説明

加硫温度調整システム

【課題】 被加硫物の加硫成形時における加硫温度を簡易に変更し得る加硫温度調整システムを得る。
【解決手段】 原動設備の温水源に媒体供給ポンプ12が接続され、媒体供給ポンプ12から予め定められた例えば150℃の温度の温水が送り出される。内部に収納されたタイヤTを加硫成形する加硫機14とこの媒体供給ポンプ12との間は、配管20で接続されているが、温水を加熱するヒータ16及び温水を冷却するクーラ18が、加硫機14と媒体供給ポンプ12との間に熱交換器として配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加硫物の加硫成形時における加硫温度を簡易に変更し得る加硫温度調整システムに関し、特にタイヤの加硫成形に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
車両用のタイヤ等を加硫成形する為に従来より稼働している加硫機としては、メインの原動設備から加硫媒体である温水が配管を介して供給される形をとっているものが知られている。そして、このような温水を用いた加硫機では、その原動設備側における温水の設定温度に加硫温度が限定されることになる。
【0003】
例えば、図2に示すような従来の構造では、相互に温度の異なる二系統の温水源からそれぞれポンプ112、114により、逆止弁116A、116B及び開閉弁118A、118Bを介して、加硫機120側に温水が供給されるようになっている。尚、ここで例えばポンプ112からは150℃の温度の温水を供給し、また、ポンプ114からは180℃の温度の温水を供給することが考えられる。
【特許文献1】特開2000−108128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような温水を用いた加硫成形では、前述のように原動設備から供給される温水の温度に加硫温度が限定されることになる。従って、タイヤのサイズや種類に合わせて加硫条件を変更するべく、加硫温度を簡易に変えることができなかった。
本発明は上記事実を考慮し、被加硫物の加硫成形時における加硫温度を簡易に変更し得る加硫温度調整システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る加硫温度調整システムは、加硫媒体を送り出す媒体供給ポンプと、
媒体供給ポンプから送り出された加硫媒体を加熱及び冷却し得る熱交換器と、
熱交換器を通過した加硫媒体が送り込まれ且つ、収納された被加硫物を加硫成形する加硫機と、
を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項によれば、予め定められた温度の加硫媒体が媒体供給ポンプにより熱交換器側に送り出され、熱交換器でこの加硫媒体が加熱或いは冷却される。さらに、この熱交換器を通過した加硫媒体が加硫機に送り込まれ、加硫機内に収納された被加硫物がこの加硫媒体によって加熱されて加硫される。
【0007】
従って、加硫媒体を供給する媒体供給ポンプだけでなく、この加硫媒体の温度を調整する熱交換器を各加硫機に対応して設けるようにすれば、加硫機内に供給される加硫媒体の温度を自由に変更可能となる。これに伴い、本請求項の加硫温度調整システムでは、被加硫物の加硫成形時における加硫温度を簡易に変更可能となり、被加硫物である例えばタイヤのサイズや種類が変わった場合でも、各加硫機において最適な加硫条件に簡易に設定できるようになる。
【0008】
請求項2に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、熱交換器が、加硫媒体を加熱するヒータ及び加硫媒体を冷却するクーラとされるという構成を有している。
【0009】
つまり、本請求項では、熱交換器がヒータ及びクーラとされたことで、簡易に加硫媒体を加熱或いは冷却できるようになり、加硫機内に供給される加硫媒体の温度をより一層幅広く自由に変更可能となった。この結果として、被加硫物のサイズや種類が変わった場合でも、各加硫機において最適な加硫条件に簡易に設定できるという請求項1の作用効果をより確実に奏するようになった。
【0010】
請求項3に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、熱交換器と加硫機との間に加硫媒体の温度を検出する温度センサが配置され、この温度センサが検出した温度を基にして、加硫媒体の温度を熱交換器による加熱或いは冷却で調整するという構成を有している。
【0011】
つまり、本請求項によれば、温度センサで検出した温度をフィードバックして、熱交換器において加硫媒体の温度を調整するようにした為、加硫媒体の温度を精度良く調整できるようになった。
