データの大部分は分布形状パターン901に類似するデータになっている。分布形状パターン901に類似しないデータは非常に少なく、角度範囲904に一様且つ疎に分布していると考えられる。そこで、類似データ群に含まれる特性データの平均値を代表データとすることで、分布形状パターン901に類似しないデータの寄与を相対的に少なくして、分布形状パターンに類似した代表データを容易に求めることができる。即ち、類似データ群にn個の特性データM1,…,Mnが含まれる時、代表データP=(p1,…,pg)は次の(数2)で表される。
【数2】
【0103】
このようにして、分布形状パターン901に類似し、かつ解析対象データの変動を反映した代表データPを作成することができる。
【0104】
次に、図1中のステップS103における類似度を求める処理について具体的に説明する。
【0105】
まず、図10を用いて類似度の概念を説明する。図10のg次元特性データ空間には、それぞれ解析対象基板の特性データ1001を表す点、図1におけるステップS102で作成した代表データ1002を表す点、予め定められた基準データ1003を表す点がプロットされている。ここで、基準データとは、類似度算出の基準となる固定されたデータであり、この例では異常設備が存在しない状態の製造工程において製造された基板の特性データを用いている(なお、この例のように「特性値」が基板上の「欠陥数」である場合は、「基準データ」として基板上の全域にわたって「欠陥数ゼロ」であることを表すデータを設定できる。)。ここで、上記類似度は、解析対象データ1001が代表データ1002に類似している度合いを表す。具体的には、基準データ1003がもつ特性値の分布と解析対象データ1001がもつ特性値の分布との間の第1の差異1004と、代表データ1002がもつ特性値の分布と解析対象データ1001がもつ特性値の分布との間の第2の差異1005とを比較して、第1の差異1004に比して第2の差異1005が小さくなるにつれて、類似度が大きくなるように定量的に定められた値である。
【0106】
図11は、図1中のステップS103において、このような類似度を算出するための手順を示している。図11に示すように、ステップS1031では、基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の第1の差異1004を算出する。次に、ステップS1032では、図1のステップS102で作成した代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の第2の差異1005を算出する。次に、ステップS1033では、上記2つの差異1004,1005から上記類似度を算出する。
【0107】
より具体的には、ステップS1031で基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の第1の差異1004を求めるには、基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の距離D0を求める。解析対象基板の特性データXをg次元ベクトルX=(x1,…,xg)、基準データBをg次元ベクトルB=(b1,…,bg)とすると、上記の距離D0は以下の式で算出される。
【数3】
【0108】
パターン検査では基板上に欠陥が存在しない状態を基準とするのが望ましいので、基準データBとしてB=(0,…,0)とする。なお、(数3)はユークリッド距離と呼ばれる距離尺度である。
【0109】
ステップS1032で代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の第2の差異1005を求めるには、代表データPと解析対象基板の特性データXとの距離Dを求めればよい。距離Dは、ステップS1031の(数3)において基準データBを代表データPに置き換えることで求めることができる。
【0110】
次にステップS1033では距離D0と距離Dとを比較して定量的な類似度Sを算出する。この例では、類似度Sとして、距離D0と比較して距離Dが小さいほど大きな値になり、且つどのような解析対象基板のデータ1001や代表データ1002であっても評価尺度が一定になるように、次の(数4)で定義する。
【数4】
【0111】
この(数4)で定義された類似度Sは必ず0〜1の範囲内の値になるので、どのような分布形状パターンや解析対象データであっても一定の尺度での評価が可能となる。
【0112】
このようにして、図1の処理を具体的に実現することができる。すなわち、予め定義した分布形状パターンに対して、図7中のステップS1021〜ステップS1022の処理によって代表データを作成し、かつ図11中のステップS1031〜ステップS1033の処理によって類似度を算出することで、この類似度に応じて解析対象データが分布形状パターンに類似しているかどうかを定量的に一定の尺度評価することができる。
【0113】
なお、上記説明では、解析対象基板の特性データ1001と基準データ1003との間の第1の差異1004、および解析対象基板の特性データ1001と代表データ1002との間の第2の差異1005はユークリッド距離(数3)で算出したが、マハラノビス距離などユークリッド距離以外の距離尺度を用いて差異を算出しても良い。
【0114】
図12は、上述の分布解析方法(図1、図7および図11参照)を実施するのに適した本発明の一実施形態の分布解析装置600の詳細な構成を示している。
【0115】
