半導体基板の処理方法及び半導体装置の製造方法
【課題】弗酸処理によって半導体基板上に形成された酸化膜を除去する際に、ウォーターマークの発生や異物の付着を効果的に防止しうる半導体基板の処理方法を提供する。
【解決手段】半導体基板を弗酸処理して酸化膜を除去する工程と、半導体基板の表面を親水化する工程とを有し、半導体基板の表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で半導体基板を処理する工程と、処理槽内にアンモニア水を更に投入して半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有し、半導体基板の表面を親水化する工程の後に、半導体基板を塩酸過酸化水素水で処理する工程を更に有する。
【解決手段】半導体基板を弗酸処理して酸化膜を除去する工程と、半導体基板の表面を親水化する工程とを有し、半導体基板の表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で半導体基板を処理する工程と、処理槽内にアンモニア水を更に投入して半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有し、半導体基板の表面を親水化する工程の後に、半導体基板を塩酸過酸化水素水で処理する工程を更に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の処理方法及び半導体装置の製造方法に係り、特に、弗酸処理によって半導体基板上に形成された酸化膜を除去する工程を含む半導体基板の処理方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、半導体基板上の異物や金属汚染物質を除去する等のために、ウェット洗浄が広く用いられている。
【0003】
ウェット洗浄が用いられている工程の一つに、半導体基板を弗酸処理する際の一連の洗浄処理工程がある。この洗浄処理工程では、半導体基板表面に異物が付着したりウォーターマークが発生したりするのを防止するために様々な工夫がなされている。
【0004】
異物の付着やウォーターマークの発生を抑制する手段としては、弗酸処理後の半導体基板表面を酸化する処理を行うことが有効であることが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、弗酸処理後の半導体基板を過酸化水素水で処理することにより半導体基板の表面を酸化する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、弗酸処理後の純水洗浄の際に、酸化性ガスを供給した密閉チャンバ内で処理し、或いは酸化性ガスを溶かし込んだ純水で処理することにより、半導体基板の表面を酸化する方法が提案されている。
【0007】
半導体基板の表面を酸化することにより、洗浄後の半導体基板表面の水分を効果的に除去することができ、ウォーターマークの発生を抑制することができる。また、半導体基板の表面が酸化膜により覆われるため、薬液中や雰囲気中に含まれる不純物や異物が半導体基板の表面に直接付着することを抑制することができる。
【特許文献1】特開2006−351736号公報
【特許文献2】特開2002−176025号公報
【非特許文献1】M. Itano et al., Journal of Electrochemical Society, 142, No. 3, pp. 971-978, March 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法は、アンモニア過酸化水素水洗浄で薬液の処理を完了している。しかしながら、一般的に、アンモニア過酸化水素水はアルカリ性であり金属不純物が付着しやすくなるため、処理後の半導体基板表面に金属不純物が残存することがあった。特にゲート絶縁膜成膜前の洗浄処理では、半導体基板表面に金属不純物が付着することを極力防止する必要があり、アンモニア過酸化水素水洗浄で薬液の処理を完了することは好ましくなかった。
【0009】
また、特許文献2には、半導体基板の表面に形成する自然酸化膜の膜厚を0.5nm以下にすると記載されている。しかしながら、本願発明者が行った検討で、自然酸化膜の膜厚が0.5nm以下では、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止するためには不十分であることが判明した。
【0010】
本発明の目的は、弗酸処理によって半導体基板上に形成された酸化膜を除去する工程を含む半導体基板の処理方法に関し、ウォーターマークの発生や異物の付着を効果的に防止しうる半導体基板の処理方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような半導体基板の処理方法を用いることにより、製造歩留まりの高い半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の更に他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体基板の処理方法が提供される。
【0014】
また、本発明の更に他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体基板の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体基板を弗酸処理して表面の酸化膜を除去した後、アンモニア過酸化水素水処理によって半導体基板の表面を親水化するので、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止することができる。また、アンモニア過酸化水素水処理を行う際、先に過酸化水素水を供給して半導体基板の表面に自然酸化膜を形成した後にアンモニア水を供給するので、半導体基板がアンモニア過酸化水素水によってエッチングされることを防止することができる。また、このアンモニア過酸化水素水処理の後には、塩酸過酸化水素水処理を行うので、アンモニア過酸化水素水処理の際に金属汚染物が半導体基板の表面に付着した場合にも、この塩酸過酸化水素水処理によって金属汚染物を除去することができる。また、一連の処理は半導体基板を一度も大気に曝さずに処理層内で連続して行うので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。また、このような半導体基板の処理方法を適用することにより、ウォーターマークや異物等に起因する半導体装置の歩留まり低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法について図1乃至図7を用いて説明する。
【0017】
図1は本実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置の概略図、図2は本実施形態による半導体基板の処理方法を示すフローチャート、図3はアンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフ、図4は処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフ、図5は洗浄処理後の半導体基板表面の欠陥数と自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフ、図6は本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャート、図7は本実施形態の方法によって処理した半導体基板と比較例の方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【0018】
はじめに、本実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置について図1を用いて説明する。
【0019】
半導体基板30の処理を行うための処理槽10には、処理薬液を供給する処理薬液供給配管12の一端が接続されている。処理薬液供給配管12には、処理槽10に供給する処理薬液の供給量を制御するバルブ12aが設けられている。処理薬液供給配管12の他端には、純水(DIW:DeIonized Water)を供給する純水供給配管14と、アンモニア水(NH4OH)を供給するアンモニア水供給配管16と、過酸化水素水(H2O2)を供給する過酸化水素水供給配管18と、塩酸(HCl)を供給する塩酸供給配管20と、弗酸(HF)を供給する弗酸供給配管22とが接続されている。純水供給配管14、アンモニア水供給配管16、過酸化水素水供給配管18、塩酸供給配管20及び弗酸供給配管22には、これら配管を介して処理薬液供給配管12方向へ供給される薬液の供給量を制御するバルブ14a,16a,18a,20a,22aが、それぞれ設けられている。これにより、バルブ14a,16a,18a,20a,22aのうち任意のバルブを所定量だけ開くことにより、任意の薬液を、処理薬液供給配管12を介して任意の供給量で処理槽10に供給できるようになっている。
