説明

制御方法及び制御装置

【課題】装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、回生抵抗によって消費される回生電力を低減すること。
【解決手段】モータからの回生電力の少なくとも一部を熱エネルギとして消費する回生抵抗を備えた回生回路に接続されたモータの制御方法において、前記モータを所定の速度制御パターンで駆動する駆動工程と、該駆動工程後に前記モータを停止する待機工程と、を反復する反復工程と、前記駆動工程中、前記回生抵抗への通電状況を、監視回路にて監視する監視工程と、前記監視工程の監視結果に応じて、前記回生電力の発生が低減するように前記速度制御パターンを変更し、かつ、前記速度制御パターンの変更に伴い、前記駆動工程の実行時間を長くすると共に、前記待機工程における待機時間を短くする変更工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータの制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインに多くのロボットを導入する場合、個々のロボットの消費電力が工場全体の消費電力に大きく影響する。したがって、ロボットの消費電力を削減又は抑制することが大きな課題となっている。ロボットでは一般に駆動源としてモータが使用されている。ロボットの消費電力の削減や抑制にはモータの制御が鍵となる。モータは加速時に電動機となり、減速時には発電機になって電力(回生電力)を発生する。そこで、モータ制御にあたって、回生電力を考慮することが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126776号公報
【特許文献2】特許第4575483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータを駆動する装置は、一般に、回生電力が帰還して蓄積されるコンデンサと、コンデンサの容量を超えた回生電力を熱エネルギとして消費する回生抵抗と、を備えている。回生抵抗により消費される回生電力はエネルギのロスとなる。その対策として、容量の大きなコンデンサを使用することや、回生電力を電源に戻すことが挙げられる。しかし、装置の大型化や、コストアップを招く。
【0005】
本発明の目的は、装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、回生抵抗によって消費される回生電力を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、モータからの回生電力の少なくとも一部を熱エネルギとして消費する回生抵抗を備えた回生回路に接続されたモータの制御方法において、前記モータを所定の速度制御パターンで駆動する駆動工程と、該駆動工程後に前記モータを停止する待機工程と、を反復する反復工程と、前記駆動工程中、前記回生抵抗への通電状況を、監視回路にて監視する監視工程と、前記監視工程の監視結果に応じて、前記回生電力の発生が低減するように前記速度制御パターンを変更し、かつ、前記速度制御パターンの変更に伴い、前記駆動工程の実行時間を長くすると共に、前記待機工程における待機時間を短くする変更工程と、を備えたことを特徴とする制御方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、モータからの回生電力の少なくとも一部を熱エネルギとして消費する回生抵抗を備えた回生回路に接続されたモータの制御装置において、前記モータを所定の速度制御パターンで駆動する駆動制御と、該駆動制御後に前記モータを停止する待機制御と、を反復する反復制御手段と、前記回生抵抗への通電状況を監視する監視手段と、前記監視手段の監視結果に応じて、前記回生電力の発生が低減するように前記速度制御パターンを変更し、かつ、前記速度制御パターンの変更に伴い、前記駆動制御の実行時間を長くすると共に、前記待機制御における待機時間を短くする変更手段と、を備えたことを特徴とする制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、回生抵抗によって消費される回生電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の制御方法を実施可能な制御システムのブロック図。
【図2】制御装置のブロック図。
【図3】監視回路のブロック図。
【図4】速度制御パターン、回生電圧、及び、検知信号の説明図。
【図5】速度制御パターン、駆動時間及び待機時間の変更例を示す図。
【図6】発生状況検出処理のフローチャート。
【図7】回生電力低減処理のフローチャート。
【図8】通常モードと省電力モードの選択に関する処理例を示す図。
