説明

半導体ウェハの両面研磨方法

【課題】当該技術分野で公知の仕上げのCMP研磨の前の両面研磨法は、エッジ形状およびナノトポグラフィーの将来的な要求を満たさず、且つ基板直径450mmを有するウェハの加工に適していない。
【解決手段】第一の工程において固定された砥粒を有する研磨パッドを使用して半導体ウェハの前面を研磨し、且つ同時に砥粒を含有しない研磨パッドを用いて半導体ウェハの裏面を研磨するが、その間に砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと半導体ウェハの裏面との間に導入し、引き続き半導体ウェハを反転させ、その後、第二の工程において固定された砥粒を含有する研磨パッドを用いて半導体ウェハの裏面を研磨し、且つ同時に固定された砥粒を含有しない研磨パッドを用いて半導体ウェハの前面を研磨し、砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと半導体ウェハの前面との間に導入することを含む、半導体ウェハの両面研磨方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの両面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は次世代の技術、主に450mmの直径を有するウェハにおける、シリコンウェハの両面研磨を意図している。現在のところ主として、研磨された、またはエピタキシャル層で被覆された、直径300mmを有するシリコンウェハがエレクトロニクス産業における大半の要求の多い用途のために使用されている。基板直径450mmを有するシリコンウェハは開発中である。
【0003】
エレクトロニクス産業がより大きい基板を、マイクロプロセッサであろうとメモリチップであろうと、それらの素子の製造のために望んでいる本質的な理由は、見込まれる巨大な経済的利点にある。半導体産業においては長年にわたり定常的に、利用可能な基板面積が注目されてきた、言い換えれば、どれだけ多くの数の素子、即ちロジックチップまたはメモリチップを個々の基板上に収容できるかが考慮されてきた。これは、様々な素子製造者の加工工程は基板全体を対象にしているが、しかし基板の構造化のための個々の工程、即ち引き続き個々のチップをもたらす素子構造の製造もあり、従って加工工程の両方の群のための製造コストが基板サイズによって非常に特定に決定されることと関連する。基板サイズは素子1つあたりの製造コストに非常に著しく影響し、従って莫大な経済的重要性がある。
【0004】
しかしながら、基板直径の増加は、甚大で且つ時として全く新しい、今までには知られていない技術的な問題を内含している。
【0005】
最後に、全ての加工工程は、それらが純粋に機械的(ソーイング、粉砕、ラッピング)、化学的(エッチング、洗浄)、または化学−機械的な性質(研磨)、並びに熱工程(エピタキシー、アニール)であろうと、部分的にそのために使用される機械およびシステム(装置)にも関しても、完全な変更を必要とする。
【0006】
本発明は、ウェハがメモリチップの製造用に意図されている場合、最後の必要不可欠な加工工程として、あるいはウェハが現代のマイクロプロセッサの製造用のいわゆるエピウェハとして使用されることが意図されている場合、ウェハのエピタキシーに先立つ原理的に最後から二番目の必要不可欠な加工工程として、半導体ウェハの研磨に注目している。
【0007】
半導体ウェハの製造において、ウェハエッジから2mm以内の距離の領域において充分に良好なエッジ形状およびナノトポロジーを達成することが特に決定的である。
【0008】
ナノトポロジーは通常、2mm×2mmの面積を有する正方形の測定ウィンドウに基づく高さのばらつきPV(="ピーク・バレー")として表現される。
【0009】
用語"ナノトポロジー"または"ナノトポグラフィー"は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)によって、空間波長範囲0.2〜20mm(横相関長)において、且つ"平担度適用領域"(FQA; 製品の仕様において規定された、満たされなければならない特性のための表面領域)内でのウェハ前面全体の平坦化偏差を意味するとして定義されている。ナノトポロジーはウェハ表面全体を、種々のサイズの測定領域および重なりを有して完全に走査することによって測定される。それらの測定領域において見出される表面の高さのばらつき(ピーク・バレー)がないことが、ウェハ全体に要求される最大値を超えることを可能にする。測定領域の広さは仕様に依存して、且つ、例えば2×2mm2、5×5mm2、および10×10mm2にわたって定義される。
