説明

制御放出組成物

ヘアシャンプー、シャワージェルのような製品、制汗剤又はデオドラントのような別のパーソナルケア製品、洗濯洗剤、硬質表面クリーナー又は研磨剤のような家庭用洗浄用製品、あるいは織物柔軟剤、エアフレッシュナー又は回転式乾燥機シート中の芳香物質、日焼け防止剤、ビタミン又は殺生剤のような活性物質の制御放出用組成物は、活性物質及びワックス状シクロポリシロキサンのブレンドを含む。シクロポリシロキサンは、好ましくは12以上の炭素数を有する炭化水素置換基で置換され、またアリール又はアラルキル置換基を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルケア製品(例えば、ヘアシャンプー並びに身体洗浄用の石鹸及びシャワージェル)中、他のパーソナルケア製品(例えば、制汗剤又はデオドラント)中、洗浄用組成物(例えば、洗濯洗剤、硬質表面クリーナー又は拭取り用布)中、他の家庭用ケア製品(研磨剤又はエアフレッシュナー)中、あるいは織物処理組成物(例えば、織物柔軟剤又は回転式乾燥機シート)中への取り込みに適した活性物質の制御放出のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御放出が望ましい活性物質の1つのタイプは、芳香物質組成物である。芳香物質は、洗剤及び他の洗浄用製品中に頻繁に取り込まれ、洗浄用製品の使用中に心地よい香りを提供し、また洗浄用製品中に存在する石鹸又は界面活性剤の固有の臭いを隠す。芳香物質は概して、様々な揮発性の芳香性化合物の複雑な混合物である。洗浄用組成物中での貯蔵時に、香料及び芳香物質は、組成物中の他の構成成分との相互作用及び/又は反応により変化し得る。芳香性化合物は、特に知覚鮮度(perceived freshness)と関連することが多いほとんどの揮発性の化合物は、それらの揮発性の性質に起因して、時間とともに消散する傾向にある。さらに、使用時、例えば洗濯洗剤による織物の洗浄中、同様に香料のほとんどが、洗浄サイクル中に水相中に失われる。芳香物質を含有する洗剤で洗濯した織物が芳香物質の心地よい香りを有するべきであるように、芳香物質は、洗浄用組成物中での貯蔵後も残存し、同様に洗浄プロセス後も残存し、且つ織物上に堆積すべきであることが望ましいと認識されている。
【0003】
さらに、例えば織物又は毛髪若しくは皮膚などの目標の表面に吸着されてしまうと、芳香物質は非常に急速に消散する傾向がある。したがって、一度、持続性遅延放出を織物上に適用することで香料及び芳香物質の貯蔵安定性、用途における送達、及び長く続く効果を改良する必要がある。
【0004】
芳香物質組成物を保護する様々な方法が提唱されている。国際公開第98/41607号パンフレットに記載されるように、香料はゼオライトなどの多孔質キャリヤと混合されてから、洗濯洗剤に組み入れられる前に、例えば糖誘導体などの保護バリヤでコーティングされてもよい。米国特許第4973422号明細書は、アクリル樹脂及びセルロースエステルを含むpH感受性コーティングで香料粒子を封入することを記載している。国際公開第98/28936号パンフレットは、疎水性ポリアクリレートから製造されたポリマービーズの水性スラリーと香料とを混合することを記載しており、ポリビニルアルコールをビーズ表面に吸着させて付着を改良することができる。国際公開第00/02981号パンフレットは、長期間にわたる活性成分の放出を獲得するために香料成分をアミンと反応させることを記載している。
【0005】
米国特許第6050129号明細書は、エアフレッシュナーで使用される芳香材料の拡散率、香気特性及び香気強度を試験する方法に関し、香料をカンデリラワックスやカルナウバワックスなどの疎水性ワックスと混合し、好ましくはカチオン界面活性剤と共に混合物を水中に乳化させて、シャンプー/コンディショナーなどのヘアケア組成物中で使用するための長く持続する芳香物質組成物を形成することを記載している。
【0006】
国際公開第01/25389号パンフレットは、芳香粒子を含む家庭内ケア製品について記載している。粒子は、芳香物質組成物と、融点が少なくとも10℃のシリコーンポリマーとを含む。シリコーンポリマー中の少なくとも20%のケイ素原子は、炭素数16以上の置換基を有する。
【0007】
米国特許第5160494号明細書は、香油及び揮発性アルキルメチルシロキサン(これは、短鎖線状アルキルメチルシロキサン又は環状アルキルメチルシロキサンであり得る)を含む香料組成物について記載している。
【0008】
特開平1−294612号公報は、化粧料にワックス状特性を付与するために環状ポリ(メチル16〜30Cアルキルシロキサン)ワックスを含有する口紅、ファンデーション、アイシャドウ又はサンスティックのようなメーキャップ化粧料について記載している。特開平7−41413号公報は、優れた化粧持ちを付与するために同じ環状ポリシロキサンワックス及びアルキル修飾したシリコーン油を含有するメーキャップ化粧料について記載している。これらの特許では、どの成分の制御放出についても示唆されていない。
【0009】
欧州公開第908174号公報は、疎水性芳香材料が中に溶解された融点が35〜120℃の疎水性ポリマー又はワックスの単相の固体溶液と、粒子の外表面に最も近い(proximate to)親水性界面活性剤とからなる楕円体の疎水性粒子を含む芳香物質組成物について記載している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物からの芳香物質、日焼け防止剤、ビタミン、薬物、殺生剤、害虫駆除剤、触媒及び冷却剤から選択される活性物質の放出を、洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物に活性物質を添加する前に、活性物質及びワックス状シリコーン材料をブレンドすることにより制御する方法は、上記ワックス状シリコーン材料が12以上の炭素数を有する炭化水素置換基で置換されているシクロポリシロキサンであることを特徴とする。
【0011】
活性物質の一例は、芳香物質組成物である。芳香物質組成物は、固体又は液体であってもよく、単一芳香性化合物又は天然香油であってもよく、あるいは芳香性化合物及び/又は天然油の混合物であってもよい。かかる天然油及び芳香性化合物の例は、国際公開第01/25389号パンフレットに記載されており、これらの天然油及び芳香性化合物は、特に家庭用途又はパーソナル用途用の洗浄用組成物での使用に、あるいはエアフレッシュナーに適したものである。芳香物質組成物は、スキンクリーム、シャンプー又は顔用クリームのようなパーソナルケア製品中に取り込むための香料であってもよく、あるいは例えば食品又は食品包装に適用されるべき風味又は香気化合物であってもよい。風味化合物、例えばストロベリーエッセンスのような果実フレーバーは、玩具又は他の物体に適用させることもできる。あるいは、芳香物質組成物は、芳香物質化合物の反応生成物のような化学的に保護された芳香物質化合物を含むことができる。
【0012】
