半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法
【課題】光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能な半導体発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板1と、基板1上に形成されたn型半導体層3、n型半導体層3に積層された発光層4及び発光層4に積層されたp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、積層半導体層15の凹凸部33を成す凸部33a上に積層された、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8と、少なくとも高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、を具備してなる半導体発光素子11を用いることにより、上記課題を解決できる。
【解決手段】基板1と、基板1上に形成されたn型半導体層3、n型半導体層3に積層された発光層4及び発光層4に積層されたp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、積層半導体層15の凹凸部33を成す凸部33a上に積層された、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8と、少なくとも高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、を具備してなる半導体発光素子11を用いることにより、上記課題を解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法に関する。特に、光取り出し面に凹凸部が形成された半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、短波長光発光素子用の半導体材料として窒化物系半導体であるGaN系化合物半導体材料が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶をはじめ、種々の酸化物やIII−V族化合物を基板として、この基板上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
【0003】
GaN系化合物半導体材料の特性としては、横方向への電流拡散が小さいことが挙げられる。このため、電極直下の半導体にしか電流が注入されず、発光層で発光した光は電極に遮られて外部に取り出されない。そこで、このような発光素子では、通常、透光性正極が用いられ、透光性正極を通して光が取り出される。
【0004】
従来の透光性正極は、NiやCo等の酸化物と、コンタクト金属としてAu等とを組み合わせた層構造とされていた。また、近年ではITO等、より導電性の高い酸化物を使用することにより、コンタクト金属の膜厚を極力薄くして透光性を高めた層構造が正極として採用され、発光層からの光を効率よく外部に取り出すことができる構成とされている。
【0005】
このような発光素子の出力を向上させるための指標として、外部量子効率が用いられる。この外部量子効率が高ければ、出力の高い発光素子と言うことができる。
外部量子効率は、内部量子効率と光取り出し効率を掛け合わせたものとして表される。内部量子効率とは、素子に注入した電流のエネルギーのうち、光に変換される割合である。一方、光取り出し効率とは、半導体結晶内部で発生した光のうち、外部に取り出すことができる割合である。
【0006】
上述のような発光素子の内部量子効率は、結晶状態の改善や構造の検討によって70〜80%程度まで向上していると言われ、注入電流量に対して十分な効果が得られている。
しかしながら、GaN系化合物半導体のみならず、発光ダイオード(LED)においては、一般的に注入電流に対する光取り出し効率が押しなべて低く、注入電流に対しての内部発光を十分に外部に取り出しているとは言い難い。
【0007】
光取り出し効率が低いのは、GaN系化合物半導体における発光層の屈折率が約2.5と空気の屈折率1に対して非常に高く、臨界角が約25°と小さいため、結晶内で反射・吸収を繰り返し、光が外部に取り出せない事が原因である。
【0008】
発光素子の光取り出し効率を向上させるため、光取り出し面を粗面化し、光の取り出し面にさまざまな角度を設けることにより、光の取り出し効率を向上させたものが提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、エッチング等により窒化ガリウム系化合物半導体の最上層の表面が非鏡面とされた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が開示されている。
また、特許文献2には、ITOの表面に凹凸が形成された窒化物半導体発光素子が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献1又は2に記載の発光素子において、前記半導体の最上層の表面(光取り出し面)などをエッチングにより粗面化すると、エッチングダメージにより、駆動電圧が極端に大きくなるという問題があった。
【0011】
特許文献3には、p型GaN層の表面をエッチングで凹凸に加工し、さらに、凹凸面の全面に、Mgなどの金属を高濃度で添加させた発光素子が開示されている。
特許文献3では、例えば、公知のフォトリソグラフィー法等を用いてストライプ状などにパターン加工したレジスト層をマスクとして、前記p型GaN層をエッチングすることにより、その表面を凹凸面からなる粗面とした後、その凹凸面にMg層を積層し、更にMg層をアニールしてMgを拡散させて、前記p型GaN層の表面側にMgを添加している。
【0012】
しかし、特許文献3に開示された発光素子は、前記p型GaN層の表面の全面にMgが添加されるため、前記p型GaN層上の透明電極にボンディングパッドを介して電圧を印加した場合に、透明電極全面に電流が拡散されず、ボンディングパッド直下の半導体層へ電流が集中してしまい、発光素子の発光効率を向上できない場合があった。
【特許文献1】特開平6−291368号公報
【特許文献2】特開2006−128227号公報
【特許文献3】特開2003−347586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能な半導体発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 基板と、前記基板上に形成されたn型半導体層、前記n型半導体層に積層された発光層及び前記発光層に積層されたp型半導体層とからなる積層半導体層と、前記積層半導体層の上面の全部または一部に形成された光取り出し性向上のための凹凸部と、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凸部上に積層された、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層と、少なくとも前記高濃度p型半導体層上に積層された透光性電流拡散層と、を具備してなることを特徴とする半導体発光素子。
(2) 前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下であることを特徴とする(1)に記載の半導体発光素子。
(3) 前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部が、前記p型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(4) 前記透光性電流拡散層が、前記凹凸部の全面に積層されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0015】
(5) 前記積層半導体層の前記凹凸部をなす凹部が、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(6) 前記p型半導体層、前記高濃度p型半導体層及び前記低濃度p型半導体領域が窒化ガリウム系半導体から構成されるとともに、これらに含まれるドーパントがMgであり、前記p型半導体層のドーパント濃度が1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満の範囲であり、前記高濃度p型半導体層のドーパント濃度が1×1020/cm3以上であり、前記低濃度p型半導体領域のドーパント濃度が1×1019/cm3未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0016】
(7) 基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる積層半導体層を形成するとともに、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を前記p型半導体層上に積層することにより、積層体を形成する工程と、前記積層体の上面の全部または一部に凹凸部を形成するとともに、少なくとも前記凹凸部をなす凸部上に透光性電流拡散層を形成する光取り出し部形成工程と、を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
(8) 前記光取り出し部形成工程が、前記高濃度p型半導体層上に前記透光性電流拡散層を形成する工程と、前記透光性電流拡散層を貫通して前記積層体に達する凹部をエッチングで形成する工程とからなることを特徴とする(7)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(9) 前記光取り出し部形成工程が、前記積層体上に凹部をエッチングで形成する工程と、前記積層体の上面に前記透光性電流拡散層を形成する工程とからなることを特徴とする(7)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(10) 前記積層体に凹部を形成することによって、少なくとも前記p型半導体層に凹部を形成すると同時に、前記凹部内に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域を形成することを特徴とする(8)または(9)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0017】
(11) 前記凹部を、前記p型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする(7)〜(10)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(12) 前記透光性電流拡散層を、前記積層体の上面全面に積層することを特徴とする(11)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(13) 前記凹部を、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする(7)、(8)または(10)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(14) 前記凹部を、ドライエッチング法で形成することを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(15) 前記ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成することを特徴とする(14)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成によれば、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能な半導体発光素子及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態の各々に限定されるものではなく、例えば、これら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせても良い。
【0020】
(第1の実施形態)
<半導体発光素子>
図1は、本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の一例を示す模式図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。また、図2はバッファ層2から積層半導体層15までの拡大断面図である。
図1(b)に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子11は、基板1と、基板上に積層されたバッファ層2と、バッファ層2上に積層されたn型半導体層3と、n型半導体層3上に積層された発光層4と、発光層4上に積層されたp型半導体層5と、p型半導体層5上に積層された高濃度p型半導体層8と、高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、正極のボンディングパッド7と、負極のボンディングパッド6とから概略構成されている。
n型半導体層3と、発光層4と、p型半導体層5とが順次積層されて積層半導体層15が形成されている。積層半導体層15の上面15aには、凹凸部33が形成されており、この凹凸部33を成す凸部33a上に高濃度p型半導体層8及び透光性電流拡散層20がこの順序で積層されている。また、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8が形成されて積層体16とされている。
以下、本発明の実施形態である半導体発光素子11について、構成要素ごとに順次説明する。
【0021】
<基板>
基板1の材料としては、サファイア単結晶(Al2O3;A面、C面、M面、R面)、スピネル単結晶(MgAl2O4)、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgO単結晶等の酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶及びZrB2等のホウ化物単結晶、等の周知の基板材料を何ら制限なく用いることができる。これらの中でも、サファイア単結晶及びSiC単結晶が特に好ましい。なお、基板1の面方位は特に限定されない。また、ジャスト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良い。
【0022】
<バッファ層>
バッファ層2は、基板1とn型半導体層3との格子定数の違いを緩和して、結晶性の高いn型半導体層3を形成するための層である。使用する基板やエピタキシャル層の成長条件によっては、バッファ層2が不要である場合がある。
バッファ層2の厚みは、例えば、0.01〜0.5μmとする。これにより、上記格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られるとともに、生産性を向上させることができる。
【0023】
バッファ層2は、III族窒化物半導体からなるものであり、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものや、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものであることが好ましい。これにより、基板1とn型半導体層3との格子定数の違いを緩和することができるとともに、結晶性の高いn型半導体層3を形成することができる。
【0024】
また、バッファ層2は、MOCVD法で形成することができるが、スパッタ法により形成してもよい。バッファ層2をスパッタ法により形成した場合、バッファ層2の形成時における基板1の温度を低く抑えることが可能なので、高温で分解してしまう性質を持つ材料からなる基板1を用いた場合でも、基板1にダメージを与えることなく基板1上への各層の成膜が可能となり、好ましい。
