説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】
従来のアルミ配線の場合、上述の横応力がアルミ配線にかかり、次第にアルミ配線が傾く。さらに、大きな応力を受けると配線が根元からスライドし、クラックが入るなどして、期待する特性を得られなくなることがある。
【解決手段】
第1の厚さを有する周辺部及び第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する配線形成部を有し、底面が同一である半導体基板10と、半導体基板10の配線形成部上に形成されたアルミ配線層と、を有し、配線形成部が前記周辺部に隣接して配置されている半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に樹脂封止型半導体装置表面に形成される配線部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ内の配線において、配線の抵抗が大きいと、信号伝達で遅延を引き起こしてしまう問題が生じる。また、チップの許容電流量を大きくすることができない問題も生じてしまう。これらのことから、チップ内の配線を低抵抗にする必要性がある。低抵抗化するためには、配線断面積を大きくすればよい。
【0003】
配線断面積を大きくするためには、配線幅を広くする方法と配線の厚みを厚くする方法の二通りの方法が考えられる。しかしながら、配線幅を広くする方法は、結果的に大きなチップ面積が必要になるため、コストが高くなってしまうというデメリットが生じる。それに対して、配線の厚みを厚くする方法では、温度サイクル等によってアルミ配線に加わる横応力が大きくなるため、アルミスライドなど信頼性に影響を与えてしまう可能性が高くなる。
【0004】
以上のことから、チップ内の配線の低抵抗化には、アルミ配線を厚くすると同時に横応力ストレスを回避する技術が必要不可欠となる。
【0005】
ここで、従来のアルミ配線の例として、縦型MOSFETの構造をもつ半導体チップ900を図4に示す。基板901上に、複数のアルミ配線(フィールドプレート902、グランド線903およびゲートフィンガー904)が形成されている。また、ゲートフィンガー904より内側の半導体基板901上には、ゲートフィンガー904より内側の基板ほぼ全面にわたってソース電極905が形成されている。
【0006】
モールド製品の場合、半導体チップ900は金属性リードフレームの上にペースト剤を用いてマウントされ、それらを覆うように樹脂で封止する。また、従来のアルミ配線の場合、図4に示すように、アルミ配線(フィールドプレート902、グランド線903およびゲートフィンガー904、ソース電極905)は半導体チップ900上面から突出している形になっている。これらのため、温度が大きく変化した場合、樹脂と半導体チップ900との膨張係数の違いによって、アルミ配線に横方向の応力が加わる。
【0007】
また、アルミ配線に加わる横方向の応力の影響は、広い面積のソース電極905よりも細いアルミ配線であるフィールドプレート902、グランド配線903およびゲートフィンガー904などに出やすい。さらに、横方向の応力は、半導体チップ900の中心から離れるに従って応力が強くなるため、外周部分に配置されるフィールドプレート902、グランド配線903およびゲートフィンガー904はより横方向の応力の影響を受けやすくなる。
【特許文献1】特開平4−155926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
横方向の影響を考えるために、従来のアルミ配線の概略断面図を示したものが図5である。図5(a)に示すように、従来のアルミ配線の場合、半導体基板91上の所定の位置に酸化膜93を形成し、ゲート電極94が酸化膜93上に形成される。その後、層間絶縁膜92が形成されている。
【0009】
従来のアルミ配線の場合は、上述の横応力がアルミ配線にかかり、次第にアルミ配線が傾く。さらに、大きな応力を受けると配線が根元からスライドし、クラック95が入るなどして、期待する特性を得られなくなることがあった(図5(b)、(c)参照)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様に係る半導体装置は、第1の厚さを有する周辺部及び前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する配線形成部を有し、底面が同一である半導体基板と、前記半導体基板の配線形成部上に形成されたアルミ配線層と、を有し、前記配線形成部が前記周辺部に隣接して配置されているものである。