加速度センサ
【課題】長寿命化、歩留率の向上を実現する。
【解決手段】本体1は前記一面が開口した箱状の枠体部1aとその側壁部1a1内側に位置する可動体部1bとを有し、可動体部1bは当該可動体部1b両側と枠体側面部1aの内側とを接続する一対のビーム1cを回動軸として回動可能に設けられており、可動体部1bの第一の固定基板2側には可動電極6が設けられており、第一の固定基板2には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極4A,4Bが可動電極6に対向するように設けられており、平面視において第一の固定電極4Aと第二の固定電極4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、間隔部分7Aと対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとした場合において、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方に凹部8を設けた。
【解決手段】本体1は前記一面が開口した箱状の枠体部1aとその側壁部1a1内側に位置する可動体部1bとを有し、可動体部1bは当該可動体部1b両側と枠体側面部1aの内側とを接続する一対のビーム1cを回動軸として回動可能に設けられており、可動体部1bの第一の固定基板2側には可動電極6が設けられており、第一の固定基板2には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極4A,4Bが可動電極6に対向するように設けられており、平面視において第一の固定電極4Aと第二の固定電極4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、間隔部分7Aと対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとした場合において、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方に凹部8を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、加速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロマシンニング技術を利用して可動電極と固定電極が形成された加速度センサチップが提案されている。
【0003】
例えば、特開2010−272696号公報(特許文献1)に記載された加速度センサである。
【0004】
この加速度センサは、静電容量型の加速度センサであって、図13に示すように、半導体基板であるSOI基板を用いて形成されたセンサ本体1’と、第一のガラス基板を用いて形成されセンサ本体1’の一表面側(図13における上面側)に固定された第一の固定基板2’と、第2のガラス基板を用いて形成されセンサ本体1’の他表面側に固定された第2の固定基板3’とを備えている。
【0005】
センサ本体1’は、2つの平面視矩形状の開口窓が上記一表面に沿って並設されたフレーム部11’と、フレーム部11’の各開口窓の内側において各固定基板2’,3’から離間して配置された2つの平面視矩形状の重り部13’と、フレーム部11’の各開口窓の内側で重り部13’を挟む形で配置され上記一表面側においてフレーム部11’と重り部13’とを連結した各一対の支持ばね部14’とを備えており、フレーム部11’が各固定基板2’,3’と接合されている。
【0006】
第一の固定基板2’において各重り部13’それぞれに対向する部位ごとに金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極25’が並設されるとともに、各重り部13’に可動電極15’が設けられており、また、センサ本体1の重り部13は、支持ばね部14’の両側の部分で平面サイズが同じであるにもかかわらず互いに質量が異なっている。
【0007】
そして注目すべきは、センサ本体1’は、隣り合う開口窓それぞれに配置された2つの重り部13’に関して、平面視において一方の重り部13’が他方の重り部13’を180°回転させた形で形成されており、これらの重り部13’が振動することにより、対をなす固定電極25’と可動電極15’との対向面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。当該静電容量の変化を検出することで図13におけるx軸方向とz軸方向の加速度を検知することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−272696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図13に示すように、上記従来の加速度センサは平面視において二つの固定電極2’に挟まれた第一の固定基板2’の領域を間隔部分7A’とし、間隔部分7A’と対向する重り部13’上の領域を間隔対向部分7B’とした場合、間隔部分7A’と間隔対向部分7Bとの間の距離が近接していた。
【0010】
その結果、第一の固定基板2’と重り部13’が帯電した際、両者間に静電気力に加わり重り部13’が変位し、第一の固定基板2’と接触する可能性があった。例えば第一の固定基板2’とフレーム部11’を陽極接合によって直接接合すると、大きな静電気力が加わることで第一の固定基板2’と重り部13’が強い力で接触し、両者が固着することが考えられ、その結果として特性異常が起こる。
【0011】
本願発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加速度センサの可動部が対向部分に接触しづらい加速度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の加速度センサは本体と、本体の一面に形成された第一の固定基板とを有し、前記本体は前記一面が開口した箱状の枠体部とその枠体部内側に位置する可動体部とを有し、前記可動体部は当該可動体部両側と前記枠体部の内側とを接続する一対のビームを回動軸として回動可能に設けられており、前記可動体部の前記第一の固定基板側には可動電極が設けられており、前記第一の固定基板には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極が前記可動電極に対向するように設けられており、平面視において前記第一の固定電極と前記第二の固定電極に挟まれた前記第一の固定基板の領域を間隔部分とし、前記間隔部分と対向する可動体部の領域を間隔対向部分とした場合において、前記間隔部分と前記間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けたこと特徴とする。
【0013】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一の固定基板を薄肉にすることで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0014】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一の固定基板を貫通することで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0015】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一及び第二の固定電極を厚肉にすることで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0016】
またこの加速度センサの前記凹部は前記可動体部における前記間隔対向部分以外の前記可動電極上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層を堆積させる事で前記間隔対向部分に形成することが好ましい。
【0017】
またこの加速度センサの前記凹部は前記可動体部を薄肉にすることで前記間隔対向部分に形成することが好ましい。
【0018】
またこの加速度センサの前記枠体部は側壁部と底板部とを有し、前記底板部は第二の固定基板で形成され、前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられ前記第一の固定基板と前記第二の固定基板はそれぞれ前記側壁部と陽極接合によって直接接合することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の加速度センサは、間隔部分と間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けることで第一の固定基板と可動体部が帯電した場合であっても可動体部が対向する固定基板に接触しづらくすることができ、長寿命化、歩留率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願実施形態1の半導体マイクロデバイスを示し、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略断面図である。
【図2】同上の半導体マイクロデバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの説明分解斜視図である。
【図4】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略分解斜視図である。
【図5】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの本体部を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略下面図である。
【図6】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサを示し、図5(a)のD−D’における概略断面図である。