【0010】
一般に、半導体ウェハの最終的なナノトポロジーは研磨工程によって生じる。半導体ウェハの平坦性を改善するために、半導体ウェハの前面および裏面を同時に研磨するための装置および方法が提供され、且つさらに開発されている。
【0011】
いわゆる両面研磨(DSP)は例えばUS3691694号内に記載される。EP208315号B1内に記載される両面研磨の実施態様によれば、適切な大きさの窪みを有している金属またはプラスチックの"搬送板"または"テンプレート"内の半導体ウェハが、機械および加工パラメータによって予め決められた経路上を研磨ゾルの存在中で、研磨パッドで覆われた2つの回転する研磨板の間で動き、且つそれによって研磨される。
【0012】
両面研磨工程を通常、硬度60〜90(ショアA)を有する均質な多孔質ポリマー発泡体の研磨パッドを用いて、例えばDE10004578号C1内の実施例に記載される通りに実施する。そこでは、上部の研磨板に密着する研磨パッドは網状のチャネルによって透過しており、且つ、下部の研磨板に密着している研磨パッドはかかる組織を有さないなめらかな表面を有していることが開示されている。この施策は一方で、研磨の間に使用される研磨剤の均質な分布を確実にし、且つ他方で、研磨完了後に上部の研磨板が持ち上げられた際に半導体ウェハが上部の研磨パッドに張り付くのを防ぐことを意図している。
【0013】
両面研磨のために、半導体ウェハを搬送板の窪み内に、半導体ウェハの裏面が下部の研磨板の上に載るように置く。
【0014】
DSPの他に、先行技術におけるいわゆるCMP研磨も、欠陥を排除し且つ表面粗さを低減するために必要である。CMPにおいては、DSPよりも柔らかい研磨パッドが使用される。さらには、半導体ウェハの片面、即ち、その上に素子を引き続き製造することが意図されている側だけがCMPによって研磨される。該先行技術はまた、研磨を仕上げすることにも関する。CMP法は例えば、US2002−0077039号およびUS2008−0305722号内に開示される。
【0015】
WO99/55491号A1は、中に固定された砥粒を有する研磨パッドを使用する第一のFAP("固定砥粒研磨")研磨工程、および引き続き第二のCMP("化学機械研磨")研磨工程を有する二段階研磨法を記載している。CMPにおいては(DSPと同様に)/FAP研磨と対照的に、研磨パッドは固定された砥粒物質を含有しない。ここでは、DSP工程と同様に、懸濁液の形態の砥粒物質をシリコンウェハと研磨パッドとの間に導入する。かかる二段階研磨法は特に、FAP工程が基板の研磨された表面上に残す擦り傷を排除するために使用される。
【0016】
ドイツ特許出願DE102007035266号A1は、シリコン材料の基板の研磨方法において、1つの研磨工程においては結合されていない固体としての砥粒物質を含有する研磨剤懸濁液を基板と研磨パッドとの間に導入する一方、第二の研磨工程においては研磨剤懸濁液を固体を有さない研磨剤溶液によって置き換える点において異なる、FAP式の2つの研磨工程を含む方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US3691694
【特許文献2】EP208315号B1
【特許文献3】DE10004578号C1
【特許文献4】US2002−0077039号
【特許文献5】US2008−0305722号
【特許文献6】WO99/55491号A1
【特許文献7】ドイツ特許出願DE102007035266号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
当該技術分野で公知である、仕上げのCMP研磨の前の両面研磨法は、エッジ形状およびナノトポグラフィーの将来的な要求を満たさず、且つ、基板直径450mmを有するウェハの加工に適していないことが判明している。
【0019】