【図9】速度制御パターン、駆動時間及び待機時間の変更例を示す図。
【図10】速度制御パターン、駆動時間及び待機時間の変更例を示す図。
【図11】運転モードからスリープモードへの切り替え例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
<制御システムの構成>
図1は本発明の制御方法を実施可能な制御システムAのブロック図である。制御システムAは、複数の制御装置1と、上位コンピュータ2と、電源3とを備える。制御装置1は、モータMを制御する。同図では、一つの制御装置1が一つのモータMを制御する構成であるが、一つの制御装置1が複数のモータMを制御する構成でもよい。モータMは例えば、スカラロボットの各軸の駆動源として用いられる。
【0011】
上位コンピュータ2は、例えば、生産ライン全体の管理を行うコンピュータである。上位コンピュータ2と、各制御装置1とは通信回線を介して相互に通信可能に接続されている。オペレータは上位コンピュータ2を操作することで、各制御装置1の制御動作を指示可能となっている。
【0012】
電源3は各モータMに電力を供給する。本実施形態の場合、モータMが交流モータである場合を想定しており、電源3は交流電源を想定している。
【0013】
<制御装置の構成>
図2は制御装置1のブロック図である。制御装置1はコントローラ10と、ドライバ20と、監視回路30と、回生抵抗40と、を備える。コントローラ10はドライバ20を介してモータMを制御する。一つの制御装置1で、複数のモータMを制御する場合、ドライバ20はモータM毎に設け、コントローラ10はこれらに共通に一つとすることができる。
【0014】
コントローラ10は、処理部11と、記憶部12と、インターフェース部13と、を備え、これらは互いに不図示のバスにより接続されている。処理部11は記憶部12に記憶されたプログラムを実行する。処理部11は例えばCPUである。記憶部12は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等である。インターフェース部13は、処理部11と、外部デバイス(上位コンピュータ2、監視回路30)と、の間に設けられ、例えば、通信インターフェースや、I/Oインターフェースである。
【0015】
ドライバ20は、AC/DCコンバータ21と、DC/ACインバータ22と、制御回路23と、を備える。AC/DCコンバータ21は電源3からの交流電流を直流電流に変換する。DC/ACインバータ22は、AC/DCコンバータ21からの直流電流を再び交流電流に変換してモータMに供給する。制御回路23は、コントローラ10の制御指令に基づいて、DC/ACインバータ22を制御する。これによりモータMの駆動が制御される。
【0016】
DC/ACインバータ22は、回生電力を帰還させるダイオード22aを含む。AC/DCコンバータ21と、DC/ACインバータ22との間には、コンデンサ24が並列に接続されている。コンデンサ24には回生電力が帰還して蓄積される。回生スイッチ回路25は例えばトランジスタやFETであり、コンデンサ24の放電、充電を切り替える。コンデンサ24が回生電力によって満充電された場合、回生スイッチ回路25は、通電状態に切り替えられる。これにより、コンデンサ24が放電し、回生電力は回生抵抗40により熱エネルギとして消費される。こうして、電源電圧の更なる上昇を回避する。また、このようにしてモータMからの回生電力の少なくとも一部が回生抵抗40によって熱エネルギとして消費される。回生抵抗40及びダイオード22aは回生回路を構成している。
【0017】
回生スイッチ回路25のON・OFFは指示回路26が行う。指示回路26は例えばコンパレータであり、基準電圧とコンデンサ24の電圧とを比較して、回生スイッチ回路25のON・OFFを行う。回生抵抗40とドライバ20との間には、監視回路30が設けられている。監視回路30は、回生抵抗40への通電状況を監視する。図3は監視回路30のブロック図である。
【0018】
監視回路30は、ドライバ20からの配線が接続される端子30a、30b、回生抵抗40が接続される端子30c、30d、及び、監視結果として検知信号PSを出力する端子30eを備える。
【0019】
端子30a−端子30c間には抵抗R2が設けられている。また、抵抗R1及び発光ダイオード31aが直列に接続され、更に、抵抗R1及び発光ダイオード31aが抵抗R2に並列に接続されている。フォトトランジスタ31bは発光ダイオード31aと共にフォトカプラ31を構成している。フォトトランジスタ31bは、そのコレクタが電源電圧に接続され、そのエミッタが抵抗R3を介してGNDに接続されている。エミッタは端子30eに接続されている。発光ダイオード31aの発光によりフォトトランジスタ31bがONとなり、検知信号PSがHighレベルになる。
