説明

半導体接合用接着剤、半導体接合用接着フィルム、半導体チップの実装方法及び半導体装置

【課題】透明性が高く、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとする半導体接合用接着剤を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、無機フィラー及び硬化剤を含有する半導体接合用接着剤であって、前記無機フィラーは、半導体接合用接着剤中の含有量が30〜70重量%であり、かつ、平均粒子径が0.1μm未満のフィラーAと、平均粒子径が0.1μm以上1μm未満のフィラーBとを含有し、前記フィラーAは、前記フィラーBに対する重量比が1/9〜6/4である半導体接合用接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとする半導体接合用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体チップを基板又は他の半導体チップに接着固定するボンディング工程が行われる。半導体チップをボンディングする際には、現在では、接着剤、接着フィルム等が用いられることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体チップと可撓性の配線基板とそれらに挟まれた絶縁層からなる構造を有する半導体装置において、絶縁層が加熱接着温度におけるキャピラリレオメータ法による最低粘度が、100〜2000Pa・sである絶縁層用接着フィルムが開示されている。特許文献1には、同文献に記載の絶縁層用接着フィルムは、フィルムの浸出量制御、耐熱性、回路充填性に優れると記載されている。
【0004】
一方、近年、半導体装置の小型化、高集積化が進展し、例えば、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するフリップチップ、複数の薄研削した半導体チップを積層したスタックドチップ等も生産されている。更に、このような小型化、高集積化した半導体装置を効率よく生産するために、製造工程の自動化もますます進展している。
【0005】
近年の自動化されたボンディング工程においては、半導体チップ上に設置されたパターン又は位置表示をカメラが認識することによって、半導体チップの位置合わせが行われる。このとき、パターン又は位置表示は半導体チップ上に積層された接着剤の上から認識されるため、ボンディング時に用いられる接着剤には、カメラがパターン又は位置表示を充分に認識することができる程度の透明性が求められる。
しかしながら、従来の接着剤には、硬化物の線膨張率を低下させて高い接合信頼性を実現するために多量の無機フィラーが混入されており、透明性低下の原因となっている。そのため、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となって、半導体装置の生産性の向上が妨げられることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−12545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明性が高く、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとする半導体接合用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1は、エポキシ樹脂、無機フィラー及び硬化剤を含有する半導体接合用接着剤であって、前記無機フィラーは、半導体接合用接着剤中の含有量が30〜70重量%であり、かつ、平均粒子径が0.1μm未満のフィラーAと、平均粒子径が0.1μm以上1μm未満のフィラーBとを含有し、前記フィラーAは、前記フィラーBに対する重量比が1/9〜6/4である半導体接合用接着剤である。
本発明2は、エポキシ樹脂と、無機フィラーと、硬化剤とを含有する半導体接合用接着剤であって、前記エポキシ樹脂と前記無機フィラーとの屈折率の差が0.1以下である半導体接合用接着剤である。
【0009】
半導体接合用接着剤において、硬化物の線膨張率を低く維持しながら透明性を高めるためには、平均粒子径が光の波長よりも充分に小さい無機フィラーを用いることが一般的に有効である。しかしながら、このような無機フィラーを用いると、半導体接合用接着剤は粘度が増大して流動性が低下するため、塗工性が低下したり、表面に突起電極を有するウエハに対して、該半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性が低下したりすることが問題である。
これに対し、本発明者らは、エポキシ樹脂、無機フィラー及び硬化剤を含有する半導体接合用接着剤において、無機フィラーの半導体接合用接着剤中の含有量を所定の範囲とし、更に、所定の平均粒子径を有する2種類の無機フィラーを所定の重量比で用いることにより、優れた塗工性、高い接合信頼性及び高い透明性を同時に実現することができることを見出した。本発明者らは、このような半導体接合用接着剤は、透明性が高いため、カメラによる半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとすることを見出し、本発明1を完成させるに至った。
【0010】
本発明者らは、一般的に半導体接合用接着剤に用いられるノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するアクリル樹脂等の屈折率は1.4〜1.6程度であるのに対し、例えば、一般的に無機フィラーとして用いられるシリカの屈折率は1.2〜1.4程度であり、両者の屈折率に差があることに着目した。
本発明者らは、エポキシ樹脂と、無機フィラーと、硬化剤とを含有する半導体接合用接着剤において、エポキシ樹脂と無機フィラーとの屈折率の差を0.1以下とすることにより、半導体接合用接着剤を透過する光の散乱を抑制することができ、透明性の高い半導体接合用接着剤が得られることを見出した。本発明者らは、このような半導体接合用接着剤を用いることにより、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識が容易となることを見出し、本発明2を完成させるに至った。
【0011】
以下に本発明1及び本発明2を詳述する。
なお、本明細書において本発明1と本発明2とに共通する事項については、単に「本発明」として説明する。
【0012】
本発明の半導体接合用接着剤は、エポキシ樹脂を含有する。
上記エポキシ樹脂は特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することで、得られる半導体接合用接着剤の硬化物は、剛直で分子の運動が阻害されるため優れた機械的強度及び耐熱性を発現し、また、吸水性が低くなるため優れた耐湿性を発現する。
【0013】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂ともいう)、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ナフタレン型エポキシ樹脂ともいう)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよく、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の汎用されるエポキシ樹脂と併用されてもよい。
【0014】
上記ナフタレン型エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することで、得られる半導体接合用接着剤の硬化物の線膨張率を下げることができ、硬化物の耐熱性や接着性が向上して、より高い接合信頼性を実現することができる。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はフェニル基を表し、n及びmは、それぞれ、0又は1である。
【0017】