データ収集部603の内部構成要素である格子データ変換部1201は、データ収集部603が検査情報収集システム604および検査装置605から収集した代表データ作成用データ群および解析対象基板のパターン検査データを座標単位の情報から図8に示すような各矩形領域301毎の欠陥数に変換する。変換後の特性値(各矩形領域の欠陥数)は、各基板の特性データとしてデータ収集部603によって代表データ作成部606および類似度評価部607に送られる。
【0116】
代表データ作成部606の内部構成要素である類似データ群抽出部1202は、データ収集部603から送られた代表データ作成用データ群とパターン登録部602に登録された分布形状データを受け取り、図7のステップS1021の処理を行って類似データ群を抽出する。抽出された類似データ群は、同じく代表データ作成部606の内部構成要素である代表データ算出部1203に渡される。
【0117】
代表データ作成部606の内部構成要素である代表データ算出部1203は、同じく代表データ作成部606の内部構成要素である類似データ群抽出部1202から類似データ群を受け取り、図7のステップS1022の処理を行って類似データ群の特性値の分布から代表データの特性値を算出する、つまり代表データを作成する。
【0118】
類似度評価部607の内部構成要素である第1距離算出部1204は、図示しないメモリ上に定数として記録された基準データ1003と代表データ作成部603から送られた解析対象基板の特性データ1001とを受け取り、図11のステップS1031の処理を行って基準データ1003と解析対象基板の特性データ1001との間の距離D0を算出する。算出された距離D0は、同じく類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206に送られる。
【0119】
類似度評価部607の内部構成要素である第2距離算出部1205は、代表データ作成部606が作成した代表データ1002とデータ収集部から送られた解析対象基板の特性データ1001とを受け取り、図11のステップS1032の処理を行って代表データ1002と解析対象基板の特性データ1001との間の距離Dを算出する。算出された距離Dは、同じく類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206に送られる。
【0120】
類似度評価部607の内部構成要素である類似度算出部1206は、同じく類似度評価部607の内部構成要素である第1距離算出部1204と第2距離算出部1205が算出した各々の距離D0,Dを受け取り、図11のステップS1033の処理を行って分布形状パターンに対する解析対象基板の特性データの類似度Sを算出する。算出した類似度Sは、データ出力部608に送られる。
【0121】
その他の分布解析装置600の構成は、図6と同様である。
【0122】
この構成の分布解析装置600により、上述の分布解析方法を実現することができる。
【実施例2】
【0123】
次に、実施例2として、図7中のステップS1022において代表データを算出する別の方法を説明する。
【0124】
上述の実施例1では、類似データ群に含まれる特性データの平均値、より詳しくは単純平均して得られた値を代表データとした。これに対して、この実施例2では、単純平均ではなく、類似データ群について各矩形領域毎に特性値を平均するとき、各矩形領域に対応する特性値と分布形状パターンの各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出する。そして、加重平均して得られた値を代表データとする。
【0125】
具体的には、図7のステップS1022において、n個の特性データからなる類似データ群M1,…,Mnと分布形状パターンTとの相関係数をri(i=1,…,n)とする。相関係数riは、図7のステップS1021において、(数1)によって既に算出された値である。このとき、代表データPとして、類似データ群に含まれる各データに対して相関係数rの重みを付けた加重平均を、次の(数5)によって算出する。
【数5】
【0126】
図13を用いて、実施例1で算出する代表データと実施例2で算出する代表データとの違いを説明する。図13(a)は、或る分布形状パターン1301に対して類似データ群1302が抽出された場合において、実施例1の方法によって代表データ1303を算出した態様を示している。一方、図13(b)は、或る分布形状パターン1301に対して類似データ群1302が抽出された場合において、実施例2の方法によって代表データ1303を算出した態様を示している。なお、図13中には、分布形状パターン1301を表す点と原点とを通る直線1305と、その直線1305を含むように設定された、解析対象データの変動を反映した許容範囲としての角度範囲1304とが併せて示されている。
【0127】
実施例1では代表データ1303は類似データ群の単純な平均値として算出されるので、図13(a)に示すように、g次元特性データ空間で、代表データ1303を表す点は類似データ群1302を表す点(点の集合)のほぼ中央に位置する。一方、実施例2では代表データ1303は(数5)によって加重平均で算出されるので、図13(b)に示すように、g次元特性データ空間で、代表データ1303を表す点は、実施例1で作成されたものに比して、分布形状パターン1301を表す点と原点とを通る直線1305に近い位置に代表データ1303がプロットされる。この結果、実施例2の方法によって代表データ1303を算出した場合、実施例1の方法によって代表データを算出した場合に比して、図1におけるステップS103での評価結果は、解析対象基板の特性データが分布形状パターン1301の分布形状に近いほど、より大きな類似度Sに評価される。