この問題が本発明の課題の発端である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は、半導体ウェハの両面研磨方法において、第一の工程において固定された砥粒を有する研磨パッドを使用して半導体ウェハの前面を研磨し、且つ同時に、砥粒を含有しない研磨パッドを用いて該半導体ウェハの裏面を研磨するが、その間に砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと該半導体ウェハの裏面との間に導入し、引き続き、該半導体ウェハを反転させ、そしてその後、第二の工程において、固定された砥粒を含有する研磨パッドを用いて該半導体ウェハの裏面を研磨し、且つ同時に、固定された砥粒を含有しない研磨パッドを用いて該半導体ウェハの前面を研磨し、砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと該半導体ウェハの前面との間に導入することを含む方法によって解決される。
【0021】
従って本発明は、FAP研磨とCMP研磨とを同時に、初めは前面/裏面上で、そしてその後、裏面/前面上で行う、複合型同時両面研磨法を提供する。その新規の方法は、従来のDSP工程および引き続く別のCMP工程を不要にすることができる。
【0022】
本発明を、半導体ウェハの既存の両面研磨装置において、例えばPeter Wolters、Rendsburg (ドイツ)製のAC2000型の市販の両面研磨機上で実施できる。
【0023】
この研磨機は、搬送板を駆動するために外側および内側の回転盤のピン式のインターロックが装備されている。該装置は、1つまたはそれより多くの搬送板のために構成されてもよい。複数の搬送板を有する装置はより高いスループットのために好ましく、例えばDE10007390号A1内に記載されるものであり、そこでは搬送板は装置の中心に対して遊星状の経路上を動く。該装置は下部の研磨板と上部の研磨板とを含み、それらは自由に水平に回転可能であり、且つ、研磨パッドで覆われている。研磨の間、半導体ウェハは搬送板の窪み内、且つ2枚の研磨板の間に位置し、前記研磨板が回転し且つそれらの上に特定の研磨圧力をはたらかせる一方で、研磨剤が連続的に供給される。搬送板も、好ましくは、搬送板の円周上の歯と噛み合う回転ピンリングを介して動き始める。
【0024】
典型的な搬送板は、3つの半導体ウェハを保持するための窪みを含む。その窪みの円周上に、半導体ウェハの脆いエッジ部の保護を意図した、特に搬送板本体から放出される金属を含むインレーがある。搬送板本体は例えば、金属、セラミック、プラスチック、繊維強化プラスチック、または"ダイヤモンド状カーボン"(DLC層)によって被覆された金属からなってよい。しかしながら、鋼が好ましく、ステンレスクロム鋼が特に好ましい。その窪みは好ましくは、少なくとも200mm、好ましくは300mm、より特に好ましくは450mmの直径および500〜1000μmの厚さを有する奇数の半導体ウェハを保持するように構成されている。
【0025】
使用される研磨剤は砥粒を含有する。
【0026】
砥粒物質粒子の粒径分布は、好ましくは単峰性の形になっている。
【0027】
平均粒径は、5〜300nm、特に好ましくは5〜50nmである。
【0028】
砥粒物質は、基板材料、好ましくは元素のアルミニウム、セリウムまたはシリコンの酸化物の1つまたはそれより多くを機械的に除去する材料からなる。
【0029】
研磨剤懸濁液中の砥粒物質の割合は、好ましくは0.25〜20質量%、特に好ましくは0.25〜1質量%である。
【0030】
コロイド状に分散したシリカを研磨剤懸濁液として使用することが特に好ましい。
【0031】
例えば、水性の研磨剤、Bayer AG製のLavasil(登録商標)200およびフジミ製のGlanzox 3900(登録商標)を用いてよい。
【0032】
研磨剤は好ましくは添加剤、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含有する。
【0033】
しかしながら、研磨剤懸濁液は、1つまたはそれより多くのさらなる添加剤、例えば表面活性添加剤、例えば湿潤剤および界面活性剤、保護コロイドとして作用する安定剤、防腐剤、殺菌剤、アルコールおよび捕捉剤を含有してよい。
【0034】
本発明による方法において、研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有する研磨パッドを使用する(FAPまたはFAパッド)。
【0035】
適した砥粒物質は、例えば元素のセリウム、アルミニウム、シリコンまたはジルコニウムの酸化物の粒子および硬質物質、例えばシリコンカーバイド、ホウ素窒化物およびダイヤモンドの粒子を含む。
【0036】
