制御されたアルミニウム対SCA比を有する自己制御触媒系および方法
プロピレンの重合のための触媒組成物が提供される。触媒組成物は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を有する1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物、1種または複数のアルミニウム含有共触媒ならびに選択性制御剤(SCA)を含む。SCAは活性抑制剤とシラン組成物との混合物である。触媒組成物におけるアルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1である。このアルミニウム/SCA比は、重合の生産性およびポリマー生成速度を向上させる。触媒組成物は自消性である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、参照により本明細書にすべてを組み込む2007年8月24日出願の米国仮出願第60/957,888号の利益を主張する。
【0002】
本開示は立体選択性チーグラー・ナッタ触媒組成物およびその触媒組成物を利用する重合反応に関する。
【背景技術】
【0003】
チーグラー・ナッタプロピレン重合触媒組成物は、当技術分野において知られている。典型的には、これらの組成物は、内部電子供与体と組み合わせたチタン、マグネシウムなどの遷移金属部分およびハロゲン化物部分(プロ触媒と称する);共触媒、通常有機アルミニウム化合物;および選択性制御剤(SCA)を含む。触媒活性を改良および/またはポリマー特性を調節するために2種以上の成分の混合物であるSCAを利用することが、さらに知られている。問題なのは、1つの方法または製品のパラメーターに関して有効なSCA成分として適当なSCA混合物の選択が、他の方法または製品のパラメーターにしばしば有害であることである。
【0004】
例えば、第3世代のチーグラー・ナッタ触媒は、通常、内部供与体としてベンゾアートを含み、安息香酸エステル(エチルp−エトキシベンゾアートなど)をSCA成分として使用する。これは触媒に対して自消性の特性を与える。しかしながら、安息香酸エステルは、形成されたポリマーに望ましくない臭気を与える。この臭気は、形成されたポリマーの用途を制限するので有害である。それに加えて、第3世代チーグラー・ナッタ触媒としての触媒活性および立体選択性が低い。さらに、安息香酸系SCAが、内部供与体としてフタラートを含む第4世代の触媒とともに使用されたとき、生じたポリマーの立体選択性は実用的用途に対して低すぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業性を犠牲にせずに、触媒活性が向上しかつ生産性が向上したチーグラー・ナッタ触媒組成物を開発することが望ましい。生じるポリマーに望ましくない特性を持ち込まない触媒組成物も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、触媒活性が高く自消性(self-extinguishing)である触媒組成物を目的とする。本開示の触媒組成物は、高いアイソタクチシティを有するポリプロピレンホモポリマー、またはプロピレンと1種もしくは複数の追加のコモノマーとを含むポリマーを生成させる。
【0007】
一実施形態において、触媒組成物はプロピレンの重合のために提供される。その触媒組成物は、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒、1種または複数の共触媒、および選択性制御剤(selectivity control agent)(SCA)を含む。チーグラー・ナッタプロ触媒は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含有する。共触媒は、1種または複数のアルミニウム含有化合物である。SCAは、C4〜C30脂肪酸エステルなど活性抑制剤(ALA)とシラン組成物との混合物である。触媒組成物は、アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1である。一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、1:1から3:1または2.5:1である。
【0008】
一実施形態においては、ALAがC4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルであるとき、触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から50:1である。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.75:1から30:1または1:1から20:1にすることができる。触媒組成物は自消性である。
【0009】
一実施形態において、触媒組成物から形成されるポリマーは臭気を有さない。無臭のポリマーを生じるSCAにおける使用に適した組成物には、C30脂肪酸エステル、C8〜C30脂肪酸エステル、C8〜C30脂肪酸のC2〜C20脂肪族アルキルエステル、C4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジエステル、および2個以上のエーテル結合を含有するポリエーテル化合物が含まれる。
【0010】
一実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、およびそれらの組合せであってもよい。さらなる実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシランである。
【0011】
一実施形態において、シラン組成物は、1種または複数のアルコキシシランの混合物である。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシランとジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランとのブレンドであってもよい。他の実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシランと、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、および/またはジイソブチルジエトキシシランとのブレンドであってもよい。
【0012】
一実施形態において、SCAは、60〜97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび3〜40モルパーセントのシラン組成物を含む。それに加えて、アルミニウムのC4〜C30脂肪酸アルキルエステルに対するモル比は、5.3から0.5:1であってもよい。アルミニウムのシラン組成物に対するモル比は、120:1から1.25:1であってもよい。
【0013】
一実施形態において、触媒組成物は、イソプロピルミリスタートおよびジシクロペンチルルジメトキシシランを含有する。さらなる実施形態において、触媒組成物は、ジ−n−ブチルセバカートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含有する。
【0014】
本開示は、他の触媒組成物も提供する。触媒組成物は、プロピレンの重合のために使用することができ、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含有する1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。1種または複数のアルミニウム含有共触媒および選択性制御剤(SCA)が触媒組成物中に存在する。SCAは、非エステル組成物とシラン組成物との混合物である。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1である。
【0015】
非エステル組成物は、ジアルキルジエーテル化合物を含むポリエーテル化合物であってもよい。例えば、非エステル組成物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンまたはポリ(アルケングリコール)材料であってもよい。
【0016】
一実施形態において、SCAは活性抑制剤(activity limiting agent)も含んでいてもよい。
【0017】
本開示は他の触媒組成物も提供する。触媒組成物は、プロピレンの重合のために使用することができ、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む。1種または複数のアルミニウム含有共触媒および選択性制御剤(SCA)が触媒組成物に含まれる。SCAは、第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランであるアルコキシシラン組成物ならびにALAを含む。
【0018】
一実施形態において、第1のアルコキシシランは、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、またはビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランである。第2のアルコキシシランは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、および/またはn−プロピルトリエトキシシランである。任意の1種または複数の第1のアルコキシシランは、任意の1種または複数の第2のアルコキシシランと混合することができて、SCAを形成する。
【0019】
一実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランである。第2のアルコキシシラン化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランである。
【0020】
一実施形態において、SCAは活性抑制剤を含む。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1である。
【0021】
本開示は、重合方法を提供する。重合方法は、重合反応器中にプロピレンおよび触媒組成物を導入することを含む。触媒組成物は、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)を含有するチーグラー・ナッタプロ触媒組成物から構成される。SCAは、活性抑制剤(ALA)とシラン組成物との混合物である。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持することをさらに含む。
【0022】
一実施形態において、ALAは、C4〜C30脂肪酸アルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、アルミニウムの合計SCAに対する比は0.5:1から50:1である。
【0023】
一実施形態において、重合方法は、C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物との混合物であるSCAを、反応器中に導入することを含む。
【0024】
一実施形態において、重合方法は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0025】
一実施形態において、重合方法は、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシランおよび活性抑制剤の混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0026】
一実施形態において、重合方法は、アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持することを含む。方法は、重合反応器の温度が100℃を超えるとき、触媒組成物で重合方法を停止することを伴うことができる。
【0027】
一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約0.5重量%から約6.0重量%である。
【0028】
本開示は、他の重合方法も提供する。一実施形態において、重合方法は、プロピレンを含むガスと触媒組成物とを重合反応器中で反応させることを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)から構成される。SCAは、活性抑制剤とアルコキシシラン組成物との混合物であり、本明細書中に記載する任意のSCAであってよい。方法は、ポリマー粒子の流動床を形成させることをさらに含む。流動床は、かさ密度を有する。方法は、プロピレン分圧を低下させて反応器汚損なしに流動床のかさ密度を増大させることを含む。一実施形態において、方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を、0.5:1から4:1に維持、調節またはそうでなければ制御することを含む。触媒組成物は、流動床温度が約100℃を超えるとき、重合方法を停止させる。
【0029】
一実施形態において、方法は、流動床のかさ密度を増大させることを含む。流動かさ密度が増大すると、反応器中における触媒組成物の滞留時間が増大する。その結果、出発原料として使用されるプロピレンの量も減少することになる。換言すれば、同じ生成速度を維持するために要求されるプロピレンが少なくなる。
【0030】
一実施形態において、方法は、反応器中に流動床温度より1℃から10℃低い露点温度(dew point temperature)でガスを導入すること、および反応器中に存在する液体プロピレンの量を減少させることを含む。
【0031】
一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約6重量%未満または0.5重量%から6重量%である。プロピレン含有ポリマーは、3ppm未満、または1ppm未満の残留チタンを含有してもよい。
【0032】
本開示は、他の重合方法も提供する。重合方法は、プロピレンガス、エチレンガス、および触媒組成物を重合反応器中に導入することを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)から構成される。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物である。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させることを含む。プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーは、約4重量%を超えるエチレン含有率を有してもよい。
【0033】
一実施形態において、活性抑制剤は、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、C4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、方法は、0.5:1から50:1のアルミニウムの合計SCAに対する比を維持することを含む。
【0034】
一実施形態において、方法は、プロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む。方法は、「ポップコーン(popcorn)」すなわち不規則な形態のプロピレン−エチレンランダムコポリマー粒子の形成を排除または回避することをさらに含むことができる。
【0035】
本開示の利点は、改良された触媒組成物の提供である。
【0036】
本開示の利点は自消性触媒組成物の提供である。
【0037】
本開示の利点は、反応器汚損(reactor fouling)が減少しかつポリマー凝集(polymer agglomeration)が減少した重合方法の提供である。
【0038】
本開示の利点は、無臭(odor-free)のプロピレン含有ポリマーの生成である。
【0039】
本開示の利点は、反応器汚損のリスクなしに流動床のかさ密度を増大させる触媒組成物の提供である。
【0040】
本開示の利点は、触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対する比の制御による、生産性が向上し、生成速度が向上し、かつ作業性が良好な重合方法である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図2】図2は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図3】図3は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図4】図4は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図5】図5は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図6】図6は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図7】図7は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図8】図8は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図9】図9は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図10】図10は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書中で挙げたいかなる数の範囲も、任意の低い方の値と任意の高い方の値との間に少なくとも2単位の隔たりがあれば、1単位の増分で低い方の値および高い方の値からのすべての値を含む。例として、組成の、物理的または他の特性、例えば、分子量、メルトインデックスなどが100から1,000であると述べられていれば、100、101、102、その他など、および100から144、155から170、197から200、その他など部分範囲の、すべての個々の値が、本明細書において明示的に列挙されていることが意図されている。1未満の値を含む、または1を超えて小数を含む(例えば、1.1、1.5、その他)範囲については、1単位が適宜0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。単一の10未満の桁数を含む範囲については(例えば、1から5)、1単位は通常0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されていることの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せは、本明細書において明示的に列挙されているとみなされる。数の範囲は、本明細書において論じたように、成分の密度、重量パーセント、損失正接、分子量および他の特性に関して挙げられている。
【0043】
本明細書において使用する用語「組成物」は、組成物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む物質の混合物を含む。
【0044】
本明細書において使用する用語「ポリマー」は、同じかまたは異なる種類のモノマーを重合させることにより調製されたポリマー状化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種類だけのモノマーから調製されたポリマーを指して通常使用される用語のホモポリマー、および本明細書の後で定義する用語のインターポリマーを包含する。
【0045】
上で論じたように、本明細書において使用する用語「インターポリマー」は、少なくとも異なる2種類のモノマーの重合により調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、異なる2種類のモノマーから調製されたポリマーを指して通常使用されるコポリマー、および異なる3種類以上のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0046】
本明細書において使用する用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは混合可能(miscible)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離(phase separated)していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法により決定される1種または複数のドメイン構造を含んでいてもいなくてもよい。
【0047】
本開示の触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物(Ziegler-Natta procatalyst composition)、共触媒(cocatalyst)、および選択性制御剤(selectivity control agent)(SCA)を含有する。それらの各々は以下で詳細に論ずることとする。任意の従来のチーグラー・ナッタプロ触媒は、本触媒組成物において、当技術分野において普通知られているようにして、使用することができる。一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、遷移金属化合物および2族金属の化合物を含有する。遷移金属化合物は、遷移金属化合物、例えば、チタン−、ジルコニウム−、クロム−またはバナジウム−ヒドロカルビルオキシド、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、またはそれらの混合物から誘導される固体錯体であってもよい。
【0048】
遷移金属化合物は、一般式TrXxを有し、式中、Trは遷移金属であり、XはハロゲンまたはC1〜10ヒドロカルボキシルまたはヒドロカルビル基であり、xは、2族金属化合物と組み合わせた化合物中における上記のX基の数である。Trは4、5または6族の金属であってもよい。一実施形態において、Trはチタンなどの4族の金属である。Xは、塩化物、臭化物、C1〜4アルコキシドまたはフェノキシド、またはそれらの混合物であってもよい。一実施形態において、Xは塩化物である。
【0049】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を形成するために使用され得る、適当な遷移金属化合物の例は、TiCl4、ZrCl4、TiBr4、TiCl3、Ti(OC2H5)3Cl、Zr(OC2H5)3Cl、Ti(OC2H5)3Br、Ti(OC3H7)2Cl2、Ti(OC6H5)2Cl2、Zr(OC2H5)2Cl2、およびTi(OC2H5)Cl3であるが、これらに限定はされない。そのような遷移金属化合物の混合物も同様に使用することができる。少なくとも1つの遷移金属化合物が存在する限り、遷移金属化合物の数が制限されることはない。一実施形態において、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0050】
適当な2族金属化合物の例には、ハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウム、マグネシウムオキシハロゲン化物、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびマグネシウムのカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、2族金属化合物は二塩化マグネシウムである。
【0051】
さらなる実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、マグネシウム化合物上に支持されているか、またはそうでなければそれから誘導されたチタン部分の混合物である。適当なマグネシウム化合物には、無水塩化マグネシウム、塩化マグネシウム付加物、マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシド、またはカルボキシル化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが含まれる。一実施形態において、マグネシウム化合物は、ジエトキシマグネシウムなどのマグネシウムジ(C1〜4)アルコキシドである。
【0052】