【0020】
次に、回生抵抗40へ通電されている場合の検知信号PSの出力例について図4を参照して説明する。図4において、速度制御パターンVPはモータMの速度制御パターンを示している。同図の例では、速度制御パターンVPは、速度0→加速→定速→減速→速度0とモータMの速度を変化させた例を示している。
【0021】
この速度制御パターンVP中、減速制御中に回生電圧が大きくなり、図2に示したコンデンサ24が充電される。回生電圧が大きすぎると、コンデンサ24が満充電となり、指示回路26の働きにより、回生スイッチ回路25がONとなる。これにより、コンデンサ24が放電し、蓄積された電流が回生抵抗40に流れる。
【0022】
回生抵抗40に電流が流れると、発光ダイオード31aにも電流が流れる。その結果フォトトランジスタ31bがONとなり、検知信号PSはHighレベルになる。コンデンサ24が放電すると、指示回路26の働きにより、回生スイッチ回路25がOFFになる。これにより回生抵抗40に電流が流れなくなる。発光ダイオード31aにも電流が流れなくなる。その結果フォトトランジスタ31bがOFFとなり、検知信号PSはLowレベルになる。モータMの減速制御の間、コンデンサ24が再び満充電となると、同様にして検知信号PSはHighレベルになる。こうして、検知信号PSは、回生電力の発生量が大きい間、パルス信号となる。
【0023】
検知信号PSがパルス信号として出力されている間は、回生抵抗40が通電状態であるとみなすことができる。検知信号PSがパルス信号として出力されている時間T(図4)、回生抵抗40に印加される電圧をV、回生抵抗40の抵抗値をRとすると、熱エネルギとして消費されているエネルギの目安となる指標値Eを下式で表すことができる。
E=(V/R)2×R×T
電圧Vと、抵抗値Rは既知のデータであるので、時間Tを計測することで、指標値Eを算出することができる。
【0024】
<回生電力の低減>
指標値Eが一定の値に達した場合、熱エネルギとして消費されている無駄なエネルギが多い、と判断することができる。この場合、以下の手法で、回生電力を低減して熱エネルギとして消費されるエネルギを削減する。図5はその説明図である。
【0025】
モータMの1サイクルの動作は、モータMの駆動と、モータMの停止(待機)と、の組合せになる。図5の例では、説明を簡単にするため、1サイクル中に、モータMの駆動時間(駆動工程)DPと、待機時間(待機工程)WPと、を1回ずつ設定した例を示している。駆動時間DPはモータMを所定の速度制御パターンで駆動制御する、その実行時間であり、待機時間WPは駆動時間DP後にモータMを停止している時間である。
【0026】
生産ラインが完全に自動化されている場合、駆動時間DP、待機時間WPは、予め定めた固定の時間となり、各サイクルが規則的かつ周期的に反復される(反復工程)。
【0027】
モータMを急激に減速すると、回生電力も大きくなる。よって、モータMを緩やかに減速することで回生電力の発生を低減できる。そのためには、減速制御時の減速度をより小さい減速度に変更するか、最高速度(定速制御時の速度)をより低い速度に変更するか、或いは、これらの双方の変更を行えばよい。
【0028】
図5の上側の図は、変更前の速度制御パターンVPの例を示しており、下側の図は変更後の速度制御パターンVP’の例を示している。速度制御パターンVP’は速度制御パターンVPよりも、最高速度が低くされ、また、減速度も小さくされている。このように速度制御パターンを変更することによって、装置の大型化やコストアップを抑制しつつ、回生抵抗によって消費される回生電力を低減することができる。
【0029】
速度制御パターンVPを速度制御パターンVP’に変更する際には、変更の前後でモータMの回転量が同じである必要がある。つまり、図5の速度制御パターンVPで囲まれる面積S(速度の積分値)と、速度制御パターンVP’で囲まれる面積S’が同じであればよい。
【0030】
速度制御パターンを変更すると、駆動時間DPが長くなる。そうすると、1サイクルに必要な時間が長くなり、生産効率が落ちることになる。そこで、本実施形態では、駆動時間DPの延長分に応じて待機時間WPを短くしている。図5の例では、特に、1サイクルの時間が変わらないように待機時間WPを短くしている。なお、生産効率が厳格でない場合は1サイクルの時間が長くなってもよい。例えば、図9の例では、待機時間を短くしているものの、1サイクルの時間は長くなっている。
【0031】
いずれにしても、このようにすることで、生産効率を少なくとも大きく落とさずに、回生抵抗によって消費される回生電力を低減することができる。
【0032】