特に適した研磨パッドは、複製された微細構造によって付与された表面トポグラフィーを有する。それらの微細構造("支柱")は、例えば円筒形または多角形の断面を有する柱の形、または角錐または角錐台の形を有する。
【0037】
かかる研磨パッドのより詳細な記載は、例えばWO92/13680号A1およびUS2005/227590号A1内に包含されている。
【0038】
例えばUS6602117号B1内に記載される通り、中に固定されたセリウム酸化物の砥粒を有する研磨パッドを使用することがより特に好ましい。
【0039】
使用されるFAP研磨パッドのグレインの大きさ(固定された砥粒/粒子の大きさ)は、好ましくは0.1μm以上、且つ1.0μm以下である。
【0040】
0.1〜0.6μmの粒径が特に好ましい。
【0041】
0.1〜0.25μmの粒径がより特に好ましい。
【0042】
1つの研磨板は、かかるFAPパッドを装備している。
【0043】
第二の研磨板は従来のCMP研磨パッドを有している。
【0044】
使用されるCMP研磨パッドは多孔質基材を有する研磨パッドである。
【0045】
好ましくは、研磨パッドは熱可塑性または熱硬化性ポリマーからなる。様々な物質を、例えばポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル等の材料と想定してもよい。
【0046】
研磨パッドは、好ましくは固体の、微孔質ポリウレタンを含有する。
【0047】
ポリマーで含浸された、発泡板またはフェルトまたは繊維物質製の研磨パッドを使用することもまた好ましい。
【0048】
被覆された/含浸された研磨パッドは、基材中で被覆物中とは異なる孔分布および異なる孔の大きさがあるように構成されてもよい。
【0049】
研磨パッドは本質的に平坦、または穿孔されていてよい。
【0050】
研磨パッドの多孔率を制御するために、充填材を研磨パッド内に導入してよい。
【0051】
市販の研磨パッドは、例えばRodel Inc.製のSPM3100、またはRohm & Haas製のDCPシリーズのパッドおよびIC1000(商標)、Polytex(商標)またはSUBA(商標)銘柄のパッドである。
【0052】
半導体ウェハは好ましくはシリコン/シリコン−ゲルマニウム、二酸化シリコン、シリコン窒化物、またはガリウムヒ素、および他のいわゆるIII−V族半導体のウェハである。
【0053】
例えば、チョクラルスキー法またはフローティングゾーン法によって結晶化された単結晶形態のシリコンの使用が好ましい。
【0054】
(100)、(110)、または(111)の結晶配向を有するシリコンが特に好ましい。
【0055】
特許請求された方法の出発物質は、公知の方法で結晶から切り出され、エッジを丸められ、且つ随意にさらなる加工工程に供されている様々な半導体ウェハである。該半導体ウェハはラップされた、研削された、エッチングされた、研磨された、エピタキシャル層で被覆された、または別な方法で被覆された表面を有してよい。
【0056】
上述の通り、本発明によって、例えばPeter Wolters/Rendsburg製のAC2000型の両面研磨機上で研磨を実施する場合、先行技術において不可避である片面仕上げ研磨(CMP)を不要にすることができる。なぜなら、形状を決定する研磨と表面品質を決定する研磨との両方が1つの種類の機械で完全に実施されるからである。
【0057】
先行技術においては、粗研磨および仕上げ研磨(DSPおよびCMP)は互いに別々に、且つ異なる研磨機上で実施されている。先行技術においては、半導体ウェハの前面のみがCMPによって研磨されている。
【0058】
最適なウェハの形状、ここでは特にエッジ形状(エッジロールオフの排除)を達成するために、遊星型運動を用いた同時両面研磨、および組み合わせて使用される固定された砥粒およびCMP研磨パッドは利点を提供する。なぜなら、固定された砥粒の研磨法は、随意に突出部を有して構成可能な硬質のパッドのおかげで、必要な研磨除去を得るためのシリカゾルを含有する成分を不要にすることを可能にし、且つ、それは半導体ウェハのエッジ領域にゆっくりと作用することもできるからである。
【0059】
さらには、CMP研磨パッドを装備している研磨板の1つによって、同時両面研磨の範囲にCMP研磨を容易に組み込むことができ、その上でCMP工程を行う。
【0060】
本発明による両面研磨を2つの研磨サブステップで行い、その間にウェハを裏返す。
【0061】
研磨工程全体を1つの種類の研磨機上で実施することは、工程の流れ全体の著しい簡略化および必要な空間の節減をもたらす。
