説明

半導体における周期構造の実時間分析

【課題】試料に形成された周期構造の特性を実時間で分析する。
【解決手段】波長の関数としての信号を発生させる分光計測モジュールがを使用する。出力信号はプロセッサーにより方形構造の理論的な初期モデルを構築する。次いで、プロセッサーは、この試料の広帯域放射に対する理論的な光学的応答を計算する。光学的応答の計算結果は、複数の波長において計測され正規化された値と比較される。この比較に基づいて、モデルの構成は実際の計測された構造により近づくよう修正される。プロセッサーは修正されたモデルの光学的応答を再計算し、計算結果を正規化されたデータと比較する。最適な方形が得られるまでこの処理が反復して繰り返される。その後、モデルを各々幅と高さを持つ層に分割しモデルの複雑さを反復して増大させる。構造が周期構造に類似するような最適なモデルが得られるまで、反復処理によりデータが最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体における周期構造の計測により得られたデータの分析に関し、具体的には、このような構造を正確に実時間で分析する方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業において、ウエハー上の素子サイズの縮小が続いている。これらの素子には、ある高さ(又は深さ)、幅及び形(輪郭)を持った隆起側面形状及び溝が含まれる。これらの素子の正確な計測は、適切な歩留まりを確保するために必要である。
【0003】
これらの微細な(限界寸法の)周期構造素子を計測するのに適当な技術は極めて限られている。光学的計測技術は、非接触で計測する技術なのでこれに最も適している。しかし、既存の光学的検出器の光線における最も小さなスポットサイズであっても、計測を必要とする周期構造素子のサイズより大きい。
【0004】
図1は、基本的な周期パターン10を持つ基板8を描いたものである。このパターンは、特有の高さ、間隔及び高さを持っている。この図において、構造物の側壁は垂直ではないので、幅は構造物の高さにより変化する。図1はまた、各要素間の間隔より大きなスポットの探査用光線12を示している。
【0005】
このような小さな構造を直接計測するのは難しいので、スキャタロメータの技術開発がもたらされた。このような技術は、一般的に周期的な構造物から反射された光は散乱し、そして、格子から散乱した光として数学的に取り扱うことができるという事実に基づく。周期的構造の解析のために、試料から散乱した光を計測し分析する計測装置を開発するために、大きな努力が積み重ねられた。
【0006】
例えば、米国特許No. 5,607,800は、広帯域の探査用光線が試料と相互に作用するときに生まれる反射(散乱)光を計測する概念を公開している。波長の関数としての反射光強度は、多数の既知の周期構造を持つ参照試料として記録される。次いで、試料が同様の方法で計測され、その出力が参照試料から得られた出力と比較される。試料の光学的反応と最も近い参照試料が、その試料に類似する周期構造をもつものとみなされる。
【0007】
関連する方法は、米国特許No. 5,739,909に公開されている。このシステムによれば、分光エリプソメータ計の計測値が周期構造の特性を調べるために使われる。この方法では、波長の関数としての偏光状態の変化が周期構造に関する情報として記録される。
【0008】
更なる背景技術として、米国特許No. 5,987,276が公開されている。この特許は、入射角の関数としての探査用光線の強度における変化を計測することを含む初期の取り組みについて記載している。多数の入射角における計測により、複数の別々のデータポイントが得られる。複数のデータポイントは、適切なアルゴリズムを用いて周期構造を解析するのに必要である。過去において、複数の入射角において計測を行うシステムは、試料の移動又は、探査用光線の入射角を変化させるための光学系を必要とした。最近になって、この技術の譲受人は、試料や光学系を動かすことなく複数の入射角でスキャタロメータの計測を行う方法を開発した。この方法は、2001年3月27日出願の米国特許出願No. 09/818,703に記載されている。
【0009】
