説明

分析装置

【課題】光源としてLEDと断面が丸形の液体保持部とを用いて安定的な測定を可能とする。
【解決手段】本分析装置は、被測定液体を保持する、断面が丸形の液体保持部を備え、恒温化されており且つ定速で移動する反応槽と、反応槽と熱的に結合されているLED光源と、液体保持部の受光面に対してLED光源から発せられた光線の強度を均一化させるための導光部と、導光部の出口位置に移動してきた液体保持部を透過した光線の強度を測定する光測定部と、光測定部からの信号に基づき処理を行う処理部とを有する。このようにすれば、発光面が小さいため受光面における光線の強度が不均一であるLEDと断面が丸形の液体保持部とを使用した際に安定的な測定が難しくなるという、従来技術では未知の問題を解決し、ばらつきの少ない測定データを得ることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関し、より詳しくはLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)を計測用の光源として用いた分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば試料及び試薬を含む液体の透過光を測定することによって分析を行う分析装置を小型化するため、その光源としてLEDを用いる場合がある。例えば特開2004−101295号公報には、キュベット内での試薬と検体との呈色反応をLED による発光素子を用いて透過測光するように構成して装置を小型化するとともに、このLEDの温度変化および電流変化による発光スペクトル、発光強度の安定化を図って精度のよい測光を行うための分析装置が開示されている。具体的には、キュベット内で試薬と検体液とを混合し、その呈色変化を測光して検体成分の分析を行う自動分析機器は、検体液を収容した検体容器およびキュベットを複数搭載可能なサンプルトレイと、キュベット内の試薬と検体液の呈色変化を透過測光するLEDによる発光素子と受光素子とからなる測光部とを備え、測光部の発光素子は、熱容量の大きい部材に挿着して温調するとともに、定電流駆動回路によって点灯する。
【特許文献1】特開2004−101295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように従来技術では、LEDを光源として用いる際に問題となる、温度変化による発光強度の変化を、LEDを熱容量の大きい部材に挿着することによって解決している。しかし、この公報記載の技術では、断面が矩形のキュベットを使用しており、液体の粘性などの特性によってはキュベットの角付近に付着した液体を除去しにくいといった洗浄に問題が生ずる。
【0004】
また、この洗浄の問題を解決するために、断面が丸形の容器を使用することも考えられるが、そのような場合に新たに生ずる問題については上で述べた公報には何ら開示されていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的な測定を可能とする小型の分析装置を提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的且つ高精度な測定を可能とする小型の分析装置を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の他の目的は、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的且つ高精度な測定を高速に実施するための小型の分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分析装置は、被測定液体を保持する、断面が丸形の液体保持部を備え、恒温化されており且つ定速で移動する反応槽と、反応槽と熱的に結合されているLED光源と、液体保持部の受光面に対してLED光源から発せられた光線の強度を均一化させるための導光部と、導光部の出口位置に移動してきた液体保持部を透過した光線の強度を測定する光測定部と、光測定部からの信号に基づき処理を行う処理部とを有する。
【0009】
このようにすれば、発光面が小さいため受光面における光線の強度が不均一であるLEDと断面が丸形の液体保持部とを使用した際に安定的な測定が難しくなるという、従来技術では未知の問題を解決し、ばらつきの少ない測定データを得ることができるようになる。すなわち、高精度の測定及び分析が可能となる。また、断面が丸形の液体保持部を備えた反応槽を定速で移動させつつ測定を実施することによっても、測定データのばらつきを抑え且つ高速処理を行うことが可能となる。
【0010】
なお、上で述べた導光部は、LED光源からの光線を散乱させるような構成であってもよい。このような構成によれば、液体保持部の受光面における光線の密度を均一化させることができるので、より精度の高い測定ができるようになる。
【0011】
また、上記導光部を、光沢のある内壁を有する筒で構成するようにしてもよい。このようにすれば、LED光源から出力された光線が空洞内壁で反射するため、導光部の出口では受光面に対する光線の強度が均一化される。なお、導光部を、光ファイバーで構成するようにしても同様の効果を奏する。