【0062】
本発明による両面研磨の前、両面研磨の2つの研磨サブステップの間、または両面研磨が完了した後でさえも、エッジ研磨を実施してよい。
【0063】
このために、中心で回転するシリコンウェハのエッジを、特定の力(印加圧力)を用いて中心で回転する研磨ドラムに押しつける。かかるエッジ研磨法は、US5989105号から公知であり、そこでは研磨ドラムがアルミニウム合金からなり、且つ研磨パッドを有している。シリコンウェハは通常通りに平坦なウェハホルダー、いわゆるチャック上に固定される。シリコンウェハのエッジはチャックから突き出しており、従って研磨ドラムに自由に近づくことができる。
【0064】
それらの従来のエッジ研磨法は、特に半導体ウェハのエッジ領域中の局所的な形状に悪影響を及ぼす。これは、使用される比較的"柔らかいエッジ研磨パッド"(上にシリカゾルを適用された比較的柔らかい研磨パッドを使用するのが普通である)を用いて、エッジ自身だけでなく、半導体ウェハの前面および/または裏面の外側の部分も研磨されることに関連し、それは硬いシリコンエッジが、上に研磨材懸濁液を適用されている研磨パッド内に"浸漬"されていることによって説明される。この影響は特に、エッジそれ自体の領域だけでなく、前面および/または裏面上の隣接する領域においても材料が除去されることである。
【0065】
好ましくは、本発明による方法における半導体ウェハのエッジ研磨を、半導体ウェハを中心で回転するチャックの上に固定し、該半導体ウェハと、チャックに対して傾斜し且つ固定された砥粒を含有する研磨パッドを有する、中心で回転する研磨ドラムとを一緒にして、そして該半導体ウェハと該研磨ドラムとを押し合わせる一方、固体を含有しない研磨剤溶液を連続的に供給することによって実施する。
【0066】
研磨剤溶液は好ましくは水、または化合物、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、またはそれらの任意の混合物の水溶液である。
【0067】
研磨剤溶液中の前記の化合物の割合は、好ましくは0.01〜10質量%である。
【0068】
研磨剤溶液のpHは好ましくは10〜12である。
【0069】
エッジ研磨のために使用され、且つ研磨ドラム上に据えつけられた研磨パッドは、好ましくは元素のセリウム、アルミニウム、シリコンまたはジルコニウムの酸化物の粒子、または硬質物質、例えばシリコンカーバイド、ホウ素窒化物またはダイヤモンドの粒子から選択される砥粒物質を含有する。例えばUS6602117号B1内に記載される通り、中に固定されたセリウム酸化物の砥粒を有する研磨パッドを使用することが特に好ましい。
【0070】
砥粒の平均粒径は好ましくは、0.1〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.6μm、およびより特に好ましくは0.1〜0.25μmである。
【0071】
両面研磨の2つのサブステップの間に第一のエッジ研磨を行い、且つ、両面研磨全体の終了後に第二のエッジ研磨を行うことによって二段階エッジ研磨が好ましく実施され、分割されていることによってエッジ研磨がより精巧になることが可能になり、従って、特にエッジ研磨は通常、半導体ウェハの局所的なエッジ領域において形状を劣化させることが知られているが、ウェハのエッジ形状への影響を可能な限り少なくすることを可能にする。
【0072】
好ましくは、第二のエッジ研磨を実施する一方、砥粒を含有する研磨剤懸濁液を供給する。
【0073】
研磨剤懸濁液中の砥粒物質の割合は、好ましくは0.25〜20質量%である。
【0074】
研磨剤懸濁液中の砥粒物質は、好ましくは元素のアルミニウム、セリウムまたはシリコンの酸化物からなる群の1つまたはそれより多くから選択される。
【0075】
好ましくは、研磨剤懸濁液はコロイド状に分散されたシリカである。
【0076】
研磨剤懸濁液のpHは好ましくは9〜11.5である。
【0077】
好ましくは、研磨剤懸濁液のpHを、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、またはそれらの化合物の任意の混合物からなる群から選択される添加剤を導入することによって調節する。
【0078】
本発明は外側のエッジ領域にゆっくりと影響し、且つ縁の領域(2mm EE以下、特に1mm以下)において局所的な形状を改善することを可能にする。