上述のようなアルミ配線をすることによって、アルミ配線にかかる横応力を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の他の態様は半導体装置の製造方法であって、第1の厚さを有する周辺部及び前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する配線形成部を有し、底面が同一である半導体基板を準備し、前記半導体基板の配線形成部上にアルミ配線を形成し、前記アルミ配線が形成された前記半導体基板を樹脂封止する半導体装置の製造方法である。配線形成部の半導体基板が薄いことによって、アルミ配線層がうける横応力ストレスを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアルミ配線構造によれば、アルミ配線の高さやチップ面積を変化させずに横応力ストレスを軽減することが可能になり、チップの信頼性向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の実施の形態1に関わる半導体装置1の上面図を示す。また図2は、図1のA−Aにおける断面図を示す。以下図1および図2を用いて、本発明の半導体装置1について説明する。
【0014】
実施の形態1の半導体装置は、半導体基板10と、ダイパッド17および封止樹脂16を有している。半導体基板10は、ダイパッド上に搭載され、半導体基板10およびダイパッド17全体を封止樹脂16が封止している。
【0015】
樹脂封止される半導体基板10上には、複数のアルミ配線(フィールドプレート11、グランド線12およびゲートフィンガー13)が形成されている。また、ゲートフィンガー13より内側の半導体基板10上には、ゲートフィンガー13より内側の基板ほぼ全面にわたってソース電極14が形成されている。
【0016】
これらの電極は、それぞれが層間絶縁膜18で分離されている。なお、上述のゲートフィンガー13はポリシリコンで形成されたゲート電極23上に形成されたアルミ配線である。ゲートフィンガー13もゲート電極の一部であるが、以後の説明では、後述するポリシリコンで形成されたゲート電極23と区別するためにゲートフィンガー13と称して説明する。
【0017】
またグランド線12より外側の半導体基板中にはウェル拡散層15が形成されている。ウェル拡散層15は、半導体基板10と逆導電型のウェルで形成されている。ここで上述したウェル拡散層15、フィールドプレート11、グランド線12、およびゲートフィンガー13は、それぞれリング状に形成されている。つまり、これらの構成要素は、半導体基板10の外側から内側に向かって、ウェル拡散層15、グランド線12、フィールドプレート11、ゲートフィンガー13の順で、ソース電極14を囲うように形成されている。
【0018】
この半導体装置の断面構造について説明する。半導体基板10はN型半導体基板であり、そのゲートフィンガー13の下部領域にはP型ウェル21が形成されている。P型ウェル21上には、絶縁膜19を介してポリシリコンからなるゲート電極23が形成されている。このゲート電極23上にゲートフィンガー13が形成され、ポリシリコンゲート電極23と電気的に接続されている。
【0019】
P型ウェル21はゲートフィンガー13で周囲を囲われた領域全面にわたって形成されている。そして、このP型ウェル21内のソース電極14の下部領域にはN型ウェル22が形成されている。半導体基板の裏面全面にはドレイン電極20が形成されている。つまり、本発明の半導体装置はゲートフィンガー13下部のP型ウェル21表面をチャネル領域とした縦型のMOSFETを形成している。
【0020】
上述したようにゲートフィンガー13より外側の半導体基板10上(N型領域:図2参照)には、絶縁膜19を介してグランド配線12、フィールドプレート11が形成されている。また、グランド配線12より外側の半導体基板10中には、P型のウェル拡散層15が形成されている。
【0021】
ここで、図2に示すように、本実施の形態の半導体装置では、ソース電極14およびウェル拡散層15が形成される部分の半導体基板の厚さと、フィールドプレート11、グランド配線12およびゲートフィンガー13といった配線が形成される部分の半導体基板の厚さが異なっている。詳細にはフィールドプレート11、グランド配線12およびゲートフィンガー13が形成される配線形成部の半導体基板10が薄く形成され、半導体基板表面に凹部が形成されている。このような構成とする理由について以下に説明する。
【0022】
上述したように本発明の半導体装置は縦型のMOSFETである。このような縦型MOSFETは、高耐圧デバイスなどのパワーMOSとしてよく用いられている。このようなパワーMOS素子では、耐圧確保のために上述したようなウェル拡散層15が基板外周に沿って設けられるのが一般的である。
【0023】