【図7】同上の半導体マイクロデバイスの要部説明図である。
【図8】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図9】本願実施形態2の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図10】本願実施形態3の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図11】本願実施形態4の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図12】本願実施形態5の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図13】特許文献1の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1〜8は実施形態1にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0022】
この半導体マイクロデバイスは本体1と、本体1の一面に形成された第一の固定基板2とを有する加速度センサAを備え、本体1は前記一面が開口した箱状の枠体部1aとその側壁部1a1内側に位置する可動体部1bとを有し、可動体部1bは当該可動体部1b両側と枠体側面部1aの内側とを接続する一対のビーム1cを回動軸として回動可能に設けられており、可動体部1bの第一の固定基板2側には可動電極6が設けられており、第一の固定基板2には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極4A,4Bが可動電極6に対向するように設けられており、平面視において第一の固定電極4Aと第二の固定電極4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、間隔部分7Aと対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとした場合において、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方(本実施形態では間隔対向部分7B)に凹部8が設けられている。
【0023】
また、この加速度センサAの凹部8は可動体部1bを薄肉にすることで間隔対向部分7Bに形成されている。
【0024】
また、この加速度センサAの枠体部1aは側壁部1a1と底板部1a2とを有し、底板部1a2は第二の固定基板3で形成され、第二の固定基板3にはダミー電極5が可動体部1a側表面に設けられ、第一の固定基板2と第二の固定基板3はそれぞれ側壁部1a1と陽極接合によって直接接合されている。
【0025】
以下、実施形態1のより具体的な説明を行う。
【0026】
本実施形態の半導体マイクロデバイスは、図1および図2に示すように、MEMSチップの一種である加速度センサチップからなる加速度センサAと、加速度センサAが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0027】
パッケージ101は、一面(図1(b)における上面)が開放された箱状に形成されるとともに加速度センサAに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102と、プラスチックパッケージ本体102の上記一面を閉塞する形でプラスチックパッケージ本体102に気密的に接合されるパッケージ蓋(リッド)103とで構成されている。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により製品名称や製造日時などを示す表記113が形成されている。
【0028】
加速度センサAは、静電容量型の加速度センサチップであって、図3ないし図6に示すように、半導体基板であるSOI基板を用いて形成された本体1と、ガラス基板を用いて形成され枠体部1aの開口面側(図6における上面側)に固定された第一の固定基板2と、ガラス基板を用いて枠体部1aの底板部1a2として形成され前記開口面側と反対面側に固定された第二の固定基板3とを備えている。ここにおいて、本体1および各固定基板2,3の外周形状は矩形状であり、各固定基板2,3は本体1と同じ外形寸法に形成されている。また、本実施形態では、半導体基板として、シリコン基板からなる支持基板上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)上にn形のシリコン層(活性層)を有するSOI基板を用いているが、SOI基板に限らず、例えば、シリコン基板を用いてもよい。また、枠体部1aは側壁部1a1と底板部1a2が別部材となっていることで容易に製造することが可能となるが、例えば、一枚のシリコン基板をくりぬいて一体に形成してもよい。
【0029】
本体1は、2つの平面視矩形状の開口窓14が上記一表面に沿って並設された側壁部1a1と、側壁部1a1の各開口窓14の内側において各固定基板2,3からそれぞれ2μm離間して配置された2つの平面視矩形状の可動体部1bと、側壁部1a1の各開口窓14の内側で可動体部1bを挟む形で配置され上記一表面側において側壁部1a1と可動体部1bとを連結した各一対のビーム1cとを備えており、側壁部1a1が各固定基板2,3と接合されている。なお、加速度センサAは、側壁部1a1の周部が全周に亘って各固定基板2,3の周部と接合されており、側壁部1a1と各固定基板2,3とで、チップサイズパッケージが構成されている。
【0030】
ところで、本体1の側壁部1a1には、各開口窓14それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔15が2つの開口窓14と同じ方向に並設されており、各窓孔15の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対のビーム1cの並設方向に沿って配置されている。
【0031】
各固定子16は、窓孔15の内周面との間、可動体部1bの外周面との間、および隣り合う固定子16との間に隙間が形成されており、互いに分離独立して電気的に絶縁されており、側壁部1a1とも電気的に絶縁されている。ここにおいて、各固定子16は、両固定基板2,3と接合されている。また、本体1の上記一表面側において、各固定子16には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成され、側壁部1a1において隣り合う窓孔15の間の部位にも、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成されている。
【0032】
また、第一の固定基板2には、各パッド18を各別に露出させる複数(ここでは、5つ)のテーパ状の貫通孔17が形成されている。ここで、第一の固定基板2は、各貫通孔17を、本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成してあり、本体1において各パッド18それぞれの外周縁から離れた各部位に各貫通孔17の周部が接合されるように開口面積を設定してある。本実施形態における加速度センサAは、静電容量型の加速度センサチップであり、各固定子16に形成された各パッド18は後述の各固定電極4に電気的に接続され、側壁部1a1に形成されたパッド18は後述の各可動電極6に電気的に接続されている。以上説明した複数のパッド18は、加速度センサAの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。なお、加速度センサAは、各パッド18を、第一の固定基板2における本体1側とは反対側の表面において当該加速度センサAの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置して適宜の配線により各固定電極4および各可動電極6と電気的に接続するようにしてもよい。ここで、図3に示すとおり、平面視において固定電極4A,4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、これに対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとしてある。
【0033】
以下、図3の左側に示した直交座標系のように、可動体部1bが並ぶ方向をy軸方向、本体1の上記一表面に沿う面内でy軸方向に直交する方向をx軸方向、x軸方向とy軸方向とに直交する方向(つまり、本体1の厚み方向)をz軸方向として説明する。
【0034】
加速度センサAにおける各ビーム1cは、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)の役割を果たし、側壁部1a1および可動体部1bに比べて薄肉に形成されており、可動体部1bは、側壁部1a1に対して一対のビーム1cの回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対のビーム1cは、側壁部1a1に対して可動体部1bが揺動自在となるように側壁部1a1と可動体部1bとを連結している。言い換えれば、側壁部1a1の開口窓14の内側に配置される可動体部1bは、当該可動体部1bから相反する2方向へ延長された2つのビーム1cを介して側壁部1a1に揺動自在に支持されている。ここにおいて、側壁部1a1は、SOI基板の支持基板、絶縁層、シリコン層それぞれを利用して形成してある。これに対して、ビーム1cは、SOI基板におけるシリコン層を利用して形成してあり、側壁部1a1よりも薄肉となっている。また、可動体部1bは、SOI基板の支持基板1ba、絶縁層1bb、シリコン層1bcそれぞれを利用して形成してある。加速度センサAの本体1は、バルクマイクロマシニング技術などを利用して形成してある。さらにシリコン層1bcは可動電極6を構成している。また、各固定子16は、SOI基板に適宜加工を施してから当該SOI基板を第二の固定基板3に陽極接合により接合した後に、側壁部1a1から分離されている。
