半導体発光素子及び半導体発光装置
【課題】半導体発光素子のFC(フリップチップ)実装技術において、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制し、且つ発光出力(Po)を増大させる。
【解決手段】第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子。
【解決手段】第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、通常、透明電極上に、金(Au)等のボンディングワイヤと接続する部分にボンディングパッドを形成している。最近、発光波長に対して透光性の基板上に形成された半導体発光素子を裏返し、回路基板(サブマウント)またはパッケージに搭載するフリップチップボンディング(FC)実装技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透光性基板と、n型半導体層/発光層/p型半導体層が積層された半導体層と、n型半導体層に接合される負電極と、p型半導体層に接合される正電極と、正電極及び負電極にそれぞれ接続される正電極パッド及び負電極パッドとを備えたフリップチップ型半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FC実装技術によれば、正電極を構成する透明導電層の膜厚を薄くすることにより、発光層から出射される光の吸収が減少する傾向がある。しかし、透明導電層の膜厚を過度に薄くするとシート抵抗が増大する傾向がある。そのため、電流の拡散が不良となり、順方向電圧(Vf)が上昇するおそれがある。
本発明の目的は、半導体発光素子のFC(フリップチップ)実装技術において、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制し、且つ発光出力(Po)を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下、[1]〜[10]が提供される。
[1]第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子。
[2]前記膜厚部は、前記絶縁層側に凸部を有することを特徴とする前項[1]に記載の半導体発光素子。
[3]前記膜厚部は、平面視で、孤立パタ−ン又は格子状パタ−ンを含むことを特徴とする前項[1]又は[2]に記載の半導体発光素子。
[4]前記絶縁層は、二酸化ケイ素から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[5]前記透明導電層は、インジウム(In)を含む導電性の酸化物から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[6]前記積層半導体層は、III族窒化物半導体から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[7]前記積層半導体層は、前記第1の半導体層の前記第1の導電型が電子をキャリアとするn型であり、前記第2の半導体層の前記第2の導電型が正孔をキャリアとするp型であることを特徴とする前項[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[8]前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする前項[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0007】
[9]半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、前記半導体発光素子は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、前記正極は、前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、当該凸部側に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の二酸化ケイ素からなる絶縁層と、当該絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、当該絶縁層を通して形成され、一端が当該透明導電層の当該凸部に電気的に接続され且つ他端が当該金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含み、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置されることを特徴とする半導体発光装置。
[10]前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする前項[9]に記載の半導体発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、第1の半導体層と接続する第1の電極と、第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備えた半導体発光素子において、第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む半導体発光素子を提供することにより、半導体発光素子の発光出力(Po:単位mW)が増大する。
即ち、透明導電層内に、他の部分(基部)より膜厚が大きい複数の膜厚部を形成し、他の部分(基部)は薄膜にすることにより、当該複数の膜厚部を有しない半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:単位mW)が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される半導体発光装置の断面模式図の一例を示す図である。
【図2】半導体発光素子の断面模式図の一例である。
【図3】半導体発光素子の平面模式図の一例である。
【図4】積層半導体層の断面模式図の一例である。
【図5】第1の電極の断面模式図の一例である。
【図6】第2の電極の断面模式図の一例である。
【図7】透明導電層に設けた膜厚部のパターン(孤立パターン)の一例を示す図である。
【図8】透明導電層に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。
【図9】透明導電層に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。
【図10】透明導電層に設けた膜厚部のパターンの他の一例を示す図である。
【図11】絶縁層の膜厚と反射率の関係を示すシミュレーション関係結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するための一例であり、実際の大きさを表すものではない。
【0011】
<半導体発光装置>
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光装置1の断面模式図の一例である。半導体発光装置1は、光を出射する半導体発光素子10と、半導体発光素子10を固定するとともに、半導体発光素子10に電力を供給する配線を設けた回路基板の一例としてのサブマウント15とを備えている。
【0012】
半導体発光素子10は、基板110、中間層120、下地層130、積層半導体層100を備えている。また、半導体発光素子10は、正負一対の接続電極の一例として、負極として働く第1の電極180と、正極として働く第2の電極170とを備えている。積層半導体層100は、後述するように、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160から構成されている。尚、第1の電極180は、積層半導体層100の一部を切り欠いた部分に設けられている。
また、第1の電極180および第2の電極170の表面の一部を除き、中間層120、下地層130、積層半導体層100の表面および側面を覆う保護層190を備えている。尚、半導体発光素子10の詳細については後述する。
【0013】
サブマウント15は、サブマウント基板10B、サブマウント基板10B上に設けられたサブマウント配線11,12、半導体発光素子10の第1の電極180および第2の電極170とサブマウント配線11,12とを電気的に接続する接続子の一例としてのバンプ21,22を備えている。
【0014】
図1では、半導体発光素子10は、基板110側が上側に位置している。すなわち、半導体発光素子10は、裏返してサブマウント15に実装されている。このように、サブマウント15に対して、半導体発光素子10を裏返して実装することをフリップチップ(FC)実装またはフリップチップ(FC)ボンディングと呼ぶ。また、半導体発光素子10が裏返して実装されることから、この実装形式をフェイスダウン(FD)実装とも呼ぶ。
【0015】
本実施の形態における光の取り出しについて説明する。半導体発光素子10の積層半導体層100(具体的には、後述する図2における発光層150)において出射した光のうち、基板110側に進む光は、外部(図1の上側方向)に取り出される。一方、発光層150が出射する光のうち、第2の電極170側に進む光は、第2の電極170に設けられ、発光層150が出射する光に対して反射性を示す反射層(後述する、図6に示す絶縁層172及び金属反射層173)で反射され、基板110側に向かい、外部(図1の上側方向)に取り出される。また、積層半導体層100、中間層120、下地層130の側面から外部に取り出される光もある。以下、サブマウント15、半導体発光素子10の順に詳細な構成を説明する。
【0016】
(サブマウント)
サブマウント15のサブマウント基板10Bとしては特に限定されず、例えば、セラミック基板、AlN(窒化アルミニウム)基板、Al(アルミ)基板、Cu(銅)基板、ガラスエポキシ基板等の絶縁性または導電性の各種の基板を選択して用いることができる。
尚、Al基板等の導電性の基板を用いるときには、サブマウント配線11,12とサブマウント基板10Bとを電気的に絶縁するため、サブマウント配線11,12の少なくとも一方は絶縁層を介して設けられている。
半導体発光素子10の第1の電極180及び第2の電極170とサブマウント基板10Bのサブマウント配線11,12とを接続するバンプ21,22としては、例えば、Sn(錫)を添加したAu(Au−Sn合金)ボールや半田ボールが用いうる。特に、接続(圧着)時の加熱温度が約300℃のAu−Sn合金が好ましい。
以下、半導体発光素子10について詳細な構成を説明する。
【0017】
<半導体発光素子>
図2は、半導体発光素子の断面模式図の一例である。図3は、図2に示すように、半導体発光素子をIII方向からみた平面模式図の一例である。図4は、半導体発光素子を構成する積層半導体の断面模式図の一例である。
図2に示すように、半導体発光素子10は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子10は、下地層130上に積層される積層半導体層100を備えている。積層半導体層100は、下地層130側から、第1の導電型を有する第1の半導体層としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層としてのp型半導体層160とから構成されている。
【0018】
さらに、半導体発光素子10は、積層されたp型半導体層160、発光層150および第1の半導体層としてのn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140cに形成される第1の電極180と、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160cに形成される第2の電極170とを備えている。
【0019】
さらにまた、半導体発光素子10は、第1の電極180および第2の電極170と、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)に積層される保護層190をさらに備える。ただし、保護層190は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)の側壁面の全域、基板110の一部の上面110cを覆うように形成される。
【0020】
第1の電極180に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第1の接続子)21により外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。同様に、第2の電極170に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第2の接続子)22により外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。
【0021】
本実施の形態の半導体発光素子10は、基板110とは反対側となる一方の面側に第1の電極180および第2の電極170が形成された構造を有している。この半導体発光素子10においては、第1の電極180を負極、第2の電極170を正極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0022】
次に、図3に示すように、平面視したとき(図2に示す半導体発光素子10をIII方向からみた平面模式図)、第1の電極180は、平面形状が正方形の基板110の一つの角部に近接した部分に形成されている。第1の電極180は、露出した半導体層露出面140c上に形成され、さらに、第1の電極180の上面には、外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。
第2の電極170は、第1の電極180を形成するためにエッチング等の手段により一部が除去された部分を除き、p型半導体層160の上面160cの略全面を覆うように形成されている。第2の電極170の上面には、第2の電極170を露出させ、外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。また、後述するように、第2の電極170を構成する透明導電層に設けた膜厚部と金属反射層とを電気的に接続する複数の導体部176が設けられている。尚、図3では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
次に、半導体発光素子10の各層について説明する。
【0023】
(基板)
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の半導体発光素子10は、後述するように、基板110側から光を取り出すようにフリップチップ実装されることから、発光層150から出射される光に対する光透過性を有していることが好ましい。例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板110を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板110として用いることが好ましい。サファイアを基板110として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0024】
(積層半導体層)
積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。また、図4に示すように、n型半導体層140、発光層150及びp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。積層半導体層100は、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行い、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行う。
尚、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0025】
(中間層)
