説明

制御装置、ハイブリッド自動車および制御方法、並びにプログラム

【課題】ドライバビリティを悪化させることなく、クーラのコンプレッサのON/OFF制御を行うこと。
【解決手段】エンジン10と電動機13と電動機13に電力を供給するバッテリ15とを有し、エンジン10もしくは電動機13により走行可能であり、またはエンジン10と電動機13とが協働して走行可能であり、エンジン10のトルクによって動作するクーラのコンプレッサ21を有し、少なくとも減速中に、電動機13により回生発電が可能であるハイブリッド自動車1のハイブリッドECU18において、クーラのスイッチがON状態であり、バッテリ15のSOCが所定値以下であるときに、コンプレッサ21がOFF状態になったときには、電動機13がバッテリ15を充電するための回生発電を実施するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、ハイブリッド自動車および制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車のクーラは、エンジンのトルクの一部を利用して冷媒を圧縮するコンプレッサを動作させている(たとえば特許文献1参照)。このコンプレッサは、クーラが備え付けられている室内の気温を、サーモスタットが検知することによって、ON/OFF制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−34134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、自動車のクーラは、エンジンのトルクの一部を利用して冷媒を圧縮するコンプレッサを動作させているので、コンプレッサが動作すると、それまで走行のために供給されていたエンジンのトルクが減少する。
【0005】
たとえば自動車が、エンジンのトルクが上限に近い状態で急な上り坂を走行しているときに、それまで停止していたコンプレッサが動作を開始すると、コンプレッサの動作のためにエンジンのトルクの一部が費やされる。このため、自動車の運転者は、失速したようなドライバビリティを感じることになる。
【0006】
特に、コンプレッサのON/OFF制御は、運転者の意思とは無関係に、室内の温度の如何に応じて行われる。このため、運転者は、予期しない失速感を覚えることになり、ドライバビリティの観点からは好ましくない。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、ドライバビリティを悪化させることなく、クーラのコンプレッサのON/OFF制御を行うことができる制御装置、ハイブリッド自動車および制御方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点は、制御装置としての観点である。本発明の制御装置は、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御装置において、クーラのスイッチがON状態であり、バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、コンプレッサがOFF状態になったときには、電動機がバッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御手段を有するものである。
【0009】
本発明の他の観点は、ハイブリッド自動車としての観点である。本発明のハイブリッド自動車は、本発明の制御装置を有するものである。
【0010】
本発明のさらに他の観点は、制御方法としての観点である。本発明の制御方法は、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御方法において、クーラのスイッチがON状態であり、バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、コンプレッサがOFF状態になったときには、電動機がバッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御ステップを有するものである。
【0011】
本発明のさらに他の観点は、プログラムとしての観点である。本発明のプログラムは、コンピュータ装置に、エンジンと電動機と電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンもしくは電動機により走行可能であり、またはエンジンと電動機とが協働して走行可能であり、エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御機能を実現させるプログラムにおいて、クーラのスイッチがON状態であり、バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、コンプレッサがOFF状態になったときには、電動機がバッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御機能を実現させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドライバビリティを悪化させることなく、クーラのコンプレッサのON/OFF制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施の形態のハイブリッド自動車の構成の例を示すブロック図である。
【図2】図1のハイブリッドECUにおいて実現される機能の構成の例を示すブロック図である。
【図3】図2のクーラ制御部の処理を示すフローチャートである。
