説明

半導体ウエハの搬送方法および半導体ウエハの研削装置

【課題】極薄化された半導体ウエハを安全に搬送し、かつ半導体ウエハにダメージを与えることなく次工程に受け渡すことが可能な半導体ウエハの搬送方法および、このような搬送方法に適用可能な半導体ウエハの研削装置を提供する。
【解決手段】裏面が研削された半導体ウエハ1を搬送するための方法であって、
片面に複数の突起物36を有し、かつ該片面の外周部に該突起物と略同じ高さの側壁35を有するジグ基台30と、該ジグ基台30の突起物36を有する面には、密着層31、突起物36および側壁35により区画空間37が形成され、ジグ基台30には、外部と区画空間37とを貫通する少なくとも1つの貫通孔38が設けられた固定ジグ3を用意し、半導体ウエハ1の研削直後に、該ウエハの研削面を固定ジグの密着層31に貼着し、半導体ウエハ1と固定ジグ3を一体で搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極薄に加工された半導体ウエハにダメージを与えることのない半導体ウエハの搬送方法および半導体ウエハの研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードや携帯電子機器の普及が進み、さらなる半導体部品の薄型化が望まれている。このため、従来は厚さが350μm程度であった半導体チップを、厚さ50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くする必要が生じている。
【0003】
通常、半導体ウエハは、表面回路形成を行った後、裏面を所定の厚さに研削を行い回路毎にダイシングを行って形成される。上記のように極薄化された半導体ウエハは極めて脆く、所定の面積のチップにダイシングされるまでは、裏面保護用粘着シートやダイシングシートの粘着シートに貼着されていてもわずかな振動で破損してしまう。また、半導体の生産性を向上させるためシリコンウエハは大面積化する傾向にあり、研削後のウエハはますます破損し易くなっている。
【0004】
このため、半導体ウエハを支持するためガラス等の剛性板に両面粘着シートで固定して行われる半導体の生産方法が、ウエハにダメージを与えないと期待されている。しかし、所定の処理を終えた半導体ウエハは剛性板から剥離され次の工程に供与される。剥離作業は、脆質の半導体ウエハ側に応力が集中しやすく、両面粘着シートの粘着剤が紫外線硬化型で低接着力化することが可能であっても、半導体ウエハが破損するおそれが大きく、半導体ウエハの剥離作業は極めて困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑み、極薄化された半導体ウエハを安全に搬送し、かつ半導体ウエハにダメージを与えることなく次工程に受け渡すことが可能な半導体ウエハの搬送方法を提供することを目的としている。
【0006】
また、本発明は、このような搬送方法に適用可能な半導体ウエハの研削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体ウエハの搬送方法は、
裏面が研削された半導体ウエハを搬送するための方法であって、
片面に複数の突起物を有し、かつ該片面の外周部に該突起物と略同じ高さの側壁を有するジグ基台と、該ジグ基台の突起物を有する面には、前記密着層、前記突起物および前記側壁により区画空間が形成され、前記ジグ基台には、外部と前記区画空間とを貫通する少なくとも1つの貫通孔が設けられた固定ジグを用意し、
半導体ウエハの研削直後に、該ウエハの研削面を前記固定ジグの密着層に貼着し、半導体ウエハと固定ジグを一体で搬送することを特徴としている。
【0008】
このような方法によれば、極薄に形成された半導体ウエハであってもダメージを与えることなく搬送することができる。また、搬送後にジグ基台の貫通孔から区画空間の内部を吸引すれば、密着層の変形により密着層上部のウエハを容易に剥離することが可能なことから、半導体ウエハにダメージを与えることなく次工程に受け渡すことが可能になる。
【0009】
