列車制御システム
【課題】推力指令に対する応答遅れを改善して、安全性を確保した上で、走行時間の短縮、運転本数の増大、輸送能力の増強などを達成する。
【解決手段】 自動列車運転装置6からブレーキ制御器5に零推力指令を与えて、VVVFインバータ3から励磁電流を出力させ、主電動機2を直ぐに動作可能な待機状態にさせるとともに、空制ブレーキ装置4に実トルクが生じない程度の空気圧(初込め圧)を与えて、直ぐに動作可能な待機状態にさせておき、自動列車運転装置6からブレーキ制御器5に引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令が与えられたとき、主電動機2、空制ブレーキ装置4を直ぐに動作させる。
【解決手段】 自動列車運転装置6からブレーキ制御器5に零推力指令を与えて、VVVFインバータ3から励磁電流を出力させ、主電動機2を直ぐに動作可能な待機状態にさせるとともに、空制ブレーキ装置4に実トルクが生じない程度の空気圧(初込め圧)を与えて、直ぐに動作可能な待機状態にさせておき、自動列車運転装置6からブレーキ制御器5に引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令が与えられたとき、主電動機2、空制ブレーキ装置4を直ぐに動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令を出力し、列車を自動制御する列車制御システムに係わり、特に推力指令に対する応答遅れを改善させるようにした列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電車や新幹線などの列車は、自動列車制御装置(ATC)や自動列車運転装置(ATO)によって、自動的に力行制御ないしブレーキ制御が実行されており、衝突を回避した安全性や駅への停止精度の確保や定時走行を達成している。
【0003】
これらの装置の出力は、力行加速力(引張力)や減速ブレーキ力への指令値である。力行加速する場合には、VVVFインバータと主電動機から成る駆動装置が生み出す力行トルク、また、ブレーキ減速する場合には、駆動装置による電制ブレーキ力と、空制ブレーキなどの空制ブレーキ力を合わせた力で減速する。
【特許文献1】特開2004−297912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置への推力指令値(ここでは、「推力」とは、力行加速力とブレーキ減速力をあわせて呼ぶものと定義する)に対し、駆動装置や空制ブレーキ装置などの駆動/制動装置が、指令値に相応する力を生じるまでに、様々な遅れ要素がある。この遅れ時間により、次のような障害を引き起こしている。
【0005】
自動列車制御装置(ATC)では、先行する列車との安全距離を確保するようにブレーキが作用するが、この場合、ブレーキ指令を入れてから実際のブレーキ力が作用するまでの遅れ時間を考慮して空走距離を算定し、その分、事前にブレーキ力を作用させる。列車制御の大きな目的は、安全性を確保した上で、列車の間隔を狭めて、輸送能力を増大することであるが、空走距離が大きいと、列車の間隔がつめられない。
【0006】
また、自動列車運転装置(ATO)では、駅間走行を自動で行い、着駅の所定位置に自動停止させる装置である。推力指令値を入れてから、実推力が作用するまでに遅れが大きい場合、木目細やかな制御ができず、推力指令値(あるいは、それに相応するノッチ)がハンチングするなどして、停止精度や乗り心地が劣化することがある。特に、推力の応答遅れがシステムの状態によって変化する場合には、顕著な問題となる。場合によっては、速度制限をオーバーして、自動列車制御装置(ATC)が作用し、乗り心地や走行時間が極端に劣化することもある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み、請求項1では、零推力指令を使用して、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておくことにより、引張力列車に作用する推力指令からの応答遅れを改善し、列車の高密度化、停止精度、乗り心地、走行時間の改善、省エネルギー化などを促進するのに好適な列車制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令もしくは零推力指令を出力し、列車を自動制御する列車自動制御手段と、前記推力指令に応じた引張力または零推力指令もしくは出力ブレーキ力を列車に発生させる駆動/制動手段とを備え、前記駆動/制動手段は、前記零推力指令を受けたとき、零推力を生成して列車の駆動/制動を実行することを特徴としている。
【0009】
本発明では、前記駆動/制動手段は、ブレーキ力を発生する空制ブレーキ手段と、前記空制ブレーキ手段を制御する空制ブレーキ制御手段とを有し、この空制ブレーキ制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、初込め圧を前記空制ブレーキ手段に与える。
【0010】
また、本発明では、前記駆動/制動手段は、駆動力/制動力を発生する電動機と、前記電動機を制御するVVVFインバータを含む電動機制御手段を有し、この電動機制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、前記電動機のトルクが零となるように制御する。
【0011】
ここで、“零推力指令”とは、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておく指令をいう。上述したように、零推力指令が出力された場合には、空制ブレーキ手段に対しては、初込め圧を与え、ブレーキシューを限りなくブレーキディスクに接近された状態にしておく。また、電動機制御手段に対しては、電動機のトルクが零となるように制御する。
【0012】
さらに、零推力指令が出力された場合には、VVVFインバータのフィルタコンデンサを充電させて電圧を確立させておく。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、零推力指令を使用して、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておくことにより、引張力列車に作用する推力指令からの応答遅れを改善し、列車の高密度化、停止精度、乗り心地、走行時間の改善、省エネルギー化などを促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《第1実施形態》
図1は本発明による列車制御システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【0015】
この図に示す列車制御システム1aは、列車の駆動制御装置を示したものであり、特にブレーキ動作が係わる場合の構成を示している。本実施形態では、2つの駆動/制動手段でブレーキ力を発生する。一つは主電動機2とVVVFインバータ(variable voltage variable frequency inverter:可変電圧・可変周波数型インバータ)3から成るもので、もう一つは空制ブレーキ装置4である。空制ブレーキ装置4は、BC圧が供給されたとき、レール10と接触している車輪9にブレーキパッドを押しつけて、車輪9の回転速度を低減させ、列車にブレーキをかける。
【0016】
主電動機2の発生トルクは電制力と呼ばれ、VVVFインバータ3による電流で決まる。このトルクないし電流を制御する電動機制御器は、同図中のVVVFインバータ3に含めて記載していると考えている。
【0017】