適当なチタン部分の例には、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド、および/またはハロゲン化チタンが含まれるが、これらに限定はされない。チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を調製するために使用される化合物には、1種もしくは複数のマグネシウム−ジ(C1〜4)アルコキシド、二ハロゲン化マグネシウム、マグネシウムアルコキシハライド、またはそれらの混合物および1種もしくは複数のチタンテトラ(C1〜4)アルコキシド、四ハロゲン化チタン、チタン(C1〜4)アルコキシハライド、またはそれらの混合物が含まれる。
【0053】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を調製するためには、当技術分野において普通に知られているように、前駆体組成物を使用することができる。前駆体組成物は、上記の混合されたマグネシウム化合物、チタン化合物、またはそれらの混合物の塩素化により調製することができ、固体/固体複分解により特定の組成物を形成または可溶化する助けになる「クリップ剤(clipping agent)」と称される1種または複数の化合物の使用を含むことができる。適当なクリップ剤の例には、トリアルキルボラート、特にトリエチルボラート、フェノール性化合物、特にクレゾール、およびシラン類が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0054】
一実施形態において、前駆体組成物は、混合された、式MgdTi(ORe)fXgのマグネシウム/チタン化合物であって、式中、Reは1から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基またはCOR’であり(R’は1から14個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基である);各OR3基は同一であるかまたは異なり;Xは独立に塩素、臭素またはヨウ素であり;dは0.5から56、または2〜4;または3であり;fは2〜116、または5〜15であり;gは0.5〜116、または1〜3、または2である。前駆体は、その調製において使用された反応混合物からアルコールを除去することによる制御された沈殿により調製することができる。一実施形態において、反応媒体は、芳香族の液体、特にクロロベンゼンなど塩素化芳香族化合物と、アルカノール、特にエタノール、および無機塩素化剤との混合物を含む。適当な無機塩素化剤には、ケイ素、アルミニウムおよびチタンの塩素誘導体、例えば、四塩化チタンまたは三塩化チタンなど、および特に四塩化チタンが挙げられる。塩素化剤は、比較的高レベルのアルコキシ成分(単数または複数)を含有する前駆体を生じる部分塩素化をもたらす。塩素化で使用された溶液からアルカノールを除去すると、望ましい形態および表面積を有する固体前駆体の沈殿が生じる。前駆体は、反応媒体から分離された。その上、生じた前駆体は、特に均一な粒子サイズになり、しかも粒子崩壊ならびに生じたプロ触媒の分解が起こりにくい。一実施形態において、前駆体組成物はMg3Ti(OEt)8Cl2である。
【0055】
次に、前駆体は、無機ハロゲン化物化合物、好ましくはハロゲン化チタン化合物とのさらなる反応(ハロゲン化)および内部電子供与体の組込みにより、固体のプロ触媒に変換される。電子供与体が前駆体中に十分な量で既に組み込まれていなかった場合には、電子供与体は、ハロゲン化の前、最中または後で別に添加することもできる。この手順は、場合により追加の添加剤または助剤の存在下に1回または複数回繰り返すことができ、最終固体生成物は脂肪族の溶媒で洗浄される。固体プロ触媒を作製、回収および貯蔵するどのような方法も、本開示における使用に適する。
【0056】
前駆体をハロゲン化するための1つの適当な方法は、前駆体を4価のハロゲン化チタンと、温度を上げて、場合により炭化水素またはハロ炭化水素希釈剤の存在下に反応させることによる。好ましい4価のハロゲン化チタンは四塩化チタンである。オレフィン重合プロ触媒の製造に場合により利用される炭化水素またはハロ炭化水素溶媒は、好ましくは12個まで(12を含む)の炭素原子または9個まで(9を含む)の炭素原子を含有する。典型的炭化水素には、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、およびデカヒドロナフタレンが含まれる。典型的脂肪族ハロ炭化水素には、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタンおよびテトラクロロオクタンが含まれる。典型的芳香族ハロ炭化水素には、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエンが含まれる。脂肪族ハロ炭化水素は、四塩化炭素または1,1,2−トリクロロエタンなどの少なくとも2個の塩素置換基を含有する化合物であってもよい。芳香族ハロ炭化水素は、クロロベンゼンまたはo−クロロトルエンであってもよい。
【0057】
ハロゲン化は、1回または複数回繰り返してもよく、ハロゲン化とそれに続くハロゲン化との間で、脂肪族もしくは芳香族炭化水素またはハロ炭化水素などの不活性液体で洗浄することを、場合により伴ってもよい。不安定な種、特にTiCl4を除去するために、不活性な液体の希釈剤、特に脂肪族もしくは芳香族炭化水素、または脂肪族もしくは芳香族ハロ炭化水素と、特に100℃を超える、または110℃を超える高温で接触させることを含む1回もしくは複数回の抽出を、場合によりさらに利用することができる。
【0058】
一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、(i)ジアルコキシマグネシウムを常温で液体の芳香族炭化水素またはハロ炭化水素中に懸濁させ、(ii)ジアルコキシマグネシウムをハロゲン化チタンと接触させ、さらに(iii)生じた組成物をハロゲン化チタンと2度目の接触をさせ、ジアルコキシマグネシウムを芳香族ジカルボン酸のジエステルと、(ii)におけるハロゲン化チタンによる処理中のある時点で接触させることにより得られた固体触媒成分を含む。
【0059】
一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、(i)式MgdTi(ORe)fXg(前に記載したもの)の前駆体材料を、常温で液体の芳香族炭化水素またはハロ炭化水素中に懸濁させ、(ii)前駆体をハロゲン化チタンと接触させ、さらに(iii)生じた組成物をハロゲン化チタンと2度目の接触をさせ、前駆体を芳香族ジカルボン酸のジエステルと、(ii)におけるハロゲン化チタンによる処理中のある時点で接触させることにより得られた固体触媒成分を含む。
【0060】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、内部電子供与体を含む。内部電子供与体は、タクチシティ制御(tacticity control)および触媒クリスタリットのサイズ調節(catalyst crystallite sizing)を提供する。適当な内部電子供与体の例には、芳香族ジカルボン酸エステル、ハロゲン化物もしくは無水物またはそれらの(ポリ)アルキルエーテル誘導体、特にフタル酸またはテレフタル酸のC1〜4ジアルキルエステル、フタロイルジクロリド、フタル酸無水物、およびそれらのC1〜4(ポリ)アルキルエーテル誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、内部電子供与体は、ジイソブチルフタラートまたはジ−n−ブチルフタラートである。
【0061】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、不活性支持体材料(inert support material)も含むことができる。支持体は、遷移金属化合物の触媒性能に悪影響のない不活性固体であってよい。例には、アルミナなどの金属酸化物、およびシリカなどの半金属酸化物が挙げられる。
【0062】
上記のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物とともに使用する共触媒は、アルミニウム含有組成物である。適当なアルミニウム含有組成物の例には、各アルキルまたはアルコキシド基中に1〜10個、または1〜6個の炭素原子を含有する、トリアルキルアルミニウム、水素化ジアルキルアルミニウム、二水素化アルキルアルミニウム、ハロゲン化ジアルキルアルミニウム、ジハロゲン化アルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、およびアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物などの有機アルミニウム化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、共触媒は、トリエチルアルミニウム(TEA)などのC1〜4トリアルキルアルミニウム化合物である。アルミニウムのチタンに対するモル比は、35:1から50:1である。一実施形態において、アルミニウムのチタンに対するモル比は45:1である。
【0063】
触媒組成物は選択性制御剤(SCA)を含む。SCAは、(i)1種もしくは複数の活性抑制剤(ALA)および/または(ii)1種もしくは複数のシラン組成物の混合物である。一実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルは、C4〜C30脂肪酸エステルであってもよく、モノまたはポリ(2以上)エステルであってもよく、直鎖であっても分岐であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。C4〜C30脂肪酸エステルは、1個または複数の14、15または16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されていてもよい。適当なC4〜C30脂肪酸エステルの例には、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステルおよびC2〜100(ポリ)グリコールのC4〜20アルキルモノまたはポリカルボキシラート誘導体またはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジアセタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジラウラート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、およびそれらの混合物であってもよい。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートである。
【0064】
一実施形態において、ALAは非エステル組成物である。本明細書において使用する「非エステル組成物」は、エステル官能基を有さない原子、分子、または化合物(atom, molecule, or compound that is free of ester functional group)である。換言すれば、「非エステル組成物」は、以下の官能基を含有さない。
【0065】
【化1】
【0066】
一実施形態において、非エステル組成物は、ジアルキルジエーテル化合物またはアミン化合物であってもよい。ジアルキルジエーテル化合物は、以下の式
【0067】
【化2】
により表される。
【0068】
(式中、R1からR4は、互いに独立に、14、15、16、または17族のヘテロ原子を場合により含有してよい、20個までの炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアラルキル基である。ただし、R1およびR2は、水素原子であってもよい。適当なジアルキルエーテル化合物の例には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、ジアルキルエーテル化合物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0069】
一実施形態において、非エステル組成物はアミン化合物である。適当なアミン化合物の例には、2,6−ジメチルピペリジンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジンおよび2,5−置換ピペリジンが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、ピペリジン化合物は2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0070】
2個以上のカルボキシラート基を含有するALAに対して、すべてのカルボキシラート基は有効成分とみなされる。例えば、セバカート分子は、2個のカルボキシラート官能基を含有し、2個の有効な官能性分子を有するとみなされる。
【0071】
SCAはシラン組成物を含む。シラン組成物は、一般式:SiRm(OR’)4−m(I)(式中、Rは、独立に各出現、水素またはヒドロカルビル基または1個もしくは複数の14、15、16、もしくは17族のヘテロ原子を含有する1個もしくは複数の置換基で場合により置換されていてもよいアミノ基であり、Rは水素およびハロゲンを数えずに20個までの原子を含有し、R’はC1〜20アルキル基であり、mは、0、1、2または3である)を有する1つまたは複数のアルコキシシランを含むことができる。一実施形態において、Rは、C6〜12アリール、アルキルもしくはアラルキル、C3〜12シクロアリル、C3〜12分岐アルキル、またはC3〜12環状アミノ基であり、R’は、C1〜4アリルであり、mは1または2である。適当なシラン組成物の例には、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジエトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、およびジメチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシラン、およびそれらの任意の組合せであってもよい。さらなる実施形態において、シラン組成物はジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0072】
単独で使用されたときに異なる溶融流動速度を示す2種のシランのブレンドを使用して、より広い分子量分布(MWD)を得ることができる。低いAl/SCA比を制御しながら、ALAをSCA組成物中に組み込むことにより、反応器汚損の傾向を大きく減少させながら、広いMWDをもたらす触媒組成物を得ることができる。そのような組成物は、少なくとも2種のアルコキシシランの混合物(アルコキシシランの1つは、同じ重合条件下に形成される他のポリマーより少なくとも2倍高い溶融流動速度を有するポリマーを生じる)、および前に記載したカルボン酸エステルまたは非エステル組成物から選択されるALAを含む。カルボン酸エステルのALAは、芳香族カルボン酸のエステルもしくはそれらの誘導体、脂肪族エステル、または非エステル組成物であってもよい。適当な芳香族カルボン酸の例には、芳香族モノカルボン酸のC1〜10アルキルまたはシクロアルキルエステルが挙げられるが、これらに限定はされない。適当な置換されたそれらの誘導体には、芳香環(単数または複数)またはエステル基の両方において、1個もしくは複数の14、15もしくは16族のヘテロ原子、特に酸素を含有する1個もしくは複数の置換基により置換された化合物が含まれる。そのような置換基の例には、(ポリ)アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、アルキルチオエーテル、アリールチオエーテル、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジアラルキルアミン、およびトリアルキルシラン基が挙げられる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC1〜20ヒドロカルビルエステル(ヒドロカルビル基は置換されていないか、または1個もしくは複数の14、15もしくは16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されている)、およびそれらのC1〜20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、またはC1〜4アルキルベンゾアートおよびそれらのC1〜4環アルキル化誘導体、またはメチルベンゾアート、エチルベンゾアート、プロピルベンゾアート、メチルp−メトキシベンゾアート、メチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−メトキシベンゾアート、およびエチルp−エトキシベンゾアートであってもよい。
【0073】
一実施形態において、芳香族モノカルボン酸は、エチルp−エトキシベンゾアートである。代替実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルは、C4〜C30脂肪酸エステルであってもよく、モノまたはポリ(2以上)エステルであってもよく、直鎖であっても分岐であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。C4〜C30脂肪酸エステルは、1個もしくは複数の14、15または16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されていてもよい。適当なC4〜C30脂肪酸エステルの例には、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステル、およびC2〜100(ポリ)グリコールもしくはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20モノまたはポリカルボキシラート誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジアセタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジラウラート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ−エステルおよびそれらの混合物であってもよい。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートである。
【0074】
一実施形態において、混合物中のアルコキシシランの1種は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはジイソプロピルジメトキシシランであり、一方他のアルコキシシランは、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシランから選択される。
【0075】
一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1(またはその間の任意の値)、または1:1から3:1、または2:1から3:1または2.5:1以下である。本明細書において使用する、「SCA」または「合計SCA」は、触媒組成物中に存在するALA(存在する場合)およびシラン組成物および非エステル組成物(存在する場合)を合わせた量である。一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、2.5:1である。さらなる実施形態において、ALAは、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステルまたは非エステル組成物である。
【0076】
一実施形態において、C4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルがALAであるとき、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から50:1、または0.75:1から30:1、または1:1から20:1である。
【0077】
本出願人は、驚くべきことに、アルミニウムのSCA合計に対するモル比を0.5:1から4:1の間に制御すると、有利なことに、優れた作業性とともに高い生産性を示し、かつ自消性である触媒系が生じることを見出した。同様に、ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、非エステル組成物、またはC4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルであり、かつアルミニウムのSCA合計に対するモル比が0.5:1から50:1であるとき、触媒組成物は、優れた作業性とともに高い生産性を示し、かつ自消性である。本明細書において使用する「自消性」触媒は、約100℃を超える温度で活性の低下を示す触媒である。換言すれば、自消性は、反応温度が100℃を超えて上昇したときの触媒活性の低下である。それに加えて、実用的基準として、正常な操業条件で運転中の重合方法、特に流動床、気相重合が中断可能であり、ポリマー粒子の凝集に関して有害な結果なしに、床の崩壊が起こる場合、触媒組成物は「自消性」であるといわれる。
【0078】
本明細書において使用する高温における重合活性の基準化された尺度として、触媒活性は、温度が原因のモノマー濃度差を補償するように調節される。例えば、液相(スラリーまたは溶液)重合条件が使用される場合、上昇された温度における反応混合物中のプロピレンの溶解度の減少を補償する補正係数が含まれる。すなわち、触媒活性は、より低い温度、特に67℃標準に比較して減少した溶解度を補償するように「正規化(normalized)」される。温度Tで「正規化」された活性、すなわちATは、測定された活性または濃度補正係数[P(67)]/[P(T)]([P(67)]は、67℃におけるプロピレン濃度であり、[P(T)]は、温度Tにおけるプロピレン濃度である)を乗じた、温度Tにおける(ポリマー重量/触媒重量/hr)として定義される。正規化された活性に対する方程式を下に示す。
【0079】
【数1】
【0080】
方程式において、温度Tにおける活性に、67℃におけるプロピレン濃度と温度Tにおけるプロピレン濃度との比を乗ずる。その結果の正規化された活性(A)(温度上昇に伴うプロピレン濃度の減少について調節されている)は、変動する温度条件下における触媒活性の比較のために使用することができる。液相重合において使用される条件について、補正係数を下に列挙した。
67℃ 85℃ 100℃ 115℃ 130℃ 145℃
1.00 1.42 1.93 2.39 2.98 3.70
【0081】
補正係数は、重合活性が、使用される条件下で、プロピレン濃度とともに直線的に上昇すると仮定している。補正係数は、使用される溶媒または希釈剤の関数である。例えば、上で列挙した補正係数は、普通のC6〜10脂肪族炭化水素混合物(Isopar(商標)E、Exxon Chemical Companyから入手できる)についてのものである。気相重合条件下で、モノマー溶解度は、通常、要因ではなくて、活性は温度差に対して一般に補正されない。すなわち、活性と正規化活性とは同一である。
【0082】
「正規化活性比」は、AT/A67と定義され、式中、ATは温度Tにおける活性であり、A67は67℃における活性である。この値は、温度の関数としての活性変化の指標として使用することができる。例えば、0.30に等しいA100/A67は、100℃における触媒活性が67℃における触媒活性の30パーセントにすぎないことを示す。100℃で、35%以下のA100/A67比は自消性系である触媒系を生じることが見出された。
【0083】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、0.5:1から4.0:1のAl/SCA比は、十分量のアルミニウムを提供して、通常の重合温度における重合反応を支持すると考えられる。しかしながら、高温では(例えば、温度の規定外変動またはプロセスの混乱による)、より多くのアルミニウム種が他の触媒成分と反応する。これはアルミニウム不足を来たし、それは重合反応を遅らせる。アルミニウム不足は、アルミニウムと錯体を形成する電子供与体の数においても対応する減少の原因となる。錯体を形成していない供与体の遊離の電子対は触媒系を無力化させ(poison)、それは反応を自消させる。
【0084】