米国特許No. 5,987,276は、上述の先行技術と同様、複数の波長において計測をすることで複数のデータポイントを得る必要性について注意を向けている。この特許はまた、複数の波長による計測に基づく周期構造の特性を決定する分析的アプローチの議論に関して関心を抱いている。一般にこのようなアプローチは、幅、高さ、及び形状を含む特性を持った周期構造の論理モデルから始める。マクスウェルの方程式を使って、理論的構造により投射する広帯域の光として示される反応が計算される。厳密結合波理論がこの分析に使われる。次に、この計算結果が、計測データ(実際には、正規化されたデータ)と比較される。適合しない領域まで結果を拡張するため、理論モデルは修正され、理論データは再度計算されて計測データと比較される。この処理は、計算データと計測データが適度に受諾可能なレベルに達するまで計算が繰り返される。この点で、理論モデルの特性と実際の試料とは非常に似ているであろう。
【0010】
上記で論じた計算は最も単純なモデルに対してであってもかなり複雑である。モデルがさらに複雑になるにつれて(特に素子の壁の形状はさらに複雑となっている)、計算は非常に長く複雑になる。今日の高速プロセッサーを使ってしても、先行技術においてさらに複雑な構造を実時間で十分詳細レベル迄分析する適当な方法は開発されていない。処理が適切に行われていないとき、製造者が即座に判定を行うことができるようにするためには、実時間ベースでの分析が望まれる。実時間ベースでの分析は、計測装置が処理装置に直接組み込まれるような組み込み計測装置により解決する方向にこの業界が動いているので、さらに緊急に必要なものとなっている。
【0011】
製造者が実時間で特性を分析することを可能とする1つのアプローチは、膨大な数の理論構造に関して、波長に対する強度のライブラリーを作ることである。この形のアプローチは、ここで参照したものと同様に、1999年9月10日公開のPCT出願 WO99/45340でも論じられている。このようなアプローチでは、計測に先んじて、周期構造の特性を変化させることで多数の可能な理論モデルが作られる。このような様々な構造に対して予期される光学的な応答が計算され、解答用ライブラリーを定義するための記憶装置に記憶される。試料のデータが得られたとき、これは記憶された解答のライブラリーと比較され、最適なものを決定する。
【0012】
ライブラリーを使うことで、試料を計測した後比較的速やかに分析することが可能となるが、このことは、色々な理由により完全に満足できるものではない。例えば、新たな方法を用いるたびに(このことは構造、材料又は処理要因の変化により起る可能性がある)、全く新しいライブラリーを作らなければならない。さらに、作られた各ライブラリーは、計測に用いられる計測機器に固有なものとなる。もし計測機器が何らかの理由で変更されたとき(例えば、機器の計測特性を変更するような光学素子を取り替えたとき)、新しいライブラリーを作らなければならない。加えて、計測結果の精度はライブラリーに記憶されたモデルの数で制限される。記憶されるモデルが増えるほど結果の精度は良くなるが、作られたライブラリーが長くなるほど、比較を行う時間が長くなる。最も理想的な解決方法は、実時間で実行すべき反復(適合)計算を可能とし、計測機器及び測定開始処理における変化を補償する修正を簡単に行うシステムを開発することである。
【0013】
適合計算の高速化についての1つの取り組みは、米国特許No. 5,867,276に見ることができる。(後者の特許と上記で引用した他の刊行物はすべて参考用としてこの出願に組み込まれる。)この特許には、周期構造の形や輪郭を明らかにするために必要な変数の数を減らす方法が公開されている。この方法では、構造物は堆積された厚板の連なりとして数学的に表わされている。執筆者は、この構造物は、適切にその特徴を明らかにするためには、約20の厚板に分割されなければならないことを示唆している。しかし、執筆者は、40の変数(20の厚板の幅と高さ)についての分析を行うことは、コンピュータで計算するには十分複雑であろうと注記している。そこで、執筆者は、補助的な輪郭とスケールファクターとを用いて計算の複雑性を減らすことを提案している。このような方法はコンピュータで計算する負担の軽減という目的を達成することができるが、これは、分析精度を制限するという代償を払って達成するものである。従って、高精度で且つ実時間ベースで実施できる方法を見つけ出すことが望まれる。
【発明の開示】
【0014】
〈発明の概要〉
この要求に答えるために、実時間ベースで周期構造の特性の高精度な解析を可能とするシステムを開発した。本発明の第1の特徴は、高度な精度を維持しながら計算の効率を上げる改善された分析方法を開発したことである。本発明のこの特徴では、構造の理論モデルが作られた。この最初のモデルは、長方形の単一の高さと幅を持つものが好ましい。マクスウェルの方程式を用いて、このモデルによる検出された放射との相互の反応が計算される。反応についての計算結果は、測定結果と比較される。この比較に基づいて、モデルの変数は、最も計測データに適合する計算データを生成する長方形を生み出すまで反復修正される。