【0035】
可動体部1b及び第一の固定基板2には、絶縁体材料であるSiO2によって当該可動体部1bの過度の変位を規制するストッパ部11が設けられている(図6参照)。これによって、可動体部1bの過度の変位によるビーム1cの破損や各固定基板2,3の破損などを防止することができる。
【0036】
また可動体部1bが、本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への変位するための空間を確保するために、可動体部1bは、支持基板1ba、シリコン層1bc表面をそれぞれ2.2μmの深さ分だけエッチングすることによって薄肉に形成している。これら各部位の厚みを薄くせずに、第一及び第二の固定基板2,3をエッチングすることで薄肉に形成してもよく、後述の通り、凹部8の形成が容易なプロセスを採用することが好ましい。
なお、本実施形態では、SOI基板を用いて加速度センサAを形成しているので、シリコン基板を用いて形成する場合に比べて、各ビーム1cの厚み寸法の精度を高めることができる。
【0037】
ここで図7,8を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0038】
凹部8は可動体部1bにおける間隔対向部分7Bをほぼ全面薄肉にすることで形成されている。本実施形態では可動体部1bの第一の固定基板2側表面の間隔対向部分7B(面積1000×40μm2)のうち、800×40μm2の領域を深さ11μmだけエッチングにより除去している。なお、SOI基板の絶縁層1bbをエッチングストッパに用いると製造容易とすることができる。よって予めシリコン層1bcの厚みを、凹部8の深さに合わせて設定することが好ましい。
【0039】
なお、支持基板1ba、シリコン層1bcをエッチングする際に、あわせて凹部8を設けることが可能なため、プロセス数の増加を招かず、容易に製造することができる。
【0040】
凹部8を設けなければ、例えば、図3のように第一の固定基板2表面の間隔部分7Aに形成した第一および第二の固定電極4A,4Bの距離Lが40μm、可動体部1bの幅Dが1000μm、第一の固定基板2の間隔部分7Aと可動体部1bの間隔対向部7Bとの距離が2.2μm、固定電極4A,4Bと可動電極6との距離が2.0μmであるとき、側壁部1a1と第一の固定基板2を600Vの電圧で陽極接合した場合、可動体部1bには約16mNの吸引力が発生する。これに対し、側壁部1a1と可動体部1bを連結するビーム1cの幅が12μm、厚みが11μm、長さが150μmで、可動体部1b上に形成したストッパ部の高さが1.1μmであるとき、側壁部1a1が0.9μm吸引されたときのバネ反力は3.6mNであり、吸引力がバネ反力を上回り、固着してしまう場合が生じる。
【0041】
一方で、本実施形態の凹部8を設けることで、例えば、上記陽極接合を行った際の吸引力は3.5mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができ、可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0042】
なお、凹部8の平面視による面積、深さの値は大きいほど本願発明の効果は顕著になるので、例えば、凹部8の深さは可動体部1bを貫通する値に設定してもよいし本実施形態でエッチング除去した800×40μm2の領域より広い面積をエッチング除去し凹部8を作成してもよい。一方、当然のことながら凹部8が大きくなると可動体部1bの機械的強度は低下するので、凹部8の形状はばね反力との関係で適宜設定されるべきである。
【0043】
さらに、ここにおいて、本実施形態の半導体マイクロデバイスは、加速度センサAの各ストッパ部11を接触させるに十分な静電界を印加するバイアスユニット9を備えたチップ検査部10を有するICチップBが、加速度センサAとともにパッケージ101に収納されている。なお、本実施形態はあくまで一例であり、バイアスユニット9を用いることなくチップ検査部10を構成してもよい。また、製造時点においてチップ検査を行う場合、チップ検査部10は必ずしも有する必要はない。
【0044】
ICチップBは、ASIC(Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されており、裏面全面がシリコーン系樹脂を用いて接着されている。また、ICチップBには加速度センサAの出力信号を信号処理する信号処理回路も形成されている。なお、ICチップBの機能は、加速度センサAの機能に応じて適宜設計すればよく、加速度センサAと協働するものであればよい。また、ICチップBは、必ずしも、加速度センサAと同一のパッケージ101に収納する必要はなく、この場合は、加速度センサAの各パッド18に一端部が接続されるボンディングワイヤWの他端部をプラスパッケージ本体102のリード112のインナリード112aに接続すればよい。ただし、ICチップBを加速度センサAと同じパッケージ101に収納した場合のほうが、異なるパッケージに収納する場合に比べて、半導体マイクロデバイス全体の小型化および低コスト化を図れるとともに加速度の検出精度の向上を図れる。
【0045】
本実施形態では、ICチップBが1枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、加速度センサAがSOI基板と2つのガラス基板とを用いて形成されており、加速度センサAの厚みがICチップBの厚みに比べて大きくなっているので、上述のプラスチックパッケージ本体102の底部において加速度センサAを搭載する搭載面をICチップBの搭載部位よりも凹ませてある(したがって、加速度センサAを搭載する部位は底部の肉厚が他の部位に比べて薄くなっている)。なお、本実施形態では、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としてあるが、この数値は一例であり、加速度センサAやICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0046】
本実施形態における加速度センサAは、上述の説明から分かるように、各可動体部1bがy軸方向に沿って延長された一対のビーム1cを介して側壁部1a1に連結され、第一の固定基板2において各可動体部1bそれぞれに対向する部位ごとにx軸方向に沿って金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極4が並設されるとともに、各可動体部1bにシリコン層1bcからなる可動電極6が設けられており、z軸方向において対向して対をなす可動電極6と固定電極4との対の間に空隙が形成されている。ここで、各一対のビーム1cは、平面視における可動体部1bのy軸方向に沿った中心線の延長線上に形成されている。
【0047】
また、本体1の可動体部1bは、上記他表面側において可動体部1bのy軸方向の中心線(ここでは、一対のビーム1cを結ぶ直線に一致する)におけるx軸方向の両側に、矩形状に開口され互いに大きさの異なる空間部12,13が形成されており、当該両側の部分で平面サイズが同じであるにもかかわらず互いに質量が異なっている。また、本体1は、可動体部1bにおいて開口サイズの大きな空間部13内に、空間部13の矩形状の内底面の2つの対角線に沿ったX字状の補強壁19が、空間部13の内底面と内側面とに連続する形で形成されている。また、本体1は、隣り合う開口窓14それぞれに配置された2つの可動体部1bに関して、当該本体1の上記一表面に沿った面内において一方の可動体部1bが他方の可動体部1bを180°回転させた形で形成されている。
【0048】
加速度センサAは、上述の説明から分かるように、対となる可動電極6と固定電極4とを有する構造を二つ有している。よって本体1に設けられた可動電極6と第一の固定基板2に設けられた固定電極4との対を4対有しており、可動電極6と固定電極4との対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。要するに、加速度センサAは、可動体部1bが揺動することにより、対をなす固定電極4と可動電極6との距離、対向部分の面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。
【0049】
本実施形態によれば、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方(本実施形態では間隔対向部分7B)に凹部8が設けられているため、第一の固定基板2と可動体部1bが帯電しても静電気力が加わりづらい構造となり、可動体部1bが対向する第一の固定基板2に接触しづらくすることができ、長寿命化、歩留率の向上を実現することができる。また、凹部8は可動体部1bを薄肉にすることで間隔対向部分7Bに形成されているため、プロセス数の増加を招かず、容易に製造することができる。また、第一の固定基板2と第二の固定基板3はそれぞれ側壁部1a1と陽極接合によって直接接合されているため、特に容易に製造することができる。
(実施形態2)
図9は実施形態2にかかる半導体マイクロデバイスの加速度センサを示している。
【0050】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8可動体部1bにおけるは間隔対向部分7B以外の可動電極6上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層6Aを堆積させる事で間隔対向部分7Bに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0051】
ここで図9を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0052】