制御放出組成物中に組み込むことができる活性物質の別のタイプは、日焼け防止剤組成物である。日焼け防止剤の例としては、約290〜320ナノメーター(UV−B領域)の紫外線を吸収するもの(例えば、パラアミノ安息香酸誘導体及びメトキシケイ皮酸オクチル又はp−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチルのようなケイ皮酸エステル)、及び320〜400ナノメーター(UV−A領域)の範囲の紫外線を吸収するもの(例えば、ベンゾフェノン及びブチルメトキシジベンゾイルメタン)が挙げられる。本発明において活性物質として使用され得る日焼け防止剤化学物質のさらなる例としては、アントラニル酸メンチル、サリチル酸ホモメンチル、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−アミノ安息香酸イソブチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、安息香酸エチルの4−モノ及び4−ビス(3−ヒドロキシ−プロピル)アミノ異性体、並びにp−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルが挙げられる。本発明は、ジベンゾイルメタンに由来する遮断剤の一群、より詳細には4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(これらは、吸収の高い固有の力を有効に有する)を含む親油性遮断剤に特に適用可能である。これらのジベンゾイルメタン誘導体は、UV−A活性な遮断剤として既知であり、特に欧州特許出願第0,114,607号公報に記載されている。4−(t−ブチル)−4’−メトキシジベンゾイルメタンは、商標「Parsol 1789」でGivaudanにより販売されている。本発明により好ましい別のジベンゾイルメタン誘導体は、「Eusolex 8020」という名でMerckにより販売されている4−イソプロピルジベンゾイルメタンである。液体親油性遮断剤であるオクトクリレンは、UV−B範囲でのその活性で知られており、商標「Uvinul N 539」でBASFにより販売されている。本発明で使用することができる別の親油性(又は脂溶性)遮断剤は、p−メチルベンジリデンショウノウであり、これは、UV−B吸収体として既知であり、商標「Eusolex 6300」でMerckにより販売されている。あるいは、日焼け防止剤は、親水性遮断剤、例えば欧州特許出願第678,292号公報に記載されるものの1つ又はそれ以上、特に商標Mexoryl SXで既知のベンゼン−1,4−[ジ(3−メチリデンショウノウ−10−スルホン酸)]のような3−ベンジリデン−2−ショウノウスルホン酸誘導体、あるいはベンゾフェノンのスルホン酸誘導体又は2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸(例えば、商標「Eusolex 232」でMerckにより販売されているもの)、ベンゼン−1,4−ジ(ベンズイミダゾール−2−イル−5−スルホン酸)又はベンゼン−1,4−ジ(ベンズオキサゾール−2−イル−5−スルホン酸)であり得る。
【0013】
制御放出組成物中に組み込むことができる活性物質の別のタイプは、ビタミン組成物である。ビタミンは、健康及び良い生活状態を維持するためにヒト(及び他の生物)用の食事の摂取部分でなくてはならない有機化合物の種類である。ビタミンによっては、局所塗布されると有益な効果を有するものもあり、この理由で各種パーソナルケア配合物中の好ましい成分であり、パーソナルケア配合物中では、ビタミンは、配合物を皮膚又は毛髪に塗布した後に徐々に放出されるべきであることが望ましい。
【0014】
ビタミンは、多種多様な有機化合物(例えば、アルコール、酸、ステロール及びキノン)を含む。ビタミンは、2つの溶解性群:脂溶性ビタミン及び水溶性ビタミンに分類することができる。パーソナルケア配合物中で有用な脂溶性ビタミンとしては、レチノール(ビタミA)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)、コレカルシフェロール(ビタミンD)、フィトナジオン(ビタミンK)及びトコフェロール(ビタミンE)が挙げられる。パーソナルケア配合物中で有用な水溶性ビタミンとしては、アスコルビン酸(ビタミンC)、チアミン(ビタミンB)、ナイアシン(ニコチン酸)、ナイアシンアミド(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、パントテン酸(ビタミンB)、ビオチン、葉酸、ピリドキシン(ビタミンB)及びシアノコバラミン(ビタミンB12)が挙げられる。本発明は、脂溶性ビタミンの制御放出を付与するのに特に有用であるが、幾つかの水溶性ビタミンの制御放出も付与することができる。制御放出を付与するためにワックス状シクロポリシロキサンとブレンドしたビタミンの例は、ビタミンA及びビタミンEである。
【0015】
パーソナルケア組成物中で使用されるビタミンの多くは、本質的に不安定であり、したがって保存安定性のパーソナルケア組成物の調製において困難性を提示する。ビタミンの不安定性は、通常それらの酸化に対する感受性に関連する。この理由で、ビタミンは、パーソナルケア配合物中でより安定な様々な誘導体に変換されることが多い。これらのビタミン誘導体は、安定性の改善のほかに、他の利点を提供する。ビタミン誘導体はある特定の種類のパーソナルケア配合物に、より用いられやすくなり得る。例えば、脂溶性ビタミンは、誘導体化されて、水性配合物へより取り込みやすい水溶性物質を生じることができる。レチノール及びトコフェロールは、スキンケア組成物中で特に有用な2つの脂溶性ビタミンであり、したがってパーソナルケア組成物中に使用されるこれらの2つのビタミンの多くの異なる誘導体が存在する。レチノール誘導体としては、パルミチン酸レチニル(パルミチン酸ビタミンA)、酢酸レチニル(酢酸ビタミンA)、リノール酸レチニル(リノール酸ビタミンA)、及びプロピオン酸レチニル(プロピオン酸ビタミンA)が挙げられる。トコフェロールの誘導体としては、酢酸トコフェロール(酢酸ビタミンE)、リノール酸トコフェロール(リノール酸ビタミンE)、コハク酸トコフェロール(コハク酸ビタミンE)、トコフェレス(tocophereth)−5、トコフェレス−10、トコフェレス−12、トコフェレス−18、トコフェレス−50(エトキシル化ビタミンE誘導体)、PPG−2トコフェレス−5、PPG−5トコフェレス−2、PPG−10トコフェレス−30、PPG−20トコフェレス−50、PPG−30トコフェレス−70、PPG−70トコフェレス−100(プロポキシル化ビタミンE及びエトキシル化ビタミンE)、及びトコフェリルリン酸ナトリウムが挙げられる。本発明は、これらのビタミン誘導体の制御放出を付与するのに使用することができる。パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビルグルコシド、テトライソパルミチン酸アスコルビル及びアスコルビン酸テトラヘキサデシルのようなアスコルビン酸(ビタミンC)の誘導体もまた、同じ化合物中に2つの異なるビタミンを取り込んでいるビタミン誘導体(例えば、マレイン酸アスコルビルトコフェリル、アルコルビルトコフェリルリン酸カリウム又はニコチン酸トコフェリル)と同様に、活性物質として使用することができる。