【0015】
この情報を用いて、2以上の幅と2以上の層を持つ新しいモデルが作られる。望ましくは、3層の台形が作られることが好ましい。モデルのパラメータは、計測データに最も近い理論データを生み出す台形を見つけるための適合アルゴリズムを用いて調整される。
【0016】
この適合処理の結果を用いて、モデルは再度変更され、幅と層の数が増やされる。適合処理が繰り返される。モデルの適合度があらかじめ定めたレベルに到達するまで、幅と層の数を加えるステップと、モデルをデータに適合させるステップとを繰り返す。
【0017】
この反復ステップの間、層の厚み(層の密度)は、高い密度の層が幅の変化が最大になる領域に置かれるような方法で変化させられる。このように、側壁の曲率を最も高精度にモデル化することができる。
【0018】
この方法において、幅と層の数は固定されない。ほんの数個の幅と層を持つ構造を完全に明らかにすることも可能となろう。実際には、この方法は平均7から9の幅で13から17の層の比較的複雑な構造の特徴を明らかにするために使った。
【0019】
モデル(方形、台形)の初期の反復計算に関連するスキャタロメトリーの計算は、比較的単純で高速である。しかし、幅と層の数が増加するに従って、計算は等比級数的に難しくなる。
【0020】
これらの計算を合理的な時間内に終わらせることができるように、計算時間を最低限にするコンピュータによる計算方法の開発も必要であった。本発明の他の特徴によれば、スキャタロメトリーの計算は並列処理のグループに分配されることである。好ましい実施の形態において、プロセッサーの構成には、1つのマスタープロセッサーと複数のスレーブプロセッサーとする構成が含まれる。マスタープロセッサーは、制御と比較をつかさどる。光学検出器の放射と理論的な試料の反応との相互の計算はマスタープロセッサー自身とスレーブプロセッサーとに配分される。
【0021】
例えば、データが波長の関数として得られた場合、計算は波長の関数として配分される。このように、第1のスレーブプロセッサーは、マクスウェルの方程式を用いて与えられた理論モデルから計測された散乱波長の内から選択された光強度の期待値を定める。他のスレーブプロセッサーは、異なった波長について同じ計算を実行する。5台のプロセッサー(1台のマスターと4台のスレーブ)と50の波長を想定すると、各プロセッサーは各々10回このような反復計算を行うことになる。
【0022】
1度計算が完了すると、マスタープロセッサーは、各々強度の計算結果と、計測され正規化された強度とが最も適合するような比較を行う。この適合性に基づいて、マスタープロセッサーは、上記のモデルのパラメータを修正する(幅又は層の厚みを変える)。次に、マスタープロセッサーは、修正されたモデルに対する計算法をスレーブプロセッサーに配分する。この動作は、適合性がうまく行くまで繰り返される。
【0023】
この分散型処理方法は、複数の入射角の情報とともに用いても良い。この場合は、相異なる入射角の各々についての計算法を各スレーブプロセッサーに分配する。
【0024】
目的及び効果については図面及び以下の詳細な説明によりさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〈好ましい実施形態の詳細な説明〉
図2は、周期構造を持った試料8のスキャタロメータによる計測を実施するためのシステム16のブロック図である。この発明の公開の目的として、周期構造とは、あらゆる繰り返しの形態を持つものをいい、この形態の大きさは、少なくとも光の一部は鏡面からの反射ではなく散乱するような試料の探査用の光線と同じか又は小さい。
【0026】
システム16には、光源20が含まれている。上述の通り、スキャタロメータによる計測は、複数の波長を持つ探査用光線を発生する広帯域の光源を用いて行われる。先に引用した米国特許出願No. 09/818,703に記載されているように、光はレーザーから発せられる。このような場合、好ましくは試料を動かさないで、入射角の関数として計測がなされよう。
【0027】