【0079】
本方法はさらに、簡略化された工程の流れをもたらす。粗研磨および仕上げ研磨の工程を1つの研磨機上で行うことによって、研磨工程全体が短縮される。先行技術において提供されるCMP研磨工程が不要になり、それがコストにおける有利性をもたらす。
【実施例】
【0080】
第一の工程においてシリコンウェハからの必要とされる目標値の材料除去の大半をもたらし、且つ、第二の工程においてシリコンウェハの仕上げ研磨を実施する、分割された浮動式の両面研磨法の実施:
第一に、上部のFAP研磨パッド上で前面を研磨する。
【0081】
同時に、CMP研磨パッド上によって裏面を研磨する。
【0082】
第一の工程と第二の工程との間にウェハの反転を行う。
【0083】
第二の工程において、下部のCMP研磨パッド上で前面を仕上げ研磨する一方、同時に上部のFAP研磨パッド上で裏面を仕上げ研磨する。
【0084】
両方の工程を、遊星型運動を用いた同一の両面研磨機上で行う。
【0085】
その結果は、最適なエッジ形状、改善されたナノトポロジー特性を有し、且つ可変の裏面粗さを有する、仕上げ研磨されたウェハである。
【0086】
上部の研磨板は固定された砥粒研磨パッドで被覆され、且つ、下部の研磨板は典型的な仕上げ研磨パッドで被覆されている。
【0087】
FAP研磨パッドを、ウェハエッジ形状をそのエッジで制御するように仕立てることができ、従ってウェハの突出部が得られる。
【0088】
エッジロールオフは従って著しく低減される。改善された局所的な形状がウェハエのエッジで得られる。
【0089】
工程1:
FAP研磨によるウェハ前面の研磨およびCMP研磨によるウェハ裏面の同時の研磨。
【0090】
第一のサブステップは、従来の方法で、即ち、DSP研磨の従来の研磨工程と同様に、コロイド状シリカゾル(例えばLavasil(登録商標)200、Bayer AG製)およびアルカリ性研磨溶液(例えばK2CO3+KOH)に基づく研磨スラリーを用いた研磨の始めに開始される研磨工程で始まって、CMP研磨パッド上で粗研磨工程を開始する。
【0091】
CMP研磨パッド("仕上げパッド")として、Rodel Inc.製のSPM3100の使用が好ましい。
【0092】
研磨工程が開始した後、外的に供給されるシリカゾルを止め、従ってここで2つの研磨パッドはアルカリ性研磨溶液のみを受け取る。
【0093】
外部のシリカゾルを止めた後、柔らかいCMPパッド上での材料除去を最適に構成するために、好ましくは炭酸カリウム(K2CO3)およびKOH以外に、特にケイ酸カリウム(K2SiO3)を使用してもよい。
【0094】
アンモニウム以外に、炭酸塩、水酸化物、ケイ酸塩化合物、周期律表の第一族典型元素(例えばナトリウム、リチウム)からのカチオンを想定してもよい。
【0095】
例えば、ケイ酸カリウムはシリカのカリウム塩である。K2SiO3のpHは、同様の濃度のK2CO3のpHのアルカリ性に匹敵する(pH11〜12.5)。
【0096】
わずかなケイ酸カリウムの添加によって、それが(シリカゾルを用いて)"開始"されたら、化学機械粗研磨工程を、コロイド状SiO2の外部供給を用いずに維持することが可能である。
【0097】
目標材料除去の大部分(>50%)に相応する特定の目標値の材料除去に到達した後、研磨作業を、シリカゾル、例えばGlanzox 3900*(他のシリカゾルよりも良好な平坦化特性を有しているのでここで使用される)と共に停止する。
【0098】
これは半導体ウェハの親水性表面をもたらし、その上では無制御のエッチングが起こらず、従って滑らかな表面が達成される。
【0099】
* Glanzox 3900は、株式会社フジミ、日本、によって濃縮物として提供される研磨剤懸濁液の製品名である。非希釈の溶液はpH10.5を有し、且つ、平均粒径30〜40nmを有するコロイド状SiO2を約9質量%含有する。
【0100】
中間工程: "水はじき(Wafer flipping)"
ウェハの裏返し、半導体ウェハの反転。
【0101】
工程2:
FAP研磨による裏面研磨、および欠陥率、FAPに起因する微細な損傷(FAP)を低減し、且つ前面の表面粗さを調節するためのCMP研磨(仕上げ研磨)による前面の同時の研磨。
【0102】
この第二のサブステップの継続時間を、一方で所望の結果が前面(仕上げ研磨表面)上で達成され、且つ他方で正確に定義された裏面粗さが得られるように選択すべきである。
【0103】
ここで、主にシリカゾルGlanzox 3900を砥粒成分として使用する。