また、このようなウェル拡散層15によって形成される空乏層幅を調整するための電極としてフィールドプレート11やグランド線12といった配線もウェル拡散層15に沿ってリング状に設けられることが一般的である。
【0024】
さらに、大電流を流すためにソース電極14の面積も広くすることが望ましい。そのため上述したようにチップ外周に沿って、ソース電極14などに比べると極めて細い配線であるフィールドプレート11などが配置される。
【0025】
ここで、図3にチップ31とリードフレーム32、封止樹脂33の位置関係の一例を示す。周囲温度の急激な変化による応力は、チップ31の四隅34に集中して大きくなっている。これは、各部材の膨張率の違いから、チップ31の中心から離れるに従って応力が強いためである。
【0026】
つまり、膨張係数の違いによる応力の影響は、極めて広い面積のソース電極14よりも細い配線であるフィールドプレート11、グランド配線12およびゲートフィンガー13などに出やすい。
【0027】
以上のことから、本発明では配線形成部の半導体基板表面に凹部を形成し、その凹部内に配線を埋めこむ構造とすることで、横応力によるアルミ配線への影響を低減するものである。
【0028】
この横応力の低減について以下に説明する。実施の形態1においては、ウェル拡散層15より中心側の半導体基板10をエッチング法によって掘り下げることによって、ウェル拡散層15が形成される部分の基板の厚みが、配線形成部の半導体基板10の厚みより厚くなっていることが特徴である。
【0029】
横応力に対応するために、アルミ配線の高さを低くしては、大電流を流すときの配線の抵抗に影響をおよぼしてしまう。そのため、本発明にかかる実施の形態1においては、ウェル拡散層15が形成される部分の半導体基板より、ウェル拡散層15より中心側部分の半導体基板を薄くし、その半導体基板上にアルミ配線を行っている。
【0030】
このため、実施の形態1におけるフィールドプレート11、グランド線12、ゲートフィンガー13のアルミ配線の上面の高さとウェル拡散層15を含む半導体基板の上面の高さの差を、厚さが均一な基板上にアルミ配線を行ったときにおけるアルミ配線の上面の高さとウェル拡散層15の上面の高さの差よりも小さくすることによって、フィールドプレート11、グランド線12、ゲートフィンガー13のアルミ配線にかかる横応力に対応している。
【0031】
本発明はアルミ配線の厚みはそのままに、アルミ配線の上面の高さとウェル拡散層15を含む半導体基板の上面の高さの差を小さくすることで効果を発揮する。アルミ配線の上面とウェル拡散層15を含む半導体基板の上面との高さの差を完全にゼロにしなくても横応力ストレスを軽減できる。
【0032】
例えばアルミ配線の厚みが4μmのときに、アルミ配線にクラックが入る場合には、アルミ配線を行う部分の半導体基板の厚みを2μm薄くすることによって、ウェル拡散層15を含む半導体基板上面とアルミ配線上面との高さの差を2μmに抑えるだけでも、横応力に対して強化される。
【0033】
アルミ配線の高さと応力の影響度はパッケージやレイアウト、環境など複合要因によるところが大きいが、アルミ配線の上面とウェル拡散層15を含む半導体基板の上面との高さの差が半分になれば横応力を受ける面積も半分に、アルミ配線の上面の高さがウェル拡散層15を含む半導体基板の上面との高さと同じにすればアルミ配線にクラックが入る可能性を完全に抑止することが出来る。
【0034】
実施の形態1においては、横応力に対応するためにアルミ配線の厚みを軽減する必要性がない。つまり、アルミ配線を行う部分の半導体基板を薄くすることによって、アルミ配線の断面積を軽減することなしに、横応力ストレスを軽減することが可能になる。これらから、本発明は、アルミ配線の抵抗増加を抑制できると同時に、チップの信頼性向上に貢献できる。
【0035】
大電力を扱う製品においては、大電流を流すために厚いアルミ配線を用いなければならない。しかしながら、コスト削減のためにチップ面積を小さくする必要性がある。このような場合、本発明はアルミ配線の高さをほとんど変えることなく横応力を回避することが出来るため、有用な手段として用いられることになる。
【0036】
以上のことから、実施の形態1においては、アルミ配線を行う部分の半導体基板を薄くすることによって、アルミ配線の厚みを変化することなく、横応力ストレスを軽減することが可能なアルミ配線構造をとることが可能になる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。また、本実施の形態においては、縦型MOS素子を例にして説明を行ったが、発光素子やバイポーラトランジスタおよびMOS素子等どのような半導体素子でも本発明は適用可能であり、縦型MOS素子のみに限定されるものではない。
【0038】