探査用光線は直接試料に照射される。通常レンズ(図示せず)が試料上の小さな点に探査用光線を集光させるために用いられる。探査用光線の反射光が捕捉され検出器26で計測される。計測された探査用光線の光強度は、周期構造からの散乱光の量の影響を受ける。さらに具体的には、高次に回折した光の割合は、散乱現象を観測させながら検出器までの経路から向きを変えられる光の量が波長と入射角の関数として変化するように、波長と入射角の関数として変化する。
【0028】
検出器の構成は、計測を行う計器の形式に基づく。例えば、探査用光線の経路中に波長を可変的にチューニングできるフィルター(モノクロメーター)を置く限り、単一の光検出器を分光学的に反射した光強度の計測のために使うことができる。計測時間を最小にすべきとの要求があるので、波長に対する分光素子(格子又はプリズム)と複数の波長を同時に計測する配列型検出器を具備する分光計が通常用いられる。配列型検出器はまた、複数の入射角に対する同時的な計測にも用いられる。もし分光エリプソメータによる計測が行われるのなら、検出システムには、偏光装置、分析計及び補償装置の組み合わせが含まれるだろう。
【0029】
上述の様々な計測の在り方は、当業者には良く知られており、ここでは論じないことにする。複数の計測を行うことができる商用装置が有用であることに注意すべきである。このような装置の例が、米国特許No. 5,608,526とPCT出願WO 99/02970に記載されており、この2つは参考としてここに組み込まれる。
【0030】
検出器により作られた信号はプロセッサー30に提供される。プロセッサー30は、物理的に検出器の近くに置く必要はない。検出器からの計測値がプロセッサーに提供されることのみ必要とする。直接的であるにしろネットワークを経由するにしろ、検出器とプロセッサーの間には電気的な接続があることが好ましい。当業者に良く知られているように、プロセッサーは、信号の正規化が可能なように他の信号と一緒にシステムから信号を受け取っても良い。例えば、光源の出力の変動が計算時に考慮に入れることができるように、光源の出力を計測するための検出器(図示せず)が用意されても良い。
【0031】
好ましい実施の形態において、図3に示すように、プロセッサー30の構成には、イーサーネット(登録商標)に接続された複数のマイクロプロセッサーユニットが含まれる。オペレーティングソフトウエアーはプロセッサーの1つにマスター32としてとして用意され、他のプロセッサーはスレーブ34として用意される。マスターは高いレベルの機能を扱い、仕事を分配しその結果をスレーブから受け取る。このようなシステムはLinux Network. Inc.から商標名Evolcityとして商業的な使用が可能である。本発明を評価するために使うシステムとして、各プロセッサーが1.3ギガヘルツで動作する8個のプロセッサー構成を採用した。適切に組み合わせると、このシステムは約10ギガヘルツと同等の速さで動作する。処理すべき仕事の分配方法については、以下に論ずる。
【0032】
上述のように、計測データに基づいて周期構造の特性を解析する様々な方法が開発されている。ここに記載される方法は、最初のモデルが構築され光との相互作用によるその試料の予想される応答を求めるための計算が行われる一般的な手順の範疇に入る。次に、計算結果が実際の(正規化された)計測データに近づくまで、モデルが何度も修正される。この実施形態における方法は、たくさんの参照サンプルを造り、各々を測定し、その結果を試料と比較するために記憶させておく、今までの方法とは対照的である。この実施形態における方法はまた、たくさんの構成及び関係する光学的な応答を生成させ後で比較するために記憶するライブラリーアプローチとも異なる。
【0033】
この実施形態における方法は構造体の形を積み重ねられた複数の層を表すものと認識する。しかし、前もって定められ、固定された数の層に基づいて解析するのではなく、このアルゴリズムは、各モデルレベルで最適値を求めて、徐々に層を加えてゆくように設計されている。この工程は効率的に決定すべき実際の構成に近い理論的な構成を可能とする。この方法によれば、要求されるレベルの適合度を達成するのに実際に必要な最低限の数の層だけを分析する。
【0034】
この実施形態における方法について、図4のフローチャート及び図5から7に記載の図に関連させて説明することとする。
【0035】
最初のステップ102において、方形モデル50(図5)が構築される。一般に、このモデルは試料の特性の予想値に基づく種となる値として用いるために構築される。例えば、このモデルは、材料の屈折率、減衰係数のような情報も含まれる。この情報はパターン化されていないウエハーの領域を計測することで取得することも可能である。このモデルもまた、高さH1及び幅W1の値を持つことができる。