上記エポキシ樹脂が上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する場合、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂中の好ましい下限が3重量%、好ましい上限が90重量%である。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量が3重量%未満であると、半導体接合用接着剤の硬化物の線膨張率を下げる効果が充分に得られなかったり、接着力が低下したりすることがある。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量が90重量%を超えると、該一般式(1)で表される構造を有する化合物と他の配合成分とが相分離し、半導体接合用接着剤の塗工性が低下したり、吸水率が高くなったりすることがある。上記一般式(1)で表される構造を有する化合物の配合量は、上記エポキシ樹脂中のより好ましい下限が5重量%、より好ましい上限が80重量%である。
【0018】
本発明の半導体接合用接着剤は、更に、高分子化合物を含有することが好ましい。上記高分子化合物を含有することで、得られる半導体接合用接着剤に製膜性又は可とう性を付与することができ、接合信頼性に優れた半導体接合用接着剤が得られる。
上記高分子化合物は特に限定されないが、エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物が好ましい。
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
【0019】
本発明の半導体接合用接着剤が、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と上記エポキシ基を有する高分子化合物とを含有する場合、半導体接合用接着剤の硬化物は、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを有し、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性等に優れ、高い接合信頼性及び導通信頼性を実現することができる。
【0020】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる半導体接合用接着剤の硬化物の機械的強度、耐熱性をより高められることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0021】
上記高分子化合物は、上記エポキシ樹脂と反応する官能基に加えて、光硬化性官能基を有していてもよい。
上記高分子化合物が上記光硬化性官能基を有することで、得られる半導体接合用接着剤に光硬化性を付与し、光照射によって半硬化することが可能となり、このような半導体接合用接着剤からなる接着剤層等の粘着力又は接着力を光照射によって制御することが可能となる。
上記光硬化性官能基は特に限定されず、例えば、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。
【0022】
上記高分子化合物の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は1万、好ましい上限は100万である。上記高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体接合用接着剤の硬化物の接着力が不足したり、半導体接合用接着剤をフィルム化する場合に、フィルム化が困難となったり、半導体接合用接着剤の造膜性が不充分となって、硬化物の可撓性が充分に向上しなかったりすることがある。上記高分子化合物の重量平均分子量が100万を超えると、得られる半導体接合用接着剤は、接着工程での表面濡れ性が劣り、接着強度に劣ることがある。
【0023】
本発明の半導体接合用接着剤が上記高分子化合物を含有する場合、上記高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が20重量部、好ましい上限が100重量部である。上記高分子化合物の配合量が20重量部未満であると、得られる半導体接合用接着剤の硬化物は、可撓性が低下し、高い接合信頼性及び導通信頼性が得られないことがある。上記高分子化合物の配合量が100重量部を超えると、得られる半導体接合用接着剤の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下し、高い接合信頼性及び導通信頼性が得られないことがある。
【0024】
本発明の半導体接合用接着剤は、無機フィラーを含有する。
上記無機フィラーを含有することで、得られる半導体接合用接着剤の硬化物の線膨張率を低下させ、高い接合信頼性を実現することができる。
【0025】
本発明1の半導体接合用接着剤は、無機フィラーとして平均粒子径が0.1μm未満のフィラーAと、平均粒子径が0.1μm以上1μm未満のフィラーBとを含有する。
このような2種類の無機フィラーを含有することで、高い接合信頼性を維持しながら、得られる半導体接合用接着剤の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を抑制し、塗工性を向上させることができ、同時に、透明性を高め、カメラによる半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとし、半導体装置の生産性を向上させることができる。
また、半導体接合用接着剤の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を抑制することで、表面に突起電極を有するウエハに対する半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性を向上させることもできる。
【0026】
上記フィラーAの平均粒子径が0.1μm以上であると、得られる半導体接合用接着剤の透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記フィラーAの平均粒子径は、0.08μm未満であることが好ましい。
【0027】
上記フィラーBの平均粒子径が0.1μm未満であると、得られる半導体接合用接着剤の接合信頼性が低下し、また、粘度が増大して流動性が低下し、塗工性が低下したり、表面に突起電極を有するウエハに対して、半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性が低下したりすることがある。上記フィラーBの平均粒子径が1μm以上であると、得られる半導体接合用接着剤の透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。
上記フィラーBの平均粒子径は、0.15μm以上であることが好ましい。また、上記フィラーBの平均粒子径は、0.8μm未満であることが好ましい。
なお、本明細書中、平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径を意味する。
【0028】
上記フィラーAは、上記フィラーBに対する重量比の下限が1/9、上限が6/4であることが好ましい。上記フィラーAの上記フィラーBに対する重量比が1/9未満であると、得られる半導体接合用接着剤の透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記フィラーAの上記フィラーBに対する重量比が6/4を超えると、得られる半導体接合用接着剤の接合信頼性が低下し、また、粘度が増大して流動性が低下し、塗工性が低下したり、表面に突起電極を有するウエハに対して、半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性が低下したりすることがある。
上記フィラーAは、上記フィラーBに対する重量比のより好ましい下限が2/8、より好ましい上限が5/5である。
【0029】
本発明1の半導体接合用接着剤に用いる無機フィラーは、平均粒子径及び重量比が上記範囲内であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、上記無機フィラーとして、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物等も挙げられ、このような複合物として、具体的には、例えば、ケイ素−アルミニウム−ホウ素複合酸化物、ケイ素−チタン複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物等が挙げられる。なかでも、滑り性に優れることから、球状シリカが好ましい。