【0016】
制御放出組成物中に組み込むことができる活性物質のさらに別のタイプは、殺生剤である(例えば、細菌分解に対する組成物の長期にわたる保護を付与する、あるいは組成物を塗布した基剤への長期にわたる殺生効果を付与する)。活性物質はまた、害虫駆除剤、例えば昆虫駆除剤、又はげっ歯類用の駆除剤、又は任意の動物(ネコ又はイヌを含む)用の駆除剤であり得る。昆虫駆除剤パーソナルケア製品は、例えばクリーム、スティック又はスプレーの形態であってよく、パーソナルケア製品からの昆虫駆除剤の制御放出は、製品を皮膚に塗布した後に必要とされる。
【0017】
制御放出組成物中に組み込むことができる活性物質のさらに別のタイプは、触媒、例えばコーティング又は接着剤中の硬化用触媒であり、ここでは制御放出は、急速な硬化ではなく、綿密な硬化を付与するのに好適である。かかる触媒の一例は、エポキシ樹脂組成物用の硬化剤として使用される脂肪アミンである。
【0018】
本発明はまた、メントール又は国際公開第96/19119号パンフレットに記載される他の冷却剤のような冷却剤(皮膚に冷却感を与える物質)の制御放出を付与するのに使用することができる。冷却剤及びワックス状シクロポリシロキサン物質のブレンドは、組成物を皮膚に塗りつける場合に冷却剤の制御放出を付与するように、スキンケア組成物中に組み込むことができる。本発明はまた、経皮送達により薬物を投与するために皮膚に塗布される組成物からの薬物(医薬的に活性な物質)の制御放出を付与するのに使用することができる。
【0019】
本発明は、疎水性親油性活性物質がワックス状シクロポリシロキサンと容易に混和性であり、且つワックス状シクロポリシロキサンとのブレンドからあまり容易に放出されないため、疎水性親油性活性物質に特に適用可能であるが、本発明はまた、親水性活性物質の制御放出を付与するのにも効果的である。ただし、これらの親水性活性物質は、水中で高い溶解性を有する程の親水性を有するわけではない。
【0020】
本発明者等は、ワックス状シクロポリシロキサンが、線状ポリシロキサンワックスよりも活性物質と、特に香料化合物と混和性である傾向にあることを見出した。本発明者等はまた、ワックス状シクロポリシロキサンが、より長い持続効果、すなわち芳香物質又は日焼け防止剤又はビタミンのより持続性の放出を提供する傾向にあることを見出した。
【0021】
ワックス状シクロポリシロキサンは概して、12以上の炭素数を有する炭化水素置換基を含有する。ワックス状シクロポリシロキサンは好ましくは、メチルアルキルシロキサンユニット((CH3)(R’)SiO2/2)(式中、R’は、12以上、好ましくは16〜100の炭素数を有する長鎖アルキル基である)を有する。長鎖アルキル基R’は、アミノ、アミド、アルコール、アルコキシ又はエステル基のような極性置換基で任意に置換することができる。ワックス状シクロポリシロキサンのシロキサンユニットはすべて、かかるメチルアルキルシロキサンユニットであってもよく、あるいはワックス状シクロポリシロキサンは、ジメチルシロキサンユニット又は式((CH)(R”)SiO2/2)(式中、R”は、炭素数1〜11を有するアルキル基、例えばエチル、2−シクロヘキシルエチルのようなシクロアルキル基、ハロアルキル基又は芳香族基である)のユニットをさらに含有してもよい。上記シロキサンユニットのメチル基は、望ましい場合にはエチル又は別の低級アルキル基で置き換えることができる。好ましくは、ポリシロキサン中のケイ素原子の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%は、炭素数16〜100、最も好ましくは炭素数20〜45を有するアルキル置換基を有する。シクロポリシロキサンは、好ましくはシクロテトラシロキサン又はシクロペンタシロキサンあるいはそれらの混合物である。ワックス状シクロポリシロキサンの1つの好ましいタイプは、長鎖アルキル基のほかに、芳香族基、例えばSiに直接結合したアリール基(例えば、フェニル)、あるいはアルキレン結合によりシリコーンに結合されたフェニル又は置換フェニル基を含むアラルキル基を含有する。アラルキル基、すなわち式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、任意に置換される芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を含有するワックス状シクロポリシロキサン、例えば2−フェニルプロピル、ベンジル、2−フェニルエチル又は2−(t−ブチルフェニル)エチルは特に好ましい。かかるアラルキル基は、通常メチルアラルキルシロキサンユニットとして、例えばワックス状シクロポリシロキサンのシロキサンユニットの10〜80%、好ましくは20〜50%中に存在し得る。ワックス状シクロポリシロキサンは、好ましくは10〜200℃、最も好ましくは30〜80℃の範囲の融点を有する。
【0022】
ワックス状シクロポリシロキサンは一般的に、白金族金属化合物のようなヒドロシリル化触媒の存在下でのテトラメチルシクロテトラシロキサン又はペンタメチルシクロペンタシロキサンのようなSiH基を含有するシクロポリシロキサンと、式R’CH=CHを有する長鎖α−オレフィンとの反応により生産することができる。アラルキル及び/又はシクロアルキル基は、長鎖α−オレフィンの反応前、反応と同時に、あるいは反応後に、α−メチルスチレン、スチレン又はビニルシクロヘキサンのような化合物とシクロポリシロキサンとの反応により導入することができる。ワックス状シクロポリシロキサンは、幾つかの残留SiH基を含有してもよく、あるいは任意のかかる残留SiHを短鎖オレフィンと(例えば、エチル基を導入するためにはエテンと)反応させることができる。ワックス状シクロポリシロキサンは、SiH含有シリコーンへ順次又は同時にオレフィン(複数可)を付加することにより、あるいはSiHをオレフィン(複数可)へ付加することにより生産することができる。
【0023】
アラルキル基を含有するワックス状シクロポリシロキサンは、新規物質である。したがって、本発明は、融点10〜200℃のワックス(これは、シクロポリシロキサンである)を包含し、ここでシクロポリシロキサン中のケイ素原子の少なくとも20%が、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有し、シクロポリシロキサンのケイ素原子の10〜80%が、式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を有する。
【0024】