【0128】
このようにした場合、類似度の評価は、実施例1の場合に比して、分布形状パターン1301の分布形状をより重視したものとなる。
【実施例3】
【0129】
次に、実施例3として、図1中のステップS103において類似度を算出する別の方法を説明する。
【0130】
図14に示すように、g次元特性データ空間における点として代表データ1401が得られたとする。なお、図13中には、代表データ1401を表す点と原点とを通る直線1405が併せて示されている。既に述べたように、g次元特性データ空間で、原点と特性データ(プロットされた点)との距離は特性値の大きさを表す。また、原点と特性データのなす角度はそのデータの分布形状を表す。一般的に言って、代表データ1401に対する特性値の大きさの違い1402に比して、分布形状の違い1403を重視した解析を行うことが多い。しかしながら、そのような解析では、図11におけるステップS1033において(数4)によって類似度を算出すると、特性値の大きさの違い1402と形状の違い1403とが同じように扱われるため、目的の解析結果を得られないことがある。そこで、より分布形状の違い1403を重視して類似度を評価しても良い。
【0131】
このように、より分布形状の違い1403を重視して類似度を評価する具体な方法としては、例えば図1におけるステップS103において、代表データ1401と解析対象基板の特性データとがなす角度が或る範囲内にある場合についてのみ(数4)で類似度を算出することが考えられる。図15にその手順を示す。
【0132】
すなわち、まずステップS1030で代表データと解析対象基板の特性データとの間の相関係数を既述の(数1)によって求める。求めた相関係数の値が予め定めた閾値以上である場合、代表データと解析対象基板の特性データとの分布形状の差異は許容範囲であると判断して、実施例1におけるステップS1031〜ステップS1033の処理で類似度を求める。一方、ステップS1030で求めた相関係数の値が予め定めた閾値未満であった場合、代表データと解析対象基板の特性データとの分布形状の差異は許容範囲外であると判断して、ステップS1034にて類似度を0(ゼロ)とする。この結果、ステップS1033またはステップS1034で求めた類似度が解析対象基板の特性データの類似度となる。
【0133】
このようにした場合、類似度の評価は、分布形状パターンの分布形状をさらに重視したものとなる。
【実施例4】
【0134】
次に、実施例4として、上記分布解析方法によって得られた基板の解析結果を用いて、製造工程において特性分布の発生原因となった製造設備(つまり、異常が発生した装置)を推定する異常設備推定方法について説明する。
【0135】
図16は、この異常設備推定方法の適用対象となる基板の製造プロセスの例を模式的に示している。この製造プロセスは、基板に対して順次実行される複数の製造設備a,b,c,dを含んでいる。これらの製造工程終了後にパターン検査eが実行される。
【0136】
製造プロセスに含まれた或る工程、この例では工程b,dには、その製造工程を並行して行うためにそれぞれその製造工程を実行可能な設備が複数台配置されている。この例では、工程bには、1号機、2号機、3号機という3台の設備が配置され、工程dには、1号機、2号機という2台の設備が配置されている。製造プロセスが進行してその製造工程に流れてきた各基板は、生産能力を高めるために随時、その製造工程内に配置されたいずれかの設備によって処理される。各基板がその工程においてどの設備を用いて処理されるかは定まっていない。このような配置になっている場合、図16中のパターン検査で検査された基板が各工程においてどの設備で処理されたかを調べると、図17(a)に示すように、工程bの各設備で処理された基板の割合は1/3ずつ、工程dの各設備で処理された基板の割合は1/2ずつというように、それぞれ工程内でほぼ均等になる。以下、各基板が各工程でどの設備によって処理されたかといった情報を処理履歴と呼ぶ。
【0137】
一方、工程内のいずれかの設備で異常が発生して基板上の特定の領域に欠陥が集中して発生した場合、特性分布が類似した基板を抽出すると、原因となった設備が存在する工程では原因設備で処理された基板を偏って抽出することになる。しかしながら、これらの基板は原因工程以外の工程で処理される設備は一定ではないので、他の工程では上記の偏りは生じない。例えば、図16の製造プロセスを経た各基板のうち、工程bの1号機で右上部に欠陥が集中して発生している基板群を抽出すると、図17(b)に示すように、工程bでは原因となった1号機で処理された基板の割合(この例では4/5)が多く、2号機や3号機で処理された基板の割合(この例では1/10)は少なくなり、設備間に処理基板数の偏りが生じている。同じ基板群について工程dで処理された基板の割合には、設備間の偏りが生じていない。このことから、類似した特性分布を持つ基板群を抽出して基板の処理履歴を収集し、同一工程に割り当てられた設備間での処理基板数が最も偏っている工程を解析することで、異常設備が推定できることがわかる。
【0138】
図18は、このような状況を前提として、上述の分布解析方法による基板特性値の分布解析結果を用いて原因となった異常設備を推定する方法を示している。
【0139】
