説明

分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の形成方法、および有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】汎用性の基体を使用し、透明性、導電性、膜強度に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、膜強度の劣化が少ない透明電極用の分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜の形成方法で形成された透明導電膜を用いた透明電極を有する有機EL素子の提供。
【解決手段】少なくとも導電性ポリマーと、前記一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含む分散液の調製方法であって、少なくとも前記導電性ポリマーと前記ポリマー(K)を含有する分散液を脱溶媒処理することを特徴とする分散液の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、電子ペーパー、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることが出来る透明電極用の分散液の調製方法、透明導電膜、透明電極の形成方法、及び透明電極を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子とも言う。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型TV需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なる何れのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。又、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことの出来ない技術要素となっている。
【0003】
従来透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、ITOに用いられているインジウムはレアメタルであり、且つ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。又、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、フレキシブル基板を用いたロールtoロールの生産技術が所望されている。
【0004】
近年、この様な大面積、且つ低抵抗値が要求される製品にも対応出来る様に、導電性ポリマーを使用した透明導電膜の検討が成されている。例えば、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性ポリマーを使用した透明導電膜と金属及び/又は合金のパターン状に形成された細線構造部からなる導電性面を有し、透過率が高く、表面抵抗率が低く、安価な透明導電性シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
透明フィルム基材上に、透明フィルム基材に近い側から、金属銀から形成された導電性パターンと、その上にポリエチレンジオキシチオフェン系又はポリアニリン系の導電性高分子化合物からなる透明導電膜とが隣接して設けられた、大面積においても電力損失が小さく、透明性が高く、屈曲に強く、NOx、SOx等の腐食性ガスに対する耐性も高い透明導電フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の透明導電性シートの場合、特許文献2に記載の透明導電フィルムの場合、次の問題点があることが判った。
1.透明導電膜の膜強度が弱いため、有機EL素子を構成する各層を蒸着やスピンコートによる積層を行なった場合、膜表面が乱れ、有機EL素子を作製するとリークが発生する。
2.有機電子デバイスのリークの原因となる金属細線の凹凸を、導電性ポリマー等の透明導電膜でなだらかにする必要があり、導電性ポリマーの厚膜化が必須となり、透明性が著しく低下する。
3.透明導電膜を厚くすることで屈曲性が劣る。
4.耐水性に劣るため、高温高湿条件下で保存すると密着性が悪くなる。
【0007】
光透過性が高く、且つ、表面抵抗率が低く、更に可撓性に優れた透明導電性フイルムとして、網目状の金属及び/又は合金の細線構造部を有する導電性金属の上に、ポリチォフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類等の電子伝導性導電性と、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニールアルコール樹脂等の絶縁性ポリマとの混合物からなる透明導電膜の構成等を有する透明導電性フィルムが知られている(例えば、特許文献3)。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の透明導電性シートの場合、絶縁性ポリマーの添加は導電率の低下や導電性ポリマーへの相溶性の観点からヘイズ等の光学性能の劣化を引き起こす危険があることが判った。
【0009】
導電性ポリマー(3、4−ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフォネート(PEDT/PSS)と、バインダーとしてポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピリジン)とポリ(酢酸ビニル)とのコポリマー(PVPy−VAc)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)とポリ(メタクリル酸)とのコポリマー(PHEA−MAA)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルブチラール(PVB)とからなる群から選択されたポリマー又はコポリマーと、適切な溶媒とからなる塗布液を使用し、空気中で少なくとも450℃でベーク処理して有機伝導層を形成する方法が知られている(例えば、特許文献4)。
【0010】
しかしながら、特許文献4に記載の有機伝導層の製造方法は、つぎの欠点を有していることが判った。
1.有機伝導層の膜強度不足のため、蒸着やスピンコートによる積層を行なった場合膜表面が乱れ、有機電子デバイスを作製するとリークが発生する。
2.450℃でベーク処理することで変形しない基体の種類が限定され、汎用性がない。
3.更に、導電性ポリマー等の透明導電膜を用いる場合、その透明導電膜中に水分が残留していると、有機電子デバイスの性能を劣化させることが知られており、透明導電膜中の水分除去が必須となる。しかし、透明基板についてフレキシブル性やコスト面から透明フィルムが用いられることが多くなってきている近年において、導電性ポリマー等の透明導電膜をフィルムが変形しないガラス転移温度Tg以下の低温で加熱すると、透明導電膜中に水分が残留してしまい、有機電子デバイスの性能を劣化させるため透明導電膜の乾燥が課題であった。
【0011】
この様な状況から、汎用性の基体を使用し、透明性、導電性、膜強度に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、膜強度の劣化が少ない透明電極用の分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜の形成方法により形成した透明導電膜を有した透明電極を有する有機EL素子の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2009−87843号公報
【特許文献3】特開2009−4348号公報
【特許文献4】特許3716167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、汎用性の基体を使用し、透明性、導電性、膜強度に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、膜強度の劣化が少ない透明電極用の分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜の形成方法により形成された透明導電膜を有した透明電極を有する有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0015】
1.少なくとも導電性ポリマーと一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含む分散液の調製方法であって、
少なくとも前記導電性ポリマーと前記ポリマー(K)を含有する分散液を脱溶媒処理することを特徴とする分散液の調製方法。
【0016】
【化1】

【0017】
〔式中、Rは水素原子、メチル基を表し、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)x−を表す。Rbは水素原子、アルキル基を示し、xは平均繰り返しユニット数を表す。yは0、1を表す。Zはアルキル基、−C(=O)−Rc、−SO−Rd、−SiReを表す。Rc、Rd、Reはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表す。
【0018】
2.前記ポリマー(K)において、ポリマー(K)中の一般式(I)で表される構造単位の含有比率が、モル比で%から95%であることを特徴とする前記1に記載の分散液の調製方法。
【0019】