【0025】
<積層半導体層>
基板1上には、バッファ層2を介して、窒化ガリウム系化合物半導体からなる下地層9並びにn型半導体層3、発光層4およびp型半導体層5が積層されてなる積層半導体層15が形成されている。
【0026】
前記窒化ガリウム系化合物半導体としては、例えば、一般式AlXGaYInZN1−AMA(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされる窒化ガリウム系化合物半導体を何ら制限なく用いることができる。
【0027】
前記窒化ガリウム系化合物半導体は、Al、GaおよびIn以外に他のIII族元素を含有することができ、必要に応じてGe、Si、Mg、Ca、Zn、Be、P、As及びBなどの元素を含有することもできる。さらに、意図的に添加した元素に限らず、成膜条件等に依存して必然的に含まれる不純物、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含む場合もある。
【0028】
前記窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、特に限定されず、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)等、窒化物半導体を成長させることが知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚制御性、量産性の観点からMOCVD法である。
【0029】
MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H2)または窒素(N2)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)を、Ge原料としてゲルマンガス(GeH4)や、テトラメチルゲルマニウム((CH3)4Ge)やテトラエチルゲルマニウム((C2H5)4Ge)等の有機ゲルマニウム化合物を利用できる。
【0030】
MBE法では、元素状のゲルマニウムもドーピング源として利用できる。p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を用いる。
【0031】
<下地層>
下地層9はバッファ層2上に積層されており、AlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。下地層9の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。膜厚を1μm以上とすることにより、結晶性の良好なAlXGa1―XN層が得られやすくなる。
【0032】
下地層9には、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3の範囲内であればドープしても良いが、アンドープ(<1×1017/cm3)の方が、良好な結晶性を維持する点から好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。
【0033】
下地層9を成長させる際の成長温度は、800〜1200℃が好ましく、1000〜1200℃の範囲に調整することがより好ましい。この温度範囲内で成長させれば、結晶性の良い下地層が得られる。また、MOCVD成長炉内の圧力は15〜40kPaに調整することが好ましい。
【0034】
<n型半導体層>
図2に示すように、n型半導体層3は、下地層9上に、nコンタクト層3aおよびnクラッド層3bが順次積層されて構成される。nコンタクト層3aは下地層および/またはnクラッド層3bを兼ねることができる。
nコンタクト層3aは、下地層9と同様にAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)で構成されることが好ましい。また、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、Ge及びSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。成長温度は下地層と同様である。
【0035】
nコンタクト層3aを構成する窒化ガリウム系化合物半導体は、下地層と同一組成であることが好ましく、これらの合計の膜厚を1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmの範囲に設定することが好ましい。nコンタクト層3aと下地層9との合計の膜厚がこの範囲であると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0036】
nコンタクト層3aと発光層4との間には、nクラッド層3bを設けることが好ましい。nクラッド層3bを設けることにより、nコンタクト層3aの最表面に生じた、平坦性の悪化した箇所を埋めることできる。なお、nクラッド層3bはAlGaN、GaN、GaInN等によって形成することができる。また、これらの構造のヘテロ接合を複数回積層した超格子構造としてもよい。なお、GaInNとする場合には、発光層4のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
【0037】
nクラッド層3bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmの範囲であり、より好ましくは0.005〜0.1μmの範囲である。
また、nクラッド層3bのn型ドープ濃度は、1×1017〜1×1020/cm3の範囲が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の範囲である。ドープ濃度が前記範囲にある場合には、良好な結晶性を維持することができるとともに、半導体発光素子の動作電圧を低減することができる。
【0038】
<発光層>
発光層4は、窒化ガリウム系化合物半導体で形成することができ、好ましくはGa1−sInsN(0<s<0.4)の窒化ガリウム系化合物半導体で形成できる。
図2に示すように、発光層4は、上記Ga1−sInsNを井戸層4bとして、この井戸層4bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlcGa1−cN(0≦c<0.3かつb>c)障壁層4aとからなる多重量子井戸(MQW)構造とすることが好ましい。
井戸層4bの膜厚としては、特に限定されないが、量子効果の得られる程度の膜厚、即ち、臨界膜厚が好ましく、例えば1〜10nmの範囲であり、より好ましくは2〜6nmの範囲である。膜厚が上記範囲であると、発光出力を向上させることができる。井戸層4bおよび障壁層4aには、不純物をドープしてもよい。
なお、発光層4の構造は前記MQW構造に限られるものではなく、単一量子井戸(SQW)構造としてもよい。
【0039】
前記MQW構造において、AlcGa1−cN障壁層4aの成長温度は700℃以上が好ましく、800〜1100℃の温度で成長させると結晶性が良好になるため、より好ましい。また、GaInN井戸層4bの成長速度は600〜900℃が好ましく、700〜900℃がより好ましい。すなわち、MQW構造の結晶性を良好にするためには、層間で成長温度を変化させることが好ましい。
【0040】
<p型半導体層>
図2に示すように、p型半導体層5は、発光層4上に、pクラッド層5aおよびpコンタクト層5bが順次積層されて構成される。pコンタクト層5bはpクラッド層5aを兼ねることができる。
p型半導体層5の材料としては、発光層4のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成の材料であって、発光層4へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されない。たとえば、AldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)が好ましい。p型半導体層5の材料としてAldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)を用いた場合、発光層4へキャリアを効率的に閉じ込めることができる。
【0041】
p型半導体層5の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは2000nm以下であり、より好ましくは1000nm以下である。
p型半導体層5のp型ドーパント(p型不純物)としては、例えば、Mgを用いることができる。p型半導体層5のドーパント濃度は、1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満とすることが好ましい。ドーパント濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶を得ることができる。
【0042】
<凹凸部>
図1(b)に示すように、積層半導体層15の上面15aには、光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bの深さは、p型半導体層5の途中まで達する深さとされている。
なお、凹部33bの深さは、少なくともp型半導体層5の一部まで達する深さであればよい。
【0043】
図1(a)に示すように、凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0044】
<高濃度p型半導体層>
図1(b)に示すように、積層半導体層15の上面15a上には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8が積層されている。これにより、積層半導体層15と高濃度p型半導体層8とからなる積層体16が形成されている。
【0045】
高濃度p型半導体層8のp型ドーパント(p型不純物)としては、例えば、Mgを挙げることができる。高濃度p型半導体層8のドーパント濃度は、1×1020/cm3以上とすることが好ましい。これにより、良好なオーミック接触を維持し、クラック発生を防止し、良好な結晶性を維持することができる。
【0046】
高濃度p型半導体層8の材料としては、少なくともAleGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなる窒化ガリウム系化合物が好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性を維持できるとともに、pオーミック電極と良好にオーミック接触させることができる。なお、高濃度p型半導体層8はpコンタクト層の役割を担う。
【0047】
高濃度p型半導体層8の膜厚は、50nm以下とすることが好ましく、30nm以下がより好ましく、20〜5nmの範囲が更に好ましい。
高濃度p型半導体層8はエッチングのダメージを受けやすく、後述する製造工程において光取り出し効率向上のための凹凸加工を施すと、前記ダメージを受けて素子駆動電流を増大させる。たとえば、高濃度p型半導体層8の膜厚が50nmを超えると、後述する製造工程において、高濃度p型半導体層8のダメージを受ける領域が大きくなり、高抵抗化するので好ましくない。しかし、高濃度p型半導体層8の膜厚を50nm以下に薄くすることで、前記ダメージを減少させて、前記素子駆動電流の増大を抑制することができる。
また、後述する電流拡散層が高濃度p型半導体層8の内部に数nm拡散するので、高濃度p型半導体層8の厚さは、5nm以上とすることが好ましい。
【0048】
高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触することができ、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0049】
<低濃度p型半導体領域40>
図3は、図1(b)のB部の拡大断面図である。図3に示すように、エッチングにより形成された凹部33b内で、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dが露出されている。そして、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0050】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
なお、低濃度p型半導体領域40のドーパント濃度は、エッチング条件などにより制御することができる。
【0051】
<透光性電流拡散層>
図1(b)に示すように、高濃度p型半導体層8上には、透光性電流拡散層20が積層されている。
透光性電流拡散層20の材料としては、例えば、ITO(In2O3−SnO2)、AZO(ZnO−Al2O3)、IZO(In2O3−ZnO)、GZO(ZnO−GeO2)、ICO(In2O3−CeO2)等の透明酸化物を用いることができる。また、例えば、Au、Ni、Co、Cu、Pd、Pt、Rh、Os、Ir、Ru等の金属を用いることもできる。さらにまた、前記金属と透明酸化物を組み合わせて用いても構わない。例えば、透明酸化物を塊として前記金属からなる膜の中に含んでもよいし、透明酸化物を層状にして前記金属からなる膜と重ねて形成しても良い。これら周知の材料を何ら制限無く用いることができ、従来公知の構造を含めて如何なる構造のものも何ら制限無く用いることができる。
透光性電流拡散層20の形成方法としては、この技術分野でよく知られた慣用の手段を用いることができる。また、透光性電流拡散層20を形成した後に、合金化や透明化を目的とした熱アニールを施してもよい。
【0052】
<光取り出し部>
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、図1(a)に示すように、光取り出し部35から正面方向fに発光を取り出すフェイスアップ(FU)型とされている。
図3に示すように、光取り出し部35は、凹凸部33と、透光性電流拡散層20とから構成されている。発光層4からの発光の一部は、光取り出し部35の凹凸部33を通って正面方向fに取り出される。凹凸部33は、積層半導体層15内で光の内部反射を抑制して、正面方向fへの光取り出し効率を向上させて、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0053】
<正極のボンディングパッド>
正極のボンディングパッド7は、図1(b)に示す例のように、透光性電流拡散層20上に設けられる。
正極のボンディングパッド7としては、例えば、Au、Al、NiおよびCu等の材料を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
【0054】
正極のボンディングパッド7の厚さは、100〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。また、ボンディングパッドの特性上、厚さが大きい方が、ボンダビリティーが高くなるため、正極のボンディングパッド7の厚さは300nm以上とすることがより好ましい。さらに、製造コストの観点から2000nm以下とすることが好ましい。
【0055】
<負極のボンディングパッド>
負極のボンディングパッド6は、図1(b)に示すように、n型半導体層3に接するように形成される。
このため、負極のボンディングパッド6を形成する際は、発光層4およびp型半導体層5の一部を除去してn型半導体層3のnコンタクト層を露出させ、この上に負極のボンディングパッド6を形成する。
負極のボンディングパッド6としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
【0056】
なお、正極のボンディングパッド7は、凹凸部33の上に形成されている。ボンディングパッド7と積層半導体層15との接合面が凹凸状とされることにより、ボンディングパッド7は、接着性高く、それぞれの積層半導体層15の上面15aに固着される。
図1(b)に示すように、負極のボンディングパッド6の直下のn型半導体層3の上面にも別の凹凸部が形成されている。そのため、ボンディングパッド6も、同様に、接着性高く、n型半導体層3に固着される。