【0020】
次に、本実施形態による半導体基板の処理方法の概略について図1及び図2を用いて説明する。
【0021】
本実施形態による半導体基板の処理方法は、図2に示すように、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS11)と、純水リンスを行うステップ(ステップS12)と、弗酸処理を行うステップ(ステップS13)と、純水リンスを行うステップ(ステップS14)と、過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS15)と、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS16)と、純水リンスを行うステップ(ステップS17)と、塩酸過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS18)と、純水リンスを行うステップ(ステップS19)とを有している。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0022】
まず、バルブ14a及びバルブ12aを開き、純水供給配管14及び処理薬液供給配管12を介して処理層10内に純水を供給する。これにより、薬液槽10内を純水で満たす。
【0023】
次いで、純水で満たされた処理槽10内に、処理対象の半導体基板30を投入する。なお、処理対象の半導体基板30は、表面にシリコン酸化物系絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化酸化膜)が形成されたシリコンウェーハなど、弗酸処理を含む洗浄処理を行うものである。
【0024】
次いで、バルブ16a,18aを開き、処理槽10内に、純水に加えてアンモニア水及び過酸化水素水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液はアンモニア過酸化水素水となり、半導体基板30のアンモニア過酸化水素水処理が行われる(ステップS11)。この際、バルブ14a,16a,18aの開き具合は、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0025】
このアンモニア過酸化水素水処理により、半導体基板30に付着していた異物が除去される。異物の除去効果を高める観点から、本ステップでのアンモニア過酸化水素水処理の処理温度は、室温よりも高い温度、例えば40℃以上であることが望ましい。なお、本ステップでアンモニア過酸化水素水処理を行う際、半導体基板30の表面にはシリコン酸化物系絶縁膜が形成されているため、アンモニア過酸化水素水の液温を上げることによる半導体基板30への影響はない。
【0026】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ16a,18aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS12)。このときに、処理層10内から、半導体基板30より除去した異物が排出される。
【0027】
次いで、バルブ22aを開き、処理槽10内に純水に加えて弗酸を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は希弗酸となり、半導体基板30の弗酸処理が行われる(ステップS13)。この際、バルブ14a,22aの開き具合は、処理槽10内の弗酸濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0028】
この弗酸処理により、半導体基板30の表面に形成されていたシリコン酸化物系絶縁膜は、除去される。
【0029】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ22aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内の弗酸を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS14)。
【0030】
次いで、バルブ18aを開き、処理槽10内に純水に加えて過酸化水素水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は過酸化水素水となり、半導体基板30の過酸化水素水処理が行われる(ステップS15)。この際、バルブ14a,18aの開き具合は、処理槽10内の過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。なお、本ステップでの過酸化水素水処理の処理温度は、25℃以下であることが望ましい。
【0031】
図3は、アンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフである。図示するように、アンモニア過水の温度が高いほど、シリコンのエッチングレートが早くなる。このことから、液温としては、温度に対するシリコンのエッチング量の変化が小さい25℃程度以下に設定することが望ましい。なお、この温度に設定している理由としては、通常の装置において純水が常温(25℃程度)で送水されることも挙げられる。
【0032】
次いで、バルブ14a,18aを開いた状態で、バルブ16aを更に開き、処理槽10内に純水及び過酸化水素水に加えてアンモニア水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液はアンモニア過酸化水素水となり、半導体基板30のアンモニア過酸化水素水処理が行われる(ステップS16)。この際、バルブ14a,16a,18aの開き具合は、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0033】
半導体基板30の表面が露出した状態でアンモニア水を供給すると、アンモニア水による半導体基板30のエッチングが生じる。そこで、本実施形態による半導体基板の処理方法では、弗酸処理後のアンモニア過酸化水素水処理に当たり、まずステップS15で過酸化水素水を処理槽10内に導入して半導体基板30表面に自然酸化膜を形成している。これにより、アンモニア水による半導体基板30のエッチングを防止することができる。
【0034】
このアンモニア過酸化水素水処理により、シリコン酸化物系絶縁膜を除去した半導体基板30の表面には、膜厚が約0.7nm程度の自然酸化膜が形成される。これにより、半導体基板30の表面は、親水化する。化学薬液により形成されるこのような自然酸化膜は、化学酸化膜と呼ばれることもある。なお、本願明細書において、親水化とは、半導体基板の表面が一様に自然酸化膜に覆われた状態を意味する。本願発明者が用いたエリプソメータによる測定では、自然酸化膜の膜厚を約0.7nm以上とすることにより、半導体基板の表面が十分に親水化した(後述の図7を参照)。
【0035】
図4は、処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフである。なお、図4のグラフは、非特許文献1から引用した。
【0036】
図4に示すように、シリコン(Si)、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(Si3N4)及びポリスチレンラテックス粒子(PSL)の何れの場合にも、pH値が大きくなるほどにゼータ電位はマイナス方向に変化している。特に、pH値が約8以上では、これら物質のゼータ電位は総てマイナスの値を示している。したがって、処理薬液としてpH値が約8以上、より好ましくは10以上のアルカリ性を有するアンモニア過酸化水素水を用いることで、シリコン基板やシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板に対して、シリコン、シリコン酸化膜、PSL粒子などの有機物、シリコン窒化膜は、それぞれ電位的に反発し合い、基板に異物が付着することを防止できる。
【0037】
本ステップでのアンモニア過酸化水素水処理の処理温度は、25℃以下であることが望ましい。半導体基板(例えばシリコン基板)に対するアルカリ液のエッチング作用は液温が高いほどに大きいため、半導体基板30へのダメージを極力低減する観点から、エッチング作用の比較的小さい25℃以下に設定することが有効である。
【0038】
また、アンモニア過酸化水素水中のアンモニア濃度は、0.1〜0.5%、より好ましくは0.3%程度に設定することが望ましい。また、アンモニア過酸化水素水中の過酸化水素濃度は、0.5〜1.3%、より好ましくは0.9%程度に設定することが望ましい。シリコン基板に対するアルカリ液のエッチング作用は、アルカリ液の水酸化物イオン濃度が高いほど大きいため、半導体基板30へのダメージを極力低減する観点から、エッチング作用の比較的小さい上記濃度以下に設定することが望ましい。アンモニア濃度を0.1%以上に設定するのは、0.1%未満ではアンモニアの添加効果を十分に得られないからである。同様に、過酸化水素濃度を0.5%以上に設定するのは、0.5%未満では過酸化水素の添加効果を十分に得られないからである。