一実施形態において、SCAは、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステルとアルコキシシラン組成物との混合物である。触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対するモル比は0.5:1から4:1である。SCAは、約60モルパーセントから約97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび約3モルパーセントから約40モルパーセントのアルコキシシラン組成物を含む。
【0085】
アルミニウムのアルコキシシランに対するモル比は、120:1から1.25:1(またはそれらの間の任意の値)、または40:1から1.67:1、または20:1から2.5:1、または13:1から5:1であってもよい。
【0086】
アルミニウムのC4〜C30脂肪酸エステルに対するモル比は、6.7:1から0.5:1(またはそれらの間の任意の値)、または5.7:1から0.52:1、または5:1から0.62:1、または4.4:1から0.71:1、または5.3:1から0.5:1であってもよい。SCAのチタンに対するモル比は、約12.5:1から約70:1であってもよい。一実施形態において、SCA対チタンのモル比は30:1である。本開示の触媒系の種々の成分間のモル比は、下に表1で示す。
【0087】
【表1】
【0088】
一実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、およびそれらの組合せである。アルコキシシラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの組合せである。さらなる実施形態において、SCAには、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートのいずれかとともにジシクロペンチルジメトキシシランが含まれる。
【0089】
一実施形態において、SCAには、C4〜C30脂肪酸エステルおよび2種以上のアルコキシシランの混合物であるアルコキシシラン組成物が含まれる。例えば、アルコキシシラン組成物は、ジメチルジメトキシシランおよびジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランの混合物であってもよい。
【0090】
C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物とのモル比とともに適当なSCAの例を下の表2に示すが、これらに限定はされない。表2に示したSCAのいずれを含む触媒組成物も自消性であり、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は0.5:1から4:1である。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、かつアルミニウムの合計SCAに対する比が0.5:1から50:1であるとき、触媒は自消性である。
【0091】
【表2】
【0092】
図1〜10は、各々、SHAC(商標)320を組み込んでおり、表2のそれぞれのSCAをやはり組み込んでいる触媒組成物について、温度に対する相対活性のグラフを示す。図1〜10に提示したデータは、気相反応器で実施された実験から収集した。
【0093】
実験結果は、Al/SCA比が下がると、触媒組成物の自消能力が増大することを示す。それに加えて、Al/SCA比が下がると、ポリプロピレンのキシレン可溶分含有率も減少する。
【0094】
【表3】
【0095】
図1は、表3に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0096】
【表4】
【0097】
図2は、表4に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0098】
【表5】
【0099】
図3は、表5に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0100】
【表6】
【0101】
図4は、表6に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0102】
【表7】
【0103】
図5は、表7に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0104】
【表8】
【0105】
図6は、表8に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0106】
【表9】
【0107】
図7は、表9に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0108】
【表10】
【0109】
図8は、表10に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0110】
【表11】
【0111】
図9は、表11に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0112】
【表12】
【0113】
図10は、表12に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0114】
一実施形態において、他の触媒組成物が提供される。触媒組成物は、上で記載した1種または複数のジカルボン酸エステル内部電子供与体および1種または複数のアルミニウム含有共触媒とともに1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。触媒組成物は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物である選択性制御剤(SCA)をさらに含む。
【0115】
非エステル組成物は、上で論じたジアルキルジエーテル化合物であってもよい。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの任意の組合せであってもよい。Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から4.0:1または上で論じたようにそれらの間の任意の値である。
【0116】
一実施形態において、SCAは、ピペリジン化合物、シラン組成物、および上で論じた任意のALAを含む。例えば、SCAには、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランと、ジ−n−ブチルセバカート、またはエチルp−エトキシベンゾアート、またはイソプロピルミリスタートのいずれかのALAとが含まれる。
【0117】
一実施形態において、SCAは、i)非エステル組成物とシラン組成物とのブレンドおよびii)ALAの混合物である。ブレンドのALAに対するモル比は5:95である。非エステル組成物のシラン組成物に対するモル比は1:1である。Alの合計SCAに対するモル比は3:1である。さらなる実施形態において、SCAは、i)2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとメチルシクロヘキシルジメトキシシランとのブレンド、およびii)PEEBである。他の実施形態において、SCAは、i)ジエーテル化合物とジシクロペンチルジメトキシシランとのブレンド、およびii)イソプロピルミリスタートである。
【0118】
一実施形態において、SCAは、ジアルキルジエーテル化合物およびシラン組成物を含む。ジアルキルジエーテル化合物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンであってもよい。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの任意の組合せであってもよい。ジアルキルエーテル化合物のシラン組成物に対するモル比は、95:5であってもよい。Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から4.0:1または上で論じたそれらの間の任意の値である。SCAと非エステル組成物の例は、下の表13および14に示すが、これらに限定はされない。重合反応は、液相PPR反応器で実施した。
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
【0121】
一実施形態において、他の触媒組成物が提供される。触媒組成物は、上で記載した1種または複数のジカルボン酸エステル内部電子供与体および1種または複数のアルミニウム含有共触媒とともに1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。触媒組成物は、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシランのシラン組成物およびALAを含む選択性制御剤(SCA)をさらに含む。触媒組成物におけるAlの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1(またはそれらの間の任意の値)である。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、上で論じたALAについて、ALの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1である。
【0122】
シラン組成物は、本明細書において開示した任意の2種以上のアルコキシシランの混合物であってもよい。第1のアルコキシシラン対第2のアルコキシシランの間のモル比は、9:1から1:9またはそれらの間の任意の値であってもよい。一実施形態において、第1のアルコキシシランは、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、またはビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランであってもよい。第2のアルコキシシランは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、またはn−プロピルトリエトキシシランであってもよい。アルコキシシランの無数の(myriad)組合せが本開示の範囲内であることは理解されるであろう。適当な第1のアルコキシシラン/第2のアルコキシシランの組合せの例には、ジイソプロピルジメトキシシラン/メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン/テトラエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン/テトラエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン/メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、およびビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン/n−プロピルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0123】
一実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランである。第2のアルコキシシランは、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシランである。さらなる実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランであり、第2のアルコキシシランはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。
【0124】
SCAはALAを含むこともできる。適当なALAの例には、PEEB、C4〜C30脂肪酸エステル、およびChem Service,Inc.(ペンシルバニア州、West Chester、PA)からS−191として市販されているポリ(エチレン)グリコールのココナッツ油脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定はされない。SCAは、5〜100または5〜95モルパーセントのシラン組成物および95〜0または95〜5モルパーセントのALAを含むことができる。
【0125】
第1および第2のアルコキシシランを有する適当なSCAの例は、下の表15Aおよび15Bに示すが、これらに限定はされない。表15Aおよび15Bに提示した各例においては、SHAC(商標)320を使用した。重合反応は、液相PPR反応器で実施した。
【0126】
【表15A】
【0127】
【表15B】
【0128】
さらに、本開示の触媒組成物は、高い剛性および高いアイソタクチシティ(すなわち、低いキシレン可溶分含有率)を有するポリプロピレン組成物を生じる。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、アルミニウムのSCAに対するモル比が、電子供与体として安息香酸エステルを利用する第3世代触媒の自消性の特性を再現する(replicates)触媒組成物をもたらすと考えられる。しかしながら、エチルp−エトキシベンゾアート(PEEB)などの安息香酸エステルは、生じるポリプロピレンなどのポリマーに望ましくない臭気を与える。フタラート内部供与体を含有する第4世代触媒を使用する限り、本開示の触媒組成物は、安息香酸エステルを含有してもしなくてもよい。安息香酸エステルを含まない触媒組成物の実施形態は、それに対応して、無臭のポリプロピレンを生成させる。換言すれば、本開示の触媒組成物は、PEEB系の触媒系を再現するが、それでも無臭のポリプロピレン組成物を生成させる。それに加えて本開示の触媒組成物は、従来の第4世代触媒の活性に匹敵しまたはそれを凌駕し、また一般的に、第3世代触媒の活性を凌駕する。
【0129】
一実施形態において、重合方法が提供される。重合方法は、重合反応器中で、プロピレンを触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、1種または複数のアルミニウム含有共触媒を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物、ならびにSCAを含む。SCAは、本明細書において先に説明したように、活性抑制剤とシラン組成物との混合物である。この方法は、アルミニウムの合計SCAに対するモル比を、約0.5:1から約4:1に維持することを含む。換言すれば、アルミニウムの合計SCAに対する比は、重合方法を通して、この比を0.5:1から4:1、または1:1から3:1、または2.5:1の範囲内に保持または制御するように調節される。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1、または0.75:1から30:1、または1:1から20:1である。重合方法は、プロピレン含有ポリマーを形成させることをさらに含む。
【0130】
一実施形態において、重合方法は、アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持、調節、またはそうでなければ制御することも含むことができる。したがって、アルミニウムのSCAに対する比は、アルミニウムを一定量に維持しながら、反応に導入されるSCA成分量を調節することにより制御される。
【0131】
一実施形態において、重合方法は、C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。この手順は、無臭のプロピレン含有ポリマーを生成させる。
【0132】
一実施形態において、重合方法は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0133】
一実施形態において、重合方法は、本明細書において先に論じた、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシラン、および活性抑制剤から構成されるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0134】
重合方法により形成されるプロピレン含有ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレンと1種もしくは複数のコモノマーとのコポリマーであってもよい。コモノマーは、2〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンであってもよい。適当なコモノマーの例には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−ヘプテン、および1−オクテンが挙げられるが、これらに限定はされない。したがって、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレンモノマーと1種もしくは複数のコモノマーとのポリマーであってもよい。一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約0.5重量%から約6.0重量%または約5重量%未満である。
【0135】
一実施形態において、重合方法は、重合反応器中の温度が約100℃を超えたときに、触媒組成物で、重合方法または反応を停止させることを含む。本開示の触媒組成物は、反応器汚損、ポリマー凝集、または暴走反応(run-away reaction)のリスクのない定常状態の重合を可能にする。
【0136】
重合方法は、1基または2基以上の反応器で操業する、気相、スラリー、またはバルク重合方法であってもよい。適当な気相重合方法は、熱除去の目的で添加された不活性な低沸点化合物を含む気相成分が、液体の形態で反応器中に注入されるとき、凝縮方式ならびに超凝縮方式の使用を含む。複数の反応器が使用されるときは、それらが直列で作動すること、すなわち、第1の反応器からの流出物が第2の反応器に充填され、追加のモノマーまたは異なるモノマーが加えられて重合を継続することが望ましい。追加の触媒または触媒成分(すなわち、プロ触媒または共触媒)は、追加量のSCA混合物、他のSCA混合物、または個々のアルコキシシランおよび/または1種もしくは複数の活性抑制剤と同様に、加えることができる。
【0137】
一実施形態において、重合方法は2基の反応器で実施され、その中で、コポリマーを調製するために、プロピレンおよびエチレンなど2種のオレフィンが接触される。ポリプロピレンは第1の反応器中で調製され、エチレンとプロピレンとのコポリマーは、第2の反応器中で第1の反応器からのポリプロピレンの存在下に調製される。利用される重合技法にかかわらず、SCA、プロ触媒、および/またはそれらの共触媒を、反応器への添加に先だって、他の重合成分、特にモノマーの不存在下に接触させ得ることは理解される。一実施形態において、上記の2連式重合方法は溶液重合である。
【0138】
重合反応器の温度は、40から130℃または60から100℃、または65℃から80℃である。上記の温度は、反応器壁で測定される反応混合物の平均温度である。反応器の隔たった領域は、上記の限界を超える局所的温度になる可能性がある。
【0139】
一実施形態において、他の重合方法が提供される。その重合方法は、プロピレンを含むガスと触媒組成物とを重合反応器中で反応させることを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)で構成される。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物であり、本明細書中に記載したSCAのいずれであってもよい。方法は、ポリマー粒子の流動床(fluidized bed)を形成させることをさらに含む。流動床はかさ密度を有する。この方法は、プロピレンの分圧を下げて、反応器汚損なしに流動床のかさ密度を増大させることを含む。一実施形態において、方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持、調節またはそうでなければ制御することを含む。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は0.5:1から50:1である。
【0140】
一実施形態において、反応は、流動床重合反応器中で起こる。流動床重合反応器は、流動化されているポリマーを、反応器を通して連続的に循環しているガスから分離するのに役立つ、より広い上部区域を含む。ガスは、プロピレン(ガスおよび/または液体)を単独で、または水素、窒素および/または希ガスなどの担体ガスとの組合せで含む。ガスは、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマーの重合のために、エチレンガスなどの第2のα−オレフィンガスをさらに含むことができる。プロピレンガスは、再循環されるプロピレンガス(recirculated propylene gas)および担体ガスを単独でまたは新鮮プロピレンガス(virgin propylene gas)との組合せで含み得る。
【0141】
触媒組成物は、ガス流中に導入される。触媒組成物は、本明細書において開示されたどのようなチーグラー・ナッタ触媒組成物であってもよい。触媒組成物は、ガス流中に導入される。反応器中で、プロピレンガスと触媒組成物とが接触して発熱的に反応する。成長するポリマー粒子、形成されたポリマー粒子および少量の触媒粒子が、反応器中に存在する重合性ガス(例えば、プロピレンガス)および任意選択の変性ガスの連続的な流れにより流動化される結果として流動床が形成される。床は、それを通して連続的にガスを通過させることにより流動化される。流動床の全体的外見は、床を通るガスの透過により創り出される、個々の移動粒子の密集体である。流動床は、粒子状ポリマー生成物の形成速度で、生成物としての床の一部を引き出すことにより、本質的に一定の高さに維持される。発熱速度は、生成速度に直接関係する。したがって、ポリマーの生成速度に対する主要な制限は、熱が重合帯から除去され得る速度である。
【0142】
本明細書において使用する「反応器汚損(reactor fouling)」は、反応器壁上へのポリマーの成長または接着である。「反応器汚損」は、流動床の自由流動粒子が凝集して、反応器内に塊(chunks)を形成するときにも起こる。本出願人らは、驚くべきことに、反応器中への本開示の触媒組成物の供給が、反応器汚損なしに、床の流動かさ密度を増大させることを可能にして有利であることを見出した。換言すれば、床の流動化された粒子分布への悪影響なしに、床のかさ密度を増大させることができる。
【0143】
流動床のかさ密度は、ガス中および/または反応器中のプロピレンの分圧を低下させることにより増大する。アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4.0:1に制御することは、が見出された。ALAが、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1である。本開示の触媒組成物は、反応器汚損のリスクなしに、流動床かさ密度を増大させることを可能にして有利である。それに対応して、流動床かさ密度の増大は、生産性を有利に向上させる。一実施形態において、流動床かさ密度は、約10%から約100%(またはそれらの間の任意の値)、または約20%から約80%、または50%を超えて100%増大させることができる。例えば、反応器は、10トン/cm3の流動床かさ密度を有することができる。本開示の触媒組成物の利用により、このかさ密度を、10トンから約11トン/cm3まで(10%増大)、約20トン/cm3まで(100%増大)、またはそれらの間の任意の値まで増大させることができる。
【0144】
反応器汚損のリスクなしにプロピレンの分圧を低下させ得ることは、さらなる利点を有する。一実施形態において、プロピレンの分圧は、反応器中における触媒組成物の滞留時間を増大させるために低下される。触媒にガスと反応する時間をより多く与えることにより、滞留時間の増大が、それに対応して、触媒の活性および反応器の生産性を増大させる。一実施形態において、触媒組成物の滞留時間は、約10%から約100%(またはそれらの間の任意の値)増大させることができる。例えば、反応器は、触媒の滞留時間が1時間になることもある。本開示の触媒組成物の利用(ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1または0.5:1から50:1の間に制御する)により、触媒滞留時間を約1.1時間(10%増大)から約2.0時間(100%増大)に増大させることができる。
