説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】反りが少なく欠陥の無い封止された半導体装置を作ることができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)〜(E)を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物。(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)特定の構造を有するフェノール樹脂硬化剤、該硬化剤のフェノール性水酸基のモル比で組成物中のエポキシ基に対して0.8〜1.2となる量(C)球状溶融シリカ及び/又は球状クリストバライトを、合計で、組成物総質量の82〜88質量%(D)リン系硬化促進剤(d1)及びホウ素系硬化促進剤(d2)を(d1)に対する(d2)の質量比0.3〜3で(A)と(B)の合計100質量部に対して合計0.2〜3質量部(E)酸価5以上30未満、ケン化価50以上150未満及び175℃で24時間放置した場合の重量減少が3重量%未満である離型剤を、(A)と(B)の合計100質量部に対して0.5〜5質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関し、詳細には特定のエポキシ樹脂と、硬化剤の組合せを含み、反りが小さく、耐リフロー性等に優れた、封止された半導体装置を与えることができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する。また、本発明は、該樹脂組成物で封止された、反りが小さく表面実装に適する半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流である。樹脂封止には、成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物が一般的に使用されている。しかし、ここ数年の半導体素子の高集積化、表面実装技術の進歩及び鉛フリー半田の使用等に伴い、上記諸特性において、さらなる改良が求められている。
【0003】
例えば、近年ICやLSIの主流となっている、ボールグリッドアレイ(BGA)やQFNなどMAP(マルチアレイパッケージ)等の、基板上に複数の半導体素子を搭載し、樹脂封止後、半導体素子毎に個片化されるCSP(チップサイズパッケージ)は、大型であるため、封止樹脂の充填性、即ち、樹脂が隅々まで回り込み、欠陥の無い硬化物を形成する性能、また、基板の片面のみ封止することによる成型後の反りが大きな問題となってきている。
【0004】
特に高集積化によるチップの大型化、コストダウンの為の半導体素子高密度搭載化、MAPの封止エリアの大型化、パッケージの薄型化に伴い、パッケージ総体積における封止樹脂が占める体積が少なくなっている。これらの半導体装置では、従来の装置とは反対に、半導体素子搭載側を上にした場合、凸側の反りになりやすい。このような凸型の反りを防止するためには、無機充填剤の量を減らすことが考えられる。しかし、充填剤量が少ないと、樹脂硬化物の吸湿量が増加し、リフロー工程時の熱衝撃によるクラックや基板ないし半導体素子界面との剥離が発生しやすい。
【0005】
他の方法として、比較的熱膨張率の大きい充填剤を用いることも考えられる。そのような充填剤として、40℃〜400℃の平均熱膨張係数が2.0×10―5/℃である球状クリストバライトが知られている。また、該クリストバライトを主として使用した組成物も提案されている(特許文献1)。しかしながら、クリストバライトは268℃で、α−クリストバライトからβ−クリストバライトへと相転移し、熱膨張率が変化する。そのため、最高温度が265℃程度になるリフロー工程において、基板と封止樹脂硬化物との界面で剥離が生じ、あるいは基板の反りが大きくなる場合がある。
【特許文献1】特開平11−302506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、反りが少なく、欠陥の無い、封止された半導体装置(以下「封止体」という)を作ることができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、所定のエポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせると、最大88質量%まで無機充填剤を含んでも、凸型の反りを低減するのに有効であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、下記(A)〜(E)を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。
(A)下記(1)式で示されるエポキシ樹脂、


(nは0〜100の整数である)
(B)下記(2)式で示されるフェノール樹脂硬化剤を、全組成物中に含まれるエポキシ基1モルに対して、該硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.8〜1.2となる量、


(mは0〜100の整数であり、Xは下記式(b1)または(b2)で表される基であり、



、Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である)
(C)球状溶融シリカ及び/又は球状クリストバライトを、合計で、組成物総質量の82〜88質量%、
(D)下記(3)式で表される硬化促進剤(d1)及び(4)式で表される硬化促進剤(d2)を、(d1)に対する(d2)の質量比0.3〜3で、且つ成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して合計0.2〜3質量部、

(Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、又はアルコキシ基である)


(Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基である)
(E)酸価5以上30未満、ケン化価50以上150未満及び175℃で24時間放置した場合の重量減少が3重量%未満である離型剤を、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.5〜5質量部。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の組成物は、無機充填剤を多く含み、吸湿量が少なく、耐リフロー特性に優れた封止体を形成する。また、硬化促進剤(D)として、特定の構造を有する2種の硬化促進剤を特定の比率で含むことによって、欠陥の無い硬化物を、多数回連続成型できる。更に(E)離型剤を含むので、外観の不良の無い封止体を連続成形することができる。該樹脂組成物は、半導体装置、特に半導体素子の占める割合が高いMAPタイプの半導体装置、の封止に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、各成分につき、詳細に説明する。
[(A)エポキシ樹脂]
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は下記(1)式で表される。