上記球状シリカを用いることで、得られる半導体接合用接着剤の接合信頼性を更に高めることができ、また、粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を更に抑制し、塗工性、及び、表面に突起電極を有するウエハに対する半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性を更に向上させることができる。
【0030】
本発明2の半導体接合用接着剤において、上記エポキシ樹脂と上記無機フィラーとの屈折率の差は、0.1以下である。このような無機フィラーを含有することで、得られる半導体接合用接着剤の透明性を低下させることなく、硬化物の機械的強度を確保し、また、線膨張率を低下させて、高い接着信頼性を実現することができる。上記エポキシ樹脂と上記無機フィラーとの屈折率の差が0.1を超えると、得られる半導体接合用接着剤を透過する光の散乱が増し、半導体接合用接着剤の透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となる。
上記エポキシ樹脂と上記無機フィラーとの屈折率の差は、0.05以下であることが好ましい。
【0031】
本発明2の半導体接合用接着剤に用いる無機フィラーは、上記エポキシ樹脂との屈折率の差が0.1以下である限り特に限定されないが、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
なかでも、一般的に無機フィラーとして用いられるシリカに類似した物性を有することから、ケイ素−アルミニウム−ホウ素複合酸化物、ケイ素−チタン複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物がより好ましい。
【0032】
本発明2の半導体接合用接着剤に用いる無機フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が30μmである。上記無機フィラーの平均粒子径が0.1μm未満であると、半導体接合用接着剤に無機フィラーを充填することが困難となったり、得られる半導体接合用接着剤の流動性が低下して、接着性能が低下したりすることがある。上記無機フィラーの平均粒子径が30μmを超えると、得られる半導体接合用接着剤の透明性が低下し、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。また、上記無機フィラーの平均粒子径が30μmを超えると、無機フィラーの平均粒子径が大きいために電極接合不良が生じることがある。
特に、平均粒子径が0.5μm〜5μmの無機フィラーを用いることで、半導体接合用接着剤の透明性を更に高めることができる。また、必要に応じて、上記無機フィラーとして、平均粒子径がナノメートルサイズの無機フィラーを用いてもよい。
【0033】
本発明の半導体接合用接着剤に用いる無機フィラーは、カップリング剤により表面処理されていることが好ましい。
表面処理することで、上記無機フィラーの凝集を抑制し、上記エポキシ樹脂等の樹脂との親和性を高めることができる。これにより、得られる半導体接合用接着剤の接合信頼性を更に高めることができ、また、粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を更に抑制し、塗工性、及び、表面に突起電極を有するウエハに対する半導体接合用接着剤からなる接着剤層の追従性を更に向上させることができる。
【0034】
上記カップリング剤は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられ、なかでも、上記エポキシ樹脂との親和性及び分散性の観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0035】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルシラン、エポキシシラン、スチリルシラン、(メタ)アクリロキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、イミダゾールシラン、イソシアネートシラン、アルコキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、アルコキシシランが好ましい。
上記アルコキシシランは特に限定されないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが特に好ましい。
これらのカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0036】
本発明の半導体接合用接着剤における無機フィラーの含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が350重量部である。上記無機フィラーの配合量が30重量部未満であると、半導体接合用接着剤の硬化物の機械的強度を確保したり、線膨張率を低下させたりする効果が充分に得られないことがある。上記無機フィラーの配合量が350重量部を超えると、得られる半導体接合用接着剤の粘度が上昇し、接着工程での表面濡れ性が劣り、接着強度に劣ることがある。上記無機フィラーの配合量は、上記エポキシ樹脂100重量部に対するより好ましい下限が40重量部、更に好ましい下限が60重量部、より好ましい上限が225重量部、更に好ましい上限が150重量部、更にもっと好ましい上限が120重量部である。
【0037】
また、上記無機フィラーは、上記接着剤層中の含有量の好ましい下限が10重量%、好ましい上限が70重量%である。上記無機フィラーの上記接着剤層中の含有量が10重量%未満であると、得られる接着剤層の硬化物の線膨張率が上昇し、高い接合信頼性を実現することが困難となることがある。上記無機フィラーの上記接着剤層中の含有量が70重量%を超えると、得られる接着剤層の硬化物は、弾性率が上昇するため熱応力を緩和することができず、高い接合信頼性を実現することが困難となり、また、上記接着剤層を形成するための接着剤溶液の粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を充分に抑制することができないことがある。上記無機フィラーの上記接着剤層中の含有量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は60重量%であり、更に好ましい下限は30重量%、更に好ましい上限は55重量%であり、特に好ましい下限は40重量%である。
【0038】
本発明の半導体接合用接着剤は、硬化剤を含有する。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、酸無水物系硬化剤が好ましい。
上記酸無水物系硬化剤を用いることで、得られる半導体接合用接着剤の硬化物の酸性度を中和することができ、電極の信頼性を高めることができる。また、上記酸無水物系硬化剤は熱硬化速度が速いため、得られる半導体接合用接着剤の硬化物におけるボイドの発生を効果的に低減することができ、高い接合信頼性を実現することができる。
【0039】
また、後述するように、硬化促進剤として常温で液状のイミダゾール化合物を用いる場合には、硬化剤としてビシクロ骨格を有する酸無水物を併用することにより、高い熱硬化性と優れた貯蔵安定性及び熱安定性とを両立することができる。これは、立体的に嵩高いビシクロ骨格を有する酸無水物を含有することにより、硬化反応の反応性が抑えられるためと考えられる。また、上記ビシクロ骨格を有する酸無水物は上記エポキシ樹脂に対する溶解性が高いことから、本発明の半導体接合用接着剤の透明性をより向上させることができる。更に、上記ビシクロ骨格を有する酸無水物を用いることにより、硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、電気特性等を発現することができる。
【0040】
上記ビシクロ骨格を有する酸無水物は特に限定されないが、下記一般式(a)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0041】
【化2】

【0042】