3.基材上に形成された透明導電膜であって、前記透明導電膜が前記1又は2に記載の分散液の調製方法で調整された分散液を用いて塗布・乾燥し形成されていることを特徴とする透明導電膜。
【0020】
4.前記透明導電膜が、基材上にパターン状に形成された導電性材料からなる金属導電層の上に形成されていることを特徴とする前記3に記載の透明導電膜。
【0021】
5.前記1又は2に記載の分散液の調製方法で調製された分散液を用いる透明導電膜の形成方法であって、
該分散液を調製する調製工程と、該分散液を基材に塗布する塗布工程と、該塗布工程で形成された塗膜を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【0022】
6.前記1又は2に記載の分散液の調製方法で調整した分散液を用い、前記5に記載の透明導電膜の形成方法で形成された透明導電膜を有した透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0023】
本発明は、導電性ポリマーと前記一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含む分散液を脱溶媒処理を行った分散液を用いて透明導電膜を形成することで、透明導電膜の透明性と導電性を両立し、且つ膜強度に優れ、更に高温、高湿度環境下における環境試験後でも高い導電性と透明性及び良好な膜強度を併せ持つ安定性の優れた透明電極及び該透明電極を有する高寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子が得られることを見出したものである。
【0024】
理由としては定かではないが、導電性ポリマーと前記一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含有する分散液を、塗布加熱した場合、分散液に含まれるポリマー間の架橋反応が起こり、その際に水分が生成する。
【0025】
分散液の加熱が十分でないと、高温環境下での保存中に、未架橋部分の架橋反応が進行し、発生した水分が有機エレクトロルミネッセンス素子の性能劣化を引き起こしていると推定している。
【0026】
そのため、理由としては定かではないが、導電性ポリマーと前記一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含有する分散液を、脱溶媒処理を行ってから塗布乾燥を行う事で、分散液をそのまま塗布乾燥する場合よりも、分散液に含まれるポリマー間の架橋反応が進行し、高密度な3次元構造が得られるため、高い膜強度で、高温、高湿度環境下における環境試験後でも高い導電性と透明性及び良好な膜強度が得られることが判り、本発明に至った次第である。
【発明の効果】
【0027】
汎用性の基体を使用し、透明性、導電性、膜強度に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、膜強度の劣化が少ない透明電極用の分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜の形成方法により形成した透明導電膜を有した透明電極を有する有機EL素子を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は透明電極の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
図1は透明電極の一例を示す概略断面図である。図1(a)は、基材上にパターン状に形成した導電性金属層と、透明導電膜とを有する透明電極の一例を示す概略断面図である。図1(b)は、パターン状に形成した導電性金属層を含む透明導電膜を有する透明電極の一例を示す概略断面図である。図1(c)は、基材上に形成した透明導電膜を有する透明電極の一例を示す概略断面図である。
【0031】
図1(a)に付き説明する。
【0032】
図中、1aは透明電極を示す。透明電極1aは、基材1a1と、基材1a1の上にパターン状に形成した導電性金属層1a2と、透明導電膜1a3とを有している。
【0033】
透明電極1aは、基材1a1の上に導電性金属層1a2をパターン状に形成した後、透明導電膜形成用分散液(以下、分散液とも言う)を塗布し、乾燥し透明導電膜1a3を形成することで製造することが可能である。
【0034】
図1(b)に付き説明する。
【0035】
図中、1bは透明電極を示す。透明電極1bは、基材1b1と、パターン状に形成した導電性金属層1b2を有する透明導電膜1b3とを有している。離型性基板(不図示)の離型面上に、導電性金属層1b2、及び、分散液を塗布し透明導電膜1b3を形成したあと、これらの層を被転写用の基板上に転写することで製造することが可能である。或いは、離型性基板(不図示)の離型面上に、導電性金属層1b2を形成して被転写用の基板上に転写したあと、透明導電膜1b3を形成することで製造することが可能である。
【0036】
図1(c)に付き説明する。
【0037】
図中、1cは透明電極を示す。透明電極1cは、基材1c1と、透明導電膜1c2とを有している。透明電極1cは、基材1c1上に、分散液を塗布し透明導電膜1c2を形成することで製造することが可能である。尚、透明導電膜を形成する材料、製造方法の詳細に付いては後述する。
【0038】
図1(a)から図1(c)に示される透明電極において、導電性金属層を有する図1(a)及び、図1(b)に示される透明電極は、金属材料からなる光不透過の導電性金属層と透光性窓部を併せ持つ透明電極となり、透明性、導電性に優れた電極が作製出来ることから好ましい。
【0039】
本発明は、図1に示す透明電極を構成している分散液の調製方法、透明導電膜、透明導電膜の製造方法及び透明導電膜の製造方法により作製した透明導電膜を使用した有機EL素子に関するものである。次ぎに、図1(a)、図1(b)、図1(c)に示される透明電極を構成している透明導電膜の製造方法は同じであるため、代表として図1(a)に示す透明電極を構成している透明導電膜の製造方法に付き説明する。
【0040】
透明導電膜の製造方法
透明導電膜は、導電性ポリマーとポリマー(K)を含有する水溶液を混合する工程、脱溶媒処理、塗布工程、乾燥工程を経て製造される。この様な製造法で本発明の透明導電膜を形成することで、導電膜を塗布、乾燥するだけでは得ることが出来ない強い膜強度を電極面内において均一に得ることが出来、高い導電性、高い透明性を得ることが出来る。
【0041】
(透明導電膜形成用の分散液の調製工程)
透明導電膜形成用の分散液の調製工程では、導電性ポリマーと、ポリマー(K)と、溶媒とが混合され透明導電膜形成用の分散液が調製される。
【0042】
ポリマー(K)を溶解する溶媒は、25℃の溶媒100gにポリマー(K)を0.001g程度溶解でき、さらに導電性ポリマーと混合した際に相溶性が高い溶媒が好ましく、特に水が好ましい。溶解性の程度は、ヘイズメーター、濁度計で測定することができる。
【0043】
(脱溶媒処理工程)
導電性ポリマーとポリマー(K)を含有する分散液は脱溶媒処理工程で脱溶媒処理が行われる。尚、脱溶媒処理とは、大気圧で加熱し溶媒を除去する処理、又は減圧条件で加熱し溶媒を除去する処理、加熱することなしに溶媒を除去する処理を含めて言う。又、脱溶媒処理は大気圧で加熱し溶媒を除去する処理、又は減圧条件で加熱し溶媒を除去する処理、加熱することなしに溶媒を除去する処理の中から、必要に応じて何れかの処理を選択することが可能である。減圧条件は使用する溶媒に合わせ適宜設定することが好ましい。
【0044】
脱溶媒処理の時間は、5分以上であることがより好ましい。時間の上限は特にないが、生産性を考えると360分以下であることが好ましく、120分以下であることがより好ましい。
【0045】
脱溶媒処理後の透明導電膜形成用の分散液の粘度は、透明導電膜の強度、塗布安定性、平面性等を考慮し、30mPa・sから2000mPa・sが好ましい。より好ましくは、80mPa・sから1000mPa・sである。
【0046】
分散液の粘度は、毛細管粘度計,落下球粘度計,回転粘度計、振動粘度計等で、測定することが出来る。
【0047】
本発明において、粘度は、山一電機株式会社製 VISCOMATE MODEL VM−1Gで、温度25℃で測定した値を示す。
【0048】
又、(加熱処理後の粘度)/(加熱処理前の粘度)の値は、分散液安定性、塗布安定性等を考慮し、1.1から30であることが好ましく、更に好ましくは、2から20であることが好ましい。
【0049】
導電性ポリマーとポリマー(K)との比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(K)が30質量部から900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、ポリマー(K)の導電性増強効果、透明性の観点から、ポリマー(K)が100質量部以上であることがより好ましい。
【0050】
導電性ポリマーと、ポリマー(K)とを含有する透明導電膜形成用の分散液濃度は、透明導電膜の平面性、導電性金属層の被覆ムラ等を考慮し、0.5質量%から50質量%が好ましく、2質量%から35質量%がより好ましく、3質量%から20質量%が更に好ましい。
【0051】
この様に、導電性ポリマーとポリマー(K)を含有する分散液を脱溶媒処理工程で脱溶媒を行うことで、ポリマー(K)間で架橋構造がされることにより、脱溶媒処理工程を行わずに、分散液を塗布し、乾燥して形成した透明導電膜よりも、膜強度、高温、高湿度環境下で保存時の耐久性が改良されたと推定している。
【0052】