ここで、本発明では、前記半導体ウエハが半導体ウエハの回路面を表面保護用粘着シートに貼付された状態で研削された半導体ウエハであり、当該半導体ウエハを前記固定ジグに貼着して搬送した後に前記表面保護用粘着シートを剥離することが好ましい。
【0010】
このような構成であれば、裏面研削を行う場合に半導体ウエハ表面の回路面を保護した状態で行うことができる。
さらに、本発明に係る半導体ウエハの研削装置は、上記の半導体ウエハの搬送方法に適用するためのウエハ研削装置であって、ウエハ供給部、ウエハ収納部、ウエハ搬送アーム、ウエハ裏面を砥石で研削する研削部、固定ジグ供給部および固定ジグ供給アームからなることを特徴としている。
【0011】
このような構成であれば、半導体ウエハの裏面研磨から洗浄までの工程を連続的に行うことができる。
ここで、本発明に係る研削装置では、前記ウエハ供給部と前記研削部との間に、ウエハを一時的に保持する一時テーブルを有し、前記固定ジグ供給アームはこの一時テーブルの面と固定ジグの密着層が正対し互いの面が平行を保持して相対的に近接離間移動が可能となっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記固定ジグ供給アームは一時テーブルの面と固定ジグの密着層が微小の角度で対面し、前記角度を維持して相対的に接近移動が可能であり、前記固定ジグの端点が一次テーブル上のウエハに接した後の近接移動は、前記角度から徐々に平行となるように移動可能となっていても良い。
【0013】
さらに、本発明に係る研削装置では、前記ウエハ搬送アームは、前記固定ジグの基台本体を吸着支持する吸着孔と、貫通孔を接続して固定ジグの区画空間を減圧または加圧状態とする空圧制御装置とを連通することが可能となるよう吸着部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体ウエハの搬送方法及び半導体ウエハの研削装置によれば、裏面研削が行われた後の極薄化された半導体ウエハが破損されることなく安全に搬送することが可能となる。また、区画空間を吸着し密着層を変形させることにより、ウエハを容易に剥離することが可能なことから、搬送後の半導体ウエハにダメージを与えることなく次工程に受け渡すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明に用いられる固定ジグを示したもので、この固定ジグは、本発明に係る半導体ウエハの研削装置に組み込まれて、その後の搬送に使用されるものである。すなわち、本発明では、半導体ウエハの裏面研削が完了した直後に、半導体ウエハが固定ジグに固定される。そして、半導体ウエハは固定ジグとともに次の工程に搬送される。
【0016】
図1に示したように、本発明に係る固定ジグ3は、ジグ基台30と密着層31とからなる。ジグ基台30の形状としては、略円形、略楕円形、略矩形、略多角形が挙げられ、その中でも図2に示したように略円形が好ましい。ジグ基台30の一方の面には、図1および図2に示すように、複数の突起物36が所定の間隔をおいて上方に突出して形成されている。突起物36の形状は特に限定されないが、円柱形または円錐台形が好ましい。また、ジグ基台30の突起物36を形成した一方の面の外周部には、突起物36と略同じ高さの側壁35が形成されている。
【0017】
また、この突起物36を有する面上には密着層31が積層されている。この密着層31
は側壁35の上面で接着され、また、突起物36の上面と密着層31は接着されてもよいし接着されていなくてもよい。ジグ基台30の突起物36を有する面には、突起物36、側壁35および密着層31により区画空間37が形成されている。これらの区画空間37は全て連通されている。
一方、ジグ基台30には、区画空間37を外部に連通させる貫通孔38がジグ基台30の厚さ方向に設けられジグ基台30の下面に開口している。貫通孔38はジグ基台30に少なくとも1個設けられていればよく、複数個設けられていてもよい。また、ジグ基台30の径方向に貫通孔38を設けジグ基台30の側面に開口させてもよい。図3に示したように、貫通孔38の開口部に着脱自在のバキューム装置Vを接続することにより、区画空間37内の気体を排気し密着層31を凹凸状に変形させることができる。
【0018】
