説明

半導体素子および半導体素子の製造方法

【課題】III族窒化物半導体層と接続電極との接合性および電極の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体発光素子1は、基板110と、発光層150を含み基板110上に積層される積層半導体層100と、インジウム酸化物を含み積層半導体層100上に積層される透明電極170と、透明電極170上に積層される第1の接合層190と、第1の接合層190上に積層されて外部との電気的な接続に用いられる第1のボンディングパッド電極200とを備える。また、半導体発光素子1は、弁作用金属の一種であるタンタルを含むとともにnコンタクト層の半導体層露出面140cと接する側がタンタル酸化物あるいはタンタル窒化物層となるように積層される第2の接合層220と、第2の接合層220上に積層されて外部との電気的な接続に用いられる接続電極の一例としての第2のボンディングパッド電極230とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子および半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、短波長光発光素子用の半導体材料として、GaN系化合物半導体が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶を始めとして、種々の酸化物やIII−V族化合物を基板として、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
【0003】
このようなGaN系化合物半導体を用いた半導体発光素子では、通常、基板上に、n型半導体層、発光層、p型半導体層からなるLED構造を有する積層半導体層を形成し、最上部のp型半導体層に透明電極およびボンディング用のパッド電極を形成する一方、p型半導体層および発光層の一部をエッチング等によって除去して露出させたn型半導体層にボンディング用のパッド電極を形成する。
【0004】
公報記載の従来技術として、n型窒化物半導体層上のパッド電極をAu/Crで構成することが記載されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2008−244503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、CrはGaN等のIII族窒化物半導体やITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極との接合性が高いことから、III族窒化物半導体とパッド電極とを接合する接合層の構成材として用いることが考えられる。
しかしながら、接合層にCrを用いた場合には、使用環境によっては接合層に外部から空気または水分が侵入しやすくなり、接合層へ侵入した空気または水分が、通電時に接合層を分解して、半導体発光素子の素子寿命を短くする恐れがあった。
【0007】
本発明は、III族窒化物半導体層と接続電極との接合性および電極の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明が適用される半導体素子は、基板と、III族窒化物半導体にて構成され基板上に積層される積層半導体層と、弁作用金属より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに積層半導体層のうちの一つの半導体層と接する側が当該元素の酸化物または窒化物の少なくともいずれか一方を含むように一つの半導体層上に積層される接合層と、接合層上に積層されて外部との電気的な接続に用いられる接続電極とを含んでいる。
【0009】
このような半導体素子において、積層半導体層が発光層を有することを特徴とすることができる。
また、接合層が、Al、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とすることができる。
さらに、接合層が、Ta、Nb、Tiからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とすることができる。
さらにまた、接続電極が、Au、Alまたはこれらの金属のいずれかを含む合金からなるボンディング層を有していることを特徴とすることができる。
そして、接続電極が、接合層とボンディング層との間に積層されるバリア層をさらに備え、バリア層が、Ag、Al、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、W、Mo、Ni、Co、Zr、Hf、Ta、Nbのうちの何れかまたはこれら金属の何れかを含む合金からなるものであることを特徴とすることができる。
【0010】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される半導体素子の製造方法は、基板上にIII族窒化物半導体にて構成される積層半導体層を形成する工程と、積層半導体層のうちの一つの半導体層上に、弁作用金属より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに一つの半導体層と接する側が当該元素の酸化物または窒化物の少なくともいずれか一方を含む接合層を形成する工程と、接合層上に外部との電気的な接続に用いられる接続電極を形成する工程とを含んでいる。
【0011】
このような製造方法において、積層半導体層を形成する工程では、積層半導体層中に発光層を形成することを特徴とすることができる。
また、接合層を形成する工程が、弁作用金属のターゲットを用いて、酸素または窒素の少なくともいずれか一方を含む雰囲気下でスパッタリングを行うことを特徴とすることができる。
さらに、弁作用金属が、Al、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とすることができる。
そして、一つの半導体層上に接合層が形成された後に、少なくとも一つの半導体層と接合層とを150℃以上600℃以下に加熱する熱処理を行う工程をさらに含むことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、III族窒化物半導体層と接続電極との接合性および電極の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は、半導体素子に関し、本実施の形態が適用される半導体発光素子(発光ダイオード)1の断面模式図の一例であり、図2は図1に示す半導体発光素子1の平面模式図であり、図3は半導体発光素子を構成する積層半導体層の断面模式図の一例である。
【0014】
(半導体発光素子)
図1に示すように、半導体発光素子1は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子1は、下地層130上に積層されるn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層されるp型半導体層160とを備える。なお、以下の説明においては、必要に応じて、これらn型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。さらに、半導体発光素子1は、p型半導体層160上に積層される透明電極170と、透明電極170上に積層される保護層180とを備える。そして、半導体発光素子1は、透明電極170のうち保護層180によって覆われない部位に積層される第1の接合層190と、第1の接合層190上に積層される第1のボンディングパッド電極200とを備える。さらにまた、半導体発光素子1は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層140の半導体層露出面140c上の一部に積層される第2の接合層220と、第2の接合層220上に積層される第2のボンディングパッド電極230(外部との電気的な接続のための接続電極とも言う。)とを備える。なお、以下の説明においては、透明電極170と透明電極170上に積層される第1の接合層190と第1のボンディングパッド電極200とを、まとめて第1の電極210と呼ぶ。また、以下の説明においては、第2の接合層220と第2のボンディングパッド電極230とを、まとめて第2の電極240と呼ぶ。