【0104】
裏面のFAP研磨の間に、所望の裏面粗さを達成するために、好ましくは以下の工程を採用する:
その裏面の平坦な表面上で、半導体ウェハは好ましくは、250μm以下の空間波長に関して示される0.3〜4.5nmの平均表面粗さRaを広い範囲内で有する。表面粗さを測定するために適しているのは、250μmフィルターを有するChapman Surface Profiler MP 2000である(250μmより長い空間波長=うねりのデータ、Chapman Technical Note−TG−1、Rev−01−09を参照)。
【0105】
上述の範囲において高い裏面粗さが望まれる場合、0.5〜1.0μmの粒径を有するFAPパッドが好ましく使用される。
【0106】
低い裏面粗さが望まれる場合、0.1〜0.25μmの粒径を有するFAPパッドが好ましく使用される。
【0107】
裏面上で所望の表面粗さを達成するために、裏面のさらなる片面研磨を実施することが有利であることがある。これは好ましくは3つの工程で実施され、それぞれ研磨パッド中に結合された砥粒物質を含有し、且つシリコンウェハの裏面上に研磨圧力で押しつけられた研磨パッドを使用し、固体を有さない研磨剤を研磨パッドとシリコンウェハの裏面との間に第一の工程で導入する一方、砥粒物質を含有する研磨剤を第二および第三の工程で導入し、第一および第二の工程における研磨圧力8〜15psiを、第三の工程においては0.5〜5psiに低減する。
【0108】
本発明による方法においてシリコンウェハの裏面を研磨する第一の工程における研磨剤溶液は、最も簡単な場合では、シリコン産業において使用するために必要な純度を有する水、好ましくは脱イオン水(DIW)である。しかしながら、研磨剤溶液は、化合物、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)またはそれらの任意の混合物を含有していてもよい。
【0109】
より特に好ましいのは炭酸カリウムの使用である。
【0110】
シリコンウェハの裏面を研磨する第二の工程においては、砥粒を含有する研磨剤を使用する。
【0111】
砥粒物質は、基板材料、好ましくは元素のアルミニウム、セリウムまたはシリコンの酸化物の1つまたはそれより多くを機械的に除去する材料からなる。
【0112】
コロイド状に分散されたシリカを含有する研磨剤懸濁液が特に好ましい。
【0113】
シリコンウェハの裏面を研磨する第三の工程においては、第二の工程と同様に砥粒を含有する研磨剤を使用する。第一の工程と第二の工程とを比較すると、研磨圧力が8〜15psiから0.5〜5psiに低減されている。
【0114】
それらの研磨を実施するために、従来の研磨機、例えばStrasbaugh Inc.製の研磨機"nHance 6EG"が適している。
【0115】
Strasbaugh Inc.製の研磨機は、研磨パッドおよび研磨ヘッドを有する研磨板を有しており、それは半導体ウェハを完全に自動で処理する。該研磨ヘッドは、全体に載せられており、且つ、"バッキングパッド"で覆われた固定された台板および可動式のリテーナーリングを含む。研磨の間、その上で半導体ウェハが浮動するエアクッションを、2つの同軸の圧力帯域(内側の圧力帯域および外側の圧力帯域)内の台板内の孔を通じて設定できる。可動式のリテーナーリングを、圧縮空気嚢によって、研磨パッドが半導体ウェハと接触し、且つそれを平たく保つ圧縮応力を与えるように加圧することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの両面研磨方法において、第一の工程において固定された砥粒を有する研磨パッドを使用して半導体ウェハの前面を研磨し、且つ同時に、砥粒を含有しない研磨パッドを用いて該半導体ウェハの裏面を研磨するが、その間に砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと該半導体ウェハの裏面との間に導入し、引き続き該半導体ウェハを反転させ、そしてその後、第二の工程において、固定された砥粒を含有する研磨パッドを用いて該半導体ウェハの裏面を研磨し、且つ同時に、固定された砥粒を含有しない研磨パッドを用いて半導体ウェハの前面を研磨し、砥粒を含有する研磨剤を研磨パッドと該半導体ウェハの前面との間に導入することを含む方法。
【請求項2】