まず、図1中の一連のステップS101〜S103を含むステップS1801において、異常設備推定の対象となる基板群に含まれた各基板に対して、推定対象となる分布形状パターンに対する類似度を評価する。ただし、ステップS102では上記推定対象基板群に含まれた全ての基板の特性データから代表データ作成用データ群を得て、その代表データ作成用データ群を用いて代表データを作成し、ステップS103では、上記推定対象基板群に含まれた全ての基板について上記分布形状パターンに対する類似度を評価する。
【0140】
ステップS1802では、ステップS1801で得られた類似度が予め定められた閾値以上であるような基板を抽出して、それらの基板を推定対象の分布形状パターンに該当する基板グループとする。上記閾値としては、例えばその基板が推定対象の分布形状パターンに該当すると人間が視覚的に判断できる値を採用する。
【0141】
ステップS1803では、ステップS1802で抽出した基板グループに含まれる基板について、各製造工程での処理履歴を取得する。この情報は、通常、製造工程内に設置された工程情報収集システムで収集・管理されているので、容易に取得することができる。
【0142】
ステップS1804では、ステップS1803で取得した処理履歴を製造工程の各工程別に集計し、設備別の処理枚数を算出する。
【0143】
最後に、ステップS1805では、各工程内の設備別の処理枚数を比較し、最も処理枚数の偏りが大きい設備を統計的に調べて異常設備であると推定する。また、処理枚数に顕著な差が存在しない場合は、特定の設備に起因しない特性分布であると判断する。
【0144】
この異常設備推定によれば、特性分布が類似した基板から処理履歴の偏りを比較するので、精度が高い異常設備推定を行うことができる。
【0145】
図19は、上述の異常設備推定方法を実施するのに適した本発明の一実施形態の異常設備推定装置1900の構成を示している。この異常設備推定装置1900は、パターン登録部1902、入力部としての特性データ収集部1903、分布解析部1904、基板グループ抽出部1905、入力部としての履歴データ収集部1906、処理頻度算出部1908、異常設備推定部1909およびデータ出力部1910で構成されている。また、特性データ収集部1903には入力装置1901、検査情報収集システム604および検査装置605が、履歴データ1906には工程情報収集システム1907が、データ出力部1910には出力装置1911がそれぞれ接続されている。
【0146】
入力装置1901は、例えばキーボードやマウスで構成される。この例では、入力装置1901は、異常設備推定装置1900に対して、異常設備推定対象となる基板の検査日時の範囲や検査装置で検出された欠陥数の範囲、または異常設備推定の対象となる製造工程の範囲などの異常設備推定対象の条件を入力するために用いられる。また、異常設備推定のために用いられる分布形状パターンも入力装置1901を用いて異常設備推定装置1900に登録される。
【0147】
パターン登録部1902は、図6に示した分布解析装置600のパターン登録部602と同様の機能を持ち、入力装置1901で定義された分布形状パターンを受け取り、データベースに記録する。入力装置1901から受け取る情報は分布形状パターンだけでなく、分布形状パターンと関連した情報、例えばその分布形状パターンの原因となる装置に関する情報などを分布形状パターンと関連付け(紐つけ)して記録しても良い。
【0148】
特性データ収集部1903は、入力装置1901から異常設備推定装置1900に送信された推定対象基板の条件に合致する基板群の検査データと基板の識別IDを検査情報収集システム604や検査装置605から収集して、分布解析部1904に渡す。このとき、検査日時などの情報を検査データと共に収集しても良い。
【0149】
検査情報収集システム604は、分布解析装置600と接続する検査情報収集システム604と同一のものである。検査情報収集システム604は異常設備推定装置1900と接続されており、特性データ収集部1903は検査情報収集システム604から必要な検査データを収集する。
【0150】
検査装置605は、分布解析装置600と接続する検査装置605と同一のものである。検査装置605は異常設備推定装置1900と接続されており、データ収集部1903は検査装置605から必要な検査データを収集する。
【0151】
分布解析部1904は、特性データ収集部1903から送られる推定対象基板群の特性データとパターン登録部1902に登録された分布形状パターンとを取得して、図1中のステップS102およびS103の処理を行う。そして、得られた各推定対象基板群の上記分布形状パターンに対する類似度を、それぞれ基板の識別IDと関連付けして基板グループ抽出部1905に渡す。分布解析部1904の内部構成は、分布解析装置600と同様に代表データ作成部606と類似度評価部607を持つ(図6参照)。
【0152】
基板グループ抽出部1905は、分布解析部1904から推定対象基板群の類似度を受け取り、類似度が予め定めた閾値以上であるような基板を抽出する。抽出された基板の識別IDは、履歴データ収集部1906および処理頻度算出部1908に渡される。
【0153】
履歴データ収集部1906は、基板グループ抽出部1905が推定対象基板群から抽出した基板グループの識別IDを受け取り、その基板グループに含まれた基板の処理履歴情報を工程情報収集システム1907から検索して、その検索結果を処理頻度算出部1908に渡す。
【0154】