ワックス状シクロポリシロキサンは、液体シリコーン、例えばポリジオルガノシロキサン、分岐状液体ポリシロキサン、シリコーンポリエーテルコポリマー又はアミノポリシロキサンと混合させることができる。特に好ましい液体ポリシロキサンは、アルキル基(例えば、メチル)のほかに、アリール(例えば、フェニル)又はアラルキル(例えば、ベンジル、2−フェニルエチル又は2−フェニルプロピル)基を含有するものである。液体ポリジオルガノシロキサンは、線状又は環状であってもよく、テトラ(2−フェニルプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンのような環状シロキサンが好ましい場合がある。液体ポリシロキサンは、官能基を含有することができ、例えば液体ポリシロキサンは、線状ポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)中の末端シラノール基のような水酸基、ケイ素に結合されたメトキシ、エトキシ又はプロポキシのようなアルコキシ基、あるいはケイ素に結合された有機基において置換されたアミノ、アミド、アルコール又はアルコキシ基を含有することができる。ワックス状シクロポリシロキサン及び液体シリコーンのワックス状疎水性混合物は、好ましくは固体であり、それは好ましくは、10〜200℃の範囲の融点を有するが、あるいは粘性液体であってもよい。液体シリコーンは、特にワックス及び液体シリコーンのブレンドが10℃で固体である場合、例えば、ワックスの重量に基づいて最大100%以上(例えば、最大200%又は300%)で使用することができるが、液体シリコーンは使用する場合、ワックスの重量に基づいて、好ましくは1〜60%、最も好ましくは10〜30%で存在する。有機液体、例えば流動パラフィン又はナフテン系油は、それが活性物質及びワックス状シクロポリシロキサンのブレンドと適合性である場合に、代替的に又は付加的に使用することができる。
【0025】
活性物質及びワックス状シクロポリシロキサンのブレンドは、ワックス(例えば、線状ポリシロキサンワックス又はケイ素を含有しない有機物質)をさらに組み込むことができるが、ワックス状シクロポリシロキサンは好ましくは、ブレンドのワックス構成成分の少なくとも50重量%を構成する。適切な線状ポリシロキサンワックスは概して、上述のようなメチルアルキルシロキサンユニット((CH3)(R’)SiO2/2)を含有し、ワックス状シクロポリシロキサンに関して上記したようなアラルキル、アリール、アルキル又はシクロアルキル基のような他の置換基を含有することができる。
【0026】
本発明の1つの好ましい形態では、活性物質(例えば、芳香物質)の制御放出用の組成物は、水中油型エマルジョンの分散相を形成する。最も好ましくは、エマルジョンの連続相は、濃度少なくとも0.1モルの、水中でイオン解離が可能な塩の水溶液を含む。本発明者等は、連続相の高いイオン強度が、連続相とワックス状シクロポリシロキサンマトリックスとの間の分配係数を増大させ、その結果活性物質が、連続相に拡散するのではなくワックス相に留まる傾向にあることを見出した。
【0027】
連続相中に存在する塩は、例えば、アルカリ金属、アンモニウム又はアルカリ土類金属の塩でよい。塩化物、硫酸塩又はリン酸塩などの無機塩でもよいが、好ましくは有機塩、特にカルボン酸塩である。塩は、例えば酢酸ナトリウムなどの酢酸塩又はプロピオン酸塩のようなモノカルボン酸塩、若しくは、例えばコハク酸塩、フタル酸塩又はクエン酸塩などのジ又はポリカルボン酸塩でもよい。塩は高分子電解質でもよく、例えば、ポリアクリル酸塩又はポリメタクリル酸塩などのポリカルボン酸塩、若しくはアクリル酸又はメタクリル酸コポリマーの塩などの高分子酸の塩である。これらの高分子電解質塩の例は、「Sokolan」という商標で販売されている。あるいは、連続相中の塩は、ペンダント第4級アンモニウム基を有するポリマーなどのポリカチオンの塩でもよい。このようなカチオンポリマーの例は、「Merquat」という商標で販売されており、塩化ジメチルジアリルアンモニウム又は塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム基を含有する。塩は界面活性特性を有さないことが好ましく、一般に、塩は、極性基で置換されていない8個以上の炭素原子の鎖を有する有機基を含有してはならない。エマルジョンの連続相を形成する水溶液中の塩の濃度は、好ましくは少なくとも0.1M(モル)であり、より好ましくは少なくとも1M、最高5又は10Mまでである。高分子電解質の塩の場合、濃度は非高分子イオンの塩濃度として測定される。
【0028】
エマルジョンは、活性物質及びワックス状シクロポリシロキサン、並びに使用する場合液体シリコーンとのブレンドを融解すること、及び少なくとも1つの界面活性剤を用いて連続相中でブレンドを乳化させることにより利便性よく形成することができる。界面活性剤は、好ましくは上記ブレンドと不混和性である。界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤であり得るが、イオン性界面活性剤は、香料ワックスブレンドと不混和性である可能性がより高い。陽イオン性界面活性剤は、表面で(特に織物上へ)それらが吸着する傾向により特に好ましい。適切な陽イオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい陽イオン性界面活性剤は、少なくとも1つのエステル基を含有する第四級アンモニウム物質(「エステルクォート(esterquat)」である。エステル基は、好ましくは第四級アンモニウム分子中の連結基である。好ましいエステルクォートは、少なくとも1つのエステル結合を含有する1個、2個又は3個の高分子量基(例えば、炭素数12〜22)、及び3個、2個又は1個の低分子量アルキル基を含有する第四級アンモニウム部分を含む。かかるエステルクォート、例えば1,2−ビス(硬化タローオイルオキシ(tallowoyloxy))−3−トリメチルアンモニウム−プロパンクロリド及び/又は1−硬化タローオイルオキシ−2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウム−プロパンクロリド、ジ(タローオイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロリド、あるいはジ(タローオイルオキシエチル)メチルヒドロキシエチルメタンスルフェートは、米国特許第4137180号明細書に記載されている。本発明者等は、活性物質及びワックス状シクロポリシロキサンのエマルジョン中でのエステルクォートの使用は、例えば家庭洗濯で使用されるすすぎサイクル時の柔軟材において制御芳香物質送達を付与するのに必要とされるシリコーンワックスのレベルを低減させることができることを見出した。
【0029】
あるいは、エマルジョンは、活性物質が存在しない状態でワックス状シクロポリシロキサンを乳化させることによって製造することもできる。活性物質、例えば芳香物質組成物や日焼け防止剤組成物は後でエマルジョンに添加され、次にワックス状シクロポリシロキサンの融点よりも高温に加熱され、好ましくは、少なくとも10分、例えば30〜60分の間この温度で放置され、活性物質が疎水性ワックス状シクロポリシロキサンの液滴内に拡散するのを可能にする。
【0030】