また、本実施形態において、ブレーキ制御器5は、2つの役割を担っている。一つは自動列車運転装置6から出力され、車内伝送装置7を介して供給される推力指令“FC_BCU1”に応じて、主電動機2によるブレーキ力と空制ブレーキ装置4によるブレーキ力との総和が“FC_BCU1”に一致するように、それぞれのブレーキ指令の配分を決定することである。もう一方は、そのように割り当てられた空制ブレーキ力指令に一致したブレーキ力が空制ブレーキ装置4にて発生するように、空制ブレーキ装置4への空気圧を制御するものである。
【0018】
ブレーキ制御器5によるブレーキ力の配分は、次のようになされている。VVVFインバータ3は、空転滑走や回生失効を回避しながら主電動機2を制御するため、ブレーキ指令“FC_BCU1”に一致したブレーキ力を出力できるかは分からない。このため、実際に作用するブレーキ力を“FB_VVVF1”としてブレーキ制御器5に出力する。
【0019】
ブレーキ制御器5では、自動列車運転装置6から指示されたブレーキ指令“FC_BCU1”に、実際のブレーキ力が一致するように、VVVFインバータ3から返ってきた実効ブレーキ力“FB_VVVF1”との不足分が、空制ブレーキ装置4によって発生するブレーキ力と一致するように、空制ブレーキ装置4へのBC圧を制御する。
【0020】
また、図1は、ブレーキ中の信号の機器構成や流れを示したものであるが、力行中の場合を図2に示す。この場合、VVVFインバータ(あるいは、そこに含まれる電動機制御手段)3への推力指令“FC_VVVF1”は、自動列車運転装置6から直接、与えられる。
【0021】
ここで、減速するブレーキ力、加速する引張力を合わせたものを推力とすると、本実施形態では、自動列車運転装置6の推力指令として、いつでも駆動できるように待機させる零推力指令を可能とするものである。
【0022】
ずなわち、従来では、力行加速する際の引張力指令にも、ブレーキ減速する際のブレーキ力指令にも、推力が零となる指令はない。従来の構成範囲において、零推力を与えたい場合には、力行指令もブレーキ指令もオフとして、駆動/制動装置を動作停止した状態となる。すなわち、列車の惰行状態であり、空制ブレーキ装置は緩解し、VVVFインバータは動作停止(ゲート停止)した状態である。空制ブレーキ装置の緩解状態では、ブレーキパッドが車輪踏面やブレーキディスクと離れており、非零なブレーキ指令を受けてからのブレーキ力を作用するまでに時間(数100ms〜1s程度)を要する。
【0023】
そこで、図3(a)に示すように、自動列車制御装置6から出力される力行ノッチ指令またはブレーキノッチ指令に零推力指令(N0)を新たに加える。また、図3(b),(c)に示すように、力行ノッチ指令またはブレーキノッチ指令を受けてトルク指令に変換する変換テーブルには、それぞれ零推力パターンPN0,BN0 を新たに加える。力行トルクにおける零推力パターンPN0 とブレーキトルクにおける零推力パターンPN0,BN0 を図4(a),(b)に模式的に示す。
【0024】
具体的には、本実施形態では、図1のブレーキ制御器5が零推力指令を受けた場合、ブレーキパッドが車輪踏面やブレーキディスク面に僅かながら接触し、実トルクが生じない程度の空気圧(初込め圧)を与えるように設定すればよい。図5には、ブレーキトルクに対するBC圧が模式的に図示されている。図5に示すように、ブレーキトルク指令B1〜B7が直線的に変化すると仮定し、緩解のときのBC圧を“零”とすると、初込め圧は図5のように示すことができる。このように、初込め圧を与えることにより、ブレーキ指令“FC_BCU1”が非零な値を指示したとき、時間遅れなくブレーキ力を発生させることが可能となる。
【0025】
また、VVVFインバータ3および主電動機2が、完全に動作を停止した状態からブレーキ力や引張力を発生させるためには、次のような手順にて、それぞれ時間を要する。
【0026】
(1)指令を認識する時間(誤動作を回避するため、オンディレイなどがある)
(2)VVVFインバータ3の入力側に存在するフィルタコンデンサを充電し、その電圧が確立する要する時間(時定数によって決まり、数100msを要する)
(3)主電動機2をVVVFインバータ3にて励磁して主磁束が確立するに要する時間
よって、VVVFインバータ3が零推力指令を受けた場合、上記の(3)までを実施した上で、主電動機2のトルクが零となるような電流を流せばよい。主電動機2が誘導電動機である場合、トルク電流を零とすればよい。主電動機2が永久磁石同期電動機である場合、リラクタンストルクの発生を考慮しながら、励磁電流とトルク電流を決定すればよい。
【0027】
また、低速域では、“励磁電流=トルク電流=0”でよい。高速域では、弱め界磁のため、励磁電流は必ず零以外となる。突極比があると、この非零な励磁電流にてトルクが発生するが、このトルクが零になるようにトルク電流を決定すればよい。
【0028】
この状態で、零以外の推力指令を受ければ、即座に所定のブレーキ力や引張力を発生させることができる。
【0029】
〈第1実施形態の効果〉
以上のように、零推力指令を与えることで、実際のブレーキ力ないし引張力などの推力が生じる遅れ時間を短縮することが可能である。自動列車運転装置(ATO)6などが列車を制御している際、その後に、減速や加速を開始することが予想される場合、事前に零推力指令を与えることで、車両走行には影響を与えず、その先に来る加減速を指令通りに遅れなく、遂行できる。推力指令値(あるいは、ノッチ)がハンチングするなど、停止精度や乗り心地が劣化を抑えることができる。また、推力の応答遅れが低減されるため、きめ細かな制御が可能となり、速度制限より若干低い速度を追従するように走行することが可能となる。
【0030】
この結果、走行時間の短縮、ひいては、運転本数の増大の効果が得られる。更に、列車が過走を抑止し、安全性を確保している自動列車制御装置(ATC)に関して言えば、ブレーキの立ち上がりの無駄時間が低減できることから空走距離が低減できる。結果的に、安全性を確保した上で、列車の間隔を狭めて、運転本数を増大するなど、輸送能力を増強することができるという効果が得られる。
【0031】
〈誘導電動機(IM)の場合〉
また、主電動機2として、誘導電動機や永久磁石同期電動機を適用すると、それぞれの特徴がある。
【0032】
まず、誘導電動機では、前述のように、VVVFインバータ3が動作停止した状態では、磁束が零となっており、推力指令が入ると同時に磁束を立ち上げ、これが確立するのを待って、実トルクを発生させるトルク電流を流しており、トルク応答が遅れる。磁束の応答時定数は電動機の低損失化とともに長くなり、“400〜500ms”程度のものもある。磁束の立ち上げを待つ時間も、この時定数程度である。
【0033】
以上のように、誘導電動機では、元来、磁束の立ち上がり遅れがあるため、本発明の零推力指令により、顕著のその効果を得ることが可能である。
【0034】
〈永久磁石式同期電動機(PM)の場合〉
また、永久磁石同期電動機を主電動機2とする場合、誘導電動機とは異なり、磁束は常時確立された状態であるため、前述の磁束の立ち上げに要する遅れ時間は、存在しない。この点で、推力の応答遅れが小さいことが望ましい列車制御システム1aにおいて、好適な電動機である。
【0035】
VVVFインバータ3および(その一機能としての)電動機制御器が、推力指令(非零であっても、零であっても同じであり、VVVFインバータ3の動作停止ではなく、動作開始の指令ということ)を受けたときの様子を、主電動機2を誘導電動機、永久磁石同期電動機とする場合の双方を図6に示す。
【0036】
図6の(a)は誘導電動機を主電動機2とする場合で、VVVFインバータ3が運転停止から所定のブレーキ力ないし引張力を与えられた場合の動作である。始動指令からそれを受け付けるまでには、誤動作の防止などを目的に、オンディレイなどがあり、遅れている。始動受付とともに、VVVFインバータ3は、主電動機2に電圧を印加することで電流を流す。