【0145】
反応器汚損のリスクなしにプロピレンの分圧を低下させ得ることは、さらに重なる利点を有する。一実施形態において、プロピレンの分圧は、ポリマーの生成速度を減少または低下させずに低下される。換言すれば、床の流動かさ密度を増大させることにより、同じ量のポリマー生成物を生成するために必要になるプロピレン出発原料はより少なくなる。例えば、反応器は、従来のチーグラー・ナッタ触媒を使用すると、約28kg/cm2のプロピレン分圧で約15トン/時間の生成速度になり得る。本開示の触媒組成物を使用する反応器は、約15トン/時間の生成速度を有することができ、必要なプロピレン分圧は28kg/f/cm2未満または約24〜26kg/f/cm2でよい。
【0146】
一実施形態において、ガスは露点温度を有する。本明細書において使用する「露点温度(dew point temperature)」は、プロピレンガス中で、液体のプロピレン凝縮物が形成され始める温度である。「床温マイナス露点(bed minus dew temperature)」は、流動床の温度とプロピレンガスの露点温度との間の差である。重合方法に本開示の触媒組成物を適用すると、1〜10℃の、または1〜2℃を超える、または5〜6℃の、プロピレンガスの露点温度と床温度との間の差を生じる。
【0147】
床温マイナス露点値としても知られる、この1〜10℃の差には、いくつかの利点がある。従来のチーグラー・ナッタ触媒系を使用する反応器は、通常、約1〜2℃の床温マイナス露点値を示す。この1〜2℃の床温マイナス露点値は、ある量の液体プロピレンが反応器中に存在する結果を生じる。液体プロピレンは、反応の熱を吸収し(特に、生成の急上昇または生成の不規則性または生成の中断の間に)、反応器汚損を防止することに役立つ。
【0148】
本開示の触媒組成物の使用により、先に論じたように、反応器汚損のリスクは回避される。したがって、床温マイナス露点値は、反応および/またはポリマーに対するいかなる悪影響もなしに増大させることができる。床温マイナス露点値を増大させることは、反応器中における液体プロピレンの存在を減少させ、または完全に排除する。このことは、反応器中に存在する液体プロピレンが少ないと、ガス流中に再循環で戻るプロピレンが多くなることに対応するので、有利である。再循環されるプロピレンが多いことは、重合に利用できるプロピレンが多いことに対応する。したがって、反応器中の液体プロピレンの量を減少させることは、生成に利用可能なプロピレンの量を増大させ、それにより生産効率を向上させる。さらに、反応器中の液体プロピレンの減少または排除は、生成物回収を簡単にする。反応器中の液体プロピレンの存在が少ないほど(または存在しないと)、プロピレン含有ポリマーの単離における、液体プロピレンの損失が少ない(または、ない)。実際、反応器中に液体プロピレンがなければ、分離プロセスは完全に排除される。
【0149】
本開示の触媒組成物は、多様な生産性および作業性の利点をもたらす。重合方法における本開示の触媒組成物の提供は、1)出発原料の量を減少させるプロピレンガスの分圧低下を可能にして、2)流動床のかさ密度を増大させ、それが、3)反応器を通るガスの速度を減少させて、触媒の滞留時間を増大させ、かつ4)生成速度を増大させ、5)生産性を向上させ、一方では6)管理しやすい作業性を維持する。すべてこれらの利点は、反応器汚損のリスクなしに生じる。
【0150】
それに加えて、本開示の触媒組成物の提供は、過渡的な時間を通して連続操業を可能にし、反応器壁上に静的なまたは表面の乱れ(static or skin disorder)が形成されないので、反応器運転中に反応器スリーブ温度(reactor sleeve temperature)が変動しない結果を生じる。
【0151】
一実施形態において、方法は、キシレン可溶分含有率が約0.5重量%から約6重量%のポリプロピレンホモポリマーを形成する。それに加えて、プロピレンガスの増大した滞留時間は、3ppm未満または1ppm未満の残留チタンを含むプロピレン含有組成物の形成に寄与する。さらなる実施形態において、触媒組成物は、流動床温度が約100℃を超えたときに、重合反応を停止させる。
【0152】
一実施形態において、他の重合方法が提供される。方法は、プロピレンガス、エチレンガスおよび触媒組成物を、重合反応器に導入することを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)を含有する。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1(またはALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるときは、0.5:1から50:1)に維持すること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させることをさらに含む。
【0153】
一実施形態において、方法は、エチレン含有率が約4重量%を超える、または約4重量%から約10重量%エチレンのプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーを形成させることを含む。よりさらなる実施形態において、方法は、プロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む。
【0154】
従来のチーグラー・ナッタ触媒系により生成される、4%を超えるエチレン含有率を有するランダムプロピレン−エチレンコポリマー粒子は、むらのある、不規則な、またはそうでなければ「ポップコーン様の」形態を有する傾向がある。この問題に対する対応策は、重合中のプロピレンの分圧の低下を含む。本開示の触媒系の使用は、プロピレン分圧を下げることを必要とせずに、プロピレンとエチレンとのコポリマー粒子の「ポップコーン」形態を排除する。本開示の触媒組成物の使用により、球状のまたはほとんど球状のランダムプロピレン−エチレンコポリマー粒子が生じる。
【0155】
ここで本開示の実施例を示すが、例の目的であって限定するものではない。
【実施例】
【0156】
市販のSHAC(商標)320触媒を使用した。プロ触媒Aは、米国特許第5,093,415号に従って作製した。したがって、Mg(OEt)2は、TiCl4/MCB(モノクロロベンゼン)(20リットル/キログラムMg(OEt)2)とDIBP(ジイソブチルフタラート)(0.3リットル/キログラムMg(OEt)2)との50/50(vol/vol)混合物中にスラリー化した。混合物を106℃に60分間加熱した後、濾過した。生じた湿った塊を、50/50(容積による)TiCl4/MCB混合物(20リットル/キログラムMg(OEt)2)中に106℃で30分間スラリー化して濾過し、このプロセスをさらに1回繰り返した。生じた固形物をイソペンタンですすいでから、流通する温窒素で乾燥した。生じたプロ触媒は、2.5重量パーセントのTiを含有していた。
【0157】
並列重合反応器(SymyxによるPPR)中の液相重合
触媒粉末の触媒粒子サイズは、粉末を攪拌棒で30〜45分間攪拌することにより減少させた。
【0158】
すべてのSCAおよびALAは、Isopar E(商標)中で0.005Mに希釈した。例外としてS−191は、PPR中に注入する前にトルエン中に溶解した。TEA1は、Isopar E(商標)中で調製し、0.02または0.1Mいずれかの溶液として使用した。
【0159】
パージしたPPR反応器を50℃に加熱し、TEA1とIsopar E(商標)との組成の溶媒を各反応器に加え、続いてH2を加えて圧力を5psigで安定化させた。反応器を、指定された温度(67、100または115℃)に加熱した。プロピレンを加えて100psigにして、10分間安定化させた。各反応器にSCAまたはSCAおよびSLAと500μlのIsopar E(商標)チェーサー(chaser)との混合物を加え、続いて直ちに触媒(275μl)および500μlのIsopar E(商標)チェーサーを加えた。反応は、60分後または最大相対変換率110に達したときに、CO2でクエンチさせた。
【0160】
気相重合:
反応器は、直径35cmおよび高さ8.4mのパイロット規模のモデルである。反応器は、圧縮機および再循環ガス流によって流動化されているポリプロピレン粉末の流動床を含む。反応器温度制御は、インライン熱交換器によって再循環ガス流を冷却することにより達成される。
【0161】
触媒、TEALおよび選択性制御剤(SCA)または供与体は、反応器に連続的に供給される。供給は、アルミニウムのSCAに対する、およびTEALのチタンに対する特定のモル比を維持するように制御される。
【0162】
プロピレン、エチレン(エチレンランダムコポリマー生成の場合)、水素、および窒素を連続的に加えて、目標の全圧および水素のプロピレンに対する、およびエチレンのプロピレンに対するモル比(エチレンランダムコポリマー生成の場合)を維持する。プロピレンの全圧および分圧は、水素/プロピレンモル比と同じく表に掲載してある。
【0163】
樹脂生成物は、連続的に加湿窒素でパージしながら、流動床から受槽に移される。
【0164】
生成速度および反応器床重量に基づく平均滞留時間は、およそ2時間である。触媒の生産性は、ポリプロピレン生成物のチタン分析から決定される。異なった滞留時間で得られた生産性を比較するために、実験的に決定した触媒崩壊定数を使用して、結果を2時間の平均滞留時間に対して正規化した。
【0165】
標準的条件は、典型的には:
樹脂床高さ 32kg
プロピレン分圧 2.206kPa
再循環ガス速度 0.36m/s
反応器温度 65℃
反応器圧力 2.896kPa
である。
【0166】
本明細書において記載した本開示の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者には明らかであるということは理解されるべきである。そのような変化および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を減ずることなく為すことができる。それ故、そのような変更および改変は、添付された特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【0167】
米国特許実施の目的に対して、本明細書において参照したいかなる特許、特許出願または公開の内容も、それによりそれらの全体として、特に、構造、合成技法の開示および当技術分野における一般的知識に関して、本明細書中に参照として組み込まれる。本明細書において記載した本開示の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者には明らかであるということは理解されるべきである。そのような変更および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を減ずることなく為すことができる。それ故、そのような変更および改変は、添付された特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、参照により本明細書にすべてを組み込む2007年8月24日出願の米国仮出願第60/957,888号の利益を主張する。
【0002】
本開示は立体選択性チーグラー・ナッタ触媒組成物およびその触媒組成物を利用する重合反応に関する。
【背景技術】
【0003】
チーグラー・ナッタプロピレン重合触媒組成物は、当技術分野において知られている。典型的には、これらの組成物は、内部電子供与体と組み合わせたチタン、マグネシウムなどの遷移金属部分およびハロゲン化物部分(プロ触媒と称する);共触媒、通常有機アルミニウム化合物;および選択性制御剤(SCA)を含む。触媒活性を改良および/またはポリマー特性を調節するために2種以上の成分の混合物であるSCAを利用することが、さらに知られている。問題なのは、1つの方法または製品のパラメーターに関して有効なSCA成分として適当なSCA混合物の選択が、他の方法または製品のパラメーターにしばしば有害であることである。
【0004】
例えば、第3世代のチーグラー・ナッタ触媒は、通常、内部供与体としてベンゾアートを含み、安息香酸エステル(エチルp−エトキシベンゾアートなど)をSCA成分として使用する。これは触媒に対して自消性の特性を与える。しかしながら、安息香酸エステルは、形成されたポリマーに望ましくない臭気を与える。この臭気は、形成されたポリマーの用途を制限するので有害である。それに加えて、第3世代チーグラー・ナッタ触媒としての触媒活性および立体選択性が低い。さらに、安息香酸系SCAが、内部供与体としてフタラートを含む第4世代の触媒とともに使用されたとき、生じたポリマーの立体選択性は実用的用途に対して低すぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業性を犠牲にせずに、触媒活性が向上しかつ生産性が向上したチーグラー・ナッタ触媒組成物を開発することが望ましい。生じるポリマーに望ましくない特性を持ち込まない触媒組成物も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、触媒活性が高く自消性(self-extinguishing)である触媒組成物を目的とする。本開示の触媒組成物は、高いアイソタクチシティを有するポリプロピレンホモポリマー、またはプロピレンと1種もしくは複数の追加のコモノマーとを含むポリマーを生成させる。
【0007】
一実施形態において、触媒組成物はプロピレンの重合のために提供される。その触媒組成物は、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒、1種または複数の共触媒、および選択性制御剤(selectivity control agent)(SCA)を含む。チーグラー・ナッタプロ触媒は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含有する。共触媒は、1種または複数のアルミニウム含有化合物である。SCAは、C4〜C30脂肪酸エステルなど活性抑制剤(ALA)とシラン組成物との混合物である。触媒組成物は、アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1である。一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、1:1から3:1または2.5:1である。
【0008】
一実施形態においては、ALAがC4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルであるとき、触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から50:1である。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.75:1から30:1または1:1から20:1にすることができる。触媒組成物は自消性である。
【0009】
一実施形態において、触媒組成物から形成されるポリマーは臭気を有さない。無臭のポリマーを生じるSCAにおける使用に適した組成物には、C30脂肪酸エステル、C8〜C30脂肪酸エステル、C8〜C30脂肪酸のC2〜C20脂肪族アルキルエステル、C4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジエステル、および2個以上のエーテル結合を含有するポリエーテル化合物が含まれる。
【0010】
一実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、およびそれらの組合せであってもよい。さらなる実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシランである。
【0011】
一実施形態において、シラン組成物は、1種または複数のアルコキシシランの混合物である。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシランとジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランとのブレンドであってもよい。他の実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシランと、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、および/またはジイソブチルジエトキシシランとのブレンドであってもよい。
【0012】
一実施形態において、SCAは、60〜97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび3〜40モルパーセントのシラン組成物を含む。それに加えて、アルミニウムのC4〜C30脂肪酸アルキルエステルに対するモル比は、5.3から0.5:1であってもよい。アルミニウムのシラン組成物に対するモル比は、120:1から1.25:1であってもよい。
【0013】
一実施形態において、触媒組成物は、イソプロピルミリスタートおよびジシクロペンチルルジメトキシシランを含有する。さらなる実施形態において、触媒組成物は、ジ−n−ブチルセバカートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含有する。
【0014】
本開示は、他の触媒組成物も提供する。触媒組成物は、プロピレンの重合のために使用することができ、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含有する1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。1種または複数のアルミニウム含有共触媒および選択性制御剤(SCA)が触媒組成物中に存在する。SCAは、非エステル組成物とシラン組成物との混合物である。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1である。
【0015】
非エステル組成物は、ジアルキルジエーテル化合物を含むポリエーテル化合物であってもよい。例えば、非エステル組成物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンまたはポリ(アルケングリコール)材料であってもよい。
【0016】
一実施形態において、SCAは活性抑制剤(activity limiting agent)も含んでいてもよい。
【0017】
本開示は他の触媒組成物も提供する。触媒組成物は、プロピレンの重合のために使用することができ、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む。1種または複数のアルミニウム含有共触媒および選択性制御剤(SCA)が触媒組成物に含まれる。SCAは、第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランであるアルコキシシラン組成物ならびにALAを含む。
【0018】
一実施形態において、第1のアルコキシシランは、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、またはビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランである。第2のアルコキシシランは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、および/またはn−プロピルトリエトキシシランである。任意の1種または複数の第1のアルコキシシランは、任意の1種または複数の第2のアルコキシシランと混合することができて、SCAを形成する。
【0019】
一実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランである。第2のアルコキシシラン化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランである。
【0020】
一実施形態において、SCAは活性抑制剤を含む。アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1である。
【0021】
本開示は、重合方法を提供する。重合方法は、重合反応器中にプロピレンおよび触媒組成物を導入することを含む。触媒組成物は、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)を含有するチーグラー・ナッタプロ触媒組成物から構成される。SCAは、活性抑制剤(ALA)とシラン組成物との混合物である。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持することをさらに含む。
【0022】
一実施形態において、ALAは、C4〜C30脂肪酸アルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、アルミニウムの合計SCAに対する比は0.5:1から50:1である。
【0023】
一実施形態において、重合方法は、C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物との混合物であるSCAを、反応器中に導入することを含む。
【0024】
一実施形態において、重合方法は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0025】
一実施形態において、重合方法は、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシランおよび活性抑制剤の混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0026】
一実施形態において、重合方法は、アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持することを含む。方法は、重合反応器の温度が100℃を超えるとき、触媒組成物で重合方法を停止することを伴うことができる。
【0027】
一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約0.5重量%から約6.0重量%である。
【0028】
本開示は、他の重合方法も提供する。一実施形態において、重合方法は、プロピレンを含むガスと触媒組成物とを重合反応器中で反応させることを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)から構成される。SCAは、活性抑制剤とアルコキシシラン組成物との混合物であり、本明細書中に記載する任意のSCAであってよい。方法は、ポリマー粒子の流動床を形成させることをさらに含む。流動床は、かさ密度を有する。方法は、プロピレン分圧を低下させて反応器汚損なしに流動床のかさ密度を増大させることを含む。一実施形態において、方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を、0.5:1から4:1に維持、調節またはそうでなければ制御することを含む。触媒組成物は、流動床温度が約100℃を超えるとき、重合方法を停止させる。
【0029】
一実施形態において、方法は、流動床のかさ密度を増大させることを含む。流動かさ密度が増大すると、反応器中における触媒組成物の滞留時間が増大する。その結果、出発原料として使用されるプロピレンの量も減少することになる。換言すれば、同じ生成速度を維持するために要求されるプロピレンが少なくなる。
【0030】
一実施形態において、方法は、反応器中に流動床温度より1℃から10℃低い露点温度(dew point temperature)でガスを導入すること、および反応器中に存在する液体プロピレンの量を減少させることを含む。
【0031】
一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約6重量%未満または0.5重量%から6重量%である。プロピレン含有ポリマーは、3ppm未満、または1ppm未満の残留チタンを含有してもよい。
【0032】
