説明

制御装置

【課題】エレベータ設備などに設けられた電動機で発生する6×nと6×(n+1)のリプル成分などを抑制させ、電動機のトルクリプルを大幅に低減させる。
【解決手段】 [数23]などを満たすように、電動機パラメータ設定手段4のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などを設定し、これらパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、回転角検出手段11の検出結果などに基づき、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値“Idco”と、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値“Iqco”とを補正し、[数22]に示すトルク“T”の(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分を零にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ設備などで使用される電動機を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ設備などで使用される電動機を制御する制御装置の1つとして、従来、図13に示す装置が知られている。
【0003】
この図に示す制御装置101では、インバータ等の駆動手段108によって、電動機112が駆動される。電動機112の回転角はパルスジェネレータPG等の回転角検出手段111で検出され、検出された回転角は、電動機112の速度を制御する速度制御系(d軸電流指令手段102、q軸電流指令手段103、q軸電流指令値補正手段105によって構成される部分)113に入力される。
【0004】
速度制御系113では、電動機112の実速度と、その速度指令値との速度偏差信号から、駆動手段119へ駆動信号を出力する電流制御手段106への電流指令値が演算される。
【0005】
この電流指令値は、電動機112をベクトル制御する場合、直交回転座標系におけるd軸電流指令値“Idc”およびq軸電流指令値“Iqc”である。d軸電流指令値“Idc”は電動機112に磁束を発生させる磁束電流指令値であり、q軸電流指令値“Iqc”は、電動機112にトルクを発生させるトルク電流指令値である。
【0006】
電流制御手段106、2相3相変換手段107では、直交回転座標系におけるd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”、および回転角検出手段111の電気角(回転角)“θe”、3相2相変換手段110から出力される電流信号“Idf”、“Idf”を取り込み、電流検出手段109から出力される出力電流信号“Iuf”、“Iwf”がd軸電流指令値“Idc”、q電流指令値“Iqc”、および電気角“θ”を満たすような電圧指令値“V”、“V”、“V”が生成されて、駆動手段108に出力される。
【0007】
すなわち、電流検出手段109によって、電動機112に供給される3相の駆動電流の電流値が各々、検出されて、出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”が出力され、3相/2相変換手段110に入力される。この3相/2相変換手段111は次式に示すように、電流検出手段109から出力される静止座標系での3相で示される出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”を直交静止座標系の2相で示される電流信号“Iα”、“Iβ”に変換する。この変換された2相の電流信号“Iα”、“Iβ”は、直交回転座標系の電流信号“Idf”、“Iqf”に変換される。すなわち、電気角“θ”に基づき、直交静止座標系の電流信号“Iα”、“Iβ”を直交回転座標系の電流信号“Idf”、“Iqf”に変換され、電流制御手段106に出力される。
【数1】

【数2】

【数3】

【0008】
ここで、添字“d”はd軸成分、“q”はq軸成分を表す。
【0009】
また、電流指令値補正手段102から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令値補正手段105から出力されるq軸電流指令“Iqco”と、3相2相変換手段110から出力される電流信号“Idf”、“Iqf”との偏差は、それぞれ電流制御手段106を構成しているPIコントローラ等に入力され、PI演算(比例積分演算)されて、次式に示すように直交回転座標系におけるd軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”を出力する。
【数4】

【0010】
ここで、“K”は比例ゲイン、“K”は積分ゲイン、“s”はラプラス演算子である。
【0011】
このPIコントローラ等からのd軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”は、2相/3相変換手段107に入力される。2相/3相変換手段107では、次式に示すようにd軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”を、直交静止座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”に変換する。すなわち、電気角“θ”に基づき、直交回転座標系の電圧指令値“Vdc”、“Vqc”を直交静止座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”に変換する。この変換された2相で示される直交静止座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”を3相で示される直交静止座標系の電圧指令値“V”、“V”、“V”に変換し、駆動手段108に出力する。
【数5】

【数6】

【0012】
一般に、永久磁石同期電動機は、誘導電動機に比べ、同じ出力に対し小型に製作できるので、近年いろいろなシステムの駆動部に使われつつある。
【0013】
ところが、永久磁石同期電動機では、磁極を回転させる電機子磁束の変化が、回転角の正弦波でなく歪を含んでいる。このため、本来ならば正弦波状であるべき磁束変化が、歪を持つため、電動機の発生トルクが脈動し、回転むら等の要因となっている。また、電動機の巻線のアンバランスや電流を検出するセンサ系統の誤差等もトルクリプルの原因となっている。
【0014】
また、電機子巻線電流により生成される磁束の空間分布は、理想的には、正弦波状が望ましいが、高調波がのっているため、発生トルクを歪ませる要因となっている。
【0015】
この高調波成分の低次成分は、基本波に対する周波数の5倍/7倍であり、この磁束の5次/7次成分は、基本周波数の6倍成分(6f成分)のトルクリプル原因となる。
【0016】
同様に、次式に示すような磁束の11倍/13倍成分は、12f成分のトルクリプルの原因となる。
【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【0017】
ここで、“E”、“E”、“E”は各相の電機子巻線に誘起する誘起電圧(以下では簡単のため必要に応じて電気角“θ”の巻数表記を省略する)、“ω”は回転速度(回転角の時間微分)、“K”は逆起電力定数である。
【0018】
上式の3相誘起電圧“E”、“E”、“E”を、3相/2相変換すると、下式になる。
【数11】