中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上を介して、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。尚、本発明においては、中間層120を形成することが好ましいが、行なわなくても良い。
【0026】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板110上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
【0027】
(下地層)
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。また、下地層130の膜厚は、生産コストの点で好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0028】
(n型半導体層)
図4に示すように、例えば、第1の導電型を有する第1の半導体層の一例としての、電子をキャリアとするn型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。尚、nコンタクト層140aはnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
nコンタクト層140aは、第1の電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0029】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017/cm3〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第1の電極180との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5μm〜5μmに設定することが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0030】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaNやGaInNのように記載することがある。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005μm〜0.5μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.1μmである。nクラッド層140bのn型ドープ濃度は1×1017/cm3〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0031】
尚、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0032】
(発光層)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
図4に示すような、量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1nm〜10nmとすることができ、好ましくは2nm〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
尚、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400nm〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0033】
(p型半導体層)
図4に示すように、例えば、第2の導電型を有する第2の半導体層の一例としての、正孔をキャリアとするp型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0034】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
pクラッド層160aのp型ドープ濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019/cm3〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、AlGaNとAlGaNとの交互構造又はAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0035】
pコンタクト層160bは、第2の電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第2の電極170との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018/cm3〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019/cm3〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0036】
(第1の電極)
図5は、第1の電極180の断面模式図の一例を示す図である。
第1の電極180は、例えば、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第1導電層181と、第1導電層181上に積層される第1ボンディング層182と、上述した第1ボンディング層182の露出部位である第1の開口部180aを除いて第1ボンディング層182を覆うように設けられ、第1ボンディング層182と反対側の面には保護層190が積層される第1密着層183とを有している。
【0037】
(第1導電層)
図5に示すように、n型半導体層140の上には第1導電層181が積層されている。前述したように平面視で第1導電層181(図3参照)の片側は、半円形状の外形を有している。そして、第1導電層181の中央部は一定の膜厚を有し半導体層露出面140c(図2参照)に対しほぼ平坦に形成される一方、第1導電層181の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。ただし、第1導電層181は、このような形状に限定されるわけでなく、隙間を開けて格子状や樹形状に形成してもよく、また、矩形状の断面を有していてもよく、さらに円形状以外の外形を有していてもよい。
【0038】
第1導電層181は、n型半導体層140とオーミックコンタクトがとれ、しかもn型半導体層140との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1導電層181として、例えば、Al(アルミニウム)、Ti/Al、Ta/Al、アモルファスIZO/Al等が用いられる。第1導電層181を構成するAl(アルミニウム)は、後述する第2の電極170の金属反射層173(図6参照)を構成するAg(銀)と同様、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の波長の光に対して、高い光反射性を有しており、こちらも金属反射層として機能するようになっている。第1導電層181の膜厚は、通常1nm〜300nmの範囲内で設けられる。
【0039】
(第1ボンディング層)
図5に示すように、第1導電層181の上には第1ボンディング層182が積層されている。第1ボンディング層182は、第1導電層181の全域を覆うように形成されている。そして、第1ボンディング層182の中央部は一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、第1ボンディング層182の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。
【0040】
第1ボンディング層182は、後述する第2の電極170の第2ボンディング層174と同様、第1導電層181と接するように少なくとも1層以上の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層(第1ボンディング層182)には、例えば、Au(金)が用いられる。また、第1ボンディング層182の全体の厚さは、好ましくは50nm〜8000nmに設定されている。尚、第1ボンディング層182を複数の金属層の積層構造とすることもできる。
【0041】
(第1密着層)
図5に示すように、第1ボンディング層182の上には第1密着層183が積層されている。第1密着層183は第1ボンディング層182の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第1密着層183の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第1密着層183の端部側はn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。この第1密着層183の側面側の端部は、n型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)と接するように設けられている。
【0042】
第1密着層183は、例えば、Au(金)で構成された第1ボンディング層182と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第1密着層183はTi(チタン)で形成されている。ただし、第1密着層183として、Ti以外に、例えば、Ta(タンタル)やNi(ニッケル)を用いることも可能である。第1密着層183の膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に小さいと、保護層190やボンディング層175,182との密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に大きいと、生産性コストにも影響し、好ましくない。
【0043】
(第2の電極)
次に、第2の電極170の構成について説明する。図6(a)は、第2の電極170の断面模式図の一例である。図6(b)は、第2の電極170の要部を説明する図である。
図6(a)に示すように、第2の電極170は、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160c上に積層される透明導電層171と、この透明導電層171上に積層され且つ透明導電層171より低屈折率の透明な絶縁層172と、絶縁層172上に積層された反射層としての導電性の金属反射層173と、絶縁層172を通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が金属反射層173と電気的に接続される導体部176と、を有している。なお、金属反射層173と導体部176は、いずれも反射層としての機能を有する。さらに、金属反射層173上に積層される第2ボンディング層174と、第2ボンディング層174の露出部位である第2の開口部170aを除き第2ボンディング層174を覆うように設けられた第2密着層175とを有している。また、第2密着層175の第2ボンディング層174側と反対側の面に保護層190が積層されている。
【0044】
(透明導電層)
図6(a)に示すように、透明導電層171は、前述した第2の電極170を形成するために、公知なエッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cの周縁部を除くほぼ全面に形成されている。
本実施の形態では、透明導電層171が、p型半導体層160の上面を覆う連続的な基部171aと、p型半導体層160側と反対側の絶縁層172側に設けた複数の凸部171bとから構成されている。透明導電層171の凸部171bを設けた部分は、他の部分より厚さが大きい膜厚部を構成している。
尚、図示しないが、本実施の形態に限定されず、膜厚部を構成するために、透明導電層171の凸部171bは、基部171aのp型半導体層160側に設けてもよい。その場合、透明導電層171の絶縁層172側は平坦な形状に形成される。
【0045】
図6(b)に示すように、透明導電層171の凸部171bを設けない領域の厚さ(基部171aの厚さ(x)という。)は、本実施の形態では、20nm〜70nmの範囲より選択することができる。また、好ましくは、本実施の形態では20nm〜60nmの範囲より選択される。例えば、参考データとして、凸部171bを有しない基部171aの厚さ(x)からなる透明導電層171のシート抵抗は、製造方法にも依存するものの、膜厚が10nmの時は無限大(∞)であり、膜厚が20nmの時は250Ω/□、膜厚が25nmの時は175Ω/□、膜厚が50nmの時は72Ω/□、膜厚が100nmの時は29Ω/□、膜厚が200nmの時は15Ω/□である。
基部171aの厚さ(x)が過度に薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくく、また順方向電圧(Vf)が上昇する傾向がある。基部171aの厚さ(x)が過度に厚いと、発光層150からの発光及び金属反射層173からの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。
尚、本実施の形態では、基部171aの中央部は一定の膜厚を有し、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平坦に形成される一方、基部171aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0046】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の厚さ(y)は、本実施の形態では、100nm〜300nmの範囲より選択される。また、好ましくは、150nm〜250nmの範囲より選択される。膜厚部の厚さ(y)が過度に薄い場合又は過度に厚い場合、発光層150からの発光及び金属反射層173からの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。尚、透明導電層171は、FC実装技術における使用において、光吸収性があるが故に特定の膜厚以下の薄膜として使用するのが好ましい。
【0047】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の幅(z)は、本実施の形態では、10μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、15μm〜25μmの範囲より選択される。膜厚部の幅(z)が過度に大きいと、当該膜厚部による光の吸収により、反射層から光の強度に影響が出る傾向がある。膜厚部の幅(z)が過度に小さいと、Vfが高くなる。また、絶縁層172中の貫通穴とのアライメントが困難になる傾向がある。
尚、平面視における凸部171bを含む膜厚部の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの縦方向の断面形状は、特に限定されず、長方形、台形、円錐、角錐、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの膜厚部は、これらの断面形状を有する凸部171bを結合する直線部分とから構成される格子状パターンを有してもよい(後述)。さらにまた、凸部171bの平面断面積は特に限定されず、さらに、複数の凸部171bのそれぞれの平面断面積は、同一又は異なる場合も含まれる。
【0048】
透明導電層171における複数の膜厚部は、所定の間隔(ピッチl)で設けられる。本実施の形態では、ピッチlは、10μm〜120μmの範囲より選択される。また、好ましくは、20μm〜100μmの範囲より選択される。ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、発明の効果が低減し、発光強度が向上しない傾向がある。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向がある。ただし、Aは凸部171bの面積であり、Bは基部171aの面積である。(A/B)は基部171aの面積(B)に対する凸部171bの面積(A)の割合である。