【0012】
請求項4に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項では請求項1と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、熱交換器が、加硫媒体を加熱するヒータ及び加硫媒体を冷却するクーラとされ、温度センサが、ヒータを通過した加硫媒体の温度を検出する第1温度センサ及び、クーラを通過した加硫媒体の温度を検出する第2温度センサとされるという構成を有している。
【0013】
つまり、本請求項では、熱交換器がヒータ及びクーラとされるだけでなく、第1温度センサ及び第2温度センサがこれらを通過した加硫媒体の温度を検出するようにした。このことで、加硫機内に供給される加硫媒体の温度をより一層幅広く自由に変更可能となるだけでなく、第1温度センサ及び第2温度センサで検出した温度をフィードバックして、加硫媒体の温度を精度良く調整できるようになった。
【0014】
請求項5に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項では請求項3と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、熱交換器に供給される熱媒体の供給量を調整するコントロール弁を有し、温度センサが検出した温度を基に、コントロール弁が熱交換器に供給される熱媒体の供給量を変化させて、加硫媒体の温度を調整するという構成を有している。
【0015】
つまり、本請求項によれば、温度センサが検出した温度を基にして、熱交換器に供給される熱媒体の供給量をコントロール弁によって変化させて、加硫媒体の温度を調整することになるので、加硫媒体の温度を熱交換器においてより一層精度良く調整できるようになった。
【0016】
請求項6に係る加硫温度調整システムの作用を以下に説明する。
本請求項では請求項2と同様の構成を有して同様に作用するが、さらに、流路を切り換える切換弁が媒体供給ポンプとヒータ及びクーラとの間に配置され、この切換弁で流路を切り換えて、ヒータ側或いはクーラ側の何れか一方に媒体供給ポンプからの加硫媒体を送り込むという構成を有している。
【0017】
つまり、本請求項によれば、加硫媒体を加熱するか冷却するかの判断に合わせて、切換弁によって流路を切り換え、ヒータ側或いはクーラ側の何れか一方にのみ媒体供給ポンプからの加硫媒体が送り込まれるので、加硫機内に供給される加硫媒体の温度を効率良く調整可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明の上記構成によれば、被加硫物の加硫成形時における加硫温度を簡易に変更し得る加硫温度調整システムを提供できるという優れた効果を有し、特にタイヤの加硫成形に関して優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る加硫温度調整システムの一実施の形態を、タイヤの加硫成形を通じて説明する。図1は、本実施の形態に係る加硫温度調整システム10の全体の配管系統を表す図であり、この図1に示すように、本実施の形態に係る加硫温度調整システム10には、内部に収納された被加硫物であるタイヤTを加硫成形する加硫機14が含まれている。
【0020】
また、図示しない原動設備の温水源に媒体供給ポンプ12が接続され、この媒体供給ポンプ12から予め定められた例えば150℃の温度の加硫媒体である温水を送り出すようになっている。これら加硫機14と媒体供給ポンプ12との間は配管20で接続されているが、温水を加熱するヒータ16及び温水を冷却するクーラ18が、これら加硫機14と媒体供給ポンプ12との間に熱交換器として配置されている。
【0021】
具体的には、媒体供給ポンプ12からの配管20が分岐されていて、流路をそれぞれ切り換える為の一対の切換弁22、32が配管20中にそれぞれ配置されることになる。そして、一方の切換弁22の下流側にヒータ16が配置されており、また、他方の切換弁32の下流側にクーラ18が配置されている。この為、ヒータ16側或いはクーラ18側の何れか一方に切換弁22、32で流路を切り換えて、媒体供給ポンプ12から送り出された温水を送り込むようになっている。
【0022】
このヒータ16には、熱媒体であるスチームを送り出す加熱用ポンプ28が加熱用パイプ42を介して接続されている。この加熱用パイプ42はヒータ16を貫通しているものの、ヒータ16内で熱交換して加硫媒体である温水を加熱するように、ヒータ16内で例えば蛇行した構造になっている。また、ヒータ16を貫通した加熱用パイプ42は熱源46にまでさらに延びていて、この熱源46によって再加熱されてスチームとされた後、加熱用ポンプ28からヒータ16側に再度送り出されるようになる。