【0057】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の一例について図4及び図5を用いて説明する。
<第1工程>
第1工程は、基板1上にn型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15と、高濃度p型半導体層8をこの順序で積層する工程である。
まず、スパッタ法などの所定の成膜方法を用いて、基板1上にバッファ層2及び下地層9を形成する。次に、たとえば、MOCVD法などの所定の成膜方法を用いて、下地層9上に、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成する。次に、図4(a)に示すように、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を成膜して、積層体16を形成する。
なお、n型半導体層3、発光層4、p型半導体層5及び高濃度p型半導体層8の材料としては、窒化ガリウム系化合物を用いる。また、p型半導体層5及び高濃度p型半導体層8のp型ドーパント(p型不純物)としては、たとえば、Mgなどを用いる。
【0058】
なお、高濃度p型半導体層8は、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高くなるように形成する。p型半導体層5のドーパント濃度は、1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満とし、高濃度p型半導体層8のドーパント濃度は、1×1020/cm3以上とする。
【0059】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部を凹凸部33とする。
【0060】
まず、図4(b)に示すように、高濃度p型半導体層8上に透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図4(c)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0061】
次に、図5(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aをエッチングして、p型半導体層5の途中まで達する深さの凹部33bを形成して、凹部33bと凸部33aとからなる凹凸部33を形成する。なお、切り欠き部31のn型半導体層3の上面にも、凹凸部33が形成されている。
なお、このとき、エッチングしない部分(凸部33aの上面部分)を保護するエッチング用マスクを形成した後、ドライエッチングすることにより、凹部33bを形成する。
【0062】
前記エッチング用マスクとしては、特に限定されず、レジストやSiO2などを使用することができる。前記エッチング用マスクの開口部の形状は、円形、楕円形、多角形、ストライプ状等、半導体発光素子の大きさ、形状、発光波長等に合わせて選択することができる。
【0063】
前記エッチング用マスクの形成方法としては、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
ナノインプリント法では、凹凸パターン(エッチングパターン)を刻み込んだ金型をレジスト材料を塗布したウエハーに押し付けて転写して、エッチング用マスクを形成する。前記エッチングパターンがナノオーダーで形成される構成であるので、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができる。この転写の工程は短時間で行うことができるので、生産性を向上させることができる。また、リソグラフィとエッチングを使う従来のパターン形成技術に比べて低コストで作ることができる。
EB(電子線)露光法及びレーザー露光法は、レジスト(感光性樹脂)にパターン転写を行う露光法の一つであって、解像性能が特に高い方法である。そのため、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができる。これにより、形成する凹凸部33の光取り出し性能を向上させることができる。
【0064】
次に、積層半導体層15の上面15a側に前記エッチング用マスクを取り付けた状態で、公知のドライエッチング装置の中に導入し、ドライエッチングを行うことにより、エッチング用マスクの開口部に対応する部分をエッチングして、凹部33bを形成することができる。これにより、積層半導体層15の上面15aに凹凸部33を形成することができる。
なお、図5(a)に示すように、凹部33bの深さは、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去する深さであって、p型半導体層5の途中まで達する深さとする。
【0065】
p型半導体層5をエッチングすることにより、p型半導体層5の側壁面33cおよび底面33dの近傍領域で、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されることによって、Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減され、高抵抗化された領域、すなわち、低濃度p型半導体領域40を形成することができる。
【0066】
次に、有機洗浄などを行って、前記エッチング用マスクを剥離する。
次に、図5(b)に示すように、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図5(c)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子11を作製する。
【0067】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、を具備してなる構成なので、正面方向fへの光取り出し効率を向上させ、半導体発光素子11の発光効率を向上させることができる。また、これにより、半導体発光素子11の駆動電圧を下げることができる。
【0068】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、凹凸部33を成す凸部33a上に積層された、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8と、少なくとも高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、を具備してなる構成なので、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と高濃度p型半導体層8とを良好にオーミック接触させて、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0069】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下である構成なので、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と高濃度p型半導体層8とを良好にオーミック接触させて、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0070】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、基板1上にn型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15と、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8をこの順序で積層する工程と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する光取り出し部形成工程と、を具備する構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げたこの半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0071】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、光取り出し部形成工程が、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部または一部を凹凸部33とする工程である構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0072】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、光取り出し部形成工程が、凹部33b内におけるp型半導体層5に、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40を形成する工程である構成なので、低濃度p型半導体領域40を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0073】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、凹部33bを、p型半導体層5の途中まで達するようにエッチングして形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0074】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、凹部33bを、ドライエッチング法で形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0075】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成する構成なので、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができ、凹凸部33からの光取り出し性能を向上させることができる。
【0076】
(第2の実施形態)
<半導体発光素子>
図6は、本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の一例を示す断面図である。
図6に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子12は、n型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15の上面15aの一部に、凹凸部33が形成されており、凹凸部33を成す凸部33a上に形成された高濃度p型半導体層8と積層半導体層15の上面15aの全面を覆うように透光性電流拡散層20が積層されている他は、実施形態1に示した半導体発光素子10と同様の構成とされている。なお、実施形態1で示した部材と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0077】
このように、積層半導体層15の上面15a一部のみに光取り出し効率向上のための凹凸部33を形成してもよい。一部であっても凹凸部33が形成されているので、正面方向fへの光取り出し性を向上させることができる。
【0078】
図7は、図6のC部の拡大断面図である。図7に示すように、積層半導体層15の上面15aに光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bは、p型半導体層5の途中まで達する深さで形成されている。
凹部33b内には、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dが露出されている。p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0079】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
【0080】
凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0081】
開口が円形状の穴よりなる凹部33bの代わりに、積層半導体層15の上面15aの全面に複数の凸部33aを円柱状に形成してもよい。また、凸部33aの形状は、凸部33aの上面が平坦面であれば円柱状に限られるものではなく、角柱状などであってもよく、断面形状が台形状となる略円柱状であってもよい。
なお、本実施形態において、凹凸部33は、平面視したときに積層半導体層15の上面15aの一部(中心部分)にのみ形成されているが、第1の実施形態と同様に、凹凸部33を積層半導体層15の上面15aの全面に形成してもよい。
【0082】
図7に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
【0083】
図6及び図7に示すように、透光性電流拡散層20は、凹凸部33の全面を覆うように形成されている。
透光性電流拡散層20は凹凸部33の全面を覆うように形成されているが、凹部33bの側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、それぞれ高抵抗化された低濃度p型半導体領域40が形成されているので、低濃度p型半導体領域40を挟む透光性電流拡散層20からp型半導体層5へはほとんど電流が注入されない。そのため、透光性電流拡散層20全面に電流を拡散させることができる。
【0084】
なお、低濃度p型半導体領域40が形成されていない場合は、ボンディングパッド7の直下およびその周辺領域で、透光性電流拡散層20から発光層4へ電流が容易に流れて、透光性電流拡散層20全面には拡がらない。
【0085】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の別の一例について図8を用いて説明する。
まず、実施形態1と同様の第1工程を行って、基板1上に、バッファ層2を形成した後、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成した後、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を形成する。
【0086】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの一部を凹凸部33とした後、透光性電流拡散層20を形成する。
【0087】
まず、図8(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aに高濃度p型半導体層8を形成して、積層体16を形成した後、積層体16をエッチングして、p型半導体層5の途中まで達する深さの凹部33bを形成して、光取り出し効率向上のための凹部33bと凸部33aとからなる凹凸部33を形成する。
なお、このとき、実施形態1と同様に、エッチングしない部分(凸部33aの上面)を保護するエッチング用マスクを形成した後、前記エッチング用マスクを用いてドライエッチングして凹部33bを形成する。また、このとき、正極のボンディングパッド7を形成する部分は平坦面となるようにエッチングする。
【0088】
次に、図8(b)に示すように、高濃度p型半導体層8及び積層半導体層15の上面15aを覆うように透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図8(c)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0089】
次に、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図8(d)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子12を作製する。
【0090】
本発明の第2の実施形態である半導体発光素子12は、第1の実施形態で示した効果と同様の効果の他に、以下の効果を有する。