【0049】
透明導電層171を構成する材料は、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される波長の光を、少なくとも80%程度透過する材料が用いられる。例えば、In(インジウム)を含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。尚、これらの中に、例えば、フッ素等のドーパントが添加されていてもよい。また、例えば、Inを含まない酸化物として、例えば、キャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いることもできる。これらの材料を用い、当該技術分野でよく知られた慣用手段によって、透明導電層171を形成できる。また、透明導電層171を形成した後、透明導電層171の透明化と更なる低抵抗化とを目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0050】
本実施の形態において、透明導電層171の材料として、結晶構造を有するものを使用することができる。例えば、特に、六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITO、IZO等)が好ましい。また、例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを用いる場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させ、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。
【0051】
また、透明導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%の範囲が更に好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0052】
透明導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。尚、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
【0053】
IZO膜の熱処理温度は、500℃〜1000℃が好ましい。熱処理温度が過度に低いと、IZO膜を十分に結晶化できず、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。熱処理温度が過度に高いと、IZO膜は結晶化されているが光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。また、この場合、IZO膜の下にある半導体層を劣化させるおそれもある。
【0054】
アモルファス状態のIZO膜を結晶化させる場合、成膜条件や熱処理条件などが異なるとIZO膜中の結晶構造が異なる。しかし、本発明の実施形態においては、他の層との接着性の点において、透明導電層171は材料に限定されないが結晶性の材料の方が好ましく、特に結晶性IZOの場合にはビックスバイト結晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよく、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよい。特に六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOがよい。
【0055】
特に、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べ、p型半導体層160との密着性が良いため、本発明の実施形態において有効である。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、半導体発光素子10を構成した際に、順方向電圧(Vf)を低減できる点でも好ましい。
【0056】
(絶縁層)
図6(a)に示すように、絶縁層172は、透明導電層171上に積層され、金属反射層173と組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての機能を有している。本実施の形態では、後述するように、絶縁層172を貫通するように形成された導体部176が設けられている。
絶縁層172は、発光層150から出力される光に対し少なくとも90%程度、好ましくは95%以上の透過性を有し、透明導電層171と比べて低屈折率、且つ絶縁性を有する。絶縁層172を構成する材料としては、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)等が挙げられる。本実施の形態では、絶縁層172として、屈折率n1=1.48(450nm波長)のSiO2(二酸化ケイ素)を用いている。尚、透明導電層171を構成するIZO膜の屈折率n2は2.21(450nm波長)である。
【0057】
本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、絶縁層172の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)との関係において、以下に示す式(1)の関係で設定される。但し、式(1)においてAは整数である。ここで、Qは、上述のように発光層150の発光波長λ(nm)を絶縁層172の屈折率nの4倍で除したものを示す。
H=AQ (1)
【0058】
また、絶縁層172の膜厚(H)は、以下の式(2)に基づいて設定されることが好ましい。膜厚Hが5λ/4nより大きい範囲がさらに好ましい。即ち、膜厚Hは5Q以上がさらに好ましい。但し、生産コストの制約から膜厚(H)は20Q(=(20λ/4n))以下であることが好ましい。
(5λ/4n)<H (2)
【0059】
本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、(5λ/4n)を超える範囲、即ち波長450nmの青色光の場合、膜厚(H)380nmを超える範囲に設けるのが好ましい。
発明者の実験データとシミュレーション結果から、特にH=3Q,5Q,7Q・・・奇数Q単位の膜厚では発光強度が増大する結果が得られ、3Q,5Q,7Q等の膜厚が特に好ましく、半導体発光素子10の出力が、絶縁層172の膜厚に依存することが確認されている。本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、特に3Q,5Q,7Q・・・奇数Q単位の膜厚であって、当該数値のプラス・マイナス0.5Q単位の範囲が特に望ましい。
より具体的には、発明者の実験により、Qが増加する(絶縁層172の膜厚が増加する)に従い、半導体発光素子10の出力が増加し、また3Q,5Q,7Q・・・の奇数Q単位の膜厚では発光強度が特に効果的に増大することが確認されている。このことから、絶縁層172の厚さが増加することにより、p型半導体層160と透明導電層171との間、透明導電層171と絶縁層172との間、及び絶縁層172と金属反射層173との間でそれぞれ反射する光の位相が重なり増反射され、その結果として半導体発光素子10の出力が増加すると考えられる。
【0060】
以下、本発明者は、第2の電極170に用いる金属反射層173としてAg(銀)を用いた場合における、絶縁層172の膜厚と反射率との関係についてシミュレーションを行った。図11は、絶縁層172の膜厚と反射率の関係を示すシミュレーション関係結果の一例である。なお、図11の横軸は、上記(1)で示すQ単位の絶縁層172の膜厚を表し、縦軸が下記に説明する構成の反射率を表す。
【0061】
まず、シミュレーションの条件を説明する。p型半導体層160としてGaNを用い、p型半導体層160上に透明導電層171としてIZOを50nmの膜厚で成膜する。次に、さらに透明導電層171上に絶縁層172としてSiO2(膜厚:0〜7Q)を成膜する。そして、絶縁層172の上に金属反射層173としてAgを150nmの膜厚で成膜するものである。ここで、発光層150から出射される光の波長λは、450nmであり、λ=450nmにおけるp型半導体層160、透明導電層170、および絶縁層172の屈折率は、それぞれ2.44、2.13、および1.48である。
【0062】
図11に示すように、シミュレーション結果としては、絶縁層172を備えることにより反射率が増加する傾向が確認できる。このことは、発明者による実験データにおいて、絶縁層172を備えることにより出力Poが増加した結果と同一の傾向を示している。
また、図11に示すように、絶縁層172の膜厚が3Q付近から、反射率が高くなっていることが分かる。したがって、本条件においては、絶縁層172の膜厚を3Q以上とすることで、半導体発光素子10の出力Poも増加するものと考えられる。
さらに、図11に示すように、絶縁層172の膜厚が5Qを超えた範囲では、反射率が安定していることも確認できる。したがって、出力Poを向上させた半導体発光素子10を安定して得るためには、膜厚は5Qを超えて製造することがよいと考えられ、この点においても、発明者による実験データに示す結果と同一の傾向が確認された。
【0063】
(金属反射層)
図6(a)に示すように、金属反射層173は、絶縁層172の全域を覆うように形成されている。金属反射層173の中央部は、一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、金属反射層173の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0064】
金属反射層173を構成する材料は、例えば、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Nd(ネオジム)Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)等の金属および少なくともこれらの1つを含む合金が挙げられる。特に、Ag(銀)または銀合金は、発光層150から出射される青色〜緑色の波長領域の光に対し、高い光反射性を有しているため好ましい。また、金属反射層173は、後述する導体部176及び透明導電層171を介しp型半導体層160への給電(ホール注入)機能も有することから、その抵抗値が低いAg(銀)または銀合金は好ましい材料である。また、透明導電層171と金属反射層173の間にアモルファス状のIZO膜を挿入すると、接触抵抗を低く抑えることができる。
【0065】
本実施の形態では、金属反射層173の厚さが、例えば、100nmに設定されている。この金属反射層173の厚さは、好ましくは90nm以上、または、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲より選択することができる。ここで、金属反射層173の厚さが過度に薄いと、発光層150からの光の反射性能が低下する傾向がある。また、金属反射層173の厚さが過度に厚いと、生産コスト高となり、また第2ボンディング層などによるオーバーコートされた金属反射層173と保護層190との段差が大きくなり、クラックが入り信頼性低下に繋がる。
【0066】
(導体部)
図6(a)に示すように、複数の導体部176は、それぞれ絶縁層172を通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が金属反射層173と電気的に接続されるように設けられている。導体部176は、第2の電極170全体に複数形成され、各導体部176を流れる電流が発光層150の発光に用いられる電流となる。本実施の形態では、複数の導体部176を設け、p型半導体層160の上面160cの面上において、p型半導体層160の全面に電流を拡散させ、発光層150における発光むらを低減している。
【0067】
導体部176のそれぞれの径は、前述した透明導電層171の膜厚部の幅(z)と同等の幅もしくはそれよりも小さい範囲で設けられる。本実施の形態では、5μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、5μm〜20μmの範囲より選択される。尚、平面視における導体部176の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。
【0068】
導体部176は、例えば、予め成膜された絶縁層172に、ドライエッチングあるいはリフトオフ等を用いて形成された貫通孔に導電性材料を充填することにより形成することができる。導体部176は、少なくとも1種の導電性材料を用いて形成され、また複数の導電性材料を用いて形成してもよい。導体部176の形成に使用する導電性材料としては、例えば、アモルファスIZO/銀合金/Ta/Pt等が挙げられる。本実施の形態においては、絶縁層172に複数の導体部176を設けることにより、第2の電極170の面上において、透明導電層171を介し、p型半導体層160の全面に亘り均一に電流を拡散させる。このことにより、発光層150における発光むらを改善することを可能とする。導体部176は、ドライエッチあるいはリフトオフ等により形成された貫通孔の壁面及び底面に施される。あるいは、絶縁層172の貫通孔に金属を充填したものとして形成されてもよい。
【0069】
(第2ボンディング層)
図6(a)に示すように、金属反射層173の上面および側面には、金属反射層173を覆うように第2ボンディング層174が積層されている。第2ボンディング層174は、金属反射層173の全域を覆うように形成されている。第2ボンディング層174の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される。本実施の形態では、第2ボンディング層174の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0070】
外部との電気的な接続に用いられる接続層としての第2ボンディング層174は、最も内側の金属反射層173等と接するように、少なくとも1層の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。さらに、本実施の形態では、第2ボンディング層174として、例えば、金属反射層173に接して形成される第1層としてのNi(ニッケル)層と、Ni層の外側に形成されるAu層からなる2層構造(Ni/Au)で形成してもよい。また、例えば、金属反射層173に接して形成される第1層としてのTa(タンタル)層と、このTa層の外側に形成される第2層としてのPt(白金)層と、このPt層の外側であって最も外側に形成される第3層としてのAu(金)層とを有する構造(Ta/Pt/Au)を採用してもよい。さらにまた、同様な構成順でTi/Pt/Auの構造を採用してもよい。例えば、Ta/Pt/Auの構造の場合には、Ta300nm、Pt100nm、Au550nmの構成で用いてもよい。
第2ボンディング層174の全体の厚さは、フリップチップ実装する際のパッド電極としての機能を有する厚さがあれば、厚さに制限なく、本実施の形態では、好ましくは50nm〜8,000nmに設定されている。
【0071】
尚、第2ボンディング層174を複数の金属層で構成する場合において、金属反射層173と接する第1層を構成する材料としては、例えば、上述したNi(ニッケル)の他、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、NiTi(ニッケルチタン)合金、およびこれらの窒化物を使用することができる。
【0072】
(第2密着層)
図6(a)に示すように、第2ボンディング層174の上面および側面には、第2ボンディング層174を覆うように第2密着層175が積層されている。第2密着層175は第2ボンディング層174の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第2密着層175の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第2密着層175の端部側はp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。この第2密着層175の側面側の端部は、p型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0073】