図5では、1つのモータMの速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を変更する場合について説明したが、複数のモータMが同期的に駆動される場合にも、同様に考えることができる。例えば、スカラロボットのように複数軸(複数のモータ)が協調して動作する場合、各モータは、一般に、同時に駆動を開始し、同時に停止するので、全ての軸(全てのモータ)について、均等の割合で速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を変更すればよい。この場合、複数のモータのうち、いずれか一つのモータについて、熱エネルギとして消費されている無駄なエネルギが多い、と判断した場合には、全てのモータについて、速度制御パターン等を変更することになる。
【0033】
<コントローラの処理例>
次に、コントローラ10の処理例について説明する。上述した速度制御パターン等を変更する前提として、熱エネルギとして消費されている無駄なエネルギの発生状況の確認が必要となる。そこで、この無駄なエネルギの発生状況を検出する処理について図6を参照して説明する。
【0034】
図6の処理のプログラムは記憶部12に記憶され、処理部11がこれを読み出して実行することができる。また、図6の処理は、モータMを実際の生産工程において駆動している状況で、或いは、試験的に駆動している状況で行うことができる。その際、コントローラ10は、予め定めた速度制御パターン、駆動時間及び待機時間により、モータMが動作するよう、ドライバ20に制御指令を出力する。
【0035】
S1では監視回路30から検知信号PSが出力されているか否かを判定する。該当する場合はS2へ進み、該当しない場合は検知信号PSが出力されるまで、そのチェックを続ける。S2では検知信号PSの出力時間(図4の時間T)を計時する。検知信号PSの出力が無くなると、計時を終了する。S3ではS2での計時結果を上位コンピュータ2へ送信する。以上により一単位の処理が終了する。
【0036】
上位コンピュータ2では、コントローラ10から送信された時間Tから、例えば、上述した指標値Eを算出する。算出した指標値Eは、制御装置1或いはモータMと対応づけて保存する。なお、指標値Eをコントローラ10が算出するようにしてもよい。
【0037】
上位コンピュータ2のオペレータは、指標値Eや時間Tを上位コンピュータ2に表示させ、速度制御パターン等の変更を行うか否かを判断する。上位コンピュータ2のオペレータが変更を行うと判断した場合、オペレータは変更指示を上位コンピュータ2を介して制御装置1に送信することになる。
【0038】
なお、この判断は上位コンピュータ2やコントローラ10が自動的に行ってもよい。その場合、指標値Eや時間Tの許容値を予め定めておき、上位コンピュータ2やコントローラ10が、指標値Eや時間Tと、それらの許容値とを比較して、判断すればよい。
【0039】
次に、速度制御パターン等の変更を行うと判断された場合のコントローラ10の処理例について図7を参照して説明する。図7の回生電力低減処理も、モータMを実際の生産工程において駆動している状況で、或いは、試験的に駆動している状況で行うことができる。その際、コントローラ10は、予め定めた速度制御パターン、駆動時間及び待機時間により、モータMが動作するよう、ドライバ20に制御指令を出力する。
【0040】
S11では、上位コンピュータ2から速度制御パターン等の変更指示を受信したか否かを判定する。該当する場合はS12へ進み、該当しない場合は一単位の処理を終了する。S12では、現在の速度制御パターンを、回生電力の発生がより少ない速度制御パターンに変更する。変更方法については、上記のとおり、減速制御時の減速度をより小さい減速度に変更するか、最高速度(定速制御時の速度)をより低い速度に変更するか、或いは、これらの双方の変更を行えばよい。変更度合いは、例えば、現在の最高速度や減速度の数%とすることができる。
【0041】
S13では、S12で変更した速度制御パターンに応じて駆動時間及び待機時間を変更する。ここでは、まず、S12で変更した速度制御パターンによって駆動時間が決定する。そして、図5の例のように1サイクルの時間を変更しない場合は、以下の式から変更後の待機時間が決まる。
変更後の待機時間=1サイクルの時間−変更後の駆動時間
S14ではS13で変更した待機時間が予め定めた閾値(最小待機時間)を超えているか否かを判定する。該当する場合はS15へ進み、該当しない場合はS19へ進む。待機時間が0になってしまったり、著しく短くなる事態を回避するための処理である。
【0042】
S15では、変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間で、モータMの運転を開始する。S16では監視回路30の出力信号をチェックして回生抵抗40の通電状況を監視する。少なくとも1サイクルの駆動時間の間、監視回路30の出力信号をチェックする。