一般式(a)中、Xは単結合又は二重結合の連結基を表し、Rはメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、ハロゲン基、アルコキシ基又は炭化水素基を表す。
【0043】
上記一般式(a)で表される構造を有する化合物として、具体的には、例えば、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記ビシクロ骨格を有する酸無水物の市販品は特に限定されず、例えば、YH−307及びYH−309(ジャパンエポキシレジン社製)、リカシッドHNA−100(新日本理化社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合には、本発明の半導体接合用接着剤中に含まれるエポキシ基の総量に対する好ましい下限が60当量、好ましい上限が110当量である。上記硬化剤の配合量が60当量未満であると、得られる半導体接合用接着剤は、充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の配合量が110当量を超えても特に半導体接合用接着剤の硬化性に寄与しない。上記硬化剤の配合量のより好ましい下限は70当量、より好ましい上限は100当量である。
【0046】
本発明の半導体接合用接着剤は、硬化速度や硬化物の物性等を調整する目的で、更に、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、硬化速度や硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
【0047】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
また、上記イミダゾール系硬化促進剤は、常温で液状のイミダゾール化合物を含有してもよい。本明細書中、常温で液状であるとは、温度10〜30℃において、液体状態であることを意味する。
【0049】
一般に、上記イミダゾール系硬化促進剤を配合することで、得られる半導体接合用接着剤を比較的低温で短時間に熱硬化させることができるが、上記イミダゾール系硬化促進剤の多くは常温で固体であり、微小に粉砕されて配合されることから、透明性低下の原因ともなっている。これに対し、上記常温で液状のイミダゾール化合物を含有することで、得られる半導体接合用接着剤の透明性を更に高めることができ、例えば、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が容易となる。
また、上述のように上記常温で液状のイミダゾール化合物は、立体的に嵩高いビシクロ骨格を有する酸無水物と併用して使用されることが好ましい。これにより、得られる半導体接合用接着剤の貯蔵安定性及び熱安定性を高めることができる。
更に、上記常温で液状のイミダゾール化合物を用いることで、イミダゾール化合物を微小に粉砕する必要がなく、より容易に半導体接合用接着剤を製造することができる。
【0050】
上記常温で液状のイミダゾール化合物は、常温で液状であれば特に限定されず、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ−(シアノエトキシメチル)イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
上記誘導体は特に限定されず、例えば、カルボン酸塩、イソシアヌル酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩等の塩、エポキシ化合物との付加物等が挙げられる。
これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、2−エチル−4−メチルイミダゾール及びその誘導体が好ましい。
【0051】
上記常温で液状のイミダゾール化合物の市販品は特に限定されず、例えば、2E4MZ、1B2MZ、1B2PZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、2PHZ−CN、1M2EZ、1B2EZ(以上、四国化成工業社製)、EMI24(ジャパンエポキシレジン社製)、フジキュア7000(富士化成社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
本発明の半導体接合用接着剤が上記常温で液状のイミダゾール化合物を含有する場合、上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化剤100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量が5重量部未満であると、得られる半導体接合用接着剤は、熱硬化するために高温で長時間の加熱を必要とすることがある。上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量が50重量部を超えると、得られる半導体接合用接着剤は、貯蔵安定性及び熱安定性が低下することがある。
上記常温で液状のイミダゾール化合物の配合量は、上記硬化剤100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が30重量部である。
【0053】
本発明の半導体接合用接着剤は、光重合開始剤を含有してもよい。
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。このような光重合開始剤として、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記光重合開始剤の配合量は特に限定はされないが、上記光硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は5重量部である。光重合開始剤の配合量が0.05重量部未満であると、得られる半導体接合用接着剤を用いてフィルム等を作製した場合、接着剤層を半硬化させるためにエネルギー線を照射しても、充分に半硬化させることができないことがある。上記光重合開始剤は5重量部を超えて配合しても特に光硬化性に寄与しない。
【0055】
本発明の半導体接合用接着剤は、更に、必要に応じて、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂等の一般的な樹脂を含有してもよく、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、増粘剤、消泡剤等の添加剤を含有してもよい。
【0056】
本発明の半導体接合用接着剤は、ヘイズ値が70%以下であることが好ましい。
上記範囲のヘイズ値とすることで、半導体接合用接着剤の透明性を高め、カメラによる半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとし、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0057】
上記ヘイズ値が70%を超えると、半導体接合用接着剤の透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となる。本発明の半導体接合用接着剤は、ヘイズ値が60%以下であることがより好ましい。
なお、本明細書中、半導体接合用接着剤のヘイズ値とは、該半導体接合用接着剤からなる厚み40μmの接着剤層の両面を、2枚の厚み25μmのPETフィルム間に挟み込んで得られた半導体接合用接着フィルムを、村上色彩技術研究所社製「HM−150」等のヘイズメータを用いて測定したときのヘイズ値(%)を意味する。
【0058】
本発明の半導体接合用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ樹脂、上記硬化剤、上記無機フィラー及び必要に応じて添加される各材料を、ホモディスパー等を用いて攪拌混合する方法が挙げられる。
【0059】
本発明の半導体接合用接着剤の用途は特に限定されないが、例えば、半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングする際の接着剤として好適に用いられる。なかでも、表面に電極として複数の突起を有するフリップチップを実装する際の接着剤、アンダーフィル材、又は、アンダーフィル材を兼ねた接着剤として、好適に用いられる。