【図4】コンプレッサのON/OFF状態、回生発電のON/OFF状態、エンジントルクの状態をそれぞれ比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態のハイブリッド自動車について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0015】
(概要について)
図1は、ハイブリッド自動車1の構成の例を示すブロック図である。ハイブリッド自動車1は、車両の一例である。ハイブリッド自動車1は、半自動トランスミッションの変速機を介したエンジン(内燃機関)10および/または電動機13によって駆動される。ハイブリッド自動車1は、不図示のクーラを運転室に備えている。コンプレッサ21は、クーラの冷媒を圧縮するためのものである。コンプレッサ21は、コンプレッサ用クラッチ22、プーリ23,24、ベルト25でエンジン10の出力軸と接続されて動作する。このときに、ハイブリッドECU18は、不図示のクーラスイッチがON状態であり、バッテリ15のSOCが所定値以下であるときに、コンプレッサ21がOFF状態になったときには、電動機13がバッテリ15を充電するための回生発電を実施するように制御する。なお、半自動トランスミッションとは、マニュアルトランスミッションと同じ構成を有しながら自動化されたクラッチ12と協働して変速操作を自動的に行うことができるトランスミッションである。
【0016】
(ハイブリッド自動車1の構成について)
ハイブリッド自動車1は、エンジン10、エンジンECU(Electronic Control
Unit)11、クラッチ12、電動機13、インバータ14、バッテリ15、トランスミッション16、電動機ECU17、ハイブリッドECU18(請求項でいう制御手段)、車輪19、クーラECU20(請求項でいう制御手段の一部)、コンプレッサ21、コンプレッサ用クラッチ22、プーリ23,24、ベルト25、シフト部26、およびキースイッチ27を有して構成される。なお、トランスミッション16は、上述した半自動トランスミッションを有し、ドライブレンジ(以下では、D(Drive)レンジと記す)を有するシフト部26により操作される。シフト部26がDレンジにあるときには、半自動トランスミッションの変速操作が自動化される。
【0017】
エンジン10は、内燃機関の一例であり、エンジンECU11によって制御され、ガソリン、軽油、CNG(Compressed Natural Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、または代替燃料等を内部で燃焼させて、軸を回転させる動力を発生させ、発生した動力を、電動機13を介してクラッチ12に伝達する。
【0018】
エンジンECU11は、ハイブリッドECU18からの指示に従うことにより、電動機ECU17と連携動作するコンピュータであり、燃料噴射量やバルブタイミングなど、エンジン10を制御する。たとえば、エンジンECU11は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/O(Input/Output)ポートなどを有する。
【0019】
クラッチ12は、ハイブリッドECU18からの変速指示信号に基づき電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態にするものである。なお、クラッチ12の機構自体は、運転者がクラッチペダルを操作して電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態に操作するものと同じものである。また、運転者が不図示のクラッチペダルを操作することにより、ハイブリッドECU18による制御の他に、電動機13の回転軸とトランスミッション16の入力軸とを接状態または断状態に操作できるようにしてもよい。
【0020】
電動機13は、いわゆる、モータジェネレータであり、インバータ14から供給された電力により、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をクラッチ12を介してトランスミッション16に供給するか、またはトランスミッション16からクラッチ12を介して供給された軸を回転させる動力によって発電し、その電力をインバータ14に供給する。たとえば、ハイブリッド自動車1が加速しているとき、または定速で走行しているときにおいて、電動機13は、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をクラッチ12を介してトランスミッション16に供給し、エンジン10と協働してハイブリッド自動車1を走行させる。また、たとえば、電動機13がエンジン10によって駆動されているとき、またはハイブリッド自動車1が減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなどにおいて、電動機13は、発電機として動作し、この場合、トランスミッション16からクラッチ12を介して供給された軸を回転させる動力によって発電して、電力をインバータ14に供給し、バッテリ15が充電される。このとき、電動機13は、回生電力に応じた大きさの回生トルクを発生する。
【0021】
インバータ14は、電動機ECU17によって制御され、バッテリ15からの直流電圧を交流電圧に変換するか、または電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。電動機13が動力を発生させる場合、インバータ14は、バッテリ15の直流電圧を交流電圧に変換して、電動機13に電力を供給する。電動機13が発電する場合、インバータ14は、電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。すなわち、この場合、インバータ14は、バッテリ15に直流電圧を供給するための整流器および電圧調整装置としての役割を果たす。