式(1)において、nは0〜100であり、その平均が0.1〜50、好ましくは0.5.1〜20である。より好ましくは、nが1〜5もしくは重量平均分子量300〜1500である。また、ASTM D4287に従い、コーン/プレート粘度計を用いて150℃で測定されるICI粘度が、0.1Pa・s以下であることが、後述する(C)球状の無機充填剤を多く配合することができるので好ましく、より好ましくは0.01〜0.1Pa・sである。
【0011】
エポキシ樹脂(A)は、加水分解性塩素が1000ppm以下、特に500ppm以下であり、ナトリウム及びカリウムはそれぞれ10ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素が1000ppmを超えたり、ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化し易い傾向がある。
【0012】
[(B)フェノール樹脂硬化剤]
本発明で用いられる硬化剤(B)は下記(2)式で表される。


mは0〜100、好ましくは0〜10であり、より好ましくは1〜5の整数であり、重量平均分子量で500〜2000である。Xは下記式(b1)または(b2)で表される基であり、



、Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。
【0013】
好ましくは、フェノール性水酸基当量が160〜210、より好ましくは170〜205である。
【0014】
Xが式(b1)で表される構造の場合、硬化収縮量が大きくなり、封止体体積に占める半導体素子の体積割合が高い半導体素子の低反り化に有効である。一方、Xが(b2)表される構造の場合、硬化収縮量がより小さいため、比較的半導体素子の体積割合が低い装置の低反り化に有効である。したがって、半導体装置のデザインによって、(5)、(6)のどちらかを使い分け、或いは所望の硬化収縮率にするべく併用しても良い。
【0015】
上記硬化剤(B)も、エポキシ樹脂と同様に、ナトリウム及びカリウムをそれぞれ10ppm以下とすることが好ましい。ナトリウム又はカリウムが10ppmを超える場合は、長時間高温高湿下に半導体装置を放置すると、耐湿性が劣化する場合がある。組成物中の該硬化剤の含有量は、全組成物中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.8〜1.2である。該比が前記範囲外であると、封止体の反りが大きく、耐リフロー性に劣る傾向がある。
【0016】
[(C)球状の溶融シリカ及び/又はクリストバライト]
本発明の組成物において、(C)球状の溶融シリカ及び/又はクリストバライト(以下「球状充填剤」という)の合計質量は、組成物総重量の82〜88重量%である。前記下限値未満では、硬化物の吸湿量が大きくなり、耐リフロー特性が低下する場合がある。前記上限値を超えると、組成物の溶融粘度が高くなり、ワイヤー流れ、硬化物中に欠陥が生じ、反りが大きくなる場合がある。
【0017】
これら球状充填剤の平均粒径は5〜30μmであることが好ましく、より好ましくは7〜20μmである。該平均粒径は、例えばレーザー回折・散乱法で測定することができる。また封止された半導体装置中の半導体装置が占める体積割合に応じて、クリストバライトの量を調整することによって、反りを小さくすることができる。但し、クリストバライトは、球状充填総質量の40質量%以下である。クリストバライトが40質量%を超えるとリフロー工程において、基板と封止樹脂硬化物との界面で剥離が生じ、あるいは高温下での基板の反りが大きくなり、表面実装できない等の問題が発生する。封止体中の半導体装置が占める体積割合が多くなるにつれて、クリストバライトの量を増加する。
【0018】
球状充填剤は、樹脂成分との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトシラン、γ−エピスルフィドキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。カップリング剤の配合量及び表面処理方法については従来法に従ってよい。
【0019】
[(D)硬化促進剤]
また、本発明において、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるため、下記(3)式で表される硬化促進剤(d1)及び(4)式で表される硬化促進剤(d2)を含む。

(Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、又はアルコキシ基である)


(Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基である)
【0020】
硬化促進剤(D)の組成物中の含有量は、(d1)と(d2)の合計質量が、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.2〜3質量部、好ましくは0.9〜2質量部である。含有量が前記下限値未満では、硬化までの時間が長くなりすぎる為、生産性が低下する。前記上限値よりも大きくなると、硬化時間が短くなり、未充填、ワイヤー流れなどを引き起こす傾向がある。
【0021】
さらに、(d1)に対する(d2)の質量比、(d2)/(d1)、は0.3〜3、好ましくは0.5〜3である。(d1)と(d2)の合計質量が同じであっても、該質量比が前記下限値未満では硬化性が早くなり、充填性が不十分となる恐れがあり、前記上限値を超えると硬化性が不十分であり、反り、耐リフロー性が低下する場合がある。(d1)と(d2)は、そのまま配合してもフェノール性硬化剤(B)と予混合した後に配合してもかまわない。
【0022】
[(E)離型剤]
本発明の封止樹脂組成物は、酸価5以上30未満、ケン化価50以上150未満及び175℃で24時間放置した場合の重量減少が3%未満である離型剤を含む。酸価又は酸ケン化価が上記上限値より大きい離型剤は、エポキシ樹脂との相溶性がよい為、金型表面に移行しにくく、離型性に劣る。一方、酸価、又はケン化価が、前記下限値未満の離型剤は、エポキシ樹脂との相溶性が低すぎて、金型表面に滲みやすい。その結果、離型性は優れるがパッケージ表面の滲み、とりわけゲート口付近のゲートステイン、あるいは内部の半導体素子の形が浮き出て見えるフローマーク等顕著に現れる。さらに高温下重量減少が3%以上の離型剤は、揮発成分が金型に付着し、離型性を損なう場合がある。上記各条件を満たす離型剤としては、酸価7.4、ケン化価84.3、175℃で24時間の重量減少が0.8%のカルナバワックス、酸価12、ケン化価140、175℃で24時間の重量減少が2.9%の変性モンタン酸ワックス等が挙げられ、好ましくはカルナバワックスが使用される。組成物中の離型剤の含有量は、(A)及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.5〜5質量部であり、より好ましくは1〜2.5質量部である。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、カーボンブラック等の着色剤、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持亜鉛、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物等の難燃剤、ハイドロタルサイト類、ビスマス化合物、希土類酸化物等のハロゲントラップ剤等が挙げられる。
【0024】
[エポキシ樹脂組成物の調製等]
本発明の封止樹脂組成物は、成分(A)〜(E)及び上記添加剤を、所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させた後、適当な大きさに粉砕して調製することができる。
【0025】
なお、組成物をミキサー等によって十分均一に混合するに際して、ウエッターとしてシランカップリング剤を配合してよい。該シランカップリング剤としては、球状充填剤の表面処理に関して既に述たものを使用することができる。
【0026】
このようにして得られる本発明の半導体封止用樹脂組成物は、各種の半導体装置の封止に有効に利用できる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられ、その成形温度は150〜185℃で30〜180秒である。また、後硬化は150〜185℃で2〜20時間行うことが望ましい。
【0027】
以下、調整例、実施例及び参考例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において部は何いずれも質量部である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例と参考例を示し、本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1〜7、参考例1〜8]
表1に示す量(質量部)の各成分を、熱2本ロールにて均一に溶融混合した後、冷却し、次いで、粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。使用した原料を下記に示す。
【0030】
(A)エポキシ樹脂
(イ)(1)式で表されるエポキシ樹脂:EOCN−1020−55、日本化薬(株)製)


(Mw=500)

参考例で使用のエポキシ樹脂
(ロ)下記式で表されるフェニル型エポキシ樹脂:YX−4000K((株)JER製)エポキシ当量190)

(B)フェノール樹脂硬化剤
(ハ)MEH−7800SS(明和化成(株)製)フェノール性水酸基当量175)


(Mw=900)
(ニ)MEH−7851SS(明和化成(株)製)フェノール性水酸基当量199


(Mw=760)
(C)球状充填剤
(へ)球状溶融シリカ:平均粒径12μm((株)龍森製)
(ト)球状クリストバライト平均: 粒径26μm((株)龍森製)
(D)硬化促進剤
(チ)硬化促進剤(d1)


(リ)硬化促進剤(d2):TPP−K(北興化学(株)製)


(E)離型剤
(ル)カルナバワックス、TOWAX1P−2、酸価7.4、ケン化価84.3、融点86℃、175℃、24時間での重量減少が0.8%(東亜化成株式会社製)
参考例で使用の離型剤
(ヲ)モンタン酸ワックスWAX―S、酸価140 ケン化価165、融点84℃、175℃、24時間での重量減少が16.1%(クラリアントジャパン株式会社製)
その他の成分
(ワ)難燃剤:モリブデン酸亜鉛担持亜鉛、KEMGARD 911B(シャーウインウイリアムズ製)
(カ)難燃材:ホスファゼン化合物、SPE−100(大塚化学(株)製)
(ヨ)シランカップリング剤:KBM−403、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
(タ)着色剤:デンカブラック(電気化学工業(株)製)
(レ)イオントラップ剤:ハイドロタルサイト化合物 DHT−4A−2(協和化学(株)製)
【0031】
得られた組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
(a)スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mmの条件で測定した。50インチ以上が好ましい。
(b)溶融粘度
高化式フローテスターを用い、10kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度175℃で粘度を測定した。最低粘度が10Pa・s以下であることが好ましい。
(c)反り量
図1に示す断面構造、但し、表1に示すチップ数(装置1:4×4、装置2:5×5)の半導体装置を作製した。表1の各サイズは、図2に示すとおりである。使用した基板及びダイボンド剤は以下のとおりである。
有機回路基板:CCL−HL−832、三菱ガス化学製、ガラス転移温度180℃、ガラス転移温度以下熱膨張係数1.5×10−5/℃、ガラス転移温度以上の熱膨張係数1.1×10−5/℃;
ダイボンド剤:Able6202C、日本Ablestick社製、ガラス転移温度40℃、ガラス転移温度以下の熱膨張係数7.0×10−5/℃、ガラス転移温度超の熱膨張係数35.0×10−5/℃、硬化後の厚み50μm。
上記装置を、各組成物により、175℃、6.9N/mm、成形時間120秒で封止した。得られた半導体装置を、室温まで冷却した後、レーザー三次元測定機を用いて、対角線方向に高さの変位を測定し、変位差の最も大きい値を基板の反り量とした。表3において、凸型の反りの値を正の値、凹型の反りを負の値で表した。+/−500μm以下であることが好ましい。
【0032】
【表1】