処理頻度算出部1908は、基板グループ抽出部1905から受け取った基板の識別IDと履歴データ収集部1906から受け取った各基板の処理履歴情報とを用いて各工程に配置された設備別の処理枚数を算出して、異常設備推定部1909に渡す。
【0155】
異常設備推定部1909は、処理頻度算出部1909から受け取った設備別の処理枚数に対して統計処理を行って、設備間の処理枚数の偏りが最も大きい工程に割り当てられた処理枚数が最も多い設備を検出して異常設備推定結果としてデータ出力部1910に渡す。
【0156】
データ出力部1910は、異常設備推定部1908から異常設備推定結果を受け取り、出力装置1911で用いられるデータ形式に加工して出力装置1911に送信する。このとき、必要があればパターン登録部1902、特性データ収集部1903、分布解析部1904、履歴データ収集部1906などから各種のデータを受け取り、出力装置1911で用いる形式に加工しても良い。
【0157】
出力装置1911は、モニタや紙出力、あるいは磁気ディスクや携帯用半導体メモリなどを通して異常設備推定装置1900による異常設備推定結果を出力する。
【0158】
なお、パターン登録部1902に複数の分布形状パターンを登録しておき、それぞれの分布形状パターンについて異常設備推定を実施しても良い。
【0159】
また、検査情報収集システム604、工程情報収集システム1907および検査装置605のいずれかから異常設備推定に必要な情報が全て取得できる場合、取得に必要な装置またはシステムのみが接続されていても良い。
【0160】
また、入力装置1901と出力装置1911は同一の装置、例えば出力装置としての表示部に入力装置としてのキーボードを備えて一体に構成した装置としてもよい。また、入力装置1901と出力装置1911は、異常設備推定装置1900に含まれていても良い。
【0161】
また、出力装置1911は、異常設備推定装置1900を通して入力装置1901、検査工程情報収集システム604、工程情報収集システム1907および検査装置605から異常設備推定に必要な情報以外の情報を受け取り、出力しても良い。
【0162】
上述の通り、パターン登録部1902および分布解析部1904は分布解析装置600と同様の機能を持つ。従って、図20に示すように、それらの構成要素を分布解析装置600として異常設備推定装置1900とは別に構成することも可能である。この図20に示す構成では、入力装置1901は分布解析装置600から各基板の類似度と識別IDを受け取って基板グループ抽出部1905に送信する。以後の処理は図19における異常設備推定装置1900による処理と同様に行われる。
【0163】
この異常設備推定装置1900によれば、上述の異常設備推定方法を実施することができる。
【0164】
なお、上述の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0165】
また、そのようなプログラムをCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記異常設備推定方法を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の一実施形態の分布解析方法の概念を模式的に示す図である。
【図2】パターン検査の検査結果の例を示す図である。
【図3】矩形領域および分布形状パターンの概念を模式的に示す図である。
【図4】様々な要因による欠陥の分布形状の変動を模式的に示す図である。
【図5】様々な要因による欠陥数の変動を模式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施形態の分布解析装置の構成を示す図である。
【図7】上記一実施形態の分布解析方法において代表データを作成する手順を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態における特性データの概念を模式的に示す図である。
【図9】上記代表データを作成するために代表データ作成用データ群から類似データ群を抽出する仕方を模式的に示す図である。
【図10】本発明の一実施形態における類似度の概念を模式的に示す図である。
【図11】上記類似度を評価する手順を示す図である。
【図12】上記一実施形態の分布解析装置の内部構成を具体的に示す図である。
【図13】上記代表データを定義する2つの態様を示す図である。
【図14】上記代表データがもつ分布形状、特性値の大きさからのずれ(違い)を説明する図である。
【図15】上記類似度とは別の定義をもつ類似度を算出する手順を示す図である。
【図16】本発明の一実施形態の異常設備推定方法の適用対象となる基板の製造プロセスの例を模式的に示す図である。
【図17】上記製造プロセスにおける正常時と異常時の製造設備による処理枚数を比較した例を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態における異常設備推定の概念を模式的に示す図である。
【図19】本発明の一実施形態の異常設備推定装置の構成を示す図である。
【図20】図19の異常設備推定装置の変形例を示す図である。
【図21】或る従来技術を説明する図である。
【図22】別の従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0167】
600 分布解析装置