【数12】

【0019】
また、電動機112が円筒機であれば、トルク“T”は、誘起電圧“E”、“E”、“E”と、各電流“I”、“I”、“I”とから下式となる。
【数13】

【0020】
電動機112に対し、スキュー等の対策を行って、トルクリプルを問題のないレベルに抑えることもできるが、コスト上昇を招くことになる。
【0021】
また、トルクリプルの低減方法として、例えば、「特許文献1」のようにトルクリプルが電動機の回転と相関性を持つことから、この相関関係を記憶装置に記憶させ、電動機の回転角に基づいて、これと対応するトルクリプルデータを読み出し、トルク指令値からリプル分を差し引いたものを新たなトルク指令値とする方法がある。さらに、「特許文献2」のように電動機回転角“θ”と、調整ゲイン“A”と調整位相“p”とから、トルクリプル補正信号“Tcomp=A×sin(n×θ+p)”を演算し、電動機の回転周期に同期させてフィードフォワード的に目標トルク指令に加算してトルクリプルを打ち消す方法がある。
【特許文献1】特開平11−299277号公報
【特許文献2】特開平7−129251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、従来のトルクリプルの低減方法はトルク指令値(トルク電流指令値)を補正するものであって、(6×n)f成分のトルクリプルを打ち消そうとすると、(6×(n+1))f成分が大きくなるという課題があった。
【0023】
簡単のため、磁束の5次成分のみがある場合について説明する。
【0024】
各相の誘起電圧“E”、“E”、“E”、例えば誘起電圧“E”は、下式となる。また、他の各誘起電圧“E”、“E”も同様な式で示される。
【数14】

【0025】
上式を、[数13]に代入してトルク“T”を求めると、下式となり、6fトルクリプルがあることがわかる。
【数15】

【0026】
一方、公知のトルクリプル補正信号“Tcomp”を用いた場合のd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”は下式となる。
【数16】

【数17】

【0027】
上式の場合のトルク“T”は、[数15]と同様に下式となる。
【数18】

【0028】
この[数18]から分かるように、磁束の5次成分でトルクリプルの6f成分が生じるのに対し、従来の低減方法で6f成分を打ち消そうとすると、新たに12f成分が発生する。
【0029】
また、トルクリプルは、電動機112の運転条件に依存する場合も多く、例えば加減速のように運転条件が変化した場合にはトルクリプル低減性能が劣化するという課題もあった。
【0030】
さらに、電動機112には、半径方向の電磁吸引力の脈動による振動・騒音の課題があった。
【0031】
本発明は上記の事情に鑑み、電動機に供給される出力電流の波形を整えて、電動機のトルクリプルを大幅に低減させることできる制御装置を提供することを目的としている。
【0032】
また、リニア電動機に供給される出力電流の波形を整えて、リニア電動機で生じるZ方向の力変動を大幅に低減させつつ、リニア電動機の振動または騒音を検出してパラメータを自動補正でき、リニア電動機の振動・騒音を低減させることができる制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記の目的を達成するために本発明は、電動機の実測回転速度と予め設定されている設定回転速度との偏差に応じて、d軸電流指令およびq軸電流指令を生成するd軸/q軸電流指令手段と、前記電動機の回転を検出して電気角を出力する回転角検出手段と、前記電動機の特性に対応したパラメータが設定される電動機パラメータ設定手段と、前記回転角検出手段から出力される電気角および前記電動機パラメータ設定手段から出力されるパラメータに応じて、前記d軸/q軸電流指令手段から出力されるd軸電流指令およびq軸電流指令に対し、前記電動機が発生するトルクの高調波リプル成分を抑制するのに必要な補正を行い、補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令値補正手段と、
この電流指令値補正手段から出力される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値並びに前記電流検出手段から出力される電動機の出力電流検出信号に基づき、3相の駆動電圧を生成して前記電動機に供給する3相駆動手段とを具備することを特徴としている。
【0034】
また、本発明は、リニア電動機の実測速度と予め設定されている設定速度との偏差に応じて、d軸電流指令およびq軸電流指令を生成するd軸/q軸電流指令手段と、前記リニア電動機の速度を検出して電気角を出力する電気角検出手段と、前記リニア電動機の特性に対応したパラメータが設定される電動機パラメータ設定手段と、前記電気角検出手段から出力される電気角および前記電動機パラメータ設定手段から出力されるパラメータに応じて、前記d軸/q軸電流指令手段から出力されるd軸電流指令およびq軸電流指令に対し、前記リニア電動機が発生するZ方向の高調波リプル成分を抑制するのに必要な補正を行い、補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令値補正手段と、この電流指令値補正手段から出力される補正済みのd軸電流指令値、q軸電流指令値および電流検出手段から出力されるリニア電動機の出力電流検出信号に基づき、3相の駆動電圧を生成して前記リニア電動機に供給する3相駆動手段と、前記リニア電動機の振動または騒音を検出する脈動検出手段と、この脈動検出手段の出力、前記電流指令値補正手段で生成される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値に基づき、前記リニア電動機の振動または騒音を最小にするのに必要なパラメータを求め、前記電流指令値補正手段で使用されるパラメータを補正する処理または報知装置から報知する処理のいずれかを行う補正パラメータ学習手段とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電動機に供給される出力電流の波形を整えることができ、電動機のトルクリプルを大幅に低減させることできる。その結果、電動機の振動・騒音を低減させることができる。
【0036】
また、リニア電動機に供給される出力電流の波形を整えることができ、リニア電動機で生じるZ方向の力変動を大幅に低減させることができる。その結果、リニア電動機の振動・騒音を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
《第1の実施形態》
図1は本発明による制御装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【0038】
この図に示す制御装置1aは、d軸電流指令“Idco”を出力するd軸電流指令手段2と、q軸電流指令“Iqco”を出力するq軸電流指令手段3と、電動機10のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などが設定される電動機パラメータ設定手段4とを備えている。
【0039】
また、この制御装置1aは、電流指令補正手段5と、電流制御手段6と、2相/3相変換手段7と、駆動手段8と、電流検出手段9と、電動機10の回転角“θ”を検出する回転角検出手段11と、3相/2相変換手段12とを備えている。
【0040】
ここで、電流指令補正手段5は、電動機パラメータ設定手段4から出力される電動機10のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、回転角検出手段11の検出結果に基づき、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令“Iqco”を補正して、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”を出力する。
【0041】
また、電流制御手段6は、電流指令補正手段5から出力されるd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”、3相/2相変換手段12から出力される電流信号“Idf”、“Iqf”に基づき、d軸電圧指令“Vdc”、q軸電圧指令“Vqc”を演算する。
【0042】
また、2相/3相変換手段7は、電流制御手段6から出力されるd軸電圧指令“Vdc”、q軸電圧指令“Vqc”、回転角検出手段11から出力される回転角“θ”に基づき、3相の電圧指令値“V”、“V”、“V”を演算する。
【0043】
また、駆動手段8は、2相/3相変換手段7から出力される電圧指令値“V”、“V”、“V”に基づき、3相の駆動電圧を出力して電動機10を駆動する。
【0044】
電流検出手段9は、電動機10に供給される3相の出力電流を検出して出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”を出力する。
【0045】
3相/2相変換手段12は、電流検出手段9から出力される出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”、回転角検出手段11から出力される回転角“θ”に基づき、電流信号“Idf”、“Iqf”を演算する。
【0046】
次に、図1を参照して制御装置1aの全体動作を説明する。
【0047】
電動機10の回転角は、PG等などによって構成される回転角検出手段11によって、パルス形式で検出されるとともに、検出結果に対応する電気角(回転角)“θ”にされて、速度を制御する速度制御系(d軸電流指令手段2、q軸電流指令手段3、電流指令値補正手段5によって構成される部分)13に入力される。
【0048】
速度制御系13では、回転角検出手段11から入力された電気角“θ”により電動機10の実速度が算出され、その速度と速度指令値との速度偏差信号から、電流制御手段6へのd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”が演算され、電流制御手段6に出力される。
【0049】
これらd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”は、下式のような電動機10をベクトル制御する場合の直交回転座標系におけるd軸電流指令値(磁束電流指令値)“Idc”およびq軸電流指令値(トルク電流指令値)“Iqc”である。
【数19】