密着層の一例としての第2密着層175は、Au(金)で構成された第2ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第2密着層175は、例えば、Ti(チタン)で形成されている。ただし、第2密着層175として、Ti以外に、例えばTa(タンタル)やNi(ニッケル)を用いることも可能である。
尚、図示しないが、上述した第2の電極170の特徴的な構成は、前述したn型半導体層140の半導体層露出面140c上に形成される第1の電極180についても、同様に適用することができる。
【0074】
(保護層)
図5又は図6に示すように、SiO2等のシリコン酸化物からなる保護層190は、第1の電極180の一部および第2の電極170の一部を除いて、これら第1の電極180および第2の電極170を覆い、且つ、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側(図2参照))を覆うように積層されている。保護層190は、外部から水等が発光層150、第2の電極170および第1の電極180に浸入するのを抑制する保護層としての機能と、発光層150から出射された光のうち、直接基板110側に向かわず、しかも、第2の電極170の金属反射層173や第1の電極180の第1導電層181で反射されなかった光を基板110側に向けて反射する補助反射層としての機能とを有している。保護層190の膜厚は、通常50nm〜1μmの範囲内で設けられる。保護層190の膜厚が過度に小さいと保護膜としての機能を損なう恐れがあり、使用環境によっては発光出力が短期間に低下する傾向がある。また、保護層190の膜厚が過度に大きいと、光吸収により発光出力等に影響を与える傾向がある。
【0075】
(バンプ)
図1に示したバンプ(接続子)21,22は、実装基板側に予め形成しておいたボールバンプや半田バンプに限定されず、例えば、半導体発光素子10側の第1の電極180と第2の電極170の上に、予めメッキ法や蒸着を用いて突起状にバンプを形成しておいてもよい。
本実施の形態においては、この方法により半導体発光素子10側にバンプを作製することができる。特に、フォトリソグラフィー工程によりウェハ毎にバンプを形成できるので、4インチ以上の大口径ウェハでは、実装基板毎にバンプボールを形成していくよりも、生産負荷を大幅に減らすことができる利点がある。
【0076】
(膜厚部の平面形状)
図7は、透明導電層171に設けた膜厚部のパターンの一例を示す図である。図7には、図6に示した第2の電極170の断面模式図において、VII方向から見た凸部171bの平面模式図が示されている。尚、図7では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
図7(a)〜図7(c)は、膜厚部の孤立パターンを示す図である。前述したように透明導電層171が膜厚部を有するように基部171aに設けた凸部171bの形状は、例えば、平面視で所定の径(φ=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いに重ならないように配置されている(千鳥配列になるように設けられている)。
図7(a)では、複数の凸部171bのピッチlは85μmである(パターン1)。図7(b)では、複数の凸部171bのピッチlは71μmである(パターン2)。図7(c)では、複数の凸部171bのピッチlは60μmである(パターン3)。
【0077】
図8(a)〜図8(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。透明導電層171の基部171aと合わせて膜厚部を構成する凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ=90μm)を有する複数の円形部分と、これらの円形部分を結合する直線部分とから構成された格子状パターンを有している。直線部分の膜厚は、前述の凸部171b部分と同等な膜厚を有し、直線部分の幅は、前述の凸部171bの平面長さ(凸部が円形の場合、直径に相当する)か、もしくはそれ以下の大きさで設けられる。本発明では、通常、5μm〜18μmの範囲で設けられる。
【0078】
図8(a)では、膜厚部のパターンは、前述した図7(a)(パターン1)に示したように、断面形状が円形(φ=18μm)の複数の凸部171bがピッチl=84μmを隔てて配置され、これらの凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン4)。パターン4では、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。図8(b)では、膜厚部のパターンは、円形(φ=18μm)の複数の凸部171bの一部を残し、他の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン5)。図8(c)では、膜厚部のパターンは、図8(a)の(パターン4)と図8(b)の(パターン5)を組み合わせた格子状パターンが形成されている(パターン6)。
【0079】
図9(a)〜図9(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bと重なるような位置に配置されている。
図9(a)では、複数の凸部171bのピッチlは27μmである(IZODOT II−(1))。図9(b)では、複数の凸部171bのピッチlは25μmである(IZODOT II−(2))。図9(c)では、複数の凸部171bのピッチlは23μmである(IZODOT II−(3))。
【0080】
図10は、透明導電層に設けた膜厚部のパターンの他の一例を示す図である。図10(a)〜図10(d)では、半導体発光素子10の第1の電極180がn型半導体層140の中央部に形成されている。このため、透明導電層171の基部171aの中央部分に、第1の電極180の第1の開口部180aが形成されている。
透明導電層171の膜厚部は、第1の開口部180aが形成された部分を除き、透明導電層171の基部171a上に、所定の間隔を隔てて複数の凸部171bを配置することにより構成されている。
図10(a)は、膜厚部の孤立パターンを示し、複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔を隔てて設けられて、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いに重ならないように配置されている。
図10(b)は、膜厚部の孤立パターンの他の実施形態を示し、複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bと重なるような位置に配置されている。
図10(c)は、複数の凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成され、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。
図10(d)は、複数の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンと、図10(c)に示したように、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成された格子状パターンとを組み合わせた複合パターンが形成されている。
【0081】
(サブマウントへの実装工程)
図1に示す半導体発光素子10は、例えば、次のような操作を経てサブマウント基板10Bに実装される。初めに、半導体発光素子10のウェハ全面にTiW/Auを公知のスパッタ法で成膜した後、公知のフォトリソグラフィー技術により第1の開口部180a及び第2の開口部170aを開口させたレジストを形成し、続いて公知の成膜法により第1の電極180と第2の電極170上に所定膜厚のAuを成長させ、バンプ21,22を形成する。そして、バンプ21,22の上にAuSn膜を形成する。AlN基板を用いたサブマウント15上に発光チップを裏返して設置し、サブマウント配線11、12と、半導体発光素子10のバンプ21,22とがそれぞれ対応するように半導体発光素子10とサブマウント15とを位置合わせして電気的に接続する。
【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
図2に示す半導体発光素子10において、図6(a)に示す第2の電極170を、IZO製の透明導電層171の膜厚部のパターンが、図7(c)の(パターン3)及び図8(a)の(パターン4)を有する形状にそれぞれ調製した。ここで、透明導電層171は、基部171aの厚さ(x)が25nmと50nmの2種類を形成した。各透明導電層171における膜厚部の厚さ(y)は、それぞれ200nmである。凸部171bの形状は、径(φ)18μmの円形である。複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は85μmである。また、第2の電極170におけるSiO2製の絶縁層172の厚さ(H)は、380nm(=5Q)である。尚、金属反射層173及び導体部176は、(IZO/銀)合金を用いて形成した。
次に、図1に示すように、これらのパターンを有する2種類の半導体発光素子10をサブマウント15に実装し、2個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの2個の半導体発光装置1について、それぞれ、LED特性を測定した。結果を表1に示す。尚、表1において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示す結果から、実施例1において調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置は、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層と絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
【0086】
(実施例2)
実施例1で調製した半導体発光素子10において、透明導電層171の膜厚部のパターンが、図7(c)の(パターン3)の半導体発光素子10を用い、透明導電層171を構成する基部171aの面積(B)に対する凸部171bの面積(A)の割合(A/B)を変化させ、4個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの4個の半導体発光装置1について、実施例1と同様に、それぞれLED特性を測定した。結果を表2に示す。尚、表2において、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例3)
実施例1で調製した半導体発光素子10において、透明導電層171の膜厚部のパターンが、図9(a)の(IZODOT II−(1))、図9(b)の(IZODOT II−(2))、図9(c)の(IZODOT II−(3))の3種類の半導体発光素子10を用い、3個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの半導体発光装置1について、実施例1と同様に、それぞれLED特性を測定した。結果を表3に示す。尚、表3において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。また、絶縁層の厚さ(5Q)は、絶縁層172の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)の5倍の数値(380nm)である。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示す結果から、透明導電層171の膜厚部が、図9(a)〜図9(c)に示すパターンを有する半導体発光素子を用いた場合も、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層と絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体発光装置、10…半導体発光素子、10B…サブマウント基板、11、12…サブマウント配線、15…サブマウント、21,22…バンプ(接続子)、100…積層半導体層、110…基板、110c,160c…上面、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、140c…半導体層露出面、150…発光層、160…p型半導体層、170…第2の電極、171…透明導電層、171a…基部、171b…凸部、172…絶縁層、173…金属反射層、174…第2ボンディング層、175…第2密着層、176…導体部、180…第1の電極、180a…第1の開口部、181…第1導電層、182…第1ボンディング層、183…第1密着層、190…保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、通常、透明電極上に、金(Au)等のボンディングワイヤと接続する部分にボンディングパッドを形成している。最近、発光波長に対して透光性の基板上に形成された半導体発光素子を裏返し、回路基板(サブマウント)またはパッケージに搭載するフリップチップボンディング(FC)実装技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透光性基板と、n型半導体層/発光層/p型半導体層が積層された半導体層と、n型半導体層に接合される負電極と、p型半導体層に接合される正電極と、正電極及び負電極にそれぞれ接続される正電極パッド及び負電極パッドとを備えたフリップチップ型半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FC実装技術によれば、正電極を構成する透明導電層の膜厚を薄くすることにより、発光層から出射される光の吸収が減少する傾向がある。しかし、透明導電層の膜厚を過度に薄くするとシート抵抗が増大する傾向がある。そのため、電流の拡散が不良となり、順方向電圧(Vf)が上昇するおそれがある。
本発明の目的は、半導体発光素子のFC(フリップチップ)実装技術において、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制し、且つ発光出力(Po)を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下、[1]〜[10]が提供される。
[1]第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子。
[2]前記膜厚部は、前記絶縁層側に凸部を有することを特徴とする前項[1]に記載の半導体発光素子。
[3]前記膜厚部は、平面視で、孤立パタ−ン又は格子状パタ−ンを含むことを特徴とする前項[1]又は[2]に記載の半導体発光素子。
[4]前記絶縁層は、二酸化ケイ素から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[5]前記透明導電層は、インジウム(In)を含む導電性の酸化物から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[6]前記積層半導体層は、III族窒化物半導体から構成されることを特徴とする前項[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[7]前記積層半導体層は、前記第1の半導体層の前記第1の導電型が電子をキャリアとするn型であり、前記第2の半導体層の前記第2の導電型が正孔をキャリアとするp型であることを特徴とする前項[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