本発明の半導体接合用接着剤は透明性が高いことから、本発明の半導体接合用接着剤を用いて半導体チップをボンディングする際には、カメラによるパターン又は位置表示の認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0060】
本発明の半導体接合用接着剤は、例えば、半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングする際に用いられる接着フィルムの接着剤層にも好適に用いられる。
本発明の半導体接合用接着剤からなる接着剤層と、基材層とを有する半導体接合用接着フィルムもまた、本発明の1つである。
【0061】
上記接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は150μmである。上記接着剤層の厚みが5μm未満であると、得られる接着剤層の硬化物の接着力が不足することがある。上記接着剤層の厚みが150μmを超えると、接着剤層が厚くなりすぎ、透明性が低下して、半導体チップをボンディングする際、カメラによるパターン又は位置表示の認識が困難となることがある。上記接着剤層の厚みは、より好ましい下限は15μm、より好ましい上限は50mである。
【0062】
上記基材層は、本発明の効果を妨げない程度に透明であれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、アクリレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の樹脂からなる層が挙げられる。
【0063】
上記基材層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は12μm、好ましい上限は300μmである。上記基材層の厚みが12μm未満であると、得られる半導体接合用接着フィルムが取り扱いにくかったり、バックグラインドテープ機能を備えた非導電性フィルム(BG−NCF)として用いる場合に、充分な電極保護効果が得られなかったりすることがある。上記基材層の厚みが300μmを超えると、得られる半導体接合用接着フィルムの加工性が悪かったり、梱包時ロール状にしにくかったり、BG−NCFとして用いる場合に、ウエハの厚みのばらつきが大きくなったりすることがある。
なお、本明細書中、バックグラインドテープ機能を備えた非導電性フィルム(BG−NCF)とは、少なくとも基材層と接着剤層とを有するフィルムであって、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するウエハの突起電極を有する面に貼付されてバックグラインドテープとして用いられ、その後、基材層だけが剥離され、ウエハ上に残った接着剤層は半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングする際に用いられるフィルムをいう。
【0064】
本発明の半導体接合用接着フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ樹脂、上記無機フィラー、上記硬化剤及び必要に応じて添加される各材料を適当な溶媒で希釈し、ホモディスパー等を用いて攪拌混合することにより得られる本発明の半導体接合用接着剤を含有する半導体接合用接着剤溶液を、上記基材層上に塗工、乾燥させる方法等が挙げられる。
上記塗工する方法は特に限定されず、例えば、コンマコート、グラビアコート、キャスティング等を用いる方法が挙げられる。なお、上述のように、本発明の半導体接合用接着剤は、所定の無機フィラーを所定量含有することで粘度の増大、及び、該粘度の増大による流動性の低下を抑制することができるため、本発明の半導体接合用接着剤を含有する半導体接合用接着剤溶液は、塗工性に優れる。
【0065】
本発明の半導体接合用接着フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、半導体チップを基板又は他の半導体チップにボンディングする際の接着フィルム等として用いられることが好ましい。なかでも、本発明の半導体接合用接着フィルムは、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するフリップチップを実装する際の接着フィルム、アンダーフィル材を兼ねた接着フィルム、BG−NCF等に用いられることがより好ましい。
【0066】
なお、本発明の半導体接合用接着フィルムをBG−NCFとして用いる場合には、該半導体接合用接着フィルムの接着剤層が付着したウエハをダイシングする工程が行われ、このとき、ダイシングする箇所を示すウエハ表面の切断線の認識もまた、パターン又は位置表示と同様に接着剤層の上からカメラにより行われる。従って、本発明の半導体接合用接着剤の高い透明性、及び、それによる本発明の半導体接合用接着フィルムの接着剤層の高い透明性により、半導体ウエハダイジング時のカメラによる切断線の認識もまた容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0067】
本発明の半導体接合用接着フィルムを用いる半導体チップの実装方法であって、本発明の半導体接合用接着フィルムの接着剤層と、表面に突起電極が形成されているウエハの突起電極形成面とを貼り合わせる工程1と、前記ウエハを、本発明の半導体接合用接着フィルムに固定した状態で裏面から研削する工程2と、前記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明の半導体接合用接着フィルムから、基材フィルムを剥離して、接着剤層が付着したウエハを得る工程3と、前記接着剤層が付着したウエハ表面の切断線を、カメラに自動的に認識させて、前記接着剤層が付着したウエハを前記切断線に沿ってダイシングして、接着剤層が付着した半導体チップに個片化する工程4と、前記接着剤層が付着した半導体チップのパターン又は位置表示と、基板又は他の半導体チップのパターン又は位置表示とを、カメラに自動的に認識させて位置合わせを行い、前記接着剤層が付着した半導体チップを、接着剤層を介して前記基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5とを有する半導体チップの実装方法もまた、本発明の1つである。
なお、このような半導体チップの実装方法によって実装される表面に突起電極を有する半導体チップとして、例えば、フリップチップ、TSV等が挙げられる。
【0068】
本発明の半導体チップの実装方法においては、まず、本発明の半導体接合用接着フィルムの接着剤層と、表面に突起電極が形成されているウエハの突起電極形成面とを貼り合わせる工程1を行う。
上記ウエハは特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、金、銅、銀−錫ハンダ、アルミニウム、ニッケル等からなる突起電極を有するウエハが挙げられる。
【0069】
上記工程1は常圧下で行ってもよいが、より密着性を向上させるためには、1torr程度の真空下で行うことが好ましい。
上記貼り合わせる方法は特に限定されないが、ラミネーターを用いる方法が好ましい。
【0070】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記ウエハを、本発明の半導体接合用接着フィルムに固定した状態で裏面から研削する工程2を行う。これにより、上記ウエハを所望の厚みに研削する。
また、上記工程2を行う前には、上記突起電極は上記接着剤層中に埋もれている。そして、上記工程2の研削時にかかる圧力によって上記突起電極の頂部から接着剤が押し除かれ、これにより、後の工程において上記基材層を剥離した後には、上記突起電極の頂部が上記接着剤層から露出することができる。
【0071】
上記研削する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、市販の研削装置(例えば、Disco社製の「DFG8540」等)を用いて、2400rpmの回転で3〜0.2μm/sの研削量の条件にて研削を行い、最終的にはCMPで仕上げる方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の半導体チップの実装方法においては、上記工程2の後工程3を行う前に、上記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明の半導体接合用接着フィルムにエネルギー線を照射して、上記接着剤層を半硬化させる工程を行ってもよい。なお、このようにして上記接着剤層を半硬化させるためには、上記接着剤層が、例えば光照射等のエネルギー線照射により硬化する化合物を含有している必要がある。