導電性ポリマーとポリマー(K)を含む透明導電膜形成用の分散液の脱溶媒処理には、加熱時にローターリーエバポレーターを使用して、透明導電膜形成用の分散液の濃縮を行うことが好ましい。濃縮率としては、5%以上、80%未満が好ましく、より好ましくは10%から70%で、更に好ましくは、20%から50%である。濃縮率が高すぎると高粘度になりすぎて、塗布を行った際に平面性が劣化する問題が発生し、濃縮率が低いと、本発明の効果が得られ難い。
【0053】
(塗布工程)
塗布工程では基材上、或いは基材上にパターン状に形成された導電性金属層の上に脱溶媒処理された分散液の塗布を行う。透明導電膜の乾燥後の透明導電膜の厚さは30nmから2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることが更に好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0054】
尚、パターン状に形成された導電性金属層がある場合は、導電性金属層を完全に被覆してもよいし、一部を被覆してもよく必要に応じて適宜選択することが可能である。
【0055】
分散液の塗布は特に限定はなく、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることが出来る。
【0056】
(乾燥工程)
乾燥工程では、塗布工程で透明導電膜形成用の分散液を塗布し形成された透明導電膜形成用塗膜の乾燥が行われ、透明導電膜が製造される。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や透明導電膜が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃から270℃で10秒から10分の乾燥処理をすることが出来る。
【0057】
本発明において、マイクロ波加熱処理を行うことも好ましい。マイクロ波加熱処理の時間は、基材の変形を考慮し、1秒から120秒が好ましい。
【0058】
この様な製造法で本発明の透明導電膜を形成することで、単に透明導電膜形成用の分散液を塗布、乾燥するだけでは得ることが出来ない強い膜強度、高い導電性及び高い透明性を有する透明導電膜を得ることが出来る。
【0059】
次ぎに、本発明の透明導電膜形成用の分散液に係わる導電性ポリマーとポリマー(K)に付いて説明する。
【0060】
(ポリマー(K))
ポリマー(K)は、前記一般式(I)、一般式(II)で表わされる構造単位を有している。
【0061】
式中、Rは水素原子、メチル基を表す。また、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表し、Raは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1から5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていてもよい。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されても良い。これらのうち好ましくは、水酸基、アルキルオキシ基である。上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。
【0062】
上記アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は、1から20であることが好ましく、1から12であることがより好ましく、1から8であることが更に好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。
【0063】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3から20であることが好ましく、3から12であることがより好ましく、3から8であることが更に好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることがより好ましく、1から6であることが更に好ましく、1から4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることがより好ましく、1から6であることが更に好ましく、1から4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。上記アリールチオ基の炭素数は、6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3から12であることが好ましく、より好ましくは3から8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。上記アリール基の炭素原子数は6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。上記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2から10であることが好ましく、3から5であることが更に好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。上記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3から20であることが好ましく、3から10であることが更に好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。上記アシル基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1からから12であることが更に好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。上記アラルキル基の炭素原子数は7から20であることが好ましく、7から12であることが更に好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、2から12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7から20であることが好ましく、7から12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8から20であることが好ましく、8から12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、2から12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。上記アルケニル基の炭素原子数は2から20であることが好ましく、2から12であることが更に好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は2から20であることが好ましく、2から12であることが更に好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1から20あることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1から20であることが好ましく、1から12であることが更に好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0064】
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6から20であることが好ましく、6から12であることが更に好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基が更に置換されても良い。
【0065】
Aは置換或いは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)x−を表す。アルキレン基は、例えば炭素原子数1から5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていても良い。また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1から5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていても良い。更に、xは平均繰り返しユニット数を表し、1から100が好ましく、より好ましくは1から10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記しても良い。
【0066】
yは0、1を表す。また、Zはアルキル基、−C(=O)−Rc、−SO−Rd、−SiReを表し、アルキル基は、例えば炭素原子数1から12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されても良い。Rc、Rd、Reはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表し、アルキル基は、例えば炭素原子数1から12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されても良い。パーフルオロアルキル基は、例えば炭素原子数1から8が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基で、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。アリール基は、例えばフェニル基、トルイル基が好ましく、より好ましくはトルイル基である。更に、これらのアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基は前述した置換基で置換されても良い。