【0036】
次に、このプロセッサーは、これらの初期特性を持つ周期構造のサンプルから計測されるであろう予想光強度を計算する(ステップ104)。この例における目的を達成するために、計測されたデータは分光反射率計から得られたものを想定している。従って、プロセッサーは計測された波長の各々に対して、マクスウェルの方程式及び厳密結合波理論を用いて、理論モデルから反射される光強度の正規化された予想計測値を決定する。
【0037】
一旦この計算が各波長に対してなされると、その結果は試料から得られた正規化された計測値と比較される(ステップ106)。この比較は、従来の最小2乗法による適合アルゴリズム、例えばLevenberg-Marquardth法によりなされる。比較の結果は、モデルのパラメータ、この場合は計算開始時の高さと幅、を修正するために使われる(ステップ108)。次いで、プロセッサーは、修正された特性の構造から各波長における反射光の予想光強度を計算する(ステップ110)。これらの新しい値は計測値と比較され、もし必要なら、もう一度モデルを修正する。実際には、この反復処理は適合させるまでに4から8回程度繰り返す必要がある。運転員は適合度のレベル、すなわち、モデルと実際の計測値の差が、比較の結果により表されるあらかじめ定められた値以下にすべき所定の値を定義する。最適な適合結果は最も実際の周期構造に近い方形になる。
【0038】
次のステップは、その複雑さを増すことでモデルを修正する(ステップ114)。より具体的には、形又は格子状外観が単純な方形から、上底の幅W1と独立した下底の幅W2を持つ台形に変更される(図6の54参照)。加えて、この構造は複数の、この例では3が好ましい、方形層に分割される。このモデルの修正は、多項式展開を使わず、スプライン係数を用いて行う。この修正の開始点はこの前のステップで決定した最も適合している方形である。
【0039】
格子状外観は、既知のキュービックスプライン、ベジエ曲線、B−スプライン、及びさらに一般化された非一様有理スプライン(The NURBS Book, by Les Piegl and Wane Tiller, Springer, 1995)を含むスプラインアルゴリズムのクラスを用いて定義される。このような方法の優位性は、1)曲線がコントロールポイントのセットによりコントロールさせること、及び、2)多項式展開により記述するより、スプラインにより記述した形の方が、適応性があることである。B−スプラインは、
【数1】

【0040】
のように記述される。
【0041】
ここで、Pjは要求される適応度に応じてスカラーにもベクトルにもなるコントロールポイントである。立方スプラインの適合パラメータの数を最低限にするために、ユーザーは、垂直方向におけるスプラインポイントの割り当てを行う様々な方法を選択できるという柔軟性を持っている。格子の倍率を0から1の間に定め、各分配点tは0から1の間に定めると仮定し、tをuに変換するために以下のシグモイド関数を用いる。(David Elliot, J. Australian Math. Soc. B40(E), ppE77-E137, 1998)による
【数2】

【0042】
ここで、 c=2(n/l−1)及び n>max(1,l/2)である。
【0043】
この変換の効果は、n≧1のとき、スプラインポイントが両端でさらに高密度で分配されることである。このことはガウス積分においてノードがどのように分配されるかに密接にかかわってくる。また、これはさらに一般的な、構造体の頂上と底部近くでより湾曲している周期的な外観に対応している。
【0044】
われわれのアルゴリズムの他の特徴はどのようにシステムが薄片又は層に分割されるか(分離)に関係している。最も単純な方法は、各材料毎に格子を均等に分配することである。しかし、スプラインポイントをどのように分配するのかと同様に、先に説明したシグモイド関数と似ているガウス積分と同様にシステムを分離することもできる。また、曲線の曲率に従ってシステムを分離するアイデアを用いることには意味がある。この方法によれば、適合化の過程において、モデルの他の特性とともに、積極的に層の割付を変えることができる。この過程において、d=∫du|dw/du|を定義し、(スプラインポイント間の)各セグメントはd/nの薄片とすべきであり、ここでwは高さuの関数としての幅で、nはモデルにおける薄片の総計である。
【0045】