ジグ基台30の材質は、機械強度に優れたものであれば特に限定されないが、たとえば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂;アルミニウム合金、マグネシウム合金、ステンレスなどの金属材料;ガラスなどの無機材料;ガラス繊維強化エポキシ樹脂などの有機無機複合材料等が挙げられる。ジグ基台30の曲げ弾性率は、1GPa以上で
あることが好ましい。このような曲げ弾性率を有していれば、ジグ基台の厚さを必要以上に厚くすることなく剛直性を与えることができる。このような材料を用いることにより、ウエハの裏面研削が行われた極薄のウエハを湾曲させずに十分に支持することができる。
【0019】
ジグ基台30の外径は、半導体ウエハの外径と略同一または半導体ウエハの外径よりも大きいことが好ましい。ジグ基台30が半導体ウエハの規格サイズの最大径(例えば300mm径)に対応できる外径を有していれば、それより小さい全ての半導体ウエハに対して適用することができる。また、ジグ基台30の厚さは、0.5〜2.0mmが好ましく、0.5〜0.8mmがより好ましい。ジグ基台の厚さが上記範囲にあると、ウエハの裏面研削を行った後でウエハを湾曲させずに十分に支持することができる。
【0020】
突起物36および側壁35の高さは、0.05〜0.5mmがより好ましい。また、突起物36の上面の幅は0.05〜1.0mmが好ましい。さらに、突起物の間隔(突起物の中心間距離)は0.2〜2.0mmが好ましい。突起物36の大きさならびに突起物の間隔が上記範囲にあると、区画空間37内の脱気により密着層31を十分に凹凸状に変形させることができ、その上の半導体ウエハを容易に密着層31から取り外すことができる。さらに、密着層31の凹凸の変形を何度も繰り返した後であっても、元の平坦な状態に復元し続けることができる。
【0021】
貫通孔38の径は特に限定されないが、2mm以下が好ましい。
このようなジグ基台30は、たとえば、熱可塑性の樹脂材料を金型を用いて加熱成形して、ジグ基台の底部と、側壁35と、突起物36とを一体で製造してもよいし、平面円形板上に側壁35および突起物36を形成して製造してもよいし、あるいは、凹型円板の凹部内表面に突起物36を形成して製造してもよい。突起物36の形成方法としては、電鋳法により金属を所定の形状に析出させる方法、スクリーン印刷により突起物を形成する方法、平面円形板上にフォトレジストを積層し、露光、現像して突起物を形成する方法などが挙げられる。また、金属製平面円形板の表面をエッチングにより側壁及び突起物を残して侵食除去する方法やサンドブラストにより平面円形板の表面を側壁及び仕切り壁の形成部分を残して除去する方法などによりジグ基台30を製造することもできる。なお、貫通孔38は突起物を形成する前に予め形成してもよいし、後で形成してもよい。また、ジグ基台の成型と同時に形成してもよい。
【0022】
ジグ基台30上に配置された密着層31の材質としては、可撓性、柔軟性、耐熱性、弾性、粘着性等に優れた、ウレタン系、アクリル系、フッ素系またはシリコーン系のエラス
トマーが挙げられる。このエラストマーには、必要に応じて補強性フィラーや疎水性シリカなどの各種添加剤を添加してもよい。
【0023】
密着層31はジグ基台30と略同一形状の平板であることが好ましく、密着層31の外径はジグ基台30の外径と略同一であることが好ましく、厚さは、20〜200μmが好ましい。密着層31の厚さが20μm未満では、吸引の繰り返しに対する機械的な耐久性に乏しくなることがある。一方、密着層31の厚さが200μmを超えると、吸引による剥離に著しく時間がかかることがあり好ましくない。
【0024】
また、密着層31の引張破断強度は5MPa以上であることが好ましく、引張破断伸度は500%以上であることが好ましい。引張破断強度や引張破断伸度が上記範囲にあると、密着層31の変形を何度も繰り返した場合でも、密着層31の破断も弛みも発生せず、元の平坦な状態に復元させることができる。
【0025】