エネルギー線を照射して上記接着剤層を半硬化させることにより、上記接着剤層の粘着力が低下し、後の工程における上記基材層の剥離が容易になる。また、このとき、上記接着剤層は完全な硬化ではなく「半硬化」することから、上記接着剤層は、後の工程における基板又は他の半導体チップとの接着時には、なお充分な接着力を発揮することができる。なお、本明細書において「半硬化」とは、ゲル分率が10〜60重量%であることを意味する。
【0073】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明の半導体接合用接着フィルムから、上記基材フィルムを剥離して、接着剤層が付着したウエハを得る工程3を行う。
このとき、上記接着剤層の接着剤は、上記突起電極の表面よりも上記基材層側に付着しやすいことから、上記突起電極の表面に残存する接着剤の量は抑制される。
【0074】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記接着剤層が付着したウエハ表面の切断線を、カメラに自動的に認識させて、上記接着剤層が付着したウエハを上記切断線に沿ってダイシングして、接着剤層が付着した半導体チップに個片化する工程4を行う。
上記ダイシングの方法は特に限定されず、例えば、従来公知の砥石等を用いて切断分離する方法等が挙げられる。
【0075】
上記工程4においては、ダイシングする箇所を示すウエハ表面の切断線の認識は、上記接着剤層の上からカメラにより行われる。本発明の半導体チップの実装方法においては、上記接着剤層の透明性が高いことから、カメラによる切断線の認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0076】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記接着剤層が付着した半導体チップのパターン又は位置表示と、基板又は他の半導体チップのパターン又は位置表示とを、カメラに自動的に認識させて位置合わせを行い、上記接着剤層が付着した半導体チップを、接着剤層を介して上記基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5を行う。
【0077】
上記工程5においては、上記接着剤層が付着した半導体チップのパターン又は位置表示と、上記基板又は他の半導体チップのパターン又は位置表示との位置合わせは、上記接着剤層の上からカメラにより行われる。本発明の半導体チップの実装方法においては、上記接着剤層の透明性が高いことから、カメラによるパターン又は位置表示の認識が容易となり、半導体装置の生産性を向上させることができる。
なお、本明細書中、半導体チップの実装とは、基板上に半導体チップを実装する場合と、基板上に実装されている1以上の半導体チップ上に、更に半導体チップを実装する場合との両方を含む。
【0078】
上記工程5により半導体チップを実装した後、更に、加熱することによって上記接着剤層を完全に硬化させる工程6を行うことにより、より安定した接着を実現することができる。
【0079】
上記の説明においては、接着剤層が付着したウエハを得る工程3を行った後、該接着剤層が付着したウエハをダイシングして、接着剤層が付着した半導体チップに個片化する工程4を行った。
この他の態様として、工程3で得られた接着剤層が付着したウエハ上に、接着剤層を介して他のウエハを積層してウエハ積層体を製造し、得られたウエハ積層体を一括的にダイシングして、接着剤層が付着した半導体チップの積層体を得てもよい。
【0080】
本発明の半導体接合用接着フィルムは透明性が高いことから、本発明の半導体接合用接着フィルムを用いることで、カメラによるウエハ表面の切断線、及び、半導体チップのパターン又は位置表示の認識が容易となる。従って、本発明の半導体チップの実装方法によれば、半導体装置を生産性良く製造することができる。
また、本発明の半導体接合用接着フィルムは、上記接着剤層の硬化物の線膨張率が低く、高い接合信頼性を実現することができる。従って、本発明の半導体チップの実装方法によれば、接合信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
本発明の半導体チップの実装方法を用いて製造される半導体装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、透明性が高く、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとする半導体接合用接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0083】
(実施例1〜9、比較例1〜5)
(1)半導体接合用接着フィルムの製造
表1及び表2の組成に従って、下記に示す材料をメチルエチルケトンに加えて固形分濃度が50重量%となるように調整し、ホモディスパーを用いて攪拌混合することにより、半導体接合用接着剤溶液を調製した。得られた半導体接合用接着剤溶液を、基材層としての厚み25μmの離型処理したPETフィルム上にアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗工し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み40μmの接着剤層を有する半導体接合用接着フィルムを得た。
【0084】
得られた半導体接合用接着フィルムの接着剤層側に更に厚み25μmのPETフィルムを積層し、厚み40μmの接着剤層の両面を、2枚の厚み25μmのPETフィルム間に挟み込んだ試片を得た。得られた試片をヘイズメータ(HM−150、村上色彩技術研究所社製)に設置し、ヘイズ値(%)を測定した。
得られたヘイズ値(%)を表1、表2に示す。
【0085】
(エポキシ樹脂)
・HP−7200HH(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
・EXA−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
【0086】
(エポキシ基含有アクリル樹脂)
・SK−2−78(2−エチルヘキシルアクリレートと、イソボルニルアクリレートと、ヒドロキシエチルアクリレートと、グリシジルメタクリレートとの共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加させたもの、分子量52万、二重結合当量0.9meq/g、エポキシ当量1650、新中村化学社製)
【0087】
(硬化剤)
・YH−309(酸無水物系硬化剤、JER社製)
【0088】
(硬化促進剤)
・フジキュア7000(常温で液状のイミダゾール化合物、富士化成社製)
【0089】
(無機フィラー)
(1)フィラーA
・SX009−MJF(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.05μm、アドマテックス社製)
(2)フィラーB
・SE−1050−SPT(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.3μm、アドマテックス社製)
・SE−2050−SPJ(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.5μm、アドマテックス社製)
(3)その他の無機フィラー
・SE−4050−SPE(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径1μm、アドマテックス社製)
【0090】
(その他)
・AC4030(応力緩和ゴム系高分子、ガンツ化成社製)
【0091】
(2)半導体チップの実装
直径20cm、厚み700μmであり、表面に高さ40μm、幅100μm×100μmの正方形の銅バンプが400μmピッチで多数形成されている半導体ウエハ(シリコンウエハ)を用意した。半導体接合用接着フィルムから接着剤層を保護するPETフィルムを剥がし、真空ラミネーターを用いて、真空下(1torr)、70℃で半導体ウエハの銅バンプを有する面に半導体接合用接着フィルムを貼り付けた。