【0050】
ここで、“Idco”、“Iqco”は各々、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値である。また、“dIdc”、“dIqc”は、電動機パラメータ設定手段4に設定されているパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”である。
【0051】
また、電流指令値補正手段5では、電動機パラメータ設定手段4から出力されるパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、回転角検出手段11から出力される電気角“θ”などに基づき、電動機10で発生するトルクリップルを打ち消すのに必要なd軸電流指令補正信号“dIdco”、q軸電流指令補正信号“dIqco”が生成される。そして、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令“Iqco”を補正して、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”が生成され、電流制御手段6に出力される。
【0052】
電流制御手段6、2相3相変換手段7では、直交回転座標系におけるd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”、3相/2相変換手段12から出力される直交回転座標系の電流信号“Idf”、“Iqf”が入力され、電流検出手段9から出力される出力電流信号“Iuf”、“Iwf”と、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”、および電気角“θ”とを対応させるのに必要な電圧指令値“V”、“V”、“V”が演算されて、駆動手段8に出力される。
【0053】
すなわち、出力電流信号“Iuf”、“Iwf”は、電流検出手段9で検出され、3相/2相変換手段12に入力される。この3相/2相変換手段12は電流検出手段9からの静止座標系での3相で示される電流信号“Iuf”、“Iwf”が直交静止座標系の2相で示される電流信号“Iα”、“Iβ”に変換される。この変換された2相の電流信号“Iα”、“Iβ”は、電気角“θ”に基づき、直交回転座標系の電流信号“Idf”、“Iqf”に変換され、電流制御手段6に出力される。
【0054】
そして、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”と、電流信号“Idf”、“Iqf”との偏差は各々、電流制御手段6を構成しているPIコントローラ等によって、PI演算(比例積分演算)されて、直交回転座標系におけるd軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”が生成される。
【0055】
このPIコントローラからのd軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”は、2相/3相変換手段7に入力される。2相/3相変換手段7では、d軸電圧指令“Vdc”およびq軸電圧指令“Vqc”が、直交回転座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”に変換される。すなわち、電気角“θ”に基づき、直交回転座標系のd軸電圧指令“Vdc”、q軸電圧指令“Vqc”が直交静止座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”に変換される。この変換された2相で示される直交静止座標系の電圧指令値“Vα”、“Vβ”が3相で示される直交静止座標系の電圧指令値“V”、“V”、“V”に変換され、駆動手段8に出力される。
【0056】
駆動手段8では、2相/3相変換手段7からの電圧指令値“V”、“V”、“V”を使用して、3相の出力電圧が生成され、電動機10が駆動される。
【0057】
次に、図2を参照して電流指令補正手段5の詳細な動作を説明する。
【0058】
電流指令補正手段5では、図2に示すように、電気角“θ”の6×n倍の位相が演算され、得られた電流指令値の位相“6×n×”θと、正弦波の位相を調整する調整位相“p”、“p”が加算されて、正弦波の位相“P”、“P”が求められる。
【0059】
さらに、次式に示すように、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令“Iqco”に対応する電流指令の絶対値“|Ico|”が演算され、得られた電流指令値の絶対値“|Ico|”と、電動機パラメータ設定手段4から得られた磁束の(6×n±1)fの高調波成分比“n”と、正弦波の振幅を調整する調整振幅“a”、“a”が各々、乗算されて、振幅値“A”、“A”が求められる。
【0060】
そして、振幅値が“A”、“A”にされ、位相が“P”、“P”にされた正弦波は、以下のような電流指令補正信号“dIdc”、“dIqc”が演算される。
【数20】