本開示は、他の重合方法も提供する。重合方法は、プロピレンガス、エチレンガス、および触媒組成物を重合反応器中に導入することを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)から構成される。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物である。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させることを含む。プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーは、約4重量%を超えるエチレン含有率を有してもよい。
【0033】
一実施形態において、活性抑制剤は、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、C4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、方法は、0.5:1から50:1のアルミニウムの合計SCAに対する比を維持することを含む。
【0034】
一実施形態において、方法は、プロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む。方法は、「ポップコーン(popcorn)」すなわち不規則な形態のプロピレン−エチレンランダムコポリマー粒子の形成を排除または回避することをさらに含むことができる。
【0035】
本開示の利点は、改良された触媒組成物の提供である。
【0036】
本開示の利点は自消性触媒組成物の提供である。
【0037】
本開示の利点は、反応器汚損(reactor fouling)が減少しかつポリマー凝集(polymer agglomeration)が減少した重合方法の提供である。
【0038】
本開示の利点は、無臭(odor-free)のプロピレン含有ポリマーの生成である。
【0039】
本開示の利点は、反応器汚損のリスクなしに流動床のかさ密度を増大させる触媒組成物の提供である。
【0040】
本開示の利点は、触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対する比の制御による、生産性が向上し、生成速度が向上し、かつ作業性が良好な重合方法である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図2】図2は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図3】図3は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図4】図4は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図5】図5は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図6】図6は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図7】図7は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図8】図8は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図9】図9は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【図10】図10は、本開示の触媒組成物に対する相対活性対温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書中で挙げたいかなる数の範囲も、任意の低い方の値と任意の高い方の値との間に少なくとも2単位の隔たりがあれば、1単位の増分で低い方の値および高い方の値からのすべての値を含む。例として、組成の、物理的または他の特性、例えば、分子量、メルトインデックスなどが100から1,000であると述べられていれば、100、101、102、その他など、および100から144、155から170、197から200、その他など部分範囲の、すべての個々の値が、本明細書において明示的に列挙されていることが意図されている。1未満の値を含む、または1を超えて小数を含む(例えば、1.1、1.5、その他)範囲については、1単位が適宜0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。単一の10未満の桁数を含む範囲については(例えば、1から5)、1単位は通常0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されていることの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せは、本明細書において明示的に列挙されているとみなされる。数の範囲は、本明細書において論じたように、成分の密度、重量パーセント、損失正接、分子量および他の特性に関して挙げられている。
【0043】
本明細書において使用する用語「組成物」は、組成物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む物質の混合物を含む。
【0044】
本明細書において使用する用語「ポリマー」は、同じかまたは異なる種類のモノマーを重合させることにより調製されたポリマー状化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種類だけのモノマーから調製されたポリマーを指して通常使用される用語のホモポリマー、および本明細書の後で定義する用語のインターポリマーを包含する。
【0045】
上で論じたように、本明細書において使用する用語「インターポリマー」は、少なくとも異なる2種類のモノマーの重合により調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、異なる2種類のモノマーから調製されたポリマーを指して通常使用されるコポリマー、および異なる3種類以上のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0046】
本明細書において使用する用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは混合可能(miscible)であってもなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離(phase separated)していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法により決定される1種または複数のドメイン構造を含んでいてもいなくてもよい。
【0047】
本開示の触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物(Ziegler-Natta procatalyst composition)、共触媒(cocatalyst)、および選択性制御剤(selectivity control agent)(SCA)を含有する。それらの各々は以下で詳細に論ずることとする。任意の従来のチーグラー・ナッタプロ触媒は、本触媒組成物において、当技術分野において普通知られているようにして、使用することができる。一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、遷移金属化合物および2族金属の化合物を含有する。遷移金属化合物は、遷移金属化合物、例えば、チタン−、ジルコニウム−、クロム−またはバナジウム−ヒドロカルビルオキシド、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、またはそれらの混合物から誘導される固体錯体であってもよい。
【0048】
遷移金属化合物は、一般式TrXxを有し、式中、Trは遷移金属であり、XはハロゲンまたはC1〜10ヒドロカルボキシルまたはヒドロカルビル基であり、xは、2族金属化合物と組み合わせた化合物中における上記のX基の数である。Trは4、5または6族の金属であってもよい。一実施形態において、Trはチタンなどの4族の金属である。Xは、塩化物、臭化物、C1〜4アルコキシドまたはフェノキシド、またはそれらの混合物であってもよい。一実施形態において、Xは塩化物である。
【0049】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を形成するために使用され得る、適当な遷移金属化合物の例は、TiCl4、ZrCl4、TiBr4、TiCl3、Ti(OC2H5)3Cl、Zr(OC2H5)3Cl、Ti(OC2H5)3Br、Ti(OC3H7)2Cl2、Ti(OC6H5)2Cl2、Zr(OC2H5)2Cl2、およびTi(OC2H5)Cl3であるが、これらに限定はされない。そのような遷移金属化合物の混合物も同様に使用することができる。少なくとも1つの遷移金属化合物が存在する限り、遷移金属化合物の数が制限されることはない。一実施形態において、遷移金属化合物はチタン化合物である。
【0050】
適当な2族金属化合物の例には、ハロゲン化マグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウム、マグネシウムオキシハロゲン化物、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、およびマグネシウムのカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、2族金属化合物は二塩化マグネシウムである。
【0051】
さらなる実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、マグネシウム化合物上に支持されているか、またはそうでなければそれから誘導されたチタン部分の混合物である。適当なマグネシウム化合物には、無水塩化マグネシウム、塩化マグネシウム付加物、マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシド、またはカルボキシル化マグネシウムジアルコキシドもしくはアリールオキシドが含まれる。一実施形態において、マグネシウム化合物は、ジエトキシマグネシウムなどのマグネシウムジ(C1〜4)アルコキシドである。
【0052】
適当なチタン部分の例には、チタンアルコキシド、チタンアリールオキシド、および/またはハロゲン化チタンが含まれるが、これらに限定はされない。チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を調製するために使用される化合物には、1種もしくは複数のマグネシウム−ジ(C1〜4)アルコキシド、二ハロゲン化マグネシウム、マグネシウムアルコキシハライド、またはそれらの混合物および1種もしくは複数のチタンテトラ(C1〜4)アルコキシド、四ハロゲン化チタン、チタン(C1〜4)アルコキシハライド、またはそれらの混合物が含まれる。
【0053】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物を調製するためには、当技術分野において普通に知られているように、前駆体組成物を使用することができる。前駆体組成物は、上記の混合されたマグネシウム化合物、チタン化合物、またはそれらの混合物の塩素化により調製することができ、固体/固体複分解により特定の組成物を形成または可溶化する助けになる「クリップ剤(clipping agent)」と称される1種または複数の化合物の使用を含むことができる。適当なクリップ剤の例には、トリアルキルボラート、特にトリエチルボラート、フェノール性化合物、特にクレゾール、およびシラン類が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0054】
一実施形態において、前駆体組成物は、混合された、式MgdTi(ORe)fXgのマグネシウム/チタン化合物であって、式中、Reは1から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基またはCOR’であり(R’は1から14個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基である);各OR3基は同一であるかまたは異なり;Xは独立に塩素、臭素またはヨウ素であり;dは0.5から56、または2〜4;または3であり;fは2〜116、または5〜15であり;gは0.5〜116、または1〜3、または2である。前駆体は、その調製において使用された反応混合物からアルコールを除去することによる制御された沈殿により調製することができる。一実施形態において、反応媒体は、芳香族の液体、特にクロロベンゼンなど塩素化芳香族化合物と、アルカノール、特にエタノール、および無機塩素化剤との混合物を含む。適当な無機塩素化剤には、ケイ素、アルミニウムおよびチタンの塩素誘導体、例えば、四塩化チタンまたは三塩化チタンなど、および特に四塩化チタンが挙げられる。塩素化剤は、比較的高レベルのアルコキシ成分(単数または複数)を含有する前駆体を生じる部分塩素化をもたらす。塩素化で使用された溶液からアルカノールを除去すると、望ましい形態および表面積を有する固体前駆体の沈殿が生じる。前駆体は、反応媒体から分離された。その上、生じた前駆体は、特に均一な粒子サイズになり、しかも粒子崩壊ならびに生じたプロ触媒の分解が起こりにくい。一実施形態において、前駆体組成物はMg3Ti(OEt)8Cl2である。
【0055】
次に、前駆体は、無機ハロゲン化物化合物、好ましくはハロゲン化チタン化合物とのさらなる反応(ハロゲン化)および内部電子供与体の組込みにより、固体のプロ触媒に変換される。電子供与体が前駆体中に十分な量で既に組み込まれていなかった場合には、電子供与体は、ハロゲン化の前、最中または後で別に添加することもできる。この手順は、場合により追加の添加剤または助剤の存在下に1回または複数回繰り返すことができ、最終固体生成物は脂肪族の溶媒で洗浄される。固体プロ触媒を作製、回収および貯蔵するどのような方法も、本開示における使用に適する。
【0056】
前駆体をハロゲン化するための1つの適当な方法は、前駆体を4価のハロゲン化チタンと、温度を上げて、場合により炭化水素またはハロ炭化水素希釈剤の存在下に反応させることによる。好ましい4価のハロゲン化チタンは四塩化チタンである。オレフィン重合プロ触媒の製造に場合により利用される炭化水素またはハロ炭化水素溶媒は、好ましくは12個まで(12を含む)の炭素原子または9個まで(9を含む)の炭素原子を含有する。典型的炭化水素には、ペンタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、およびデカヒドロナフタレンが含まれる。典型的脂肪族ハロ炭化水素には、塩化メチレン、臭化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロシクロヘキサン、ジクロロフルオロメタンおよびテトラクロロオクタンが含まれる。典型的芳香族ハロ炭化水素には、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエンが含まれる。脂肪族ハロ炭化水素は、四塩化炭素または1,1,2−トリクロロエタンなどの少なくとも2個の塩素置換基を含有する化合物であってもよい。芳香族ハロ炭化水素は、クロロベンゼンまたはo−クロロトルエンであってもよい。
【0057】
ハロゲン化は、1回または複数回繰り返してもよく、ハロゲン化とそれに続くハロゲン化との間で、脂肪族もしくは芳香族炭化水素またはハロ炭化水素などの不活性液体で洗浄することを、場合により伴ってもよい。不安定な種、特にTiCl4を除去するために、不活性な液体の希釈剤、特に脂肪族もしくは芳香族炭化水素、または脂肪族もしくは芳香族ハロ炭化水素と、特に100℃を超える、または110℃を超える高温で接触させることを含む1回もしくは複数回の抽出を、場合によりさらに利用することができる。
【0058】
一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、(i)ジアルコキシマグネシウムを常温で液体の芳香族炭化水素またはハロ炭化水素中に懸濁させ、(ii)ジアルコキシマグネシウムをハロゲン化チタンと接触させ、さらに(iii)生じた組成物をハロゲン化チタンと2度目の接触をさせ、ジアルコキシマグネシウムを芳香族ジカルボン酸のジエステルと、(ii)におけるハロゲン化チタンによる処理中のある時点で接触させることにより得られた固体触媒成分を含む。
【0059】
一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、(i)式MgdTi(ORe)fXg(前に記載したもの)の前駆体材料を、常温で液体の芳香族炭化水素またはハロ炭化水素中に懸濁させ、(ii)前駆体をハロゲン化チタンと接触させ、さらに(iii)生じた組成物をハロゲン化チタンと2度目の接触をさせ、前駆体を芳香族ジカルボン酸のジエステルと、(ii)におけるハロゲン化チタンによる処理中のある時点で接触させることにより得られた固体触媒成分を含む。
【0060】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、内部電子供与体を含む。内部電子供与体は、タクチシティ制御(tacticity control)および触媒クリスタリットのサイズ調節(catalyst crystallite sizing)を提供する。適当な内部電子供与体の例には、芳香族ジカルボン酸エステル、ハロゲン化物もしくは無水物またはそれらの(ポリ)アルキルエーテル誘導体、特にフタル酸またはテレフタル酸のC1〜4ジアルキルエステル、フタロイルジクロリド、フタル酸無水物、およびそれらのC1〜4(ポリ)アルキルエーテル誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、内部電子供与体は、ジイソブチルフタラートまたはジ−n−ブチルフタラートである。
【0061】
チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、不活性支持体材料(inert support material)も含むことができる。支持体は、遷移金属化合物の触媒性能に悪影響のない不活性固体であってよい。例には、アルミナなどの金属酸化物、およびシリカなどの半金属酸化物が挙げられる。
【0062】
上記のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物とともに使用する共触媒は、アルミニウム含有組成物である。適当なアルミニウム含有組成物の例には、各アルキルまたはアルコキシド基中に1〜10個、または1〜6個の炭素原子を含有する、トリアルキルアルミニウム、水素化ジアルキルアルミニウム、二水素化アルキルアルミニウム、ハロゲン化ジアルキルアルミニウム、ジハロゲン化アルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、およびアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物などの有機アルミニウム化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、共触媒は、トリエチルアルミニウム(TEA)などのC1〜4トリアルキルアルミニウム化合物である。アルミニウムのチタンに対するモル比は、35:1から50:1である。一実施形態において、アルミニウムのチタンに対するモル比は45:1である。
【0063】
触媒組成物は選択性制御剤(SCA)を含む。SCAは、(i)1種もしくは複数の活性抑制剤(ALA)および/または(ii)1種もしくは複数のシラン組成物の混合物である。一実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルは、C4〜C30脂肪酸エステルであってもよく、モノまたはポリ(2以上)エステルであってもよく、直鎖であっても分岐であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。C4〜C30脂肪酸エステルは、1個または複数の14、15または16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されていてもよい。適当なC4〜C30脂肪酸エステルの例には、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステルおよびC2〜100(ポリ)グリコールのC4〜20アルキルモノまたはポリカルボキシラート誘導体またはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジアセタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジラウラート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、およびそれらの混合物であってもよい。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートである。
【0064】
一実施形態において、ALAは非エステル組成物である。本明細書において使用する「非エステル組成物」は、エステル官能基を有さない原子、分子、または化合物(atom, molecule, or compound that is free of ester functional group)である。換言すれば、「非エステル組成物」は、以下の官能基を含有さない。
【0065】
【化1】
【0066】
一実施形態において、非エステル組成物は、ジアルキルジエーテル化合物またはアミン化合物であってもよい。ジアルキルジエーテル化合物は、以下の式
【0067】
【化2】
により表される。
【0068】
(式中、R1からR4は、互いに独立に、14、15、16、または17族のヘテロ原子を場合により含有してよい、20個までの炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアラルキル基である。ただし、R1およびR2は、水素原子であってもよい。適当なジアルキルエーテル化合物の例には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−n−プロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン、および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、ジアルキルエーテル化合物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである。
【0069】
一実施形態において、非エステル組成物はアミン化合物である。適当なアミン化合物の例には、2,6−ジメチルピペリジンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジンおよび2,5−置換ピペリジンが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、ピペリジン化合物は2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0070】
2個以上のカルボキシラート基を含有するALAに対して、すべてのカルボキシラート基は有効成分とみなされる。例えば、セバカート分子は、2個のカルボキシラート官能基を含有し、2個の有効な官能性分子を有するとみなされる。
【0071】
SCAはシラン組成物を含む。シラン組成物は、一般式:SiRm(OR’)4−m(I)(式中、Rは、独立に各出現、水素またはヒドロカルビル基または1個もしくは複数の14、15、16、もしくは17族のヘテロ原子を含有する1個もしくは複数の置換基で場合により置換されていてもよいアミノ基であり、Rは水素およびハロゲンを数えずに20個までの原子を含有し、R’はC1〜20アルキル基であり、mは、0、1、2または3である)を有する1つまたは複数のアルコキシシランを含むことができる。一実施形態において、Rは、C6〜12アリール、アルキルもしくはアラルキル、C3〜12シクロアリル、C3〜12分岐アルキル、またはC3〜12環状アミノ基であり、R’は、C1〜4アリルであり、mは1または2である。適当なシラン組成物の例には、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジエトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、およびジメチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシラン、およびそれらの任意の組合せであってもよい。さらなる実施形態において、シラン組成物はジシクロペンチルジメトキシシランである。