本発明の実施形態である半導体発光素子12は、透光性電流拡散層20が、凹凸部33の全面に積層されている構成なので、透光性電流拡散層20全面に電流を拡散させることができる。これにより、光取り出し部35全面から光を取り出すことができる。
【0091】
本発明の実施形態である半導体発光素子12の製造方法は、光取り出し部形成工程が、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部または一部を凹凸部33とした後、透光性電流拡散層20を形成する工程である構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができる。
【0092】
本発明の実施形態である半導体発光素子12の製造方法は、透光性電流拡散層20を、凹凸部33の全面に積層する構成なので、透光性電流拡散層20を容易に形成することができることができる。
【0093】
(第3の実施形態)
<半導体発光素子>
図9は、本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の一例を示す断面図である。
図9に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子13は、積層半導体層15の上面15aの一部に凹凸部33が形成されるとともに、凹部33bが、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる深さで形成されている他は、実施形態1に示した半導体発光素子10と同様の構成とされている。なお、実施形態1で示した部材と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0094】
図10は、図9のD部の拡大断面図である。図10に示すように、積層半導体層15の上面15aに光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bは、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3の途中まで達するような深さで形成されている。
このような凹凸部33を形成した場合には、発光層4の側面から取り出した光を正面方向fへ取り出して、正面方向fへの光取り出し効率を向上させることができる。
【0095】
図10に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
そのため、透光性電流拡散層20から発光層4へ流れる電流は、図10に示す矢印42のように局所的に集中して流れる。これにより、透光性電流拡散層20から発光層4へ効率的に、無駄なく電流を流すことができ、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。これにより、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0096】
凹部33b内には、p型半導体層5の側壁面33cが露出されている。p型半導体層5の側壁面33cの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0097】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
【0098】
凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0099】
図9及び図10に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
【0100】
なお、凹部33b内で、p型半導体層5だけでなく、発光層4およびn型半導体層3の表面も露出されている。しかし、p型半導体層5の側壁面33cには、低濃度p型半導体領域40が形成されているので、何らかの要因によりゴミなどが入り込み、p型半導体層5と発光層4との間に付着したとしても、p型半導体層5と発光層4との間でリークなどを生じさせることはない。
【0101】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の一例について図11を用いて説明する。
まず、実施形態1と同様の第1工程を行って、基板1上に、バッファ層2を形成した後、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成した後、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を形成する。
【0102】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの一部を凹凸部33とする。
【0103】
まず、高濃度p型半導体層8上に透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図11(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aに、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる凹部33bをエッチングにより形成して、凹凸部33を形成する。なお、このとき、ボンディングパッド7を形成する領域には、凹凸部33は形成しない。
なお、このとき、実施形態1と同様に、エッチングしない部分(凸部33aの上面)を保護するエッチング用マスクを形成した後、前記エッチング用マスクを用いてドライエッチングして凹部33bを形成する。
【0104】
次に、図11(b)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、発光層4及びp型半導体層5を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0105】
次に、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図11(c)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子13を作製する。
【0106】
本発明の実施形態である半導体発光素子13は、積層半導体層15の凹凸部33をなす凹部33bが、p型半導体層5、発光層4を貫通してn型半導体層3の途中まで達しているので、光取り出し効率をより一層向上させることができる。
【0107】
また、本発明の実施形態である半導体発光素子13は、p型半導体層5の側壁面33cに低濃度p型半導体領域40が形成されている構成なので、何らかの要因によりゴミなどが入り込み、p型半導体層5と発光層4との間に付着したとしても、p型半導体層5と発光層4との間でリークなどを生じさせることはない。
【0108】
本発明の実施形態である半導体発光素子13の製造方法は、凹部33bを、p型半導体層5、発光層4を貫通してn型半導体層3の途中まで達するようにエッチングして形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子13を容易に形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0109】
<実施例1>
図1に示した半導体発光素子を次のようにして作製した。
まず、MOCVD装置を用いて、基板上に窒化ガリウム系化合物からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順序で結晶成長して、積層半導体層を形成した後、前記積層半導体層上に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を形成して、半導体層を形成した素子基板を形成した。
なお、前記p型半導体層及び前記高濃度p型半導体層のp型ドーパントとしてはMgを用い、そのドーパント濃度はそれぞれ、5×1019/cm3、1×1020/cm3とした。
【0110】
次に、スパッタ装置を用いて、半導体層を形成した素子基板の前記高濃度p型半導体層上に透光性電流拡散層を形成した。
次に、ドライエッチング装置に前記透光性電流拡散層を形成した素子基板を入れて、前記積層半導体層の上面の一部をn型半導体層が露出するまでエッチングして切り欠き部を形成した。
次に、前記ドライエッチング装置から取り出した前記素子基板の前記積層半導体層の上面に、ナノインプリント法を用いてエッチング用マスクを形成した後、再び、ドライエッチング装置にこの素子基板を入れて、前記積層半導体層の上面をエッチングして凹部を形成して、光取り出し性向上のための凹凸部を形成した。このとき、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部内の前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成された。低濃度p型半導体領域のドーパント濃度は、1×1019/cm3未満であった。
【0111】
最後に、正極のボンディングパッドを前記透光性電流拡散層上に形成し、負極のボンディングパッドを前記n型半導体層上に形成した後、素子分離ラインで分離して、実施例1の半導体発光素子を形成した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0112】
<比較例1>
高濃度p型半導体層のドーパント濃度を5×1019/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例1の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0113】
<比較例2>
p型半導体層のドーパント濃度を1×1020/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例2の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0114】
<比較例3>
前記凹凸部を形成せず、p型半導体層のドーパント濃度を1×1020/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例3の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
実施例1、比較例1〜3の作製条件及び測定結果を、表1にまとめた。
【0115】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の半導体発光素子は、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能である。各種照明装置や表示装置などの発光装置を製造・利用する産業において利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。
【図2】図1に示す半導体発光素子の積層半導体層の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図5】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図9】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【符号の説明】
【0118】
1…基板。
2…バッファ層。
3…n型半導体層。
4…発光層。
5…p型半導体層。
6…ボンディングパッド(負極)。
7…ボンディングパッド(正極)。
8…高濃度p型半導体層。
9…下地層。
11、12、13…半導体発光素子。
15…積層半導体層。
15a…上面。
16…積層体。
20…透光性電流拡散層。
31…切り欠き部。
33…凹凸部。
33a…凸部。
33b…凹部。
33c…側壁面。
33d…底面。
35…光取り出し部。
40…低濃度p型半導体領域。
50…素子分離ライン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法に関する。特に、光取り出し面に凹凸部が形成された半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、短波長光発光素子用の半導体材料として窒化物系半導体であるGaN系化合物半導体材料が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶をはじめ、種々の酸化物やIII−V族化合物を基板として、この基板上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
【0003】
GaN系化合物半導体材料の特性としては、横方向への電流拡散が小さいことが挙げられる。このため、電極直下の半導体にしか電流が注入されず、発光層で発光した光は電極に遮られて外部に取り出されない。そこで、このような発光素子では、通常、透光性正極が用いられ、透光性正極を通して光が取り出される。
【0004】
従来の透光性正極は、NiやCo等の酸化物と、コンタクト金属としてAu等とを組み合わせた層構造とされていた。また、近年ではITO等、より導電性の高い酸化物を使用することにより、コンタクト金属の膜厚を極力薄くして透光性を高めた層構造が正極として採用され、発光層からの光を効率よく外部に取り出すことができる構成とされている。
【0005】
このような発光素子の出力を向上させるための指標として、外部量子効率が用いられる。この外部量子効率が高ければ、出力の高い発光素子と言うことができる。
外部量子効率は、内部量子効率と光取り出し効率を掛け合わせたものとして表される。内部量子効率とは、素子に注入した電流のエネルギーのうち、光に変換される割合である。一方、光取り出し効率とは、半導体結晶内部で発生した光のうち、外部に取り出すことができる割合である。
【0006】
上述のような発光素子の内部量子効率は、結晶状態の改善や構造の検討によって70〜80%程度まで向上していると言われ、注入電流量に対して十分な効果が得られている。
しかしながら、GaN系化合物半導体のみならず、発光ダイオード(LED)においては、一般的に注入電流に対する光取り出し効率が押しなべて低く、注入電流に対しての内部発光を十分に外部に取り出しているとは言い難い。
【0007】
光取り出し効率が低いのは、GaN系化合物半導体における発光層の屈折率が約2.5と空気の屈折率1に対して非常に高く、臨界角が約25°と小さいため、結晶内で反射・吸収を繰り返し、光が外部に取り出せない事が原因である。
【0008】
発光素子の光取り出し効率を向上させるため、光取り出し面を粗面化し、光の取り出し面にさまざまな角度を設けることにより、光の取り出し効率を向上させたものが提案されている。
【0009】
例えば、特許文献1には、エッチング等により窒化ガリウム系化合物半導体の最上層の表面が非鏡面とされた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が開示されている。
また、特許文献2には、ITOの表面に凹凸が形成された窒化物半導体発光素子が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献1又は2に記載の発光素子において、前記半導体の最上層の表面(光取り出し面)などをエッチングにより粗面化すると、エッチングダメージにより、駆動電圧が極端に大きくなるという問題があった。
【0011】
特許文献3には、p型GaN層の表面をエッチングで凹凸に加工し、さらに、凹凸面の全面に、Mgなどの金属を高濃度で添加させた発光素子が開示されている。
特許文献3では、例えば、公知のフォトリソグラフィー法等を用いてストライプ状などにパターン加工したレジスト層をマスクとして、前記p型GaN層をエッチングすることにより、その表面を凹凸面からなる粗面とした後、その凹凸面にMg層を積層し、更にMg層をアニールしてMgを拡散させて、前記p型GaN層の表面側にMgを添加している。
【0012】
しかし、特許文献3に開示された発光素子は、前記p型GaN層の表面の全面にMgが添加されるため、前記p型GaN層上の透明電極にボンディングパッドを介して電圧を印加した場合に、透明電極全面に電流が拡散されず、ボンディングパッド直下の半導体層へ電流が集中してしまい、発光素子の発光効率を向上できない場合があった。