【0039】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ16a,18aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS17)。このときに、処理層10内から異物が排出される。
【0040】
次いで、バルブ18a,20aを開き、処理槽10内に純水に加えて過酸化水素水及び塩酸を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は塩酸過酸化水素水となり、半導体基板30の塩酸過酸化水素水処理が行われる(ステップS18)。この際、バルブ14a,18a,20aの開き具合は、処理槽10内の塩酸過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0041】
アルカリ液(アンモニア過酸化水素水)処理の際に金属汚染物が半導体基板30表面に付着している場合、この塩酸過酸化水素水処理によって除去される。金属汚染物の除去効果を高める観点から、本ステップでの塩酸過酸化水素水処理の処理温度は、室温よりも高い温度、例えば40℃以上であることが望ましい。
【0042】
なお、塩酸の代わりとして、硝酸を用いてもよい。
【0043】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ18a,20aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内の塩酸過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS19)。
【0044】
ステップS11からステップS19までの上記一連の処理は、半導体基板30を処理薬液で満たした処理槽10内から一度も出すことなく連続して行うことができる。したがって、半導体基板30が処理途中で大気に曝されることがないので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。
【0045】
この後、処理槽10内から半導体基板30を取り出して乾燥させることにより、一連の処理が完了する。
【0046】
図5は、洗浄処理後の半導体基板30表面の欠陥数とステップS15で形成する自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。なお、自然酸化膜の膜厚はエリプソメータを用いて測定し、欠陥数はレーザー散乱を用いた欠陥検査装置により測定した。
【0047】
図5に示すように、半導体基板30表面の欠陥数は、半導体基板30表面に形成する自然酸化膜の膜厚が増加するほどに減少している。また、自然酸化膜の膜厚が0.7nm程度以上になると、欠陥数レベルが低いところで落ち着くようになる。図5の結果から、ステップS15で形成する自然酸化膜の膜厚は、0.7nm程度以上であることが望ましいことが判る。
【0048】
図6は本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【0049】
本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法は、図6に示すように、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS21)と、純水リンスを行うステップ(ステップS22)と、弗酸処理を行うステップ(ステップS23)と、純水リンスを行うステップ(ステップS24)と、塩酸過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS25)と、純水リンスを行うステップ(ステップS26)とを有している。図2に示す本実施形態による半導体基板の処理方法との相違点は、ステップS15の過酸化水素水処理、ステップS16のアンモニア過酸化水素水処理、ステップS17の純水リンスを行わない点である。他のステップは、本実施形態による半導体基板の処理方法と同じである。
【0050】
図7は本実施形態による半導体基板の処理方法によって処理した半導体基板と本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【0051】
本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法では、ステップS25の塩酸過酸化水素水処理によって半導体基板30の表面に自然酸化膜が形成されるが、図7に示すように、その膜厚は0.3nm程度であった。すなわち、本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法では、半導体基板30表面の親水化が十分に行われていない(半疎水性)。この結果、処理後における半導体基板30上の欠陥数も非常に多かった。
【0052】
一方、本実施形態による半導体基板の処理方法では、図7に示すように、自然酸化膜の膜厚は0.7nm程度であり、半導体基板30表面の親水化は十分に行われている。この結果、処理後における半導体基板30上の欠陥数も、本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法と比較して大幅に低減することができた。
【0053】
このように、本実施形態によれば、半導体基板を弗酸処理して表面のシリコン酸化物系絶縁膜を除去した後、アンモニア過酸化水素水処理によって半導体基板の表面を親水化するので、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止することができる。また、アンモニア過酸化水素水処理を行う際、先に過酸化水素水を供給して半導体基板の表面に自然酸化膜を形成した後にアンモニア水を供給するので、半導体基板がアンモニア過酸化水素水によってエッチングされることを防止することができる。また、このアンモニア過酸化水素水処理の後には、塩酸過酸化水素水処理を行うので、アンモニア過酸化水素水処理の際に金属汚染物が半導体基板の表面に付着した場合にも、この塩酸過酸化水素水処理によって金属汚染物を除去することができる。また、一連の処理は半導体基板を一度も大気に曝さずに処理層内で連続して行うので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。
【0054】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法について図8乃至図11を用いて説明する。
【0055】
図8乃至図11は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0056】
本実施形態では、第1実施形態による半導体基板の処理方法を適用した半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0057】
まず、シリコン基板30上に、例えば熱酸化法により、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜32を形成する。
【0058】
次いで、シリコン酸化膜32上に、例えばCVD法により、例えば膜厚100nmのシリコン窒化膜34を形成する(図8(a))。
【0059】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、素子分離領域のシリコン窒化膜34及びシリコン酸化膜32を除去するとともに、素子分離領域のシリコン基板30内に、深さが例えば200〜400nm程度の素子分離溝36を形成する(図8(b))。
【0060】
次いで、必要に応じて、例えば熱酸化法により、素子分離溝36の内壁に、例えば膜厚5nmのシリコン酸化膜38を形成する(図8(c))。
【0061】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚400〜600nmのシリコン酸化膜40を堆積し、素子分離溝36内をこのシリコン酸化膜40によって充填する。
【0062】
次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、シリコン窒化膜34が露出するまでシリコン酸化膜40を除去する。これにより、素子分離溝36内に埋め込まれたシリコン酸化膜38,40よりなる素子分離膜42を形成する(図9(a))。
【0063】
次いで、例えば燐酸処理により、シリコン窒化膜34を除去する(図9(b))。
【0064】
次いで、図2に示す第1実施形態による半導体基板の処理方法を用い、活性領域上のシリコン酸化膜32を除去するとともに、シリコン基板30表面の異物を除去する(図9(c))。
【0065】