【数21】

【0061】
ここで、添字“d”はd軸成分、“q”はq軸成分を表す。
【0062】
そして、電流指令補正信号“dIdc”、“dIqc”に対応して、電動機10のトルク“T”は、下式のような回転角の定数項、(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分の和となる。
【数22】

【0063】
ここで、“W”は電動機10内部の磁気エネルギー、添字“s”は正弦成分、“c”は余弦成分を表す。なお、“T”〜“T6(n+1)c”の各成分は、電動機パラメータ設定手段4で設定されたパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などの関数となる。
【0064】
上式に基づき、下式を満たすように、すなわち(6×n)f成分と(6×(n+1)f成分が零となるように、調整振幅“a”、“a”と、調整位相“p”、“p”の初期値が求められる。
【数23】

【0065】
なお、電流制御手段6の応答遅れを考慮するため、下式のようにゲイン降下と位相遅れで近似される。
【数24】

【0066】
ここで、“g(ω)”、“g(ω)”は電流制御手段6の閉ループゲイン、“L(ω)”、“L(ω)”は電流制御手段6のむだ時間であり、電動機パラメータ設定手段4で設定される。
【0067】
また、上式から、電流制御手段6の応答遅れを下式のように考慮することもできる。
【数25】

【0068】
以上のように、[数23]、[数24]などを満たすように、電動機パラメータ設定手段4に設定されるパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、閉ループゲイン“g(ω)”、“g(ω)”、むだ時間L(ω)”、“L(ω)”が設定され、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値“Idco”と、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値“Iqco”とが補正されれば、[数22]に示すトルク“T”の(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分を零にさせて、電動機10で発生する6×nと6×(n+1)のリプル成分などを大幅に低減することができる。
【0069】
このように、第1の実施形態では、[数23]などを満たすように、電動機パラメータ設定手段4のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などを設定し、これらパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、回転角検出手段11の検出結果などに基づき、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値“Idco”と、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値“Iqco”とを補正し、[数22]に示すトルク“T”の(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分を零にしている。このため、電動機10で発生する6×nと6×(n+1)のリプル成分などを抑制でき、電動機10のトルクリプルを大幅に低減することができる。
【0070】
《第2の実施形態》
図3は本発明による制御装置の第2の実施形態を示すブロック図である。なお、この図において、図1の各部と対応する部分には同じ符号が付してある。
【0071】
この図に示す制御装置1bが図1に示す制御装置1aと異なる点は、電動機10の振動または騒音“dFrf”を検出する脈動検出手段21と、脈動検出手段21の出力に基づいて電流指令補正手段5で使用されるパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”のうち、電動機10の振動、騒音に関係するパラメータ、例えばパラメータ“a”、“p”などを学習する補正パラメータ学習手段22とを設けたことである。
【0072】
次に、図4を参照して、脈動検出手段21、電流指令補正手段5、補正パラメータ学習手段22の詳細な動作を説明する。
【0073】
電流指令補正手段5では、補正パラメータ学習手段22の学習結果に基づき、振動または騒音“dFrf”を低減させるように、電動機10の半径方向の力“F”の脈動が小さくなるように、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値“Idco”と、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値“Iqco”とが補正される。
【0074】
この場合、電流指令補正信号“dI”に対応する半径方向の力“F”は、下式のような回転角の定数項、(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分の和となる。
【数26】

【0075】
ここで、“W”は電動機10内の磁気エネルギー、“r”は半径方向である。
【0076】
上式より、調整振幅“a”、“a”と、調整位相“p”、“p”の初期値が下式を満たすように求められる。
【数27】

【0077】
一方、脈動検出手段21では、振動または騒音“dFrf”が検出され、補正パラメータ学習手段22に出力される。
【0078】
補正パラメータ学習手段22では、脈動検出手段21で検出した振動または騒音“dFrf”を用いて、電動機10の振動または騒音に影響を与える調整振幅、調整位相、例えば調整振幅“a”、と、調整位相“p”が学習される。
【0079】
この際、例えば下式のように、電流指令補正信号“dIdc”が“0”(電流指令補正信号が最大または最小)となる時点の振動または騒音“dFrf”を用いて、調整位相“p”を学習し、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“p”が最適化される。
【数28】