[8]前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする前項[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0007】
[9]半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、前記半導体発光素子は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、前記正極は、前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、当該凸部側に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の二酸化ケイ素からなる絶縁層と、当該絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、当該絶縁層を通して形成され、一端が当該透明導電層の当該凸部に電気的に接続され且つ他端が当該金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含み、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置されることを特徴とする半導体発光装置。
[10]前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする前項[9]に記載の半導体発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、第1の半導体層と接続する第1の電極と、第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備えた半導体発光素子において、第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む半導体発光素子を提供することにより、半導体発光素子の発光出力(Po:単位mW)が増大する。
即ち、透明導電層内に、他の部分(基部)より膜厚が大きい複数の膜厚部を形成し、他の部分(基部)は薄膜にすることにより、当該複数の膜厚部を有しない半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:単位mW)が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される半導体発光装置の断面模式図の一例を示す図である。
【図2】半導体発光素子の断面模式図の一例である。
【図3】半導体発光素子の平面模式図の一例である。
【図4】積層半導体層の断面模式図の一例である。
【図5】第1の電極の断面模式図の一例である。
【図6】第2の電極の断面模式図の一例である。
【図7】透明導電層に設けた膜厚部のパターン(孤立パターン)の一例を示す図である。
【図8】透明導電層に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。
【図9】透明導電層に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。
【図10】透明導電層に設けた膜厚部のパターンの他の一例を示す図である。
【図11】絶縁層の膜厚と反射率の関係を示すシミュレーション関係結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するための一例であり、実際の大きさを表すものではない。
【0011】
<半導体発光装置>
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光装置1の断面模式図の一例である。半導体発光装置1は、光を出射する半導体発光素子10と、半導体発光素子10を固定するとともに、半導体発光素子10に電力を供給する配線を設けた回路基板の一例としてのサブマウント15とを備えている。
【0012】
半導体発光素子10は、基板110、中間層120、下地層130、積層半導体層100を備えている。また、半導体発光素子10は、正負一対の接続電極の一例として、負極として働く第1の電極180と、正極として働く第2の電極170とを備えている。積層半導体層100は、後述するように、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160から構成されている。尚、第1の電極180は、積層半導体層100の一部を切り欠いた部分に設けられている。
また、第1の電極180および第2の電極170の表面の一部を除き、中間層120、下地層130、積層半導体層100の表面および側面を覆う保護層190を備えている。尚、半導体発光素子10の詳細については後述する。
【0013】
サブマウント15は、サブマウント基板10B、サブマウント基板10B上に設けられたサブマウント配線11,12、半導体発光素子10の第1の電極180および第2の電極170とサブマウント配線11,12とを電気的に接続する接続子の一例としてのバンプ21,22を備えている。
【0014】
図1では、半導体発光素子10は、基板110側が上側に位置している。すなわち、半導体発光素子10は、裏返してサブマウント15に実装されている。このように、サブマウント15に対して、半導体発光素子10を裏返して実装することをフリップチップ(FC)実装またはフリップチップ(FC)ボンディングと呼ぶ。また、半導体発光素子10が裏返して実装されることから、この実装形式をフェイスダウン(FD)実装とも呼ぶ。
【0015】
本実施の形態における光の取り出しについて説明する。半導体発光素子10の積層半導体層100(具体的には、後述する図2における発光層150)において出射した光のうち、基板110側に進む光は、外部(図1の上側方向)に取り出される。一方、発光層150が出射する光のうち、第2の電極170側に進む光は、第2の電極170に設けられ、発光層150が出射する光に対して反射性を示す反射層(後述する、図6に示す絶縁層172及び金属反射層173)で反射され、基板110側に向かい、外部(図1の上側方向)に取り出される。また、積層半導体層100、中間層120、下地層130の側面から外部に取り出される光もある。以下、サブマウント15、半導体発光素子10の順に詳細な構成を説明する。
【0016】
(サブマウント)
サブマウント15のサブマウント基板10Bとしては特に限定されず、例えば、セラミック基板、AlN(窒化アルミニウム)基板、Al(アルミ)基板、Cu(銅)基板、ガラスエポキシ基板等の絶縁性または導電性の各種の基板を選択して用いることができる。
尚、Al基板等の導電性の基板を用いるときには、サブマウント配線11,12とサブマウント基板10Bとを電気的に絶縁するため、サブマウント配線11,12の少なくとも一方は絶縁層を介して設けられている。
半導体発光素子10の第1の電極180及び第2の電極170とサブマウント基板10Bのサブマウント配線11,12とを接続するバンプ21,22としては、例えば、Sn(錫)を添加したAu(Au−Sn合金)ボールや半田ボールが用いうる。特に、接続(圧着)時の加熱温度が約300℃のAu−Sn合金が好ましい。
以下、半導体発光素子10について詳細な構成を説明する。
【0017】
<半導体発光素子>
図2は、半導体発光素子の断面模式図の一例である。図3は、図2に示すように、半導体発光素子をIII方向からみた平面模式図の一例である。図4は、半導体発光素子を構成する積層半導体の断面模式図の一例である。
図2に示すように、半導体発光素子10は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子10は、下地層130上に積層される積層半導体層100を備えている。積層半導体層100は、下地層130側から、第1の導電型を有する第1の半導体層としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層としてのp型半導体層160とから構成されている。
【0018】
さらに、半導体発光素子10は、積層されたp型半導体層160、発光層150および第1の半導体層としてのn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140cに形成される第1の電極180と、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160cに形成される第2の電極170とを備えている。
【0019】
さらにまた、半導体発光素子10は、第1の電極180および第2の電極170と、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)に積層される保護層190をさらに備える。ただし、保護層190は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)の側壁面の全域、基板110の一部の上面110cを覆うように形成される。
【0020】
第1の電極180に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第1の接続子)21により外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。同様に、第2の電極170に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第2の接続子)22により外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。
【0021】
本実施の形態の半導体発光素子10は、基板110とは反対側となる一方の面側に第1の電極180および第2の電極170が形成された構造を有している。この半導体発光素子10においては、第1の電極180を負極、第2の電極170を正極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0022】
次に、図3に示すように、平面視したとき(図2に示す半導体発光素子10をIII方向からみた平面模式図)、第1の電極180は、平面形状が正方形の基板110の一つの角部に近接した部分に形成されている。第1の電極180は、露出した半導体層露出面140c上に形成され、さらに、第1の電極180の上面には、外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。
第2の電極170は、第1の電極180を形成するためにエッチング等の手段により一部が除去された部分を除き、p型半導体層160の上面160cの略全面を覆うように形成されている。第2の電極170の上面には、第2の電極170を露出させ、外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。また、後述するように、第2の電極170を構成する透明導電層に設けた膜厚部と金属反射層とを電気的に接続する複数の導体部176が設けられている。尚、図3では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
次に、半導体発光素子10の各層について説明する。
【0023】
(基板)
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の半導体発光素子10は、後述するように、基板110側から光を取り出すようにフリップチップ実装されることから、発光層150から出射される光に対する光透過性を有していることが好ましい。例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板110を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板110として用いることが好ましい。サファイアを基板110として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0024】
(積層半導体層)
積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。また、図4に示すように、n型半導体層140、発光層150及びp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。積層半導体層100は、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行い、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行う。
尚、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0025】
(中間層)
中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上を介して、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。尚、本発明においては、中間層120を形成することが好ましいが、行なわなくても良い。
【0026】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板110上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
【0027】
(下地層)
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。また、下地層130の膜厚は、生産コストの点で好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0028】
(n型半導体層)
図4に示すように、例えば、第1の導電型を有する第1の半導体層の一例としての、電子をキャリアとするn型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。尚、nコンタクト層140aはnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
nコンタクト層140aは、第1の電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0029】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017/cm3〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第1の電極180との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5μm〜5μmに設定することが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0030】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaNやGaInNのように記載することがある。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005μm〜0.5μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.1μmである。nクラッド層140bのn型ドープ濃度は1×1017/cm3〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0031】
尚、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0032】
(発光層)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
図4に示すような、量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1nm〜10nmとすることができ、好ましくは2nm〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