【特許文献1】特開平6−291368号公報
【特許文献2】特開2006−128227号公報
【特許文献3】特開2003−347586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能な半導体発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 基板と、前記基板上に形成されたn型半導体層、前記n型半導体層に積層された発光層及び前記発光層に積層されたp型半導体層とからなる積層半導体層と、前記積層半導体層の上面の全部または一部に形成された光取り出し性向上のための凹凸部と、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凸部上に積層された、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層と、少なくとも前記高濃度p型半導体層上に積層された透光性電流拡散層と、を具備してなることを特徴とする半導体発光素子。
(2) 前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下であることを特徴とする(1)に記載の半導体発光素子。
(3) 前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部が、前記p型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(4) 前記透光性電流拡散層が、前記凹凸部の全面に積層されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0015】
(5) 前記積層半導体層の前記凹凸部をなす凹部が、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(6) 前記p型半導体層、前記高濃度p型半導体層及び前記低濃度p型半導体領域が窒化ガリウム系半導体から構成されるとともに、これらに含まれるドーパントがMgであり、前記p型半導体層のドーパント濃度が1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満の範囲であり、前記高濃度p型半導体層のドーパント濃度が1×1020/cm3以上であり、前記低濃度p型半導体領域のドーパント濃度が1×1019/cm3未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0016】
(7) 基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる積層半導体層を形成するとともに、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を前記p型半導体層上に積層することにより、積層体を形成する工程と、前記積層体の上面の全部または一部に凹凸部を形成するとともに、少なくとも前記凹凸部をなす凸部上に透光性電流拡散層を形成する光取り出し部形成工程と、を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
(8) 前記光取り出し部形成工程が、前記高濃度p型半導体層上に前記透光性電流拡散層を形成する工程と、前記透光性電流拡散層を貫通して前記積層体に達する凹部をエッチングで形成する工程とからなることを特徴とする(7)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(9) 前記光取り出し部形成工程が、前記積層体上に凹部をエッチングで形成する工程と、前記積層体の上面に前記透光性電流拡散層を形成する工程とからなることを特徴とする(7)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(10) 前記積層体に凹部を形成することによって、少なくとも前記p型半導体層に凹部を形成すると同時に、前記凹部内に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域を形成することを特徴とする(8)または(9)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0017】
(11) 前記凹部を、前記p型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする(7)〜(10)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(12) 前記透光性電流拡散層を、前記積層体の上面全面に積層することを特徴とする(11)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(13) 前記凹部を、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする(7)、(8)または(10)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(14) 前記凹部を、ドライエッチング法で形成することを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
(15) 前記ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成することを特徴とする(14)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成によれば、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能な半導体発光素子及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態の各々に限定されるものではなく、例えば、これら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせても良い。
【0020】
(第1の実施形態)
<半導体発光素子>
図1は、本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の一例を示す模式図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。また、図2はバッファ層2から積層半導体層15までの拡大断面図である。
図1(b)に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子11は、基板1と、基板上に積層されたバッファ層2と、バッファ層2上に積層されたn型半導体層3と、n型半導体層3上に積層された発光層4と、発光層4上に積層されたp型半導体層5と、p型半導体層5上に積層された高濃度p型半導体層8と、高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、正極のボンディングパッド7と、負極のボンディングパッド6とから概略構成されている。
n型半導体層3と、発光層4と、p型半導体層5とが順次積層されて積層半導体層15が形成されている。積層半導体層15の上面15aには、凹凸部33が形成されており、この凹凸部33を成す凸部33a上に高濃度p型半導体層8及び透光性電流拡散層20がこの順序で積層されている。また、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8が形成されて積層体16とされている。
以下、本発明の実施形態である半導体発光素子11について、構成要素ごとに順次説明する。
【0021】
<基板>
基板1の材料としては、サファイア単結晶(Al2O3;A面、C面、M面、R面)、スピネル単結晶(MgAl2O4)、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgO単結晶等の酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶及びZrB2等のホウ化物単結晶、等の周知の基板材料を何ら制限なく用いることができる。これらの中でも、サファイア単結晶及びSiC単結晶が特に好ましい。なお、基板1の面方位は特に限定されない。また、ジャスト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良い。
【0022】
<バッファ層>
バッファ層2は、基板1とn型半導体層3との格子定数の違いを緩和して、結晶性の高いn型半導体層3を形成するための層である。使用する基板やエピタキシャル層の成長条件によっては、バッファ層2が不要である場合がある。
バッファ層2の厚みは、例えば、0.01〜0.5μmとする。これにより、上記格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られるとともに、生産性を向上させることができる。
【0023】
バッファ層2は、III族窒化物半導体からなるものであり、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものや、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものであることが好ましい。これにより、基板1とn型半導体層3との格子定数の違いを緩和することができるとともに、結晶性の高いn型半導体層3を形成することができる。
【0024】
また、バッファ層2は、MOCVD法で形成することができるが、スパッタ法により形成してもよい。バッファ層2をスパッタ法により形成した場合、バッファ層2の形成時における基板1の温度を低く抑えることが可能なので、高温で分解してしまう性質を持つ材料からなる基板1を用いた場合でも、基板1にダメージを与えることなく基板1上への各層の成膜が可能となり、好ましい。
【0025】
<積層半導体層>
基板1上には、バッファ層2を介して、窒化ガリウム系化合物半導体からなる下地層9並びにn型半導体層3、発光層4およびp型半導体層5が積層されてなる積層半導体層15が形成されている。
【0026】
前記窒化ガリウム系化合物半導体としては、例えば、一般式AlXGaYInZN1−AMA(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされる窒化ガリウム系化合物半導体を何ら制限なく用いることができる。
【0027】
前記窒化ガリウム系化合物半導体は、Al、GaおよびIn以外に他のIII族元素を含有することができ、必要に応じてGe、Si、Mg、Ca、Zn、Be、P、As及びBなどの元素を含有することもできる。さらに、意図的に添加した元素に限らず、成膜条件等に依存して必然的に含まれる不純物、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含む場合もある。
【0028】
前記窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は、特に限定されず、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)等、窒化物半導体を成長させることが知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚制御性、量産性の観点からMOCVD法である。
【0029】
MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H2)または窒素(N2)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)を、Ge原料としてゲルマンガス(GeH4)や、テトラメチルゲルマニウム((CH3)4Ge)やテトラエチルゲルマニウム((C2H5)4Ge)等の有機ゲルマニウム化合物を利用できる。
【0030】
MBE法では、元素状のゲルマニウムもドーピング源として利用できる。p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を用いる。
【0031】
<下地層>
下地層9はバッファ層2上に積層されており、AlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。下地層9の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。膜厚を1μm以上とすることにより、結晶性の良好なAlXGa1―XN層が得られやすくなる。
【0032】
下地層9には、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3の範囲内であればドープしても良いが、アンドープ(<1×1017/cm3)の方が、良好な結晶性を維持する点から好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。
【0033】
下地層9を成長させる際の成長温度は、800〜1200℃が好ましく、1000〜1200℃の範囲に調整することがより好ましい。この温度範囲内で成長させれば、結晶性の良い下地層が得られる。また、MOCVD成長炉内の圧力は15〜40kPaに調整することが好ましい。
【0034】
<n型半導体層>
図2に示すように、n型半導体層3は、下地層9上に、nコンタクト層3aおよびnクラッド層3bが順次積層されて構成される。nコンタクト層3aは下地層および/またはnクラッド層3bを兼ねることができる。
nコンタクト層3aは、下地層9と同様にAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)で構成されることが好ましい。また、n型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、Ge及びSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。成長温度は下地層と同様である。
【0035】
nコンタクト層3aを構成する窒化ガリウム系化合物半導体は、下地層と同一組成であることが好ましく、これらの合計の膜厚を1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmの範囲に設定することが好ましい。nコンタクト層3aと下地層9との合計の膜厚がこの範囲であると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0036】
nコンタクト層3aと発光層4との間には、nクラッド層3bを設けることが好ましい。nクラッド層3bを設けることにより、nコンタクト層3aの最表面に生じた、平坦性の悪化した箇所を埋めることできる。なお、nクラッド層3bはAlGaN、GaN、GaInN等によって形成することができる。また、これらの構造のヘテロ接合を複数回積層した超格子構造としてもよい。なお、GaInNとする場合には、発光層4のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
【0037】
nクラッド層3bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmの範囲であり、より好ましくは0.005〜0.1μmの範囲である。
また、nクラッド層3bのn型ドープ濃度は、1×1017〜1×1020/cm3の範囲が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の範囲である。ドープ濃度が前記範囲にある場合には、良好な結晶性を維持することができるとともに、半導体発光素子の動作電圧を低減することができる。
【0038】
<発光層>
発光層4は、窒化ガリウム系化合物半導体で形成することができ、好ましくはGa1−sInsN(0<s<0.4)の窒化ガリウム系化合物半導体で形成できる。