【0037】
このとき、まず、誘導電動機の磁束が立ち上がるように、励磁電流が流れるようにしている。その後、磁束が立ち上がったことをもって、トルクが出力されるように、トルク電流を流すように制御されている。
【0038】
一方、図6の(b)では、主電動機2を永久磁石同期電動機とした場合のものである。誘導電動機の場合と異なり、磁束は常時確立されており、始動受付し、モータに電圧印加した時点からトルクを立ち上げることができる。
【0039】
なお、列車制御システム1aで使用される駆動/制動装置の主電動機2として、従来からある誘導電動機ではなく、永久磁石電動機を適用することで、零推力指令が与えられなくとも、推力の応答遅れ時間を低減できる効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
《第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と比べ、ブレーキ制御器5の周辺が異なるため、他を省略して説明する。本実施形態では、図1のブレーキ制御器5はなく、代わりに空制ブレーキ制御器8がある。
【0041】
この図に示す列車制御システム1bの自動列車運転装置6は、VVVFインバータ3に直接、伝送手段である車内伝送装置7を介して、電制ブレーキ指令“FC_VVF1”を送る。また、同様に、空制ブレーキ制御器8に空制ブレーキ指令“FC_BCU1”を送る。
【0042】
この場合、列車トータルのブレーキ力が所定値になるように、電制ブレーキ力と空制ブレーキ力を調整することは、自動列車運転装置6にて実施する。すなわち、列車としてのトータルのブレーキ力指令“FCJOTAL”(図示していない)に“FB_VVVF1”と“FB_BCU1”の加算値が一致するように、“FC_VVVF1”および“FC_BCU1”を調整する。基本的には、エネルギー効率に優れ、機械的な磨耗や騒音の少ない電制ブレーキが得られるように、“FC_VVVF1”を大きく設定するが、前述のように、空転滑走や軽負荷回生などにより、所定の電制ブレーキ力“FB_VVVF1”が得られない場合のその不足分を“FC_BCU1”で負担するようにする。
【0043】
〈第2実施形態の効果〉
これにより、第2実施形態では、零トルク指令を“FC_VVVF1”と“FC_BCU1”に与えることで、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。更に、それぞれを独立して与えることが可能である。これにより、いずれか一方を零推力指令として突発的なブレーキ力の要求に応答できるように待機させることが可能である。零推力指令状態は、ブレーキ力の発生遅れを改善する点では、第1実施形態の効果のように有効である。一方で、VVVFインバータ3が動作することで、損失や騒音が生じること、また空制ブレーキ装置4が零推力で待機状態とするため、少なからず、機械的な磨耗が生じるなど、デメリットもある。よって、これら二つのブレーキを同時に零トルクでの待機状態とすることなく、一方のみを待機状態とすることで、上記のデメリットを改善(騒音低減、エネルギー損失低減、機械磨耗低減)するとともに、第1実施形態の効果を維持できる。
【0044】
《第3実施形態》
図8は、本発明の第3実施形態を示す。図7の第2実施形態と比べ、VVVFインバータと主電動機からなる駆動装置が3セットになった場合を示している。
【0045】
この図に示す列車制御システム1cの自動列車運転装置6からは、空制ブレーキ制御器8へのブレーキ指令“FC_BCUx”(ここでの“x”は“1”のみ)と、各VVVFインバータ3、11、13への推力指令“FC_VVVFx”(ここでの“x”は、“1”から“3”、推力指令とはブレーキ力指令と引張力指令とを合わせたもの)を出力する。
【0046】
すなわち、“FC_VVF1”はVVVFインバータ3への推力指令、“FC_VVVF2”はVVVFインバータ11への推力指令、“FC_VVF3”はVVVFインバータ13への推力指令である。また、自動列車運転装置6は、実際の各機器が生じているブレーキ力として、空制ブレーキ制御器8から“FB_BCU1”を、各VVVFインバータ3、11、13から“FB_VVVFx”を、車内伝送装置7を介して受け取ることができる。
【0047】
そして、第3実施形態では、自動列車運転装置6から、VVVFインバータ3へのブレーキ指令“FC_VVVF1”として、非零の所定のブレーキ力を与えている。また、空制ブレーキ制御器8へのブレーキ指令“FC_BCU1”およびVVVFインバータ11へのブレーキ指令“FC_VVF2”には、零推力指令を与える。更に、VVVFインバータ13へのブレーキ指令“FC_VVF3”には、運転停止指令を与えている。
【0048】
〈第3実施形態の効果1〉
このように、列車全体として、比較的小さいブレーキ力を必要とする場合、ブレーキ力を与えるVVVFインバータ3や空制ブレーキ装置4に限定することができる。他のVVVFインバータ11や空制ブレーキ装置4には、必要に応じて、零推力指令を与えて突発的なブレーキ力や引張力への要求に対して待機状態とさせればよい。必要に応じてとは、現在出力するブレーキ力から、次に必要となるであろうブレーキ力や引張力の範囲を考えればよい。
【0049】
更に、その他のVVVFインバータ13や空制ブレーキ装置4には、運転停止状態としておく。
【0050】
前述のように、VVVFインバータ3、11、13は零推力指令状態においても、エネルギーを消費し、またスイッチング素子のスイッチングに起因した騒音が発生する。また、空制ブレーキ装置4も、零推力指令状態では、少なからず、機械磨耗なり消耗する。よって、全くブレーキ力が不要なVVVFインバータ13や空制ブレーキ装置4は、完全に運転停止状態として、エネルギー消費や機械磨耗を抑制する。
【0051】
以上のように、不測のブレーキ力要求に答えるように、零推力指令として待機させるとともに、列車全体として、エネルギー損失や機械磨耗を抑えた効果を得ることができる。
【0052】
〈第3実施形態の効果2〉
また、第3実施形態の全てにわたり、ブレーキ力と記述しているが、引張力とブレーキ力とを合わせた推力として考えても、同様の作用効果である。例えば、図8においては、VVVFインバータ3が力行引張力指令を“FC_VVVF1”に与えられている場合、零推力指令を与えられている空制ブレーキ制御器8に“FC_BCU1”を与え、VVVFインバータ11に“FC_VVVF2”を与えてもよい。この場合、力行加速中ではあるが、更に加速したいという要求、また、急に減速したいという要求の、いずれにも対応できるように零推力指令にて待機していると言える。
【0053】
《第4実施形態》
図9には、本発明の第4実施形態を示す。図8に示す第3実施形態と同様の構成だが、信号が異なるため、差異を説明する。
【0054】
この図に示す列車制御システム1dでは、空制ブレーキ制御器8、VVVFインバータ3、11、13は、車内伝送装置7を介して、自動列車運転装置6へ、それぞれの機器の保護信号“PROT_BCU1”、“PROT_VVVF1”、“PROT_VVVF2”、“PROT_VVVF3”を送る。自動列車運転装置6では、保護信号“PROT”に応じて、図10のフローチャートの処理を実施する。
【0055】
まず、それぞれの装置において、保護信号“PROT”が立っているかを確認する(ステップS1)。保護の種類には、その機器が再起動可能な軽故障と、再起動が不可能な重故障とがある。軽故障の場合(ステップS2)、零推力指令を与え、前記機器を再起動させるとともに(ステップS3)、再度、動作停止させる(ステップS4)。但し、必ずしも動作停止させる必要はないことは言うまでもない。