【0092】
次いで、得られた半導体接合用接着フィルムが貼付された半導体ウエハを研磨装置に取りつけ、半導体ウエハの厚さが約100μmになるまで裏面から研磨した。このとき、研磨の摩擦熱により半導体ウエハの温度が上昇しないように、半導体ウエハに水を散布しながら作業を行った。研磨後はCMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスでアルカリのシリカ分散水溶液による研磨で鏡面化加工を行った。
【0093】
半導体接合用接着フィルムが貼付された半導体ウエハを研磨装置から取り外し、半導体接合用接着フィルムが貼付されていない側の面にダイシングテープ「PEテープ♯6318−B」(積水化学社製、厚み70μm、基材ポリエチレン、粘着材ゴム系粘着材10μm)を貼り付け、ダイシングフレームにマウントした。半導体接合用接着フィルムの接着剤層から基材層を剥離して、接着剤層が付着した研磨済の半導体ウエハを得た。
【0094】
ダイシング装置「DFD651」(DISCO社製)を用いて、送り速度50mm/秒で、接着剤層が付着した半導体ウエハを10mm×10mmのチップサイズに分割して個片化し、接着剤層が付着した半導体チップを得た。
【0095】
得られた接着剤層が付着した半導体チップを熱風乾燥炉内にて80℃で10分間乾燥後、ボンディング装置(澁谷工業社製、DB−100)を用いて荷重0.15MPa、温度230℃で10秒間、基板上に圧着し、次いで、190℃で30分間かけて硬化させ、半導体チップ実装体を得た。
【0096】
(評価)
実施例、比較例で得られた半導体接合用接着剤溶液、半導体接合用接着フィルム及び半導体チップ実装体について以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0097】
(1)塗工性評価
(1−1)溶液粘度測定
半導体接合用接着剤溶液について、E型粘度計(VISCOMETER TV−22、東機産業社製、使用ローターφ48mm、設定温度25℃)を用いて、回転数5rpmにおける粘度(mPa・s)を測定した。
【0098】
(1−2)フィルム外観
半導体接合用接着フィルムの状態を目視にて観察し、塗工スジが見られず外観が良好であった場合を○、塗工スジが発生していたものを×とした。
【0099】
(2)カメラによる自動認識
半導体接合用接着フィルムを、真空ラミネーター(ATM−812、タカトリ社製)を用いて半導体ウエハの銅バンプを有する面に貼り合わせ、試験サンプルを得た。10個の試験サンプルについて、自動ダイシング装置(DFT6361、DISCO社製)で個片化した後、自動ボンディング装置(FC3000S、東レエンジニアリング社製)にマウントし、カメラによって半導体チップのパターンを認識可能か否かについて観察した。
10個全ての試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を○、7〜9個の試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を△、6個以下の試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を×とした。
【0100】
(3)接合信頼性評価
(3−1)線膨張率測定
半導体接合用接着フィルムを190℃30分で硬化させ、測定装置「TMA/SS6000」(Seiko Instruments社製)を用いて、引張りモード、30〜300℃(5℃/min)×2サイクル、チャック間距離10mmの測定条件で、得られた硬化物の線膨張率を測定した。
2サイクル目のデータから40℃接点における線膨張率(ppm)を読み取り、α1とした。
【0101】
(3−2)耐リフロー性試験
半導体チップ実装体を120℃、85RH%に96時間放置して吸湿させた後、半田リフロー炉(プレヒート150℃×100秒、リフロー[最高温度260℃])に3回通過させた後、半導体チップの基板からの剥離が発生した半導体チップ実装体の個数を確認した。
20個の半導体チップ実装体のうち、剥離が発生した半導体チップ実装体が0個であった場合を○、1〜3個であった場合を△、4〜20個であった場合を×とした。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
(実施例10〜20、比較例6〜8)
表3、表4の組成に従って、下記に示す各材料を、ホモディスパーを用いて攪拌混合して半導体接合用接着剤を調製した。なお、エポキシ樹脂と無機フィラーとの屈折率の差を表3、表4に示す。
【0105】
(エポキシ樹脂)
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200HH、DIC社製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004AF、ジャパンエポキシレジン社製)
・ナフタレン型エポキシ樹脂(上記一般式(1)において、R及びRがH、m及びnが1である化合物、EXA−4710、DIC社製)
【0106】
(光硬化性化合物)
・光硬化性官能基と熱硬化性官能基とを有するアクリル樹脂(2−エチルヘキシルアクリレートと、イソボルニルアクリレートと、ヒドロキシエチルアクリレートと、グリシジルメタクリレートとの共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加させたもの、分子量52万、二重結合当量0.9meq/g、エポキシ当量1650、SK−2−78、新中村化学社製)
【0107】
(硬化剤)
・酸無水物(YH−307、ジャパンエポキシレジン社製)
【0108】
(光重合開始剤)
・光ラジカル発生剤(Esacure1001、Lamberti社製)
【0109】
(無機フィラー)
・シリカ−チタニア複合酸化物(トクヤマ社製、TSP0452、平均粒子径0.4μm)
・パイレックス(登録商標)ガラス1(ユニチカ社製、UBS0010E、平均粒子径4μm)
・パイレックス(登録商標)ガラス2(日本フリットガラス社製、CF0033−05、平均粒子径4μm)
・球状シリカ1(トクヤマ社製、0.4SS04、平均粒子径0.4μm)
・球状シリカ2(アドマテックス社製、SE4050MO、平均粒子径1μm)
・球状シリカ3(トクヤマ社製、UF305、平均粒子径3μm)
【0110】
(その他)
・イミダゾール化合物(2MA−OK、四国化成工業社製)
・応力緩和ゴム系高分子(AC4030、ガンツ化成社製)
・イミダゾールシランカップリング剤(SP−1000、日鉱マテリアル社製)
【0111】
(評価)
実施例、比較例で得られた半導体接合用接着剤を溶剤で希釈した接着剤組成物を、離型処理したPETフィルム上にアプリケーター(テスター産業社製)で塗工し、乾燥させて、標準品として厚み40μmの接着フィルムを得た。
得られた接着フィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0112】
(1)ヘイズ値の測定
得られた厚み40μmの接着フィルムの両面を、2枚の厚み25μmのPETフィルム間に挟み込んで試片を得た。得られた試片をヘイズメータ(HM−150、村上色彩技術研究所社製)に設置し、ヘイズ値(%)を測定した。ヘイズ値が0%以上60%未満であった場合を○、60%以上100%以下であった場合を×として評価した。
【0113】
(2)カメラによる自動認識の評価
得られた厚み40μmの接着フィルムを真空ラミネーター(ATM−812、タカトリ社製)を用いて半導体ウエハに貼り合わせて試験サンプルを得た。10個の試験サンプルについて、自動ダイシング装置(DFT6361、DISCO社製)で個片化した後、自動ボンディング装置(FC3000S、東レエンジニアリング社製)にマウントし、カメラによって半導体チップのパターンを認識可能か否かについて観察した。10個全ての試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を○、7〜9個の試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を△、6個以下の試験サンプルで半導体チップのパターンを認識可能であった場合を×として評価した。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