【0012】
さらに、上で述べた処理部が、上記信号のピークを検出する処理を実施するようにしてもよい。このようにすることにより、反応槽を定速移動させている場合には、効率的且つ高精度のピーク検出を可能とする。
【0013】
また、導光部とLED光源の保持部とが測定部として一体形成されるようにしてもよい。そして、この測定部が、反応槽を恒温化させる恒温部と連結されるようにしてもよい。このようにすれば、LED光源保持部の温度変化を抑制することができ、LEDの熱的な問題を安定的に解決させることができるようになる。
【0014】
さらに、上で述べた液体保持部が、ポリプロピレン製である場合もある。このような素材を用いるのは、洗浄が容易で、耐久性も高いものとなり、撥水性があるためであって、被測定液体の量が少ない場合も対応可能となる。
【0015】
さらに、LED光源が波長の異なる複数のLEDを含むようにしてもよい。そして、導光部及び光測定部が各LEDに対応して設けられるようにしてもよい。このようにすれば、様々な分析に応用することができるようになる。
【0016】
また、本発明に係る分析装置を被測定液体の吸光度を測定するために用いるようにしても良い。このような用途に用いれば、精度良い吸光度分析が可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る分析装置を便潜血分析を行うために用いるようにしても良い。このような用途に用いれば、糞便中の血液成分を精度良く分析することが可能となる。
【0018】
なお、反応槽の移動、液体保持部の特定、処理部の処理結果と液体保持部内の被測定液体の識別情報等との対応付けなどについては、制御プログラムを実行する制御装置からの指示に応じて制御される。そのような制御プログラムは、例えばフレキシブル・ディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体又は記憶装置に格納される。また、ネットワークを介してディジタル信号にて頒布される場合もある。なお、処理途中のデータについては、コンピュータのメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的な測定が可能となる。
【0020】
また、本発明の他の側面によれば、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的且つ高精度な測定が可能となる。
【0021】
さらに、本発明の他の側面によれば、断面が丸形の液体保持部と計測用の光源としてLEDを用いて安定的且つ高精度な測定を高速に実施することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に、本発明の一実施の形態に係る自動分析機の斜視図を示す。なお、本実施の形態に係る構造を示すため、通常は付されているカバーをはずした状態を示している。本実施の形態に係る自動分析機100は、様々な機能を有しているが本実施の形態に関連する部分としては、穿刺部1、穿刺部1の支柱2、吸引ノズル3、採便容器の固定部4、固定部4の支柱5、採便容器の搬送部6、反応部7、反応部7内に設けられた、吸引ノズル3による吸引サンプル(便懸濁液を濾過したもの。以下、試料とも呼ぶ。)の分析を行うための分析容器(液体保持部とも呼ぶ)への注入孔8、ノズル洗浄部9、搬送部6が移動するレール10と、自動分析機100の制御を行う情報処理部11、プリンタ12、表示部13、採便容器に付されたバーコードを読み取るバーコードリーダ14、試薬保冷部16、試薬保冷部16に保持されている試薬を分析容器に注入する試薬分注部15、分析容器に注入されたサンプルに対する測定を行う測光部17、分析容器を洗浄する洗浄部18などを有する。
【0023】
ここで図1に示した自動分析機100の動作の概要を述べておく。タッチパネル式の表示部13に対するユーザの指示に応じて情報処理部11は、以下の動作を実施するように各部を制御する。すなわち、1又は複数の採便容器を載せた搬送部6は、レール10に沿って固定部4が設置されている位置に移動する。なお、移動させる際には、バーコードリーダ14が採便容器に付されているバーコードを読み取り、情報処理部11に出力する。情報処理部11は、バーコードリーダ14からのバーコード・データを保持しておき、後に実施する分析処理の結果と結び付ける。搬送部6が固定部4の下に今回の分析対象となる採便容器を移動させると、固定部4の支柱5を下に下ろし、採便容器の上部を固定する。次に、穿刺部1の支柱2を吸引ノズル3の先端が採便容器の上端の中心に位置するように回転させ、さらに支柱2を下ろして、穿孔動作、吸引動作等を行う。吸引後は、支柱2を引き上げ、さらに吸引ノズル3の先端が注入孔8の中心に位置するように回転させる。なお、反応部7では、今回の吸引サンプルについて分析を行うための分析容器を注入孔8の位置に回転させる。その後、吸引ノズル3で吸引されたサンプルは、所定量の第一試薬とともに、注入孔8を介して反応部7の分析容器に注入される。(このステップにより、吸引ノズル内部の洗浄は実質的に行われたとして後の内部洗浄ステップは省略することも可能である。)所定量の第一試薬とともに、サンプルが注入された分析容器には、試薬分注部15により試薬保冷部16に保持されている試薬が注入され、測光部17により測定が行われ、当該測定結果が情報処理部11に出力される。情報処理部11は、測定結果によって分析処理を行い、分析結果を上で読み取ったバーコード・データと結び付け、記憶装置に格納し、表示部13に表示する。ユーザの指示があれば、プリンタ12から分析結果を印刷出力する。また、適切なタイミングで、洗浄部18は、反応部7の使用済み分析容器を洗浄する。