この半導体発光素子1においては、第1の電極210における第1のボンディングパッド電極200を正極、第2の電極240を負極とし、両者を介して電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0015】
では次に、半導体発光素子1の各構成要素について、より詳細に説明する。
<基板>
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等からなる基板を用いることができる。
また、上記基板の中でも、特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。サファイア基板を用いる場合は、サファイアのc面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0016】
なお、上記基板の内、高温でアンモニアに接触することで化学的な変性を引き起こすことが知られている酸化物基板や金属基板等を用いることができ、アンモニアを使用せずに中間層120を成膜することもでき、またアンモニアを使用する方法では、後述のn型半導体層140を構成するために下地層130を成膜した場合には、中間層120がコート層としても作用するので、これらの方法は基板110の化学的な変質を防ぐ点で効果的である。
また、中間層120をスパッタ法により形成した場合、基板110の温度を低く抑えることが可能なので、高温で分解してしまう性質を持つ材料からなる基板110を用いた場合でも、基板110にダメージを与えることなく基板上への各層の成膜が可能である。
【0017】
<積層半導体層>
積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図1に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層がこの順で積層されて構成されている。
また、図3に示すように、n型半導体層140、発光層150及びp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。さらにまた、積層半導体層100は、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。
なお、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0018】
<中間層>
中間層120は、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する虞がある。
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上に単結晶の下地層130を積層すると、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。なお、本発明においては、中間層形成工程を行なうことが好ましいが、行なわなくても良い。
【0019】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものであってもよく、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板110上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、成膜条件をコントロールすることにより、六角柱を基本とした集合組織からなる柱状結晶(多結晶)とすることも可能である。なお、ここでの集合組織からなる柱状結晶とは、隣接する結晶粒との間に結晶粒界を形成して隔てられており、それ自体は縦断面形状として柱状になっている結晶のことをいう。
【0020】
<下地層>
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1-xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1-xN層が得られやすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0021】
<n型半導体層>
図3に示すように、n型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。なお、nコンタクト層140aはnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
nコンタクト層140aは、第2の電極240を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1-xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第2の電極240との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5〜5μmとされることが好ましく、1〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0022】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。nクラッド層140bのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3、が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0023】
なお、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。
また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0024】
<発光層>
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
図3に示すような、量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1-yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1-yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギーが大きいAlzGa1-zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
【0025】
<p型半導体層>
図3に示すように、p型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1-xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層160aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、AlGaNとAlGaNとの交互構造又はAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0026】
pコンタクト層160bは、第1の電極210を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1-xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第1の電極210との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0027】
<第1の電極>
次に、第1の電極210の構成の一例について詳細に説明する。なお、本発明では、第1の電極であるP電極は、公知な材料や構造、形状を採用することができるが、好ましくは後述の電極構成を採用することができる。
上述したように、第1の電極210は、透明電極170と、透明電極170上に積層される第1の接合層190と、第1の接合層190上に積層される第1のボンディングパッド電極200とを有している。
【0028】
<透明電極>
図1に示すように、p型半導体層160の上には透明電極170が積層されている。
図2に示すように、平面視したときに、透明電極170(図1参照)は、第2の電極240を形成するために、エッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cのほぼ全面を覆うように形成されているが、このような形状に限定されるわけでなく、隙間を開けて格子状や樹形状に形成してもよい。なお、透明電極170の構造も、従来公知の構造を含めて如何なる構造のものも何ら制限なく用いることができる。