次いで、例えば熱酸化法により、素子分離膜42により画定されたシリコン基板30の活性領域上に、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜よりなる犠牲酸化膜44を形成する(図10(a))。犠牲酸化膜44は、ウェル注入を行う際にシリコン基板30の表面が汚染されるのを防止するための膜である。
【0066】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型トランジスタ形成領域のシリコン基板30内にPウェル46を、P型トランジスタ形成領域のシリコン基板30内にNウェル48を、それぞれ形成する(図10(b))。
【0067】
次いで、図2に示す第1実施形態による半導体基板の処理方法を用い、活性領域上の犠牲酸化膜44を除去するとともに、シリコン基板30表面の異物を除去する(図10(c))。
【0068】
次いで、例えば熱酸化法により、素子分離膜42により画定されたシリコン基板30の活性領域上に、例えば膜厚5nmのシリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜50を形成する(図11(a))。なお、ゲート絶縁膜50は、シリコン窒化酸化膜その他の高誘電率材料を用いて構成してもよい。
【0069】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚100nmの多結晶シリコン膜を堆積する。
【0070】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、この多結晶シリコン膜をパターニングし、ゲート絶縁膜50上に、多結晶シリコン膜よりなるゲート電極52n,52pを形成する。なお、ゲート電極52nはN型トランジスタのゲート電極であり、ゲート電極52pはP型トランジスタのゲート電極である。
【0071】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、ゲート電極52nをマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52nの両側のシリコン基板30内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域54nを形成する。同様に、ゲート電極52pをマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52pの両側のシリコン基板30内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域54pを形成する(図11(b))。
【0072】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン窒化膜を堆積した後、このシリコン窒化膜をエッチバックし、ゲート電極52n,52pの側壁部分に、シリコン窒化膜よりなる側壁絶縁膜56を形成する。
【0073】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、ゲート電極52n及び側壁絶縁膜56をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52nの両側のシリコン基板30内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域58nを形成する。同様に、ゲート電極52p及び側壁絶縁膜56をマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52pの両側のシリコン基板30内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域58pを形成する。
【0074】
次いで、例えば窒素雰囲気中で熱処理を行い、注入した不純物イオンを活性化し、不純物拡散領域54n,58nよりなるN型トランジスタのソース/ドレイン領域60nと、不純物拡散領域54p,58pよりなるP型トランジスタのソース/ドレイン領域60pとを形成する。
【0075】
こうして、シリコン基板30上に、ゲート電極52n及びソース/ドレイン領域60nを有するN型トランジスタと、ゲート電極52p及びソース/ドレイン領域60pを有するP型トランジスタとを完成する。
【0076】
この後、必要に応じてサリサイドプロセスや他の素子の形成等を行った後、バックエンドプロセス等を経て、半導体装置が完成する。
【0077】
このように、本実施形態によれば、ウェルイオン注入前のパッド酸化膜の除去の工程、並びにゲート絶縁膜形成前の犠牲酸化膜の除去の工程において、第1実施形態による半導体基板の処理方法を適用するので、ウォーターマークの発生や異物付着を効果的に防止しつつ弗酸処理及び半導体基板の洗浄を行うことができる。これにより、ウォーターマークや異物等に起因する半導体装置の歩留まり低下を抑制することができる。
【0078】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、弗酸処理の前にアンモニア過酸化水素水処理(ステップS11〜ステップS12)を行っているが、例えば異物の付着量が少ない場合などには、必ずしも行う必要はない。
【0080】
また、上記実施形態では、半導体基板の表面の親水化処理(ステップS15〜ステップS17)の後に塩酸過酸化水素水処理(ステップS18〜ステップS19)を行っているが、例えば親水化処理の過程における金属汚染物の付着量が少ない場合などには、必ずしも行う必要はない。
【0081】
また、上記実施形態では、半導体基板の表面の親水化処理(ステップS15〜ステップS17)の際に、過酸化水素水を投入(ステップS15)した後にアンモニア水を投入(ステップS16)することにより半導体基板へのダメージを抑制しているが、例えば半導体基板へのダメージが特に問題とならないような場合などには、過酸化水素水とアンモニア水とを同時に投入するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ウォーターマークの発生や異物付着を効果的に防止するために、半導体基板を大気に曝さずに薬液中で連続して処理を行ったが、例えば半導体基板を大気に曝すことによる影響が無視できるような場合などには、必ずしも連続して処理を行う必要はない。
【0083】
また、上記実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を挙げているが、半導体基板としては他の基板を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【図3】アンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフである。
【図4】処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフである。
【図5】洗浄処理後の半導体基板表面の欠陥数と自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態の方法によって処理した半導体基板と比較例の方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図9】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図10】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図11】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【符号の説明】
【0085】
10…処理槽
12…処理薬液供給配管
14…純水供給配管
16…アンモニア水供給配管
18…過酸化水素水供給配管
20…塩酸供給配管
22…弗酸供給配管
12a,14a,16a,18a,20a,22a…バルブ
30…半導体基板(シリコン基板)
32,38,40…シリコン酸化膜
34…シリコン窒化膜
36…素子分離溝
42…素子分離膜
44…犠牲酸化膜
46…Pウェル
48…Nウェル
50…ゲート絶縁膜
52n,52p…ゲート電極
54n,54p,58n,58p…不純物拡散領域
56…側壁絶縁膜
60n,60p…ソース/ドレイン領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の処理方法及び半導体装置の製造方法に係り、特に、弗酸処理によって半導体基板上に形成された酸化膜を除去する工程を含む半導体基板の処理方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、半導体基板上の異物や金属汚染物質を除去する等のために、ウェット洗浄が広く用いられている。
【0003】
ウェット洗浄が用いられている工程の一つに、半導体基板を弗酸処理する際の一連の洗浄処理工程がある。この洗浄処理工程では、半導体基板表面に異物が付着したりウォーターマークが発生したりするのを防止するために様々な工夫がなされている。
【0004】