研磨剤が元素のアルミニウム、セリウムおよびシリコンの酸化物からなる1つまたはそれより多くの群から選択される砥粒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
研磨剤がコロイド状に分散されたシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
研磨剤が、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)からなる群から選択される1つまたはそれより多くの砥粒を含有する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
固定された砥粒を有する研磨パッドが、元素のセリウム、アルミニウム、シリコンおよびジルコニウムの酸化物からなる群から選択される粒子、またはシリコンカーバイド、ホウ素窒化物、およびダイヤモンドからなる硬質物質の群から選択される粒子を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
研磨パッドがセリウム酸化物粒子を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
固定された砥粒を有する研磨パッドが、0.1μm以上且つ1.0μm以下の大きさを有する粒子を含有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
固定された砥粒を含有しない研磨パッドが多孔質基材を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
固定された砥粒を含有しない研磨パッドが熱可塑性または熱硬化性ポリマーからなる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
研磨パッドが固体の、微孔質ポリウレタンを含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
半導体ウェハがシリコン、シリコン−ゲルマニウム、二酸化シリコン、シリコン窒化物、またはガリウムヒ素、または他のIII−V族半導体を含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
半導体ウェハの少なくとも1つのエッジ研磨を、第一の両面研磨の前、または第二の両面研磨の後、または2つの両面研磨工程の間に行う、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
2つの両面研磨工程の間の第一のエッジ研磨と、第二の両面研磨の後の第二のエッジ研磨との、2つのエッジ研磨を実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
2つのエッジ研磨をそれぞれ、半導体ウェハを中心で回転するチャック上に固定し、該半導体ウェハと、チャックに対して傾斜し且つ固定された砥粒を含有する研磨パッドを有する、中心で回転する研磨ドラムとを一緒にして、そして該半導体ウェハと該研磨ドラムとを押し合わせる一方、研磨剤を連続的に供給することによって実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
固体を含有しない研磨剤を第一のエッジ研磨の間に使用する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第二のエッジ研磨を実施する一方、砥粒を含有する研磨剤懸濁液を供給する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
研磨ドラム上に据え付けられた研磨パッドが、元素のセリウム、アルミニウム、シリコンおよびジルコニウムの酸化物の群の粒子から選択されるか、またはシリコンカーバイド、ホウ素窒化物、およびダイヤモンドからなる硬質物質の群の粒子から選択される砥粒物質を含有する、請求項14から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
砥粒の平均粒径が0.1〜1μmである、請求項17に記載の方法。

【公開番号】特開2011−9735(P2011−9735A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−125989(P2010−125989)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】