本実施形態では可動体部1bの第一の固定基板2側表面に、中心の間隔対向部分7B(面積1000×40μm2)領域以外に2.1μmの厚みの導電性材料(例えば、Poly−Si、Al、Cu、Ni等の金属)からなる可動肉厚層6Aを堆積させ可動厚肉層6Aと固定電極4で可変容量コンデンサを形成している。
【0053】
これにより凹部8は可動体部1bにおける間隔対向部分7B以外の領域に設けた可動厚肉層6Aを側壁とし可動体部1bのシリコン層1bc表面を底面とすることで形成され、間隔対向部分7Bが周囲の可動体部1b表面に比べ相対的に第一の固定基板2から離間した位置に形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bの間隔対向部分7Bを、固定電極4を有する第一の固定基板2から可動厚肉層6Aの厚み分に応じて離間させることができる。
【0054】
本実施形態では第一の固定基板2と可動体部1bの間隔対向部分7Bの距離を4.3μm、離間させており、可動体部1bにエッチングを用いることなく凹部8を設けることができ、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても、吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0055】
また、可動体部1b全体の質量を増加させることができるので、より加速度の検知能力が向上する。
【0056】
本実施形態によれば、凹部8を間隔対向部分7B以外の可動電極6上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層6Aを堆積させることで間隔対向部分7Bに形成しているため、加速度の検知能力を向上させることができる。
(実施形態3)
図10は実施形態3にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0057】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一の固定基板2を薄肉にすることで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0058】
ここで図10を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0059】
本実施形態では第一及び第二の固定電極4A,4Bの間に挟まれた第一の固定基板2上の領域である間隔部分7Aの内、可動体部1bと平面視で重なる部分(面積1000×40μm2)を、2.3μmの深さでエッチングにより除去している。
【0060】
これにより凹部8は第一の固定基板2に形成され、間隔部分7Aが周囲の第一の固定基板2表面に比べに薄肉に形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bを、固定電極4を有する第一の固定基板2の間隔部分7Aからエッチング除去した深さ分に応じて離間させることができる。
【0061】
本実施形態では第一の固定基板2の対向部分7Aと可動体部1bの距離を4.3μm、離間させており、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態の場合、可動体部1bが、本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への変位するための空間を確保するために、可動体部1bの、支持基板1ba、シリコン層1bc表面の厚みを薄くせずに、第一及び第二の固定基板2,3をエッチングすることで薄肉に形成する場合に、凹部8をあわせて形成することができる。これは可動体部1b全体の質量がエッチングにより減少することによる、加速度の検知能力の低下を回避したい場合に特に有効である。
【0063】
本実施形態によれば凹部8は第一の固定基板2を薄肉にすることで間隔部分7Aに形成しているため、加速度の検知能力の低下を回避することができる。
(実施形態4)
図11は実施形態4にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0064】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一の固定基板2を貫通することで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0065】
ここで図11を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0066】
本実施形態では第一及び第二の固定電極4A,4Bの間に挟まれた第一の固定基板2上の領域である間隔部分7Aの内、可動体部1bと平面視で重なる部分(面積1000×40μm2)を、エッチングにより貫通して除去している。
【0067】
これにより凹部8は第一の固定基板2に貫通して形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bを、固定電極4を有する第一の固定基板2の間隔部分7Aからほぼ完全に離間させることができる。
【0068】
本実施形態では吸引力がほぼ発生しない構造であるため、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力はほぼ生じず、静電気力による固着をほぼ防ぐことができる。これによりビーム1cのばね反力が極めて低い場合であっても、可動体部1bの固着を生じにくくすることができ、より加速度の検知能力を向上させることができる。なお、本実施形態の凹部8をパッケージ等で封止することで、内部を気密にすることも可能となる。
【0069】
本実施形態によれば凹部8は第一の固定基板2を貫通することで間隔部分7Aに形成しているため、第一の固定基板2と可動体部1bが帯電しても静電気力がほぼ加わらない構造とすることができ、可動体部1bが対向する第一の固定基板2に接触しづらくすることができ、特に歩留率の向上を実現することができる。
(実施形態5)
図12は実施形態5にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0070】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一及び第二の固定電極4A,4Bを厚肉にすることで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0071】
ここで図12を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0072】
本実施形態では第一の固定基板2に設けられる第一及び第二の固定電極4A,4Bの厚みを大きくし、2.3μmの厚みを持たせている。
【0073】
この第一及び第二の固定電極4A,4Bを側壁とし、深さが2.3μm、幅が40μmの溝状の凹部が形成されている。
【0074】
これにより可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bの間隔対向部分7Bを、固定電極4を有する第一の固定基板2から第一及び第二の固定電極4A,4Bの厚み分に応じて離間させることができる。
【0075】
本実施形態では第一の固定基板2の対向部分7Aと可動体部1bの距離を4.3μm離間させており、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0076】
なお、本実施形態の場合、第一及び第二の固定電極4A,4Bを設ける際、金属膜の堆積量を制御するだけで設けることができるため、プロセス数の増加を招かず製造が容易であり、かつ、別部材を設ける必要がないため、部材点数の削減を実現することができる。
【0077】
本実施形態によれば凹部8は第一及び第二の固定電極4A,4Bを厚肉にすることで間隔部分7Aに形成しているため、製造容易とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
A 加速度センサ
1 本体
1a 枠体部
1a1 側壁部
1a2 底板部
1b 可動体部
1c ビーム
2 第一の固定基板
3 第二の固定基板
4A 第一の固定電極
4B 第二の固定電極
5 ダミー電極
6 可動電極
6A 可動厚肉層
7A 間隔部分
7B 間隔対向部分
8 凹部
9 バイアスユニット
10 チップ検査部
B ICチップ
101 パッケージ
【技術分野】
【0001】
本願発明は、加速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロマシンニング技術を利用して可動電極と固定電極が形成された加速度センサチップが提案されている。
【0003】
例えば、特開2010−272696号公報(特許文献1)に記載された加速度センサである。
【0004】
この加速度センサは、静電容量型の加速度センサであって、図13に示すように、半導体基板であるSOI基板を用いて形成されたセンサ本体1’と、第一のガラス基板を用いて形成されセンサ本体1’の一表面側(図13における上面側)に固定された第一の固定基板2’と、第2のガラス基板を用いて形成されセンサ本体1’の他表面側に固定された第2の固定基板3’とを備えている。
【0005】
センサ本体1’は、2つの平面視矩形状の開口窓が上記一表面に沿って並設されたフレーム部11’と、フレーム部11’の各開口窓の内側において各固定基板2’,3’から離間して配置された2つの平面視矩形状の重り部13’と、フレーム部11’の各開口窓の内側で重り部13’を挟む形で配置され上記一表面側においてフレーム部11’と重り部13’とを連結した各一対の支持ばね部14’とを備えており、フレーム部11’が各固定基板2’,3’と接合されている。
【0006】