図2に示すように、発光層4は、上記Ga1−sInsNを井戸層4bとして、この井戸層4bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlcGa1−cN(0≦c<0.3かつb>c)障壁層4aとからなる多重量子井戸(MQW)構造とすることが好ましい。
井戸層4bの膜厚としては、特に限定されないが、量子効果の得られる程度の膜厚、即ち、臨界膜厚が好ましく、例えば1〜10nmの範囲であり、より好ましくは2〜6nmの範囲である。膜厚が上記範囲であると、発光出力を向上させることができる。井戸層4bおよび障壁層4aには、不純物をドープしてもよい。
なお、発光層4の構造は前記MQW構造に限られるものではなく、単一量子井戸(SQW)構造としてもよい。
【0039】
前記MQW構造において、AlcGa1−cN障壁層4aの成長温度は700℃以上が好ましく、800〜1100℃の温度で成長させると結晶性が良好になるため、より好ましい。また、GaInN井戸層4bの成長速度は600〜900℃が好ましく、700〜900℃がより好ましい。すなわち、MQW構造の結晶性を良好にするためには、層間で成長温度を変化させることが好ましい。
【0040】
<p型半導体層>
図2に示すように、p型半導体層5は、発光層4上に、pクラッド層5aおよびpコンタクト層5bが順次積層されて構成される。pコンタクト層5bはpクラッド層5aを兼ねることができる。
p型半導体層5の材料としては、発光層4のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成の材料であって、発光層4へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されない。たとえば、AldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)が好ましい。p型半導体層5の材料としてAldGa1−dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)を用いた場合、発光層4へキャリアを効率的に閉じ込めることができる。
【0041】
p型半導体層5の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは2000nm以下であり、より好ましくは1000nm以下である。
p型半導体層5のp型ドーパント(p型不純物)としては、例えば、Mgを用いることができる。p型半導体層5のドーパント濃度は、1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満とすることが好ましい。ドーパント濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶を得ることができる。
【0042】
<凹凸部>
図1(b)に示すように、積層半導体層15の上面15aには、光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bの深さは、p型半導体層5の途中まで達する深さとされている。
なお、凹部33bの深さは、少なくともp型半導体層5の一部まで達する深さであればよい。
【0043】
図1(a)に示すように、凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0044】
<高濃度p型半導体層>
図1(b)に示すように、積層半導体層15の上面15a上には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8が積層されている。これにより、積層半導体層15と高濃度p型半導体層8とからなる積層体16が形成されている。
【0045】
高濃度p型半導体層8のp型ドーパント(p型不純物)としては、例えば、Mgを挙げることができる。高濃度p型半導体層8のドーパント濃度は、1×1020/cm3以上とすることが好ましい。これにより、良好なオーミック接触を維持し、クラック発生を防止し、良好な結晶性を維持することができる。
【0046】
高濃度p型半導体層8の材料としては、少なくともAleGa1−eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなる窒化ガリウム系化合物が好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性を維持できるとともに、pオーミック電極と良好にオーミック接触させることができる。なお、高濃度p型半導体層8はpコンタクト層の役割を担う。
【0047】
高濃度p型半導体層8の膜厚は、50nm以下とすることが好ましく、30nm以下がより好ましく、20〜5nmの範囲が更に好ましい。
高濃度p型半導体層8はエッチングのダメージを受けやすく、後述する製造工程において光取り出し効率向上のための凹凸加工を施すと、前記ダメージを受けて素子駆動電流を増大させる。たとえば、高濃度p型半導体層8の膜厚が50nmを超えると、後述する製造工程において、高濃度p型半導体層8のダメージを受ける領域が大きくなり、高抵抗化するので好ましくない。しかし、高濃度p型半導体層8の膜厚を50nm以下に薄くすることで、前記ダメージを減少させて、前記素子駆動電流の増大を抑制することができる。
また、後述する電流拡散層が高濃度p型半導体層8の内部に数nm拡散するので、高濃度p型半導体層8の厚さは、5nm以上とすることが好ましい。
【0048】
高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触することができ、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0049】
<低濃度p型半導体領域40>
図3は、図1(b)のB部の拡大断面図である。図3に示すように、エッチングにより形成された凹部33b内で、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dが露出されている。そして、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0050】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
なお、低濃度p型半導体領域40のドーパント濃度は、エッチング条件などにより制御することができる。
【0051】
<透光性電流拡散層>
図1(b)に示すように、高濃度p型半導体層8上には、透光性電流拡散層20が積層されている。
透光性電流拡散層20の材料としては、例えば、ITO(In2O3−SnO2)、AZO(ZnO−Al2O3)、IZO(In2O3−ZnO)、GZO(ZnO−GeO2)、ICO(In2O3−CeO2)等の透明酸化物を用いることができる。また、例えば、Au、Ni、Co、Cu、Pd、Pt、Rh、Os、Ir、Ru等の金属を用いることもできる。さらにまた、前記金属と透明酸化物を組み合わせて用いても構わない。例えば、透明酸化物を塊として前記金属からなる膜の中に含んでもよいし、透明酸化物を層状にして前記金属からなる膜と重ねて形成しても良い。これら周知の材料を何ら制限無く用いることができ、従来公知の構造を含めて如何なる構造のものも何ら制限無く用いることができる。
透光性電流拡散層20の形成方法としては、この技術分野でよく知られた慣用の手段を用いることができる。また、透光性電流拡散層20を形成した後に、合金化や透明化を目的とした熱アニールを施してもよい。
【0052】
<光取り出し部>
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、図1(a)に示すように、光取り出し部35から正面方向fに発光を取り出すフェイスアップ(FU)型とされている。
図3に示すように、光取り出し部35は、凹凸部33と、透光性電流拡散層20とから構成されている。発光層4からの発光の一部は、光取り出し部35の凹凸部33を通って正面方向fに取り出される。凹凸部33は、積層半導体層15内で光の内部反射を抑制して、正面方向fへの光取り出し効率を向上させて、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。
【0053】
<正極のボンディングパッド>
正極のボンディングパッド7は、図1(b)に示す例のように、透光性電流拡散層20上に設けられる。
正極のボンディングパッド7としては、例えば、Au、Al、NiおよびCu等の材料を用いた各種構造が周知であり、これら周知の材料、構造のものを何ら制限無く用いることができる。
【0054】
正極のボンディングパッド7の厚さは、100〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。また、ボンディングパッドの特性上、厚さが大きい方が、ボンダビリティーが高くなるため、正極のボンディングパッド7の厚さは300nm以上とすることがより好ましい。さらに、製造コストの観点から2000nm以下とすることが好ましい。
【0055】
<負極のボンディングパッド>
負極のボンディングパッド6は、図1(b)に示すように、n型半導体層3に接するように形成される。
このため、負極のボンディングパッド6を形成する際は、発光層4およびp型半導体層5の一部を除去してn型半導体層3のnコンタクト層を露出させ、この上に負極のボンディングパッド6を形成する。
負極のボンディングパッド6としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
【0056】
なお、正極のボンディングパッド7は、凹凸部33の上に形成されている。ボンディングパッド7と積層半導体層15との接合面が凹凸状とされることにより、ボンディングパッド7は、接着性高く、それぞれの積層半導体層15の上面15aに固着される。
図1(b)に示すように、負極のボンディングパッド6の直下のn型半導体層3の上面にも別の凹凸部が形成されている。そのため、ボンディングパッド6も、同様に、接着性高く、n型半導体層3に固着される。
【0057】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の一例について図4及び図5を用いて説明する。
<第1工程>
第1工程は、基板1上にn型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15と、高濃度p型半導体層8をこの順序で積層する工程である。
まず、スパッタ法などの所定の成膜方法を用いて、基板1上にバッファ層2及び下地層9を形成する。次に、たとえば、MOCVD法などの所定の成膜方法を用いて、下地層9上に、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成する。次に、図4(a)に示すように、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を成膜して、積層体16を形成する。
なお、n型半導体層3、発光層4、p型半導体層5及び高濃度p型半導体層8の材料としては、窒化ガリウム系化合物を用いる。また、p型半導体層5及び高濃度p型半導体層8のp型ドーパント(p型不純物)としては、たとえば、Mgなどを用いる。
【0058】
なお、高濃度p型半導体層8は、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高くなるように形成する。p型半導体層5のドーパント濃度は、1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満とし、高濃度p型半導体層8のドーパント濃度は、1×1020/cm3以上とする。
【0059】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部を凹凸部33とする。
【0060】
まず、図4(b)に示すように、高濃度p型半導体層8上に透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図4(c)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0061】
次に、図5(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aをエッチングして、p型半導体層5の途中まで達する深さの凹部33bを形成して、凹部33bと凸部33aとからなる凹凸部33を形成する。なお、切り欠き部31のn型半導体層3の上面にも、凹凸部33が形成されている。
なお、このとき、エッチングしない部分(凸部33aの上面部分)を保護するエッチング用マスクを形成した後、ドライエッチングすることにより、凹部33bを形成する。
【0062】
前記エッチング用マスクとしては、特に限定されず、レジストやSiO2などを使用することができる。前記エッチング用マスクの開口部の形状は、円形、楕円形、多角形、ストライプ状等、半導体発光素子の大きさ、形状、発光波長等に合わせて選択することができる。
【0063】
前記エッチング用マスクの形成方法としては、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
ナノインプリント法では、凹凸パターン(エッチングパターン)を刻み込んだ金型をレジスト材料を塗布したウエハーに押し付けて転写して、エッチング用マスクを形成する。前記エッチングパターンがナノオーダーで形成される構成であるので、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができる。この転写の工程は短時間で行うことができるので、生産性を向上させることができる。また、リソグラフィとエッチングを使う従来のパターン形成技術に比べて低コストで作ることができる。
EB(電子線)露光法及びレーザー露光法は、レジスト(感光性樹脂)にパターン転写を行う露光法の一つであって、解像性能が特に高い方法である。そのため、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができる。これにより、形成する凹凸部33の光取り出し性能を向上させることができる。
【0064】
次に、積層半導体層15の上面15a側に前記エッチング用マスクを取り付けた状態で、公知のドライエッチング装置の中に導入し、ドライエッチングを行うことにより、エッチング用マスクの開口部に対応する部分をエッチングして、凹部33bを形成することができる。これにより、積層半導体層15の上面15aに凹凸部33を形成することができる。
なお、図5(a)に示すように、凹部33bの深さは、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去する深さであって、p型半導体層5の途中まで達する深さとする。
【0065】
p型半導体層5をエッチングすることにより、p型半導体層5の側壁面33cおよび底面33dの近傍領域で、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されることによって、Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減され、高抵抗化された領域、すなわち、低濃度p型半導体領域40を形成することができる。
【0066】
次に、有機洗浄などを行って、前記エッチング用マスクを剥離する。
次に、図5(b)に示すように、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図5(c)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子11を作製する。
【0067】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、を具備してなる構成なので、正面方向fへの光取り出し効率を向上させ、半導体発光素子11の発光効率を向上させることができる。また、これにより、半導体発光素子11の駆動電圧を下げることができる。