【0029】
透明電極170は、p型半導体層160との接触抵抗が小さいものが好ましい。また、この半導体発光素子1では、発光層150からの光を第1の電極210が形成された側に取り出すことから、透明電極170は光透過性に優れたものが好ましい。さらにまた、p型半導体層160の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、透明電極170は優れた導電性を有していることが好ましい。
【0030】
本実施の形態では、透明電極170として、Inを含む酸化物の導電性材料が用いられる。Inを含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばITO(酸化インジウム錫(In23−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In23−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In23−Ga23))、ICO(酸化インジウムセリウム(In23−CeO2))等が挙げられる。なお、これらの中に、例えばフッ素などのドーパントが添加されていてもかまわない。
これらの材料を、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることによって、透明電極170を形成できる。また、透明電極170を形成した後に、透明電極170の透明化を目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0031】
本実施の形態において、透明電極170は、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn23結晶を含む透光性材料(例えば、ITOやIZO等)を好ましく使用することができる。
例えば、六方晶構造のIn23結晶を含むIZOを透明電極170として使用する場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させることで、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。
【0032】
また、IZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。
例えば、IZO中のZnO濃度は1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることが更に好ましい。10質量%であると特に好ましい。また、IZO膜の膜厚は、低比抵抗、高光透過率を得ることができる35nm〜10000nm(10μm)の範囲であることが好ましい。さらに、生産コストの観点から、IZO膜の膜厚は1000nm(1μm)以下であることが好ましい。
IZO膜のパターニングは、後述の熱処理工程を行なう前に行なうことが望ましい。熱処理により、アモルファス状態のIZO膜は結晶化されたIZO膜となるため、アモルファス状態のIZO膜と比較してエッチングが難しくなる。これに対し、熱処理前のIZO膜は、アモルファス状態であるため、周知のエッチング液(ITO−07Nエッチング液(関東化学社製))を用いて容易に精度良くエッチングすることが可能である。
【0033】
アモルファス状態のIZO膜のエッチングは、ドライエッチング装置を用いて行なっても良い。このとき、エッチングガスにはCl2、SiCl4、BCl3等を用いることができる。アモルファス状態のIZO膜は、例えば500℃〜1000℃の熱処理を行ない、条件を制御することで六方晶構造のIn23結晶を含むIZO膜や、ビックスバイト構造のIn23結晶を含むIZO膜にすることができる。六方晶構造のIn23結晶を含むIZO膜は前述したようにエッチングし難いので、上述のエッチング処理の後に熱処理することが好ましい。
【0034】
IZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。なお、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn23結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
また、IZO膜の熱処理温度は、500℃〜1000℃が好ましい。500℃未満の温度で熱処理を行なった場合、IZO膜を十分に結晶化できない恐れが生じ、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない場合がある。1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合には、IZO膜は結晶化されているが、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない場合がある。また、1000℃を超える温度で熱処理を行なった場合、IZO膜の下にある半導体層を劣化させる恐れもある。
【0035】
アモルファス状態のIZO膜を結晶化させる場合、成膜条件や熱処理条件などが異なるとIZO膜中の結晶構造が異なる。しかし、本発明の実施形態においては、接着層との接着性の点において、透明電極170は材料に限定されないが結晶性の材料の方が好ましく、特に結晶性IZOの場合にはビックスバイト結晶構造のIn23結晶を含むIZOであってもよく、六方晶構造のIn23結晶を含むIZOであってもよい。特に六方晶構造のIn23結晶を含むIZOがよい。
特に、前述のように、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、第1の接合層190やp型半導体層160との密着性が良いため、本発明の実施形態において大変有効である。
【0036】
<第1の接合層>
第1の接合層190は、透明電極170に対する第1のボンディングパッド電極200の接合強度を高めるために、透明電極170と第1のボンディングパッド電極200との間に積層される。また、第1の接合層190は、透明電極170を透過して第1のボンディングパッド電極200に照射される発光層150からの光を低損失で透過させるために、透光性を有していることが好ましい。
【0037】
第1の接合層190は、弁作用金属(バルブメタル)で形成することが好ましく、Al、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに透明電極170と接する側が当該元素の酸化物または窒化物を含むように透明電極170上に積層される。また、当該元素からなる金属を一部酸化させたものまたは一部窒化させたものを含む構成がより好ましい。これにより、弁作用金属そのもので第1の接合層190を構成した場合と比較して、透明電極170と第1のボンディングパッド電極200との接合強度をより向上させることができる。
また、第1の接合層190は、Ta、Nb、Tiからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに透明電極170と接する側が当該元素の酸化物または窒化物を含むように透明電極170上に積層される。また、当該元素からなる金属を一部酸化または一部窒化させたものを含む構成がさらに好ましい。接合層金属でも酸化部あるいは窒化部が、金属酸化物である透明電極170との接合強度を向上させるからである。特に、Ta、Nb、Ti等の金属は弁作用金属の中でもイオン化しにくい性質を持つため、これらを酸化あるいは窒化させたものを含めることによって、水(水分)の存在下における電気化学反応により接合金属元素がイオン化して溶出することを防ぐことができ、好ましい。これにより、透明電極170に対する第1のボンディングパッド電極200の接合強度を格段に高めることができる。
【0038】
また、第1の接合層190のすべてすなわち全体が弁作用金属の酸化物あるいは窒化物で構成されていてもよいが、少なくとも部分的、局所的あるいは薄膜状に透明電極170と接する側が弁作用金属の酸化物あるいは窒化物で形成されていればよい。したがって、第1の接合層190が、透明電極170側に形成される弁作用金属酸化物層あるいは弁作用金属窒化物層と第1のボンディングパッド電極200側に形成される弁作用金属層とで形成されていてもかまわない。
【0039】