1900 異常設備推定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義し、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成し、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価することを特徴とする分布解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記代表データの作成は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1ステップと、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2ステップとを備えることを特徴とする分布解析方法。
【請求項3】
請求項2に記載の分布解析方法において、
上記第1ステップは上記第1データ群の上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数が予め定めた閾値以上であるようなデータを上記第2データ群として抽出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項4】
請求項2に記載の分布解析方法において、
上記第2ステップは、上記第1ステップで得られた第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均して、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することを特徴とする分布解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の分布解析方法において、
上記第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均するとき、上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項6】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記類似度を求める処理は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3ステップと、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第2の差異を算出する第4ステップと、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする分布解析方法。
【請求項7】
請求項6に記載の分布解析方法において、
上記第5ステップで算出する類似度は、上記第2の差異の逆数を上記第1の差異の逆数と上記第2の差異の逆数との和で割ることで得られることを特徴とする分布解析方法。
【請求項8】
請求項6に記載の分布解析方法において、
上記第3ステップで算出する第1の差異は上記基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であり、
上記第4ステップで算出する第2の差異は上記代表データの特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であることを特徴とする分布解析方法。
【請求項9】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記類似度を求めるとき、上記解析対象データの特性値の分布形状が上記代表データの特性値の分布形状と類似しているか否かの判定を行って、この判定結果に応じて上記類似度を算出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項10】
請求項9に記載の分布解析方法において、
上記判定を行うとき、上記解析対象データの上記各矩形領域に対応する特性値と上記代表データの上記各矩形領域に対応する特性値との間の相関係数を算出し、この相関係数が予め定めた閾値以上であるか否かを判断することを特徴とする分布解析方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の分布解析方法において、
上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする分布解析方法。
【請求項12】
基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定方法であって、
請求項11に記載の分布解析方法を実施して上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出することを特徴とする異常設備推定方法。
【請求項13】
平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析装置であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義するパターン登録部と、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する代表データ作成部と、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する類似度評価部とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項14】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記代表データ作成部は