【0068】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5とからなる積層半導体層15と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に形成された光取り出し効率向上のための凹凸部33と、凹凸部33を成す凸部33a上に積層された、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8と、少なくとも高濃度p型半導体層8上に積層された透光性電流拡散層20と、を具備してなる構成なので、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と高濃度p型半導体層8とを良好にオーミック接触させて、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0069】
本発明の実施形態である半導体発光素子11は、前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下である構成なので、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と高濃度p型半導体層8とを良好にオーミック接触させて、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。これにより、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができ、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0070】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、基板1上にn型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15と、p型半導体層5よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層8をこの順序で積層する工程と、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する光取り出し部形成工程と、を具備する構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げたこの半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0071】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、光取り出し部形成工程が、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部または一部を凹凸部33とする工程である構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0072】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、光取り出し部形成工程が、凹部33b内におけるp型半導体層5に、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40を形成する工程である構成なので、低濃度p型半導体領域40を容易に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0073】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、凹部33bを、p型半導体層5の途中まで達するようにエッチングして形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0074】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、凹部33bを、ドライエッチング法で形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0075】
本発明の実施形態である半導体発光素子11の製造方法は、ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成する構成なので、高精細なエッチングパターンのエッチング用マスクを形成することができ、凹凸部33からの光取り出し性能を向上させることができる。
【0076】
(第2の実施形態)
<半導体発光素子>
図6は、本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の一例を示す断面図である。
図6に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子12は、n型半導体層3、発光層4、p型半導体層5からなる積層半導体層15の上面15aの一部に、凹凸部33が形成されており、凹凸部33を成す凸部33a上に形成された高濃度p型半導体層8と積層半導体層15の上面15aの全面を覆うように透光性電流拡散層20が積層されている他は、実施形態1に示した半導体発光素子10と同様の構成とされている。なお、実施形態1で示した部材と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0077】
このように、積層半導体層15の上面15a一部のみに光取り出し効率向上のための凹凸部33を形成してもよい。一部であっても凹凸部33が形成されているので、正面方向fへの光取り出し性を向上させることができる。
【0078】
図7は、図6のC部の拡大断面図である。図7に示すように、積層半導体層15の上面15aに光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bは、p型半導体層5の途中まで達する深さで形成されている。
凹部33b内には、p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dが露出されている。p型半導体層5の側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0079】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
【0080】
凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0081】
開口が円形状の穴よりなる凹部33bの代わりに、積層半導体層15の上面15aの全面に複数の凸部33aを円柱状に形成してもよい。また、凸部33aの形状は、凸部33aの上面が平坦面であれば円柱状に限られるものではなく、角柱状などであってもよく、断面形状が台形状となる略円柱状であってもよい。
なお、本実施形態において、凹凸部33は、平面視したときに積層半導体層15の上面15aの一部(中心部分)にのみ形成されているが、第1の実施形態と同様に、凹凸部33を積層半導体層15の上面15aの全面に形成してもよい。
【0082】
図7に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
【0083】
図6及び図7に示すように、透光性電流拡散層20は、凹凸部33の全面を覆うように形成されている。
透光性電流拡散層20は凹凸部33の全面を覆うように形成されているが、凹部33bの側壁面33c及び底面33dの近傍領域には、それぞれ高抵抗化された低濃度p型半導体領域40が形成されているので、低濃度p型半導体領域40を挟む透光性電流拡散層20からp型半導体層5へはほとんど電流が注入されない。そのため、透光性電流拡散層20全面に電流を拡散させることができる。
【0084】
なお、低濃度p型半導体領域40が形成されていない場合は、ボンディングパッド7の直下およびその周辺領域で、透光性電流拡散層20から発光層4へ電流が容易に流れて、透光性電流拡散層20全面には拡がらない。
【0085】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の別の一例について図8を用いて説明する。
まず、実施形態1と同様の第1工程を行って、基板1上に、バッファ層2を形成した後、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成した後、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を形成する。
【0086】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの一部を凹凸部33とした後、透光性電流拡散層20を形成する。
【0087】
まず、図8(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aに高濃度p型半導体層8を形成して、積層体16を形成した後、積層体16をエッチングして、p型半導体層5の途中まで達する深さの凹部33bを形成して、光取り出し効率向上のための凹部33bと凸部33aとからなる凹凸部33を形成する。
なお、このとき、実施形態1と同様に、エッチングしない部分(凸部33aの上面)を保護するエッチング用マスクを形成した後、前記エッチング用マスクを用いてドライエッチングして凹部33bを形成する。また、このとき、正極のボンディングパッド7を形成する部分は平坦面となるようにエッチングする。
【0088】
次に、図8(b)に示すように、高濃度p型半導体層8及び積層半導体層15の上面15aを覆うように透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図8(c)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0089】
次に、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図8(d)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子12を作製する。
【0090】
本発明の第2の実施形態である半導体発光素子12は、第1の実施形態で示した効果と同様の効果の他に、以下の効果を有する。
本発明の実施形態である半導体発光素子12は、透光性電流拡散層20が、凹凸部33の全面に積層されている構成なので、透光性電流拡散層20全面に電流を拡散させることができる。これにより、光取り出し部35全面から光を取り出すことができる。
【0091】
本発明の実施形態である半導体発光素子12の製造方法は、光取り出し部形成工程が、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの全部または一部を凹凸部33とした後、透光性電流拡散層20を形成する工程である構成なので、光取り出し部35を容易に形成することができる。
【0092】
本発明の実施形態である半導体発光素子12の製造方法は、透光性電流拡散層20を、凹凸部33の全面に積層する構成なので、透光性電流拡散層20を容易に形成することができることができる。
【0093】
(第3の実施形態)
<半導体発光素子>
図9は、本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の一例を示す断面図である。
図9に示すように、本発明の実施形態である半導体発光素子13は、積層半導体層15の上面15aの一部に凹凸部33が形成されるとともに、凹部33bが、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる深さで形成されている他は、実施形態1に示した半導体発光素子10と同様の構成とされている。なお、実施形態1で示した部材と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0094】
図10は、図9のD部の拡大断面図である。図10に示すように、積層半導体層15の上面15aに光取り出し効率向上のための凹凸部33が形成されている。凹凸部33を成す凹部33bは、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3の途中まで達するような深さで形成されている。
このような凹凸部33を形成した場合には、発光層4の側面から取り出した光を正面方向fへ取り出して、正面方向fへの光取り出し効率を向上させることができる。
【0095】
図10に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
そのため、透光性電流拡散層20から発光層4へ流れる電流は、図10に示す矢印42のように局所的に集中して流れる。これにより、透光性電流拡散層20から発光層4へ効率的に、無駄なく電流を流すことができ、この半導体発光素子の発光効率を向上させることができる。これにより、この半導体発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0096】
凹部33b内には、p型半導体層5の側壁面33cが露出されている。p型半導体層5の側壁面33cの近傍領域には、p型半導体層5よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域40が形成されている。
【0097】
低濃度p型半導体領域40は、凹凸部33の形成にともなって、p型半導体層5がエッチングされることにより、p型半導体層5からMgなどのp型ドーパントが揮散されて形成された領域である。Mgなどのp型ドーパント濃度(不純物濃度)が低減されて、高抵抗化された領域となっている。
【0098】
凹部33bは、開口が円形状の穴よりなり、積層半導体層15の上面15aの全面に複数形成されている。このとき、凸部33aは、凹部33b以外の積層半導体層15の上面15a部分となる。
凹部33bの開口は、円形状の穴に限られるものではなく、たとえば、四角形状または多角形状の穴であってもよい。凸部33aの上面は、平坦面であることが好ましい。
【0099】
図9及び図10に示すように、透光性電流拡散層20とp型半導体層5との間には高濃度p型半導体層8が形成されている。高濃度p型半導体層8は、pオーミック電極である透光性電流拡散層20と良好にオーミック接触するので、透光性電流拡散層20からp型半導体層5へ電流を容易に注入することができる。
【0100】
なお、凹部33b内で、p型半導体層5だけでなく、発光層4およびn型半導体層3の表面も露出されている。しかし、p型半導体層5の側壁面33cには、低濃度p型半導体領域40が形成されているので、何らかの要因によりゴミなどが入り込み、p型半導体層5と発光層4との間に付着したとしても、p型半導体層5と発光層4との間でリークなどを生じさせることはない。
【0101】
<半導体発光素子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である半導体発光素子の製造方法の一例について図11を用いて説明する。
まず、実施形態1と同様の第1工程を行って、基板1上に、バッファ層2を形成した後、n型半導体層3、発光層4及びp型半導体層5をこの順序で結晶成長して、積層半導体層15を形成した後、積層半導体層15上に高濃度p型半導体層8を形成する。
【0102】
<第2工程:光取り出し部形成工程>
光取り出し部形成工程は、積層半導体層15の上面15aの全部または一部に凹凸部33を形成するとともに、少なくとも凹凸部33をなす凸部33a上に透光性電流拡散層20を形成する工程である。
本実施形態では、透光性電流拡散層20を形成した後、少なくともp型半導体層5の一部をエッチングにより除去して凹部33bを形成して、積層半導体層15の上面15aの一部を凹凸部33とする。
【0103】
まず、高濃度p型半導体層8上に透光性電流拡散層20を形成する。