(参考例1〜4)
表5に示す組成に従って下記に示す材料を固形分濃度50重量%となるようにメチルエチルケトンに加え、ホモディスパーを用いて攪拌混合して、熱硬化性樹脂組成物の配合液を調製した。
【0117】
(エポキシ樹脂)
・HP−7200HH(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
・EXA−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
【0118】
(エポキシ基含有アクリル樹脂)
・SK−2−78(2−エチルヘキシルアクリレートと、イソボルニルアクリレートと、ヒドロキシエチルアクリレートと、グリシジルメタクリレートとの共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加させたもの、分子量52万、二重結合当量0.9meq/g、エポキシ当量1650、新中村化学社製)
【0119】
(酸無水物)
・YH−306(ビシクロ骨格をもたない酸無水物、JER社製)
・YH−309(ビシクロ骨格を有する酸無水物、JER社製)
・HNA−100(ビシクロ骨格を有する酸無水物、新日本理化社製)
【0120】
(イミダゾール化合物)
・2MAOK−DS(常温で固体のイミダゾール化合物、四国化成工業社製)
・フジキュア7000(常温で液状のイミダゾール化合物、富士化成社製)
【0121】
(その他)
・MT−10(フュームドシリカ、トクヤマ社製)
・AC4030(応力緩和ゴム系高分子、ガンツ化成社製)
【0122】
(評価)
参考例で得られた熱硬化性樹脂組成物の配合液を、離型処理したPETフィルム上にアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗工し、100℃、5分で乾燥させて、厚み40μmの接着フィルムを得た。得られた接着フィルムについて、以下の評価を行った。
結果を表5に示す。
【0123】
(1)貯蔵安定性
貯蔵安定性は、下記手順にて室温で2週間保管した後のゲル分率(重量%)を測定することにより評価を行った。
得られた接着フィルムを室温で2週間保管した後、50mm×100mmの平面長方形状の試験片を切り出し、重量を測定した。この試験片を酢酸エチル中に投入し、室温で24時間浸漬した後、試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率(重量%)を算出した。
ゲル分率(重量%)=W2/W1×100 (1)
式(1)中、W1は浸漬前の試験片の重量を表し、W2は浸漬、乾燥後の試験片の重量を表す。ゲル分率が10重量%未満であった場合を○、10重量%以上であった場合を×として評価した。
【0124】
(2)熱安定性
得られた接着フィルムを一部採取し、測定装置「DSC6220」(Seiko Instruments社製)を用いて、30〜300℃(5℃/min)、N=50ml/minの測定条件でDSC測定を行った。
発熱ピークの立ち上がりを観測し、発熱開始温度が100℃以上であった場合を○、100℃未満であった場合を×として評価した。
【0125】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、透明性が高く、半導体チップボンディング時のパターン又は位置表示の認識を容易なものとする半導体接合用接着剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、無機フィラー及び硬化剤を含有する半導体接合用接着剤であって、
前記無機フィラーは、半導体接合用接着剤中の含有量が30〜70重量%であり、かつ、平均粒子径が0.1μm未満のフィラーAと、平均粒子径が0.1μm以上1μm未満のフィラーBとを含有し、
前記フィラーAは、前記フィラーBに対する重量比が1/9〜6/4である
ことを特徴とする半導体接合用接着剤。
【請求項2】
無機フィラーは、球状シリカであることを特徴とする請求項1記載の半導体接合用接着剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂と、無機フィラーと、硬化剤とを含有する半導体接合用接着剤であって、前記エポキシ樹脂と前記無機フィラーとの屈折率の差が0.1以下であることを特徴とする半導体接合用接着剤。
【請求項4】
無機フィラーは、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の半導体接合用接着剤。
【請求項5】
無機フィラーは、カップリング剤により表面処理されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の半導体接合用接着剤。
【請求項6】
硬化剤がビシクロ骨格を有する酸無水物であって、更に硬化促進剤として常温で液状のイミダゾール化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の半導体接合用接着剤。
【請求項7】
ビシクロ骨格を有する酸無水物は、下記一般式(a)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする請求項6記載の半導体接合用接着剤。
【化1】

一般式(a)中、Xは単結合又は二重結合の連結基を表し、Rはメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、ハロゲン基、アルコキシ基又は炭化水素基を表す。
【請求項8】
更に、エポキシ樹脂と反応する官能基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の半導体接合用接着剤。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の半導体接合用接着剤からなる接着剤層と、基材層とを有することを特徴とする半導体接合用接着フィルム。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の半導体接合用接着剤からなる接着剤層と、基材層とを有する半導体接合用接着フィルムを用いる半導体チップの実装方法であって、
前記半導体接合用接着フィルムの接着剤層と、表面に突起電極が形成されているウエハの突起電極形成面とを貼り合わせる工程1と、
前記ウエハを、前記半導体接合用接着フィルムに固定した状態で裏面から研削する工程2と、
前記研削後のウエハに貼り合わせられた前記半導体接合用接着フィルムから、基材フィルムを剥離して、接着剤層が付着したウエハを得る工程3と、
前記接着剤層が付着したウエハ表面の切断線を、カメラに自動的に認識させて、前記接着剤層が付着したウエハを前記切断線に沿ってダイシングして、接着剤層が付着した半導体チップに個片化する工程4と、
前記接着剤層が付着した半導体チップのパターン又は位置表示と、基板又は他の半導体チップのパターン又は位置表示とを、カメラに自動的に認識させて位置合わせを行い、前記接着剤層が付着した半導体チップを、接着剤層を介して前記基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5とを有する
ことを特徴とする半導体チップの実装方法。
【請求項11】
更に、工程5により半導体チップを実装した後、加熱することにより接着剤層を完全に硬化させる工程6を有することを特徴とする請求項10記載の半導体チップの実装方法。
【請求項12】
請求項10又は11記載の半導体チップの実装方法を用いて製造されることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2011−202177(P2011−202177A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120859(P2011−120859)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2010−511841(P2010−511841)の分割
【原出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】