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1部分と、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2部分とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項15】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記類似度評価部は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3部分と、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との第2の間の差異を算出する第4部分と、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5部分とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項16】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする分布解析装置。
【請求項17】
基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定装置であって、
請求項13に記載の分布解析装置を備え、この分布解析装置によって上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出する異常設備推定部を備えたことを特徴とする異常設備推定装置。
【請求項18】
請求項1に記載の分布解析方法をコンピュータに実行させるための分布解析プログラム。
【請求項19】
請求項12に記載の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるための異常設備推定プログラム。
【請求項20】
請求項18に記載の分布解析プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項21】
請求項19に記載の異常設備推定プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析方法であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義し、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成し、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価することを特徴とする分布解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記代表データの作成は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1ステップと、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2ステップとを備えることを特徴とする分布解析方法。
【請求項3】
請求項2に記載の分布解析方法において、
上記第1ステップは上記第1データ群の上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数が予め定めた閾値以上であるようなデータを上記第2データ群として抽出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項4】
請求項2に記載の分布解析方法において、
上記第2ステップは、上記第1ステップで得られた第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均して、上記各矩形領域毎の平均値を成分として上記代表データを構成することを特徴とする分布解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の分布解析方法において、
上記第2データ群について上記各矩形領域毎に特性値を平均するとき、上記各矩形領域に対応する特性値と上記分布形状パターンの上記各矩形領域に付与された濃度値との相関係数によって重み付けした加重平均を算出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項6】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記類似度を求める処理は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3ステップと、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第2の差異を算出する第4ステップと、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5ステップとを備えることを特徴とする分布解析方法。
【請求項7】
請求項6に記載の分布解析方法において、
上記第5ステップで算出する類似度は、上記第2の差異の逆数を上記第1の差異の逆数と上記第2の差異の逆数との和で割ることで得られることを特徴とする分布解析方法。
【請求項8】
請求項6に記載の分布解析方法において、
上記第3ステップで算出する第1の差異は上記基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であり、