第一の固定基板2’において各重り部13’それぞれに対向する部位ごとに金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極25’が並設されるとともに、各重り部13’に可動電極15’が設けられており、また、センサ本体1の重り部13は、支持ばね部14’の両側の部分で平面サイズが同じであるにもかかわらず互いに質量が異なっている。
【0007】
そして注目すべきは、センサ本体1’は、隣り合う開口窓それぞれに配置された2つの重り部13’に関して、平面視において一方の重り部13’が他方の重り部13’を180°回転させた形で形成されており、これらの重り部13’が振動することにより、対をなす固定電極25’と可動電極15’との対向面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。当該静電容量の変化を検出することで図13におけるx軸方向とz軸方向の加速度を検知することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−272696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図13に示すように、上記従来の加速度センサは平面視において二つの固定電極2’に挟まれた第一の固定基板2’の領域を間隔部分7A’とし、間隔部分7A’と対向する重り部13’上の領域を間隔対向部分7B’とした場合、間隔部分7A’と間隔対向部分7Bとの間の距離が近接していた。
【0010】
その結果、第一の固定基板2’と重り部13’が帯電した際、両者間に静電気力に加わり重り部13’が変位し、第一の固定基板2’と接触する可能性があった。例えば第一の固定基板2’とフレーム部11’を陽極接合によって直接接合すると、大きな静電気力が加わることで第一の固定基板2’と重り部13’が強い力で接触し、両者が固着することが考えられ、その結果として特性異常が起こる。
【0011】
本願発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加速度センサの可動部が対向部分に接触しづらい加速度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の加速度センサは本体と、本体の一面に形成された第一の固定基板とを有し、前記本体は前記一面が開口した箱状の枠体部とその枠体部内側に位置する可動体部とを有し、前記可動体部は当該可動体部両側と前記枠体部の内側とを接続する一対のビームを回動軸として回動可能に設けられており、前記可動体部の前記第一の固定基板側には可動電極が設けられており、前記第一の固定基板には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極が前記可動電極に対向するように設けられており、平面視において前記第一の固定電極と前記第二の固定電極に挟まれた前記第一の固定基板の領域を間隔部分とし、前記間隔部分と対向する可動体部の領域を間隔対向部分とした場合において、前記間隔部分と前記間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けたこと特徴とする。
【0013】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一の固定基板を薄肉にすることで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0014】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一の固定基板を貫通することで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0015】
またこの加速度センサの前記凹部は前記第一及び第二の固定電極を厚肉にすることで前記間隔部分に形成することが好ましい。
【0016】
またこの加速度センサの前記凹部は前記可動体部における前記間隔対向部分以外の前記可動電極上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層を堆積させる事で前記間隔対向部分に形成することが好ましい。
【0017】
またこの加速度センサの前記凹部は前記可動体部を薄肉にすることで前記間隔対向部分に形成することが好ましい。
【0018】
またこの加速度センサの前記枠体部は側壁部と底板部とを有し、前記底板部は第二の固定基板で形成され、前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられ前記第一の固定基板と前記第二の固定基板はそれぞれ前記側壁部と陽極接合によって直接接合することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の加速度センサは、間隔部分と間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けることで第一の固定基板と可動体部が帯電した場合であっても可動体部が対向する固定基板に接触しづらくすることができ、長寿命化、歩留率の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願実施形態1の半導体マイクロデバイスを示し、(a)は概略分解斜視図、(b)は概略断面図である。
【図2】同上の半導体マイクロデバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの説明分解斜視図である。
【図4】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略分解斜視図である。
【図5】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの本体部を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略下面図である。
【図6】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサを示し、図5(a)のD−D’における概略断面図である。
【図7】同上の半導体マイクロデバイスの要部説明図である。
【図8】同上の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図9】本願実施形態2の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図10】本願実施形態3の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図11】本願実施形態4の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図12】本願実施形態5の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略図である。
【図13】特許文献1の半導体マイクロデバイスにおける加速度センサの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1〜8は実施形態1にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0022】
この半導体マイクロデバイスは本体1と、本体1の一面に形成された第一の固定基板2とを有する加速度センサAを備え、本体1は前記一面が開口した箱状の枠体部1aとその側壁部1a1内側に位置する可動体部1bとを有し、可動体部1bは当該可動体部1b両側と枠体側面部1aの内側とを接続する一対のビーム1cを回動軸として回動可能に設けられており、可動体部1bの第一の固定基板2側には可動電極6が設けられており、第一の固定基板2には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極4A,4Bが可動電極6に対向するように設けられており、平面視において第一の固定電極4Aと第二の固定電極4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、間隔部分7Aと対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとした場合において、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方(本実施形態では間隔対向部分7B)に凹部8が設けられている。
【0023】
また、この加速度センサAの凹部8は可動体部1bを薄肉にすることで間隔対向部分7Bに形成されている。
【0024】
また、この加速度センサAの枠体部1aは側壁部1a1と底板部1a2とを有し、底板部1a2は第二の固定基板3で形成され、第二の固定基板3にはダミー電極5が可動体部1a側表面に設けられ、第一の固定基板2と第二の固定基板3はそれぞれ側壁部1a1と陽極接合によって直接接合されている。
【0025】
以下、実施形態1のより具体的な説明を行う。
【0026】
本実施形態の半導体マイクロデバイスは、図1および図2に示すように、MEMSチップの一種である加速度センサチップからなる加速度センサAと、加速度センサAが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0027】
パッケージ101は、一面(図1(b)における上面)が開放された箱状に形成されるとともに加速度センサAに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102と、プラスチックパッケージ本体102の上記一面を閉塞する形でプラスチックパッケージ本体102に気密的に接合されるパッケージ蓋(リッド)103とで構成されている。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により製品名称や製造日時などを示す表記113が形成されている。