また、密着層31の曲げ弾性率は、10〜100MPaの範囲が好ましい。密着層31の曲げ弾性率が10MPa未満の場合、密着層31は突起物36との接点以外の部分が重力でたわんでしまい、ウエハに密着できなくなる場合がある。一方、100MPaを超えると、吸引による変形が起こりにくくなり、ウエハを容易に剥離することができなくなる場合がある。
【0026】
また、密着層31の半導体ウエハに接する側の面のせん断密着力は35N以上であることが好ましい。本発明においてせん断密着力は、密着層31とシリコンウエハのミラー面との間で測定した値をいい、縦30mm×横30mm×厚さ3mmの大きさを有する周知のガラス板に密着層31を貼り付けてシリコンウエハのミラー面上に配置し、ガラス板と密着層31の全体に900gの荷重を5秒間加え、ガラス板をシリコンウエハと平行に荷重を加えて押圧した場合に、動き出した時の荷重を測定したものである。
【0027】
さらに、密着層31の密着力は2N/25mm以下であることが望ましい。これを超える値では密着層31と、その上に配置されるチップとの密着が大きくなりすぎてブロッキング状態となり、吸引によるチップの剥離ができなくなるおそれがある。なお、本発明において密着力とは、密着層31をウエハのミラー面に貼り付け、これを剥離したときの剥離強度をいう。
【0028】
このような密着層31は、たとえば、カレンダー法、プレス法、コーティング法または印刷法等により、予め上記エラストマーからなるフィルムを作製し、このエラストマーフィルムをジグ基台30の少なくとも側壁35の上面に接着することにより形成することができ、これにより、区画空間37が形成される。上記密着層31を接着する方法としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂あるいはエラストマー樹脂からなる接着剤を介して接着する方法や、密着層31が熱融着性の場合はヒートシールによって接着する方法が挙げられる。
【0029】
密着層31の表面には、非粘着処理が施されていてもよく、特に、凹凸状に変形した時に半導体ウエハと接触する突起物36上部の密着層表面のみが、非粘着処理されていることが好ましい。このように処理すると、密着層31が変形する前は密着層表面の非粘着処理されていない部分で半導体ウエハに密着し、凹凸状に変形した密着層31は突起物36上部の表面、すなわち非粘着性の凸部表面のみで半導体ウエハと接触しているため、半導体ウエハをさらに容易に密着層31から取り外すことができる。非粘着処理方法としては、たとえば、バキューム装置により区画空間37内の空気を吸引して密着層31を凹凸状に変形させ、凸部先端を砥石ローラー等により物理的に粗面化する方法、UV処理する方法、非粘着性ゴムを積層する方法、非粘着性塗料をコーティングする方法などが挙げられ
る。また、非粘着部は、上記凸部ではなく、密着層31の中心を通るように十字にパターン形成してもよい。非粘着部の表面粗さは、算術平均粗さRaが1.6μm以上が好ましく、1.6〜12.5μmがより好ましい。非粘着部を上記範囲の表面粗さで粗面化することにより、密着層31は劣化せず、さらに、半導体ウエハを容易に密着層31から取り外すことができる。
【0030】
本発明で搬送される半導体ウエハは、裏面研削により極薄化された後の半導体ウエハ1が例示される。半導体ウエハ1の表面には回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法など、様々な方法により行うことができる。
【0031】
また、表面への回路の形成が行われた後に、その回路面には、表面保護用粘着シート5が貼付されることが好ましい。このように裏面研削が行われる前に表面保護用粘着シート5が貼付されれば、裏面研削を行うときに表面の回路を保護することができる。そして、半導体ウエハ1の裏面側が所定厚さになるまで研削される。
【0032】
このように表面保護用粘着シート5が貼付された状態で半導体ウエハ1が例えば、50μm程度の厚さにまで研削された後、所定の洗浄装置で研削面が洗浄される。そして、スピン乾燥が行われた後、図4に示したように、固定ジグ3の上に配置され密着層31に密着される。そして、本発明では、極薄化された半導体ウエハが、密着層31に密着された後、この固定ジグ3とともに次工程に搬送される。
【0033】