一旦開始パラメータが定義されると、プロセッサーは、計測された波長毎にこの新たな構造に対して予想される光強度を計算する(ステップ116)。計算結果は計測結果と比較され(ステップ118)、もし適合度が十分でなければ、モデルが修正される(ステップ120)。本実施の形態における方法によれば、このアルゴリズムでは、先のステップにおいて得られた値に関係なく幅と層の厚さを自由に修正できる。このアルゴリズムはまた、幅が最も高速に変化する領域を定義するためにより多くの層が用いられるような層の厚さになるように設計される。この処理は、実際の周期構造に非常に近い台形になるまで、繰り返される。
【0046】
一旦最適な台形が定義されると、モデルの複雑さは1以上の幅と層を含んで増加する(ステップ130及び図7)。好ましい実施の形態においては、モデルの修正は単一の特別な幅を追加することにより行われる。層の数もまた増加する。好ましくは、各反復計算における層の数は少なくとも2Y−1(ここでYは幅の数)であるが2Y+1を超えないものとする。
【0047】
次に、プロセッサーは、各計測された波長においてこの新たな構造に対して予想される光強度を計算する(ステップ134)。計算結果は計測結果と比較され(ステップ136)、もし適合度が十分でなければ、モデルが修正される(ステップ140)。この処理は選定された数の幅と層を持つモデルがデータと最も適合するまで、相互的に繰り返される。もしこの構造が全体的にあらかじめ定められた適合レベルに合致するならば、この処理は完了し、このモデルは実際の周期構造に適切に適合する(ステップ142)。もしそうでなければ、追加の幅と層を持つ新たなモデルを作るため(図7の56参照)プロセッサーは処理を(経路144に沿って)折り返す。初期の実施では、適切に構造の特徴を明確にするために必要とする幅と層の数の平均は、幅については約7から9で層については13から17であった。このように幅と層を追加してゆくことにより、多くの壁を持つ形状を分析することができる。
【0048】
以上に説明したように、本実施の形態における方法の1つの特徴は、理論的な層の密度と厚さを各繰り返し計算において変化させることができる点である。調査中の周期構造には実際の層が含まれることは特筆されるべきである。もしそうであるなら、これらの物理的な層は、一歩進んだ定義の境界条件として或いはモデルを拘束する条件として使うことができる。
【0049】
この計算において、試料の応答を決定するために入射光が複合していることが必要となる。幅と層の数が増大するにつれて、計算を行うのに必要とする時間も劇的に増大する。そこで、本発明の第2の特徴は、処理タスクは並列プロセッサーシステムに分配されることである。
【0050】
好ましい実施の形態において、8台のプロセッサー(図3)のうち1つがマスタープロセッサー32を構成し、の仮の7台のプロセッサーがスレーブ34となる。マスタープロセッサーは全体的な分析を制御し,機能の一部をスレーブプロセッサーに分配する。上述で注記したように、計算における最も時間を消費する部分は、異なった計測波長又は入射角の各々においてモデルの光学的応答を決定するところである。これらの理論的な計算結果と計測された信号との比較及びモデルの修正は比較的早く処理される。
【0051】
従って、本発明の好ましい実施の形態において、マスタープロセッサーは理論データの計算(図4におけるステップ104、110、116及び134で示されたような計算)をスレーブプロセッサーに分配する責務を負う。好ましい実施の形態においては、マスタープロセッサーはこのような計算に寄与することもある。
【0052】
計算時間の大幅な削減は仕事の負荷が公平に分配されたとき達成することができる。一様性を達成するための好ましい方法は、波長又は入射角の情報を連続して横断的にプロセッサーに配分することである。このようにして、最初のスレーブプロセッサー(8台のプロセッサーシステムにおいて)は最初の(最短の)波長及び、9番目、17番目、・・・(n+8番目)の波長に対する計算の責務を負う。第2のスレーブプロセッサーは2番目(次に短い)波長及び、10番目、18番目、・・・の波長に対して責務を負う。この方法は分光測光法及び分光偏光解析法の両方に用いることができる。同様の方法が複数の入射各の計測に用いることができ、第1番目、8番目、17番目に計測された角度は第1のスレーブプロセッサーにより計算され、・・・計算される。
【0053】
一旦各波長で(又は入射角で)計算がなされると、マスタープロセッサーは、各波長における計算結果をそれに対応する波長の正規化された計測値と比較する。この差は、計算結果の適合性の程度であり更なる反復計算が必要かどうかの決定に用いられる。上述のようにして、モデルにおける各反復計算に必要な計算が再びスレーブプロセッサーに分配される。