【0067】
一般式(I)、(II)中のR、Q、Aは、同一でも異なっていてもよい。
【0068】
本発明に係るポリマー(K)において、ポリマー(K)中の一般式(I)で表される構造単位の含有比率は、モル比で全体の3%から95%が好ましく、より好ましくは5%から50%である。
【0069】
一般式(I)、(II)を上記の比率にすることで、未架橋の水酸基によって発生する水分量を素子性能に影響がない範囲に抑えることが出来る。
【0070】
本発明に使用するポリマー(K)は、一般式(I)で表される構造単位と一般式(II)で表される構造単位以外に他の構造単位を含有していても良い。
【0071】
他の構造単位としては、一般式(I)、(II)で表される構造単位と共重合可能な重合性モノマーが好ましく、例えば、スチレン誘導体(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0072】
以下に一般式(I)、一般式(II)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0073】
【化2】

【0074】
【化3】

【0075】
本発明に使用するポリマー(K)の数平均分子量は3,000から2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000から500,000、更に好ましくは5000から100000の範囲内である。
【0076】
本発明に使用するポリマー(K)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行なうことが出来る。使用する溶媒は、ポリマー(K)が溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。本発明に使用するポリマー(K)は、透明であることが好ましい。
【0077】
尚、透明とは、ポリマー(K)を10%濃度の水溶液にした時に、可視光波長領域における全光線透過率が60%以上であることをいう。
【0078】
(ポリマー(K)の製造方法)
本発明に使用するポリマー(K)は汎用的な重合触媒を用いたラジカル重合により得ることが出来る。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10℃から250℃、好ましくは0℃から200℃、より好ましくは10℃から100℃で実施される。
【0079】
〈導電性ポリマー〉
本発明に使用する導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造することが出来る。
【0080】
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
【0081】
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0082】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0083】
(ポリ陰イオン)
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0084】
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0085】
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。更に、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0086】
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0087】
又、化合物内に更にF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることが出来る。
【0088】
これらのうち、スルホン酸を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、マイクロ波を照射する前に100から120℃で5分以上の加熱乾燥処理を施してもよい。これにより架橋反応が促進するため、塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、好ましい。
【0089】
更に、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、ポリマー(K)との相溶性が高く、又、得られる導電性ポリマーの導電性をより高く出来る。
【0090】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10から100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50から10000個の範囲がより好ましい。
【0091】
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0092】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0093】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0094】
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0095】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」は質量比で1:1から20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2から10の範囲である。
【0096】
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、何れかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、又は過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)又はアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することが出来る。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0097】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1から20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1から20のアルキルスルホン酸、例えばメタン又はドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1から20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1から20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0098】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用することが出来る。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、例えば、CLEVIOS P AI4083、CLEVIOS P JET、CLEVIOS P CH8000、CLEVIOS HIL1.1、CLEVIOS HIL1.3、CLEVIOS HIL1.5、CLEVIOS P HC V4、CLEVIOS PH500、CLEVIOS PH510などが市販されている。
【0099】
Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。又、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。
【0100】
又、ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることが出来る水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することが出来、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0101】
次ぎに、図1(a)、図1(b)に示す透明電極に使用されている導電性金属層に付き説明する。
【0102】
(導電性金属層)
本発明に係る透明導電膜は、フィルム基板上に金属材料をパターン状に形成した導電性金属を含有することが好ましい。これにより金属材料からなる光不透過の導電部と透光性窓部を併せ持つフィルム基板となり、透明性、導電性に優れた電極基板が作製出来る。
【0103】
基材上にパターン状に形成する導電性金属層は金属材料から形成されている。金属材料は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述の様にパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子又は金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性の観点から銀であることが好ましい。
【0104】
パターン形状には特に制限はないが、例えば、導電性金属層がストライプ状、メッシュ状或いはランダムな網目状であってもよい。
【0105】