【0028】
加速度センサAは、静電容量型の加速度センサチップであって、図3ないし図6に示すように、半導体基板であるSOI基板を用いて形成された本体1と、ガラス基板を用いて形成され枠体部1aの開口面側(図6における上面側)に固定された第一の固定基板2と、ガラス基板を用いて枠体部1aの底板部1a2として形成され前記開口面側と反対面側に固定された第二の固定基板3とを備えている。ここにおいて、本体1および各固定基板2,3の外周形状は矩形状であり、各固定基板2,3は本体1と同じ外形寸法に形成されている。また、本実施形態では、半導体基板として、シリコン基板からなる支持基板上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)上にn形のシリコン層(活性層)を有するSOI基板を用いているが、SOI基板に限らず、例えば、シリコン基板を用いてもよい。また、枠体部1aは側壁部1a1と底板部1a2が別部材となっていることで容易に製造することが可能となるが、例えば、一枚のシリコン基板をくりぬいて一体に形成してもよい。
【0029】
本体1は、2つの平面視矩形状の開口窓14が上記一表面に沿って並設された側壁部1a1と、側壁部1a1の各開口窓14の内側において各固定基板2,3からそれぞれ2μm離間して配置された2つの平面視矩形状の可動体部1bと、側壁部1a1の各開口窓14の内側で可動体部1bを挟む形で配置され上記一表面側において側壁部1a1と可動体部1bとを連結した各一対のビーム1cとを備えており、側壁部1a1が各固定基板2,3と接合されている。なお、加速度センサAは、側壁部1a1の周部が全周に亘って各固定基板2,3の周部と接合されており、側壁部1a1と各固定基板2,3とで、チップサイズパッケージが構成されている。
【0030】
ところで、本体1の側壁部1a1には、各開口窓14それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔15が2つの開口窓14と同じ方向に並設されており、各窓孔15の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対のビーム1cの並設方向に沿って配置されている。
【0031】
各固定子16は、窓孔15の内周面との間、可動体部1bの外周面との間、および隣り合う固定子16との間に隙間が形成されており、互いに分離独立して電気的に絶縁されており、側壁部1a1とも電気的に絶縁されている。ここにおいて、各固定子16は、両固定基板2,3と接合されている。また、本体1の上記一表面側において、各固定子16には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成され、側壁部1a1において隣り合う窓孔15の間の部位にも、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成されている。
【0032】
また、第一の固定基板2には、各パッド18を各別に露出させる複数(ここでは、5つ)のテーパ状の貫通孔17が形成されている。ここで、第一の固定基板2は、各貫通孔17を、本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成してあり、本体1において各パッド18それぞれの外周縁から離れた各部位に各貫通孔17の周部が接合されるように開口面積を設定してある。本実施形態における加速度センサAは、静電容量型の加速度センサチップであり、各固定子16に形成された各パッド18は後述の各固定電極4に電気的に接続され、側壁部1a1に形成されたパッド18は後述の各可動電極6に電気的に接続されている。以上説明した複数のパッド18は、加速度センサAの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。なお、加速度センサAは、各パッド18を、第一の固定基板2における本体1側とは反対側の表面において当該加速度センサAの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置して適宜の配線により各固定電極4および各可動電極6と電気的に接続するようにしてもよい。ここで、図3に示すとおり、平面視において固定電極4A,4Bに挟まれた第一の固定基板2の領域を間隔部分7Aとし、これに対向する可動体部1bの領域を間隔対向部分7Bとしてある。
【0033】
以下、図3の左側に示した直交座標系のように、可動体部1bが並ぶ方向をy軸方向、本体1の上記一表面に沿う面内でy軸方向に直交する方向をx軸方向、x軸方向とy軸方向とに直交する方向(つまり、本体1の厚み方向)をz軸方向として説明する。
【0034】
加速度センサAにおける各ビーム1cは、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)の役割を果たし、側壁部1a1および可動体部1bに比べて薄肉に形成されており、可動体部1bは、側壁部1a1に対して一対のビーム1cの回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対のビーム1cは、側壁部1a1に対して可動体部1bが揺動自在となるように側壁部1a1と可動体部1bとを連結している。言い換えれば、側壁部1a1の開口窓14の内側に配置される可動体部1bは、当該可動体部1bから相反する2方向へ延長された2つのビーム1cを介して側壁部1a1に揺動自在に支持されている。ここにおいて、側壁部1a1は、SOI基板の支持基板、絶縁層、シリコン層それぞれを利用して形成してある。これに対して、ビーム1cは、SOI基板におけるシリコン層を利用して形成してあり、側壁部1a1よりも薄肉となっている。また、可動体部1bは、SOI基板の支持基板1ba、絶縁層1bb、シリコン層1bcそれぞれを利用して形成してある。加速度センサAの本体1は、バルクマイクロマシニング技術などを利用して形成してある。さらにシリコン層1bcは可動電極6を構成している。また、各固定子16は、SOI基板に適宜加工を施してから当該SOI基板を第二の固定基板3に陽極接合により接合した後に、側壁部1a1から分離されている。
【0035】
可動体部1b及び第一の固定基板2には、絶縁体材料であるSiO2によって当該可動体部1bの過度の変位を規制するストッパ部11が設けられている(図6参照)。これによって、可動体部1bの過度の変位によるビーム1cの破損や各固定基板2,3の破損などを防止することができる。
【0036】
また可動体部1bが、本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への変位するための空間を確保するために、可動体部1bは、支持基板1ba、シリコン層1bc表面をそれぞれ2.2μmの深さ分だけエッチングすることによって薄肉に形成している。これら各部位の厚みを薄くせずに、第一及び第二の固定基板2,3をエッチングすることで薄肉に形成してもよく、後述の通り、凹部8の形成が容易なプロセスを採用することが好ましい。
なお、本実施形態では、SOI基板を用いて加速度センサAを形成しているので、シリコン基板を用いて形成する場合に比べて、各ビーム1cの厚み寸法の精度を高めることができる。
【0037】
ここで図7,8を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0038】
凹部8は可動体部1bにおける間隔対向部分7Bをほぼ全面薄肉にすることで形成されている。本実施形態では可動体部1bの第一の固定基板2側表面の間隔対向部分7B(面積1000×40μm2)のうち、800×40μm2の領域を深さ11μmだけエッチングにより除去している。なお、SOI基板の絶縁層1bbをエッチングストッパに用いると製造容易とすることができる。よって予めシリコン層1bcの厚みを、凹部8の深さに合わせて設定することが好ましい。
【0039】
なお、支持基板1ba、シリコン層1bcをエッチングする際に、あわせて凹部8を設けることが可能なため、プロセス数の増加を招かず、容易に製造することができる。
【0040】
凹部8を設けなければ、例えば、図3のように第一の固定基板2表面の間隔部分7Aに形成した第一および第二の固定電極4A,4Bの距離Lが40μm、可動体部1bの幅Dが1000μm、第一の固定基板2の間隔部分7Aと可動体部1bの間隔対向部7Bとの距離が2.2μm、固定電極4A,4Bと可動電極6との距離が2.0μmであるとき、側壁部1a1と第一の固定基板2を600Vの電圧で陽極接合した場合、可動体部1bには約16mNの吸引力が発生する。これに対し、側壁部1a1と可動体部1bを連結するビーム1cの幅が12μm、厚みが11μm、長さが150μmで、可動体部1b上に形成したストッパ部の高さが1.1μmであるとき、側壁部1a1が0.9μm吸引されたときのバネ反力は3.6mNであり、吸引力がバネ反力を上回り、固着してしまう場合が生じる。
【0041】
一方で、本実施形態の凹部8を設けることで、例えば、上記陽極接合を行った際の吸引力は3.5mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができ、可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0042】
なお、凹部8の平面視による面積、深さの値は大きいほど本願発明の効果は顕著になるので、例えば、凹部8の深さは可動体部1bを貫通する値に設定してもよいし本実施形態でエッチング除去した800×40μm2の領域より広い面積をエッチング除去し凹部8を作成してもよい。一方、当然のことながら凹部8が大きくなると可動体部1bの機械的強度は低下するので、凹部8の形状はばね反力との関係で適宜設定されるべきである。
【0043】