尚、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400nm〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0033】
(p型半導体層)
図4に示すように、例えば、第2の導電型を有する第2の半導体層の一例としての、正孔をキャリアとするp型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0034】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
pクラッド層160aのp型ドープ濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019/cm3〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、AlGaNとAlGaNとの交互構造又はAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0035】
pコンタクト層160bは、第2の電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第2の電極170との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018/cm3〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019/cm3〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0036】
(第1の電極)
図5は、第1の電極180の断面模式図の一例を示す図である。
第1の電極180は、例えば、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第1導電層181と、第1導電層181上に積層される第1ボンディング層182と、上述した第1ボンディング層182の露出部位である第1の開口部180aを除いて第1ボンディング層182を覆うように設けられ、第1ボンディング層182と反対側の面には保護層190が積層される第1密着層183とを有している。
【0037】
(第1導電層)
図5に示すように、n型半導体層140の上には第1導電層181が積層されている。前述したように平面視で第1導電層181(図3参照)の片側は、半円形状の外形を有している。そして、第1導電層181の中央部は一定の膜厚を有し半導体層露出面140c(図2参照)に対しほぼ平坦に形成される一方、第1導電層181の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。ただし、第1導電層181は、このような形状に限定されるわけでなく、隙間を開けて格子状や樹形状に形成してもよく、また、矩形状の断面を有していてもよく、さらに円形状以外の外形を有していてもよい。
【0038】
第1導電層181は、n型半導体層140とオーミックコンタクトがとれ、しかもn型半導体層140との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1導電層181として、例えば、Al(アルミニウム)、Ti/Al、Ta/Al、アモルファスIZO/Al等が用いられる。第1導電層181を構成するAl(アルミニウム)は、後述する第2の電極170の金属反射層173(図6参照)を構成するAg(銀)と同様、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の波長の光に対して、高い光反射性を有しており、こちらも金属反射層として機能するようになっている。第1導電層181の膜厚は、通常1nm〜300nmの範囲内で設けられる。
【0039】
(第1ボンディング層)
図5に示すように、第1導電層181の上には第1ボンディング層182が積層されている。第1ボンディング層182は、第1導電層181の全域を覆うように形成されている。そして、第1ボンディング層182の中央部は一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、第1ボンディング層182の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。
【0040】
第1ボンディング層182は、後述する第2の電極170の第2ボンディング層174と同様、第1導電層181と接するように少なくとも1層以上の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層(第1ボンディング層182)には、例えば、Au(金)が用いられる。また、第1ボンディング層182の全体の厚さは、好ましくは50nm〜8000nmに設定されている。尚、第1ボンディング層182を複数の金属層の積層構造とすることもできる。
【0041】
(第1密着層)
図5に示すように、第1ボンディング層182の上には第1密着層183が積層されている。第1密着層183は第1ボンディング層182の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第1密着層183の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第1密着層183の端部側はn型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)に対し傾斜して形成されている。この第1密着層183の側面側の端部は、n型半導体層140の半導体層露出面140c(図2参照)と接するように設けられている。
【0042】
第1密着層183は、例えば、Au(金)で構成された第1ボンディング層182と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第1密着層183はTi(チタン)で形成されている。ただし、第1密着層183として、Ti以外に、例えば、Ta(タンタル)やNi(ニッケル)を用いることも可能である。第1密着層183の膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に小さいと、保護層190やボンディング層175,182との密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に大きいと、生産性コストにも影響し、好ましくない。
【0043】
(第2の電極)
次に、第2の電極170の構成について説明する。図6(a)は、第2の電極170の断面模式図の一例である。図6(b)は、第2の電極170の要部を説明する図である。
図6(a)に示すように、第2の電極170は、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160c上に積層される透明導電層171と、この透明導電層171上に積層され且つ透明導電層171より低屈折率の透明な絶縁層172と、絶縁層172上に積層された反射層としての導電性の金属反射層173と、絶縁層172を通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が金属反射層173と電気的に接続される導体部176と、を有している。なお、金属反射層173と導体部176は、いずれも反射層としての機能を有する。さらに、金属反射層173上に積層される第2ボンディング層174と、第2ボンディング層174の露出部位である第2の開口部170aを除き第2ボンディング層174を覆うように設けられた第2密着層175とを有している。また、第2密着層175の第2ボンディング層174側と反対側の面に保護層190が積層されている。
【0044】
(透明導電層)
図6(a)に示すように、透明導電層171は、前述した第2の電極170を形成するために、公知なエッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cの周縁部を除くほぼ全面に形成されている。
本実施の形態では、透明導電層171が、p型半導体層160の上面を覆う連続的な基部171aと、p型半導体層160側と反対側の絶縁層172側に設けた複数の凸部171bとから構成されている。透明導電層171の凸部171bを設けた部分は、他の部分より厚さが大きい膜厚部を構成している。
尚、図示しないが、本実施の形態に限定されず、膜厚部を構成するために、透明導電層171の凸部171bは、基部171aのp型半導体層160側に設けてもよい。その場合、透明導電層171の絶縁層172側は平坦な形状に形成される。
【0045】
図6(b)に示すように、透明導電層171の凸部171bを設けない領域の厚さ(基部171aの厚さ(x)という。)は、本実施の形態では、20nm〜70nmの範囲より選択することができる。また、好ましくは、本実施の形態では20nm〜60nmの範囲より選択される。例えば、参考データとして、凸部171bを有しない基部171aの厚さ(x)からなる透明導電層171のシート抵抗は、製造方法にも依存するものの、膜厚が10nmの時は無限大(∞)であり、膜厚が20nmの時は250Ω/□、膜厚が25nmの時は175Ω/□、膜厚が50nmの時は72Ω/□、膜厚が100nmの時は29Ω/□、膜厚が200nmの時は15Ω/□である。
基部171aの厚さ(x)が過度に薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくく、また順方向電圧(Vf)が上昇する傾向がある。基部171aの厚さ(x)が過度に厚いと、発光層150からの発光及び金属反射層173からの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。
尚、本実施の形態では、基部171aの中央部は一定の膜厚を有し、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平坦に形成される一方、基部171aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0046】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の厚さ(y)は、本実施の形態では、100nm〜300nmの範囲より選択される。また、好ましくは、150nm〜250nmの範囲より選択される。膜厚部の厚さ(y)が過度に薄い場合又は過度に厚い場合、発光層150からの発光及び金属反射層173からの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。尚、透明導電層171は、FC実装技術における使用において、光吸収性があるが故に特定の膜厚以下の薄膜として使用するのが好ましい。
【0047】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の幅(z)は、本実施の形態では、10μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、15μm〜25μmの範囲より選択される。膜厚部の幅(z)が過度に大きいと、当該膜厚部による光の吸収により、反射層から光の強度に影響が出る傾向がある。膜厚部の幅(z)が過度に小さいと、Vfが高くなる。また、絶縁層172中の貫通穴とのアライメントが困難になる傾向がある。
尚、平面視における凸部171bを含む膜厚部の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの縦方向の断面形状は、特に限定されず、長方形、台形、円錐、角錐、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの膜厚部は、これらの断面形状を有する凸部171bを結合する直線部分とから構成される格子状パターンを有してもよい(後述)。さらにまた、凸部171bの平面断面積は特に限定されず、さらに、複数の凸部171bのそれぞれの平面断面積は、同一又は異なる場合も含まれる。
【0048】
透明導電層171における複数の膜厚部は、所定の間隔(ピッチl)で設けられる。本実施の形態では、ピッチlは、10μm〜120μmの範囲より選択される。また、好ましくは、20μm〜100μmの範囲より選択される。ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、発明の効果が低減し、発光強度が向上しない傾向がある。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向がある。ただし、Aは凸部171bの面積であり、Bは基部171aの面積である。(A/B)は基部171aの面積(B)に対する凸部171bの面積(A)の割合である。
【0049】
透明導電層171を構成する材料は、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される波長の光を、少なくとも80%程度透過する材料が用いられる。例えば、In(インジウム)を含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。尚、これらの中に、例えば、フッ素等のドーパントが添加されていてもよい。また、例えば、Inを含まない酸化物として、例えば、キャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いることもできる。これらの材料を用い、当該技術分野でよく知られた慣用手段によって、透明導電層171を形成できる。また、透明導電層171を形成した後、透明導電層171の透明化と更なる低抵抗化とを目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0050】
本実施の形態において、透明導電層171の材料として、結晶構造を有するものを使用することができる。例えば、特に、六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITO、IZO等)が好ましい。また、例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを用いる場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させ、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。
【0051】
また、透明導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%の範囲が更に好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0052】
透明導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。尚、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
【0053】
IZO膜の熱処理温度は、500℃〜1000℃が好ましい。熱処理温度が過度に低いと、IZO膜を十分に結晶化できず、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。熱処理温度が過度に高いと、IZO膜は結晶化されているが光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。また、この場合、IZO膜の下にある半導体層を劣化させるおそれもある。
【0054】
アモルファス状態のIZO膜を結晶化させる場合、成膜条件や熱処理条件などが異なるとIZO膜中の結晶構造が異なる。しかし、本発明の実施形態においては、他の層との接着性の点において、透明導電層171は材料に限定されないが結晶性の材料の方が好ましく、特に結晶性IZOの場合にはビックスバイト結晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよく、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよい。特に六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOがよい。