導電部がストライプ状又はメッシュ状の電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用することが出来る。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成出来る。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、メッキ等の物理的または化学的形成手法を用いて導電性金属層を形成する、或いは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状或いはメッシュ状に加工することが出来る。
【0106】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、或いは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、更に別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用することが出来る。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]、及び実施例を参考にして実施することが出来る。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施することが出来る。
【0107】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載の様な、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用することが出来る。
【0108】
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載の様な、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用することが出来る。
【0109】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0110】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3μmから500μmが好ましく、特に3μmから300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10nmから300nmが好ましく、30nmから200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005g/mから0.5g/mが好ましく、0.01g/mから0.2g/mがより好ましい。
【0111】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることが出来るが、導電性の観点から銀が好ましい。又、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0112】
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることが出来る。又、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることが出来る。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833から837、Chem.Mater.,2002,14,4736から4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることが出来る。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することが出来、又銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することが出来る。
【0113】
導電性金属層はフィルム基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、高導電化するため、特に好ましい。
【0114】
(透明導電膜形成用の分散液に添加する添加剤)
本発明に係る導電性ポリマー及びポリマー(K)を含む分散液は、導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明な非導電性ポリマーや添加剤や架橋剤を含有してもよい。
【0115】
本発明において、導電性ポリマーとポリマー(K)を含有する透明導電膜形成用の分散液に酸触媒を用いることも可能である。酸触媒を用いることで導電性ポリマーとポリマー(K)の架橋反応を促進すると推定している。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることも可能である。
【0116】
又、導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することが出来る。又、酸触媒の使用と合わせて、マイクロ波の処理時間の短縮にもつながり、好ましい。
【0117】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。更に、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0118】
架橋剤としては、例えばオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、阻止イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、正孔ムアルデヒド系架橋剤等を単独或いは複数併用して用いることが出来る。
【0119】
(非導電性ポリマー)
非導電性ポリマーの具体的な例としては、天然高分子樹脂又は合成高分子樹脂から広く選択して使用することが出来、水溶性高分子又は水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルションとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を使用することが出来る。
【0120】
又、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂)を使用することができる。非導電性ポリマーとしては透明であることが好ましい。
【0121】
(基材)
本発明の透明電極に用いられる基板としては、特に制限はない。硬度に優れ、またその表面への導電層の形成のし易さ、光透明性等の点で、フレキシブルガラス、ガラス基板、樹脂基板、樹脂フィルムなどが好適に挙げられる。
【0122】
本発明で用いることが出来る透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知の透明樹脂フィルムの中から適宜選択することが出来る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることが出来る。可視域の波長(380nmから780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に用いられるフィルム基板として好ましく用いられる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
【0123】
本発明に用いられる基材には、透明導電膜形成用の分散液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることが出来る。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用出来る。
【0124】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることが出来る。
【0125】
又、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることが出来る。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0126】
又、基材の表面又は裏面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定した水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性基材であることが好ましい。
【0127】
高バリア性基材とするために基材の表面、又は裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることが出来る。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0128】
(有機EL素子)
本発明の有機EL素子は、有機発光層を含む有機層及び本発明の透明電極を有する。本発明における有機EL素子は、本発明の透明電極を陽極として用いることが好ましく、有機発光層、陰極については有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることが出来る。
【0129】
有機EL素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることが出来る。
【0130】
又、本発明において有機発光層に使用出来る発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。又、これらの化合物のうちから選択される発光材料を90質量部から99.5質量部、ドーピング材料を0.5質量部から10質量部含むようにすることも好ましい。