さらに、ここにおいて、本実施形態の半導体マイクロデバイスは、加速度センサAの各ストッパ部11を接触させるに十分な静電界を印加するバイアスユニット9を備えたチップ検査部10を有するICチップBが、加速度センサAとともにパッケージ101に収納されている。なお、本実施形態はあくまで一例であり、バイアスユニット9を用いることなくチップ検査部10を構成してもよい。また、製造時点においてチップ検査を行う場合、チップ検査部10は必ずしも有する必要はない。
【0044】
ICチップBは、ASIC(Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されており、裏面全面がシリコーン系樹脂を用いて接着されている。また、ICチップBには加速度センサAの出力信号を信号処理する信号処理回路も形成されている。なお、ICチップBの機能は、加速度センサAの機能に応じて適宜設計すればよく、加速度センサAと協働するものであればよい。また、ICチップBは、必ずしも、加速度センサAと同一のパッケージ101に収納する必要はなく、この場合は、加速度センサAの各パッド18に一端部が接続されるボンディングワイヤWの他端部をプラスパッケージ本体102のリード112のインナリード112aに接続すればよい。ただし、ICチップBを加速度センサAと同じパッケージ101に収納した場合のほうが、異なるパッケージに収納する場合に比べて、半導体マイクロデバイス全体の小型化および低コスト化を図れるとともに加速度の検出精度の向上を図れる。
【0045】
本実施形態では、ICチップBが1枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、加速度センサAがSOI基板と2つのガラス基板とを用いて形成されており、加速度センサAの厚みがICチップBの厚みに比べて大きくなっているので、上述のプラスチックパッケージ本体102の底部において加速度センサAを搭載する搭載面をICチップBの搭載部位よりも凹ませてある(したがって、加速度センサAを搭載する部位は底部の肉厚が他の部位に比べて薄くなっている)。なお、本実施形態では、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としてあるが、この数値は一例であり、加速度センサAやICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0046】
本実施形態における加速度センサAは、上述の説明から分かるように、各可動体部1bがy軸方向に沿って延長された一対のビーム1cを介して側壁部1a1に連結され、第一の固定基板2において各可動体部1bそれぞれに対向する部位ごとにx軸方向に沿って金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極4が並設されるとともに、各可動体部1bにシリコン層1bcからなる可動電極6が設けられており、z軸方向において対向して対をなす可動電極6と固定電極4との対の間に空隙が形成されている。ここで、各一対のビーム1cは、平面視における可動体部1bのy軸方向に沿った中心線の延長線上に形成されている。
【0047】
また、本体1の可動体部1bは、上記他表面側において可動体部1bのy軸方向の中心線(ここでは、一対のビーム1cを結ぶ直線に一致する)におけるx軸方向の両側に、矩形状に開口され互いに大きさの異なる空間部12,13が形成されており、当該両側の部分で平面サイズが同じであるにもかかわらず互いに質量が異なっている。また、本体1は、可動体部1bにおいて開口サイズの大きな空間部13内に、空間部13の矩形状の内底面の2つの対角線に沿ったX字状の補強壁19が、空間部13の内底面と内側面とに連続する形で形成されている。また、本体1は、隣り合う開口窓14それぞれに配置された2つの可動体部1bに関して、当該本体1の上記一表面に沿った面内において一方の可動体部1bが他方の可動体部1bを180°回転させた形で形成されている。
【0048】
加速度センサAは、上述の説明から分かるように、対となる可動電極6と固定電極4とを有する構造を二つ有している。よって本体1に設けられた可動電極6と第一の固定基板2に設けられた固定電極4との対を4対有しており、可動電極6と固定電極4との対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。要するに、加速度センサAは、可動体部1bが揺動することにより、対をなす固定電極4と可動電極6との距離、対向部分の面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。
【0049】
本実施形態によれば、間隔部分7Aと間隔対向部分7Bの少なくともいずれか一方(本実施形態では間隔対向部分7B)に凹部8が設けられているため、第一の固定基板2と可動体部1bが帯電しても静電気力が加わりづらい構造となり、可動体部1bが対向する第一の固定基板2に接触しづらくすることができ、長寿命化、歩留率の向上を実現することができる。また、凹部8は可動体部1bを薄肉にすることで間隔対向部分7Bに形成されているため、プロセス数の増加を招かず、容易に製造することができる。また、第一の固定基板2と第二の固定基板3はそれぞれ側壁部1a1と陽極接合によって直接接合されているため、特に容易に製造することができる。
(実施形態2)
図9は実施形態2にかかる半導体マイクロデバイスの加速度センサを示している。
【0050】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8可動体部1bにおけるは間隔対向部分7B以外の可動電極6上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層6Aを堆積させる事で間隔対向部分7Bに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0051】
ここで図9を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0052】
本実施形態では可動体部1bの第一の固定基板2側表面に、中心の間隔対向部分7B(面積1000×40μm2)領域以外に2.1μmの厚みの導電性材料(例えば、Poly−Si、Al、Cu、Ni等の金属)からなる可動肉厚層6Aを堆積させ可動厚肉層6Aと固定電極4で可変容量コンデンサを形成している。
【0053】
これにより凹部8は可動体部1bにおける間隔対向部分7B以外の領域に設けた可動厚肉層6Aを側壁とし可動体部1bのシリコン層1bc表面を底面とすることで形成され、間隔対向部分7Bが周囲の可動体部1b表面に比べ相対的に第一の固定基板2から離間した位置に形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bの間隔対向部分7Bを、固定電極4を有する第一の固定基板2から可動厚肉層6Aの厚み分に応じて離間させることができる。
【0054】
本実施形態では第一の固定基板2と可動体部1bの間隔対向部分7Bの距離を4.3μm、離間させており、可動体部1bにエッチングを用いることなく凹部8を設けることができ、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても、吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0055】
また、可動体部1b全体の質量を増加させることができるので、より加速度の検知能力が向上する。
【0056】
本実施形態によれば、凹部8を間隔対向部分7B以外の可動電極6上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層6Aを堆積させることで間隔対向部分7Bに形成しているため、加速度の検知能力を向上させることができる。
(実施形態3)
図10は実施形態3にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0057】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一の固定基板2を薄肉にすることで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0058】
ここで図10を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0059】
本実施形態では第一及び第二の固定電極4A,4Bの間に挟まれた第一の固定基板2上の領域である間隔部分7Aの内、可動体部1bと平面視で重なる部分(面積1000×40μm2)を、2.3μmの深さでエッチングにより除去している。
【0060】
これにより凹部8は第一の固定基板2に形成され、間隔部分7Aが周囲の第一の固定基板2表面に比べに薄肉に形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bを、固定電極4を有する第一の固定基板2の間隔部分7Aからエッチング除去した深さ分に応じて離間させることができる。
【0061】
本実施形態では第一の固定基板2の対向部分7Aと可動体部1bの距離を4.3μm、離間させており、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態の場合、可動体部1bが、本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への変位するための空間を確保するために、可動体部1bの、支持基板1ba、シリコン層1bc表面の厚みを薄くせずに、第一及び第二の固定基板2,3をエッチングすることで薄肉に形成する場合に、凹部8をあわせて形成することができる。これは可動体部1b全体の質量がエッチングにより減少することによる、加速度の検知能力の低下を回避したい場合に特に有効である。
【0063】
本実施形態によれば凹部8は第一の固定基板2を薄肉にすることで間隔部分7Aに形成しているため、加速度の検知能力の低下を回避することができる。