次に、図11(a)に示すように、積層半導体層15の上面15aに、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、p型半導体層5及び発光層4を貫通して、n型半導体層3を露出させる凹部33bをエッチングにより形成して、凹凸部33を形成する。なお、このとき、ボンディングパッド7を形成する領域には、凹凸部33は形成しない。
なお、このとき、実施形態1と同様に、エッチングしない部分(凸部33aの上面)を保護するエッチング用マスクを形成した後、前記エッチング用マスクを用いてドライエッチングして凹部33bを形成する。
【0104】
次に、図11(b)に示すように、透光性電流拡散層20、高濃度p型半導体層8、発光層4及びp型半導体層5を貫通して、n型半導体層3を露出させる切り欠き部31をエッチングにより形成する。
【0105】
次に、透光性電流拡散層20上及び切り欠き部31内のn型半導体層3の上面にそれぞれボンディングパッド7、6を形成する。
最後に、図11(c)に示すように、素子分離ライン50に沿って素子ごとに分離して、半導体発光素子13を作製する。
【0106】
本発明の実施形態である半導体発光素子13は、積層半導体層15の凹凸部33をなす凹部33bが、p型半導体層5、発光層4を貫通してn型半導体層3の途中まで達しているので、光取り出し効率をより一層向上させることができる。
【0107】
また、本発明の実施形態である半導体発光素子13は、p型半導体層5の側壁面33cに低濃度p型半導体領域40が形成されている構成なので、何らかの要因によりゴミなどが入り込み、p型半導体層5と発光層4との間に付着したとしても、p型半導体層5と発光層4との間でリークなどを生じさせることはない。
【0108】
本発明の実施形態である半導体発光素子13の製造方法は、凹部33bを、p型半導体層5、発光層4を貫通してn型半導体層3の途中まで達するようにエッチングして形成する構成なので、p型半導体層5に低濃度p型半導体領域40を確実に形成することができ、光取り出し効率を向上させ、駆動電圧を下げた半導体発光素子13を容易に形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0109】
<実施例1>
図1に示した半導体発光素子を次のようにして作製した。
まず、MOCVD装置を用いて、基板上に窒化ガリウム系化合物からなるn型半導体層、発光層及びp型半導体層をこの順序で結晶成長して、積層半導体層を形成した後、前記積層半導体層上に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を形成して、半導体層を形成した素子基板を形成した。
なお、前記p型半導体層及び前記高濃度p型半導体層のp型ドーパントとしてはMgを用い、そのドーパント濃度はそれぞれ、5×1019/cm3、1×1020/cm3とした。
【0110】
次に、スパッタ装置を用いて、半導体層を形成した素子基板の前記高濃度p型半導体層上に透光性電流拡散層を形成した。
次に、ドライエッチング装置に前記透光性電流拡散層を形成した素子基板を入れて、前記積層半導体層の上面の一部をn型半導体層が露出するまでエッチングして切り欠き部を形成した。
次に、前記ドライエッチング装置から取り出した前記素子基板の前記積層半導体層の上面に、ナノインプリント法を用いてエッチング用マスクを形成した後、再び、ドライエッチング装置にこの素子基板を入れて、前記積層半導体層の上面をエッチングして凹部を形成して、光取り出し性向上のための凹凸部を形成した。このとき、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部内の前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成された。低濃度p型半導体領域のドーパント濃度は、1×1019/cm3未満であった。
【0111】
最後に、正極のボンディングパッドを前記透光性電流拡散層上に形成し、負極のボンディングパッドを前記n型半導体層上に形成した後、素子分離ラインで分離して、実施例1の半導体発光素子を形成した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0112】
<比較例1>
高濃度p型半導体層のドーパント濃度を5×1019/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例1の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0113】
<比較例2>
p型半導体層のドーパント濃度を1×1020/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例2の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
【0114】
<比較例3>
前記凹凸部を形成せず、p型半導体層のドーパント濃度を1×1020/cm3とした他は実施例1と同様にして比較例3の半導体発光素子を作製した。その後、この半導体発光素子の電流−電圧−輝度特性を測定した。
実施例1、比較例1〜3の作製条件及び測定結果を、表1にまとめた。
【0115】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の半導体発光素子は、光取り出し効率に優れ、且つ、低い駆動電圧で動作可能である。各種照明装置や表示装置などの発光装置を製造・利用する産業において利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は断面図である。
【図2】図1に示す半導体発光素子の積層半導体層の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図5】本発明の第1の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【図9】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の拡大断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態である半導体発光素子の製造工程図である。
【符号の説明】
【0118】
1…基板。
2…バッファ層。
3…n型半導体層。
4…発光層。
5…p型半導体層。
6…ボンディングパッド(負極)。
7…ボンディングパッド(正極)。
8…高濃度p型半導体層。
9…下地層。
11、12、13…半導体発光素子。
15…積層半導体層。
15a…上面。
16…積層体。
20…透光性電流拡散層。
31…切り欠き部。
33…凹凸部。
33a…凸部。
33b…凹部。
33c…側壁面。
33d…底面。
35…光取り出し部。
40…低濃度p型半導体領域。
50…素子分離ライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたn型半導体層、前記n型半導体層に積層された発光層及び前記発光層に積層されたp型半導体層とからなる積層半導体層と、前記積層半導体層の上面の全部または一部に形成された光取り出し性向上のための凹凸部と、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凸部上に積層された、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層と、少なくとも前記高濃度p型半導体層上に積層された透光性電流拡散層と、を具備してなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部が、前記p型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記透光性電流拡散層が、前記凹凸部の全面に積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記積層半導体層の前記凹凸部をなす凹部が、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記p型半導体層、前記高濃度p型半導体層及び前記低濃度p型半導体領域が窒化ガリウム系半導体から構成されるとともに、これらに含まれるドーパントがMgであり、前記p型半導体層のドーパント濃度が1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満の範囲であり、前記高濃度p型半導体層のドーパント濃度が1×1020/cm3以上であり、前記低濃度p型半導体領域のドーパント濃度が1×1019/cm3未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる積層半導体層を形成するとともに、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を前記p型半導体層上に積層することにより、積層体を形成する工程と、
前記積層体の上面の全部または一部に凹凸部を形成するとともに、少なくとも前記凹凸部をなす凸部上に透光性電流拡散層を形成する光取り出し部形成工程と、を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記光取り出し部形成工程が、前記高濃度p型半導体層上に前記透光性電流拡散層を形成する工程と、前記透光性電流拡散層を貫通して前記積層体に達する凹部をエッチングで形成する工程とからなることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記光取り出し部形成工程が、前記積層体上に凹部をエッチングで形成する工程と、前記積層体の上面に前記透光性電流拡散層を形成する工程とからなることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記積層体に凹部を形成することによって、少なくとも前記p型半導体層に凹部を形成すると同時に、前記凹部内に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域を形成することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記凹部を、前記p型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記透光性電流拡散層を、前記積層体の上面全面に積層することを特徴とする請求項11に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記凹部を、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする請求項7、8または10のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記凹部を、ドライエッチング法で形成することを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたn型半導体層、前記n型半導体層に積層された発光層及び前記発光層に積層されたp型半導体層とからなる積層半導体層と、前記積層半導体層の上面の全部または一部に形成された光取り出し性向上のための凹凸部と、前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凸部上に積層された、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層と、少なくとも前記高濃度p型半導体層上に積層された透光性電流拡散層と、を具備してなることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記高濃度p型半導体層の厚みが50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記積層半導体層の前記凹凸部を成す凹部が、前記p型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記透光性電流拡散層が、前記凹凸部の全面に積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記積層半導体層の前記凹凸部をなす凹部が、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達しており、前記凹部内における前記p型半導体層に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記p型半導体層、前記高濃度p型半導体層及び前記低濃度p型半導体領域が窒化ガリウム系半導体から構成されるとともに、これらに含まれるドーパントがMgであり、前記p型半導体層のドーパント濃度が1×1019/cm3以上1×1020/cm3未満の範囲であり、前記高濃度p型半導体層のドーパント濃度が1×1020/cm3以上であり、前記低濃度p型半導体領域のドーパント濃度が1×1019/cm3未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
基板上にn型半導体層、発光層、p型半導体層からなる積層半導体層を形成するとともに、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が高い高濃度p型半導体層を前記p型半導体層上に積層することにより、積層体を形成する工程と、
前記積層体の上面の全部または一部に凹凸部を形成するとともに、少なくとも前記凹凸部をなす凸部上に透光性電流拡散層を形成する光取り出し部形成工程と、を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記光取り出し部形成工程が、前記高濃度p型半導体層上に前記透光性電流拡散層を形成する工程と、前記透光性電流拡散層を貫通して前記積層体に達する凹部をエッチングで形成する工程とからなることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記光取り出し部形成工程が、前記積層体上に凹部をエッチングで形成する工程と、前記積層体の上面に前記透光性電流拡散層を形成する工程とからなることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記積層体に凹部を形成することによって、少なくとも前記p型半導体層に凹部を形成すると同時に、前記凹部内に、前記p型半導体層よりもドーパント濃度が低い低濃度p型半導体領域を形成することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記凹部を、前記p型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記透光性電流拡散層を、前記積層体の上面全面に積層することを特徴とする請求項11に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記凹部を、前記p型半導体層、前記発光層を貫通して前記n型半導体層の途中まで達するように形成することを特徴とする請求項7、8または10のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記凹部を、ドライエッチング法で形成することを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記ドライエッチング法で用いるエッチング用マスクを、ナノインプリント法、EB露光法またはレーザー露光法のいずれかの方法で形成することを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−98234(P2010−98234A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269788(P2008−269788)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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