【0023】
他方、クーラ18には、熱媒体である冷却水を送り出す冷却用ポンプ38が冷却用パイプ44を介して接続されている。この冷却用パイプ44はクーラ18を貫通しているものの、クーラ18内で熱交換して加硫媒体である温水を冷却するように、クーラ18内で例えば蛇行した構造になっている。また、クーラ18を貫通した冷却用パイプ44は冷却源48にまでさらに延びていて、この冷却源48によって再冷却された冷却水は、冷却用ポンプ38からクーラ18側に再度送り出されるようになる。
【0024】
但し、加熱用ポンプ28とヒータ16との間の加熱用パイプ42の箇所には、ヒータ16に供給されるスチームの供給量を調整する為の第1コントロール弁30が配置されており、また、冷却用ポンプ38とクーラ18との間の冷却用パイプ44の箇所には、クーラ18に供給される冷却水の供給量を調整する為の第2コントロール弁40が配置されている。従って、これら第1コントロール弁30及び第2コントロール弁40の開度を変えることにより、ヒータ16側に送られるスチームの量やクーラ18側に送られる冷却水の量が変化する結果、温水の温度が調整されるようになる。
【0025】
ヒータ16と加硫機14との間の配管20の部分には、第1温度センサ24及び第1開閉バルブ26が連続して配置されていて、第1温度センサ24がヒータ16を通過した直後の温水の温度を検出すると共に、第1開閉バルブ26がこの配管20内の温水の流れを停止し得るようになっている。この為、切換弁22及び第1開閉バルブ26が連動して開放されてヒータ16内に温水が流されるのに伴い、第1温度センサ24が検出した温度を基に第1コントロール弁30の開度が変えられて、ヒータ16に供給されるスチームの供給量が変化するようになる。
【0026】
クーラ18と加硫機14との間の配管20の部分には、第2温度センサ34及び第2開閉バルブ36が連続して配置されていて、第2温度センサ34がクーラ18を通過した直後の温水の温度を検出すると共に、第2開閉バルブ36がこの配管20内の温水の流れを停止し得るようになっている。この為、切換弁32及び第2開閉バルブ36が連動して開放されてクーラ18内に温水が流されるのに伴い、第2温度センサ34が検出した温度を基に第2コントロール弁40の開度が変えられて、クーラ18に供給される冷却水の供給量が変化するようになる。
【0027】
一方、これら第1開閉バルブ26及び第2開閉バルブ36の下流側で配管20は結合されて一体とされ、前述の加硫機14がこのさらに下流側に配置されている。この結果として、熱交換器であるヒータ16及びクーラ18を通過した温水が加硫機14に送り込まれるようになっている。
【0028】
尚、加硫機14内で加硫成形される各タイヤTに対応してこの配管20は加硫機14の直前において分岐されてから、加硫機14内に送り込まれている。さらに、加硫機14内においてタイヤTの加硫成形に用いられた後、加硫機14内から排出された温水は、図示しない配管を経由して、原動設備の温水源に戻されるようになっている。また、図1では1台の加硫機14のみが図示されているが、加硫機14が複数台有る場合には、各加硫機14に対応して、ヒータ16及びクーラ18等を配置することが考えられる。
【0029】
次に、本実施の形態に係る加硫温度調整システム10の作用を以下に説明する。
本実施の形態に係る加硫温度調整システム10によれば、予め定められた温度の温水が媒体供給ポンプ12により送り出され、媒体供給ポンプ12とヒータ16及びクーラ18との間に配置される切換弁22、32が流路を切り換えて、この温水がヒータ16側で加熱されるか、或いはクーラ18側で冷却されるようになる。さらに、ヒータ16或いはクーラ18を通過したこの温水が加硫機14に送り込まれ、加硫機14内に収納された被加硫物であるタイヤTがこの温水によって加熱されて加硫される。
【0030】
但しこの際、ヒータ16と加硫機14との間に配置される第1温度センサ24及び、クーラ18と加硫機14との間に配置される第2温度センサ34が、ヒータ16及びクーラ18を通過したこの温水の温度を検出することになる。そして、第1温度センサ24が検出した温度を基にして、第1コントロール弁30がヒータ16に供給されるスチームの供給量を変化させると共に、第2温度センサ34が検出した温度を基にして、第2コントロール弁40がクーラ18に供給される冷却水の供給量を変化させて、温水の温度を調整している。
【0031】
従って、温水を供給する媒体供給ポンプ12だけでなく、この温水の温度を調整する熱交換器とされるヒータ16及びクーラ18を各加硫機14に対応して設け、切換弁22、32で流路を切り換えてヒータ16側或いはクーラ18側の何れか一方に媒体供給ポンプ12から送り出された温水を送り込むようにすれば、各加硫機14内に供給される温水の温度を自由に変更可能となる。