【0131】
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5nmから500nmが好ましく、特に、0.5nmから200nmが好ましい。
【0132】
本発明の有機EL素子は、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができる。本発明の有機EL素子は、均一にムラなく発光させることが出来るため、照明用途で用いることが好ましい。
【0133】
本発明の透明導電膜を使用した透明電極は高い導電性と透明性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることが出来る。その中でも、透明電極の表面の平滑性が厳しく求められる有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子の透明電極として特に好ましく用いることが出来る。
【実施例】
【0134】
以下に本発明例を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載によってその範囲をなんら制限されるものではない。
<ポリマー(K)の合成>
合成例1(P−1の合成:本発明内)
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(1.74g、15mmol、分子量:116.05)、II−6:ブレンマーPME−200(9.7g、35mmol、分子量:276.16)、AIBN(0.8g、5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK(メチルエチルケトン)中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量33700、分子量分布2.4の水溶性バインダー樹脂P−1を10.3g(収率90%)得た。
【0135】
尚、分子量はGPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0136】
〈GPC測定条件〉
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
合成例2(P−2の合成:本発明内)
500ml三ツ口フラスコにTHF200mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(10.0g、86mmol、分子量:116.05)、AIBN(1.41g、8.5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、5000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、200mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量35700、分子量分布2.3の水溶性バインダー樹脂Zを9.0g(収率90%)得た。
【0137】
水溶性バインダー樹脂Z3.0g、脱水テトラヒドロフラン30mlを100mlフラスコへ投入し、完溶させたのちアイスバスにより内温を10℃以下にした。トリフルオロメタンスルホニルクロリド(0.65g、3.9mmol、分子量:167.93)を脱水テトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を別途調製し、水溶性バインダー樹脂Z溶液中へ30分かけて滴下した。内温は10℃以下を維持した。滴下終了後1時間撹拌後、溶液をろ紙でろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターにより、溶液を10mlまで濃縮した。この溶液を300mlのエチルアルコール中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した後、ジイソプロピルエーテルを150ml添加し、更に1時間撹拌した。溶液をデカンテーション後、100mlのジイソプロピルエーテルで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、50mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量30700、分子量分布2.1の水溶性バインダー樹脂P−2を3.18g(収率87%)得た。
【0138】
合成例3(P−3の合成:本発明内)
トリフルオロメタンスルホニルクロリドの代わりにp−トルエンスルホニルクロリド(0.30g、1.9mmol、分子量:154.02)を用いた以外は合成例2と同様な方法により、数平均分子量32200、分子量分布2.0、の水溶性バインダー樹脂P−3を2.97g(収率90%)得た。
【0139】
合成例4(P−4の合成:本発明内)
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(0.17g、1.5mmol、分子量:116.05)、II−19:N,N−ジエチルメタアクリルアミド(6.17g、48.5mmol、分子量:127.18)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量32500、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−4を5.4g(収率85%)得た。
【0140】
合成例5(P−5の合成:本発明内)
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(0.29g、2.5mmol、分子量:116.05)、II−19:N,N−ジエチルメタアクリルアミド(6.04g、47.5mmol、分子量:127.18)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量31300、分子量分布2.5、の水溶性バインダー樹脂P−5を5.5g(収率87%)得た。
【0141】
合成例6(P−6の合成:本発明内)
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(2.9g、25mmol、分子量:116.05)、II−19:N,N−ジエチルメタアクリルアミド(3.18g、25mmol、分子量:127.18)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量34000、分子量分布2.6、の水溶性バインダー樹脂P−6を5.2g(収率86%)得た。
【0142】
合成例7(P−7の合成:本発明内)
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.51g、47.5mmol、分子量:116.05)、II−19:N,N−ジエチルメタアクリルアミド(0.32g、0.25mmol、分子量:127.18)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量33400、分子量分布2.6、の水溶性バインダー樹脂P−7を5.2g(収率90%)得た。
【0143】
合成例8(P−8の合成:本発明内)
モノマーとして、I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(1.74g、15mmol、分子量:116.05)、II−22:アクリロイルモルホリン(4.94g、35mmol、分子量:141.14)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量31600、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−8を6.0g(収率90%)得た。
【0144】
合成例9(P−9の合成:本発明内)
モノマーとしてI−13:ブレンマーGLM(2.19g、15mmol、分子量:146.06)、II−7:ブレンマーAE−400(16.89g、35mmol、分子量:482.59)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量36500、分子量分布2.8、の水溶性バインダー樹脂P−9を16.6g(収率87%)得た。
【0145】
合成例10(P−10の合成:本発明内)
モノマーとしてI−6:(2.61g、15mmol、分子量:174.19)、II−6:ブレンマーPME−200(9.67g、35mmol、分子量:276.33)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量35200、分子量分布2.7の水溶性バインダー樹脂P−10を10.8g(収率88%)得た。
【0146】
合成例11(P−11の合成:本発明内)
モノマーとしてI−19:ヒドロキシエチルアクリルアミド(1.73g、15mmol、分子量:115.13)、II−1:2−メトキシエチルアクリレート(4.55g、35mmol、分子量:130.14)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量30400、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−11を5.4g(収率86%)得た。
【0147】
合成例12(P−12の合成:本発明内)