また、第1の接合層190は厚みが5オングストローム以上1000オングストローム以下の範囲の薄膜であること、より好ましくは10オングストローム以上400オングストローム以下の範囲の薄膜であることが好ましい。これにより、発光層150からの光を遮ることなく効果的に透過させることができる。なお、厚みが5オングストローム未満になると、第1の接合層190の強度が低下し、これにより透明電極170に対する第1のボンディングパッド電極200の接合強度が低下する恐れがある。第1の接合層190における金属酸化物層の厚さは約5〜50オングストロームが好ましい。5オングストローム以下では透明電極170との接合強度の向上効果が少なくなり、50オングストローム以上では、第1の接合層190と透明電極170との導電性の低下を招く恐れがある。
【0040】
<第1のボンディングパッド電極>
図1に示すように、接続電極の一例としての第1のボンディングパッド電極200は、透明電極170側から順に、第1のバリア層200aと第1のボンディング層200bとが積層された積層体からなる。第1のバリア層200aは、第1のボンディング層200bを形成する元素のマイグレーションをバリアする作用を有し、第1のボンディング層200bは、給電用の外部端子材料との密着性を高める作用がある。
なお、第1のボンディングパッド電極200は、第1のバリア層200aのみからなる単層構造であってもよく、第1のバリア層200aと第1のボンディング層200bとの間に、第1のボンディングパッド電極200全体の強度を強化する別のバリア層をさらに挿入して、三層構造としてもよい。また、第1のバリア層200aに代えてバリア層を挿入して、二層構造としてもよい。
【0041】
<第1のバリア層>
図1に示す第1のバリア層200aは、第1のボンディングパッド電極200全体の強度を強化する役割を有している。このため、比較的強固な金属材料を使用することが好ましく、例えば、Ag、Al、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、W、Mo、Ni、Co、Zr、Hf、Ta、Nbのうちの何れかまたはこれら金属の何れかを含む合金からなるものが選べる。また、第1のバリア層200aは、発光層150から出射された光を反射させるために、反射率の高い金属で構成することが好ましく、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族金属、Al、Ag、Tiおよびこれらの金属の少なくも一種を含む合金で構成することがより好ましい。これにより、発光層150からの光を効果的に反射させることができる。
なかでも、Al、Ag、Ptおよびこれらの金属の少なくとも一種を含む合金は、電極用の材料として一般的であり、入手のし易さ、取り扱いの容易さなどの点から優れている。
また、第1のバリア層200aは、高い反射率を有する金属で形成した場合、厚さが200〜3000オングストロームであることが望ましい。第1のバリア層200aが薄すぎると充分な反射の効果が得られない。一方、厚すぎると特に利点は生じず、工程時間の長時間化と材料の無駄を生じるのみである。更に望ましくは、500〜2000オングストロームである。
【0042】
また、第1のバリア層200aは、第1の接合層190に密着していることが、発光層150からの光を効率良く反射するとともに、第1のボンディングパッド電極200との接合強度を高められる点で好ましい。第1のボンディングパッド電極200が充分な強度を得るためには、第1のバリア層200aが第1の接合層190を介して透明電極170に強固に接合されていることが必要である。最低限、一般的な方法でボンディングパッドに金線を接続する工程で剥離しない程度の強度が好ましい。特に、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの金属の少なくも一種を含む合金は、光の反射性などの点から第1のバリア層200aとして好適に使用される。
【0043】
また、第1のボンディングパッド電極200の反射率は、第1のバリア層200aの構成材料によって大きく変わるが、60%以上であることが望ましい。更には、80%以上であることが望ましく、90%以上であればなお良い。反射率は、分光光度計等で比較的容易に測定することが可能である。しかし、第1のボンディングパッド電極200そのものは面積が小さいために反射率を測定することは難しい。そこで、透明な例えばガラス製の、面積の大きい「ダミー基板」をボンディングパッド電極形成時にチャンバに入れて、同時にダミー基板上に同じボンディングパッド電極を作成して測定するなどの方法を用いて測定することができる。
【0044】
<第1のボンディング層>
図1に示す第1のボンディング層200bは、Au、Alまたはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなることが好ましい。AuおよびAlはボンディングボールとして使用されることが多い金ボールとの密着性の良い金属なので、Au、Alまたはこれらの金属の少なくも一種を含む合金を用いることにより、ボンディングワイヤとの密着性に優れたものとすることができる。中でも、特に望ましいのはAuである。
また、第1のボンディング層200bの厚みは、500オングストローム以上20000オングストローム以下の範囲であることが好ましく、更に望ましくは5000オングストローム以上15000オングストローム以下である。
第1のボンディング層200bが薄すぎるとボンディングボールとの密着性が悪くなり、厚すぎても特に利点は生ぜず、コスト増大を招くのみである。
【0045】
第1のボンディングパッド電極200に向かった光は、第1のボンディングパッド電極200の最下面(透明電極170側の面)の第1のバリア層200aで反射され、一部は散乱されて横方向あるいは斜め方向に進み、一部は第1のボンディングパッド電極200の直下に進む。散乱されて横方向や斜め方向に進んだ光は、半導体発光素子1の側面から外部に取り出される。一方、第1のボンディングパッド電極200の直下の方向に進んだ光は、半導体発光素子1の下面でさらに散乱や反射されて、側面や透明電極170(上に第1のボンディングパッド電極200が存在しない部分)を通じて外部へ取り出される。
【0046】
第1の接合層190およびこれに積層される第1のボンディングパッド電極200は、透明電極170の上であれば、どこへでも形成することができる。例えば第2の電極240から最も遠い位置に形成してもよいし、半導体発光素子1の中心などに形成してもよい。しかし、あまりにも第2の電極240に近接した位置に形成すると、ボンディングした際にワイヤ間、ボール間のショートを生じてしまうため好ましくない。
また、第1のボンディングパッド電極200の電極面積としては、できるだけ大きいほうがボンディング作業はしやすいものの、発光の取り出しの妨げになる。例えば、チップ面の面積の半分を超えるような面積を覆っては、発光の取り出しの妨げとなり、出力が著しく低下する。逆に小さすぎるとボンディング作業がしにくくなり、製品の収率を低下させる。
具体的には、ボンディングボールの直径よりもわずかに大きい程度が好ましく、直径100μmの円形程度であることが一般的である。
また、本発明においては、前述したように、第1の電極210であるP電極は、公知な材料や構造、形状を採用することができるが、第1のボンディングパッド電極200を積層した第1の接合層190は、透明電極170表面上以外にpコンタクト層160bの表面上または当該層内部に接して形成してもよい。
【0047】
<第2の電極>
続いて、第2の電極240の構成について詳細に説明する。
上述したように、第2の電極240は、第2の接合層220と、第2の接合層220上に積層される第2のボンディングパッド電極230とを有している。
図1に示すように、n型半導体層140の半導体層露出面140cに第2の電極240が形成されている。このように、第2の電極240を形成する際には、エッチング等の手段によって発光層150およびp型半導体層160の一部を切り欠け除去してn型半導体層140のnコンタクト層140aを露出させ、得られた半導体層露出面140c上に第2の電極240を形成する。
図2に示すように、平面視したときに、第2の電極240は円形状とされているが、このような形状に限定されるわけでなく、多角形状など任意の形状とすることができる。また、第2の電極240はボンディングパットを兼ねており、ボンディングワイヤを接続することができる構成とされている。
【0048】
<第2の接合層>