【0056】
以上の構成により、次の作用効果を得る。
【0057】
各機器は、重故障にしろ、軽故障にしろ、一旦保護となると、通常状態とは異なる状態と成っていることがある。図11は一般的なVVVFインバータ、例えばVVVFインバータ3による一例である。主電動機2として誘導電動機を備えた場合である。図11の(a)、(b)は各々、VVVFインバータ3の主回路入力側に接続されたフィルタコンデンサが充電状態であるか、放電状態であるかの差異であり、通常状態ではフィルタコンデンサが充電された状態である。
【0058】
VVVFインバータ3を初めて始動時には、フィルタコンデンサは放電状態であり、図11の(a)である。一旦動作後に、長い時間を経たときにも、自然放電によって、図11の(a)となる。通常に運転する中で、VVVFインバータ3が動作したり、停止したりするときは、図11の(b)であると考えてよい。
【0059】
フィルタコンデンサが放電した状態からVVVFインバータ3を始動する場合、フィルタコンデンサ電圧が充電するまで間、VVVFインバータ3は主電動機2の電圧印加を待っている。すなわち、フィルタコンデンサが放電した状態からの始動では、より長い時間を要する。
【0060】
ここで、機器が軽故障、ないし、重故障を起こした場合、安全性を確保するため、フィルタコンデンサ電圧を放電することが通例である。よって、次に始動する場合など、放電状態からの始動となり、推力が生じるまでに、通常より一層の時間を要する。
【0061】
〈第4実施形態の効果1〉
このように、第4実施形態では、図10のフローチャートに示す如く、保護状態となり、かつ機器が再起動可能な状態であるならば、一旦、零推力指令を与えることで、フィルタコンデンサを充電し、次の推力指令に速やかに応答できる状態としておく。このとき、零推力指令を与え続けるか、否かは、そのときの状況に応じて判断すればよい。
【0062】
〈第4実施形態の効果2〉
また、保護信号に基づくと、各VVVFインバータ3、11、13の初期起動や、長時間の動作停止によりフィルタコンデンサ電圧が放電した場合には、対処できない。よって、保護信号ではなく、フィルタコンデンサ電圧の情報を、自動列車運転装置6が受け取り、例えば、所定値よりフィルタコンデンサ電圧が低ければ、零推力指令を与えるなどの構成にすれば、より一層の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による列車制御システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示す列車制御システムにおける力行指令を実行するときのブロック図である。
【図3】自動列車運転装置から出力される力行ノッチまたはブレーキノッチに含まれる零推力指令と、トルク指令として出力される零推力パターンとを示す説明図である。
【図4】トルク指令における零推力パターンの説明図である。
【図5】ブレーキトルクに対するBC圧特性上における初込め圧を示す説明図である。
【図6】図1に示すVVVFインバータの動作開始時の動作例(誘導電動機と永久磁石同期電動機)を示す波形図である。
【図7】本発明による列車制御システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明による列車制御システムの第3実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明による列車制御システムの第4実施形態を示すブロック図である。
【図10】図9に示す列車制御システムの保護検知後の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図9に示すVVVFインバータの動作開始時の動作例(フィルタコンデンサの充電の有無)を示す波形図である。
【符号の説明】
【0064】
1a〜1d…列車制御システム
2…主電動機(駆動/制動手段、電動機)
3…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
4…空制ブレーキ装置(駆動/制動手段、空制ブレーキ手段)
5…ブレーキ制御器(駆動/制動手段、空制ブレーキ制御手段)
6…自動列車運転装置(列車自動制御手段)
7…車内伝送装置
8…空制ブレーキ制御器(駆動/制動手段、空制ブレーキ制御手段)
9…車輪
10…レール
11…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
12…主電動機(駆動/制動手段、電動機)
13…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
14…主電動機(駆動/制動手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令を出力し、列車を自動制御する列車制御システムに係わり、特に推力指令に対する応答遅れを改善させるようにした列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電車や新幹線などの列車は、自動列車制御装置(ATC)や自動列車運転装置(ATO)によって、自動的に力行制御ないしブレーキ制御が実行されており、衝突を回避した安全性や駅への停止精度の確保や定時走行を達成している。
【0003】
これらの装置の出力は、力行加速力(引張力)や減速ブレーキ力への指令値である。力行加速する場合には、VVVFインバータと主電動機から成る駆動装置が生み出す力行トルク、また、ブレーキ減速する場合には、駆動装置による電制ブレーキ力と、空制ブレーキなどの空制ブレーキ力を合わせた力で減速する。
【特許文献1】特開2004−297912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置への推力指令値(ここでは、「推力」とは、力行加速力とブレーキ減速力をあわせて呼ぶものと定義する)に対し、駆動装置や空制ブレーキ装置などの駆動/制動装置が、指令値に相応する力を生じるまでに、様々な遅れ要素がある。この遅れ時間により、次のような障害を引き起こしている。
【0005】
自動列車制御装置(ATC)では、先行する列車との安全距離を確保するようにブレーキが作用するが、この場合、ブレーキ指令を入れてから実際のブレーキ力が作用するまでの遅れ時間を考慮して空走距離を算定し、その分、事前にブレーキ力を作用させる。列車制御の大きな目的は、安全性を確保した上で、列車の間隔を狭めて、輸送能力を増大することであるが、空走距離が大きいと、列車の間隔がつめられない。
【0006】
また、自動列車運転装置(ATO)では、駅間走行を自動で行い、着駅の所定位置に自動停止させる装置である。推力指令値を入れてから、実推力が作用するまでに遅れが大きい場合、木目細やかな制御ができず、推力指令値(あるいは、それに相応するノッチ)がハンチングするなどして、停止精度や乗り心地が劣化することがある。特に、推力の応答遅れがシステムの状態によって変化する場合には、顕著な問題となる。場合によっては、速度制限をオーバーして、自動列車制御装置(ATC)が作用し、乗り心地や走行時間が極端に劣化することもある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑み、請求項1では、零推力指令を使用して、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておくことにより、引張力列車に作用する推力指令からの応答遅れを改善し、列車の高密度化、停止精度、乗り心地、走行時間の改善、省エネルギー化などを促進するのに好適な列車制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令もしくは零推力指令を出力し、列車を自動制御する列車自動制御手段と、前記推力指令に応じた引張力または零推力指令もしくは出力ブレーキ力を列車に発生させる駆動/制動手段とを備え、前記駆動/制動手段は、前記零推力指令を受けたとき、零推力を生成して列車の駆動/制動を実行することを特徴としている。