【0043】
S17では、S16の監視の結果、検知信号PSを受信した場合はS12へ戻り、同様の処理を反復する。つまり、速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を段階的に変更していく。S16の監視の結果、検知信号PSを受信しなかった場合はS18へ進む。処理の反復は、S14で待機時間が予め定めた閾値(最小待機時間)を超えていないと判定されるか、S17で検知信号PSを受信しなかったと判定されると終了する(反復終了条件の充足)。
【0044】
なお、S17の判断では、上述した指標値Eを算出し、検知信号PSを受信した場合であっても、指標値Eが予め定めた閾値を超えた場合はS12に戻り、超えなかった場合は、S18へ進むようにしてもよい。このようにS17では検知信号PSに基づいて判断するのであれば、その具体的な判断手法は様々な判断手法が採用できる。
【0045】
S18では、変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を記憶部12に保存して、変更内容を確定する。記憶部12には、S12、S13の処理を複数回行った場合は最後に変更した速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を保存する。なお、本実施形態では、記憶部12には、当初の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間と、変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間との双方を保存し、いずれかを選択的に利用する。
【0046】
S19では、変更直前の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を記憶部12に保存して、変更内容を確定する。例えば、最初の速度制御パターンVP0を、S12の処理を繰り返すことによって、VP1→VP2→VP3と変更してきた場合を想定する。速度制御パターンVP3について、S13で待機時間を変更した結果、S14で最小待機時間を超えている、と判定された場合、S19では速度制御パターンVP2と、これに対応する駆動時間及び待機時間を保存する。仮に、最初の速度制御パターンVP0を速度制御パターンVP1に変更したときに、S14で最小待機時間を超えている、と判定された場合は、最初の速度制御パターンVP0を保存することになる。
【0047】
S19で保存した速度制御パターン等では、熱エネルギとして消費されている無駄なエネルギを十分に低減できない場合がある。しかし、少なくとも、最初の速度制御パターン(VP0)等よりは低減されるため、必要に応じて、S19で保存した変更後の速度制御パターン等を利用する。
【0048】
S20では、以上の処理の結果を上位コンピュータ2に送信する。例えば、変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を設定したことを上位コンピュータ2に通知する。以上により一単位の処理が終了する。
【0049】
<モード選択>
図7の回生電力低減処理により、速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を変更した場合、変更後の内容でモータMを運転することで、生産効率を少なくとも大きく落とさずに、回生抵抗によって消費される回生電力を低減することができる。
【0050】
しかし、生産状況によっては、最初の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間でモータMを駆動したい場合もあり得る。例えば、図7の回生電力低減処理において、図9の例のように1サイクルの時間が長くなることを許容して、速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を変更した場合、生産効率を優先すると、最初の速度制御パターン等の方が有利となる。
【0051】
そこで、上位コンピュータ2のオペレータが、いずれの速度制御パターン等を採用するかどうかを選択可能とすることもできる。図8はその場合の上位コンピュータ2及び制御装置1(コントローラ10)の処理例を示す。ここでは、最初の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を利用する場合を通常モードと呼び、変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を利用する場合を省電力モードと呼ぶ。
【0052】