(d)耐リフロー性
反り量の測定をした半導体装置2を、チップ毎に切断し、85℃/60%RHの恒温恒湿器に168時間放置した後、半導体パッケージの表面温度が、図3に示す変化を示すような温度プロフィールのIRリフローを3回通した後に、超音波探査装置を用いて内部クラック又は剥離の発生したチップ数を数えた。
(e)連続成形性
各組成物を用いて、温度:180℃、成形圧力:70MPa、及び成形時間:60秒の条件でQFP(Quad Flat Package)(14mm×20mm×2.7mm、5キャビティー)を連続成形機により成形した。パッケージが金型に貼り付く、もしくはカルが金型に貼り付く等の不良が発生するまでのショット数を、最大500ショットまで数えた。
【0033】
【表2】

実施例1〜7の組成物は、連続成形性に優れ、これらの組成物で封止された装置は、反りがいずれも500μm以下であり、耐リフロー性にも優れた。
これに対して、例参考例1の組成物は、球状充填剤の量が少なく、該組成物で封止された装置は耐リフロー性に劣った。一方、参考例8は、充填剤量が多すぎ、装置2における反りが大きかった。
参考例2の組成物は、全組成物中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.8以下であり、一方、参考例3の組成物は、1.2を超えており、いずれも耐リフロー性及び連続成形性が悪かった。
参考例4の組成物は、硬化促進剤の比d2/d1=0.2であり、スパイラルフロー値が小さく流動性が不十分であった。一方、参考例5の組成物はd2/d1=10であり連続成形性が悪かった。
参考例6、7の組成物は、離型剤の性能が劣り、連続成形性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の樹脂組成物は、半導体装置、特に半導体素子の占める割合が高いMAPタイプの半導体封止に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ボードオンチップボールグリッドアレイパッケージの一例の断面図である。
【図2】実施例で作成したボードオンチップボールグリッドアレイパッケージ及び該パッケージ中の半導体素子の体積の求め方を示す平面図及び断面図である。
【図3】実施例で使用したIRリフローの温度プロフィールを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 エポキシ樹脂組成物
2 半導体チップ
3 ダイボンド層
4 有機回路基板
5 ワイヤー
6 エポキシ樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物
(A)下記(1)式で示されるエポキシ樹脂、


(nは0〜100の整数である)
(B)下記(2)式で示されるフェノール樹脂硬化剤を、全組成物中に含まれるエポキシ基1モルに対して、該硬化剤中に含まれるフェノール性水酸基のモル比が0.8〜1.2となる量、


(mは0〜100の整数であり、Xは下記式(b1)または(b2)で表される基であり、



、Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である)
(C)球状溶融シリカ及び/又は球状クリストバライトを、合計で、組成物総質量の82〜88質量%、
(D)下記(3)式で表される硬化促進剤(d1)及び(4)式で表される硬化促進剤(d2)を、(d1)に対する(d2)の質量比0.3〜3で、且つ成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して合計0.2〜3質量部、

(Rは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、又はアルコキシ基である)



(Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基である)
(E)酸価5以上30未満、ケン化価50以上150未満及び175℃で24時間放置した場合の重量減少が3重量%未満である離型剤を、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.5〜5質量部。
【請求項2】
フェノール樹脂硬化剤(B)が、フェノール性水酸基当量160〜210を有する、請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
球状クリストバライトが、(C)成分の総質量の40質量%以下で含まれる、請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
及びRが水素原子である、請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
【請求項6】
半導体装置の総体積のうち、半導体素子が占める体積が18〜35%である、請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
基板に表面実装されている請求項5または6記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214382(P2008−214382A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49649(P2007−49649)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】