半導体ウエハ1が、固定ジグ3における密着層31上に配置され、固定ジグ3とともに所定位置まで搬送された後、貫通孔38を介して区画空間37の空気を脱気すれば、密着層31から半導体ウエハ1を取り外すことができる。
すなわち、脱気に際してバキューム装置Vなどの空圧制御装置を取り付けて、このバキューム装置Vにより、固定ジグ3の貫通孔38から区画空間37内を吸引すれば、図5に示したように密着層31が凹凸状に変形する。これにより、半導体ウエハ1を側壁35の上面および突起物36の先端部のみでの点接触状態とすることができる。このように、点接触状態となれば接着力が低下するので、固定ジグ3から半導体ウエハ1を容易に取り外すことが可能となる。
【0034】
図6は、上記のような固定ジグ3を用いた本発明の一実施例に係る半導体ウエハの研削装置40を示したものである。
この半導体ウエハの研削装置40は、ウエハ収容カセット22から予め回路面に表面保護用粘着シート5が貼付された半導体ウエハ1を一枚づつ取り出すとともに、このウエハ1の裏面側を研削し、その後、研削された極薄の半導体ウエハ1を上記した固定ジグ3に貼着するものである。
【0035】
すなわち、研削装置40は、平面視で略矩形状の本体テーブル41を有し、本体テーブル41の後方側に背板43を有し、側面から見れば、本体テーブル41と背板43とにより、略L字状に構成されたものである。
【0036】
この研削装置40は、処理前のウエハが収容されるウエハ供給部Aと、処理後のウエハが収容されるウエハ収納部Bと、ウエハ搬送アームCと、ウエハ裏面を研削する研削部Dと、固定ジグ供給部Eと、固定ジグ供給アームFとを有している。固定ジグ供給部Eのカセット75内に、図1に示した固定ジグ3が多数収容されている。さらに、本実施例では、固定ジグ供給部Eの下流側近傍に、ウエハを研磨処理以外野別の処理工程で使用する別の処理テーブルGを有している。なお、ウエハ搬送アームCは、一台のアームで固定ジグ供給アームFを兼ねていてもよい。また、ウエハ搬送アームCは、ウエハ供給部Aからウエハを取り出すアームと、ウエハ収納部Bにウエハを収納するアームとを別々にして、2
台のアームから構成されていても良い。
【0037】
固定ジグ供給アームFは旋回可能であるとともに、別の処理テーブルGの上面と対面して、その位置から上下方向に移動可能とされている。
また、この研削装置40では、本体テーブル41の作業面略中央部に大径のターンテーブル42が配置されている。このターンテーブル42は、図6において反時計方向に、すなわち矢印方向に回転可能であるとともに、所定の間隔を置いて4つのチャックテーブル44a、44b、44c、44dが設置されている。また、これらのチャックテーブル44a、44b、44c、44dは、ポーラステーブルからなっており、負圧で半導体ウエハを着脱自在に吸着固定することができる。これらのチャックテーブルとして、上記固定ジグ3と略同様の構造を有するテーブルを用いてもよい。
【0038】
一方、本体テーブル41の作業面後方には、粗研削装置45と仕上研削装置46とが上方から垂下するように配置され、各々のスピンドルの先端部には、研磨用の回転砥石59,60が設置されている。
【0039】
平面円形に形成されたターンテーブル42は、本体テーブル41の作業面前方に配置されたウエハ供給部Aと、後方の研削部Dとの間に配置されている。
このような構成の研削装置40では、ウエハ搬送アームCの右側方にウエハ供給部Aが、ウエハ搬送アームCの作業面手前側にウエハ収納部Bが、それぞれ配置されている。
【0040】
上記ターンテーブル42上のチャックテーブル44a、44b、44c、44dは、半導体ウエハ1の加工テーブルとして機能する。また、これらのチャックテーブル44a、44b、44c、44dは、ターンテーブル4243が回転することより、それぞれ次の位置に変更される。
【0041】
チャックテーブル44bの位置は、半導体ウエハを粗研削するために、粗研削装置45の下方に配置される。チャックテーブル44cの位置は、仕上研削するために、仕上研削装置46の下方に配置される。
【0042】
このような研削装置40で裏面研削される半導体ウエハ1は、特に限定されるものではないが、未だ研削されていない口径300mmのシリコンウエハを例示することができる。