【0024】
以下、反応部7及び測光部17について図2乃至図7を用いて具体的に説明する。図2に反応部7のカバーをはずし、角度を変えて見た場合の斜視図を示す。図2に示すように、反応部7には、例えば円筒の中心角8°毎に当該円筒部分に45個の液体保持部たるセルが設けられた反応槽(カバーによって隠れている)と、当該反応槽のカバーであり且つセルの上部に設けられたセル孔73aを有する反応槽カバー73と、反応槽カバー73の下にセルが設けられている反応槽を挟み込み反応槽の温度を一定に保つためのヒータなどを有する恒温部71と、反応槽を定速で回転させるモータ(図示せず)に連結される回転軸72と、当該回転軸72と反応槽とを連結して回転軸72の回転に応じて反応槽を回転させる回転連結部74とを有する。回転連結部74は、回転軸72に連結される円盤状の水平板74aと当該水平板74aに結合されている円筒状の垂直壁74bとを有する。
【0025】
なお、セルの数は45個に限定するものではなく、円筒状の反応槽のサイズ、強度、測定効率などから適切な数を決定し得るものである。
【0026】
また、測光部17は、恒温部71の一部を切り取る形で恒温部71に連結されており、恒温部71と反応槽と測光部17とは熱的に結合されている。すなわち、熱的に結合とは、恒温部71によって、反応槽と測光部17が同時に恒温化されるように結合していることをいい、恒温部71と反応槽と測光部17とが直接連結されることで、恒温部71からの熱を反応槽と測光部17へ伝導させる場合もあるが、これらが直接連結されていなくとも、恒温部71からの熱を他の熱伝導性の媒体を通して測光部17へ伝導させ、反応槽と測光部17が恒温化される場合も含まれる。測光部17の詳細については、図5(a)及び(b)を用いて説明する。
【0027】
次に、恒温部71を図3の斜視図を用いて概観する。恒温部71は、反応槽が移動する移動路71fより外側に設けられた第1保温壁71a及び第2恒温壁71bと、移動路71fより内側に設けられた第3恒温壁71c及び第4保温壁71dとを有する。第2及び第3恒温壁71b及び71cは、図示しないヒータなどが埋め込まれているか又はヒータに連結されており、反応槽を恒温化している。第1及び第4保温壁71a及び71dは、例えばポリウレタンのような保温材を用いて形成されている。また、第1及び第4保温壁71a及び71d並びに第2及び第3恒温壁71b及び71cには、測光部17を連結させるための切り欠き71eが設けられている。
【0028】
図3の例では、第2及び第3恒温壁71b及び71cと、第1及び第4保温壁71a及び71dと、計4枚の壁で恒温部71が構成されるが、反応槽を挟み込むためであれば、2枚の恒温壁で構成するようにしても良い。また、反応槽の温度を一定に保持できるのであれば1枚の恒温壁(例えば恒温壁71b)のみで構成するようにしても良い。さらに、第1及び第4保温壁71a及び71dについても、ヒータ等を埋め込むか又はヒータに連結して恒温壁として機能させるようにしても良い。また、切り欠き71eの位置は、測光部17の設置位置に応じて移動させることが可能である。また、測光部17の大きさが恒温部71の大きさと比較して十分小さい場合には(すなわち、測光部17が恒温部71に埋め込むことが可能な大きさであれば)、第2及び第3恒温壁71b及び71cにのみ切り欠き71eを設け、当該切り欠き部分に測光部17を設置しても良い。測光部17の設置位置は、洗浄部18その他の機能の設置位置に影響を受けるが、基本的には円筒状の恒温部71のいずれであってもよい。
【0029】
次に、反応槽の構造及び当該反応槽を回転させる機構について図4を用いて説明する。図4は、回転軸72の中心を通過し且つ回転連結部74の水平板74aを垂直に切断する面における断面概略図である。なお、恒温部71の構成要素については図示を省略している。回転軸72は、固定部72aにより回転連結部74の水平板74aと連結されており、さらに支持部78によって反応部7の基板81に対して垂直に回転するように支持されている。また、回転軸72は、連結部79を介してモータ80に連結しており、モータ80の回転は、制御部として動作する情報処理部11によって制御される。なお、連結部79は、カバー82によって覆われている。また、回転連結部74の垂直壁74bは、回転軸72の中心を中心とし且つ所定の距離離れた2つの同心円で区切られるドーナツ状の連結板77と結合されている。また、連結板77は、回転軸72の中心を中心とし且つ他の所定距離離れた2つの同心円で区切られるドーナツ状のカバー73と結合されている。このカバー73の下部には反応槽75が結合されており、カバー73のセル孔73aの位置に合わせてセル76が設けられている。