活性物質の制御放出用組成物は、種々の形態で製造することができる。ある用途では、制御放出芳香物質組成物は、クリーニング組成物又は化粧料組成物と単に混合しただけのものであり得る。制御放出芳香物質組成物は、微粒状形態で製造されたものでもよく、これは、粉末洗剤などの固形クリーニング製品との混合に際し好ましい場合がある。上記のようなエマルジョンを、微粒状固体担体上に付着させることもでき、噴霧乾燥することもできる。あるいはまた、芳香物質組成物、ワックス状シクロポリシロキサン及び状況に応じて液状シリコーンの混合物を溶融し、溶融物を、微粒状固体担体上に付着させてもよく、噴霧乾燥してもよい。好適な固体担体の例としては、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、ゼオライト及び他のアルミノシリケート又はケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム、リン酸塩、例えば粉末状又は顆粒状のトリポリリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、顆粒状又は天然のでんぷん及びクレーが挙げられる。
【0031】
担体の粒子は、好ましくは、凝集した顆粒を製造する顆粒化プロセスでの処理中に混ぜ合わせられる。好ましい一プロセスでは、粒子は、鉛直方向(バーチカル)の連続ハイシェアミキサー(continuous high shear mixer)内で攪拌され、ここで、芳香物質の制御放出用組成物のエマルジョンが粒子上に噴霧される。顆粒化プロセスを改良する必要がある場合は、エマルジョンを、例えば水、溶融ポリエチレングリコール、又は高分子電解質の水溶液で希釈してもよい。このようなミキサーの一例は、Hosokawa SchugiによるFlexomixミキサーである。噴霧及び混合により、凝集された顆粒が製造される。例えば、ピンミキサー又はパドルミキサーなどの水平型ミキサー、プロシェアミキサー、ツインカウンター回転パドルミキサー、又は回転円筒型容器内の高剪断ミキシングアームを含むインテンシブミキサーなどの、別のミキサーを使用してもよい。あるいはまた、流動床コーティング手順を使用してもよい。有利なことには、混合による顆粒化プロセスの後に連続な流動床において冷却及び乾燥を実行することができる。
【0032】
連続相が高分子電解質塩の水溶液であるエマルジョンから生成した顆粒の場合、例えば高分子電解質とは反対の電荷のポリマーなどの材料によって、顆粒をポストコーティングしてもよい。エマルジョンの連続相中の塩がカチオン高分子電解質塩の場合、例えば、アニオン高分子電解質によって顆粒をポストコーティングすることができる。このようなポストコーティングは、後で顆粒の存在下で洗浄及びすすぎが行われる織物への香料の付着を改善することができる。
【0033】
本発明のプロセスにより、香料含量が15%重量まで、例えば8〜12重量%の顆粒を容易に製造することができる。本発明のエマルジョンは、30又は40%重量まで、又は50重量%もの香料含量を有し得る。
【0034】
芳香粉末クリーニング製品を製造するための本発明による別のプロセスでは、例えば、上記のエマルジョンを洗剤粉末組成物上に噴霧することによって、該エマルジョンを粉末クリーニング製品上に付着させ、続いて乾燥される。
【0035】
芳香液体クリーニング製品、例えば、液体洗濯洗剤、家庭用クリーニング製品、織物用柔軟剤、ヘアシャンプー又は身体洗浄用の石鹸若しくはシャワージェル、又はロールオン式若しくはスプレー式のデオドラントを製造するための本発明によるプロセスでは、上記のエマルジョンを、液体クリーニング製品中に分散するか、あるいは芳香物質組成物、ワックス状シクロポリシロキサン及び状況に応じて液状シリコーンの混合物を、液体クリーニング製品中で乳化させることができる。ゲル形態のクリーニング製品又はパーソナルケア製品、例えば、スティック状デオドラントを製造する場合、ゲル化する前に、上記のエマルジョンを、製品が液状であるときにその中に組み込ませることができ、又は、芳香物質組成物、ワックス状シクロポリシロキサン及び液状シリコーンの混合物を、製品が液状であるときにその中で乳化させることができる。上記エマルジョンを織物物質に含浸させることにより、回転式乾燥機シートを製造することができる。
【0036】
本発明の織物処理組成物は、革又は紙並びに天然又は合成繊維織物物質(例えば、織布、不織布又は編地)を含む繊維状物質を処理するための任意の組成物であってもよい。上述の回転式乾燥機シートのほかに、芳香物質の放出は、織物柔軟剤、織物及び衣類仕上げ用組成物、革仕上げ用組成物又は身体若しくは家庭用洗浄用途用のティッシュペーパーから制御され得る。メントール又はショウノウのような薬物(医薬的に活性な物質)の放出は、ハンカチーフ又はティッシュから制御され得る。
【0037】
あるいはまた、本発明の遅延放出芳香物質組成物は、基材への被覆剤として塗布し、表面からの香料の持続性放出を付与することができる。被覆剤は、例えば、上記のエマルジョンであり得る。
【0038】
活性物質が日焼け防止剤組成物である場合、制御放出組成物は、例えば上述のようにエマルジョンの形態で調製することができる。続いて、エマルジョンをスキンケア又は他の化粧料組成物へ、あるいは織物ケア組成物へ混合させることができる。例えば、親油性遮断剤(複数可)は、組成物の総重量の0.5〜30%、好ましくは0.5〜20%で、本発明によるスキンケア組成物中に存在することができる。親水性遮断剤(複数可)は、組成物の0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%で、スキンケア組成物中に存在することができる。スキンケア組成物は、コーティングされたか、あるいはコーティングされていない酸化金属の顔料、好ましくはナノ顔料(平均一次粒径:一般的に5nm〜100nm、好ましくは10〜50nm)(例えば、酸化チタン(非晶質、あるいははルチル形及び/又はアナタース(anatase)形で結晶化)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムのナノ顔料)をさらに含有することができ、これらはすべて、UV照射を物理的に阻止すること(反射及び/又は散乱)により作用する光防護剤である。酸化金属顔料のコーティング剤の例は、アルミナ及び/又はステアリン酸アルミニウム、及びシリコーンである。
【0039】
洗濯洗剤中にUV吸収日焼け防止剤を取り込むことの利点は、スイスのモントルーで2002年10月13〜17日の5th World Conference on Detergentsで紹介された“Sun Protection via Laundry Products”という表題のM.Schaumann他による論文に記載されている。織物のUV透過率は、かかる洗剤中で洗浄することにより低減される。日焼け防止剤は、織物上へ堆積されるように、洗浄用組成物中での貯蔵後も残存し、且つ洗浄サイクル中に水相中に失われるべきではないことが望ましい。日焼け防止剤を本発明によるワックス状シクロポリシロキサンとブレンドすることにより、織物上へ堆積される日焼け防止剤の比率が増加する。
【実施例】
【0040】
本発明は、以下の実施例により説明される。
(実施例1)