【0055】
特に、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べ、p型半導体層160との密着性が良いため、本発明の実施形態において有効である。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、半導体発光素子10を構成した際に、順方向電圧(Vf)を低減できる点でも好ましい。
【0056】
(絶縁層)
図6(a)に示すように、絶縁層172は、透明導電層171上に積層され、金属反射層173と組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての機能を有している。本実施の形態では、後述するように、絶縁層172を貫通するように形成された導体部176が設けられている。
絶縁層172は、発光層150から出力される光に対し少なくとも90%程度、好ましくは95%以上の透過性を有し、透明導電層171と比べて低屈折率、且つ絶縁性を有する。絶縁層172を構成する材料としては、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、Al2O3(酸化アルミニウム)等が挙げられる。本実施の形態では、絶縁層172として、屈折率n1=1.48(450nm波長)のSiO2(二酸化ケイ素)を用いている。尚、透明導電層171を構成するIZO膜の屈折率n2は2.21(450nm波長)である。
【0057】
本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、絶縁層172の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)との関係において、以下に示す式(1)の関係で設定される。但し、式(1)においてAは整数である。ここで、Qは、上述のように発光層150の発光波長λ(nm)を絶縁層172の屈折率nの4倍で除したものを示す。
H=AQ (1)
【0058】
また、絶縁層172の膜厚(H)は、以下の式(2)に基づいて設定されることが好ましい。膜厚Hが5λ/4nより大きい範囲がさらに好ましい。即ち、膜厚Hは5Q以上がさらに好ましい。但し、生産コストの制約から膜厚(H)は20Q(=(20λ/4n))以下であることが好ましい。
(5λ/4n)<H (2)
【0059】
本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、(5λ/4n)を超える範囲、即ち波長450nmの青色光の場合、膜厚(H)380nmを超える範囲に設けるのが好ましい。
発明者の実験データとシミュレーション結果から、特にH=3Q,5Q,7Q・・・奇数Q単位の膜厚では発光強度が増大する結果が得られ、3Q,5Q,7Q等の膜厚が特に好ましく、半導体発光素子10の出力が、絶縁層172の膜厚に依存することが確認されている。本実施の形態では、絶縁層172の膜厚(H)は、特に3Q,5Q,7Q・・・奇数Q単位の膜厚であって、当該数値のプラス・マイナス0.5Q単位の範囲が特に望ましい。
より具体的には、発明者の実験により、Qが増加する(絶縁層172の膜厚が増加する)に従い、半導体発光素子10の出力が増加し、また3Q,5Q,7Q・・・の奇数Q単位の膜厚では発光強度が特に効果的に増大することが確認されている。このことから、絶縁層172の厚さが増加することにより、p型半導体層160と透明導電層171との間、透明導電層171と絶縁層172との間、及び絶縁層172と金属反射層173との間でそれぞれ反射する光の位相が重なり増反射され、その結果として半導体発光素子10の出力が増加すると考えられる。
【0060】
以下、本発明者は、第2の電極170に用いる金属反射層173としてAg(銀)を用いた場合における、絶縁層172の膜厚と反射率との関係についてシミュレーションを行った。図11は、絶縁層172の膜厚と反射率の関係を示すシミュレーション関係結果の一例である。なお、図11の横軸は、上記(1)で示すQ単位の絶縁層172の膜厚を表し、縦軸が下記に説明する構成の反射率を表す。
【0061】
まず、シミュレーションの条件を説明する。p型半導体層160としてGaNを用い、p型半導体層160上に透明導電層171としてIZOを50nmの膜厚で成膜する。次に、さらに透明導電層171上に絶縁層172としてSiO2(膜厚:0〜7Q)を成膜する。そして、絶縁層172の上に金属反射層173としてAgを150nmの膜厚で成膜するものである。ここで、発光層150から出射される光の波長λは、450nmであり、λ=450nmにおけるp型半導体層160、透明導電層170、および絶縁層172の屈折率は、それぞれ2.44、2.13、および1.48である。
【0062】
図11に示すように、シミュレーション結果としては、絶縁層172を備えることにより反射率が増加する傾向が確認できる。このことは、発明者による実験データにおいて、絶縁層172を備えることにより出力Poが増加した結果と同一の傾向を示している。
また、図11に示すように、絶縁層172の膜厚が3Q付近から、反射率が高くなっていることが分かる。したがって、本条件においては、絶縁層172の膜厚を3Q以上とすることで、半導体発光素子10の出力Poも増加するものと考えられる。
さらに、図11に示すように、絶縁層172の膜厚が5Qを超えた範囲では、反射率が安定していることも確認できる。したがって、出力Poを向上させた半導体発光素子10を安定して得るためには、膜厚は5Qを超えて製造することがよいと考えられ、この点においても、発明者による実験データに示す結果と同一の傾向が確認された。
【0063】
(金属反射層)
図6(a)に示すように、金属反射層173は、絶縁層172の全域を覆うように形成されている。金属反射層173の中央部は、一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、金属反射層173の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0064】
金属反射層173を構成する材料は、例えば、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Nd(ネオジム)Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)等の金属および少なくともこれらの1つを含む合金が挙げられる。特に、Ag(銀)または銀合金は、発光層150から出射される青色〜緑色の波長領域の光に対し、高い光反射性を有しているため好ましい。また、金属反射層173は、後述する導体部176及び透明導電層171を介しp型半導体層160への給電(ホール注入)機能も有することから、その抵抗値が低いAg(銀)または銀合金は好ましい材料である。また、透明導電層171と金属反射層173の間にアモルファス状のIZO膜を挿入すると、接触抵抗を低く抑えることができる。
【0065】
本実施の形態では、金属反射層173の厚さが、例えば、100nmに設定されている。この金属反射層173の厚さは、好ましくは90nm以上、または、さらに好ましくは100nm以上150nm以下の範囲より選択することができる。ここで、金属反射層173の厚さが過度に薄いと、発光層150からの光の反射性能が低下する傾向がある。また、金属反射層173の厚さが過度に厚いと、生産コスト高となり、また第2ボンディング層などによるオーバーコートされた金属反射層173と保護層190との段差が大きくなり、クラックが入り信頼性低下に繋がる。
【0066】
(導体部)
図6(a)に示すように、複数の導体部176は、それぞれ絶縁層172を通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が金属反射層173と電気的に接続されるように設けられている。導体部176は、第2の電極170全体に複数形成され、各導体部176を流れる電流が発光層150の発光に用いられる電流となる。本実施の形態では、複数の導体部176を設け、p型半導体層160の上面160cの面上において、p型半導体層160の全面に電流を拡散させ、発光層150における発光むらを低減している。
【0067】
導体部176のそれぞれの径は、前述した透明導電層171の膜厚部の幅(z)と同等の幅もしくはそれよりも小さい範囲で設けられる。本実施の形態では、5μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、5μm〜20μmの範囲より選択される。尚、平面視における導体部176の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。
【0068】
導体部176は、例えば、予め成膜された絶縁層172に、ドライエッチングあるいはリフトオフ等を用いて形成された貫通孔に導電性材料を充填することにより形成することができる。導体部176は、少なくとも1種の導電性材料を用いて形成され、また複数の導電性材料を用いて形成してもよい。導体部176の形成に使用する導電性材料としては、例えば、アモルファスIZO/銀合金/Ta/Pt等が挙げられる。本実施の形態においては、絶縁層172に複数の導体部176を設けることにより、第2の電極170の面上において、透明導電層171を介し、p型半導体層160の全面に亘り均一に電流を拡散させる。このことにより、発光層150における発光むらを改善することを可能とする。導体部176は、ドライエッチあるいはリフトオフ等により形成された貫通孔の壁面及び底面に施される。あるいは、絶縁層172の貫通孔に金属を充填したものとして形成されてもよい。
【0069】
(第2ボンディング層)
図6(a)に示すように、金属反射層173の上面および側面には、金属反射層173を覆うように第2ボンディング層174が積層されている。第2ボンディング層174は、金属反射層173の全域を覆うように形成されている。第2ボンディング層174の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される。本実施の形態では、第2ボンディング層174の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0070】
外部との電気的な接続に用いられる接続層としての第2ボンディング層174は、最も内側の金属反射層173等と接するように、少なくとも1層の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。さらに、本実施の形態では、第2ボンディング層174として、例えば、金属反射層173に接して形成される第1層としてのNi(ニッケル)層と、Ni層の外側に形成されるAu層からなる2層構造(Ni/Au)で形成してもよい。また、例えば、金属反射層173に接して形成される第1層としてのTa(タンタル)層と、このTa層の外側に形成される第2層としてのPt(白金)層と、このPt層の外側であって最も外側に形成される第3層としてのAu(金)層とを有する構造(Ta/Pt/Au)を採用してもよい。さらにまた、同様な構成順でTi/Pt/Auの構造を採用してもよい。例えば、Ta/Pt/Auの構造の場合には、Ta300nm、Pt100nm、Au550nmの構成で用いてもよい。
第2ボンディング層174の全体の厚さは、フリップチップ実装する際のパッド電極としての機能を有する厚さがあれば、厚さに制限なく、本実施の形態では、好ましくは50nm〜8,000nmに設定されている。
【0071】
尚、第2ボンディング層174を複数の金属層で構成する場合において、金属反射層173と接する第1層を構成する材料としては、例えば、上述したNi(ニッケル)の他、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、NiTi(ニッケルチタン)合金、およびこれらの窒化物を使用することができる。
【0072】
(第2密着層)
図6(a)に示すように、第2ボンディング層174の上面および側面には、第2ボンディング層174を覆うように第2密着層175が積層されている。第2密着層175は第2ボンディング層174の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第2密着層175の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第2密着層175の端部側はp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。この第2密着層175の側面側の端部は、p型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0073】
密着層の一例としての第2密着層175は、Au(金)で構成された第2ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第2密着層175は、例えば、Ti(チタン)で形成されている。ただし、第2密着層175として、Ti以外に、例えばTa(タンタル)やNi(ニッケル)を用いることも可能である。
尚、図示しないが、上述した第2の電極170の特徴的な構成は、前述したn型半導体層140の半導体層露出面140c上に形成される第1の電極180についても、同様に適用することができる。
【0074】
(保護層)
図5又は図6に示すように、SiO2等のシリコン酸化物からなる保護層190は、第1の電極180の一部および第2の電極170の一部を除いて、これら第1の電極180および第2の電極170を覆い、且つ、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側(図2参照))を覆うように積層されている。保護層190は、外部から水等が発光層150、第2の電極170および第1の電極180に浸入するのを抑制する保護層としての機能と、発光層150から出射された光のうち、直接基板110側に向かわず、しかも、第2の電極170の金属反射層173や第1の電極180の第1導電層181で反射されなかった光を基板110側に向けて反射する補助反射層としての機能とを有している。保護層190の膜厚は、通常50nm〜1μmの範囲内で設けられる。保護層190の膜厚が過度に小さいと保護膜としての機能を損なう恐れがあり、使用環境によっては発光出力が短期間に低下する傾向がある。また、保護層190の膜厚が過度に大きいと、光吸収により発光出力等に影響を与える傾向がある。
【0075】
(バンプ)
図1に示したバンプ(接続子)21,22は、実装基板側に予め形成しておいたボールバンプや半田バンプに限定されず、例えば、半導体発光素子10側の第1の電極180と第2の電極170の上に、予めメッキ法や蒸着を用いて突起状にバンプを形成しておいてもよい。
本実施の形態においては、この方法により半導体発光素子10側にバンプを作製することができる。特に、フォトリソグラフィー工程によりウェハ毎にバンプを形成できるので、4インチ以上の大口径ウェハでは、実装基板毎にバンプボールを形成していくよりも、生産負荷を大幅に減らすことができる利点がある。
【0076】
(膜厚部の平面形状)
図7は、透明導電層171に設けた膜厚部のパターンの一例を示す図である。図7には、図6に示した第2の電極170の断面模式図において、VII方向から見た凸部171bの平面模式図が示されている。尚、図7では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
図7(a)〜図7(c)は、膜厚部の孤立パターンを示す図である。前述したように透明導電層171が膜厚部を有するように基部171aに設けた凸部171bの形状は、例えば、平面視で所定の径(φ=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いに重ならないように配置されている(千鳥配列になるように設けられている)。
図7(a)では、複数の凸部171bのピッチlは85μmである(パターン1)。図7(b)では、複数の凸部171bのピッチlは71μmである(パターン2)。図7(c)では、複数の凸部171bのピッチlは60μmである(パターン3)。