【0030】
反応槽75は、回転軸72の中心を中心とする円筒となっており、部分Bに設けられている第3恒温壁71c及び第4保温壁71dと、部分Aに設けられている第1保温壁71a及び第2恒温壁71bとで挟まれており、恒温部71と熱的に結合されている。なお、回転軸72を中心として左右対称として図を描いているが、上で述べた例ではセルの個数は45個で奇数であるから、回転軸72を通過し且つ回転連結部74の水平板74aを垂直に切断する面で切断した場合には、いずれか一方しかセル76は切断されないが、ここでは恒温部71との関係を明らかにするため両側に示すようにしている。
【0031】
なお、セル76は、上部が開口しており、断面が丸形の容器である。矩形のセルであれば、洗浄が十分に行えない、又は十分な洗浄を行うのに時間がかかるなどの問題があるが、丸形であれば短時間で十分な洗浄を行うことができる。また、セル76は、通常この分野で用いられている材料からなるものであればよく、例えばガラス、種々の合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチロール、フッ素樹脂(PTFE)等)などの材料からなるものが挙げられ、一般的には透明感のある材料からなるものである。なかでもポリプロピレン、ポリスチロールその他の撥水性材料からなるものが好ましい。このような材料を用いるのは、洗浄部18による洗浄が容易であり、耐久性があり、撥水性があるためである。
【0032】
また、制御部である情報処理部11によってモータ80の回転は測定中セル76が定速に移動するように制御される。1つ1つのセル76を、測光部17の位置で常に正確に停止させることは難しく、停止させようとしても停止位置のばらつきが生じやすい。セルが矩形であれば、停止位置のばらつきが多少生じても問題ないが、丸形のセルを採用した場合、停止位置がばらついてしまうと、測光部17における測定データにもばらつきが生じやすく、安定的な測定ができない。すなわち、セル76を透過した光線(以後、透過光と略記する場合がある。)の強度は被測定液体が含まれているセル76の厚み(光路長)にも依存するため、セルが丸形であると、セル76の端の部分と中央部分とでは、光路長が全く異なり、両者における透過光の強度が異なってしまう。また、セル76と内部に保持する液体(試薬+試料)とによるレンズ効果によって生じる透過光の焦点付近とその外側(即ち、中央部分と端の部分)とでも、透過光の強度が異なってしまう。このため、停止位置のばらつきにより透過光強度にばらつきが生じてしまう。このような問題を解決するために、本発明に係る実施の形態が完成された。下でも詳しく述べるが、測定時にセル76を停止させるのではなく、セル76を定速移動させながら、セル76からの透過光の強度を連続的に測定し、あたかもその測定値を連続的にプロットし当該プロットされた点から描かれる曲線におけるピーク点を特定する処理を実施し、当該ピーク点をそのセルの実測値(ピーク値)と設定することで、ばらつきを除去する。他の言い方をすれば、セル76を定速移動させていれば上記曲線においてピーク点がいずれの位置で出現しようとも、ピーク点のピーク値を特定することさえできれば、そのセルにおける透過光量の最大出力値が検出できたことになる。よって、1つ1つのセル76の内部に保持する液体における最大出力値を一定条件で測定しているとみなすことができることから、ばらつきを少なくすることができる。
【0033】
なお、一度基準位置に特定のセル76を移動させた後に、回転軸72の回転角を測定しておけば、いずれのセル76が測光部17が設けられている位置を通過したかは把握できる。すなわち、情報処理部11において、セル76又はセル76に保持される試料(のID)若しくは試料の採取元(被験者ID)と、測定データ又は分析結果とを対応付けて記憶装置に格納することができる。
【0034】
次に、図5(a)及び(b)を用いて測光部17の構成について説明する。図5(a)は、測光部17の上面図、図5(b)は、測光部17の側面図である。測光部17は、LED201の保持部173aとLED201から発せられた光線の導光部173bと反応槽75の移動溝173dと透過光測定部に相当するフォトダイオード(PD:Photo Diode)202の保持部173cとを有する主要部173と、当該主要部173の一部(LED201の保持部173aの部分など)を保温する保温体171と、主要部173のLED201を実装するためのPC基板174と、主要部173のPD202を実装するためのPC基板175とを有する。なお、主要部173のLED201側とPC基板174とは、ねじ174a乃至174cなどによって結合されている。また、主要部173のPD202側とPC基板175とは、ねじ175a乃至175cなどによって結合されている。なお、保温体171は必ずしも必要ではないが、例えばポリウレタン等の保温材を用いて作られた保温体171を設ける方が、LED201がより恒温化されるので好ましい。