融点50℃のワックス状シクロポリシロキサン(WCP)は、50重量%のC26及びC28オレフィン並びに50%のα−メチルスチレンから構成されるオレフィン混合物を、テトラメチルシクロテトラシロキサン(環状SiH化合物)と反応させることにより調製した。ワックス状シクロポリシロキサンは、芳香物質化合物であるベンズアルデヒド、酢酸ベンジル又はシネオールと重量比1:1で混和性であった。ワックス状シクロポリシロキサンを融解させて、等重量のシネオールとブレンドした。続いて、重量損失評価のために、ブレンドを35℃でオーブン中に入れた。
【0041】
比較実験1aでは、線状シリコーンワックス(LSW)は、60ユニットの重合度を有する線状ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)を、同じオレフィン混合物と反応させることにより調製した。生産したワックスは、融点63℃を有し、ベンズアルデヒド又は酢酸ベンジルと重量比1:1では混和性でなかった。ワックスを融解させて、等重量のシネオールとブレンドし、続いて、重量損失評価のために、ブレンドを35℃でオーブン中に入れた。結果を以下の表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1は、ワックス状シクロポリシロキサンが線状シリコーンワックスよりもシネオールのより長期にわたる放出を付与したことを明らかに示している。
【0044】
(実施例2)
融点66℃のワックス状シクロポリシロキサン(WCP2)は、主にC26及びC28オレフィンから構成されるオレフィン混合物を、テトラメチルシクロテトラシロキサンと反応させることにより調製した。ワックス状シクロポリシロキサン20gを融解させて、シネオール5gとブレンドした。続いて、重量損失評価のために、ブレンドを35℃でオーブン中に入れ、その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
(実施例3)
シネオール8g、実施例2で調製したワックス状シクロポリシロキサン32g、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド基を含有する商標「Merquat 2001N」で販売されている陽イオン性ポリマー25g、Arquad16−29陽イオン性界面活性剤13.5g及びNaCl 6.0gを反応器に秤量し、70℃に加熱した。混合物を溶融したら、水50gを用いて混合物を乳化及び希釈して、溶解したNaCl及び「Merquat 2001N」由来の高いイオン強度を有する水性連続相中にシネオール及びワックス状シクロポリシロキサンのブレンドの分散相を有するエマルジョンを生産した。
【0047】
エマルジョン0.42gを、陽イオン性界面活性剤に基づく織物柔軟剤1.42gと予め混合し、続いて軟水350mLで希釈した。この溶液70mLを、フィルターとしてタオル片(タオル約3.00g)を装備したブフナー漏斗中に注いだ。次に、タオルを自然乾燥させ、香りの強度をパネル試験で主観的にモニタリングした。比較試験では、エマルジョンの代わりに純粋な香料0.025gを用いて、同じプロセスを行った。遊離の香料を用いた場合のサンプルの香りは、およそ1.5時間の間知覚可能であるのに対して、ワックス状シクロポリシロキサンとブレンドした香料を用いた場合の香りは、約24時間の間知覚可能である。
【0048】
(実施例4及び5)
実施例2のワックス状シクロポリシロキサンそれぞれ16g及び24gを溶解して、ベンズアルデヒド4gとブレンドした。
【0049】
(実施例6)
ベンズアルデヒド5gを、実施例2のワックス状シクロポリシロキサン10g及び商標「Dow Corning DC556」で販売されている液体フェニル(トリメチルシロキシ)シラン10gとブレンドした。
【0050】
(実施例7)
シリコーンワックス16gを溶解して、ベンズアルデヒド4g及びDC556液体シリコーン8gとブレンドした。
【0051】
(実施例8)
主にテトラ(2−フェニルプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンから構成される液体シリコーンは、α−メチルスチレンをテトラメチルシクロテトラシロキサンと反応させることにより調製した。実施例2のワックス状シクロポリシロキサン10gを融解させて、ベンズアルデヒド5g及び上述の調製した液体シリコーン10gとブレンドした。
【0052】
続いて、実施例4〜8のブレンドをそれぞれ、重量損失評価のために35℃でオーブン中に入れた。その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(実施例9)
サンケア組成物は、従来の混合技法を利用して以下の構成成分を組み合わせることにより調製した。
【0055】
【表4】

【0056】
ワックス状シクロポリシロキサン(3)を融解して、日焼け防止剤(4)とブレンドした。得られたブレンドを、成分(6)〜(10)を含む水相中で、ワックス状シクロポリシロキサンの融点よりも高温で乳化させた。Z−Cote(5)をシロキサン流体(1及び2)の混合物に添加して、均質になるまで混合した後、乱流混合しながらエマルジョンに添加した。殺生剤(11)を添加して、15分間混合を続けた。
【0057】
(実施例10)
サンケア組成物は、従来の混合技法を利用して以下の構成成分を組み合わせることにより調製した。
【0058】
【表5】

【0059】
乳化剤(1)を強攪拌下で水(2)に添加して、10分間混合した。成分(3)〜(5)を連続攪拌しながら添加して、水性混合物を80℃に加熱した。ワックス状シクロポリシロキサン(12)を80℃で融解して、日焼け防止剤(6〜8)とブレンドした。得られたブレンドを熱水性混合物中で乳化させた。希釈剤(9〜11)をエマルジョンに混合して、Silverson(商標)混合機で均質化した。
【0060】
(実施例11)
ハンド及びボディーローションは、以下の構成成分を組み合わせることにより調製した。
【0061】
【表6】

【0062】
グリセリン(8)、トリエタノールアミン(9)及び水(7)から構成される水相を組み合わせて、70℃に加熱した。ワックス状シクロポリシロキサン(5)及びパルミチン酸レチニル(6)を70℃で融解して、一緒に混合して、加熱した水相に添加した。Emery(登録商標)120(1)、Arlacel(登録商標)(2)、Lanette(登録商標)16NF(3)及びCarnation(登録商標)白鉱油(4)を融解して(〜70℃)、Lightnin(登録商標)混合機を用いて(〜1376rpm)混合した。ワックス状シクロポリシロキサン及びパルミチン酸レチニルを有する水相を成分1〜4に徐々に添加して、均質になるまで混合した。15分間混合を続けた後、連続混合しながらバッチを室温にまで冷却した。
【0063】
パルミチン酸レチニルの代わりにビタミンEを用いて、この手順を繰り返した。
【0064】
同様に、パルミチン酸レチニルに代わって、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中のビタミンA、ビタミンE及びビタミンCのビタミン混合物(RetiSTAR(登録商標)としてBASFにより販売されている)を用いて、上記手順を繰り返した。
【0065】