(実施形態4)
図11は実施形態4にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0064】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一の固定基板2を貫通することで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0065】
ここで図11を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0066】
本実施形態では第一及び第二の固定電極4A,4Bの間に挟まれた第一の固定基板2上の領域である間隔部分7Aの内、可動体部1bと平面視で重なる部分(面積1000×40μm2)を、エッチングにより貫通して除去している。
【0067】
これにより凹部8は第一の固定基板2に貫通して形成されているため、可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bを、固定電極4を有する第一の固定基板2の間隔部分7Aからほぼ完全に離間させることができる。
【0068】
本実施形態では吸引力がほぼ発生しない構造であるため、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力はほぼ生じず、静電気力による固着をほぼ防ぐことができる。これによりビーム1cのばね反力が極めて低い場合であっても、可動体部1bの固着を生じにくくすることができ、より加速度の検知能力を向上させることができる。なお、本実施形態の凹部8をパッケージ等で封止することで、内部を気密にすることも可能となる。
【0069】
本実施形態によれば凹部8は第一の固定基板2を貫通することで間隔部分7Aに形成しているため、第一の固定基板2と可動体部1bが帯電しても静電気力がほぼ加わらない構造とすることができ、可動体部1bが対向する第一の固定基板2に接触しづらくすることができ、特に歩留率の向上を実現することができる。
(実施形態5)
図12は実施形態5にかかる半導体マイクロデバイスおよび加速度センサを示している。
【0070】
この半導体マイクロデバイスおよび加速度センサの凹部8は第一及び第二の固定電極4A,4Bを厚肉にすることで間隔部分7Aに形成されている点で、実施形態1に記載した半導体マイクロデバイスおよび加速度センサと相違するがその他の構成は同様である。
【0071】
ここで図12を参照して凹部8の構造について詳しく説明する。
【0072】
本実施形態では第一の固定基板2に設けられる第一及び第二の固定電極4A,4Bの厚みを大きくし、2.3μmの厚みを持たせている。
【0073】
この第一及び第二の固定電極4A,4Bを側壁とし、深さが2.3μm、幅が40μmの溝状の凹部が形成されている。
【0074】
これにより可変容量コンデンサの電気容量を維持しつつ、可動電極6を有する可動体部1bの間隔対向部分7Bを、固定電極4を有する第一の固定基板2から第一及び第二の固定電極4A,4Bの厚み分に応じて離間させることができる。
【0075】
本実施形態では第一の固定基板2の対向部分7Aと可動体部1bの距離を4.3μm離間させており、例えば、実施形態1と同様に陽極接合時に600Vを印加しても吸引力が3.4mNに低減でき、バネ反力が吸引力を上回るようにすることができるため可動体部1bの固着や接合不良発生を防止することができる。
【0076】
なお、本実施形態の場合、第一及び第二の固定電極4A,4Bを設ける際、金属膜の堆積量を制御するだけで設けることができるため、プロセス数の増加を招かず製造が容易であり、かつ、別部材を設ける必要がないため、部材点数の削減を実現することができる。
【0077】
本実施形態によれば凹部8は第一及び第二の固定電極4A,4Bを厚肉にすることで間隔部分7Aに形成しているため、製造容易とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
A 加速度センサ
1 本体
1a 枠体部
1a1 側壁部
1a2 底板部
1b 可動体部
1c ビーム
2 第一の固定基板
3 第二の固定基板
4A 第一の固定電極
4B 第二の固定電極
5 ダミー電極
6 可動電極
6A 可動厚肉層
7A 間隔部分
7B 間隔対向部分
8 凹部
9 バイアスユニット
10 チップ検査部
B ICチップ
101 パッケージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
本体の一面に形成された第一の固定基板とを有し、
前記本体は前記一面が開口した箱状の枠体部とその枠体部内側に位置する可動体部とを有し、
前記可動体部は当該可動体部両側と前記枠体部の内側とを接続する一対のビームを回動軸として回動可能に設けられており、
前記可動体部の前記第一の固定基板側には可動電極が設けられており、
前記第一の固定基板には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極が前記可動電極に対向するように設けられており、
平面視において前記第一の固定電極と前記第二の固定電極に挟まれた前記第一の固定基板の領域を間隔部分とし、
前記間隔部分と対向する可動体部の領域を間隔対向部分とした場合において、
前記間隔部分と前記間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けたこと特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記凹部は前記第一の固定基板を薄肉にすることで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記凹部は前記第一の固定基板を貫通することで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記凹部は前記第一及び第二の固定電極を厚肉にすることで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記凹部は前記可動体部における前記間隔対向部分以外の前記可動電極上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層を堆積させる事で前記間隔対向部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記凹部は前記可動体部を薄肉にすることで前記間隔対向部分に形成されたことを特徴とする請求項1又は5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記枠体部は側壁部と底板部とを有し、
前記底板部は第二の固定基板で形成され、
前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられ
前記第一の固定基板と前記第二の固定基板はそれぞれ前記側壁部と陽極接合によって直接接合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項1】
本体と、
本体の一面に形成された第一の固定基板とを有し、
前記本体は前記一面が開口した箱状の枠体部とその枠体部内側に位置する可動体部とを有し、
前記可動体部は当該可動体部両側と前記枠体部の内側とを接続する一対のビームを回動軸として回動可能に設けられており、
前記可動体部の前記第一の固定基板側には可動電極が設けられており、
前記第一の固定基板には平面視で前記回動軸を挟んだ両側となる部分に第一および第二の固定電極が前記可動電極に対向するように設けられており、
平面視において前記第一の固定電極と前記第二の固定電極に挟まれた前記第一の固定基板の領域を間隔部分とし、
前記間隔部分と対向する可動体部の領域を間隔対向部分とした場合において、
前記間隔部分と前記間隔対向部分の少なくともいずれか一方に凹部を設けたこと特徴とする加速度センサ。
【請求項2】
前記凹部は前記第一の固定基板を薄肉にすることで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1記載の加速度センサ。
【請求項3】
前記凹部は前記第一の固定基板を貫通することで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項4】
前記凹部は前記第一及び第二の固定電極を厚肉にすることで前記間隔部分に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【請求項5】
前記凹部は前記可動体部における前記間隔対向部分以外の前記可動電極上の領域に導電性部材からなる可動厚肉層を堆積させる事で前記間隔対向部分に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記凹部は前記可動体部を薄肉にすることで前記間隔対向部分に形成されたことを特徴とする請求項1又は5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記枠体部は側壁部と底板部とを有し、
前記底板部は第二の固定基板で形成され、
前記第二の固定基板にはダミー電極が前記可動体部側表面に設けられ
前記第一の固定基板と前記第二の固定基板はそれぞれ前記側壁部と陽極接合によって直接接合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−220376(P2012−220376A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87465(P2011−87465)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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