異物の付着やウォーターマークの発生を抑制する手段としては、弗酸処理後の半導体基板表面を酸化する処理を行うことが有効であることが知られている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、弗酸処理後の半導体基板を過酸化水素水で処理することにより半導体基板の表面を酸化する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、弗酸処理後の純水洗浄の際に、酸化性ガスを供給した密閉チャンバ内で処理し、或いは酸化性ガスを溶かし込んだ純水で処理することにより、半導体基板の表面を酸化する方法が提案されている。
【0007】
半導体基板の表面を酸化することにより、洗浄後の半導体基板表面の水分を効果的に除去することができ、ウォーターマークの発生を抑制することができる。また、半導体基板の表面が酸化膜により覆われるため、薬液中や雰囲気中に含まれる不純物や異物が半導体基板の表面に直接付着することを抑制することができる。
【特許文献1】特開2006−351736号公報
【特許文献2】特開2002−176025号公報
【非特許文献1】M. Itano et al., Journal of Electrochemical Society, 142, No. 3, pp. 971-978, March 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法は、アンモニア過酸化水素水洗浄で薬液の処理を完了している。しかしながら、一般的に、アンモニア過酸化水素水はアルカリ性であり金属不純物が付着しやすくなるため、処理後の半導体基板表面に金属不純物が残存することがあった。特にゲート絶縁膜成膜前の洗浄処理では、半導体基板表面に金属不純物が付着することを極力防止する必要があり、アンモニア過酸化水素水洗浄で薬液の処理を完了することは好ましくなかった。
【0009】
また、特許文献2には、半導体基板の表面に形成する自然酸化膜の膜厚を0.5nm以下にすると記載されている。しかしながら、本願発明者が行った検討で、自然酸化膜の膜厚が0.5nm以下では、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止するためには不十分であることが判明した。
【0010】
本発明の目的は、弗酸処理によって半導体基板上に形成された酸化膜を除去する工程を含む半導体基板の処理方法に関し、ウォーターマークの発生や異物の付着を効果的に防止しうる半導体基板の処理方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような半導体基板の処理方法を用いることにより、製造歩留まりの高い半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の更に他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体基板の処理方法が提供される。
【0014】
また、本発明の更に他の観点によれば、表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程とを有する半導体基板の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体基板を弗酸処理して表面の酸化膜を除去した後、アンモニア過酸化水素水処理によって半導体基板の表面を親水化するので、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止することができる。また、アンモニア過酸化水素水処理を行う際、先に過酸化水素水を供給して半導体基板の表面に自然酸化膜を形成した後にアンモニア水を供給するので、半導体基板がアンモニア過酸化水素水によってエッチングされることを防止することができる。また、このアンモニア過酸化水素水処理の後には、塩酸過酸化水素水処理を行うので、アンモニア過酸化水素水処理の際に金属汚染物が半導体基板の表面に付着した場合にも、この塩酸過酸化水素水処理によって金属汚染物を除去することができる。また、一連の処理は半導体基板を一度も大気に曝さずに処理層内で連続して行うので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。また、このような半導体基板の処理方法を適用することにより、ウォーターマークや異物等に起因する半導体装置の歩留まり低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法について図1乃至図7を用いて説明する。
【0017】
図1は本実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置の概略図、図2は本実施形態による半導体基板の処理方法を示すフローチャート、図3はアンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフ、図4は処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフ、図5は洗浄処理後の半導体基板表面の欠陥数と自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフ、図6は本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャート、図7は本実施形態の方法によって処理した半導体基板と比較例の方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【0018】
はじめに、本実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置について図1を用いて説明する。
【0019】
半導体基板30の処理を行うための処理槽10には、処理薬液を供給する処理薬液供給配管12の一端が接続されている。処理薬液供給配管12には、処理槽10に供給する処理薬液の供給量を制御するバルブ12aが設けられている。処理薬液供給配管12の他端には、純水(DIW:DeIonized Water)を供給する純水供給配管14と、アンモニア水(NH4OH)を供給するアンモニア水供給配管16と、過酸化水素水(H2O2)を供給する過酸化水素水供給配管18と、塩酸(HCl)を供給する塩酸供給配管20と、弗酸(HF)を供給する弗酸供給配管22とが接続されている。純水供給配管14、アンモニア水供給配管16、過酸化水素水供給配管18、塩酸供給配管20及び弗酸供給配管22には、これら配管を介して処理薬液供給配管12方向へ供給される薬液の供給量を制御するバルブ14a,16a,18a,20a,22aが、それぞれ設けられている。これにより、バルブ14a,16a,18a,20a,22aのうち任意のバルブを所定量だけ開くことにより、任意の薬液を、処理薬液供給配管12を介して任意の供給量で処理槽10に供給できるようになっている。
【0020】
次に、本実施形態による半導体基板の処理方法の概略について図1及び図2を用いて説明する。
【0021】
本実施形態による半導体基板の処理方法は、図2に示すように、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS11)と、純水リンスを行うステップ(ステップS12)と、弗酸処理を行うステップ(ステップS13)と、純水リンスを行うステップ(ステップS14)と、過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS15)と、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS16)と、純水リンスを行うステップ(ステップS17)と、塩酸過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS18)と、純水リンスを行うステップ(ステップS19)とを有している。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0022】
まず、バルブ14a及びバルブ12aを開き、純水供給配管14及び処理薬液供給配管12を介して処理層10内に純水を供給する。これにより、薬液槽10内を純水で満たす。
【0023】
次いで、純水で満たされた処理槽10内に、処理対象の半導体基板30を投入する。なお、処理対象の半導体基板30は、表面にシリコン酸化物系絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化酸化膜)が形成されたシリコンウェーハなど、弗酸処理を含む洗浄処理を行うものである。
【0024】
次いで、バルブ16a,18aを開き、処理槽10内に、純水に加えてアンモニア水及び過酸化水素水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液はアンモニア過酸化水素水となり、半導体基板30のアンモニア過酸化水素水処理が行われる(ステップS11)。この際、バルブ14a,16a,18aの開き具合は、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0025】