【0080】
ここで、“gpd”は学習ゲイン、“old”は学習前の値、“new”は学習後の値である。
【0081】
また、例えば下式のように電流指令補正信号“dI”の時間微分が“0”となる時点の振動または騒音“dFrf”を用いて調整振幅“a”を学習し、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“a”が最適化される。
【数29】

【0082】
ここで、“gad”は学習ゲインである。
【0083】
このように、第2の実施形態では、[数27]を満たすように、電動機パラメータ設定手段4のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などを設定させ、これらパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、回転角検出手段11の検出結果などに基づき、d軸電流指令手段2から出力されるd軸電流指令値“Idco”と、q軸電流指令手段3から出力されるq軸電流指令値“Iqco”とを補正する。そして、電動機10のトルク“T”に含まれる(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分を零にさせなるとともに、電流指令値補正手段5で生成される電流指令補正信号“dIdc”の時間微分が零になるときの脈動“dFrf”に基づき、補正パラメータ学習手段22によって、パラメータ“p”、“a”を調整するようにしている。このため、6×nと6×(n+1)のリプル成分などを抑制でき、電動機10のトルクリプルを大幅に低減させつつ、電動機10の振動、騒音を大幅に低減させることができる。
【0084】
なお、第2の実施形態では、補正パラメータ学習手段22の学習動作によって、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“p”、“a”を直接、調整するようにしているが、補正パラメータ学習手段22によって、表示装置などの報知装置に、学習後のパラメータ“p”、“a”を表示して、オペレータなどに確認させた後、オペレータに電動機パラメータ設定手段4を操作させて、この電動機パラメータ設定手段4に設定されているパラメータ“p”、“a”を変更するようにしても良い。
【0085】
《第3の実施形態》
図5は本発明による制御装置の第3の実施形態を示すブロック図である。なお、この図において、図1の各部と対応する部分には同じ符号が付してある。
【0086】
この図に示す制御装置1cが図1に示す制御装置1aと異なる点は、電流制御手段6から出力されるd軸電圧指令“V”、q軸電圧指令“V”、電流検出手段9で検出される電流値(3相2相変換手段12から出力される電流信号“Idf”、“Iqf”)、回転角検出手段11で検出される回転角“θ”に対応する回転角“ω”に基づき、電動機10の脈動“dTdt”を推定する脈動推定手段31と、推定した脈動“dTdt”から電流指令補正手段5で使用されるパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”のうち、電動機10の振動、騒音に関係するパラメータ、例えばパラメータ“a”、“p”などを学習する補正パラメータ学習手段32とを設けたことである。
【0087】
次に、図6を参照して、脈動推定手段31、電流指令補正手段5、補正パラメータ学習手段32の詳細な動作を説明する。
【0088】
脈動推定手段31では、電流制御手段6から出力されるd軸電圧指令“Vdc”、d軸電圧指令“Vqc”に対応する電圧指令“V”、“V”と、3相2相変換手段12から出力される電流信号“Idf”、“Iqf”と、回転角検出手段11から出力される回転角“ω”とから電動機10の脈動“dTdt”が推定される。
【0089】
この際、脈動推定手段31では、例えば下式を用いて電圧指令値“V”、“V”と、電流信号“Idf”、“Iqf”と、回転角“ω”とから、誘導電圧“Edf”、“Eqf”が推定される。
【数30】

【0090】
ここで、“Ra”は電機子10の巻線抵抗、“L”、“L”は各々d軸、q軸のインダクタンスであり、電動機パラメータ設定手段4で設定する。
【0091】
そして、推定した誘起電圧“Edf”、“Eqf”と、電流信号“Idf”、“Iqf”と、回転角“ω”とから、次式に示す演算を行って、トルクの時間微分形で表される脈動“dTdt”が推定され、補正パラメータ学習手段32に出力される。
【数31】

【0092】
補正パラメータ学習手段32では、脈動推定手段31で推定された脈動“dTdt”を用いて、調整振幅“a”と、振幅位相“p”が学習される。
【0093】
この際、例えば電流指令値補正手段5で生成される電流指令補正信号“dIqc”の時間微分が“0”(電流指令補正信号が最大または最小)となる時点の脈動“dTdt”を用いて、振幅位相“p”を学習して、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“p”が最適化される。
【数32】

【0094】
ここで、“gpq”は学習ゲインである。
【0095】
また、例えば電流指令補正信号“dIqc”の時間微分が“0”となる時点の脈動“dTdt”を用いて、調整振幅“a”が学習され、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“a”が最適化される。
【数33】