【0009】
本発明では、前記駆動/制動手段は、ブレーキ力を発生する空制ブレーキ手段と、前記空制ブレーキ手段を制御する空制ブレーキ制御手段とを有し、この空制ブレーキ制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、初込め圧を前記空制ブレーキ手段に与える。
【0010】
また、本発明では、前記駆動/制動手段は、駆動力/制動力を発生する電動機と、前記電動機を制御するVVVFインバータを含む電動機制御手段を有し、この電動機制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、前記電動機のトルクが零となるように制御する。
【0011】
ここで、“零推力指令”とは、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておく指令をいう。上述したように、零推力指令が出力された場合には、空制ブレーキ手段に対しては、初込め圧を与え、ブレーキシューを限りなくブレーキディスクに接近された状態にしておく。また、電動機制御手段に対しては、電動機のトルクが零となるように制御する。
【0012】
さらに、零推力指令が出力された場合には、VVVFインバータのフィルタコンデンサを充電させて電圧を確立させておく。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、零推力指令を使用して、空制ブレーキ装置、電動機などをいつでも動作可能な待機状態にさせておくことにより、引張力列車に作用する推力指令からの応答遅れを改善し、列車の高密度化、停止精度、乗り心地、走行時間の改善、省エネルギー化などを促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
《第1実施形態》
図1は本発明による列車制御システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【0015】
この図に示す列車制御システム1aは、列車の駆動制御装置を示したものであり、特にブレーキ動作が係わる場合の構成を示している。本実施形態では、2つの駆動/制動手段でブレーキ力を発生する。一つは主電動機2とVVVFインバータ(variable voltage variable frequency inverter:可変電圧・可変周波数型インバータ)3から成るもので、もう一つは空制ブレーキ装置4である。空制ブレーキ装置4は、BC圧が供給されたとき、レール10と接触している車輪9にブレーキパッドを押しつけて、車輪9の回転速度を低減させ、列車にブレーキをかける。
【0016】
主電動機2の発生トルクは電制力と呼ばれ、VVVFインバータ3による電流で決まる。このトルクないし電流を制御する電動機制御器は、同図中のVVVFインバータ3に含めて記載していると考えている。
【0017】
また、本実施形態において、ブレーキ制御器5は、2つの役割を担っている。一つは自動列車運転装置6から出力され、車内伝送装置7を介して供給される推力指令“FC_BCU1”に応じて、主電動機2によるブレーキ力と空制ブレーキ装置4によるブレーキ力との総和が“FC_BCU1”に一致するように、それぞれのブレーキ指令の配分を決定することである。もう一方は、そのように割り当てられた空制ブレーキ力指令に一致したブレーキ力が空制ブレーキ装置4にて発生するように、空制ブレーキ装置4への空気圧を制御するものである。
【0018】
ブレーキ制御器5によるブレーキ力の配分は、次のようになされている。VVVFインバータ3は、空転滑走や回生失効を回避しながら主電動機2を制御するため、ブレーキ指令“FC_BCU1”に一致したブレーキ力を出力できるかは分からない。このため、実際に作用するブレーキ力を“FB_VVVF1”としてブレーキ制御器5に出力する。
【0019】
ブレーキ制御器5では、自動列車運転装置6から指示されたブレーキ指令“FC_BCU1”に、実際のブレーキ力が一致するように、VVVFインバータ3から返ってきた実効ブレーキ力“FB_VVVF1”との不足分が、空制ブレーキ装置4によって発生するブレーキ力と一致するように、空制ブレーキ装置4へのBC圧を制御する。
【0020】
また、図1は、ブレーキ中の信号の機器構成や流れを示したものであるが、力行中の場合を図2に示す。この場合、VVVFインバータ(あるいは、そこに含まれる電動機制御手段)3への推力指令“FC_VVVF1”は、自動列車運転装置6から直接、与えられる。
【0021】
ここで、減速するブレーキ力、加速する引張力を合わせたものを推力とすると、本実施形態では、自動列車運転装置6の推力指令として、いつでも駆動できるように待機させる零推力指令を可能とするものである。
【0022】
ずなわち、従来では、力行加速する際の引張力指令にも、ブレーキ減速する際のブレーキ力指令にも、推力が零となる指令はない。従来の構成範囲において、零推力を与えたい場合には、力行指令もブレーキ指令もオフとして、駆動/制動装置を動作停止した状態となる。すなわち、列車の惰行状態であり、空制ブレーキ装置は緩解し、VVVFインバータは動作停止(ゲート停止)した状態である。空制ブレーキ装置の緩解状態では、ブレーキパッドが車輪踏面やブレーキディスクと離れており、非零なブレーキ指令を受けてからのブレーキ力を作用するまでに時間(数100ms〜1s程度)を要する。
【0023】
そこで、図3(a)に示すように、自動列車制御装置6から出力される力行ノッチ指令またはブレーキノッチ指令に零推力指令(N0)を新たに加える。また、図3(b),(c)に示すように、力行ノッチ指令またはブレーキノッチ指令を受けてトルク指令に変換する変換テーブルには、それぞれ零推力パターンPN0,BN0 を新たに加える。力行トルクにおける零推力パターンPN0 とブレーキトルクにおける零推力パターンPN0,BN0 を図4(a),(b)に模式的に示す。
【0024】
具体的には、本実施形態では、図1のブレーキ制御器5が零推力指令を受けた場合、ブレーキパッドが車輪踏面やブレーキディスク面に僅かながら接触し、実トルクが生じない程度の空気圧(初込め圧)を与えるように設定すればよい。図5には、ブレーキトルクに対するBC圧が模式的に図示されている。図5に示すように、ブレーキトルク指令B1〜B7が直線的に変化すると仮定し、緩解のときのBC圧を“零”とすると、初込め圧は図5のように示すことができる。このように、初込め圧を与えることにより、ブレーキ指令“FC_BCU1”が非零な値を指示したとき、時間遅れなくブレーキ力を発生させることが可能となる。
【0025】
また、VVVFインバータ3および主電動機2が、完全に動作を停止した状態からブレーキ力や引張力を発生させるためには、次のような手順にて、それぞれ時間を要する。
【0026】
(1)指令を認識する時間(誤動作を回避するため、オンディレイなどがある)
(2)VVVFインバータ3の入力側に存在するフィルタコンデンサを充電し、その電圧が確立する要する時間(時定数によって決まり、数100msを要する)
(3)主電動機2をVVVFインバータ3にて励磁して主磁束が確立するに要する時間