このアンモニア過酸化水素水処理により、半導体基板30に付着していた異物が除去される。異物の除去効果を高める観点から、本ステップでのアンモニア過酸化水素水処理の処理温度は、室温よりも高い温度、例えば40℃以上であることが望ましい。なお、本ステップでアンモニア過酸化水素水処理を行う際、半導体基板30の表面にはシリコン酸化物系絶縁膜が形成されているため、アンモニア過酸化水素水の液温を上げることによる半導体基板30への影響はない。
【0026】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ16a,18aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS12)。このときに、処理層10内から、半導体基板30より除去した異物が排出される。
【0027】
次いで、バルブ22aを開き、処理槽10内に純水に加えて弗酸を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は希弗酸となり、半導体基板30の弗酸処理が行われる(ステップS13)。この際、バルブ14a,22aの開き具合は、処理槽10内の弗酸濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0028】
この弗酸処理により、半導体基板30の表面に形成されていたシリコン酸化物系絶縁膜は、除去される。
【0029】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ22aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内の弗酸を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS14)。
【0030】
次いで、バルブ18aを開き、処理槽10内に純水に加えて過酸化水素水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は過酸化水素水となり、半導体基板30の過酸化水素水処理が行われる(ステップS15)。この際、バルブ14a,18aの開き具合は、処理槽10内の過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。なお、本ステップでの過酸化水素水処理の処理温度は、25℃以下であることが望ましい。
【0031】
図3は、アンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフである。図示するように、アンモニア過水の温度が高いほど、シリコンのエッチングレートが早くなる。このことから、液温としては、温度に対するシリコンのエッチング量の変化が小さい25℃程度以下に設定することが望ましい。なお、この温度に設定している理由としては、通常の装置において純水が常温(25℃程度)で送水されることも挙げられる。
【0032】
次いで、バルブ14a,18aを開いた状態で、バルブ16aを更に開き、処理槽10内に純水及び過酸化水素水に加えてアンモニア水を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液はアンモニア過酸化水素水となり、半導体基板30のアンモニア過酸化水素水処理が行われる(ステップS16)。この際、バルブ14a,16a,18aの開き具合は、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0033】
半導体基板30の表面が露出した状態でアンモニア水を供給すると、アンモニア水による半導体基板30のエッチングが生じる。そこで、本実施形態による半導体基板の処理方法では、弗酸処理後のアンモニア過酸化水素水処理に当たり、まずステップS15で過酸化水素水を処理槽10内に導入して半導体基板30表面に自然酸化膜を形成している。これにより、アンモニア水による半導体基板30のエッチングを防止することができる。
【0034】
このアンモニア過酸化水素水処理により、シリコン酸化物系絶縁膜を除去した半導体基板30の表面には、膜厚が約0.7nm程度の自然酸化膜が形成される。これにより、半導体基板30の表面は、親水化する。化学薬液により形成されるこのような自然酸化膜は、化学酸化膜と呼ばれることもある。なお、本願明細書において、親水化とは、半導体基板の表面が一様に自然酸化膜に覆われた状態を意味する。本願発明者が用いたエリプソメータによる測定では、自然酸化膜の膜厚を約0.7nm以上とすることにより、半導体基板の表面が十分に親水化した(後述の図7を参照)。
【0035】
図4は、処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフである。なお、図4のグラフは、非特許文献1から引用した。
【0036】
図4に示すように、シリコン(Si)、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(Si3N4)及びポリスチレンラテックス粒子(PSL)の何れの場合にも、pH値が大きくなるほどにゼータ電位はマイナス方向に変化している。特に、pH値が約8以上では、これら物質のゼータ電位は総てマイナスの値を示している。したがって、処理薬液としてpH値が約8以上、より好ましくは10以上のアルカリ性を有するアンモニア過酸化水素水を用いることで、シリコン基板やシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板に対して、シリコン、シリコン酸化膜、PSL粒子などの有機物、シリコン窒化膜は、それぞれ電位的に反発し合い、基板に異物が付着することを防止できる。
【0037】
本ステップでのアンモニア過酸化水素水処理の処理温度は、25℃以下であることが望ましい。半導体基板(例えばシリコン基板)に対するアルカリ液のエッチング作用は液温が高いほどに大きいため、半導体基板30へのダメージを極力低減する観点から、エッチング作用の比較的小さい25℃以下に設定することが有効である。
【0038】
また、アンモニア過酸化水素水中のアンモニア濃度は、0.1〜0.5%、より好ましくは0.3%程度に設定することが望ましい。また、アンモニア過酸化水素水中の過酸化水素濃度は、0.5〜1.3%、より好ましくは0.9%程度に設定することが望ましい。シリコン基板に対するアルカリ液のエッチング作用は、アルカリ液の水酸化物イオン濃度が高いほど大きいため、半導体基板30へのダメージを極力低減する観点から、エッチング作用の比較的小さい上記濃度以下に設定することが望ましい。アンモニア濃度を0.1%以上に設定するのは、0.1%未満ではアンモニアの添加効果を十分に得られないからである。同様に、過酸化水素濃度を0.5%以上に設定するのは、0.5%未満では過酸化水素の添加効果を十分に得られないからである。
【0039】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ16a,18aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内のアンモニア過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS17)。このときに、処理層10内から異物が排出される。
【0040】
次いで、バルブ18a,20aを開き、処理槽10内に純水に加えて過酸化水素水及び塩酸を供給する。これにより、処理槽10内の処理薬液は塩酸過酸化水素水となり、半導体基板30の塩酸過酸化水素水処理が行われる(ステップS18)。この際、バルブ14a,18a,20aの開き具合は、処理槽10内の塩酸過酸化水素水濃度が所望の値になるように、適宜制御する。
【0041】
アルカリ液(アンモニア過酸化水素水)処理の際に金属汚染物が半導体基板30表面に付着している場合、この塩酸過酸化水素水処理によって除去される。金属汚染物の除去効果を高める観点から、本ステップでの塩酸過酸化水素水処理の処理温度は、室温よりも高い温度、例えば40℃以上であることが望ましい。
【0042】
なお、塩酸の代わりとして、硝酸を用いてもよい。
【0043】
次いで、バルブ14aを開いた状態でバルブ18a,20aを閉じ、処理槽10内に純水を供給し、処理槽10内の塩酸過酸化水素水を純水で置換するとともに、半導体基板30の純水リンスを行う(ステップS19)。
【0044】
ステップS11からステップS19までの上記一連の処理は、半導体基板30を処理薬液で満たした処理槽10内から一度も出すことなく連続して行うことができる。したがって、半導体基板30が処理途中で大気に曝されることがないので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。
【0045】