【0072】
単独で使用されたときに異なる溶融流動速度を示す2種のシランのブレンドを使用して、より広い分子量分布(MWD)を得ることができる。低いAl/SCA比を制御しながら、ALAをSCA組成物中に組み込むことにより、反応器汚損の傾向を大きく減少させながら、広いMWDをもたらす触媒組成物を得ることができる。そのような組成物は、少なくとも2種のアルコキシシランの混合物(アルコキシシランの1つは、同じ重合条件下に形成される他のポリマーより少なくとも2倍高い溶融流動速度を有するポリマーを生じる)、および前に記載したカルボン酸エステルまたは非エステル組成物から選択されるALAを含む。カルボン酸エステルのALAは、芳香族カルボン酸のエステルもしくはそれらの誘導体、脂肪族エステル、または非エステル組成物であってもよい。適当な芳香族カルボン酸の例には、芳香族モノカルボン酸のC1〜10アルキルまたはシクロアルキルエステルが挙げられるが、これらに限定はされない。適当な置換されたそれらの誘導体には、芳香環(単数または複数)またはエステル基の両方において、1個もしくは複数の14、15もしくは16族のヘテロ原子、特に酸素を含有する1個もしくは複数の置換基により置換された化合物が含まれる。そのような置換基の例には、(ポリ)アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、アルキルチオエーテル、アリールチオエーテル、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジアラルキルアミン、およびトリアルキルシラン基が挙げられる。芳香族カルボン酸エステルは、安息香酸のC1〜20ヒドロカルビルエステル(ヒドロカルビル基は置換されていないか、または1個もしくは複数の14、15もしくは16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されている)、およびそれらのC1〜20(ポリ)ヒドロカルビルエーテル誘導体、またはC1〜4アルキルベンゾアートおよびそれらのC1〜4環アルキル化誘導体、またはメチルベンゾアート、エチルベンゾアート、プロピルベンゾアート、メチルp−メトキシベンゾアート、メチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−メトキシベンゾアート、およびエチルp−エトキシベンゾアートであってもよい。
【0073】
一実施形態において、芳香族モノカルボン酸は、エチルp−エトキシベンゾアートである。代替実施形態において、ALAは脂肪族エステルである。脂肪族エステルは、C4〜C30脂肪酸エステルであってもよく、モノまたはポリ(2以上)エステルであってもよく、直鎖であっても分岐であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。C4〜C30脂肪酸エステルは、1個もしくは複数の14、15または16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されていてもよい。適当なC4〜C30脂肪酸エステルの例には、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アリルモノおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステル、およびC2〜100(ポリ)グリコールもしくはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20モノまたはポリカルボキシラート誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジアセタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジラウラート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジオレアート、グリセリルトリ(アセタート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ−エステルおよびそれらの混合物であってもよい。さらなる実施形態において、C4〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートである。
【0074】
一実施形態において、混合物中のアルコキシシランの1種は、ジシクロペンチルジメトキシシランまたはジイソプロピルジメトキシシランであり、一方他のアルコキシシランは、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシランから選択される。
【0075】
一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1(またはその間の任意の値)、または1:1から3:1、または2:1から3:1または2.5:1以下である。本明細書において使用する、「SCA」または「合計SCA」は、触媒組成物中に存在するALA(存在する場合)およびシラン組成物および非エステル組成物(存在する場合)を合わせた量である。一実施形態において、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、2.5:1である。さらなる実施形態において、ALAは、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステルまたは非エステル組成物である。
【0076】
一実施形態において、C4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルがALAであるとき、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から50:1、または0.75:1から30:1、または1:1から20:1である。
【0077】
本出願人は、驚くべきことに、アルミニウムのSCA合計に対するモル比を0.5:1から4:1の間に制御すると、有利なことに、優れた作業性とともに高い生産性を示し、かつ自消性である触媒系が生じることを見出した。同様に、ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、非エステル組成物、またはC4〜C30脂肪酸の(ポリ)(アルキレングリコール)エステルであり、かつアルミニウムのSCA合計に対するモル比が0.5:1から50:1であるとき、触媒組成物は、優れた作業性とともに高い生産性を示し、かつ自消性である。本明細書において使用する「自消性」触媒は、約100℃を超える温度で活性の低下を示す触媒である。換言すれば、自消性は、反応温度が100℃を超えて上昇したときの触媒活性の低下である。それに加えて、実用的基準として、正常な操業条件で運転中の重合方法、特に流動床、気相重合が中断可能であり、ポリマー粒子の凝集に関して有害な結果なしに、床の崩壊が起こる場合、触媒組成物は「自消性」であるといわれる。
【0078】
本明細書において使用する高温における重合活性の基準化された尺度として、触媒活性は、温度が原因のモノマー濃度差を補償するように調節される。例えば、液相(スラリーまたは溶液)重合条件が使用される場合、上昇された温度における反応混合物中のプロピレンの溶解度の減少を補償する補正係数が含まれる。すなわち、触媒活性は、より低い温度、特に67℃標準に比較して減少した溶解度を補償するように「正規化(normalized)」される。温度Tで「正規化」された活性、すなわちATは、測定された活性または濃度補正係数[P(67)]/[P(T)]([P(67)]は、67℃におけるプロピレン濃度であり、[P(T)]は、温度Tにおけるプロピレン濃度である)を乗じた、温度Tにおける(ポリマー重量/触媒重量/hr)として定義される。正規化された活性に対する方程式を下に示す。
【0079】
【数1】
【0080】
方程式において、温度Tにおける活性に、67℃におけるプロピレン濃度と温度Tにおけるプロピレン濃度との比を乗ずる。その結果の正規化された活性(A)(温度上昇に伴うプロピレン濃度の減少について調節されている)は、変動する温度条件下における触媒活性の比較のために使用することができる。液相重合において使用される条件について、補正係数を下に列挙した。
67℃ 85℃ 100℃ 115℃ 130℃ 145℃
1.00 1.42 1.93 2.39 2.98 3.70
【0081】
補正係数は、重合活性が、使用される条件下で、プロピレン濃度とともに直線的に上昇すると仮定している。補正係数は、使用される溶媒または希釈剤の関数である。例えば、上で列挙した補正係数は、普通のC6〜10脂肪族炭化水素混合物(Isopar(商標)E、Exxon Chemical Companyから入手できる)についてのものである。気相重合条件下で、モノマー溶解度は、通常、要因ではなくて、活性は温度差に対して一般に補正されない。すなわち、活性と正規化活性とは同一である。
【0082】
「正規化活性比」は、AT/A67と定義され、式中、ATは温度Tにおける活性であり、A67は67℃における活性である。この値は、温度の関数としての活性変化の指標として使用することができる。例えば、0.30に等しいA100/A67は、100℃における触媒活性が67℃における触媒活性の30パーセントにすぎないことを示す。100℃で、35%以下のA100/A67比は自消性系である触媒系を生じることが見出された。
【0083】
いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、0.5:1から4.0:1のAl/SCA比は、十分量のアルミニウムを提供して、通常の重合温度における重合反応を支持すると考えられる。しかしながら、高温では(例えば、温度の規定外変動またはプロセスの混乱による)、より多くのアルミニウム種が他の触媒成分と反応する。これはアルミニウム不足を来たし、それは重合反応を遅らせる。アルミニウム不足は、アルミニウムと錯体を形成する電子供与体の数においても対応する減少の原因となる。錯体を形成していない供与体の遊離の電子対は触媒系を無力化させ(poison)、それは反応を自消させる。
【0084】
一実施形態において、SCAは、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステルとアルコキシシラン組成物との混合物である。触媒組成物のアルミニウムの合計SCAに対するモル比は0.5:1から4:1である。SCAは、約60モルパーセントから約97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび約3モルパーセントから約40モルパーセントのアルコキシシラン組成物を含む。
【0085】
アルミニウムのアルコキシシランに対するモル比は、120:1から1.25:1(またはそれらの間の任意の値)、または40:1から1.67:1、または20:1から2.5:1、または13:1から5:1であってもよい。
【0086】
アルミニウムのC4〜C30脂肪酸エステルに対するモル比は、6.7:1から0.5:1(またはそれらの間の任意の値)、または5.7:1から0.52:1、または5:1から0.62:1、または4.4:1から0.71:1、または5.3:1から0.5:1であってもよい。SCAのチタンに対するモル比は、約12.5:1から約70:1であってもよい。一実施形態において、SCA対チタンのモル比は30:1である。本開示の触媒系の種々の成分間のモル比は、下に表1で示す。
【0087】
【表1】
【0088】
一実施形態において、C4〜C30脂肪酸エステルは、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノまたはジミリスタート、およびそれらの組合せである。アルコキシシラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの組合せである。さらなる実施形態において、SCAには、イソプロピルミリスタートまたはジ−n−ブチルセバカートのいずれかとともにジシクロペンチルジメトキシシランが含まれる。
【0089】
一実施形態において、SCAには、C4〜C30脂肪酸エステルおよび2種以上のアルコキシシランの混合物であるアルコキシシラン組成物が含まれる。例えば、アルコキシシラン組成物は、ジメチルジメトキシシランおよびジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、および/またはn−プロピルトリメトキシシランの混合物であってもよい。
【0090】
C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物とのモル比とともに適当なSCAの例を下の表2に示すが、これらに限定はされない。表2に示したSCAのいずれを含む触媒組成物も自消性であり、アルミニウムの合計SCAに対するモル比は0.5:1から4:1である。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであり、かつアルミニウムの合計SCAに対する比が0.5:1から50:1であるとき、触媒は自消性である。
【0091】
【表2】
【0092】
図1〜10は、各々、SHAC(商標)320を組み込んでおり、表2のそれぞれのSCAをやはり組み込んでいる触媒組成物について、温度に対する相対活性のグラフを示す。図1〜10に提示したデータは、気相反応器で実施された実験から収集した。
【0093】
実験結果は、Al/SCA比が下がると、触媒組成物の自消能力が増大することを示す。それに加えて、Al/SCA比が下がると、ポリプロピレンのキシレン可溶分含有率も減少する。
【0094】
【表3】
【0095】
図1は、表3に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0096】
【表4】
【0097】
図2は、表4に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0098】
【表5】
【0099】
図3は、表5に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0100】
【表6】
【0101】
図4は、表6に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0102】
【表7】
【0103】
図5は、表7に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0104】
【表8】
【0105】
図6は、表8に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0106】
【表9】
【0107】
図7は、表9に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0108】
【表10】
【0109】
図8は、表10に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0110】
【表11】
【0111】
図9は、表11に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0112】
【表12】
【0113】
図10は、表12に示した例について温度に対する相対活性のグラフを示す。
【0114】
一実施形態において、他の触媒組成物が提供される。触媒組成物は、上で記載した1種または複数のジカルボン酸エステル内部電子供与体および1種または複数のアルミニウム含有共触媒とともに1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。触媒組成物は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物である選択性制御剤(SCA)をさらに含む。
【0115】
非エステル組成物は、上で論じたジアルキルジエーテル化合物であってもよい。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの任意の組合せであってもよい。Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から4.0:1または上で論じたようにそれらの間の任意の値である。
【0116】
一実施形態において、SCAは、ピペリジン化合物、シラン組成物、および上で論じた任意のALAを含む。例えば、SCAには、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランと、ジ−n−ブチルセバカート、またはエチルp−エトキシベンゾアート、またはイソプロピルミリスタートのいずれかのALAとが含まれる。
【0117】
一実施形態において、SCAは、i)非エステル組成物とシラン組成物とのブレンドおよびii)ALAの混合物である。ブレンドのALAに対するモル比は5:95である。非エステル組成物のシラン組成物に対するモル比は1:1である。Alの合計SCAに対するモル比は3:1である。さらなる実施形態において、SCAは、i)2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとメチルシクロヘキシルジメトキシシランとのブレンド、およびii)PEEBである。他の実施形態において、SCAは、i)ジエーテル化合物とジシクロペンチルジメトキシシランとのブレンド、およびii)イソプロピルミリスタートである。
【0118】
一実施形態において、SCAは、ジアルキルジエーテル化合物およびシラン組成物を含む。ジアルキルジエーテル化合物は、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンであってもよい。シラン組成物は、ジメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはそれらの任意の組合せであってもよい。ジアルキルエーテル化合物のシラン組成物に対するモル比は、95:5であってもよい。Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から4.0:1または上で論じたそれらの間の任意の値である。SCAと非エステル組成物の例は、下の表13および14に示すが、これらに限定はされない。重合反応は、液相PPR反応器で実施した。
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
【0121】
一実施形態において、他の触媒組成物が提供される。触媒組成物は、上で記載した1種または複数のジカルボン酸エステル内部電子供与体および1種または複数のアルミニウム含有共触媒とともに1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物を含む。触媒組成物は、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシランのシラン組成物およびALAを含む選択性制御剤(SCA)をさらに含む。触媒組成物におけるAlの合計SCAに対するモル比は、0.5:1から4:1(またはそれらの間の任意の値)である。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、上で論じたALAについて、ALの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1である。
【0122】
シラン組成物は、本明細書において開示した任意の2種以上のアルコキシシランの混合物であってもよい。第1のアルコキシシラン対第2のアルコキシシランの間のモル比は、9:1から1:9またはそれらの間の任意の値であってもよい。一実施形態において、第1のアルコキシシランは、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、またはビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランであってもよい。第2のアルコキシシランは、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、またはn−プロピルトリエトキシシランであってもよい。アルコキシシランの無数の(myriad)組合せが本開示の範囲内であることは理解されるであろう。適当な第1のアルコキシシラン/第2のアルコキシシランの組合せの例には、ジイソプロピルジメトキシシラン/メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン/テトラエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン/テトラエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン/メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、およびビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン/n−プロピルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0123】
一実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランである。第2のアルコキシシランは、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、またはn−プロピルトリメトキシシランである。さらなる実施形態において、第1のアルコキシシランはジメチルジメトキシシランであり、第2のアルコキシシランはメチルシクロヘキシルジメトキシシランである。
【0124】
SCAはALAを含むこともできる。適当なALAの例には、PEEB、C4〜C30脂肪酸エステル、およびChem Service,Inc.(ペンシルバニア州、West Chester、PA)からS−191として市販されているポリ(エチレン)グリコールのココナッツ油脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定はされない。SCAは、5〜100または5〜95モルパーセントのシラン組成物および95〜0または95〜5モルパーセントのALAを含むことができる。
【0125】
第1および第2のアルコキシシランを有する適当なSCAの例は、下の表15Aおよび15Bに示すが、これらに限定はされない。表15Aおよび15Bに提示した各例においては、SHAC(商標)320を使用した。重合反応は、液相PPR反応器で実施した。
【0126】
【表15A】
【0127】
【表15B】
【0128】
さらに、本開示の触媒組成物は、高い剛性および高いアイソタクチシティ(すなわち、低いキシレン可溶分含有率)を有するポリプロピレン組成物を生じる。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、アルミニウムのSCAに対するモル比が、電子供与体として安息香酸エステルを利用する第3世代触媒の自消性の特性を再現する(replicates)触媒組成物をもたらすと考えられる。しかしながら、エチルp−エトキシベンゾアート(PEEB)などの安息香酸エステルは、生じるポリプロピレンなどのポリマーに望ましくない臭気を与える。フタラート内部供与体を含有する第4世代触媒を使用する限り、本開示の触媒組成物は、安息香酸エステルを含有してもしなくてもよい。安息香酸エステルを含まない触媒組成物の実施形態は、それに対応して、無臭のポリプロピレンを生成させる。換言すれば、本開示の触媒組成物は、PEEB系の触媒系を再現するが、それでも無臭のポリプロピレン組成物を生成させる。それに加えて本開示の触媒組成物は、従来の第4世代触媒の活性に匹敵しまたはそれを凌駕し、また一般的に、第3世代触媒の活性を凌駕する。
【0129】