モノマーとしてI−19:ヒドロキシエチルアクリルアミド(1.73g、15mmol、分子量:115.13)、II−19:N,N−ジエチルメタアクリルアミド(4.94g、35mmol、分子量:130.14)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量31600、分子量分布3.1の水溶性バインダー樹脂P−12を5.6g(収率84%)得た。
【0148】
合成例13(P−13の合成:本発明内)
モノマーとしてI−5:ブレンマーAE−90(7.21g、45mmol、分子量:160.17)、II−4:メトキシエトキシエチルアクリレート(0.87g、5mmol、分子量:174.19)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量29200、分子量分布2.6、の水溶性バインダー樹脂P−2を7.10g(収率88%)得た。
【0149】
<比較>
合成例14(P−14の合成:本発明外)
モノマーとしてI−8のみ5.06gを用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量37000、分子量分布2.7、のバインダー樹脂P−14を4.50g(収率89%)得た。
【0150】
合成例15(P−15の合成:本発明外)
モノマーとしてII−7のみ5.33gを用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量39000、分子量分布2.8、のバインダー樹脂P−15を4.80g(収率90%)得た。
【0151】
〈フィルム基板の作製〉
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工していない面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材(OPSTAR Z7501)を乾燥後の平均膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布し、80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用して硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、平滑層を形成した。次に、平滑層の上にガスバリア層を以下に示す条件で形成しフィルム基板を作製した。
【0152】
(ガスバリア層塗布液)
パーヒドロポリシラザン((PHPS)、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布した後、以下に示す乾燥処理、除湿処理、改質処理を順次行いガスバリア層を形成した。
【0153】
(乾燥処理)
温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理を行った。
【0154】
(除湿処理)
温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間処理を行った。
【0155】
(改質処理)
改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
【0156】
改質処理装置:株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス:Xe
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0157】
(改質処理条件)
エキシマ光強度:60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1%
エキシマ照射時間:3秒
〈導電性金属層の形成〉
作製したガスバリア層を有するフィルム基板のガスバリア層が形成されていない面に、以下の方法で細線格子及びランダムな網目構造の導電性金属層を形成した。
【0158】
(細線格子)
細線格子(金属材料)については以下に示す様にグラビア印刷により作製した。
【0159】
(グラビア印刷)
銀ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP 三ツ星ベルト製)をRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて線幅50μm、高さ1.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行った。
【0160】
(ランダムな網目構造)
ランダムな網目構造については以下に示す様に銀ナノワイヤー分散液を用い、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなる様に、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し作製した。
【0161】
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833から837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0162】
実施例1
《透明電極の作製》
〈透明電極TC−101の作製〉
作製した細線格子状の導電性金属層の上に、下記の記載の方法で調整した導電性ポリマーと本発明ポリマー(K)を含む塗布液を押し出しヘッドを用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、110℃、5分で加熱乾燥し透明導電膜を形成し、得られた電極を8×8cmに切り出した。得られた電極をオーブンを用いて110℃、30分加熱することで透明電極TC−101を作製した。
【0163】
〈透明導電膜の形成〉
(塗布液Aの調製)
下記の成分を混合し、山一電機株式会社製 振動粘度計 Model VM−1Gを用いて、液温25℃での加熱前の粘度測定を行った。次に、ロータリーエバポレーターで減圧しながら100℃で加熱を行い、粘度が110cpになるまで、脱溶媒処理を行った。
【0164】
尚、減圧、加熱処理前の粘度は60cpであった。
【0165】
ポリチオフェン:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510 1.59g
(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製)
P−1(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.08g
(透明電極TC−102からTC−117、比較透明電極TC−134、135の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液AのP−1及び粘度を表1に示すように変更したこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−102からTC−117、比較透明電極TC−134、135を作製した。
【0166】
(透明電極TC−118の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液のポリチオフェンを、ポリアニリンM(固形分濃度6.0%、ティーエーケミカル株式会社製)0.5gに変更し、塗布液AのP−1をP−5に変更し、粘度を表1に示すようにしたこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−118を作製した。
【0167】
(透明電極TC−119の作製)
透明電極TC−101の作製において、細線格子状の第1導電層を有するフィルム基板に変え、ランダムな網目構造の金属導電層を有するフィルム基板のランダムな網目構造の金属導電層上に、塗布液のP−1をP−5に変更し、粘度を表1に示すようにしたこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−119を作製した。
【0168】
(透明電極TC−120の作製)
透明電極1の作製において、透明電極用のフィルム基板上にグラビア印刷にて第1導電層を形成せず、塗布液AのP−1をP−5に変更し、粘度を表1に示すようにしたこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−120を作製した。
【0169】
(比較透明電極TC−121から133、136,137の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液Aを脱溶媒処理を行わずに塗布を行い、塗布液のP−1を表1に示すようにしたこと以外は、透明電極TC−101と同様にして、透明電極TC−121から133、136,137を作製した。
【0170】
(評価)
作製した各透明電極TC−101からTC−137につき透明性、表面抵抗及び膜強度を下記に示す方法により評価した結果を表2に示す。又、透明電極の安定性を評価するため、80℃90%RHの環境下で85時間置く強制劣化試験後の透明電極試料の透明性、表面抵抗及び膜強度を同じ方法で評価した結果を表1、表2に示す。
【0171】
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。有機電子デバイスに用いるため、75%以上であることが好ましい。
【0172】
透明性の評価ランク
◎:80%以上
○:75%以上、80%未満
△:70%以上、75%未満
×:70%未満
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。表面抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、有機電子デバイスを大面積にするには、20Ω/□以下であることが好ましい。