【0096】
ここで、“gaq”は学習ゲインである。
【0097】
このように、第3の実施形態では、電流制御手段6から出力されるd軸電圧指令“V”、q軸電圧指令“V”、電流検出手段9で検出される電流値(3相2相変換手段12から出力される電流信号“Idf”、“Iqf”)、回転角検出手段11で検出される回転角“θ”に対応する回転角“ω”に基づき、[数29][数30]、[数31]を使用して、電動機10の脈動“dTdt”を推定するとともに、電流指令値補正手段5で生成される電流指令補正信号“dIqc”の時間微分が零になるときの脈動“dFrf”に基づき、補正パラメータ学習手段22によって、パラメータ“p”、“a”を調整するようにしている。このため、6×nと6×(n+1)のリプル成分などを抑制でき、電動機10のトルクリプルを大幅に低減させつつ、電動機10に脈動検出手段などを取り付けることなく、装置内部の改修作業だけで、電動機10の振動、騒音を大幅に低減させることができる(請求項3の効果)。
【0098】
《第4の実施形態》
図7は本発明による制御装置の第4の実施形態を示すブロック図である。なお、この図において、図1の各部と対応する部分には同じ符号が付してある。
【0099】
この図に示す制御装置1dが図1に示す制御装置1aと異なる点は、電動機10の温度“temp”を検出する温度検出手段41と、検出された温度“temp”で電流指令補正手段5の各補正パラメータ、例えば補正パラメータ“K”、“K”、…などを変更する補正パラメータ変更手段42とを設けたことである。
【0100】
次に、図8を参照して、温度検出手段41、補正パラメータ変更手段42の詳細な動作を説明する。
【0101】
まず、温度検出手段43では、電動機の温度“temp”が検出され、補正パラメータ変更手段16に出力される。
【0102】
補正パラメータ変更手段16では、検出された温度“temp”により、温度“temp”に対応する電動機パラメータ“K”、“K”、…などが変更され、これら電動機パラメータ“K”、“K”、…などを含むパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などが変更される。
【0103】
この際、[数7]等の誘起電圧“E”の係数が温度“temp”の関数であるとすると、下式となる。
【数34】

【0104】
そして、誘起電圧“E”の係数が温度“temp”の関数の場合、トルクリプルを打ち消すようなd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”を求める際に使用されるパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”なども温度“temp”の関数となることから、検出した温度“temp”に応じて、前記[数23]の導出手順と同様な手順で、パラメータ“a”、“p”、“a”、“p”が変更される。
【0105】
このように、第4の実施形態では、温度検出手段41によって、電動機10の温度“temp”を検出するとともに、補正パラメータ変更手段42によって、温度“temp”の関数になっているパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などを変更するようにしている。このため、電動機10の温度“temp”に応じて、パラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などを最適化させて、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”を補正させ、電動機10の温度が変化した場合にも、トルクリプルを最少に抑制することができる。
【0106】
《第5の実施形態》
図9は本発明による制御装置の第5の実施形態を示すブロック図である。なお、この図において、図1の各部と対応する部分には同じ符号が付してある。
【0107】
この図に示す制御装置1eが図1に示す制御装置1aと異なる点は、運転条件を設定する運転条件設定手段51と、運転条件により電流指令補正手段5のパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などを切り替える補正パラメータ切替手段52とを設けたことである。
【0108】
次に、図10を参照して、運転条件設定手段51、補正パラメータ切替手段52の詳細な動作を説明する。
【0109】
運転条件に応じて、運転条件設定手段51を操作し、補正パラメータ切替手段52に設けられた各接点のいずれか1つをオン状態にされ、電流指令補正手段5で使用されるパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などが切り替えられる。
【0110】
パラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などの切替は、例えば、運転条件設定手段51で、トルクリプル低減運転、振動・騒音低減運転のうち、いずれかがを指定され、指定内容に対応するようにパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などが切り替えられる。
【0111】
例えば、トルクリプルを低減させる場合は、下式を満たすようにする。
【数35】