S31では、上位コンピュータ2においてオペレータによるモード選択を受け付ける。オペレータは、例えば、上位コンピュータ2のディスプレイに表示された内容を見て、マウス等の入力装置でモードを選択する。S32ではS31においてオペレータが選択したモードの選択結果をコントローラ10へ送信する。
【0053】
S41ではコントローラ10の処理部11が、上位コンピュータ2から受信したモードの選択結果に基づいて、選択モードを判別する。選択モードが通常モードであった場合はS42で変更前の、最初の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を記憶部12から読みだす。選択モードが省電力モードであった場合はS43で変更後の速度制御パターン、駆動時間及び待機時間を記憶部12から読みだす。S44ではS42又はS43で読みだした内容で、モータMの運転を開始する。以上により一単位の処理が終了する。
【0054】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、生産ラインが完全に自動化されている場合を想定した。そして、駆動時間及び待機時間が予め定めた固定の時間となり、各サイクルが規則的かつ周期的に繰り返される場合を想定した。しかし、生産ライン中に人間が作業を行う工程が含まれる場合のように、待機時間が不規則になり、各サイクルが不規則的に反復される。このような場合に、省電力モードでモータMを運転する方法について図10を参照して説明する。
【0055】
同図の例では、Nサイクル、N+1サイクル、N+2サイクルにおいて、それぞれ待機時間がWP1、WP2、WP3となっている(WP1>WP3>WP2)。本実施形態の場合、これらの待機時間は、事前に上位コンピュータ2からコントローラ10へ通知される場合を想定している。上位コンピュータ2は、前工程及び/又は後工程の状況を監視し、各待機時間を決定する。そして、上位コンピュータ2は、待機時間WP1は時間T1に、待機時間WP2は時間T2に、待機時間WP3は時間T3に、それぞれ事前に通知する。
【0056】
通常モードの場合、速度制御パターンVP、駆動時間DPを利用し、待機時間は上位コンピュータ2から通知された時間とする。省電力モードの場合、利用可能な範囲で、速度制御パターンVP’、駆動時間DP’を利用する。速度制御パターンVP’、駆動時間DP’は、上述した図7の回生電力低減処理と同様の処理によって事前設定される。
【0057】
省電力モードの場合、上位コンピュータ2から事前に通知される待機時間に応じて、速度制御パターンVP’、駆動時間DP’か、速度制御パターンVP、駆動時間DPを利用する。例えば、時間T1において、上位コンピュータ2から、Nサイクルの待機時間WP1が通知される。このとき、速度制御パターンVP’、駆動時間DP’を採用した場合に、Nサイクルの予定時間(駆動時間DP+待機時間WP1)内に、省電力モードでの制御を完了できるかを判定する。
【0058】
図10の例の場合、駆動時間DP+待機時間WP1=駆動時間DP’+待機時間WP1’とすることで、Nサイクルの予定時間内に、省電力モードでの制御を完了できる。よって、省電力モードでモータMを運転する。
【0059】
次に、時間T2において、上位コンピュータ2から、N+1サイクルの待機時間WP2が通知される。このとき、速度制御パターンVP’、駆動時間DP’を採用した場合に、N+1サイクルの予定時間(駆動時間DP+待機時間WP2)内に、省電力モードでの制御を完了できるかを判定する。
【0060】
図10の例の場合、駆動時間DP+待機時間WP2<駆動時間DP’であるので、N+1サイクルの予定時間内に省電力モードでの制御を完了できる場合はない。よって、通常モードでモータMを運転する。
【0061】
次に、時間T3において、上位コンピュータ2から、N+2サイクルの待機時間WP3が通知される。このとき、速度制御パターンVP’、駆動時間DP’を採用した場合に、N+2サイクルの予定時間(駆動時間DP+待機時間WP3)内に、省電力モードでの制御を完了できるかを判定する。
【0062】
図10の例の場合、N+2サイクルの予定時間内に、省電力モードでの制御を完了できる(駆動時間DP+待機時間WP3=駆動時間DP’+待機時間WP3’)。よって、省電力モードでモータMを運転する。
【0063】
このように、サイクル毎に省電力モードでモータMを運転できるかどうかを判定し、運転できる場合は省電力モードで、運転できない場合は通常モードで、モータMを運転することで、待機時間が不規則な場合であっても、許容される範囲で、省電力モードでの運転が可能となる。
【0064】
<第3実施形態>