【0043】
また、半導体ウエハは単独で研削装置にかけられず、その回路面に表面保護用粘着シート5が貼付され、回路にダメージを与えないよう保護された状態で研削装置に装着される場合が多い。
【0044】
ウエハ搬送アームCには、半導体ウエハ1を吸着固定する固定用吸着孔76が、略U字状のフィンガー部77の少なくとも片面に形成されている。フィンガー部77を半導体ウエハ1の表面(回路面または研削予定面)に密着させ、固定用吸着孔76に接続するバキューム装置より負圧をかけることにより、半導体ウエハを吸着固定し、ウエハ搬送アームCの行動範囲内を自在に搬送することができる。
【0045】
固定ジグ供給アームFにも、ウエハ搬送アームCと同様に略U字状のフィンガー部77及び固定用吸着孔76が設けられており、固定ジグ3と半導体ウエハ1を吸着固定し、一体化した状態で搬送することができるようになっている。また、固定ジグ供給アームFのフィンガー部77には、固定用吸着孔76とは別に、固定ジグ3の貫通孔38の開口部と係合して固定ジグを着脱する着脱用吸着孔78が設けられている。着脱用吸着孔78はバキューム装置またはコンプレッサーなどの空圧制御装置に接続しており、固定ジグ3の貫
通孔38から、固定ジグ3の区画空間37内を減圧あるいは加圧状態とすることが可能になっている。
【0046】
固定ジグ供給アームFの着脱用吸着孔78は、固定用吸着孔76とは独立して制御可能となっており、それぞれを所定のタイミングで空圧の制御をすることで、半導体ウエハ1と固定ジグ3とを一体での搬送や着脱が自在にできるようになっている。
【0047】
以下に、半導体ウエハの研削装置40の作用について説明する。
今、ウエハ収容カセット22には、研削前の半導体ウエハ1が多数収容されている。この半導体ウエハ1は、既に回路が形成されたもので、回路面には、予め表面保護用粘着シートが貼着されている。また、固定ジグ供給部Eにおけるカセット75内には、固定ジグ3が多数収容されている。
【0048】
本実施例の研削装置40では、上記ウエハ収容カセット22からウエハ搬送アームCの固定用吸着孔76がウエハ1を吸着し、矢印aで示したようにターンテーブル42のチャック44a上にウエハ1を載置する。バキューム装置により半導体ウエハ1が吸着固定されたら、ターンテーブル42が反時計方向に回動され、粗研削装置45の下方すなわちチャックテーブル44bの位置まで移送される。そして、粗研削装置45のスピンドルが下方に移動し、砥石59が回転することにより粗研磨が行われる。これにより、半導体ウエハ1が所定の厚さになるまで裏面側が粗研磨されたら、ターンテーブル42をさらに反時計方向に回動させ、今度は仕上研削装置46の下方に配置する。すなわち、図1のチャックテーブル44cの位置まで移送する。この位置に移送された半導体ウエハ1に対し、今度は回転砥石60により仕上研磨が施される。こうして、所定の厚さ、例えば30μmに至るまで仕上研磨が施されたら、半導体ウエハ1をチャックテーブル44dの位置に至るまでターンテーブル43を回転移動させる。このようにして研削が完了する。なお、このチャックテーブル44dの位置で、図示しない洗浄装置により裏面側が洗浄される。
【0049】
この状態では、半導体ウエハ1は極めて薄いため、他の場所に単独で搬送するなどすると破損され易い。したがって、本発明では、次工程に移送する前に極薄の半導体ウエハ1にカセット75内の固定ジグ3が貼付される。
【0050】
以下に、固定ジグ3に対する、極薄の半導体ウエハ1の固定について説明する。
洗浄が完了した後、固定ジグ供給アームFの固定用吸着孔76の駆動によりカセット75内に収容された固定ジグ3が一枚取り出され、チャックテーブル44d側へ移送される。固定ジグ3が密着層31と半導体ウエハ1が対面するようチャックテーブル44d上面にお互い略平行に配置される。その後、固定ジグ3は平行が維持されたまま徐々に半導体ウエハ1の研削面に近接下降し、接触させられる。密着層31が半導体ウエハ1の研削面に接触し、若干加圧されることで、極薄の半導体ウエハ1は固定ジグ3に密着固定される。
【0051】