第2の接合層220は、n型半導体層140のnコンタクト層140aに形成される半導体層露出面140cに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度を高めるために、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との間に積層される。なお、本実施の形態では、nコンタクト層140aが一つの半導体層に対応している。
【0049】
第2の接合層220は、第1の接合層190と同様に、弁作用金属(バルブメタル)すなわちAl、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに半導体層露出面140cと接する側が当該元素の酸化物または窒化物を含むように半導体層露出面140c上に積層される。また、当該元素からなる金属を一部酸化させたものあるいは一部窒化させたさせたものを含む構成がより好ましい。これにより、弁作用金属そのもので第2の接合層220を構成した場合と比較して、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との接合強度をより向上させることができる。
また、第2の接合層220は、Ta、Nb、Tiからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに半導体層露出面140cと接する側が当該元素の酸化物または窒化物にて構成することがより好ましい。また、当該元素からなる金属を一部酸化または一部窒化させたものを含む構成がさらに好ましい。特に、Ta、Nb、Ti等の金属を酸化または窒化させたものを用いることによって、nコンタクト層140aに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度を格段に高めることができる。
【0050】
ただし、第2の接合層220のすべてすなわち全体が弁作用金属の酸化物あるいは窒化物で構成されている必要はなく、少なくともnコンタクト層140aと接する側が弁作用金属の酸化物あるいは窒化物で形成されていればよい。したがって、第2の接合層220が、nコンタクト層140a側に形成される弁作用金属酸化物層あるいは弁作用金属窒化物層と第2のボンディングパッド電極230側に形成される弁作用金属層とで形成されていてもかまわない。
【0051】
また、第2の接合層220は厚みが5オングストローム以上1000オングストローム以下の範囲の薄膜であること、より好ましくは10オングストローム以上400オングストローム以下の範囲の薄膜であることが好ましい。なお、厚みが5オングストローム未満になると、第2の接合層220の強度が低下し、これによりnコンタクト層140aに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度が低下するので好ましくない。
【0052】
<第2のボンディングパッド電極>
図1に示すように、第2のボンディングパッド電極230は、nコンタクト層140a(図3参照)側から順に、第2のバリア層230aと第2のボンディング層230bとが積層された積層体からなる。バリア層230aは、第2のボンデインッグ層230bを形成する元素のマイグレーションをバリアする作用を有し、第2のボンディング層230bは、給電用の外部端子材料との密着性を高める作用がある。
なお、第2のボンディングパッド電極230は、第2のバリア層230aのみからなる単層構造であってもよく、第2のバリア層230aと第2のボンディング層230bとの間に、第2のボンディングパッド電極230全体の強度を強化する別のバリア層を挿入して、三層構造としてもよい。また、第2のバリア層230aに代えてバリア層を挿入して、二層構造としてもよい。
【0053】
<第2のバリア層>
図1に示す第2のバリア層230aは、第1のバリア層200aと同様に第2のボンディングパッド電極230全体の強度を強化する役割を有している。このため、比較的強固な金属材料を使用することが好ましく、例えば、Ag、Al、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、W、Mo、Ni、Co、Zr、Hf、Ta、Nbのうちの何れかまたはこれら金属の何れかを含む合金からなるものが選べる。なお、本実施の形態では、第2のバリア層230aを、第1のバリア層200aと同様に、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族金属、Al、Ag、Tiおよびこれらの金属の少なくも一種を含む合金で構成することがより好ましい。
そして、第2のバリア層230aは、第1のバリア層200aと同様に厚さが200〜3000オングストロームであることが望ましく、500〜2000オングストロームであることがさらに望ましい。
【0054】
また、第2のバリア層230aは、第2の接合層220に密着していることが、第2のボンディングパッド電極230との接合強度を高められる点で好ましい。第2のボンディングパッド電極230が充分な強度を得るためには、第2のバリア層230aが第2の接合層220を介してnコンタクト層140aに強固に接合されていることが必要である。最低限、一般的な方法でボンディングパッドに金線を接続する工程で剥離しない程度の強度が好ましい。特に、Rh、Pd、Ir、Ptおよびこれらの金属の少なくも一種を含む合金は、第2のバリア層230aとして好適に使用される。
【0055】
<第2のボンディング層>
図1に示す第2のボンディング層230bは、第1のボンディング層200bと同様、Au、Alまたはこれらの金属の少なくも一種を含む合金からなることが好ましい。AuおよびAlはボンディングボールとして使用されることが多い金ボールとの密着性の良い金属なので、Au、Alまたはこれらの金属の少なくも一種を含む合金を用いることにより、ボンディングワイヤとの密着性に優れたものとすることができる。中でも、特に望ましいのはAuである。
また、第2のボンディング層230bの厚みは、500オングストローム以上20000オングストローム以下の範囲であることが好ましく、更に望ましくは5000オングストローム以上15000オングストローム以下である。
第2のボンディング層230bが薄すぎるとボンディングボールとの密着性が悪くなり、厚すぎても特に利点は生ぜず、コスト増大を招くのみである。
【0056】
第2の接合層220およびこれに積層される第2のボンディングパッド電極230は、nコンタクト層140aの半導体層露出面140cの上であれば、どこへでも形成することができる。ただし、ボンディング作業のしやすさという観点からは、ボンディングボールの直径よりもわずかに大きい程度が好ましく、直径100μmの円形程度であることが一般的である。
【0057】
なお、本実施の形態では、後述するように、第1の接合層190と第2の接合層220とが同一のプロセスにおいて形成され、また、第1のボンディングパッド電極200と第2のボンディングパッド電極230とが同一のプロセスにおいて形成される。このため、第1の接合層190と第2の接合層220とが同じ構成を有しており、第1のボンディングパッド電極200と第2のボンディングパッド電極230とが同じ構成を有している。
【0058】
(半導体発光素子の製造方法)
次に、図1に示す半導体発光素子1の製造方法の一例について説明する。
本実施形態における半導体発光素子1の製造方法は、基板110上に、発光層150を含む積層半導体層100を形成する工程と、積層半導体層100の一部を切り欠けて半導体層露出面140cを形成する工程と、積層半導体層100の上面160cに第1の電極210を形成し且つ半導体層露出面140cに第2の電極240を形成する電極形成工程とを有している。
【0059】
ここで、発光層150を含む積層半導体層100を形成する工程は、中間層120を形成する中間層形成工程、下地層130を形成する下地層形成工程、n型半導体層140を形成するn型半導体層形成工程、発光層150を形成する発光層形成工程、p型半導体層160を形成するp型半導体層形成工程を有している。さらに、電極形成工程では、積層半導体層100の上面160cに透明電極170を形成する透明電極形成工程、透明電極170上に第1の接合層190を形成するとともに半導体層露出面140c上に第2の接合層220を形成する接合層形成工程、第1の接合層190上に第1のバリア層200aを形成するとともに第2の接合層220上に第2のバリア層230aを形成するバリア層形成工程、第1のバリア層200a上に第1のボンディング層200bを形成するとともに第2のバリア層230a上に第2のボンディング層230bを形成するボンディング層形成工程を有している。