【0054】
本発明について、好ましい実施の形態に関連して説明したが、これに基づきいわゆる当業者は、付加的な特許請求の範囲に示したような発明の範囲と精神を逸脱することなく様々な修正や変更を加えることができるであろう。例えば、ここに記載した発明は、データを収集するために用いる特定のスキャタロメータによる方法に具体的に依存するものではない。データは分光反射率計又は分光偏光計により取得することができる。分光反射率計は、試料に対する通常の入射光又は軸のずれた入射光のいずれかの探査用光線からデータを得ることができることは、特筆すべきことである。同様に、分光偏光計は、試料に対する通常の入射光又は軸のずれた入射光のいずれかの探査用光線からデータを得ることができる。データは、様々な角度で入射した光入射装置からも得ることができる。米国特許出願No. 09/818,703に特筆されているように、出願人は同時に複数の入射角で照射する適用可能な装置を開発している。受託者の同時に複数の入射角で照射する装置の詳細な説明は、米国特許No. 4,999,014;5,042,951;5,181,080;5,412,473及び5,596,411に見出すことができ、これらはすべて参考としてここに組み入れられるものとする。2以上の装置からのデータを分析におけるあいまいさを低減するために結合することができることは、了解されるべきである。このような追加のデータは上記で論じた回帰分析においても結合することができる。
【0055】
米国特許No. 5,889,593もまた参考として組み込まれる。この特許において、周期構造をほぼカバーする大きなスポットを形成するためにコヒーレントな光の束を分割する光画像配列を含む発明が提案されている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、周期的表面の外観の概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る方法を実施するシステムのブロック図である
【図3】図3は、本発明に係る方法の実施に使用されるプロセッサーの単純化された概略図である。
【図4】図4は、本発明に係る、光学的データを分析し周期的構造の特徴を解析する方法を描いたフローチャートである。
【図5】図5は、本発明に係る方法の、第1のステップにおけるモデルの形を描いた図である。
【図6】図6は、本発明に係る方法の、次のステップにおけるモデルの形を描いた図である。
【図7】図7は、本発明に係る方法の、次のステップにおけるモデルの形を描いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に形成された形体の特性を分析する装置であって、
反射させるために前記形体に向けられた探査用光線と、波長又は入射角のどちらか一方から選択したあらかじめ定めた変数の関数として当該探査用光線の光強度又は偏光状態の変化を計測しこれらに対応する出力信号を発生する検出モジュールとを含む計測システムと、
マスタープロセッサーとデータを並列に処理するよう用意された複数のスレーブプロセッサーとを有するプロセッサーシステムであって、前記プロセッサーシステムは、前記計測システムから発生した出力信号を用いて実時間ベースで前記形体の特性を明らかにするものであり、前記プロセッサーシステムは、前記形体のモデルを有し、前記形体の特性についての初期推定に基づく前記あらかじめ定めた変数についての複数の値に対応する理論データを計算し、当該理論データを前記出力信号から導き出された正規化されたデータと比較し、その後、比較結果に基づき試料の特性についての初期推定を修正して新たな理論データを再計算し、前記計算された理論データと前記正規化されたデータとの差が最小になるまで前記比較と前記再計算とを繰り返すアルゴリズムを用いるものであり、理論データの前記計算は、前記マスタープロセッサーにより前記スレーブプロセッサーに配分され、各スレーブプロセッサーは、求める結果に到達するまでの時間が最小になるよう、前記あらかじめ定めた変数のうちの選択した相異なる値における計算を並列して行うことを特徴とする、プロセッサーシステムと、
を具備する装置。
【請求項2】