【0022】
バッテリ15は、充放電可能な二次電池であり、電動機13が動力を発生させるとき、電動機13にインバータ14を介して電力を供給するか、または電動機13が発電しているとき、電動機13が発電する電力によって充電される。バッテリ15には、適切なSOCの範囲が決められており、SOCがその範囲を外れないように管理されている。
【0023】
トランスミッション16は、ハイブリッドECU18からの変速指示信号に従って、複数のギア比(変速比)のいずれかを選択する半自動トランスミッション(図示せず)を有し、変速比を切り換えて、変速されたエンジン10の動力および/または電動機13の動力を車輪19に伝達する。また、減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなど、トランスミッション16は、車輪19からの動力をクラッチ12を介して電動機13に伝達する。また、トランスミッション16が変速する際には、クラッチ12がいったん断状態に制御される。このように、ハイブリッドECU18は、トランスミッション16とクラッチ12とを協働させてハイブリッド自動車1の自動変速を実施する。なお、半自動トランスミッションは、運転者がシフト部22を操作して手動で任意のギア段にギア位置を変更することもできる。
【0024】
電動機ECU17は、ハイブリッドECU18からの指示に従うことにより、エンジンECU11と連携動作するコンピュータであり、インバータ14を制御することによって電動機13を制御する。たとえば、電動機ECU17は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0025】
ハイブリッドECU18は、コンピュータの一例であり、ハイブリッド走行のために、アクセル開度情報、ブレーキ操作情報、クーラスイッチ情報、サーモスタット動作情報、ギア位置情報、エンジン回転速度情報、およびSOC情報を取得する。取得したこれらの情報に基づいて、ハイブリッドECU18は、変速指示信号を供給することでクラッチ12およびトランスミッション16を制御し、電動機ECU17に対して電動機13およびインバータ14の制御指示を与え、エンジンECU11に対してエンジン10の制御指示を与える。これらの制御指示には、後述するコンプレッサ制御指示および回生発電制御指示も含まれる。たとえば、ハイブリッドECU18は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0026】
なお、ハイブリッドECU18によって実行されるプログラムは、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリにあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータであるハイブリッドECU18にあらかじめインストールしておくことができる。
【0027】
エンジンECU11、電動機ECU17、およびハイブリッドECU18は、CAN(Control Area Network)などの規格に準拠したバスなどにより相互に接続されている。
【0028】
車輪19は、路面に駆動力を伝達する駆動輪である。なお、図1において、1つの車輪19のみが図示されているが、実際には、ハイブリッド自動車1は、複数の車輪19を有する。
【0029】
クーラECU20は、ハイブリッドECU18からのコンプレッサ制御指示にしたがって、コンプレッサ用クラッチ22を接状態または断状態に制御する。
【0030】
コンプレッサ21は、不図示のクーラのために冷媒を圧縮するものである。コンプレッサ21は、コンプレッサ用クラッチ22が接状態になり、コンプレッサ21にエンジン10のトルクが伝達されることにより動作する。
【0031】
コンプレッサ用クラッチ22は、クーラECU20の制御にしたがって、プーリ23の回転軸と、コンプレッサ21の回転軸とを接状態または断状態にするものである。
【0032】
プーリ23は、ベルト25によってエンジン10側のプーリ24から動力が伝達されてコンプレッサ用クラッチ22の一端に連結されている回転軸を回転させるものである。
【0033】
プーリ24は、エンジン10の出力軸に連結され、ベルト25を介してプーリ23にエンジン10のトルクを伝達するものである。
【0034】
ベルト25は、プーリ24からプーリ23にエンジン10のトルクを伝達するものである。
【0035】
シフト部26は、既に説明したように、トランスミッション16の半自動トランスミッションに運転者からの指示を与えるものであり、シフト部26がDレンジにあるときには、半自動トランスミッションの変速操作が自動化される。
【0036】
キースイッチ27は、運転を開始するときにユーザにより、たとえばキーが差し込まれてON/OFFされるスイッチであり、これがON状態になることによってハイブリッド自動車1の各部は起動し、キースイッチ27がOFF状態になることによってハイブリッド自動車1の各部は停止する。
【0037】
図2は、プログラムを実行するハイブリッドECU18において実現される機能の構成の例を示すブロック図である。すなわち、ハイブリッドECU18がプログラムを実行すると、ハイブリッドECU18に、制御部30(請求項でいう制御手段)の機能が実現される。
【0038】