【0060】
さらに、本実施の形態が適用される半導体発光素子1の製造方法は、必要に応じて、電極形成工程の後、得られた半導体発光素子に熱処理を施すアニール工程をさらに有している場合がある。
【0061】
以下、各工程について、順番に説明する。
<積層半導体層形成工程>
積層半導体層形成工程は、中間層形成工程と、下地層形成工程と、n型半導体層形成工程と、発光層形成工程と、p型半導体層形成工程とからなる。
<中間層形成工程>
先ず、サファイア基板等の基板110を用意し、前処理を施す。前処理としては、例えば、スパッタ装置のチャンバ内に基板110を配置し、中間層120を形成する前にスパッタするなどの方法によって行うことができる。具体的には、チャンバ内において、基板110をArやN2のプラズマ中に曝す事によって上面を洗浄する前処理を行なってもよい。ArガスやN2ガスなどのプラズマを基板110に作用させることで、基板110の上面に付着した有機物や酸化物を除去することができる。
【0062】
次に、基板110の上面に、スパッタ法によって、中間層120を積層する。
スパッタ法によって、単結晶構造を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素原料と不活性ガスの流量に対する窒素流量の比を、窒素原料が50%〜100%、望ましくは75%となるようにすることが望ましい。
また、スパッタ法によって、柱状結晶(多結晶)を有する中間層120を形成する場合、チャンバ内の窒素原料と不活性ガスの流量に対する窒素流量の比を、窒素原料が1%〜50%、望ましくは25%となるようにすることが望ましい。なお、中間層120は、上述したスパッタ法だけでなく、MOCVD法で形成することもできる。
【0063】
<下地層形成工程>
次に、中間層120を形成した後、中間層120が形成された基板110の上面に、単結晶の下地層130を形成する。下地層130は、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0064】
<n型半導体層形成工程>
下地層130の形成後、nコンタクト層140a及びnクラッド層140bを積層してn型半導体層140を形成する。nコンタクト層140a及びnクラッド層140bは、スパッタ法で形成してもよく、MOCVD法で形成してもよい。
【0065】
<発光層形成工程>
発光層150の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよいが、特にMOCVD法が好ましい。具体的には、障壁層150aと井戸層150bとを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層140側及びp型半導体層160側に障壁層150aが配される順で積層すればよい。
【0066】
<p型半導体層形成工程>
また、p型半導体層160の形成は、スパッタ法、MOCVD法のいずれの方法でもよい。具体的には、pクラッド層160aと、pコンタクト層160bとを順次積層すればよい。
【0067】
<半導体層露出面形成工程>
透明電極170の形成に先立ち、公知のフォトリソグラフィーの手法によってパターニングして、所定の領域の積層半導体層100の一部をエッチングしてnコンタクト層140aの一部を露出させ、半導体層露出面140cを形成させる。
【0068】
<電極形成工程>
電極形成工程は、透明電極形成工程と、接合層形成工程と、バリア層形成工程と、ボンディング層形成工程とからなる。
<透明電極形成工程>
マスクで半導体層露出面140cをカバーして、エッチング除去せずに残したp型半導体層160上に、スパッタ法などの公知の方法を用いて、透明電極170を形成する。
なお、p型半導体層160上に先に透明電極170を形成した後、透明電極170を形成した状態で、所定の領域の積層半導体層100の一部をエッチングすることで半導体層露出面140cを形成するようにしてもよい。
【0069】
そして、透明電極170の上面にSiO2からなる保護層180を形成した後、保護層180上および半導体層露出面140cに図示しないレジストを塗布する。
そして、第1のボンディングパッド電極200および第2のボンディングパッド電極230をそれぞれ形成する部分に対応する部位のレジストを公知の手法によって除去することで、保護層180の一部および半導体層露出面140cの一部を外側に露出させる。
そして、マスクで半導体層露出面140c側をカバーした状態で、透明電極170の上面に垂直な方向よりSiO2からなる保護層180のRIE(反応性イオンエッチング)を行い、第1のボンディングパッド電極200および第2のボンディングパッド電極230を形成する部分に対応する部位の保護層180を除去して、透明電極170の一部およびnコンタクト層140aの一部の上面を露出させる。
【0070】
<接合層形成工程>
次に、スパッタ法により、透明電極170の露出面上に第1の接合層190を形成するとともに、半導体層露出面140cの露出面に第2の接合層220を形成する。
接合層形成工程では、上述したように、バルブメタルの酸化物の層が透明電極170および半導体層露出面140cと接するように製膜を行う。ここで、スパッタ法を用い、バルブメタルの酸化膜を形成する手法としては、例えばバルブメタルからなる金属ターゲットを用い、酸素を含む雰囲気下においてスパッタを行う方法が挙げられる。ここで、スパッタの雰囲気としては、アルゴンに対して0.1体積%以上15体積%以下、より好ましくは1.0体積%以上10体積%以下の酸素が存在していることが好ましい。このとき、例えば第1の接合層190の透明電極170側および第2の接合層220の半導体層露出面140c側をバルブメタル酸化物層とし、第1の接合層190の第1のバリア層200a側および第2の接合層220の第2のバリア層230a側をバルブメタル層とする場合には、接合層形成工程の初期における酸素濃度を高くし、接合層形成工程の終期における酸素濃度を初期よりも低くあるいは酸素供給を停止するようにすればよい。また、バルブメタルの酸化膜を形成する他の手法としては、例えばバルブメタル酸化物からなる金属酸化物ターゲットを用い、酸素を含む雰囲気下あるいは酸素を含まない雰囲気下においてスパッタを行う方法が挙げられる。このとき、スパッタ条件を制御したスパッタ法を用いることにより、スパッタ材料によらず、カバレッジ性を高くして第1の接合層190および第2の接合層220を成膜することができる。なお、このとき、透明電極170上および半導体層露出面140c上に残存するレジストの硬化部にも第1の接合層190および第2の接合層220と同じ材料が積層される。
【0071】
<バリア層形成工程>
続いて、スパッタ法により、第1の接合層190上に第1のバリア層200aを形成するとともに、第2の接合層220上に第2のバリア層230aを形成する。このとき、スパッタ条件を制御したスパッタ法を用いることにより、スパッタ材料によらず、カバレッジ性を高くして、第1のバリア層200aおよび第2のバリア層230aを成膜することができる。なお、このとき、透明電極170上および半導体層露出面140c上に残存するレジストの硬化部側にも第1のバリア層200aおよび第2のバリア層230aと同じ材料が積層される。
【0072】
<ボンディング層形成工程>
さらに、スパッタ法により、第1のバリア層200a上に第1のボンディング層200bを形成するとともに、第2のバリア層230a上に第2のボンディング層230bを形成する。このとき、スパッタ条件を制御したスパッタ法を用いることにより、スパッタ材料によらず、カバレッジ性を高くして、第1のボンディング層200bおよび第2のボンディング層230bを成膜することができる。なお、このとき、透明電極170上および半導体層露出面140c上に残存するレジストの硬化部側にも第1のボンディング層200bおよび第2のボンディング層230bと同じ材料が積層される。
【0073】
最後に、レジスト剥離液に浸漬することにより、レジストの硬化部を剥離する。これにより、透明電極170上には、第1の接合層190と第1のバリア層200aおよび第1のボンディング層200bを有する第1のボンディングパッド電極200とが形成される。また、nコンタクト層140a上には、第2の接合層220と第2のバリア層230aおよび第2のボンディング層230bを有する第2のボンディングパッド電極230が形成される。