【0173】
(膜強度)
導電層の膜の強度を、テープ剥離法により評価した。導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて、指の腹でフィルムに圧着させ、テープの端を持って塗膜面に直角に剥離する操作を10回繰り返し、導電層の脱落を目視観察し、下記基準で評価した。
【0174】
◎:5回以上の圧着/剥離を繰り返しても、変化無し
○:4回の圧着/剥離の繰り返しまで、変化無し
△:2または3回の圧着/剥離の繰り返しで剥離が見られるが、8割以上のパターンが残っている
×:1回の圧着剥離で剥離が見られ、残っているパターンが8割未満
【0175】
【表1】

【0176】
【表2】

【0177】
導電性ポリマーと本文中に記載の一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含有する分散液を脱溶媒処理を行った後、使用して作製した本発明の透明電極TC−101から120は、比較透明電極TC−121から137に対して、透明性、表面抵抗及び膜強度に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、表面抵抗及び膜強度の劣化が少なく、安定性に優れることが分かる。本発明の有効性が確認された。
【0178】
実施例2
(有機EL素子の作製)
実施例1で作製した各透明電極No.TC−101からTC−137を形成したフィルムを超純水で洗浄後、パターン辺長20mmの正方形タイル状透明パターン一個が中央に配置される様に30mm角に切り出し透明電極基板とした。各透明電極No.TC−101からTC−137をアノード電極として用いて、以下の手順で正孔輸送層/有機発光層/正孔阻止層/電子輸送層/カソード電極/封止層の構成を有する有機EL素子を作製し、No.OEL−201からOEL−237とした。
【0179】
尚、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層、カソード電極は蒸着法で形成した。
【0180】
〈正孔輸送層の形成〉
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用ルツボに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
【0181】
〈有機発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
【0182】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になる様に、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0183】
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になる様に、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0184】
〈正孔阻止層の形成〉
更に、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0185】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsF(フッ化セシウム)を膜厚比で10%になる様に化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0186】
【化4】

【0187】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、透明電極を陽極として陽極外部取り出し端子及び15mm×15mmの陰極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陰極を形成した。
【0188】
更に、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成出来る様に、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止層を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子を作製した。
【0189】
(評価)
作製した各有機EL素子No.OEL−201からOEL−237について発光ムラ及び寿命を下記に示す方法で評価し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0190】
(発光均一性の評価方法)
発光均一性は、KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。1000cd/mで発光させ、50倍の顕微鏡で各々の発光均一性を観察した。又、オーブンにて80℃、60%RH、36時間加熱したのち、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間以上調湿した後、同様に発光均一性を観察した。
【0191】
発光均一性の評価ランク
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:ほとんど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面に渡って発光ムラが見られ、許容できない
(寿命の評価方法)
得られた有機EL素子を、初期の輝度5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。アノード電極をITOとした有機EL素子を上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の基準で評価した。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
【0192】
尚、輝度はコニカミノルタセンシング(株)製 分光放射輝度計 CS−2000で測定した。
【0193】
寿命の評価ランク
◎:150%以上
○:100以上、150%未満
△:80以上、100%未満
×:80%未満
【0194】
【表3】

【0195】
表3から、比較の透明電極を使用した有機EL素子OEL−221から237が、80℃60%RH36時間加熱後、発光均一性、寿命が著しく劣化するのに対し、本発明の透明電極を使用した有機EL素子OEL−201からOEL−220の発光均一性、寿命は加熱後でも安定しており耐久性に優れることが判る。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0196】
1a、1b、1c 透明電極
1a1、1b1、1c1 基材
1a2、1b2 導電性金属層
1a3、1b3、1c2 透明導電膜
D 幅
E 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性ポリマーと一般式(I)、(II)で表わされる構造単位を有するポリマー(K)を含む分散液の調製方法であって、
少なくとも前記導電性ポリマーと前記ポリマー(K)を含有する分散液を脱溶媒処理することを特徴とする分散液の調製方法。
【化1】

〔式中、Rは水素原子、メチル基を表し、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子、アルキル基を表し、Aは置換或いは無置換アルキレン基、−(CHCHRbO)x−を表す。Rbは水素原子、アルキル基を示し、xは平均繰り返しユニット数を表す。yは0、1を表す。Zはアルキル基、−C(=O)−Rc、−SO−Rd、−SiReを表す。Rc、Rd、Reはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表す。
【請求項2】
前記ポリマー(K)において、ポリマー(K)中の一般式(I)で表される構造単位の含有比率が、モル比で%から95%であることを特徴とする請求項1に記載の分散液の調製方法。
【請求項3】
基材上に形成された透明導電膜であって、前記透明導電膜が請求項1又は2に記載の分散液の調製方法で調整された分散液を用いて塗布・乾燥し形成されていることを特徴とする透明導電膜。
【請求項4】
前記透明導電膜が、基材上にパターン状に形成された導電性材料からなる金属導電層の上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の分散液の調製方法で調製された分散液を用いる透明導電膜の形成方法であって、
該分散液を調製する調製工程と、該分散液を基材に塗布する塗布工程と、該塗布工程で形成された塗膜を乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする透明導電膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の分散液の調製方法で調整した分散液を用い、請求項5に記載の透明導電膜の形成方法で形成された透明導電膜を有した透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−54085(P2012−54085A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195420(P2010−195420)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】