【0035】
図5(a)に示すように、反応槽75の移動溝173dにおいては、恒温部71に結合するためのねじ穴176a及び176bとが設けられている。また、図5(b)に示すように、移動溝173dを、反応槽75が移動するようになっており、LED201が発した光線は、導光部173bを介してセル76の側面に照射される。当然ながら、移動路71fと移動溝173dとは、位置合わせされており、反応槽75がスムーズに移動できるようになっている。セル76の透過光は、PD202によって検出される。
【0036】
測光部17は、熱容量が大きく、恒温部71と熱的に結合させて、LED201の温度を一定に保つものである。すなわち、LED201の保持部173aは、測光部17の主要部173と保温体171とにより囲まれた部分に設けられており、測光部17が熱的に恒温部71と結合していることから、LED201の保持部173aは外界の影響を受けにくく、LED201の温度変化は微小に抑えられている。従って、安定的な発光が行われるようになる。なお、主要部173は、例えば、アルミニウム製である。また、導光部173bは、LED201の保持部173aと共に、主要部173を切削して穴を空けることによって形成されている。主要部173がアルミニウム製であり、切削して穴を空けることにより導光部173bが形成される場合には、中空にしておくだけでLED201から発せられた光線がその内壁を反射して散乱し、導光部173bの出口においては、その光強度が均一化される。なお、導光部173bの断面形状は、丸形が好ましいが、これに限定されるものでなくともよく、多角形であってもよい。
【0037】
次に、図6乃至図7Cを用いて測光部17の機能の詳細を説明する。図6に示したように、LED201は、定電流源206に接続されており、制御部である情報処理部11による制御に応じて一定の電流にて駆動されるようになっている。これによって、温度が一定であれば安定した発光が行われる。しかしながら、LED201は点光源に近いので、LED201から放射された光線(以後、出射光と略記する場合がある。)の強度は、図7Aの点線aで示されるようなプロファイルを有する。図7Aでは、縦軸が出射光の強度を表し、横軸がLED201の中心からの距離(又は位置)を表す。なお、LED201は横軸原点に配置され、縦軸の上方向に光線を射出するものとする。点線aは、LED201の中心を通り且つ照射方向の直線上(すなわちLED201真正面方向)が最も強い光強度を有し、当該直線から離れるにつれ光強度が弱くなる状態を示している。このような光強度プロファイルを有するLEDそのものを光源として、丸形セルを液体保持部に用いて、丸形セルを定速で移動させながら、PD202が検知する電気信号に基づいて得られる透過光強度値を連続的にプロットしたとすると、図7B又は図7Cに示すような透過光強度曲線が得られる。図7B及びCは、一定距離おいて配置(固定)されたLED201とPD202の間を、回転軸72を中心に丸形セル76を、LED201を真正面に見た方向において左から右に回転移動させた場合に、PD202で検知された電気信号に基づいて得られる透過光強度曲線を示す。図7B及び図7Cにおいて、縦軸は透過光の強度を表し、横軸は透過光の強度の測定時刻を表す。なお、横軸における原点の位置はLED201の中心とPDP202の中心とを結ぶ直線上に丸形セル76の中心が一致する時刻を便宜的に表している。この際、図7Bは真円の丸形セルを用いた場合に得られる曲線を表しており、このように見かけ上ピーク点が1つである曲線が得られれば、後述する方法によるピーク点の検出は容易であるので、問題はない。しかしながら、図7Cは歪みを有する(例えば、セルの中心がずれている等)丸形セルを用いた場合に得られる曲線を表しており、このようなフラットに近い部分を有する曲線が得られた場合には、ピーク点が不明確であったり、複数のピーク点が存在してしまうために、適切なピーク点を精度よく検出できなくなる(ピークの不確定性)という問題が生じる。このピーク点の不確定性という問題は、後に述べるピーク検出部におけるピーク点の検出に大きな影響を与える。すなわち、例えば、見かけ上ピーク点が2つ(又はそれ以上)の曲線が入力された場合には、ピーク点のいずれが丸形セル76の特性を正しく反映しているのか不明である。また、最初のピーク点については正しく検出できても、2番目以降について正確に検出できない場合もある。例えば図7Cのような曲線が得られた場合には、ピーク検出部では、2つのピーク点c及びdのうち、点dを検出することができても、点cと点dのいずれが丸形セル76の特性を反映しているのか不明である。また、点dが点cより低い場合には点cを検出することはできるが、点dを検出することができない場合が多い。このような場合には、点cが検出されることになるが、点dが真に検出すべき点である場合には、間違った値を出力することになる。すなわち、いずれのピークを検出すればセルの特性を検出することができるのかが不明である。図7Aに示した点線aのようなプロファイルを有するLEDそのものと丸形セルを用いた測定においては、往々にして図7Cに示すような曲線が得られてしまう。なお、ここで言うピーク点とは、可微分曲線においては極大値における点又は極小値における点、或いは尖った点を有する曲線(可微分でない曲線)においては尖った点を意味する。