【0077】
図8(a)〜図8(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。透明導電層171の基部171aと合わせて膜厚部を構成する凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ=90μm)を有する複数の円形部分と、これらの円形部分を結合する直線部分とから構成された格子状パターンを有している。直線部分の膜厚は、前述の凸部171b部分と同等な膜厚を有し、直線部分の幅は、前述の凸部171bの平面長さ(凸部が円形の場合、直径に相当する)か、もしくはそれ以下の大きさで設けられる。本発明では、通常、5μm〜18μmの範囲で設けられる。
【0078】
図8(a)では、膜厚部のパターンは、前述した図7(a)(パターン1)に示したように、断面形状が円形(φ=18μm)の複数の凸部171bがピッチl=84μmを隔てて配置され、これらの凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン4)。パターン4では、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。図8(b)では、膜厚部のパターンは、円形(φ=18μm)の複数の凸部171bの一部を残し、他の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン5)。図8(c)では、膜厚部のパターンは、図8(a)の(パターン4)と図8(b)の(パターン5)を組み合わせた格子状パターンが形成されている(パターン6)。
【0079】
図9(a)〜図9(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bと重なるような位置に配置されている。
図9(a)では、複数の凸部171bのピッチlは27μmである(IZODOT II−(1))。図9(b)では、複数の凸部171bのピッチlは25μmである(IZODOT II−(2))。図9(c)では、複数の凸部171bのピッチlは23μmである(IZODOT II−(3))。
【0080】
図10は、透明導電層に設けた膜厚部のパターンの他の一例を示す図である。図10(a)〜図10(d)では、半導体発光素子10の第1の電極180がn型半導体層140の中央部に形成されている。このため、透明導電層171の基部171aの中央部分に、第1の電極180の第1の開口部180aが形成されている。
透明導電層171の膜厚部は、第1の開口部180aが形成された部分を除き、透明導電層171の基部171a上に、所定の間隔を隔てて複数の凸部171bを配置することにより構成されている。
図10(a)は、膜厚部の孤立パターンを示し、複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔を隔てて設けられて、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いに重ならないように配置されている。
図10(b)は、膜厚部の孤立パターンの他の実施形態を示し、複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bと重なるような位置に配置されている。
図10(c)は、複数の凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成され、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。
図10(d)は、複数の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンと、図10(c)に示したように、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成された格子状パターンとを組み合わせた複合パターンが形成されている。
【0081】
(サブマウントへの実装工程)
図1に示す半導体発光素子10は、例えば、次のような操作を経てサブマウント基板10Bに実装される。初めに、半導体発光素子10のウェハ全面にTiW/Auを公知のスパッタ法で成膜した後、公知のフォトリソグラフィー技術により第1の開口部180a及び第2の開口部170aを開口させたレジストを形成し、続いて公知の成膜法により第1の電極180と第2の電極170上に所定膜厚のAuを成長させ、バンプ21,22を形成する。そして、バンプ21,22の上にAuSn膜を形成する。AlN基板を用いたサブマウント15上に発光チップを裏返して設置し、サブマウント配線11、12と、半導体発光素子10のバンプ21,22とがそれぞれ対応するように半導体発光素子10とサブマウント15とを位置合わせして電気的に接続する。
【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
図2に示す半導体発光素子10において、図6(a)に示す第2の電極170を、IZO製の透明導電層171の膜厚部のパターンが、図7(c)の(パターン3)及び図8(a)の(パターン4)を有する形状にそれぞれ調製した。ここで、透明導電層171は、基部171aの厚さ(x)が25nmと50nmの2種類を形成した。各透明導電層171における膜厚部の厚さ(y)は、それぞれ200nmである。凸部171bの形状は、径(φ)18μmの円形である。複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は85μmである。また、第2の電極170におけるSiO2製の絶縁層172の厚さ(H)は、380nm(=5Q)である。尚、金属反射層173及び導体部176は、(IZO/銀)合金を用いて形成した。
次に、図1に示すように、これらのパターンを有する2種類の半導体発光素子10をサブマウント15に実装し、2個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの2個の半導体発光装置1について、それぞれ、LED特性を測定した。結果を表1に示す。尚、表1において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示す結果から、実施例1において調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置は、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層と絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
【0086】
(実施例2)
実施例1で調製した半導体発光素子10において、透明導電層171の膜厚部のパターンが、図7(c)の(パターン3)の半導体発光素子10を用い、透明導電層171を構成する基部171aの面積(B)に対する凸部171bの面積(A)の割合(A/B)を変化させ、4個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの4個の半導体発光装置1について、実施例1と同様に、それぞれLED特性を測定した。結果を表2に示す。尚、表2において、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0087】
【表2】
【0088】
(実施例3)
実施例1で調製した半導体発光素子10において、透明導電層171の膜厚部のパターンが、図9(a)の(IZODOT II−(1))、図9(b)の(IZODOT II−(2))、図9(c)の(IZODOT II−(3))の3種類の半導体発光素子10を用い、3個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの半導体発光装置1について、実施例1と同様に、それぞれLED特性を測定した。結果を表3に示す。尚、表3において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。また、絶縁層の厚さ(5Q)は、絶縁層172の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)の5倍の数値(380nm)である。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示す結果から、透明導電層171の膜厚部が、図9(a)〜図9(c)に示すパターンを有する半導体発光素子を用いた場合も、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層と絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体発光装置、10…半導体発光素子、10B…サブマウント基板、11、12…サブマウント配線、15…サブマウント、21,22…バンプ(接続子)、100…積層半導体層、110…基板、110c,160c…上面、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、140c…半導体層露出面、150…発光層、160…p型半導体層、170…第2の電極、171…透明導電層、171a…基部、171b…凸部、172…絶縁層、173…金属反射層、174…第2ボンディング層、175…第2密着層、176…導体部、180…第1の電極、180a…第1の開口部、181…第1導電層、182…第1ボンディング層、183…第1密着層、190…保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、
前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、
前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、
他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、
前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、
前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、
前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記膜厚部は、前記絶縁層側に凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記膜厚部は、平面視で、孤立パタ−ン又は格子状パタ−ンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記絶縁層は、二酸化ケイ素から構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記透明導電層は、インジウム(In)を含む導電性の酸化物から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記積層半導体層は、III族窒化物半導体から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記積層半導体層は、前記第1の半導体層の前記第1の導電型が電子をキャリアとするn型であり、前記第2の半導体層の前記第2の導電型が正孔をキャリアとするp型であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、
n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、
前記正極は、
前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、当該凸部側に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の二酸化ケイ素からなる絶縁層と、当該絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、当該絶縁層を通して形成され、一端が当該透明導電層の当該凸部に電気的に接続され且つ他端が当該金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含み、
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置される
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項1】
第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、
前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、
前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、
他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射する光に対して透過性の透明導電層と、
前記透明導電層上に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の絶縁層と、
前記絶縁層上に積層され且つ導電性の金属反射層と、
前記絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記膜厚部は、前記絶縁層側に凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記膜厚部は、平面視で、孤立パタ−ン又は格子状パタ−ンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記絶縁層は、二酸化ケイ素から構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記透明導電層は、インジウム(In)を含む導電性の酸化物から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記積層半導体層は、III族窒化物半導体から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記積層半導体層は、前記第1の半導体層の前記第1の導電型が電子をキャリアとするn型であり、前記第2の半導体層の前記第2の導電型が正孔をキャリアとするp型であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、
n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、
前記正極は、
前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、当該凸部側に積層され且つ当該透明導電層より低屈折率の二酸化ケイ素からなる絶縁層と、当該絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、当該絶縁層を通して形成され、一端が当該透明導電層の当該凸部に電気的に接続され且つ他端が当該金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含み、
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置される
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−182440(P2012−182440A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14097(P2012−14097)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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