さらに、本実施の形態において、ウェル拡散層15を含む半導体基板上面としたが、ウェル拡散層15を、フィールドプレート11、グランド線12、ゲートフィンガー13のアルミ配線がされる半導体基板10の厚みと同様に薄い半導体基板10に作成した場合でも、ウェル拡散層15より最外部側の半導体基板の厚みが厚いのであれば、アルミ配線に与える横応力を軽減することが可能となる。
【0039】
以上のことから、実施の形態1は、ウェル拡散層15より内側の配線形成部に凹部を作成することによって、フィールドプレート11およびグランド線12にかかる横応力ストレスを軽減している。これらからアルミ配線にクラックが入るなどの問題の発生を抑制でき、信頼性の高い半導体チップを作成できる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態1に関わるアルミ配線構造の構造図
【図2】実施の形態1に関わるアルミ配線構造の断面図
【図3】チップ、リードフレーム、樹脂保護膜の位置関係
【図4】従来の縦型MOSFETの構造をもつ半導体チップにおける構造図
【図5】従来のアルミ配線の断面概略図
【符号の説明】
【0042】
1 実施の形態1に関わるアルミ配線構造
10 半導体基板 11 フィールドプレート 12 グランド線
13 ゲートフィンガー 14 ソース電極 15 ウェル拡散層 16 封止樹脂
17 ダイパット 18 層間絶縁膜 19 絶縁膜 20 ドレイン電極
21 p層ウェル 22 n層ウェル 23 ポリシリコンゲート電極
31 チップ 32 リードフレーム 33 封止樹脂 34 四隅
91 酸化絶縁膜 92 層間絶縁膜 93 絶縁膜 94 アルミ配線
95 クラック
900 従来の半導体チップ
901 基板 902 フィールドプレート 903 グランド線
904 ゲートフィンガー 905 ソース電極 906 ウェル拡散層
907 絶縁膜 908 ドレイン電極 909 p層ウェル 910 n層ウェル
911 ポリシリコンゲート電極 912 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の厚さを有する周辺部及び前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する配線形成部を有し、底面が同一である半導体基板と、
前記半導体基板の配線形成部上に形成されたアルミ配線層と、を有し、
前記配線形成部が前記周辺部に隣接して配置されている半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記配線層と前記配線形成部の間に絶縁膜が形成されている半導体装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれか1項に記載半導体装置であって、
前記周辺部に前記半導体基板と逆導電型のウェルが形成されている半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記配線層はチップ周辺部に沿ってリング状に形成されている半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記配線層は所定の電位が与えられる配線層である半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記配線層はパワーMOSのゲート配線である半導体装置。
【請求項7】
第1の厚さを有する周辺部及び前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さを有する配線形成部を有し、底面が同一である半導体基板を準備し、
前記半導体基板の配線形成部上にアルミ配線を形成し、
前記アルミ配線が形成された前記半導体基板を樹脂封止する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線層と前記配線形成部の間に絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7、8いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記周辺部に前記半導体基板と逆導電型のウェルを形成する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記配線層を前記周辺部に沿ってリング状に形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−216596(P2006−216596A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25072(P2005−25072)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】