次に、固定ジグ供給アームFの固定用吸着孔76の駆動が解除され、固定ジグ供給アームFが初期の位置に待避する。代わりに、ウエハ搬送アームCがチャックテーブル44d上面に移動し、固定用吸着孔76を駆動して固定ジグ3を吸着固定する。チャックテーブル44dの吸着を停止するとともに、ウエハ搬送アームCを上昇させると、固定ジグ3と一体となった極薄の半導体ウエハ1を持ち上げられ、ウエハ収納部Bへと搬送され収納される。
【0052】
なお、この方法における搬送において、この間に密着層31を変形させる必要はないので、固定ジグ供給アームFの着脱用吸着孔78に対する空圧の制御は行われない。
また、この密着手法においては、半導体ウエハ1の研削面と密着層31の界面に若干量
の空気を巻き込むおそれがある。しかし、次工程まで搬送するだけであれば自重を支えるだけで十分であり、ある程度の面積が密着した状態であればよい。自重を支える以上の密着力を必要とする場合は、半導体ウエハ1の研削面と密着層31の界面に巻き込まれる空気の量を低減させるような密着手法が選択される。
【0053】
このような密着手法としては、例えば図7に示したような手法があげられる。まず、チャックテーブル44d上に固定された半導体ウエハの研削面に固定ジグ3の密着層31を対面させ、お互いの一端部を微小な角度αとなるように接触させる。次に、固定ジグ31を撓ませながら半導体ウエハ1の研磨面に、徐々に反対側の端部まで密着層31が密着するように固定ジグ供給アームFの位置制御および姿勢制御を行う。このような手法により、半導体ウエハ1と密着層31の界面の空気が密着で巻き込まれる前に抜くことができるため、実質的な密着の面積が広くなり、大きな密着力を確保することができる。
【0054】
また、別の手法として、次のような手法も使用できる。まず、固定ジグ3と半導体ウエハ1を平行に対面させた後、固定ジグ3を支える固定ジグ供給アームFの着脱用吸着孔78に接続する空圧制御装置を駆動して区画空間37を減圧し、密着層31を変形させる。密着層31は突起物31の位置が凸でその他の面が凹となる表面形状となり、その状態で固定ジグ3を半導体ウエハ1に接触させる。その後、減圧を解除していくと、凹部が空気の逃げ道となり密着層31は点接触状態から全面が密着した状態となる。
【0055】
区画空間37への空圧制御は、減圧でなく加圧であってもよい。その場合、密着層31は突起物31の位置が凹でその他の面が凸となる表面形状となり、減圧の場合と同じく、凹部が空気の逃げ道となる。
【0056】
ウエハ研削装置40は、ウエハの研削面にエッチング処理を施すなど、別の処理機能を兼ね備えた機種が提供されている。この場合、半導体ウエハ1は研削工程を行うターンテーブル42から別の処理テーブルGに移載されて、目的の処理が施される。本発明の方法によれば、このような装置においても、チャックテーブル44dから別の処理テーブルGへの移載および別の処理テーブルGからウエハ収納部への搬送を、固定ジグ3を用いて行うことができる。また、別の処理テーブルGからウエハ収納部への搬送を本発明の方法で行い、チャックテーブル44dから別の処理テーブルGへの移載は、別の移載装置で行ってもよい。別の移載装置としては、半導体ウエハを撓ませることがないよう半導体ウエハの全面を吸着できるポーラスチャック装置があげられる。
【0057】
いずれにしても、剛性のある固定ジグ3と半導体ウエハ1とが一体化されたら、ウエハ搬送アームCにより、テーブル上に配置された固定ジグ付きの半導体ウエハ1を、ウエハ収容部Bのウエハカセット79内に収容すれば良い。
【0058】
以上の工程を連続的に行うことにより、固定ジグ3に貼付された極薄の半導体ウエハ1がウエハカセット79内に多数枚収容されることになる。
よって、回路が形成され裏面研削が完了した後の半導体ウエハを、固定ジグ3とともに次工程に搬送する準備が整えられる。これにより、半導体ウエハにダメージを与えることなく搬送することが可能になる。そして、搬送後に必要に応じて表面保護用粘着シート5を剥離すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明に用いられる固定ジグの概略断面図である。