【0112】
また、振動・騒音を低減させる場合は、下式を満たすようにする。
【数36】

【0113】
これにより、例えば深夜には、主に電動機10の振動・騒音の低減を目標に電動機10を運転し、また日中には、主に電動機10の回転ムラ低減を目標に電動機10を運転することができる。
【0114】
また、運転条件として、例えば低速ではトルクリプル低減を主とし、高速では振動・騒音低減などを主にするように、回転速度などによって適宜切り替えてもよい。
【0115】
このように、第5の実施形態では、運転条件に応じて、運転条件設定手段51を操作し、補正パラメータ切替手段52に設けられた各接点のいずれか1つをオン状態にし、電流指令補正手段5で使用されるパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などを切り替えるようにしている。このため、運転内容に応じて、各運転条件に対応する最適なパラメータ“a”、“p”、“a”、“p”などを選択でき、トルクリプルの低減、振動、騒音の低減などを実現できる。
【0116】
《第6の実施形態》
図11は本発明による制御装置の第6の実施形態を示すブロック図である。
【0117】
この図に示す制御装置1fは、d軸電流指令“Idco”を出力するd軸電流指令手段61と、q軸電流指令“Iqco”を出力するq軸電流指令手段62と、リニア電動機69のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などが設定される電動機パラメータ設定手段63とを備えている。
【0118】
また、この制御装置1fは、リニア電動機69の電気角“θ”を検出する電気角検出手段70と、リニア電動機69の3相電流を検出して、出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”を出力する電流検出手段68と、電流検出手段68から出力される出力電流信号“Iuf”、“Ivf”、“Iwf”に基づき、d軸電流信号“Idf”、q軸電流信号“Iqf”を演算する3相/2相変換手段71とを備えている。
【0119】
さらに、この制御装置1fは、電動機パラメータ設定手段63から出力されるリニア電動機69のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、電気角検出手段70の検出結果に基づき、d軸電流指令手段61から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令手段62から出力されるq軸電流指令“Iqco”を補正して、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”を出力する電流指令補正手段64と、電流指令補正手段64から出力されるd軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”、3相/2相変換手段71から出力されるd軸電流信号“Idf”、q軸電流信号“Iqf”に基づき、d軸電圧指令“Vdc”、q軸電圧指令“Vqc”を演算する電流制御手段65と、電流制御手段65から出力されるd軸電圧指令“Vdc”、q軸電圧指令“Vqc”に基づき、3相の電圧指令値“V”、“V”、“V”を演算する2相/3相変換手段66と、2相/3相変換手段66から出力される電圧指令値“V”、“V”、“V”に基づき、駆動電圧を出力してリニア電動機69を駆動する駆動手段67とを備えている。
【0120】
さらに、この制御装置1fは、リニア電動機69の振動または騒音を検出して脈動“dFrf”を出力する脈動検出手段72と、脈動検出手段72の出力に基づいて、電流指令補正手段64で使用されるパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”のうち、リニア電動機69の振動、騒音に関係するパラメータ、例えばパラメータ“a”、“p”などを学習する補正パラメータ学習手段73とを備えている。
【0121】
次に、図11、図12を参照して制御装置1fの動作を説明する。
【0122】
リニア電動機69の電気角“θ”は、リニアスケール等の電気角検出手段70を介して検出され、速度を制御する速度制御系(d軸電流指令手段61、q軸電流指令手段62、電流指令値補正手段64によって構成される部分)74に入力される。
【0123】
速度制御系64では、電気角検出手段70から出力される電気角“θ”に基づき、リニア電動機69の実速度が算出され、その速度と速度指令値との速度偏差信号から、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”が生成されて電流制御手段65に出力される。
【0124】
また、電流指令補正手段8は、次に述べる手順で、推力に垂直な方向(Z方向)の振動を低減させるとともに、振動方向の力の脈動“dFrf”が小さくなるように補正される。
【0125】
まず、電流指令補正手段64によって、d軸電流指令手段61から出力されるd軸電流指令“Idco”、q軸電流指令手段62から出力されるq軸電流指令“Iqco”を補正して、電流指令補正信号“dIdc”、d軸電流指令値“Idc”、q軸電流指令値“Iqc”などが生成されるとき、リニア電動機69が発生する振動方向の力“F”は、下式のような電気角“θ”の定数項、(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分の和となる。
【数37】

【0126】
ここで、“z”は振動方向である。
【0127】
上式より、調整振幅“a”、“a”と、調整位相“p”、“p”の初期値が下式を満たすように求められる。
【数38】

【0128】
また、脈動検出手段72では、振動または騒音“dFrf”が検出され、補正パラメータ学習手段22に出力される。
【0129】
補正パラメータ学習手段22では、脈動検出手段21で検出した振動または騒音“dFrf”を用いて、調整振幅“a”、と、調整位相“p”が学習される。
【0130】
この際、例えば下式のように、電流指令補正信号“dIdc”が“0”(電流指令補正信号が最大または最小)となる時点の振動または騒音“dFrf”を用いて、調整位相“p”が学習され、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“p”が最適化される。
【数39】

【0131】
ここで、“gpd”は学習ゲイン、“old”は学習前の値、“new”は学習後の値である。
【0132】
また、例えば下式のように電流指令補正信号“dIdc”の時間微分が“0”となる時点の振動または騒音“dFrf”を用いて調整振幅“a”が学習され、電流指令値補正手段5で使用されるパラメータ“a”が最適化される。
【数40】