この後、処理槽10内から半導体基板30を取り出して乾燥させることにより、一連の処理が完了する。
【0046】
図5は、洗浄処理後の半導体基板30表面の欠陥数とステップS15で形成する自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。なお、自然酸化膜の膜厚はエリプソメータを用いて測定し、欠陥数はレーザー散乱を用いた欠陥検査装置により測定した。
【0047】
図5に示すように、半導体基板30表面の欠陥数は、半導体基板30表面に形成する自然酸化膜の膜厚が増加するほどに減少している。また、自然酸化膜の膜厚が0.7nm程度以上になると、欠陥数レベルが低いところで落ち着くようになる。図5の結果から、ステップS15で形成する自然酸化膜の膜厚は、0.7nm程度以上であることが望ましいことが判る。
【0048】
図6は本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【0049】
本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法は、図6に示すように、アンモニア過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS21)と、純水リンスを行うステップ(ステップS22)と、弗酸処理を行うステップ(ステップS23)と、純水リンスを行うステップ(ステップS24)と、塩酸過酸化水素水処理を行うステップ(ステップS25)と、純水リンスを行うステップ(ステップS26)とを有している。図2に示す本実施形態による半導体基板の処理方法との相違点は、ステップS15の過酸化水素水処理、ステップS16のアンモニア過酸化水素水処理、ステップS17の純水リンスを行わない点である。他のステップは、本実施形態による半導体基板の処理方法と同じである。
【0050】
図7は本実施形態による半導体基板の処理方法によって処理した半導体基板と本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【0051】
本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法では、ステップS25の塩酸過酸化水素水処理によって半導体基板30の表面に自然酸化膜が形成されるが、図7に示すように、その膜厚は0.3nm程度であった。すなわち、本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法では、半導体基板30表面の親水化が十分に行われていない(半疎水性)。この結果、処理後における半導体基板30上の欠陥数も非常に多かった。
【0052】
一方、本実施形態による半導体基板の処理方法では、図7に示すように、自然酸化膜の膜厚は0.7nm程度であり、半導体基板30表面の親水化は十分に行われている。この結果、処理後における半導体基板30上の欠陥数も、本実施形態の比較例による半導体基板の処理方法と比較して大幅に低減することができた。
【0053】
このように、本実施形態によれば、半導体基板を弗酸処理して表面のシリコン酸化物系絶縁膜を除去した後、アンモニア過酸化水素水処理によって半導体基板の表面を親水化するので、ウォーターマークの発生や異物の付着を防止することができる。また、アンモニア過酸化水素水処理を行う際、先に過酸化水素水を供給して半導体基板の表面に自然酸化膜を形成した後にアンモニア水を供給するので、半導体基板がアンモニア過酸化水素水によってエッチングされることを防止することができる。また、このアンモニア過酸化水素水処理の後には、塩酸過酸化水素水処理を行うので、アンモニア過酸化水素水処理の際に金属汚染物が半導体基板の表面に付着した場合にも、この塩酸過酸化水素水処理によって金属汚染物を除去することができる。また、一連の処理は半導体基板を一度も大気に曝さずに処理層内で連続して行うので、ウォーターマークの発生や異物付着を抑制する効果を更に高めることができる。
【0054】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法について図8乃至図11を用いて説明する。
【0055】
図8乃至図11は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0056】
本実施形態では、第1実施形態による半導体基板の処理方法を適用した半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0057】
まず、シリコン基板30上に、例えば熱酸化法により、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜32を形成する。
【0058】
次いで、シリコン酸化膜32上に、例えばCVD法により、例えば膜厚100nmのシリコン窒化膜34を形成する(図8(a))。
【0059】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、素子分離領域のシリコン窒化膜34及びシリコン酸化膜32を除去するとともに、素子分離領域のシリコン基板30内に、深さが例えば200〜400nm程度の素子分離溝36を形成する(図8(b))。
【0060】
次いで、必要に応じて、例えば熱酸化法により、素子分離溝36の内壁に、例えば膜厚5nmのシリコン酸化膜38を形成する(図8(c))。
【0061】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚400〜600nmのシリコン酸化膜40を堆積し、素子分離溝36内をこのシリコン酸化膜40によって充填する。
【0062】
次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、シリコン窒化膜34が露出するまでシリコン酸化膜40を除去する。これにより、素子分離溝36内に埋め込まれたシリコン酸化膜38,40よりなる素子分離膜42を形成する(図9(a))。
【0063】
次いで、例えば燐酸処理により、シリコン窒化膜34を除去する(図9(b))。
【0064】
次いで、図2に示す第1実施形態による半導体基板の処理方法を用い、活性領域上のシリコン酸化膜32を除去するとともに、シリコン基板30表面の異物を除去する(図9(c))。
【0065】
次いで、例えば熱酸化法により、素子分離膜42により画定されたシリコン基板30の活性領域上に、例えば膜厚10nmのシリコン酸化膜よりなる犠牲酸化膜44を形成する(図10(a))。犠牲酸化膜44は、ウェル注入を行う際にシリコン基板30の表面が汚染されるのを防止するための膜である。
【0066】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、N型トランジスタ形成領域のシリコン基板30内にPウェル46を、P型トランジスタ形成領域のシリコン基板30内にNウェル48を、それぞれ形成する(図10(b))。
【0067】
次いで、図2に示す第1実施形態による半導体基板の処理方法を用い、活性領域上の犠牲酸化膜44を除去するとともに、シリコン基板30表面の異物を除去する(図10(c))。
【0068】
次いで、例えば熱酸化法により、素子分離膜42により画定されたシリコン基板30の活性領域上に、例えば膜厚5nmのシリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜50を形成する(図11(a))。なお、ゲート絶縁膜50は、シリコン窒化酸化膜その他の高誘電率材料を用いて構成してもよい。
【0069】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚100nmの多結晶シリコン膜を堆積する。
【0070】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、この多結晶シリコン膜をパターニングし、ゲート絶縁膜50上に、多結晶シリコン膜よりなるゲート電極52n,52pを形成する。なお、ゲート電極52nはN型トランジスタのゲート電極であり、ゲート電極52pはP型トランジスタのゲート電極である。
【0071】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、ゲート電極52nをマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52nの両側のシリコン基板30内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域54nを形成する。同様に、ゲート電極52pをマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52pの両側のシリコン基板30内に、LDD領域或いはエクステンション領域としての不純物拡散領域54pを形成する(図11(b))。