【0074】
<アニール工程>
そして、このようにして得られた半導体発光素子1を、例えば窒素などの還元雰囲気下において、150℃以上600℃以下、より好ましくは200℃以上500℃以下でアニール処理する。このアニール工程は、第1の接合層190を介した透明電極170と第1のボンディングパッド電極200との密着性、および、第2の接合層220を介した半導体層露出面140cと第2のボンディングパッド電極230との密着性を高めるために行われる。なお、上述したように、接合層形成工程において酸素雰囲気下で第1の接合層190および第2の接合層220の形成を行っている場合、あるいは、接合層形成工程において金属酸化物ターゲットを用いて第1の接合層190および第2の接合層220の形成を行っている場合については、アニール処理は必ずしも行う必要はないが、密着性を高めるためには行う方がより好ましい。
【0075】
[実施の形態2]
実施の形態1では、半導体発光素子1の第2の接合層220を、半導体層露出面140cと接する側にバルブメタル酸化物が含まれるように構成していた。これに対し、本実施の形態では、半導体発光素子1の第2の接合層220を、半導体層露出面140cと接する側にバルブメタル窒化物が含まれるように構成したものである。
【0076】
では、本実施の形態の特徴点となる、半導体発光素子1における第2の接合層220の構成およびその製造方法について、具体的に説明する。なお、第2の接合層220以外の構成およびその製造手順については、基本的に実施の形態1と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0077】
最初に、本実施の形態における第2の接合層220の構成について説明する。
<第2の接合層>
第2の接合層220は、実施の形態1と同様、n型半導体層140のnコンタクト層140aに形成される半導体層露出面140cに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度を高めるために、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との間に積層される。
【0078】
第2の接合層220は、弁作用金属(バルブメタル)すなわちAl、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに半導体層露出面140cと接する側が元素の窒化物を含むように半導体層露出面140c上に積層される。また、元素からなる金属を一部窒化させたものを含む構成がより好ましい。これにより、弁作用金属そのもので第2の接合層220を構成した場合と比較して、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との接合強度をより向上させることができる。また、第2の接合層220は、Ta、Nb、Tiからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を窒化させたものにて構成することがより好ましい。特に、Ta、Nb、Ti等の金属を窒化させたものを用いることによって、nコンタクト層140aに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度を格段に高めることができる。
【0079】
ただし、第2の接合層220のすべてすなわち全体が弁作用金属の窒化物で構成されている必要はなく、少なくともnコンタクト層140aと接する側が弁作用金属の窒化物で形成されていればよい。したがって、第2の接合層220が、nコンタクト層140a側に形成される弁作用金属窒化物層と第2のボンディングパッド電極230側に形成される弁作用金属層とで形成されていてもかまわない。また、第2の接合層220は、nコンタクト層140a側と公知な透明電極材料の層を介して積層されてもよい。この場合、公知な透明電極材料の層は、nコンタクト層140a側と接合する接合層の機能を有する。
【0080】
また、第2の接合層220は厚みが5オングストローム以上1000オングストローム以下の範囲の薄膜であること、より好ましくは10オングストローム以上400オングストローム以下の範囲の薄膜であることが好ましい。なお、厚みが5オングストローム未満になると、第2の接合層220の強度が低下し、これによりnコンタクト層140aに対する第2のボンディングパッド電極230の接合強度が低下するので好ましくない。
【0081】
次に、本実施の形態における第2の接合層220の形成工程について説明する。
本実施の形態では、これから説明するように、第1の接合層190と第2の接合層220とが、同一のプロセスにおいて形成される。このため、第1の接合層190も第2の接合層220と同様の構成を有することになる。ただし、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、例えば第1の接合層190を実施の形態1で説明した構成とする一方、第2の接合層220を本実施の形態で説明する構成としても差し支えない。
【0082】
<接合層形成工程>
透明電極形成工程によって透明電極170の形成が行われた後、スパッタ法により、透明電極170の露出面上に第1の接合層190を形成するとともに、半導体層露出面140cの露出面に第2の接合層220を形成する。
接合層形成工程では、上述したように、バルブメタルの窒化物の層が透明電極170および半導体層露出面140cと接するように製膜を行う。ここで、スパッタ法を用い、バルブメタルの窒化膜を形成する手法としては、例えばバルブメタルからなる金属ターゲットを用い、窒素を含む雰囲気下においてスパッタを行う方法が挙げられる。ここで、スパッタの雰囲気としては、アルゴンに対して0.1体積%以上20体積%以下、より好ましくは1.0体積%以上10体積%以下の窒素が存在していることが好ましい。このとき、例えば第1の接合層190の透明電極170側および第2の接合層220の半導体層露出面140c側をバルブメタル窒化物層とし、第1の接合層190の第1のバリア層200a側および第2の接合層220の第2のバリア層230a側をバルブメタル層とする場合には、接合層形成工程の初期における窒素濃度を高くし、接合層形成工程の終期における窒素濃度を初期よりも低くあるいは酸素供給を停止するようにすればよい。また、バルブメタルの窒化物を形成する他の手法としては、例えばバルブメタル窒化物からなる金属窒化物ターゲットを用い、窒素を含む雰囲気下あるいは窒素を含まない雰囲気下においてスパッタを行う方法が挙げられる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明の実施例について説明を行うが、本発明は実施例に限定されない。
本発明者は、各種製造条件を組み合わせて図1に示す半導体発光素子1の製造を行い、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との間の導通状態すなわちオーミック特性について検討を行い、また、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との密着性について、公知なテープ剥離試験(テープ試験)に基づき検討を行った。なお、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との密着性には、nコンタクト層140aと第2の接合層220との密着性および第2の接合層220と第2のボンディングパッド電極230における第2のバリア層230aとの密着性が大きく影響している。
【0084】
図4は、実施例1〜6および比較例1〜3における各種製造条件と、各々の評価結果との関係を示している。
ここで、図4には、製造条件として、接合層形成工程におけるスパッタのターゲット材(接合層金属)と、スパッタにおける雰囲気への酸素導入の有無と、スパッタにおける雰囲気への窒素導入の有無とを記載している。
また、図4には、評価項目として、nコンタクト層140aおよび第2のボンディングパッド電極230間のオーミック特性と、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド230との密着性をA、B、Cの3ランクで示した。なお、評価「A」は「良」を、評価「B」は「やや良」を、評価「C」は「不良」をそれぞれ意味している。