【0038】
このように、小型にした際の洗浄の容易性などから丸形セルを採用し、さらに小型化や省消費電力などの観点からLED201を光源として用いた場合、本願の発明者らは、上で述べたようなピーク点の不確定性という従来知られていなかった問題に直面した。丸形セルについてはその形状の精度を上げることはコスト的に難しく、本願の発明者らは、この問題を解決するために、LED201の光強度プロファイルを修正することによって除去することを非自明に案出した。具体的には、図7Aの点線aで表されるような出射光の光強度プロファイルを維持すると、丸形セルの歪み及びレンズ効果といった丸形セルの問題を強調することになるため、図7Aの実線bで表されるように、できるだけ平坦な部分を有するようにLED201の出射光の光強度プロファイルを変換することとした。そうすると、上で述べた丸形セルの問題は、定速移動させて測定すればピーク点の検出時刻のずれにほぼ変換されて(実質的にピーク点が1つとなって)、上述した如き問題は解消され、再現性が高く、安定的に高精度の測定が可能となった。
【0039】
このため、本実施の形態では、導光部173bによって、LED201から放射された光線の強度を、図7Aの実線bで示すように、セル76の受光面となる部分に照射すべきフラットな部分を有するステップ関数のようなプロファイルに変換する。導光部173bは、このような光強度の変換機能を有している。図7Aの実線bで示すような光強度の光線をセル76の受光面となる部分に照射すれば、図7Bに示したようにピークが1つの曲線を得ることができるようになる。
【0040】
さらに導光部173bは、セル76の受光面における光線の密度を均一にするだけではなく、LED201からの出射光を直接光から散乱光に変換することで、セル76の内部に保持する液体(試料及び試薬)に含まれる粒子(例えば、金コロイド粒子など)による影響を少なくすることができる。より具体的には、例えば、液体(試料及び試薬)に含まれる粒子に直接光が当たった場合には、その光は透過光としてセル76から射出されることはない。言い換えれば、液体(試料及び試薬)に含まれる粒子が光を遮ってしまう。このような影響が大きく出ると透過光の光強度が極端に弱くなってしまうことから、測定の誤差が大きくなる原因となる。しかしながら、散乱光の場合は液体(試料及び試薬)に含まれる粒子を縫うように光が進んでいくため、その光が直接粒子に当たった場合以外は、その光はセル76からの透過光となる。このため、被測定液体に含まれる粒子による影響を受けたとしても透過光の光強度が極端に弱くなることはないので、測定の誤差が小さくなるという特徴を有する。
【0041】
導光部173bは、光沢のある空洞の内壁によりLED201から射出された光線を散乱させ、上記のような変換を行っている。但し、導光部173bは、光沢のある空洞の内壁だけではなく、光ファイバーなどで実施するようにしてもよい。光ファイバーでは、屈折率の高いコアを中心に設け、さらに当該コアの周りに屈折率の低いクラッドを設ける構造となっているが、このように光線を内壁でできるだけ損失を少なく反射させつつ進行させる構成を採用するとよい。但し、他に図7(a)の点線aの光強度を実線bの光強度に変換させることができるような素子があれば、それを用いることも可能である。なお、導光部173bの長さについては、光強度のフラット化の度合いに応じて調整する必要がある場合もある。また、導光部173bの構成によっても長さは異なる。
【0042】
また、より安定的な測定データを得るために、導光部173bの出口(LED201の保持部173aとは反対側)に、LED201からの出射光の左右の端の部分を遮るようなスリットを設けてもよい。スリットは、通常この分野で用いられる一般的なものを用いれば足り、導光部173bの出口(LED201の保持部173aとは反対側)に固定されていても、定速移動するセル76と共に移動するなどの可動式のものでもよい。
【0043】
図7(a)の実線bのような光強度を有し、導光部173bの出口(LED201の保持部173aとは反対側)から出力された光線は、セル76の受光面となる部分に照射される。そして、セル76の透過光を、セル76の受光面となる部分とは反対側に設置されているPD202において測定する。PD202は、光信号を光強度に応じた電気信号に変換する素子であるから、検出強度と同様の振幅を有する電気信号が生成される。このようにして生成された電気信号は、信号処理部203に出力される。
【0044】