計算に必要な時間が最小になるような方法で、前記あらかじめ定めた変数のうちの前記相異なる値の計算が前記プロセッサーに分配されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マスタープロセッサーが前記比較を行うことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記マスタープロセッサーが理論的なモデルの特性を修正することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記計測システムは分光反射率計であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記計測システムは分光エリプソメータであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
試料に形成された形体の特性を分析する装置であって、
反射させるために前記形体に向けられた探査用光線と、波長又は入射角のどちらか一方から選択したあらかじめ定めた変数の関数として当該探査用光線の光強度又は偏光状態の変化を計測しこれらに対応する出力信号を発生する検出モジュールとを含む計測システムと、
前記計測システムから発生した出力信号に基づき、前記形体の特性を評価するプロセッサーシステムであって、前記プロセッサーシステムは、あらかじめ定めた変数のうちの選択した複数の値における放射に対する理論的な試料の応答に基づく理論データを計算するものであり、前記プロセッサーシステムは、複数のプロセッサーモジュールを有し、並列して計算するために前記プロセッサーモジュールに分配された、前記あらかじめ定めた変数のうちの選択した相異なる値における理論データの計算をおこない、前記理論データの計算結果は前記計測システムの前記出力信号から導き出された正規化されたデータと比較
され、前記理論モデルの前記特性は、前記計算されたデータと前記正規化されたデータとの差が最小となるよう反復して修正されることを特徴とするプロセッサーシステムと、
を具備する装置。
【請求項8】
計算に必要な時間が最小になるような方法で、前記あらかじめ定めた変数のうちの前記相異なる値の計算が前記各プロセッサーモジュールに分配されることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサーの内の1つが比較ステップを行うことを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサーの内の1つが理論的な試料の特性を修正することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記計測システムは分光反射率計であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記計測システムは分光エリプソメータであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
波長又は入射角のどちらか一方から選択したあらかじめ定めた変数に対応し、分光計測により発生した出力信号に基づいて試料に形成された形体の特性を分析する方法であって、前記方法は、複数のプロセッサーを有するプロセッサーシステムを用い、
選択された値における理論データの計算を、並列的に行うためプロセッサーモジュールに分配し、前記あらかじめ定めた変数のうちの選択した複数の値における探査用光線に対する理論的なサンプルの応答に対応する理論データを計算するステップと、
計算結果得られた前記理論データを前記出力信号から導き出された正規化されたデータと比較するステップと、
前記周期構造の特性を評価するために、前記計算されたデータと前記正規化されたデータとの差が最小となるよう理論的な試料を反復して修正するステップと、
を具備する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−123082(P2011−123082A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20410(P2011−20410)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2003−514342(P2003−514342)の分割
【原出願日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【出願人】(504228036)ケイエルエイ−テンコー コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】