【0085】
実施例1、4および比較例1では、第2の接合層220を形成するためのスパッタのターゲット材としてTaターゲットを用いた。また、実施例2、5および比較例2では、第2の接合層220を形成するためのスパッタのターゲット材としてNbターゲットを用いた。さらに、実施例3、6および比較例3では、第2の接合層220を形成するためのスパッタのターゲット材としてTiターゲットを用いた。
また、実施例1〜3ではスパッタの雰囲気中に酸素を導入し、実施例4〜6ではスパッタの雰囲気中に窒素を導入した。これに対し、比較例1〜3ではスパッタの雰囲気中に酸素や窒素を導入せず、Arのみを用いた。
さらに、実施例1〜6および比較例1〜3において、第2のバリア層230aをPtで、第2のボンディング層230bをAuで、それぞれ作製した。
【0086】
次に、評価結果について説明する。
実施例1〜6においては、いずれも密着性の評価がB以上となった。すなわち、接合層形成工程においてスパッタの雰囲気に酸素あるいは窒素を導入することによって、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との密着性が向上することが確認された。特に、窒素雰囲気下でNbあるいはTaをターゲットとしてスパッタを行った実施例4、5では、密着性の評価がAであることに加え、オーミック特性の評価もAとなった。
【0087】
一方、比較例1〜3においては、オーミック特性の評価はすべてAであるものの、密着性の評価がいずれもCとなった。すなわち、接合層形成工程においてスパッタの雰囲気に酸素または窒素を導入しない場合には、nコンタクト層140aと第2のボンディングパッド電極230との密着性が低下することが確認された。
【0088】
このように、バルブメタルの酸化物あるいは窒化物によって第2の接合層220を構成することにより、半導体発光素子1のnコンタクト層140aと第2の電極240との密着性が向上することが理解される。
【0089】
なお、本実施の形態が適用される半導体発光素子1では、バルブメタルの酸化物あるいは窒化物によって第2の接合層220が構成されているが、この第2の接合層220は電極として使用するのに十分な電気伝導特性を有している。これは、第2の接合層220において、バルブメタルの酸化物が、例えばTaの場合においてはTa25の形ではなく、Ta25-xの導電体の形で存在していること、あるいは、バルブメタルの窒化物が、例えばTaの場合においてはTaN1-xの導電型の形で存在していることに起因するものと考えられる。
【0090】
なお、本実施の形態では、発光層150を有する半導体発光素子1を例に説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限られない。
すなわち、本発明は、Nを含むIII属窒化物半導体にボンディング用の電極を形成する場合に適用可能である。したがって、本発明が適用され得る対象として、LED(Light Emitting Diode)に加え、FET(Field Effect Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)等の各種電子デバイスが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】半導体発光素子の断面模式図である。
【図2】半導体発光素子の平面模式図である。
【図3】半導体発光素子を構成する積層半導体層の断面模式図である。
【図4】各実施例および各比較例における半導体発光素子の製造条件および評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1…半導体発光素子、100…積層半導体層、110…基板、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、140a…nコンタクト層、140b…nクラッド層、140c…半導体層露出面、150…発光層、150a…障壁層、150b…井戸層、160…p型半導体層、160a…pクラッド層、160b…pコンタクト層、160c…上面、170…透明電極、180…保護層、190…第1の接合層、200…第1のボンディングパッド電極、200a…第1のバリア層、200b…第1のボンディング層、210…第1の電極、220…第2の接合層、230…第2のボンディングパッド電極、230a…第2のバリア層、230b…第2のボンディング層、240…第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
III族窒化物半導体にて構成され前記基板上に積層される積層半導体層と、
弁作用金属より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに前記積層半導体層のうちの一つの半導体層と接する側が当該元素の酸化物または窒化物の少なくともいずれか一方を含むように当該一つの半導体層上に積層される接合層と、
前記接合層上に積層されて外部との電気的な接続に用いられる接続電極と
を含む半導体素子。
【請求項2】
前記積層半導体層が発光層を有することを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】
前記接合層が、Al、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項4】
前記接合層が、Ta、Nb、Tiからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とする請求項3記載の半導体素子。
【請求項5】
前記接続電極が、Au、Alまたはこれらの金属のいずれかを含む合金からなるボンディング層を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体素子。
【請求項6】
前記接続電極が、前記接合層と前記ボンディング層との間に積層されるバリア層をさらに備え、
前記バリア層が、Ag、Al、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ti、W、Mo、Ni、Co、Zr、Hf、Ta、Nbのうちの何れかまたはこれら金属の何れかを含む合金からなるものであることを特徴とする請求項5記載の半導体素子。
【請求項7】
基板上にIII族窒化物半導体にて構成される積層半導体層を形成する工程と、
前記積層半導体層のうちの一つの半導体層上に、弁作用金属より選ばれた少なくとも一種の元素を含むとともに当該一つの半導体層と接する側が当該元素の酸化物または窒化物の少なくともいずれか一方を含む接合層を形成する工程と、
前記接合層上に外部との電気的な接続に用いられる接続電極を形成する工程と
を含む半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記積層半導体層を形成する工程では、前記積層半導体層中に発光層を形成することを特徴とする請求項7記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記接合層を形成する工程が、前記弁作用金属のターゲットを用いて、酸素または窒素の少なくともいずれか一方を含む雰囲気下でスパッタリングを行うことを特徴とする請求項7または8記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記弁作用金属が、Al、Ti、Zn、Zr、Nb、Mg、Bi、Si、Hf、Taからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含んでいることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記一つの半導体層上に前記接合層が形成された後に、少なくとも当該一つの半導体層と当該接合層とを150℃以上600℃以下に加熱する熱処理を行う工程をさらに含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−147097(P2010−147097A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320027(P2008−320027)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】