セル76に含まれる試料などに応じてその信号処理の種類を変更させることもあるが、信号処理部203は、ここでは一例としてピーク検出を行うものとする。すなわち、信号処理部203は、ピーク検出部2031を有しており、当該ピーク検出部2031は、例えば図7Bに示したような曲線が入力されると、ピーク点を検出してピーク値を保持して出力する。また、ピークが2つ(又はそれ以上)の曲線が入力されても、より高いピーク点を検出し保持するような機能を有するようにしてもよい。信号処理部203は、ピーク検出だけではなく、他の信号処理を実施する機能を有するようにして、それらと併せてピーク点の値などを加工するようにしてもよい。
【0045】
また、信号処理部203は、A(Analog)/D(Digital)変換回路204と接続されており、A/D変換回路204は、例えばピーク値などのディジタル値等を情報処理部11に出力する。情報処理部11は、例えばピーク値から予め定められた計算方式に従って吸光度を算出する。なお、予め不溶物等を含まない適当な液体(例えば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、緩衝液等)を保持したブランク状態のセル76についてピーク値を測定し、同様の方法により実際に試料を含む液体を内部に保持したセル76についてピーク値を測定した後、ブランク状態のセル76についてのピーク値と試料を含む液体を内部に保持したセル76についてのピーク値との差を算出し、その差から吸光度を算出すれば、実際の試料+試薬の吸光度を得ることができる。例えば、情報処理部11においてこのような計算を実施する。また、回転角検出部などの位置検出部205によっていずれのセル76について測定を実施したのかを検出しておき、情報処理部11において測定データ(すなわちピーク値)又は吸光度などの分析結果と、セル76又はセル76に保持される試料(のID)若しくは試料の採取元(被験者ID)とを対応付けて、図示しない記憶装置(メモリ)に格納しておく。
【0046】
なお、ピーク検出部2031の具体的な構成は周知であり、さらにピーク値から吸光度などを算出する計算手法についても周知であるから、これ以上説明しない。
【0047】
以上述べたような構成を採用することによって、LEDという小型で長寿命な光源を採用することができるため、分析装置の小型化が図られる。また、LED201を分析装置において採用する際最も問題となる温度変化に伴う光強度の変動も恒温化によって解決されている。さらに、断面が丸形で精度の高くない容器を採用しても、容器の定速移動とLED201の出力光線の強度均一化とによって、安定的でばらつきなく、高精度の測定を行うことができるようになる。従って、高精度の分析を安定的に行うことが可能となる。なお、丸形の容器なので、洗浄しやすく、コンタミネーションの問題が生じにくくなっている。また、ポリプロピレン製の容器を採用すれば、より低コストで小型化させることができる。また、小型化させて使用する液体の量を減らすことができる。
【0048】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、LED201から射出される出射光の波長は被測定液体の種類などに応じて決定すればよく、また、図5(a)及び(b)並びに図6では、LED201と導光部173bとPD202とを1組だけ設けるような例を示しているが、複数組、例えば2組設けるような構成も可能である。この場合、LED201が発する光線の波長を異なるようにする。例えば便潜血分析のための被測定液体(試料+試薬)の吸光度を測定する場合には、通常、600nm以上、好ましくは620nm以上、さらに好ましくは、630nm以上であり、通常、800nm以下、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、670nm以下であり、これらの波長領域では635nm付近の波長を採用することが最も好ましい。また、上記の波長領域よりも短い波長領域としては通常、500nm以上、好ましくは510nm以上、さらに好ましくは530nm以上であり、通常、600nm未満、560nm以下、550nm以下であり、これらの波長領域では530nm付近の波長を採用することが最も好ましい。PD202も対応するLED201に応じて変更する。このように、いわゆる2波長測光に準じた測光を実施するようにすれば、液体(検体)由来の濁り等による測定への影響を除去することが可能となる。
【0049】
また、本発明に係る技術は、被測定液体の透過光の測定に関するものであり、透過光を測定する測定法や原理、それに用いられる試料及び試薬の何れも適用可能である。なかでも、生体由来試料(例えば血液、血漿、血清、髄液、唾液、尿、糞便等)を適宜適当な液体(例えば蒸留水、イオン交換水、生理食塩水、緩衝液等)で希釈又は懸濁したものを試料とし、当該試料と、試料中の分析対象物質に対する抗体(又は抗原)が結合したコロイド粒子(例えば金コロイド粒子、ラテックス粒子等)を含む試薬とを混合、反応させて得られた被測定液体を測定する場合に有用である。特に、糞便を適宜蒸留水、イオン交換水、生理食塩水、緩衝液等で懸濁した便懸濁溶液又はこれらを濾過した後の濾液等を試料とし、当該試料と、試料中のヘモグロビンに対する抗体(又は抗原)が結合した金コロイド粒子を含む試薬とを混合、反応させて得られた被測定液体等を測定する、所謂便潜血分析を行う際に有用である。