一実施形態において、重合方法が提供される。重合方法は、重合反応器中で、プロピレンを触媒組成物と接触させることを含む。触媒組成物は、1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、1種または複数のアルミニウム含有共触媒を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物、ならびにSCAを含む。SCAは、本明細書において先に説明したように、活性抑制剤とシラン組成物との混合物である。この方法は、アルミニウムの合計SCAに対するモル比を、約0.5:1から約4:1に維持することを含む。換言すれば、アルミニウムの合計SCAに対する比は、重合方法を通して、この比を0.5:1から4:1、または1:1から3:1、または2.5:1の範囲内に保持または制御するように調節される。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1、または0.75:1から30:1、または1:1から20:1である。重合方法は、プロピレン含有ポリマーを形成させることをさらに含む。
【0130】
一実施形態において、重合方法は、アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持、調節、またはそうでなければ制御することも含むことができる。したがって、アルミニウムのSCAに対する比は、アルミニウムを一定量に維持しながら、反応に導入されるSCA成分量を調節することにより制御される。
【0131】
一実施形態において、重合方法は、C4〜C30脂肪酸エステルとシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。この手順は、無臭のプロピレン含有ポリマーを生成させる。
【0132】
一実施形態において、重合方法は、非エステル組成物とシラン組成物との混合物であるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0133】
一実施形態において、重合方法は、本明細書において先に論じた、第1のアルコキシシラン、第2のアルコキシシラン、および活性抑制剤から構成されるSCAを反応器中に導入することを含む。
【0134】
重合方法により形成されるプロピレン含有ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレンと1種もしくは複数のコモノマーとのコポリマーであってもよい。コモノマーは、2〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンであってもよい。適当なコモノマーの例には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−ヘプテン、および1−オクテンが挙げられるが、これらに限定はされない。したがって、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレンモノマーと1種もしくは複数のコモノマーとのポリマーであってもよい。一実施形態において、プロピレン含有ポリマーのキシレン可溶分含有率は、約0.5重量%から約6.0重量%または約5重量%未満である。
【0135】
一実施形態において、重合方法は、重合反応器中の温度が約100℃を超えたときに、触媒組成物で、重合方法または反応を停止させることを含む。本開示の触媒組成物は、反応器汚損、ポリマー凝集、または暴走反応(run-away reaction)のリスクのない定常状態の重合を可能にする。
【0136】
重合方法は、1基または2基以上の反応器で操業する、気相、スラリー、またはバルク重合方法であってもよい。適当な気相重合方法は、熱除去の目的で添加された不活性な低沸点化合物を含む気相成分が、液体の形態で反応器中に注入されるとき、凝縮方式ならびに超凝縮方式の使用を含む。複数の反応器が使用されるときは、それらが直列で作動すること、すなわち、第1の反応器からの流出物が第2の反応器に充填され、追加のモノマーまたは異なるモノマーが加えられて重合を継続することが望ましい。追加の触媒または触媒成分(すなわち、プロ触媒または共触媒)は、追加量のSCA混合物、他のSCA混合物、または個々のアルコキシシランおよび/または1種もしくは複数の活性抑制剤と同様に、加えることができる。
【0137】
一実施形態において、重合方法は2基の反応器で実施され、その中で、コポリマーを調製するために、プロピレンおよびエチレンなど2種のオレフィンが接触される。ポリプロピレンは第1の反応器中で調製され、エチレンとプロピレンとのコポリマーは、第2の反応器中で第1の反応器からのポリプロピレンの存在下に調製される。利用される重合技法にかかわらず、SCA、プロ触媒、および/またはそれらの共触媒を、反応器への添加に先だって、他の重合成分、特にモノマーの不存在下に接触させ得ることは理解される。一実施形態において、上記の2連式重合方法は溶液重合である。
【0138】
重合反応器の温度は、40から130℃または60から100℃、または65℃から80℃である。上記の温度は、反応器壁で測定される反応混合物の平均温度である。反応器の隔たった領域は、上記の限界を超える局所的温度になる可能性がある。
【0139】
一実施形態において、他の重合方法が提供される。その重合方法は、プロピレンを含むガスと触媒組成物とを重合反応器中で反応させることを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)で構成される。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物であり、本明細書中に記載したSCAのいずれであってもよい。方法は、ポリマー粒子の流動床(fluidized bed)を形成させることをさらに含む。流動床はかさ密度を有する。この方法は、プロピレンの分圧を下げて、反応器汚損なしに流動床のかさ密度を増大させることを含む。一実施形態において、方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持、調節またはそうでなければ制御することを含む。ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は0.5:1から50:1である。
【0140】
一実施形態において、反応は、流動床重合反応器中で起こる。流動床重合反応器は、流動化されているポリマーを、反応器を通して連続的に循環しているガスから分離するのに役立つ、より広い上部区域を含む。ガスは、プロピレン(ガスおよび/または液体)を単独で、または水素、窒素および/または希ガスなどの担体ガスとの組合せで含む。ガスは、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマーの重合のために、エチレンガスなどの第2のα−オレフィンガスをさらに含むことができる。プロピレンガスは、再循環されるプロピレンガス(recirculated propylene gas)および担体ガスを単独でまたは新鮮プロピレンガス(virgin propylene gas)との組合せで含み得る。
【0141】
触媒組成物は、ガス流中に導入される。触媒組成物は、本明細書において開示されたどのようなチーグラー・ナッタ触媒組成物であってもよい。触媒組成物は、ガス流中に導入される。反応器中で、プロピレンガスと触媒組成物とが接触して発熱的に反応する。成長するポリマー粒子、形成されたポリマー粒子および少量の触媒粒子が、反応器中に存在する重合性ガス(例えば、プロピレンガス)および任意選択の変性ガスの連続的な流れにより流動化される結果として流動床が形成される。床は、それを通して連続的にガスを通過させることにより流動化される。流動床の全体的外見は、床を通るガスの透過により創り出される、個々の移動粒子の密集体である。流動床は、粒子状ポリマー生成物の形成速度で、生成物としての床の一部を引き出すことにより、本質的に一定の高さに維持される。発熱速度は、生成速度に直接関係する。したがって、ポリマーの生成速度に対する主要な制限は、熱が重合帯から除去され得る速度である。
【0142】
本明細書において使用する「反応器汚損(reactor fouling)」は、反応器壁上へのポリマーの成長または接着である。「反応器汚損」は、流動床の自由流動粒子が凝集して、反応器内に塊(chunks)を形成するときにも起こる。本出願人らは、驚くべきことに、反応器中への本開示の触媒組成物の供給が、反応器汚損なしに、床の流動かさ密度を増大させることを可能にして有利であることを見出した。換言すれば、床の流動化された粒子分布への悪影響なしに、床のかさ密度を増大させることができる。
【0143】
流動床のかさ密度は、ガス中および/または反応器中のプロピレンの分圧を低下させることにより増大する。アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4.0:1に制御することは、が見出された。ALAが、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、Alの合計SCAに対する比は、0.5:1から50:1である。本開示の触媒組成物は、反応器汚損のリスクなしに、流動床かさ密度を増大させることを可能にして有利である。それに対応して、流動床かさ密度の増大は、生産性を有利に向上させる。一実施形態において、流動床かさ密度は、約10%から約100%(またはそれらの間の任意の値)、または約20%から約80%、または50%を超えて100%増大させることができる。例えば、反応器は、10トン/cm3の流動床かさ密度を有することができる。本開示の触媒組成物の利用により、このかさ密度を、10トンから約11トン/cm3まで(10%増大)、約20トン/cm3まで(100%増大)、またはそれらの間の任意の値まで増大させることができる。
【0144】
反応器汚損のリスクなしにプロピレンの分圧を低下させ得ることは、さらなる利点を有する。一実施形態において、プロピレンの分圧は、反応器中における触媒組成物の滞留時間を増大させるために低下される。触媒にガスと反応する時間をより多く与えることにより、滞留時間の増大が、それに対応して、触媒の活性および反応器の生産性を増大させる。一実施形態において、触媒組成物の滞留時間は、約10%から約100%(またはそれらの間の任意の値)増大させることができる。例えば、反応器は、触媒の滞留時間が1時間になることもある。本開示の触媒組成物の利用(ALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるとき、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1または0.5:1から50:1の間に制御する)により、触媒滞留時間を約1.1時間(10%増大)から約2.0時間(100%増大)に増大させることができる。
【0145】
反応器汚損のリスクなしにプロピレンの分圧を低下させ得ることは、さらに重なる利点を有する。一実施形態において、プロピレンの分圧は、ポリマーの生成速度を減少または低下させずに低下される。換言すれば、床の流動かさ密度を増大させることにより、同じ量のポリマー生成物を生成するために必要になるプロピレン出発原料はより少なくなる。例えば、反応器は、従来のチーグラー・ナッタ触媒を使用すると、約28kg/cm2のプロピレン分圧で約15トン/時間の生成速度になり得る。本開示の触媒組成物を使用する反応器は、約15トン/時間の生成速度を有することができ、必要なプロピレン分圧は28kg/f/cm2未満または約24〜26kg/f/cm2でよい。
【0146】
一実施形態において、ガスは露点温度を有する。本明細書において使用する「露点温度(dew point temperature)」は、プロピレンガス中で、液体のプロピレン凝縮物が形成され始める温度である。「床温マイナス露点(bed minus dew temperature)」は、流動床の温度とプロピレンガスの露点温度との間の差である。重合方法に本開示の触媒組成物を適用すると、1〜10℃の、または1〜2℃を超える、または5〜6℃の、プロピレンガスの露点温度と床温度との間の差を生じる。
【0147】
床温マイナス露点値としても知られる、この1〜10℃の差には、いくつかの利点がある。従来のチーグラー・ナッタ触媒系を使用する反応器は、通常、約1〜2℃の床温マイナス露点値を示す。この1〜2℃の床温マイナス露点値は、ある量の液体プロピレンが反応器中に存在する結果を生じる。液体プロピレンは、反応の熱を吸収し(特に、生成の急上昇または生成の不規則性または生成の中断の間に)、反応器汚損を防止することに役立つ。
【0148】
本開示の触媒組成物の使用により、先に論じたように、反応器汚損のリスクは回避される。したがって、床温マイナス露点値は、反応および/またはポリマーに対するいかなる悪影響もなしに増大させることができる。床温マイナス露点値を増大させることは、反応器中における液体プロピレンの存在を減少させ、または完全に排除する。このことは、反応器中に存在する液体プロピレンが少ないと、ガス流中に再循環で戻るプロピレンが多くなることに対応するので、有利である。再循環されるプロピレンが多いことは、重合に利用できるプロピレンが多いことに対応する。したがって、反応器中の液体プロピレンの量を減少させることは、生成に利用可能なプロピレンの量を増大させ、それにより生産効率を向上させる。さらに、反応器中の液体プロピレンの減少または排除は、生成物回収を簡単にする。反応器中の液体プロピレンの存在が少ないほど(または存在しないと)、プロピレン含有ポリマーの単離における、液体プロピレンの損失が少ない(または、ない)。実際、反応器中に液体プロピレンがなければ、分離プロセスは完全に排除される。
【0149】
本開示の触媒組成物は、多様な生産性および作業性の利点をもたらす。重合方法における本開示の触媒組成物の提供は、1)出発原料の量を減少させるプロピレンガスの分圧低下を可能にして、2)流動床のかさ密度を増大させ、それが、3)反応器を通るガスの速度を減少させて、触媒の滞留時間を増大させ、かつ4)生成速度を増大させ、5)生産性を向上させ、一方では6)管理しやすい作業性を維持する。すべてこれらの利点は、反応器汚損のリスクなしに生じる。
【0150】
それに加えて、本開示の触媒組成物の提供は、過渡的な時間を通して連続操業を可能にし、反応器壁上に静的なまたは表面の乱れ(static or skin disorder)が形成されないので、反応器運転中に反応器スリーブ温度(reactor sleeve temperature)が変動しない結果を生じる。
【0151】
一実施形態において、方法は、キシレン可溶分含有率が約0.5重量%から約6重量%のポリプロピレンホモポリマーを形成する。それに加えて、プロピレンガスの増大した滞留時間は、3ppm未満または1ppm未満の残留チタンを含むプロピレン含有組成物の形成に寄与する。さらなる実施形態において、触媒組成物は、流動床温度が約100℃を超えたときに、重合反応を停止させる。
【0152】
一実施形態において、他の重合方法が提供される。方法は、プロピレンガス、エチレンガスおよび触媒組成物を、重合反応器に導入することを含む。触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および選択性制御剤(SCA)を含有する。SCAは、活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む。方法は、アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1(またはALAがC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、またはC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルであるときは、0.5:1から50:1)に維持すること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させることをさらに含む。
【0153】
一実施形態において、方法は、エチレン含有率が約4重量%を超える、または約4重量%から約10重量%エチレンのプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーを形成させることを含む。よりさらなる実施形態において、方法は、プロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む。
【0154】
従来のチーグラー・ナッタ触媒系により生成される、4%を超えるエチレン含有率を有するランダムプロピレン−エチレンコポリマー粒子は、むらのある、不規則な、またはそうでなければ「ポップコーン様の」形態を有する傾向がある。この問題に対する対応策は、重合中のプロピレンの分圧の低下を含む。本開示の触媒系の使用は、プロピレン分圧を下げることを必要とせずに、プロピレンとエチレンとのコポリマー粒子の「ポップコーン」形態を排除する。本開示の触媒組成物の使用により、球状のまたはほとんど球状のランダムプロピレン−エチレンコポリマー粒子が生じる。
【0155】
ここで本開示の実施例を示すが、例の目的であって限定するものではない。
【実施例】
【0156】
市販のSHAC(商標)320触媒を使用した。プロ触媒Aは、米国特許第5,093,415号に従って作製した。したがって、Mg(OEt)2は、TiCl4/MCB(モノクロロベンゼン)(20リットル/キログラムMg(OEt)2)とDIBP(ジイソブチルフタラート)(0.3リットル/キログラムMg(OEt)2)との50/50(vol/vol)混合物中にスラリー化した。混合物を106℃に60分間加熱した後、濾過した。生じた湿った塊を、50/50(容積による)TiCl4/MCB混合物(20リットル/キログラムMg(OEt)2)中に106℃で30分間スラリー化して濾過し、このプロセスをさらに1回繰り返した。生じた固形物をイソペンタンですすいでから、流通する温窒素で乾燥した。生じたプロ触媒は、2.5重量パーセントのTiを含有していた。
【0157】
並列重合反応器(SymyxによるPPR)中の液相重合
触媒粉末の触媒粒子サイズは、粉末を攪拌棒で30〜45分間攪拌することにより減少させた。
【0158】
すべてのSCAおよびALAは、Isopar E(商標)中で0.005Mに希釈した。例外としてS−191は、PPR中に注入する前にトルエン中に溶解した。TEA1は、Isopar E(商標)中で調製し、0.02または0.1Mいずれかの溶液として使用した。
【0159】
パージしたPPR反応器を50℃に加熱し、TEA1とIsopar E(商標)との組成の溶媒を各反応器に加え、続いてH2を加えて圧力を5psigで安定化させた。反応器を、指定された温度(67、100または115℃)に加熱した。プロピレンを加えて100psigにして、10分間安定化させた。各反応器にSCAまたはSCAおよびSLAと500μlのIsopar E(商標)チェーサー(chaser)との混合物を加え、続いて直ちに触媒(275μl)および500μlのIsopar E(商標)チェーサーを加えた。反応は、60分後または最大相対変換率110に達したときに、CO2でクエンチさせた。
【0160】
気相重合:
反応器は、直径35cmおよび高さ8.4mのパイロット規模のモデルである。反応器は、圧縮機および再循環ガス流によって流動化されているポリプロピレン粉末の流動床を含む。反応器温度制御は、インライン熱交換器によって再循環ガス流を冷却することにより達成される。
【0161】
触媒、TEALおよび選択性制御剤(SCA)または供与体は、反応器に連続的に供給される。供給は、アルミニウムのSCAに対する、およびTEALのチタンに対する特定のモル比を維持するように制御される。
【0162】
プロピレン、エチレン(エチレンランダムコポリマー生成の場合)、水素、および窒素を連続的に加えて、目標の全圧および水素のプロピレンに対する、およびエチレンのプロピレンに対するモル比(エチレンランダムコポリマー生成の場合)を維持する。プロピレンの全圧および分圧は、水素/プロピレンモル比と同じく表に掲載してある。
【0163】
樹脂生成物は、連続的に加湿窒素でパージしながら、流動床から受槽に移される。
【0164】
生成速度および反応器床重量に基づく平均滞留時間は、およそ2時間である。触媒の生産性は、ポリプロピレン生成物のチタン分析から決定される。異なった滞留時間で得られた生産性を比較するために、実験的に決定した触媒崩壊定数を使用して、結果を2時間の平均滞留時間に対して正規化した。
【0165】
標準的条件は、典型的には:
樹脂床高さ 32kg
プロピレン分圧 2.206kPa
再循環ガス速度 0.36m/s
反応器温度 65℃
反応器圧力 2.896kPa
である。
【0166】
本明細書において記載した本開示の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者には明らかであるということは理解されるべきである。そのような変化および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を減ずることなく為すことができる。それ故、そのような変更および改変は、添付された特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【0167】
米国特許実施の目的に対して、本明細書において参照したいかなる特許、特許出願または公開の内容も、それによりそれらの全体として、特に、構造、合成技法の開示および当技術分野における一般的知識に関して、本明細書中に参照として組み込まれる。本明細書において記載した本開示の好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者には明らかであるということは理解されるべきである。そのような変更および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を減ずることなく為すことができる。それ故、そのような変更および改変は、添付された特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数の遷移金属化合物と1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体とを含む、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;および
C4〜C30脂肪酸エステルのアルキルエステルとシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含み、かつアルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1である触媒組成物。
【請求項2】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が1:1から3:1である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
C4〜C30脂肪族エステルが、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−またはジミリスタート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
シラン組成物がジシクロペンチルジメトキシシランである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
シラン組成物が、ジメチルジメトキシシランと、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびn−プロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるメンバーとの混合物である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
SCAが、60〜97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび3〜40モルパーセントのシラン組成物を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
イソプロピルミリスタートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
ジ−n−ブチルセバカートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