よって、VVVFインバータ3が零推力指令を受けた場合、上記の(3)までを実施した上で、主電動機2のトルクが零となるような電流を流せばよい。主電動機2が誘導電動機である場合、トルク電流を零とすればよい。主電動機2が永久磁石同期電動機である場合、リラクタンストルクの発生を考慮しながら、励磁電流とトルク電流を決定すればよい。
【0027】
また、低速域では、“励磁電流=トルク電流=0”でよい。高速域では、弱め界磁のため、励磁電流は必ず零以外となる。突極比があると、この非零な励磁電流にてトルクが発生するが、このトルクが零になるようにトルク電流を決定すればよい。
【0028】
この状態で、零以外の推力指令を受ければ、即座に所定のブレーキ力や引張力を発生させることができる。
【0029】
〈第1実施形態の効果〉
以上のように、零推力指令を与えることで、実際のブレーキ力ないし引張力などの推力が生じる遅れ時間を短縮することが可能である。自動列車運転装置(ATO)6などが列車を制御している際、その後に、減速や加速を開始することが予想される場合、事前に零推力指令を与えることで、車両走行には影響を与えず、その先に来る加減速を指令通りに遅れなく、遂行できる。推力指令値(あるいは、ノッチ)がハンチングするなど、停止精度や乗り心地が劣化を抑えることができる。また、推力の応答遅れが低減されるため、きめ細かな制御が可能となり、速度制限より若干低い速度を追従するように走行することが可能となる。
【0030】
この結果、走行時間の短縮、ひいては、運転本数の増大の効果が得られる。更に、列車が過走を抑止し、安全性を確保している自動列車制御装置(ATC)に関して言えば、ブレーキの立ち上がりの無駄時間が低減できることから空走距離が低減できる。結果的に、安全性を確保した上で、列車の間隔を狭めて、運転本数を増大するなど、輸送能力を増強することができるという効果が得られる。
【0031】
〈誘導電動機(IM)の場合〉
また、主電動機2として、誘導電動機や永久磁石同期電動機を適用すると、それぞれの特徴がある。
【0032】
まず、誘導電動機では、前述のように、VVVFインバータ3が動作停止した状態では、磁束が零となっており、推力指令が入ると同時に磁束を立ち上げ、これが確立するのを待って、実トルクを発生させるトルク電流を流しており、トルク応答が遅れる。磁束の応答時定数は電動機の低損失化とともに長くなり、“400〜500ms”程度のものもある。磁束の立ち上げを待つ時間も、この時定数程度である。
【0033】
以上のように、誘導電動機では、元来、磁束の立ち上がり遅れがあるため、本発明の零推力指令により、顕著のその効果を得ることが可能である。
【0034】
〈永久磁石式同期電動機(PM)の場合〉
また、永久磁石同期電動機を主電動機2とする場合、誘導電動機とは異なり、磁束は常時確立された状態であるため、前述の磁束の立ち上げに要する遅れ時間は、存在しない。この点で、推力の応答遅れが小さいことが望ましい列車制御システム1aにおいて、好適な電動機である。
【0035】
VVVFインバータ3および(その一機能としての)電動機制御器が、推力指令(非零であっても、零であっても同じであり、VVVFインバータ3の動作停止ではなく、動作開始の指令ということ)を受けたときの様子を、主電動機2を誘導電動機、永久磁石同期電動機とする場合の双方を図6に示す。
【0036】
図6の(a)は誘導電動機を主電動機2とする場合で、VVVFインバータ3が運転停止から所定のブレーキ力ないし引張力を与えられた場合の動作である。始動指令からそれを受け付けるまでには、誤動作の防止などを目的に、オンディレイなどがあり、遅れている。始動受付とともに、VVVFインバータ3は、主電動機2に電圧を印加することで電流を流す。
【0037】
このとき、まず、誘導電動機の磁束が立ち上がるように、励磁電流が流れるようにしている。その後、磁束が立ち上がったことをもって、トルクが出力されるように、トルク電流を流すように制御されている。
【0038】
一方、図6の(b)では、主電動機2を永久磁石同期電動機とした場合のものである。誘導電動機の場合と異なり、磁束は常時確立されており、始動受付し、モータに電圧印加した時点からトルクを立ち上げることができる。
【0039】
なお、列車制御システム1aで使用される駆動/制動装置の主電動機2として、従来からある誘導電動機ではなく、永久磁石電動機を適用することで、零推力指令が与えられなくとも、推力の応答遅れ時間を低減できる効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
《第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態を示す。第1実施形態と比べ、ブレーキ制御器5の周辺が異なるため、他を省略して説明する。本実施形態では、図1のブレーキ制御器5はなく、代わりに空制ブレーキ制御器8がある。
【0041】
この図に示す列車制御システム1bの自動列車運転装置6は、VVVFインバータ3に直接、伝送手段である車内伝送装置7を介して、電制ブレーキ指令“FC_VVF1”を送る。また、同様に、空制ブレーキ制御器8に空制ブレーキ指令“FC_BCU1”を送る。
【0042】
この場合、列車トータルのブレーキ力が所定値になるように、電制ブレーキ力と空制ブレーキ力を調整することは、自動列車運転装置6にて実施する。すなわち、列車としてのトータルのブレーキ力指令“FCJOTAL”(図示していない)に“FB_VVVF1”と“FB_BCU1”の加算値が一致するように、“FC_VVVF1”および“FC_BCU1”を調整する。基本的には、エネルギー効率に優れ、機械的な磨耗や騒音の少ない電制ブレーキが得られるように、“FC_VVVF1”を大きく設定するが、前述のように、空転滑走や軽負荷回生などにより、所定の電制ブレーキ力“FB_VVVF1”が得られない場合のその不足分を“FC_BCU1”で負担するようにする。
【0043】
〈第2実施形態の効果〉
これにより、第2実施形態では、零トルク指令を“FC_VVVF1”と“FC_BCU1”に与えることで、第1実施形態と同様な作用効果が得られる。更に、それぞれを独立して与えることが可能である。これにより、いずれか一方を零推力指令として突発的なブレーキ力の要求に応答できるように待機させることが可能である。零推力指令状態は、ブレーキ力の発生遅れを改善する点では、第1実施形態の効果のように有効である。一方で、VVVFインバータ3が動作することで、損失や騒音が生じること、また空制ブレーキ装置4が零推力で待機状態とするため、少なからず、機械的な磨耗が生じるなど、デメリットもある。よって、これら二つのブレーキを同時に零トルクでの待機状態とすることなく、一方のみを待機状態とすることで、上記のデメリットを改善(騒音低減、エネルギー損失低減、機械磨耗低減)するとともに、第1実施形態の効果を維持できる。
【0044】
《第3実施形態》
図8は、本発明の第3実施形態を示す。図7の第2実施形態と比べ、VVVFインバータと主電動機からなる駆動装置が3セットになった場合を示している。
【0045】
この図に示す列車制御システム1cの自動列車運転装置6からは、空制ブレーキ制御器8へのブレーキ指令“FC_BCUx”(ここでの“x”は“1”のみ)と、各VVVFインバータ3、11、13への推力指令“FC_VVVFx”(ここでの“x”は、“1”から“3”、推力指令とはブレーキ力指令と引張力指令とを合わせたもの)を出力する。
【0046】
すなわち、“FC_VVF1”はVVVFインバータ3への推力指令、“FC_VVVF2”はVVVFインバータ11への推力指令、“FC_VVF3”はVVVFインバータ13への推力指令である。また、自動列車運転装置6は、実際の各機器が生じているブレーキ力として、空制ブレーキ制御器8から“FB_BCU1”を、各VVVFインバータ3、11、13から“FB_VVVFx”を、車内伝送装置7を介して受け取ることができる。