【0032】
これに伴い、本実施の形態に係る加硫温度調整システム10では、タイヤTの加硫成形時における加硫温度を簡易に変更可能となり、被加硫物であるタイヤTのサイズや種類が変わった場合でも、各加硫機14において最適な加硫条件に簡易に設定できるようになる。
【0033】
尚この際、温水を加熱するか冷却するかの判断に合わせて、媒体供給ポンプ12とヒータ16及びクーラ18との間に配置される切換弁22、32が流路を切り換え、ヒータ16側或いはクーラ18側の何れか一方にのみ媒体供給ポンプ12から送り出された温水が送り込まれるので、加硫機14内に供給される温水の温度を効率良く変更可能となる。
【0034】
一方、本実施の形態では、熱交換器が、温水を加熱するヒータ16及び温水を冷却するクーラ18とされたことで、簡易に温水を加熱或いは冷却できるようになり、加硫機14内に供給される温水の温度をより一層幅広く自由に変更可能となった。
【0035】
他方、本実施の形態では、第1温度センサ24及び第2温度センサ34が検出した温水の温度をフィードバックして、コントロール弁30、40がヒータ16に供給されるスチームやクーラ18に供給される冷却水の供給量を変化させて、温水の温度を調整することになるので、ヒータ16及びクーラ18における温水の温度調整をより一層精度良くできるようになった。
【0036】
尚、上記実施の形態では、ヒータ16及びクーラ18を必要な加硫温度に合わせて選択的に使用するようにしたが、例えば媒体供給ポンプ12から送り出される温水の温度が低めに設定されている場合には、加硫成形時においてヒータ16で加熱された温水を加硫機14に送り込み、加硫成形終了後にクーラ18で冷却された温水を加硫機14に送り込んで、加硫機14を冷却することも考えられる。また、上記の本実施の形態に係る加硫温度調整システム10はタイヤの加硫成形に用いられるものであるが、他の被加硫物の加硫成形に本発明を適用することにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態に係る加硫温度調整システムの配管系統を表す図である。
【図2】従来構造の配管系統を表す図である。
【符号の説明】
【0038】
10 加硫温度調整システム
12 媒体供給ポンプ
14 加硫機
16 ヒータ(熱交換器)
18 クーラ(熱交換器)
22 切換弁
24 第1温度センサ
32 切換弁
34 第2温度センサ
30 第1コントロール弁
40 第2コントロール弁
T タイヤ(被加硫物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫媒体を送り出す媒体供給ポンプと、
媒体供給ポンプから送り出された加硫媒体を加熱及び冷却し得る熱交換器と、
熱交換器を通過した加硫媒体が送り込まれ且つ、収納された被加硫物を加硫成形する加硫機と、
を有することを特徴とする加硫温度調整システム。
【請求項2】
熱交換器が、加硫媒体を加熱するヒータ及び加硫媒体を冷却するクーラとされることを特徴とする請求項1記載の加硫温度調整システム。
【請求項3】
熱交換器と加硫機との間に加硫媒体の温度を検出する温度センサが配置され、この温度センサが検出した温度を基にして、加硫媒体の温度を熱交換器による加熱或いは冷却で調整することを特徴とする請求項1記載の加硫温度調整システム。
【請求項4】
熱交換器が、加硫媒体を加熱するヒータ及び加硫媒体を冷却するクーラとされ、
温度センサが、ヒータを通過した加硫媒体の温度を検出する第1温度センサ及び、クーラを通過した加硫媒体の温度を検出する第2温度センサとされることを特徴とする請求項1記載の加硫温度調整システム。
【請求項5】
熱交換器に供給される熱媒体の供給量を調整するコントロール弁を有し、温度センサが検出した温度を基に、コントロール弁が熱交換器に供給される熱媒体の供給量を変化させて、加硫媒体の温度を調整することを特徴とする請求項3記載の加硫温度調整システム。
【請求項6】
流路を切り換える切換弁が媒体供給ポンプとヒータ及びクーラとの間に配置され、この切換弁で流路を切り換えて、ヒータ側或いはクーラ側の何れか一方に媒体供給ポンプからの加硫媒体を送り込むことを特徴とする請求項2記載の加硫温度調整システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−15487(P2006−15487A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192420(P2004−192420)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】