3つの実験すべてにおいて、ビタミンの放出は、ワックス状シクロポリシロキサンにより制御された。
【0066】
(実施例12)
実施例11で使用するワックスの代わりに、アリール置換基及びアルキル置換基を含有するワックス状シクロポリシロキサンを用いて、実施例11のプロセスを繰り返した。ビタミンの放出は、ワックス状シクロポリシロキサンにより制御された。
【0067】
(実施例13)
日焼け防止剤組成物を有する顔用保湿剤は、以下の構成成分を組み合わせることにより調製した。
【0068】
【表7】

【0069】
グリセリン(1)、Glydant(2)及び水(3)から構成される水相をLightening(登録商標)混合機を用いて(〜300rpm)ブレンドした。連続混合しながら成分(4)〜(5)を添加し、混合物を80℃に加熱した。ワックス状シクロポリシロキサン(6)及びパルミチン酸レチニル(7)を80℃で溶解して、成分(1〜5)とブレンドした。Sepigel(登録商標)305を混合物に添加して、エマルジョンの増粘に伴ってLightnin(登録商標)混合機の速度を増大した(〜1376rpm)。10分間混合を続けた後、連続混合しながらバッチを室温にまで冷却した。
【0070】
パルミチン酸レチニルの代わりにビタミンEを用いて、またパルミチン酸レチニルに代わって、ビタミン混合物(RetiSTAR)を用いて、この手順を繰り返した。
【0071】
3つの実験すべてにおいて、ビタミンの放出は、ワックス状シクロポリシロキサンにより制御された。これらの実験は、ワックス状シクロポリシロキサンによるメトキシケイ皮酸オクチルの放出を制御するように設計されていなかった。
【0072】
(実施例14)
シリコーンワックスは、オレフィン混合物(C26〜C45アルキル鎖長)をテトラメチルシクロテトラシロキサンと反応させて、環状ポリ(メチルアルキルシロキサン)ワックスを形成することにより調製した。
【0073】
水性増粘溶液は、脱塩水382.64g中にキサンタンガム(Keltrol RD(商標))3.51g及びヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250 LR(商標))9.66gを分散させること、及びソルビン酸0.69g、安息香酸1.36g及び10%硫酸溶液3.15gを添加することにより調製した。
【0074】
増粘溶液47g、Volpo(商標)S2 4.5g及びVolpo S20エトキシル化ステアリルアルコール非イオン性界面活性剤3.9g、塩化ナトリウム14.3g、Arquad16−29 26g、並びにシリコーンワックス57.4gを攪拌反応器中に入れて、80℃に加熱した。次に、高揮発性の香料ミックス14.42gを添加した。20分後、加熱を停止した。増粘溶液31g、続いて脱塩水104gを最終的に添加して、重量比1:4の香料とワックスのブレンドのエマルジョンを形成した。
【0075】
(実施例15)
増粘溶液62.6g、Volpo S2 6g、Volpo S20 5g、塩化ナトリウム18.6g、Arquad16−29 34.5g及び実施例14の環状ポリ(メチルアルキルシロキサン)ワックス84.5gを攪拌反応器中に入れて、80℃に加熱した。次に、高揮発性の香料ミックス11.08gを添加した。20分後、加熱を停止した。増粘溶液41g、続いて脱塩水137gを最終的に添加して、重量比1:7.6の香料とワックスのブレンドのエマルジョンを形成した。
【0076】
実施例14及び実施例15のエマルジョンをそれぞれ、柔軟剤中で香料3%に相当するレベルで、すすぎサイクルの織物柔軟剤中に組み込んだ。エマルジョンは、4枚のテリー織りのタオル及び5枚の枕カバーを入れたMiele 934前入れ式洗濯機で評価した。40℃の主要洗浄に関しては、洗剤粉30g及び水17リットルを使用した。柔軟剤は、すすぎで組み込まれた。自然乾燥後、タオルの香りを8日間追跡した。実施例15は、実験の8日間の間、実施例14よりも強力な香りを付与することがわかり、すすぎサイクルで使用したこの香料に関して、1/7.6の香料/ワックスが、1/4比よりも良好な芳香物質の放出の制御を提供することを実証した。
【0077】
(実施例16)
増粘溶液59.5g、エステルクォート陽イオン性界面活性剤(Tetranyl L1/90(商標))30g、Arquad16−29 33g、並びに実施例14の環状ポリ(メチルアルキルシロキサン)ワックス64gを攪拌反応器中に入れて、80℃に加熱して、水中油型エマルジョンを形成した。次に、高揮発性の香料ミックス15.8gをエマルジョンに添加した。20分後、加熱を停止した。増粘溶液37.5g、続いて脱塩水129gを最終的に添加した。生成物は、重量比1:4の香料とワックスのブレンドのエマルジョンであった。
【0078】
実施例15及び実施例16のエマルジョンを、実施例14及び実施例15と同じプロトコルに従って比較した。今回は、1/4の香料/ワックス比が、実施例15よりも持続性の香りを付与し、エステルクォートの使用に利点を示した。
【0079】
(実施例17)
シリコーンワックスは、オレフィン混合物(C26〜C45アルキル鎖長)をテトラメチルシクロテトラシロキサンと反応させて、環状ポリ(メチルアルキルシロキサン)ワックスを形成することにより調製した。
【0080】
水性増粘溶液は、脱塩水382.64g中にキサンタンガム(Keltrol RD(商標))3.51g及びヒドロキシエチルセルロース(Natrosol 250 LR(商標))9.66gを分散させること、及びソルビン酸0.69g、安息香酸1.36g及び10%硫酸溶液3.15gを添加することにより調製した。
【0081】
増粘溶液62.6g、Volpo S2 6g、Volpo S20 5g、塩化ナトリウム18.6g、Arquad16−29 34.5g及びシリコーンワックス84.5gを攪拌反応器中に入れて、80℃に加熱した。次に、高揮発性の香料ミックス11.29gを添加した。20分後、加熱を停止した。増粘溶液41.2g、続いて脱塩水137gを最終的に添加して、エマルジョンを形成した。
【0082】
エマルジョンを、以下の表8に示す成分(%)を含むシャワージェル中に組み込んだ。
【0083】
【表8】

【0084】
2つのシャワージェル:上述のように実施例17のエマルジョンを有するもの、又は遊離香料0.5%を含む対照を用いて、パネリストを処理した。彼等の前腕上の香料強度を1〜20のスケールで評価した(20が、最高の強度である)。結果を表9に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
同じ2つの組成をヘアシャンプーに適用した。パネリストには、毛髪上の香料強度を評価してもらった。結果を以下の表10に示す。
【0087】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物からの芳香物質、日焼け防止剤、ビタミン、薬物、殺生剤、害虫駆除剤、触媒及び冷却剤から選択される活性物質の放出を、該洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物に該活性物質を添加する前に、該活性物質及びワックス状シリコーン材料をブレンドすることにより制御する方法であって、