【0047】
そして、第3実施形態では、自動列車運転装置6から、VVVFインバータ3へのブレーキ指令“FC_VVVF1”として、非零の所定のブレーキ力を与えている。また、空制ブレーキ制御器8へのブレーキ指令“FC_BCU1”およびVVVFインバータ11へのブレーキ指令“FC_VVF2”には、零推力指令を与える。更に、VVVFインバータ13へのブレーキ指令“FC_VVF3”には、運転停止指令を与えている。
【0048】
〈第3実施形態の効果1〉
このように、列車全体として、比較的小さいブレーキ力を必要とする場合、ブレーキ力を与えるVVVFインバータ3や空制ブレーキ装置4に限定することができる。他のVVVFインバータ11や空制ブレーキ装置4には、必要に応じて、零推力指令を与えて突発的なブレーキ力や引張力への要求に対して待機状態とさせればよい。必要に応じてとは、現在出力するブレーキ力から、次に必要となるであろうブレーキ力や引張力の範囲を考えればよい。
【0049】
更に、その他のVVVFインバータ13や空制ブレーキ装置4には、運転停止状態としておく。
【0050】
前述のように、VVVFインバータ3、11、13は零推力指令状態においても、エネルギーを消費し、またスイッチング素子のスイッチングに起因した騒音が発生する。また、空制ブレーキ装置4も、零推力指令状態では、少なからず、機械磨耗なり消耗する。よって、全くブレーキ力が不要なVVVFインバータ13や空制ブレーキ装置4は、完全に運転停止状態として、エネルギー消費や機械磨耗を抑制する。
【0051】
以上のように、不測のブレーキ力要求に答えるように、零推力指令として待機させるとともに、列車全体として、エネルギー損失や機械磨耗を抑えた効果を得ることができる。
【0052】
〈第3実施形態の効果2〉
また、第3実施形態の全てにわたり、ブレーキ力と記述しているが、引張力とブレーキ力とを合わせた推力として考えても、同様の作用効果である。例えば、図8においては、VVVFインバータ3が力行引張力指令を“FC_VVVF1”に与えられている場合、零推力指令を与えられている空制ブレーキ制御器8に“FC_BCU1”を与え、VVVFインバータ11に“FC_VVVF2”を与えてもよい。この場合、力行加速中ではあるが、更に加速したいという要求、また、急に減速したいという要求の、いずれにも対応できるように零推力指令にて待機していると言える。
【0053】
《第4実施形態》
図9には、本発明の第4実施形態を示す。図8に示す第3実施形態と同様の構成だが、信号が異なるため、差異を説明する。
【0054】
この図に示す列車制御システム1dでは、空制ブレーキ制御器8、VVVFインバータ3、11、13は、車内伝送装置7を介して、自動列車運転装置6へ、それぞれの機器の保護信号“PROT_BCU1”、“PROT_VVVF1”、“PROT_VVVF2”、“PROT_VVVF3”を送る。自動列車運転装置6では、保護信号“PROT”に応じて、図10のフローチャートの処理を実施する。
【0055】
まず、それぞれの装置において、保護信号“PROT”が立っているかを確認する(ステップS1)。保護の種類には、その機器が再起動可能な軽故障と、再起動が不可能な重故障とがある。軽故障の場合(ステップS2)、零推力指令を与え、前記機器を再起動させるとともに(ステップS3)、再度、動作停止させる(ステップS4)。但し、必ずしも動作停止させる必要はないことは言うまでもない。
【0056】
以上の構成により、次の作用効果を得る。
【0057】
各機器は、重故障にしろ、軽故障にしろ、一旦保護となると、通常状態とは異なる状態と成っていることがある。図11は一般的なVVVFインバータ、例えばVVVFインバータ3による一例である。主電動機2として誘導電動機を備えた場合である。図11の(a)、(b)は各々、VVVFインバータ3の主回路入力側に接続されたフィルタコンデンサが充電状態であるか、放電状態であるかの差異であり、通常状態ではフィルタコンデンサが充電された状態である。
【0058】
VVVFインバータ3を初めて始動時には、フィルタコンデンサは放電状態であり、図11の(a)である。一旦動作後に、長い時間を経たときにも、自然放電によって、図11の(a)となる。通常に運転する中で、VVVFインバータ3が動作したり、停止したりするときは、図11の(b)であると考えてよい。
【0059】
フィルタコンデンサが放電した状態からVVVFインバータ3を始動する場合、フィルタコンデンサ電圧が充電するまで間、VVVFインバータ3は主電動機2の電圧印加を待っている。すなわち、フィルタコンデンサが放電した状態からの始動では、より長い時間を要する。
【0060】
ここで、機器が軽故障、ないし、重故障を起こした場合、安全性を確保するため、フィルタコンデンサ電圧を放電することが通例である。よって、次に始動する場合など、放電状態からの始動となり、推力が生じるまでに、通常より一層の時間を要する。
【0061】
〈第4実施形態の効果1〉
このように、第4実施形態では、図10のフローチャートに示す如く、保護状態となり、かつ機器が再起動可能な状態であるならば、一旦、零推力指令を与えることで、フィルタコンデンサを充電し、次の推力指令に速やかに応答できる状態としておく。このとき、零推力指令を与え続けるか、否かは、そのときの状況に応じて判断すればよい。
【0062】
〈第4実施形態の効果2〉
また、保護信号に基づくと、各VVVFインバータ3、11、13の初期起動や、長時間の動作停止によりフィルタコンデンサ電圧が放電した場合には、対処できない。よって、保護信号ではなく、フィルタコンデンサ電圧の情報を、自動列車運転装置6が受け取り、例えば、所定値よりフィルタコンデンサ電圧が低ければ、零推力指令を与えるなどの構成にすれば、より一層の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による列車制御システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示す列車制御システムにおける力行指令を実行するときのブロック図である。
【図3】自動列車運転装置から出力される力行ノッチまたはブレーキノッチに含まれる零推力指令と、トルク指令として出力される零推力パターンとを示す説明図である。
【図4】トルク指令における零推力パターンの説明図である。
【図5】ブレーキトルクに対するBC圧特性上における初込め圧を示す説明図である。
【図6】図1に示すVVVFインバータの動作開始時の動作例(誘導電動機と永久磁石同期電動機)を示す波形図である。
【図7】本発明による列車制御システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明による列車制御システムの第3実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明による列車制御システムの第4実施形態を示すブロック図である。
【図10】図9に示す列車制御システムの保護検知後の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図9に示すVVVFインバータの動作開始時の動作例(フィルタコンデンサの充電の有無)を示す波形図である。
【符号の説明】
【0064】
1a〜1d…列車制御システム
2…主電動機(駆動/制動手段、電動機)
3…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
4…空制ブレーキ装置(駆動/制動手段、空制ブレーキ手段)
5…ブレーキ制御器(駆動/制動手段、空制ブレーキ制御手段)