制御部30は、アクセル開度情報、SOC情報、クーラスイッチ情報、およびサーモスタット動作情報に基づいてクーラECU20にコンプレッサ制御指示を行い、電動機ECU17に回生発電制御指示を行う機能である。ここで、サーモスタット動作情報とは、運転室などのクーラの冷却対象となる空間に設置されている不図示のサーモスタットのON/OFFの状態を表す情報である。たとえば、サーモスタットの設定温度が27℃であれば、サーモスタットの周囲の気温が27℃を超えるとサーモスタットはON状態になり、反対に、サーモスタットの周囲の気温が27℃よりも下がるとサーモスタットはOFF状態になる。なお、実際には、サーモスタットがON状態になる温度とOFF状態になる温度との間には、応差(ヒステリシス)が設けられており、たとえば、27.5℃以上でON状態になり、27.0℃以下でOFF状態になるなどのように設定されている。
【0039】
(ハイブリッドECU18の動作について)
次に、図3のフローチャートを参照して、プログラムを実行するハイブリッドECU18において行われるコンプレッサ制御および回生発電制御の処理を説明する。なお、図3のステップS1〜S7の手続きによる処理は1周期分の処理であり、キースイッチ27がON状態である限り処理は繰り返し実行されるものとする。
【0040】
図3の「START」では、キースイッチ27がON状態であり、ハイブリッドECU18がプログラムを実行し、ハイブリッドECU18に制御部30の機能が実現されている状態である。さらに「START」では、ハイブリッド自動車1は、エンジン10が始動している状態である。このときハイブリッド自動車1が走行中であるか停車中であるかは関係ない。なお、ハイブリッドECU18は、アクセル開度情報またはエンジン回転速度情報などにより、エンジン10が始動しているか否かを判断することができる。このような状態であるときに、手続きはステップS1に進む。
【0041】
ステップS1において、制御部30は、クーラスイッチ情報に基づいて、クーラスイッチはON状態か否かを判定する。ステップS1において、クーラスイッチがON状態であると判定されると、手続きはステップS2に進む。一方、ステップS1において、クーラスイッチがOFF状態であると判定されると、手続きはステップS1を繰り返す。
【0042】
ステップS2において、制御部30は、サーモスタット動作情報に基づいて、サーモスタットはOFF状態か否かを判定する。ステップS2において、サーモスタットがOFF状態であると判定されると、手続きはステップS3に進む。一方、ステップS2において、サーモスタットがON状態であると判定されると、制御部30は、コンプレッサ用クラッチ22を接状態にするように、クーラECU20に対してコンプレッサ制御指示を行い、手続きはステップS1に戻る。
【0043】
ステップS3において、制御部30は、SOC情報に基づいて、バッテリ15のSOCは所定値以下か否かを判定する。ステップS3において、SOCが所定値以下であると判定されると、手続きはステップS4に進む。一方、ステップS3において、SOCが所定値を超えていると判定されると、手続きはステップS1に戻る。なお、ここでSOCの所定値とは、たとえばSOCの変動範囲が下限30%〜上限90%としたときに、所定値は、80%程度である。
【0044】
ステップS4において、制御部30は、電動機ECU17に対して回生発電の開始を指示してステップS5の手続きに進む。
【0045】
ステップS5において、制御部30は、サーモスタット動作情報に基づいて、サーモスタットはON状態か否かを判定する。ステップS5において、サーモスタットがON状態であると判定されると、手続きはステップS6に進む。一方、ステップS5において、サーモスタットがOFF状態であると判定されると、手続きはステップS7に進む。
【0046】
ステップS6において、制御部30は、電動機ECU17に対して回生発電の停止を指示して1周期分の処理を終了する(END)。
【0047】
ステップS7において、制御部30は、SOC情報に基づいて、バッテリ15のSOCは所定値を超えたか否かを判定する。ステップS7において、SOCが所定値を超えたと判定されると、手続きはステップS6に進む。一方、ステップS7において、SOCが所定値を超えていないと判定されると、手続きはステップS1に戻る。
【0048】
(効果について)
制御部30の制御によれば、ドライバビリティを悪化させることなく、クーラのコンプレッサ21のON/OFF制御を行うことができる。たとえば図4の上段に示すように、時刻t1で、クーラスイッチがON状態(ステップS1でYes)になりコンプレッサ21が動作を開始すると(ステップS2でNo)、図4の下段に示すように、エンジン10のトルクが一定量低下(−αNm(ニュートンメートル))する。続いて、時刻t2で、図4の上段に示すように、室内温度が低下したためにサーモスタットがOFF状態になりコンプレッサ21が停止する(ステップS2でYes)。このとき、図4の中段に示すように、電動機13が回生発電を開始するので(ステップS4)、図4の下段に示すエンジン10のトルクについては変化がない。続いて、図4の上段に示すように、時刻t3で室内温度が上昇したためにサーモスタットがON状態になりコンプレッサ21が再び動作する(ステップS5でYes)。このとき、図4の中段に示すように、電動機13が回生発電を停止するので(ステップS6)、図4の下段に示すエンジン10のトルクについては変化がない。続いて、時刻t4で、運転者がクーラスイッチをOFFにしたので(ステップS1でNo)、図4の上段に示すように、コンプレッサ21は停止する。これにより、エンジン10のトルクは、図4の下段に示すように、一定量増加(+αNm)する。
【0049】