上記第4ステップで算出する第2の差異は上記代表データの特性値の分布と上記解析対象データの特性値の分布との間の距離であることを特徴とする分布解析方法。
【請求項9】
請求項1に記載の分布解析方法において、
上記類似度を求めるとき、上記解析対象データの特性値の分布形状が上記代表データの特性値の分布形状と類似しているか否かの判定を行って、この判定結果に応じて上記類似度を算出することを特徴とする分布解析方法。
【請求項10】
請求項9に記載の分布解析方法において、
上記判定を行うとき、上記解析対象データの上記各矩形領域に対応する特性値と上記代表データの上記各矩形領域に対応する特性値との間の相関係数を算出し、この相関係数が予め定めた閾値以上であるか否かを判断することを特徴とする分布解析方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の分布解析方法において、
上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする分布解析方法。
【請求項12】
基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定方法であって、
請求項11に記載の分布解析方法を実施して上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出することを特徴とする異常設備推定方法。
【請求項13】
平面に沿って分布した特性をもつ解析対象データが特定の分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する分布解析装置であって、
上記分布形状パターンを、上記解析対象データを定めた平面に対応する平面を格子状に複数の矩形領域に区画するとともに、上記各矩形領域毎に、上記解析対象データの特性値の相対的な大小関係を表すように或る数値範囲内で多値を取り得る濃度値を付与して定義するパターン登録部と、
上記分布形状パターンに類似し、かつ複数の上記解析対象データの間で生じる変動を反映した代表データを作成する代表データ作成部と、
上記解析対象データと上記代表データとを比較して、上記解析対象データが上記代表データに類似している度合いを表す類似度を求め、この類似度に応じて上記解析対象データが上記分布形状パターンに類似しているかどうかを評価する類似度評価部とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項14】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記代表データ作成部は、
上記変動を含む複数の上記解析対象データがなす第1データ群から、特性値の分布の相対的な大小関係が上記分布形状パターンの濃度値の分布の相対的な大小関係と類似しているような第2データ群を抽出する第1部分と、
上記第1ステップで得られた第2データ群の特性値の分布から上記代表データを算出する第2部分とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項15】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記類似度評価部は、
予め定めた基準データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との間の第1の差異を算出する第3部分と、
上記代表データがもつ特性値の分布と上記解析対象データがもつ特性値の分布との第2の間の差異を算出する第4部分と、
上記第1の差異と第2の差異との両方に応じて上記類似度を算出する第5部分とを備えることを特徴とする分布解析装置。
【請求項16】
請求項13に記載の分布解析装置において、
上記解析対象データの特性は基板の表面に沿って分布していることを特徴とする分布解析装置。
【請求項17】
基板に対して順次実行される複数の製造工程でそれぞれ用いられる製造装置の中から、異常が発生した製造装置を推定する異常設備推定装置であって、
請求項13に記載の分布解析装置を備え、この分布解析装置によって上記類似度を求め、
上記各基板を上記各製造工程で処理した製造装置を表す処理履歴に基づいて、上記類似度が予め定めた閾値以上であるような基板に共通して用いられた製造装置を抽出する異常設備推定部を備えたことを特徴とする異常設備推定装置。
【請求項18】
請求項1に記載の分布解析方法をコンピュータに実行させるための分布解析プログラム。
【請求項19】
請求項12に記載の異常設備推定方法をコンピュータに実行させるための異常設備推定プログラム。
【請求項20】
請求項18に記載の分布解析プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項21】
請求項19に記載の異常設備推定プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図12】
【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−258486(P2008−258486A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100548(P2007−100548)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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