6…自動列車運転装置(列車自動制御手段)
7…車内伝送装置
8…空制ブレーキ制御器(駆動/制動手段、空制ブレーキ制御手段)
9…車輪
10…レール
11…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
12…主電動機(駆動/制動手段、電動機)
13…VVVFインバータ(駆動/制動手段、電動機制御手段)
14…主電動機(駆動/制動手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令もしくは零推力指令を出力し、列車を自動制御する列車自動制御手段と、
前記推力指令に応じた引張力または零推力指令もしくは出力ブレーキ力を列車に発生させる駆動/制動手段とを備え、
前記駆動/制動手段は、前記零推力指令を受けたとき、零推力を生成して列車の駆動/制動を実行する、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、ブレーキ力を発生する空制ブレーキ手段と、前記空制ブレーキ手段を制御する空制ブレーキ制御手段とを有し、
この空制ブレーキ制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、初込め圧を前記空制ブレーキ手段に与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、駆動力/制動力を発生する電動機と、前記電動機を制御するVVVFインバータを含む電動機制御手段を有し、
この電動機制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、前記電動機のトルクが零となるように制御する、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の列車制御システムにおいて、
前記列車自動制御手段は、前記空制ブレーキ制御手段または前記電動機制御手段に対し、推力指令、零推力指令を個別に与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、列車に複数、搭載され、
前記列車自動制御手段は、各駆動/制動手段の1つに、現時点で必要な推力を得るために非零な推力指令を与えるとともに、各駆動/制動手段の他の1つに、必要となることが予想される推力に応じて零推力指令を与え、それ以外の駆動/制動手段に、動作停止指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の列車制御システムにおいて、
前記列車自動制御手段は、前記電動機制御手段に非零な推力指令として引張力指令を与えると同時に、前記空制ブレーキ制御手段に零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、故障情報、異常情報、装置の再起動可否情報のいずれかを含む保護信号を出力し、
前記列車自動制御手段は、前記保護信号に応じて、前記駆動/制動手段が再起動可能かどうかをチェックし、再起動可能なとき、前記駆動/制動手段に対して零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項8】
請求項3に記載の列車制御システムにおいて、
前記電動機制御手段は、装置の起動可否情報と前記VVVFインバータのフィルタコンデンサ電圧を検出する手段とを有し、
前記列車自動制御手段は、前記電動機制御手段を制御して、装置を起動させるとともに、前記VVVFインバータのフィルタコンデンサ電圧に応じて、前記電動機制御手段に零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記電動機は、永久磁石同期電動機である、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項1】
引張力指令またはブレーキ力指令を含む推力指令もしくは零推力指令を出力し、列車を自動制御する列車自動制御手段と、
前記推力指令に応じた引張力または零推力指令もしくは出力ブレーキ力を列車に発生させる駆動/制動手段とを備え、
前記駆動/制動手段は、前記零推力指令を受けたとき、零推力を生成して列車の駆動/制動を実行する、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、ブレーキ力を発生する空制ブレーキ手段と、前記空制ブレーキ手段を制御する空制ブレーキ制御手段とを有し、
この空制ブレーキ制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、初込め圧を前記空制ブレーキ手段に与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、駆動力/制動力を発生する電動機と、前記電動機を制御するVVVFインバータを含む電動機制御手段を有し、
この電動機制御手段は、前記零推力指令を受けたとき、前記電動機のトルクが零となるように制御する、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の列車制御システムにおいて、
前記列車自動制御手段は、前記空制ブレーキ制御手段または前記電動機制御手段に対し、推力指令、零推力指令を個別に与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、列車に複数、搭載され、
前記列車自動制御手段は、各駆動/制動手段の1つに、現時点で必要な推力を得るために非零な推力指令を与えるとともに、各駆動/制動手段の他の1つに、必要となることが予想される推力に応じて零推力指令を与え、それ以外の駆動/制動手段に、動作停止指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の列車制御システムにおいて、
前記列車自動制御手段は、前記電動機制御手段に非零な推力指令として引張力指令を与えると同時に、前記空制ブレーキ制御手段に零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記駆動/制動手段は、故障情報、異常情報、装置の再起動可否情報のいずれかを含む保護信号を出力し、
前記列車自動制御手段は、前記保護信号に応じて、前記駆動/制動手段が再起動可能かどうかをチェックし、再起動可能なとき、前記駆動/制動手段に対して零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項8】
請求項3に記載の列車制御システムにおいて、
前記電動機制御手段は、装置の起動可否情報と前記VVVFインバータのフィルタコンデンサ電圧を検出する手段とを有し、
前記列車自動制御手段は、前記電動機制御手段を制御して、装置を起動させるとともに、前記VVVFインバータのフィルタコンデンサ電圧に応じて、前記電動機制御手段に零推力指令を与える、
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載の列車制御システムにおいて、
前記電動機は、永久磁石同期電動機である、
ことを特徴とする列車制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−247170(P2009−247170A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92867(P2008−92867)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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