図4で示したように、運転者が自らの意思でクーラスイッチをON状態に操作してからOFF状態に操作するまでの間は、途中でサーモスタットがON/OFFしてもエンジン10のトルクに変化が無く、運転者は、サーモスタットのON/OFFによるドライバビリティの変化を感じることは無い。これにより、ドライバビリティを悪化させることなく、クーラのコンプレッサ21のON/OFF制御を行うことができる。なお、運転者が自らの意思でクーラスイッチをON状態に操作した際のエンジン10のトルクの低下は、運転者自身が意識しているため、運転者のドライバビリティに対する違和感は問題にならない。同様に、運転者が自らの意思でクーラスイッチをOFF状態に操作した際のエンジン10のトルクの増加は、運転者自身が意識しているため、運転者のドライバビリティに対する違和感は問題にならない。
【0050】
また、ステップS4で回生発電が開始された後に、バッテリ15のSOCが所定値を超えた場合には(ステップS7でYes)、直ちに回生発電を停止させるので(ステップS6)、バッテリ15が過充電になることを防ぐことができる。
【0051】
(その他の実施の形態)
図3のフローチャートの説明において、「超える」は、「以上」とし、「以下」は、「未満」とするなど、判定の境界値については様々に変更してもよい。
【0052】
エンジン10は、内燃機関であると説明したが、外燃機関を含む熱機関であってもよい。
【0053】
また、ハイブリッドECU18によって実行されるプログラムは、ハイブリッドECU18にあらかじめインストールされると説明したが、プログラムが記録されている(プログラムを記憶している)リムーバブルメディアを図示せぬドライブなどに装着し、リムーバブルメディアから読み出したプログラムをハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリに記憶することにより、または、有線または無線の伝送媒体を介して送信されてきたプログラムを、図示せぬ通信部で受信し、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリに記憶することで、コンピュータであるハイブリッドECU18にインストールすることができる。
【0054】
また、各ECUは、これらを1つにまとめたECUにより実現してもよいし、あるいは、各ECUの機能をさらに細分化したECUを新たに設けてもよい。
【0055】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0056】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ハイブリッド自動車、10…エンジン、11…エンジンECU、12…クラッチ、13…電動機、14…インバータ、15…バッテリ、16…トランスミッション、17…電動機ECU、18…ハイブリッドECU、19…車輪、21…コンプレッサ、30…クーラ制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、前記エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、前記電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御装置において、
前記クーラのスイッチがON状態であり、前記バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、前記コンプレッサがOFF状態になったときには、前記電動機が前記バッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置を有することを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項3】
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、前記エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、前記電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御方法において、
前記クーラのスイッチがON状態であり、前記バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、前記コンプレッサがOFF状態になったときには、前記電動機が前記バッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御ステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項4】
コンピュータ装置に、
エンジンと電動機と前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、前記エンジンもしくは前記電動機により走行可能であり、または前記エンジンと前記電動機とが協働して走行可能であり、前記エンジンのトルクによって動作するクーラのコンプレッサを有し、少なくとも減速中に、前記電動機により回生発電が可能であるハイブリッド自動車の制御機能を実現させるプログラムにおいて、
前記クーラのスイッチがON状態であり、前記バッテリの充電状態を示す値が所定値以下であるときに、前記コンプレッサがOFF状態になったときには、前記電動機が前記バッテリを充電するための回生発電を実施するように制御する制御機能を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236566(P2012−236566A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108302(P2011−108302)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】