【0050】
また、上で述べた機械的な構成は、上で述べた主旨に従って様々に変形可能である。例えば、恒温部71のように第1及び第4保温壁71a及び71d並びに第2及び第3恒温壁71b及び71cに分ける必要は必ずしもない。また、測光部17についても、恒温部71と反応槽75と熱的に結合させてLED201を一定の温度にし、導光部173bを設ければよいので、他の形状にすることも可能である。反応槽75の移動機構についても、上で述べた機械的な構成は一例であって、他の形状を採用するようにしてもよい。
【0051】
さらに、上で述べた実施の形態では、ピーク検出部2031でピーク点を検出して、保持するような回路を想定していたため、ピーク点のピーク値のみが情報処理部11に出力されるようになっていた。しかしながら、例えば図7Bに示したような曲線の各点の値を測定し、全ての値を情報処理部11に出力した上で、情報処理部11がピーク点及びその値を特定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動分析機の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る反応部の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る恒温部の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る反応槽等の断面図である。
【図5】(a)は本発明の実施の形態に係る測光部の上面図、(b)は測光部の側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る測光部の機能を説明するための図である。
【図7A】LEDから出力される光線の強度を説明するための図である。
【図7B】正常なセルを透過した光線の強度に基づく曲線を表す図である。
【図7C】問題となるセルを透過した光線の強度に基づく曲線を表す図である。
【符号の説明】
【0053】
17 測光部 71 恒温部 72 回転軸 73 反応槽のカバー
74 回転連結部 75 反応槽 76 セル
173a LEDの保持部 173b 導光部
173c PDの保持部
201 LED 202 PD 203 信号処理部
204 A/D 205 位置検出部
206 定電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液体を保持する、断面が丸形の液体保持部を備え、恒温化されており且つ定速で移動する反応槽と、
前記反応槽と熱的に結合されているLED光源と、
前記液体保持部の受光面に対して前記LED光源から発せられた光線の強度を均一化させるための導光部と、
前記導光部の出口位置に移動してきた前記液体保持部を透過した光線の強度を測定する光測定部と、
前記光測定部からの信号に基づき処理を行う処理部と、
を有する分析装置。
【請求項2】
前記導光部が、前記LED光源からの光線を散乱させる
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記導光部が、光沢のある内壁を有する筒で構成される
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項4】
前記導光部が、光ファイバーで構成される
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項5】
前記処理部が、前記信号のピークを検出する処理を実施する
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項6】
前記導光部と前記LED光源の保持部とが測定部として一体形成されており、
前記測定部が、前記反応槽を恒温化させる恒温部と連結されている
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項7】
前記液体保持部が、ポリプロピレン製であることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項8】
前記LED光源が波長の異なる複数のLEDを含み、
前記導光部及び前記光測定部が各前記LEDに対応して設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項9】
前記処理部により前記被測定液体の吸光度が算出されることを特徴とする請求項1記載の分析装置。
【請求項10】
前記処理部により便潜血分析のための処理が行われることを特徴とする請求項1記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2007−198935(P2007−198935A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18598(P2006−18598)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】