生産ラインの途中の工程において障害が発生し、待機状態が継続する場合がある。このような場合、モータMの運転を中断して電力消費を削減することが望ましい。そこで、運転モードとスリープモードとの間でモータMの運転状態を切り替えることもできる。運転モードは、上記のサイクルを反復してモータMを運転するモードである。スリープモードは、運転モードを中段してモータMの駆動制御をオフにするモードである。スリープモードでは、運転再開に支障の無い範囲で、できるだけ電力消費がなくなるようにする。
【0065】
運転モードからスリープモードへの切り替えは、上位コンピュータ2からコントローラ10への通知を基準として行うことができるが、コントローラ10の判断でスリープモードへ切り替えることもできる。
【0066】
図11はその一例を示し、上記第2実施形態の場合のように、待機時間が不規則になる場合を想定している。同図の例では、2回目の駆動時間DPののち、待機時間が開始されて予め定めた所定時間が経過している。上位コンピュータ2から通知が無くても、この所定時間の経過により、コントローラ10は通常モードからスリープモードへ、自動的に切り替えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからの回生電力の少なくとも一部を熱エネルギとして消費する回生抵抗を備えた回生回路に接続されたモータの制御方法において、
前記モータを所定の速度制御パターンで駆動する駆動工程と、該駆動工程後に前記モータを停止する待機工程と、を反復する反復工程と、
前記駆動工程中、前記回生抵抗への通電状況を、監視回路にて監視する監視工程と、
前記監視工程の監視結果に応じて、前記回生電力の発生が低減するように前記速度制御パターンを変更し、かつ、前記速度制御パターンの変更に伴い、前記駆動工程の実行時間を長くすると共に、前記待機工程における待機時間を短くする変更工程と、
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記監視回路は、前記回生抵抗に通電中であることを示すパルス信号を出力し、前記変更工程では、前記パルス信号に基づき前記速度制御パターンの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記待機工程における待機時間が予め定められた所定時間を超えたとき、前記反復工程を含む運転モードを中断し、前記モータの駆動制御をオフにするスリープモードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記変更工程では、
任意の前記速度制御パターンを、最高速度及び減速度のうちの少なくともいずれか一方がより低い最高速度及び/又はより小さい減速度である他の速度制御パターンに変更することを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項5】
前記監視工程と前記変更工程とを、予め定めた反復終了条件を満たすまで繰り返し行い、
前記変更工程では、段階的に前記速度制御パターンを変更し、
前記反復終了条件は、
前記監視工程において前記回生抵抗への通電が確認されないこと、又は、前記待機時間が予め定めた閾値以下であること、を特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記変更工程で変更した前記他の速度制御パターン及び前記待機時間を保存する保存工程と、
前記変更工程で変更する前の任意の前記速度制御パターンで前記モータの制御を行う通常モードと、前記保存工程で保存した前記他の速度制御パターン及び前記待機時間により前記モータの制御を行い、前記回生電力の発生を低減させる省電力モードとの間のいずれかを選択するモード選択工程と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項7】
モータからの回生電力の少なくとも一部を熱エネルギとして消費する回生抵抗を備えた回生回路に接続されたモータの制御装置において、
前記モータを所定の速度制御パターンで駆動する駆動制御と、該駆動制御後に前記モータを停止する待機制御と、を反復する反復制御手段と、
前記回生抵抗への通電状況を監視する監視手段と、
前記監視手段の監視結果に応じて、前記回生電力の発生が低減するように前記速度制御パターンを変更し、かつ、前記速度制御パターンの変更に伴い、前記駆動制御の実行時間を長くすると共に、前記待機制御における待機時間を短くする変更手段と、
を備えたことを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−102617(P2013−102617A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244964(P2011−244964)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】