【図2】図2は、図1に示した固定ジグにおける固定ジグを構成するジグ基台の概略平面図である。
【図3】図3は、図1に示した固定ジグの概略斜視図である。
【図4】図4は、半導体ウエハが固定装置に載置された状態を示す概略略断面図である。
【図5】図5は図4に示した固定装置から空気を吸引したときの作用を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る研削装置の概略正面図である。
【図7】図7は、一時テーブル上の半導体ウエハに対して固定ジグを取り付ける場合の一例を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・半導体ウエハ
3・・・固定ジグ
V・・・バキューム装置(空圧制御装置)
30・・・ジグ基台
31・・・密着層
35・・・側壁
36・・・突起物
37・・・区画空間
38・・・貫通孔
40・・・研削装置
44a,44b,44c、44d・・・チャックテーブル
A・・・ウエハ供給部
B・・・ウエハ収納部
C・・・ウエハ搬送アーム
D・・・研削部
E・・・固定ジグ供給部
F・・・固定ジグ供給アーム
G・・・別の処理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面が研削された半導体ウエハを搬送するための方法であって、
片面に複数の突起物を有し、かつ該片面の外周部に該突起物と略同じ高さの側壁を有するジグ基台と、該ジグ基台の突起物を有する面には、前記密着層、前記突起物および前記側壁により区画空間が形成され、前記ジグ基台には、外部と前記区画空間とを貫通する少なくとも1つの貫通孔が設けられた固定ジグを用意し、
半導体ウエハの研削直後に、該ウエハの研削面を前記固定ジグの密着層に貼着し、半導体ウエハと固定ジグを一体で搬送することを特徴とする半導体ウエハの搬送方法。
【請求項2】
前記半導体ウエハが半導体ウエハの回路面を表面保護用粘着シートに貼付された状態で研削された半導体ウエハであり、当該半導体ウエハを前記固定ジグに貼着して搬送した後に前記表面保護用粘着シートを剥離することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハの搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体ウエハの搬送方法に適用するためのウエハ研削装置であって、ウエハ供給部、ウエハ収納部、ウエハ搬送アーム、ウエハ裏面を砥石で研削する研削部、固定ジグ供給部および固定ジグ供給アームからなることを特徴とする半導体ウエハの研削装置。
【請求項4】
前記ウエハ供給部と前記研削部との間に、ウエハを一時的に保持する一時テーブルを有し、前記固定ジグ供給アームはこの一時テーブルの面と固定ジグの密着層が正対し互いの面が平行を保持して相対的に近接離間移動が可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の半導体ウエハの研削装置。
【請求項5】
前記固定ジグ供給アームは一時テーブルの面と固定ジグの密着層が微小の角度で対面し、前記角度を維持して相対的に接近移動が可能であり、前記固定ジグの端点が一次テーブル上のウエハに接した後の近接移動は、前記角度から徐々に平行となるように移動可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の研削装置。
【請求項6】
前記ウエハ搬送アームは、前記固定ジグの基台本体を吸着支持する吸着孔と、貫通孔を接続して固定ジグの区画空間を減圧または加圧状態とする空圧制御装置とを連通することが可能となるよう吸着部を有することを特徴とする請求項3に記載の半導体ウエハの研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−124145(P2008−124145A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304366(P2006−304366)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】