【0133】
ここで、“gad”は学習ゲインである。
【0134】
このように、第6の実施形態では、[数38]を満たすように、電動機パラメータ設定手段63のパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”などを設定し、これらパラメータ“n”、“a”、“p”、“a”、“p”、電気角検出手段70の検出結果などに基づき、d軸電流指令手段61から出力されるd軸電流指令“Idco”と、q軸電流指令手段62から出力されるq軸電流指令“Iqco”とを補正し、リニア電動機69が発生する振動方向の力“F”に含まれる(6×n)f正弦成分、(6×n)f余弦成分、(6×(n+1))f正弦成分、(6×(n+1))f余弦成分を零にするとともに、電流指令値補正手段64で生成される電流指令補正信号“dIdc”の時間微分が零になるときの脈動“dFrf”に基づき、補正パラメータ学習手段73によって、パラメータ“p”、“a”を調整するようにしている。このため、6×nと6×(n+1)のリプル成分などを抑制でき、リニア電動機69のトルクリプルを大幅に低減させつつ、リニア電動機69の振動、騒音を大幅に低減させることができる。
【0135】
なお、第6の実施形態では、リニア電動機69を制御するようにしているが、このようなリニア電動機69以外の電動機、例えばディスクモータ等、推力に直交する加振力が発生する電動機などを制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明による制御装置の第1の実施形態を示すブロック図。
【図2】図1に示す電流指令値補正手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図3】本発明による制御装置の第2の実施形態を示すブロック図。
【図4】図3に示す補正パラメータ学習手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図5】本発明による制御装置の第3の実施形態を示すブロック図。
【図6】図5に示す補正パラメータ学習手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図7】本発明による制御装置の第4の実施形態を示すブロック図。
【図8】図7に示す補正パラメータ変更手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図9】本発明による制御装置の第5の実施形態を示すブロック図。
【図10】図9に示す補正パラメータ切替手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図11】本発明による制御装置の第6の実施形態を示すブロック図。
【図12】図11に示す補正パラメータ学習手段の詳細な動作例を示す説明図。
【図13】従来から知られている制御装置の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0137】
1a〜1f:制御装置、2:d軸電流指令手段、3:q軸電流指令手段、4:電動機パラメータ設定手段、5:電流指令補正手段、6:電流制御手段(3相駆動手段)、7:2相/3相変換手段(3相駆動手段)、8:駆動手段(3相駆動手段)、9:電流検出手段、10:電動機、11:回転角検出手段、12:3相/2相変換手段、13:速度制御系、21:脈動検出手段、22:補正パラメータ学習手段、31:脈動推定手段、32:補正パラメータ学習手段、41:温度検出手段、42:補正パラメータ変更手段、51:運転条件設定手段、52:補正パラメータ切替手段、61:d軸電流指令手段、62:q軸電流指令手段、63:電動機パラメータ設定手段、64:電流指令補正手段、65:電流制御手段(3相駆動手段)、66:2相/3相変換手段(3相駆動手段)、67:駆動手段(3相駆動手段)、68:電流検出手段、69:リニア電動機、70:電気角検出手段、71:3相/2相変換手段、72:脈動検出手段、73:補正パラメータ学習手段、74:速度制御系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の実測回転速度と予め設定されている設定回転速度との偏差に応じて、d軸電流指令およびq軸電流指令を生成するd軸/q軸電流指令手段と、
前記電動機の回転を検出して電気角を出力する回転角検出手段と、
前記電動機の特性に対応したパラメータが設定される電動機パラメータ設定手段と、
前記回転角検出手段から出力される電気角および前記電動機パラメータ設定手段から出力されるパラメータに応じて、前記d軸/q軸電流指令手段から出力されるd軸電流指令およびq軸電流指令に対し、前記電動機が発生するトルクの高調波リプル成分を抑制するのに必要な補正を行い、補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令値補正手段と、
この電流指令値補正手段から出力される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値並びに前記電流検出手段から出力される電動機の出力電流検出信号に基づき、3相の駆動電圧を生成して前記電動機に供給する3相駆動手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記電動機の振動または騒音を検出する脈動検出手段と、
この脈動検出手段の検出結果並びに前記電流指令値補正手段で生成される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値に基づき、前記電動機の振動または騒音を最少にするのに必要なパラメータを求め、前記電流指令値補正手段で使用されるパラメータを補正する処理または報知装置から報知する処理のいずれかを行う補正パラメータ学習手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置において、
前記3相駆動手段で生成される電圧指令値、前記電流検出手段から出力される電動機の出力電流検出信号および前記回転角検出手段から出力される回転角に基づき、前記電動機の脈動を推定する脈動推定手段と、
前記電流指令値補正手段で生成される補正済みのd軸電流指令値、q軸電流指令値および前記脈動検出手段の推定結果に基づき、前記電動機の振動または騒音を最小にするのに必要なパラメータを求め、前記電流指令値補正手段で使用されるパラメータを補正する処理、または報知装置から報知する処理のいずれかを行う補正パラメータ学習手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置において、
前記電動機の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段で検出された電動機の温度、前記電流指令値補正手段で生成される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値に基づき、前記電動機の振動または騒音を最小にするのに必要なパラメータを求め、前記電流指令値補正手段で使用されるパラメータを変更する処理または報知装置から報知する処理のいずれかを行う補正パラメータ変更手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置において、
運転条件が設定される運転条件設定手段と、
この運転条件設定手段に設定されている運転条件に応じて前記電流指令補正手段のパラメータを切り替える補正パラメータ切替手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
リニア電動機の実測速度と予め設定されている設定速度との偏差に応じて、d軸電流指令およびq軸電流指令を生成するd軸/q軸電流指令手段と、
前記リニア電動機の速度を検出して電気角を出力する電気角検出手段と、
前記リニア電動機の特性に対応したパラメータが設定される電動機パラメータ設定手段と、
前記電気角検出手段から出力される電気角および前記電動機パラメータ設定手段から出力されるパラメータに応じて、前記d軸/q軸電流指令手段から出力されるd軸電流指令およびq軸電流指令に対し、前記リニア電動機が発生するZ方向の高調波リプル成分を抑制するのに必要な補正を行い、補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令値補正手段と、
この電流指令値補正手段から出力される補正済みのd軸電流指令値、q軸電流指令値および電流検出手段から出力されるリニア電動機の出力電流検出信号に基づき、3相の駆動電圧を生成して前記リニア電動機に供給する3相駆動手段と、
前記リニア電動機の振動または騒音を検出する脈動検出手段と、
この脈動検出手段の出力、前記電流指令値補正手段で生成される補正済みのd軸電流指令値およびq軸電流指令値に基づき、前記リニア電動機の振動または騒音を最小にするのに必要なパラメータを求め、前記電流指令値補正手段で使用されるパラメータを補正する処理または報知装置から報知する処理のいずれかを行う補正パラメータ学習手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−288076(P2006−288076A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104447(P2005−104447)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】