C8〜C30脂肪酸のアルキルエステルを含み、かつ触媒組成物から形成されたポリマーが臭気を有さない、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
非エステル組成物とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項11】
非エステル組成物が、ジアルキルジエーテル化合物、ポリ(アルケングリコール)、およびポリ(アルケングリコール)のモノまたはジアルキルエーテルからなる群から選択される、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から50:1を含む、請求項11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
非エステル組成物が2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項14】
SCAが活性抑制剤をさらに含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項15】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1を含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項16】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
(i)第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランのシラン組成物と(ii)活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項17】
第1のアルコキシシランが、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、およびビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項18】
第2のアルコキシシランが、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項19】
活性抑制剤が、エチルp−エトキシベンゾアート、脂肪族C4〜30モノもしくはジカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、およびC2〜100(ポリ)グリコールもしくはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20モノもしくはポリカルボキシラート誘導体からなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項20】
活性抑制剤が、イソプロピルラウラート、イソプロピルミリスタート、およびイソプロピルステアラートからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項21】
第1のアルコキシシランがジメチルジメトキシシランであり、第2のアルコキシシランが、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、およびn−プロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項22】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1を含む、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項23】
活性抑制剤が、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、およびC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルからなる群から選択され、かつアルミニウムのSCAに対するモル比が0.5:1から50:1である、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項24】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
(i)アルコキシシランおよび非シラン組成物である選択性決定組成物と(ii)活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項25】
非シラン組成物が、ジエーテル化合物およびピペリジン化合物からなる群から選択される、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項26】
非シラン組成物が2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項27】
非シラン組成物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項28】
プロピレンと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを重合反応器に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること;ならびに
プロピレン含有ポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【請求項29】
C4〜C30脂肪族エステルとシラン組成物との混合物を含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項30】
非エステル組成物とシラン組成物とを含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項31】
(i)第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランと(ii)活性抑制剤との混合物を含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項32】
アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項33】
プロピレン含有ポリマーが約0.5重量%から約6.0重量%のキシレン可溶分含有率を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
重合反応器の温度が100℃を超えたときに、触媒組成物で重合方法を停止させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
プロピレンを含むガスと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを重合反応器中で反応させること;
かさ密度を有する、ポリマー粒子の流動床を形成させること;および
プロピレン分圧を低下させて、反応器汚損なしにかさ密度を増大させること
を含む重合方法。
【請求項36】
かさ密度を約10%から約100%増大させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
ガスを、流動床温度より1℃から10℃低い露点温度で反応器中に導入すること、および反応器中に存在する液体プロピレンの量を減少させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
触媒組成物の滞留時間を増大させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ポリマー粒子の生成速度を有し、減少中に生成速度を維持することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
約0.5重量%から約6重量%のキシレン可溶分含有率を有するポリプロピレンホモポリマーを形成させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
流動床温度が約100℃を超えたときに、反応を触媒組成物で停止させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
プロピレン含有ポリマーが3ppm未満の残留チタンを含有する、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
プロピレンガス、エチレンガスと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを、重合反応器中に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること;ならびに
プロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【請求項45】
約4重量%を超えるエチレン含有率を有する、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーを形成させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
反応器中のプロピレンガスの分圧を低下させること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
プロピレンガスの分圧が、形成中は低下されない、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
プロピレンと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、およびシラン組成物とC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、C4〜C30脂肪族のポリ(アルケングリコール)エステルからなる群から選択される活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを、重合反応器中に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から50:1に維持すること;ならびに
プロピレン含有ポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【請求項1】
1種または複数の遷移金属化合物と1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体とを含む、1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;および
C4〜C30脂肪酸エステルのアルキルエステルとシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含み、かつアルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1である触媒組成物。
【請求項2】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が1:1から3:1である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
C4〜C30脂肪族エステルが、イソプロピルミリスタート、ジ−n−ブチルセバカート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ−またはジミリスタート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
シラン組成物がジシクロペンチルジメトキシシランである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
シラン組成物が、ジメチルジメトキシシランと、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびn−プロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるメンバーとの混合物である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
SCAが、60〜97モルパーセントのC4〜C30脂肪族エステルおよび3〜40モルパーセントのシラン組成物を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
イソプロピルミリスタートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
ジ−n−ブチルセバカートおよびジシクロペンチルジメトキシシランを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
C8〜C30脂肪酸のアルキルエステルを含み、かつ触媒組成物から形成されたポリマーが臭気を有さない、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
非エステル組成物とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項11】
非エステル組成物が、ジアルキルジエーテル化合物、ポリ(アルケングリコール)、およびポリ(アルケングリコール)のモノまたはジアルキルエーテルからなる群から選択される、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から50:1を含む、請求項11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
非エステル組成物が2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項14】
SCAが活性抑制剤をさらに含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項15】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1を含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項16】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
(i)第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランのシラン組成物と(ii)活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項17】
第1のアルコキシシランが、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、およびビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項18】
第2のアルコキシシランが、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項19】
活性抑制剤が、エチルp−エトキシベンゾアート、脂肪族C4〜30モノもしくはジカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、およびC2〜100(ポリ)グリコールもしくはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20モノもしくはポリカルボキシラート誘導体からなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項20】
活性抑制剤が、イソプロピルラウラート、イソプロピルミリスタート、およびイソプロピルステアラートからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項21】
第1のアルコキシシランがジメチルジメトキシシランであり、第2のアルコキシシランが、ジシクロペンチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、およびn−プロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項22】
アルミニウムの合計SCAに対するモル比が0.5:1から4:1を含む、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項23】
活性抑制剤が、C4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、およびC4〜C30脂肪酸のポリ(アルケングリコール)エステルからなる群から選択され、かつアルミニウムのSCAに対するモル比が0.5:1から50:1である、請求項16に記載の触媒組成物。
【請求項24】
1種または複数の遷移金属化合物および1種または複数の芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体を含む1種または複数のチーグラー・ナッタプロ触媒組成物;
1種または複数のアルミニウム含有共触媒;ならびに
(i)アルコキシシランおよび非シラン組成物である選択性決定組成物と(ii)活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)
を含む触媒組成物。
【請求項25】
非シラン組成物が、ジエーテル化合物およびピペリジン化合物からなる群から選択される、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項26】
非シラン組成物が2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンである、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項27】
非シラン組成物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである、請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項28】
プロピレンと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを重合反応器に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること;ならびに
プロピレン含有ポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【請求項29】
C4〜C30脂肪族エステルとシラン組成物との混合物を含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項30】
非エステル組成物とシラン組成物とを含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項31】
(i)第1のアルコキシシランおよび第2のアルコキシシランと(ii)活性抑制剤との混合物を含むSCAを反応器中に導入することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項32】
アルミニウムのチタンに対する比を約45:1に維持することを含む、請求項28に記載の重合方法。
【請求項33】
プロピレン含有ポリマーが約0.5重量%から約6.0重量%のキシレン可溶分含有率を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
重合反応器の温度が100℃を超えたときに、触媒組成物で重合方法を停止させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
プロピレンを含むガスと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを重合反応器中で反応させること;
かさ密度を有する、ポリマー粒子の流動床を形成させること;および
プロピレン分圧を低下させて、反応器汚損なしにかさ密度を増大させること
を含む重合方法。
【請求項36】
かさ密度を約10%から約100%増大させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
ガスを、流動床温度より1℃から10℃低い露点温度で反応器中に導入すること、および反応器中に存在する液体プロピレンの量を減少させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
触媒組成物の滞留時間を増大させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
ポリマー粒子の生成速度を有し、減少中に生成速度を維持することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
約0.5重量%から約6重量%のキシレン可溶分含有率を有するポリプロピレンホモポリマーを形成させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
流動床温度が約100℃を超えたときに、反応を触媒組成物で停止させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
プロピレン含有ポリマーが3ppm未満の残留チタンを含有する、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
プロピレンガス、エチレンガスと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、および活性抑制剤とシラン組成物との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを、重合反応器中に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から4:1に維持すること;ならびに
プロピレンとエチレンとのコポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【請求項45】
約4重量%を超えるエチレン含有率を有する、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーを形成させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
反応器中のプロピレンガスの分圧を低下させること、およびプロピレンとエチレンとのコポリマーの球状粒子を形成させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
プロピレンガスの分圧が、形成中は低下されない、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
プロピレンと、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物、芳香族ジカルボン酸エステル内部電子供与体、アルミニウム含有共触媒、およびシラン組成物とC4〜C30脂肪酸のアルキルエステル、ジエーテル、C4〜C30脂肪族のポリ(アルケングリコール)エステルからなる群から選択される活性抑制剤との混合物を含む選択性制御剤(SCA)を含む触媒組成物とを、重合反応器中に導入すること;
アルミニウムの合計SCAに対する比を0.5:1から50:1に維持すること;ならびに
プロピレン含有ポリマーを形成させること
を含む重合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−537005(P2010−537005A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522032(P2010−522032)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073882
【国際公開番号】WO2009/029487
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073882
【国際公開番号】WO2009/029487
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
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