【0072】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えばシリコン窒化膜を堆積した後、このシリコン窒化膜をエッチバックし、ゲート電極52n,52pの側壁部分に、シリコン窒化膜よりなる側壁絶縁膜56を形成する。
【0073】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、ゲート電極52n及び側壁絶縁膜56をマスクとして砒素や燐等のドナー不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52nの両側のシリコン基板30内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域58nを形成する。同様に、ゲート電極52p及び側壁絶縁膜56をマスクとして硼素等のアクセプタ不純物イオンをイオン注入し、ゲート電極52pの両側のシリコン基板30内に、ソース/ドレイン領域の高濃度領域となる不純物拡散領域58pを形成する。
【0074】
次いで、例えば窒素雰囲気中で熱処理を行い、注入した不純物イオンを活性化し、不純物拡散領域54n,58nよりなるN型トランジスタのソース/ドレイン領域60nと、不純物拡散領域54p,58pよりなるP型トランジスタのソース/ドレイン領域60pとを形成する。
【0075】
こうして、シリコン基板30上に、ゲート電極52n及びソース/ドレイン領域60nを有するN型トランジスタと、ゲート電極52p及びソース/ドレイン領域60pを有するP型トランジスタとを完成する。
【0076】
この後、必要に応じてサリサイドプロセスや他の素子の形成等を行った後、バックエンドプロセス等を経て、半導体装置が完成する。
【0077】
このように、本実施形態によれば、ウェルイオン注入前のパッド酸化膜の除去の工程、並びにゲート絶縁膜形成前の犠牲酸化膜の除去の工程において、第1実施形態による半導体基板の処理方法を適用するので、ウォーターマークの発生や異物付着を効果的に防止しつつ弗酸処理及び半導体基板の洗浄を行うことができる。これにより、ウォーターマークや異物等に起因する半導体装置の歩留まり低下を抑制することができる。
【0078】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、弗酸処理の前にアンモニア過酸化水素水処理(ステップS11〜ステップS12)を行っているが、例えば異物の付着量が少ない場合などには、必ずしも行う必要はない。
【0080】
また、上記実施形態では、半導体基板の表面の親水化処理(ステップS15〜ステップS17)の後に塩酸過酸化水素水処理(ステップS18〜ステップS19)を行っているが、例えば親水化処理の過程における金属汚染物の付着量が少ない場合などには、必ずしも行う必要はない。
【0081】
また、上記実施形態では、半導体基板の表面の親水化処理(ステップS15〜ステップS17)の際に、過酸化水素水を投入(ステップS15)した後にアンモニア水を投入(ステップS16)することにより半導体基板へのダメージを抑制しているが、例えば半導体基板へのダメージが特に問題とならないような場合などには、過酸化水素水とアンモニア水とを同時に投入するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ウォーターマークの発生や異物付着を効果的に防止するために、半導体基板を大気に曝さずに薬液中で連続して処理を行ったが、例えば半導体基板を大気に曝すことによる影響が無視できるような場合などには、必ずしも連続して処理を行う必要はない。
【0083】
また、上記実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を挙げているが、半導体基板としては他の基板を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法に用いる処理装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【図3】アンモニア過水の温度とシリコンのエッチング量との相関を示すグラフである。
【図4】処理薬液のpH値と種々の材料のゼータ電位との関係を示すグラフである。
【図5】洗浄処理後の半導体基板表面の欠陥数と自然酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態の比較例による半導体基板の処理方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態の方法によって処理した半導体基板と比較例の方法によって処理した半導体基板とにおける欠陥数と自然酸化膜の膜厚とを示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図9】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図10】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図11】本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【符号の説明】
【0085】
10…処理槽
12…処理薬液供給配管
14…純水供給配管
16…アンモニア水供給配管
18…過酸化水素水供給配管
20…塩酸供給配管
22…弗酸供給配管
12a,14a,16a,18a,20a,22a…バルブ
30…半導体基板(シリコン基板)
32,38,40…シリコン酸化膜
34…シリコン窒化膜
36…素子分離溝
42…素子分離膜
44…犠牲酸化膜
46…Pウェル
48…Nウェル
50…ゲート絶縁膜
52n,52p…ゲート電極
54n,54p,58n,58p…不純物拡散領域
56…側壁絶縁膜
60n,60p…ソース/ドレイン領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程の後に、前記半導体基板を塩酸過酸化水素水で処理する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、
アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体基板を弗酸処理する工程の前に、前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板は、活性領域を含み、
前記酸化膜は、前記活性領域上にされている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする半導体基板の処理方法。
【請求項8】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、
アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程と
を有することを特徴とする半導体基板の処理方法。
【請求項1】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程の後に、前記半導体基板を塩酸過酸化水素水で処理する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、
アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体基板を弗酸処理する工程の前に、前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板は、活性領域を含み、
前記酸化膜は、前記活性領域上にされている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板の前記表面を親水化する工程とを有し、
前記半導体基板の前記表面を親水化する工程は、過酸化水素水を投入した処理槽内で前記半導体基板を処理する工程と、前記処理槽内にアンモニア水を更に投入して前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理する工程とを有する
ことを特徴とする半導体基板の処理方法。
【請求項8】
表面に酸化膜が形成された半導体基板を弗酸処理し、前記酸化膜を除去する工程と、
弗酸処理を行った前記半導体基板をアンモニア過酸化水素水で処理し、前記半導体基板の前記表面を親水化する工程と、
アンモニア過酸化水素水処理を行った前記半導体基板を、塩酸過酸化水素水で処理する工程と
を有することを特徴とする半導体基板の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−158531(P2009−158531A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331770(P2007−331770)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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