前記ワックス状シリコーン材料が、融点10〜200℃を有すること、
前記ワックス状シリコーン材料が、シクロポリシロキサンを含むこと(ここで、該シクロポリシロキサン中のケイ素原子の少なくとも20パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有する)、及び
前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の10〜80パーセントが、式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を有すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記シクロポリシロキサン中のケイ素原子の50〜80パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有し、前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の20〜50パーセントが、式X−Phを有するケイ素結合された置換基を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項3】
活性物質及びワックス状シリコーン物質のブレンドを含む、洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物からの芳香物質、日焼け防止剤、ビタミン、薬物、殺生剤、害虫駆除剤、触媒及び冷却剤から選択される活性物質の放出を制御するための組成物であって、
前記活性物質及びワックス状シリコーン物質のブレンドが、微粒状形態又はエマルジョン形態であること、
前記ワックス状シリコーン物質が、融点10〜200℃を有すること、
前記ワックス状シリコーン物質が、シクロポリシロキサンを含むこと(ここで、該シクロポリシロキサン中のケイ素原子の少なくとも20パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有する)、及び
前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の10〜80パーセントが、式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を有すること
を特徴とする組成物。
【請求項4】
前記シクロポリシロキサン中のケイ素原子の50〜80パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有し、前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の20〜50パーセントが、式X−Phを有するケイ素結合された置換基を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項5】
活性物質及びワックス状シクロポリシロキサンのブレンドが、水中油型エマルジョンの分散相として存在することを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項6】
前記水中油型エマルジョンの乳化用界面活性剤が、第四級アンモニウム分子中に少なくとも1つのエステル連結基を含有する第四級アンモニウム物質を含む陽イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項7】
活性物質及びワックス状シリコーン物質のブレンドを含む、洗浄用組成物、パーソナルケア製品、家庭用ケア製品又は織物処理組成物からの芳香物質、日焼け防止剤、ビタミン、薬物、殺生剤、害虫駆除剤、触媒及び冷却剤から選択される活性物質の放出を制御するための組成物であって、
前記活性物質及びワックス状シリコーン物質のブレンドが、エマルジョン形態であること、
前記ワックス状シリコーン物質が、融点10〜200℃を有すること、
前記ワックス状シリコーン物質が、シクロポリシロキサンを含むこと(ここで、該シクロポリシロキサン中のケイ素原子の少なくとも20パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有する)、
前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の10〜80パーセントが、式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を有すること、及び
前記エマルジョンの乳化用界面活性剤が、第四級アンモニウム分子中に少なくとも1つのエステル連結基を含有する第四級アンモニウム物質であること
を特徴とする組成物。
【請求項8】
前記シクロポリシロキサン中のケイ素原子の50〜80パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有し、前記シクロポリシロキサンのケイ素原子の20〜50パーセントが、式X−Phを有するケイ素結合された置換基を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項9】
融点10〜200℃を有するワックスを含むシクロポリシロキサンであって、
前記シクロポリシロキサンワックス中のケイ素原子の少なくとも20パーセントが、炭素数16〜100を含有するアルキル置換基を有し、
前記シクロポリシロキサンワックスのケイ素原子の10〜80パーセントが、式X−Ph(式中、Xは、炭素原子によりケイ素に結合された二価脂肪族有機基を示し、Phは、芳香族基を示す)を有するケイ素結合された置換基を有する
シクロポリシロキサン。
【請求項10】
前記シクロポリシロキサンワックス中のケイ素原子の50〜80パーセントが、炭素数16〜100を有するアルキル置換基を有し、前記シクロポリシロキサンワックスのケイ素原子の20〜50パーセントが、式X−Phを有するケイ素結合された置換基を有する、請求項25に記載のシクロポリキサン。

【公表番号】特表2006−524200(P2006−524200A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505149(P2006−505149)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004011
【国際公開番号】WO2004/084844
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(590001418)ダウ・コ−ニング・コ−ポレ−ション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【出願人】(505362241)ジヴォダン・ソシエテ・アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】GIVAUDAN S.A.
【住所又は居所原語表記】5 chemin de la Parfumerie, 1214 Vernier, Switzerland
【Fターム(参考)】